説明

動物の関節修復のための医薬組成物調製への間葉幹細胞の使用法

【課題】動物の関節を修復するための医薬組成物の調製法の提供。
【解決手段】同種異系間葉幹細胞を関節に投与することにより関節を修復し、およびまたは関節を安定させる一つの方法。さらに足場の非存在下で半月損傷によって損傷を受けた部位において動物の変形性関節症を処置するための、有効量の同種異系間葉幹細胞の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2000年9月28日受理された暫定出願連続番号第60/236,106号の一部継続出願であり、2000年9月28日受理された暫定出願連続番号第60/236,106号および2000年4月25日受理された第60/199,549号に基づく優先権を主張し、それらの内容はその全体を引用例としてここに組み込まれている。
【0002】
本発明は変形性関節症などの疾患で損傷を受け、あるいは疾患にかかっている関節の修復に関する。より詳細には、本発明は関節の軟骨下骨硬化を予防し、または弱め、また関節の関節軟骨の損傷を予防し、更に修復の必要な関節に間葉幹細胞を投与することにより関節での骨棘の形成を予防し、または弱める関節の修復に関する。
【背景技術】
【0003】
変形性関節症は、もっとも一般的な関節の疾病である。65歳以上の個人の約70%にこの疾病の放射線医学上の証拠が存在し、女性の罹病率がいくらか高い。45−65歳の年齢域では、罹病率は人口の30%に近づいている(アメリカ整形外科医アカデミー,1992年)。変形性関節症は骨の端部で関節表面の侵食を伴う変性疾病であり、最後には軟骨面の完全な損傷と軟骨下骨の露出につながる。これらの変化は動作の欠失、硬直および関節痛を含む危険な徴候の発症を伴う。関節軟骨は一度痛めると、著しい自己修復を示さなくなる。ほんの僅かな組織修復が起きてもそれは事実上典型的に線維性であり、関節軟骨にとっては不適切な機能しか果たさない、まさに代用品である。各種の方法が関節軟骨の欠損の治療を高めるために吟味されてきたが、その成功の度合は様々であった。
【0004】
変形性関節症は人口の大部分に影響を与える重い疾病であるけれども、その原因となる因子は未知である。半月板または前十字靭帯(ACL)を含む膝損傷はX線写真で変形性膝関節症(Gonarthrosis)の進度を著しく増加させる。半月板損傷だけで変形性関節症へ進む危険を20倍も増加させる。半月板破壊と組み合ってACLまたは他の腱への損傷に悩む患者においては、膝の変形性関節症が進行する非常に高い尤度が存在する(ギルクィストおよびメスナー,スポーツ医学,第27巻,143−156ページ(1999年))。
【0005】
内側または外側半月切除あるいはACL切除は膝関節での不安定性を創出し、ヒツジ(ゴッシュ,他,臨床整形外科,252巻,101−113ページ,1990年;リトル他,リウマチ学ジャーナル,11巻,2199−2209ページ,1997年)およびイヌ(再検討のため、ブラント;Ann.N.Y.Acad.Sci.,732巻,199−205ページ,1994年参照)などの大型動物の変形性関節症損傷の進行に導く膝関節で不安定性を創り出す手段として使用されてきた。しかしこれらの動物は関節軟骨層と軟骨下骨の構造および組織の機械的特性に関連してヒトとは異なる。成長したヤギは活性であり、ヒト膝と十分比較される後膝関節で構造的な組織有機体を持つという利点がある。ヒト変形性関節症のモデルとしてヤギの使用を示す文献でいくつかの報告がある。4匹のヤギを含む初期の研究では、前十字靭帯の離断が顆状軟骨での病巣欠損を来たした(ホー,他,Invest.Radiol.27巻,84−90ページ1992年)。しかし、より最近の研究では、若い閉じ込められたヤギで8ヵ月後の前十字変形性関節症の変化を産生するのに失敗した(ロービックおよびティーゲ,スカンジナビア獣医学会公式記録,37巻,265−272ページ,1996年)。
【0006】
ヤギ後膝関節で再生可能な変形性関節損傷を進展させる努力において、ヤギはACL切除、内側半月切除またはその両方を組合せた処置を受けた(マーフィー,他,整形外科研究協会第45回大会議事録,24巻,1035ページ(1999年))。この研究はタフトユニバーシティー,獣医学科の協力で行われた。多様な範囲での変形性関節変化がこれらの動物の後膝関節で起こり、変化の厳しさは使用される手術手順に依存していた。最も軽い損傷はACL切除の結果として生じ、またもっとも厳しい損傷は組合せ手順の結果として生じた。内側半月切除のみが標準の損傷を産出した。ACL切除は骨棘の形成および他の軟骨下変化と、主として全内側顆上にある軟骨面にある線維攣縮を生じた。内側半月切除は更に骨棘形成および他の軟骨変化と中間内側顆に主として閉じ込められた軟骨損傷を誘導した。これらの変化はACL切除の結果見出されたものよりもずっと厳しかった。ACL切除と組み合わせた内側半月板切除は12週後にヤギ後膝関節での硬軟両組織に対してより進んだ変形性関節変化をもたらした。保護されていない内側脛骨プラトー面の軟骨も影響を受けたがこの部位では自発的変形性関節症のある程度のものが存在していた。12週後のこれらのヤギでACLまたは内側半月板の修復は存在しなかったが、内側半月切除の結果として明らかな線維増多があった。線維性半月板状組織の進化がACL切除と内側半月切除の組合せに続き1個の動物で観察された。これは多分不完全な半月切除の結果のためであった。
【0007】
第2の研究では、ヤギのACL切除の結果としての軽い変形性関節損傷の生成が更に研究された。この手順は相対的に攻撃的でなくて潜在的に可逆的であり、そのため変形性関節症のMSC治療の評価のために追加の選択権を提供する。第2の研究は、3ヶ月で見られた軽い変形性関節症の症状が、後で関節面により大きな損傷を持つより厳しい形態へと進行することを実証するために行われた。この研究では、軽い運動訓練と組合せて一方的なACL切除を受けたヤギが3ヶ月で変形性関節症の症状を深めた。症状は主として軟骨面にはほとんど損害を与えない骨棘変化であった。6ヶ月までに、より厳しい軟骨の損傷が現れた。これはヤギ後膝関節でのACL切除がヒトでの初期変形性関節症に類似した軟骨変化に導くであろうことを確認した。
【0008】
今日利用できる変形性関節症の処置への大抵のアプローチは、軟骨の侵食に殆んど影響を与えない症状の制御を伴う。細胞治療は軟骨侵食を逆転または阻害することにより介入のための潜在的機会を提供する。軟骨細胞の直接移植、あるいは宿主軟骨細胞の増殖を刺激する適切なミトゲンまたは成長因子の輸送のいずれかを含む数多くのアプローチが可能である。他のアプローチは局所前駆細胞集団を高める細胞結合また細胞走性因子の輸送を伴い、最終的には分解過程の逆転に導く。この領域での研究の多くは加工処理軟骨構築物、すなわち生体外の環境で生体基質足場上での軟骨細胞の培養の周辺に集中し、続いてその損傷部位への構築物の運搬が行われることになる。他のアプローチは筋膜または骨膜のいずれかの異所性組織の縫合弁下部に移植された細胞の固定を伴う手続きの開発に依存した。しかしこれらの方法は損傷または罹患した関節を機械的に固定するのに適用できる蓋然性があるに過ぎない。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一つの見地に従って、動物の関節を修復する方法が提供される。この方法は関節に間葉幹細胞を投与することを含む。動物は哺乳類であり、とりわけヒトまたは非ヒト霊長類であることができる。
【0010】
間葉幹細胞は受容者に自己由来のものであり、または受容者に同種異系のものであってもよい。
間葉幹細胞は当業者に公知の方法により獲得することができる。例えば間葉幹細胞は骨髄吸引により獲得され、次いで培養で拡張される。一度培養で拡張されると、間葉幹細胞は関節に投与される。
【0011】
間葉幹細胞は薬理許容担体と一緒に関節に投与することもできる。適用される担体の選択は当業者の技術の範囲内にある。適切な薬理担体は必ずしもそれに限定されないが、ヒアルロナン、化学的に修飾されたヒアルロナン、食塩加リン酸緩衝液、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、マンノサミン、プロテオグリカン、プロテオグリカン断片、キチン、キトサン、または他の多糖類もしくはポリマー材料を含む。
【0012】
関節に投与された時に、間葉幹細胞が損傷関節の修復と安定化を提供することを出願人は発見したが、ここでこのような損傷は傷害、炎症、およびまたは例えば変形性関節症などの疾病あるいは疾患に起因する。足場も採用できるけれども、間葉幹細胞は足場に投与する必要はない。関節に投与された時に、間葉幹細胞は半月組織を含む軟骨組織内に分化する。本発明の範囲はいずれかの理論的推論に限定されることを意図してはいないけれども、間葉幹細胞は関節に投与されると、失われたかまたは損傷した組織の故で関節に対する破壊的な力に応答し、それにより間葉幹細胞は線維軟骨組織内に分化するものと考えられる。かくして、間葉幹細胞は関節に投与されると、半月組織を含む関節での失われた、およびまたは損傷した組織を置換する能力をもつ。従って関節への間葉幹細胞の投与は、関節で半月組織を含む軟骨組織の再生を提供し、これにより関節の修復と安定化を提供すると共に患部の苦痛を軽減し、軟骨下骨硬化を低減する。
【0013】
かくして間葉幹細胞は損傷し、損害を持ちまたは炎症を持つ関節に修復と安定化を提供するために関節に投与される。損傷、損害または炎症は、例えば変形性関節症、慢性関節リウマチ、痛風、反応性関節炎、乾癖性関節炎、若年性関節炎などの疾病または疾患と関連する。それはまた非炎症性性質の関節の変形性関節症または慢性疾患から起こることもある。
【0014】
修復され、およびまたは安定され、およびまたは炎症が軽減される関節は必ずしもそれに限定されないが、膝関節、股関節、肩関節、肘関節、足関節、足根間関節および中足骨関節、橈骨手根関節、棘、手根間関節および中手関節、ならびに側頭下顎骨関節を含む。
【0015】
間葉幹細胞は受容者の関節を修復およびまたは安定化するための有効量で投与される。一般に間葉幹細胞は約1×10乃至約1.5×10、望ましくは約1×10乃至約1×10、より望ましくは約1×10乃至約1×10まで変動する量で投与される。正確な細胞数は、必ずしもそれに限定されないが、年齢、体重、患者の性、関節の損害または損傷、あるいは関節に影響する疾病の範囲および発症度、関節内の滲出の度合、関節腔、および運搬に影響する他の解剖特性を含む各種の因子に依存する。特異的な関節に対する傷害は、必ずしもそれに限定されないが、X線およびMRIデータ、関節鏡による視覚化、また患者の医療履歴と物理的検査の検討を含む一般的医療業務により決定される。
【0016】
本発明はこれから添付の図面と関連して記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ACL切除と内側半月切除の組合せによる前もって不安定化されたヤギ膝の半月状組織の形成に対するMSCsの作用を示す図。未成熟半月状組織(黒矢印)が、ACL切除と内側半月切除により前もって不安定化されG151(A)、G154(B)およびG163(C)のMSCsに露出された膝の内側顆(MC)と内側脛骨プラトー面(MTP)の間の領域に形成された。
【図2】ACL切除と内側半月切除の組合せによる前もって不安定化されたヤギ膝の中央半側顆での軟骨障害の進行に対するMSCsの作用を示す図。表2に記載されたように格付けされまた表3で示されたスコアを持つ軟骨障害は、賦形剤のみのヤギの中央内側顆で進行した(G102、G127、およびG143、それぞれ頭部パネル左側中央および右側のイメージ)。賦形剤と一緒に注入されたMSCsは、例えばG151の場合(底部パネル、中央のイメージ)、またG166(底部パネル、右側イメージ)のようにすべての場合ではないが、いくつかの動物のこの部位でのきびしい障害の進行を予防した。
【図3】手術後6ヶ月の組織の全体の外観を示す図。HA(AとC)およびGFP形質導入MSCsプラスHA(CとD)を注入された変形性関節症ヤギ膝の半月付着脛骨面(AとC)および、後および中央内側顆(BとD)の全体外観図。矢印はMSCsに露出され、また対照ヤギ膝で認められる滑液状増殖に露出された関節で形成された半月新組織を示す。
【図4】月新組織の組織学分析を示す図。半月組織の蛍光顕微鏡写真は半月新組織の顆表面でのGFP正の細胞を示す(BとC)。負の顕微鏡写真が関節環境に露出されない切断組織の後部を撮影した。組織の中心にある細胞は抗タイプIIコラーゲン抗体と結合した(D乃至F)。もとの倍率はAからEまでは200×でFは100×であった。
【図5】ヒアルロナンナトリウムの関節内注入(HA処置グループ)またはヒアルロナンナトリウムに懸濁されたMSCsの関節内注入(HA+MSC処置グループ)を受けた3ヶ月のヤギの中央内側顆の組織学分析を示す図。HA処置ヤギ(n=3、左パネル)からの、およびHA+MSC処置ヤギ(n=6、中央および右側パネル)からの中央内側顆の横断切片。矢印は骨棘を指示する。
【図6】完全内側半月切除に続き1乃至6週のいずれかでヒアルロナンナトリウム溶液に懸濁された同種異系細胞で処置された動物の脛骨プラトー面の巨視的外観を示す図。対照動物はヒアルロナンナトリウムのみ注入で処置された。処置グループにおいて、新半月組織は脛骨プラトー面から分離され、支持面を提供するように見えた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は下記の実施例と関連して記載されるが、本発明の範囲はそれにより制限することは意図しない。
【実施例】
【0019】
実施例1
Q熱、ブルセラ症、ヤギ関節炎、脳炎に陰性であることが確認された全体で12頭の去勢された雄ウェスタンクロスヤギが獲得された。ヤギは年齢または体重でお互いに異なっていない4グループに任意抽出された。すべてのヤギは間葉幹細胞(MSCs)を得るための骨髄吸引と、実験上の変形性関節症の進行を見るために1個の膝部に不安定性を創り出すように手術を受けた。ヤギはACLの切除(n=6)または全内側半月切除(n=6)のいずれかを受けた。2週の回復期の後、ヤギは各週5日で12週の運動を受けた。自己由来緑色蛍光タンパク質(GFP)形質導入間葉幹細胞は、次いで操作され反対側に位置する対照関節に導入された。各グループのすべてのヤギは高分子量のヒアルロナン(4mg/ml)あり(n=3)またはなし(n=3)の1×10細胞/mlの懸濁液5mの注射を受けた。関節は7日後に剖検で検査された。すべての場合でGFP形質導入細胞が滑液および滑液洗浄で検出され、更に細胞は生存可能状態で滑液から集められ、培養で拡張することができた。蛍光顕微鏡検査は、追加された細胞がコロニーを作り、半月を含む関節内での軟組織の表層と結合したことを明らかにした。これらの観察は、間葉幹細胞が直接注射により変形性関節症の関節にうまく運搬できることを示し、細胞が関節内に保持され、軟組織表面でコロニーを形成し、1週後に生存可能状態で回収することができる。
実施例2
Q熱、ブルセラ症、ヤギ関節炎、脳炎に陰性であることが確認された全体で24頭の去勢された雄ウェスタンクロスヤギが獲得された。ヤギは年齢によりお互いに異なっていない4グループに任意抽出された。すべてのヤギは間葉幹細胞(MSCs)を得るための骨髄吸引と、実験上の変形性関節症の進行を見るために1個の膝部に不安定性を創り出すように手術を受けた。このグループは表1で示された。
【0020】
【表1】

【0021】
グループ1と2は体重に関して著しい差はなかった(スチューデントt検定、p=0.68)(表2)。しかしグループ4は対応する対照グループ(グループ3)よりも重かった(t検定、p=0.001)。ヤギはグループで収容され、穀物飼料と干草の商業用反芻規定食を与えられた。
【0022】
膝関節を不安定化するための手術、間葉幹細胞の注入、および犠牲でのすべてのヤギの体重は下記の表2で与えられる。
【0023】
【表2】

【0024】
手術に先立ち少なくとも2週前に、骨髄は各ヤギの腸骨稜から吸引され、間葉幹細胞は単離され、下記の手順を使用して吸引物から培養された。骨髄は完全ヒトMSC(hMSC)培地(選択されたロットからの胎仔ウシ血清10%と、リットル当たり10mLでペニシリン−ストレプトマイシンを含む低グルコースDMEM)に加えられ、細胞をペレット化し脂肪層を除去するために遠心分離された。細胞は培地で洗浄され培養皿で100,000−400,000細胞/cmで平板培養された。すべての調製物は5%COを含む加湿雰囲気内で37℃で培養された。非付着細胞は第1次培地変換の時点で平板培養後3−5日で除去され、培地はその後週2度取り換えられた。培養皿が殆んど密集に到達すると、細胞は37℃で5分間1mMのEDTAを含む0.05%(w/v)トリプシンで分離された。継代培養のために、MSCsは完全hMSC培地35mLでフラスコ当たり0.5−1.0×10細胞でT−185フラスコで平板培養された。直ちに使用されないMSCsはMSC凍結培地(完全MSC培地40ml、FBS、5ml、DMSO、5ml)内での凍結により冷凍保存された。
【0025】
ヒトMSCsは合衆国特許第5,486,359号に記載された方法に従って単離され培養される。ヒトMSCsは更にバイオホウィッテーカー(ウォーカーズビル,メリーランド)からも購入される。同種異系MSCsの使用はPCT出願番号PCT/US99/05351号で議論されている。
【0026】
各ヤギの一つの後膝関節の不安定性はACLと内側膝関節半月切除という手術切開により創り出された。手術の前日飼料は除かれ、手術の直前にヤギはトルブトロール(予備鎮痛薬)およびケタミンとジアゼパムのカクテル(導入用)で麻酔された。1個の後脚は寛骨大腿関節のレベルまで足骨から切り取られ無菌方式で浄化された。動物は手術室に送られてイソフルオランで麻酔され、ここでハンギングレグ法を用いて最終滅菌調製が行われた。脚はタオルを使って滅菌布で覆われ遠位脚は滅菌タオルと手術ラップで包まれた。外側関節切開が行われ、前十字靭帯(頭側十字靭帯)が#11刃を用いて外側大腿顆の内側面の付着から切除された。この近位付着は前方向にもたらされ、全十字靭帯はその脛骨付着から切除された。半月の尾側角は止血鉗子でつかまれ、その軸(外側)付着はその脛骨付着から切除された。尾側から外側への、次いで頭側への作業で、半月はそれが完全に除かれるまでその付着から移動された。後膝関節は全十字靭帯が切除されたかどうかを確認するために引出し試験に移された。関節包は単一連続または十字模様で吸収性合成縫合材料(ビクリル,PSD,デキソン,マキソンなどの側を含む)を用いて閉じられた。側方膜は同じく連続様式で0または2−0で2−0吸収性合成縫合材料を用いて閉じられた。皮膚は皮膚吻合材(ステープル)で閉じられた。
【0027】
鎮痛薬は術後3日間、1日2回与えられた。切開は赤さ、滲出液、過度の膨張などを含む感染の徴候をモニターされた。皮膚吻合材/縫合糸は2週に除去された。2週の回復期の後、すべての動物は犠牲まで週5日運動させられた。運動訓練は長さ約90mの早駆けより成っていた。
膝関節注入のための形質導入MSCsの調製
GFPタンパク質をコード化するポリヌクレオチド配列を含むプラスミドpOT24がGP+E86パッケージング細胞系に形質移入され、修飾GP+E86細胞によりウイルスが産生された。このウイルスは次いでPG13パッケージング細胞系に形質導入され、修飾PG13細胞によりウイルスが産生された。
【0028】
一次培養の終りには冷凍保存されたMSCsが解凍され、ギボンサルエンベロープ(コッフィン,他,レトロウイルス,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス,コールド・スプリング・ハーバー・ニューヨーク,91−119ページ,1997年)を含むPG13(マウス3T3ベースのもの)パッケージング細胞系から産生されたレトロウイルスで形質導入された。このウイルスはクラゲ、アクオレア・ビクトリアの増加したグリーン蛍光タンパク質の配列を持っていた。標準形質導入は以下の通り実施された:ヤギ間葉幹細胞がT80フラスコで一晩CO5%の大気で37℃で培養され、その後、各フラスコの培養培地は遠心形質導入のため、形質導入カクテル15mLで置換され、その後、新鮮培地2mLが加えられ保温を続けた。遠心形質導入は以下の通り行われた:各フラスコの培養培地は形質導入カクテル15mLで置換され、フラスコ担体を異なる遠心力と32℃の持続で用いるベックマンGS−6R遠心分離機で遠心された。遠心に続き、新鮮培地15mLが各フラスコに加えられた。第二形質導入プロトコルが翌日に行われた。細胞は1.0mg/mlの濃度でG418で選択され培養を続けられた。G418選択後形質導入MSCsは継代2(P2)培養の終りまで拡張され、トリプシン消化され注入が必要となるまで凍結された。形質導入効率は凍結保存に先立ちフローサイトメトリーを用いて決定された。
【0029】
凍結保存された形質導入ヤギMSCsを含む小びんは37℃で急速に解凍され、hMSC完全培地40mlに加えられた。細胞は5分、1500rpmで20℃で遠心され5mlPBSに再懸濁された。細胞懸濁液50μlがトリパンブルーを使用して生存細胞数決定のために除去された。全体で10×10の細胞が20mlPBSで2回洗浄され、付着18G針を持つ12ml注射器を用いて4mg/mlハイアラーティンV(ファルマシア)5mlに再懸濁された。細胞懸濁液はヤギ膝部への注入のために、注射器に吸引され、1mlのPBSが洗浄のために管に加えられた。
形質導入ヤギMSCsのヤギ後膝関節への注入
ヤギは体重測定され、血清を得るために血液が収集された。膝領域は毛をそり落とされ、ヤギは麻酔され挿管された。両膝部の頭側から尾側および外側放射線写真を得た後に、ヤギは注入が行われる膝部を持ち上げる背面横臥に配置された。膝部の周りの領域は滅菌され、膝は滑液を循環するために20回屈曲伸長された。70−90°の屈曲におかれた膝ではできるだけ多くの液が関節から吸引され、分析のために保持された。同じ位置の膝で、PBS10−20mlが関節外側面に注入された。18G針がそれらの接合部により形成される大腿の上顆、半月/脛骨プラトー面および切痕により形成される三角を通じて半月の丁度近位で、また膝蓋靭帯の外側端部の後部に挿入された。20回屈曲伸長された後、洗浄液は関節から吸引され保持された。付着された18G針を持つ三方向ストップコックが丁度膝蓋靭帯の丁度内側で関節の内側にある前記三角に挿入された。開かれた位置でストップコックを使って前記の通り準備された細胞懸濁液はストップコックに付着され、細胞懸濁液は関節包に注入された。ストプコックに残存する懸濁液はPBS1mlで洗浄された。関節は20回屈曲伸長され、ヤギは回復および畜舎への移送の前、少なくとも10分この位置で保持された。
ヤギ剖検と組織収集
グループ1と2のヤギは形質導入細胞の関節への注入後6週に犠牲とされた。膝窩と鼠径部リンパ節が股関節部での関節離断の前に手術肢と対側性対照肢の両方から収集された。放射線写真が撮影され、滑液が洗浄なしおよび10mlPBS洗浄後に収集された。洗浄液吸引後に関節は切開され、以下の組織、すなわち関節/滑膜包内層、脂肪パッド、長趾伸筋腱(extensor digitorum longus tendon)、後十字靭帯および外側半月などの組織が得られた。修復された内側半月組織も収集された。
【0030】
切開後に、術後および対側性対照関節ならびに対照動物の両関節の軟骨の13領域が下記表3に記載された格付けシステムを用いて視覚により格付けされた。
【0031】
【表3】

【0032】
選択された領域は、内側および外側脛骨プラトー面、内側顆の前、中、後の部分、外側顆の中央および後側の部分、滑車隆線の外側、中央、内側部などの保護および保護されない部分、ならびに頭蓋骨に位置していた。小刀を使って、中央および外側内側顆から、また内側および外側脛骨プラトー面の保護されない領域からの軟骨サンプルが得られた。収集されたすべての組織の部分は分子分析のために短期凍結され、組織分析のためにホルマリンで固定された。関節もホルマリンで固定された。すべての関節は固定の前に写真撮影され、格付けスコアを確認し骨棘の存在を注記するために写真撮影され、再試験された。内側と外側滑車隆線の間の距離が測定され、滑車距離(TRD)と表現された。中央および外側内側顆のセグメント、および内側と外側の脛骨プラトー面の保護されない領域は鋸で切断され、いずれも組織分析のために脱石灰されパラフィンに包埋されるか、あるいは脱石灰なしでメチルメタアクリレートに包埋された。いくつかの対側性関節は手術された関節と同じように処置され対照組織として評価された。
放射線写真
最初の手術、注入、および犠牲に先立ち放射線写真が撮影された。
結果と討議
3ヶ月での犠牲に際し、すべての手術された関節(グループ1および2、賦形剤のみ、および+細胞)は線維症で滲出していた。滲出範囲の指標としての滑液の量、軟骨スコア、および滑車溝を拡大する軟骨下変化または骨棘の指標としてのTRDが下記の表4で示される。
【0033】
【表4】

【0034】
すべての手術関節は骨棘の形成を示した。
MSCsで処置された6個の膝のうち4個では、骨棘形成は低かった。これらのヤギの関節の他の部位での骨棘の形成も、ヒアルロナンのみに露出した膝と比べた時には低かった。すべての場合において、後部内側脛骨プラトー面では激しい骨棘形成が存在した。しかしMSCsに露出された膝で新しく形成された表面はより滑らかであるように見え、賦形剤のみのヤギの3頭のうち2頭の場合にこの部位で血腫が認められた。G165(MSCsおよび賦形剤)の場合、骨棘は半月状構造で上回る多量の硬い石灰質化組織(31.2mm×41.2mm×23.65mm)としてそれ自身を明示した。すべての対側性関節は外観上正常であり、犠牲の際にも滲出は示さなかった。
【0035】
6頭の「+MSC」ヤギすべてにおいて、内側脛骨プラトー面の露出部分のいくつかを覆う「未成熟半月」の外観を持つ組織が存在し、その内3頭の場合はこの組織は組織化されていた。図1(A)、1(B)、および1(C)はそれぞれG151、G154およびG163の修復組織の外観と位置を示している。これらの場合、新しく再生された組織は変更された機械的環境の故で関節内でいく分後ろの位置を占めていた。組織がもっとも組織化され関節の後部ではなかった2頭の例(G154およびG163)では、中央内側顆の軟骨にいくらか保護され、また大腿顆および溝で骨棘の形成が少ないように見え、従い変形性関節症がひどくないことを示している。G151の場合は、同じく形成された障害がずっと小さく何らかの保護があるように見えた。これらの場合、滲出の度合とTRDでの変化は最小であった(表4)。かくして未成熟半月状組織は内側顆と内側脛骨プラトー面の対向する面をクッションで和らげる領域に再生され、これらの関節での変更された機械的負荷の結果として変形性関節症の進行から関節を保護した。
【0036】
一事例(G166)においては、修復組織はそれが内側脛骨プラトー面のあまりにも後部に形成されたために関節面を保護しなかった。図2はG151とG154(下部パネル)での半月状組織により産出された保護の程度を示している。軟骨損傷は賦形剤のみの関節(図2、上部パネル)で見出されたものと比較すると、MSCsと共に注入されたこれらの関節では著しく少なかった。内側顆の内側面での骨棘の形成も「賦形剤のみ」のヤギと比較するとこれらのMSC注入関節では著しく少なかった。限定された線維性で貧弱に組織化された半月修復が関節の前部面での3頭の「賦形剤のみ」のヤギの2頭で観察された(図2)。いずれの場合でも「+細胞」グループで観察されたと同じ位有意である組織化の塊または度合は存在せず、また軟骨スコアで示されたような関節の明らかな保護もなかった(図4)。
【0037】
前記の結果は、結合内側半月切除とACL切開後6週でのヤギ関節性後膝関節に注入された自己由来間葉幹細胞が、注入後6週に犠牲にされた6頭のヤギの4頭の関節で半月状組織の産生を刺激したことを示している。賦形剤のみを注入した3頭のヤギの関節では、類似の組織は観察されなかった。
【0038】
半月状組織が観察された関節では、関節面でのヒアリン軟骨の進行性破壊の進行が関節面のグロススコアリングに基づき減速された。すなわち、間葉幹細胞の注射は関節軟骨の急速な破壊を予防した。この作用は賦形剤のみの対照関節では観察されなかった。他の変化、関節滲出、および拡大もMSC注入グループでは減少し、これは間葉幹細胞処置の予防作用と一致するものであった。これらの観察は、間葉幹細胞をヤギ後膝関節の関節炎関節に注入した時に、それが治療効果を持つのに十分な期間関節に保持されることを示している。ここで要約された結果として、注入間葉幹細胞は関節を安定させ、対照関節が観察された進行性変性に対し関節面を保護した。
【0039】
3ヶ月での6頭の内4頭のヤギで、また、6ヶ月での9頭のうち7頭のヤギで創出された半月状組織はヒアリン状外観を持つようにいく分組織化された(図3(C))。HAのみを注入された3ヶ月の対照ヤギの関節では類似の組織は観察されなかった。しかし6ヶ月の対照関節では滑液の増殖が認められた(図3(A))。この組織は非安定化変形性関節症の関節の体重支持領域の後部で発見された。
【0040】
組織化半月状組織が観察されたこれらの関節では、関節面での軟骨の進行性破壊は関節面のグロススコアリングに基づき減速された。図3(B)は全表面にわたる関節軟骨の完全な退化とその領域への骨棘の再植民を伴なう6ヶ月の対照ヤギの内側顆の外観を示す。この面の保護はMSCsに露出された試験関節で認められた(図3(D))。この作用は賦形剤のみの対照関節では観察されなかった。関節滲出、大腿顆での骨棘の形成および関節拡大などの変化はMSC処置の保護作用と一致して減少した。
【0041】
蛍光顕微鏡法による3ヶ月での組織化半月新組織の試験は、組織の表面でGFP正の細胞の存在を示した(図4(B)と4(C))。後半月状組織の免疫組織化学染色はタイプIIコラーゲン正であったより丸みのある細胞と共に密集した細胞タイプIコラーゲン正線維状ネットワーク(図示していない)を誘導した(図4(D)乃至4(F))。
【0042】
6ヶ月の動物では、軟骨表面スコアに基づく損害の範囲は表5で示されるように、間葉幹細胞を受けたものよりも対照ヤギでより大きい。
【0043】
【表5】

【0044】
本発見の一つの適用は対向する骨または骨軟骨面の間で半月組織を再生することにより疼痛を減少させることである。
前記結果のもう一つの適用は関節置換の必要性を未然に防ぎあるいはそれを除くことにある。更にもう一つの適用は損傷したまたは疾病の関節での炎症を弱め、かくして関節の疼痛を減少し関節の機能を回復することである。
実施例3
本実施例はヒアルロナンナトリウムの関節内注入またはヒアルロナンナトリウムに懸濁されたMSCsの関節内注入(HA+MSC処置グループ)を受けた3ヶ月のヤギの内側中央顆の組織的分析を記載する。HA処置ヤギ(n=3、左側パネル)およびHA+MSC処置ヤギ(n=6、中央および右側パネル)からの中央内側顆の横径切片が図5で示される。
【0045】
処置済み対照動物の膝関節から取られた遠位大腿が組織学的に試験された。3ヶ月で犠牲にされたヤギのすべての術後関節からの中央内側顆の横径切片が示される。これらの動物の対側性関節からの切片はすべて組織学的に正常であった。
【0046】
3個のHA処置関節では、いくつかの構造変化が明らかであった。これらは(1)軟骨下骨板の肥厚化、(2)海綿質の再組織化、(3)内側骨棘の形成、および(4)軟骨層の原線維化を含んでいた。
【0047】
骨棘はとりわけ対照グループで顕著であり(図5、左側パネル)、これらは矢印でマークされた。処置グループでは、半月再生の証拠があり(図5、中央パネル)、また顆がより対称的外観を持った場合にこれらの関節と関連する骨棘形成が著しく少なく、それは顆が異常な機械的力にさらされることが少なかったことを示唆している。6頭の内2頭の処置動物からの顆は著しい骨棘形成の証拠を示していた(図5、右側パネル、矢印でマークしたもの)。これらの関節では、新しい半月組織の形成の証拠は少なかった。
【0048】
関節層内の障害はHA処置グループで際立っており、深い裂(図5、左パネル、頭部)としてあるいは基質染色の損失の侵食(図5、左パネル、底部)として見ることができる。6頭の内4頭の処置動物では、軟骨層の損傷は少なかった(図5、中央パネル)が、一部、表面染色の損失があり(図5、中央パネル、頭部から2番目)、またいく分表面での原線維化もあった(図5、中央パネル、頭部より3番目)。更に6頭の内2頭の処置動物では裂形成(図5、右パネル、頭部)および侵食(図5、右パネル、底部)を含む軟骨への著しい損傷があり、これらの関節では殆んど再生が行われなかったことを示していた。
【0049】
軟骨面のすぐ下の骨領域(軟骨下板)では、いくつかの変化が明らかであった。未処置グループ(図5、左側パネル)では、より強い染色で見られるように、板の肥厚化の証拠が存在した。これは左側パネルの頭部イメージを例えば中央パネルの頭部イメージと比較することにより見ることができ、ここでは板の厚みの差が明らかである。加えて海綿質内での変化が存在し、それは処置グループ(図5、中央および右側パネル)と比べて未処置グループ(図5、左側パネル)で小柱がいずれもより厚く密であることを示唆していた。処置グループの内6頭の内2頭の動物では、かなりの骨の変化があった(図5、右側パネル)。前に記載の通り、これらの動物は他のものに比べて新半月組織の形成が少なかった。
実施例4
〈前置き〉
本実験の目的は、ヤギの膝損傷のモデルで不適合の供与者から誘導されたMSCsの投与の作用を示すことであった。この場合、後膝関節に対する損傷はACL切開なしで完全な内側半月切除により創り出され、それは変形性関節症に類似した関節での変性変化を起こすことを示した手順であった。免疫抑制療法は与えられなかった。
〈方法〉
研究設計
研究に使用された動物は去勢された雄ウェスタンクロスヤギ(n=20)で、 Q熱、ブルセラ症、ヤギ関節炎脳炎に罹患していないことが確認された。ヤギは年齢で異なっていない4グループに任意抽出された。全片側内側半月切除が行われ、2週の回復期の後、動物は強制運動訓練を受けた。術後の関節は手術手続き後1週または6週のいずれかでヒアルロナントリウム(4mg/ml)5mlでの10同種異系MSCsの懸濁液の注入により処置された。同種異系供与者細胞の3個の調製物が受容者動物の間で無作為に分配された。対照動物は細胞なしでヒアルロナンナトリウム5mlを受けた。研究設計は表6で要約される。
【0050】
【表6】

【0051】
運動訓練は注入後2週に開始し、手術手続きに続く12週での犠牲まで維持された。最初の手術および犠牲の前まで両後膝関節の頭側から尾側および外側の放射線写真が撮影された。
細胞の調製
冷凍保存された形質導入同種異系ヤギMSCsを含む小びんが37℃で解凍されhMSC培地で洗浄された。細胞は5分1500rpmおよび20℃で遠心され、PBS10mlに再懸濁された。細胞懸濁液50mlがトリパンブルーを用いる生存細胞数の決定のために除かれた。第2回目のPBS洗浄(20ml)の後、10×10細胞が50ml滅菌試験管でペレット化され12ml注射器と18ゲージ針を用いてハイアラーチンV(4mg/ml)に再懸濁された。
注入
術後膝関節への細胞の注入前に、ヤギは体重測定され血液サンプルが血漿を得るために収集された。膝の周りの領域は滅菌され、70−90度の屈曲で置かれ、滑液を関節腔全体に循環させるために20回屈曲と伸展を繰返された。できるだけ多量の液が近位の滑車溝から吸引された。18ゲージ針が大腿の上顆、半月/脛骨プラトー面およびそれらの連続により形成される切痕により形成される三角を通じて膝蓋靭帯の内側端部の後方に挿入された。細胞懸濁液を含む注射器は針を装着され、細胞懸濁液は関節包に注入された。関節は20回屈曲伸展され、ヤギは麻酔がさめるまで約10分腹臥の姿勢を保たれた。動物は回復して正常な呼吸の徴候が見られた時に畜舎に連れていかれた。ヤギは次いで放牧に戻された。
運動
運動訓練は外周28.6m、内周16.3mの円形トラックで12回早駆けで構成された。これは1日1回、週5回で実行された。
組織収集
術後関節と対側関節が股関節の関節離断で収穫され、写真撮影され巨視的変化を評価された。関節は次いでホルマリンで固定され、写真撮影され、格付けスコアを確認し、また骨棘の存在を確認するために固定後に再試験された。
〈結果〉
犠牲にされた関節の全体評価は、同種異系MSCsで処置された関節の後内側区画と関連する修復組織の存在を示した(図6)。この修復組織は事実上ヒアリンであるように見え、脛骨プラトー面から分離され、そのため支持面が確立された。対照動物(ヒアルロナンナトリウムのみで処置されたもの)はこの部位の滑液増殖の徴候を示し、その部位は関節面への最小の伸展で一般的に近位脛骨に付着していた。
〈結論〉
これらの観察は、同種異系MSCsの懸濁液の直接注入による半月切除膝の処置が新半月組織の急速な組織化と軟骨保護の可能性に帰着することを示唆している。関節腔への同種異系MSCsの直接注入は、従って例えば半月障害の結果としての破壊された関節の処置に適用することができる。
【0052】
すべての特許、(公開特許出願を含む)公開情報およびデータベースアクセッション番号の開示は、あたかも各特許、公開情報およびデータベースアクセッション番号が特異的かつ個別的に引用例として組み込まれたように同じ範囲で引用例としてここに組み込まれる。
【0053】
しかし本発明の範囲は、ここに記載された特異的な実施例に限定されるものではないことは理解されるべきである。本発明は特に記載されたもの以外にも実施することができ、しかもなお前記請求項の範囲内にある。
【0054】
[請求項1] 動物の関節を修復するための医薬組成物の調製のための同種異系間葉幹細胞および薬理許容担体の使用であって、
ここで前記医薬組成物は、足場の非存在下で関節における半月組織を修復するための、有効量の同種異系間葉幹細胞を含み、そしてここで前記間葉幹細胞は半月組織への分化または半月組織の産生を刺激する、使用。
【0055】
[請求項2] 前記薬理担体がヒアルロナンであることを特徴とする請求項1記載の使用。
[請求項3] 前記関節が膝、肩関節、および側頭顎関節より成るグループから選択されることを特徴とする請求項1記載の使用。
【0056】
[請求項4] 半月損傷によって損傷を受けた部位において動物の変形性関節症を処置するための医薬組成物の調製のための同種異系間葉幹細胞および薬理許容担体の使用であって、ここで前記医薬組成物は、足場の非存在下で半月損傷によって損傷を受けた部位において動物の変形性関節症を処置するための、有効量の同種異系間葉幹細胞を含む、使用。
【0057】
[請求項5] 前記担体がヒアルロナンであることを特徴とする請求項4記載の使用。
[請求項6] 前記関節が膝、肩関節、および側頭顎関節より成るグループから選択されることを特徴とする請求項4記載の使用。
【0058】
[請求項7] 半月損傷によって損傷を受けた部位において動物の関節の炎症を弱めるための医薬組成物の調製のための同種異系間葉幹細胞および薬理許容担体の使用であって、ここで前記医薬組成物は、足場の非存在下で関節の炎症を弱めるための、有効量の同種異系間葉幹細胞を含む、使用。
【0059】
[請求項8] 前記薬理許容担体が生理食塩水であることを特徴とする、請求項7記載の使用。
[請求項9] 前記薬理許容担体がヒアルロナンであることを特徴とする請求項7記載の使用。
【0060】
[請求項10] 前記関節が膝、肩関節、および側頭顎関節より成るグループから選択されることを特徴とする請求項7記載の使用。
[請求項11] 動物の関節の半月組織を再生するための医薬組成物の調製のための同種異系間葉幹細胞および薬理許容担体の使用であって、ここで前記医薬組成物は、足場の非存在下で半月組織を再生するための、有効量の同種異系間葉幹細胞を含み、そしてここで前記間葉幹細胞は半月組織へ分化するかまたは半月組織の産生を刺激する、使用。
【0061】
[請求項12] 前記医薬組成物が前記関節の関節腔へ注入されるものであることを特徴とする請求項11記載の使用。
[請求項13] 前記薬理担体がヒアルロナンであることを特徴とする請求項11記載の使用。
【0062】
[請求項14] 前記関節が膝、肩関節、および側頭顎関節より成るグループから選択されることを特徴とする請求項11記載の使用。
[請求項15] 動物の損傷関節を安定させるための医薬組成物の調製のための同種異系間葉幹細胞の使用であって、ここで前記医薬組成物は足場なしに関節腔に注入されるために調製され、そしてここで前記間葉幹細胞は半月組織へ分化するかまたは半月組織の産生を刺激して、損傷した半月組織を再生もしくは修復する、使用。
【0063】
[請求項16] 動物の関節の軟骨を保護するための医薬組成物の調製のための同種異系間葉幹細胞の使用であって、ここで前記医薬組成物は、足場の非存在下で関節の軟骨を保護するための、有効量の同種異系間葉幹細胞を含み、そしてここで前記間葉幹細胞は半月組織へ分化するかまたは半月組織の産生を刺激して、損傷した半月組織を再生もしくは修復する、使用。
【0064】
[請求項17] 前記間葉幹細胞が薬理許容担体を含むことを特徴とする請求項16記載の使用。
[請求項18] 動物の関節痛を弱めるための医薬組成物の調製のための同種異系間葉幹細胞の使用であって、ここで前記医薬組成物は、足場の非存在下で動物の関節痛を弱めるための、有効量の同種異系間葉幹細胞を含み、そしてここで前記間葉幹細胞が半月組織に分化するかまたは半月組織の産生を刺激する、使用。
【0065】
[請求項19] 前記医薬組成物が前記関節に薬理許容担体を含むことを特徴とする請求項18記載の使用。
[請求項20] 関節の半月損傷によって損傷を受けた部位において軟骨下骨硬化を予防し、または弱めるための医薬組成物の調製のための同種異系間葉幹細胞の使用であって、ここで前記医薬組成物は、足場の非存在下で軟骨下骨硬化を予防し、または弱めるための、有効量の同種異系間葉幹細胞を含み、そしてここで前記間葉幹細胞は半月組織に分化するかまたは半月組織の産生を刺激する、使用。
【0066】
[請求項21] 関節の半月損傷によって損傷を受けた部位において骨棘の形成を予防し、または弱めるための医薬組成物の調製のための同種異系間葉幹細胞の使用であって、ここで前記医薬組成物は、足場の非存在下で骨棘の形成を予防し、または弱めるための、有効量の同種異系間葉幹細胞を含み、そしてここで前記間葉幹細胞は半月組織に分化するかまたは半月組織の産生を刺激して、損傷した半月組織を再生もしくは修復する、使用法。
【0067】
[請求項22] 関節の半月損傷を修復するための医薬組成物の調製のための同種異系間葉幹細胞の使用であって、ここで前記医薬組成物が足場の非存在下で前記関節での前記半月損傷を修復するための有効量の間葉幹細胞を含み、そしてここで前記間葉幹細胞は半月組織に分化するかまたは半月組織の産生を刺激する、使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の関節を修復するための医薬組成物の調製のための同種異系間葉幹細胞および薬理許容担体の使用であって、
ここで前記医薬組成物は、足場の非存在下で関節における半月組織を修復するための、有効量の同種異系間葉幹細胞を含み、そしてここで前記間葉幹細胞は半月組織への分化または半月組織の産生を刺激する、使用。
【請求項2】
半月損傷によって損傷を受けた部位において動物の変形性関節症を処置するための医薬組成物の調製のための同種異系間葉幹細胞および薬理許容担体の使用であって、ここで前記医薬組成物は、足場の非存在下で半月損傷によって損傷を受けた部位において動物の変形性関節症を処置するための、有効量の同種異系間葉幹細胞を含む、使用。
【請求項3】
動物の関節の軟骨を保護するための医薬組成物の調製のための同種異系間葉幹細胞の使用であって、ここで前記医薬組成物は、足場の非存在下で関節の軟骨を保護するための、有効量の同種異系間葉幹細胞を含み、そしてここで前記間葉幹細胞は半月組織へ分化するかまたは半月組織の産生を刺激して、損傷した半月組織を再生もしくは修復する、使用。
【請求項4】
動物の関節痛を弱めるための医薬組成物の調製のための同種異系間葉幹細胞の使用であって、ここで前記医薬組成物は、足場の非存在下で動物の関節痛を弱めるための、有効量の同種異系間葉幹細胞を含み、そしてここで前記間葉幹細胞が半月組織に分化するかまたは半月組織の産生を刺激する、使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−210437(P2012−210437A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−141003(P2012−141003)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【分割の表示】特願2001−577964(P2001−577964)の分割
【原出願日】平成13年4月24日(2001.4.24)
【出願人】(500430486)オシリス セラピューティクス,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】