説明

動物へのダニの侵襲の全身的防除における5−クロロ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−4−(4,5−ジシアノ−1H−イミダゾール−2−イル)−3−メチル−1H−ピラゾールの使用

本発明は、ハロアリールピラゾール化合物の5マダニ忌避性組成物としての使用、及び、動物の体表面上のマダニ類を防除するための特定のハロアリールピラゾール化合物の新規用法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マダニ類を阻止するためのハロアリールピラゾール化合物の使用、及び、動物の体表面上のマダニ類を防除するための特定のハロアリールピラゾール化合物の投与計画に関する。
【背景技術】
【0002】
忌避剤及び阻止剤(deterrent)は、概して、有害な又は厄介な節足動物が自分たちを引きつける領域(例えば、動物の皮膚など)に接触すること又はそのような領域を刺すこと若しくは摂食することを阻止するという任務を有している。この効果により、忌避活性を有する化合物を用いて、上記節足動物により引き起こされる疾患又は伝染する疾患を予防することができる。節足動物は、特に、昆虫類、ダニ(mite)類及びマダニ(tick)類である。
【0003】
マダニ類は、ダニ目に属する。マダニ類のIxodidae種及びArgasidae種は、経済的に最も重要であり、重要な種として、Boophilus spp.、 Rhipicephalus spp、 Ixodes spp、 Hyalomma spp.、 Amblyomma spp.、 Haemaphysalis spp.、 Dermacentor spp.、 Anocentor spp.、 Rhipicentor spp.、 Margaropus(Ixodidae)及びArgas spp.、 Otobius spp.、 並びに、 Ornithodoros spp.(Aragasidae)などを包含し、これらは、好ましくは、ウシ、ブタ、ヒツジ及びヤギなどの家畜類、ニワトリ、シチメンチョウ及びガチョウなどの家禽類、ミンク、キツネ、チンチラ及びウサギなどの毛皮動物、並びに、ネコ、イヌ及びウマなどのコンパニオン動物などを包含する温血動物を侵襲し、さらに、ヒトも侵襲する。
【0004】
ダニの侵襲、即ち、マダニ類による侵襲は、皮革、羊毛又は羊皮の質の低下、肉/組織の質の低下、体重増加の低減及びミルク生産の低減に起因して、さらには、マダニ類を保持している動物が結果として死亡することにさえ起因して、家畜における重大な経済的損失の原因となり得る。
【0005】
マダニ類は、世界中で、ヒト及び動物の多くの疾患の伝染と蔓延に関与している。それらは、細菌性疾患(例えば、リケッチア症)、ウイルス性疾患及び原虫症のキャリヤーであり、ダニ麻痺症(tick-paralysis)及びダニ中毒症(tick-toxicosis)を引き起こす。1匹のマダニでさえ、摂食中に宿主動物の体内に唾液を浸透させることにより、麻痺を引き起こし得る。
【0006】
マダニ類に起因する疾患は、通常、数頭の宿主動物に侵襲するマダニ類により伝染する。そのような疾患(例えば、バベシア症、アナプラズマ症及びタイレリア症など)は、全世界において、多くの家畜の死又は障害の原因となっている。温帯気候の多くの国では、マダニ類が、野生動物からヒトに慢性的に有害なライム病の原因因子を移す。
【0007】
マダニの動物への侵襲による有害な作用はずっと以前から知られており、また、マダニ防除プログラムの使用では極めて大きな進歩が成されているが、これまで、そのような寄生虫を防除又は排除するための完全に満足のいく方法は見いだされておらず、さらに、マダニ類は、しばしば、化学的な活性成分に対して抵抗性を発達させてきた。
【0008】
かくして、ダニ類の寄生虫、特に、コンパニオン動物及び家畜を苦しめるマダニ類を防除するための、低薬量で有効であり、生物学的作用において選択性を有しており且つ毒性が低いプログラムが、引き続き求められている。
【0009】
EP−412849では、殺虫活性(pesticidal activity)を有する特定のアリール−1,2,3トリアゾール類及びアリールピラゾール類が開示されており、そこでは、イミダゾール(イミダゾリン)基は、その2位でトリアゾール環又はピラゾール環に直接的又は間接的に結合している。欧州特許第EP−412849に開示されている一部の化合物については、動物への経口投与後の外部寄生虫に対する全身的な作用が記載されている。
【0010】
宿主動物への7.5〜15mg/kgの投与量での特定のハロアリールピラゾール類のマダニ類(Boophilus及び複数の宿主を有するマダニ種)の防除における効力が、Research disclosure 380, P802(No 38028)“Extended Efficacy Spectrum of Azole Pesticides” Research disclosure 380, P802(No 38028)に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、動物における、特に、コンパニオン動物における、特に、イヌにおける、ダニ寄生虫、特に、マダニ類の防除方法を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、従って、第一の態様において、マダニ類を阻止することにより動物へのマダニの侵襲を処置するための薬物を製造するための、式(I):
【0013】
【化2】

[式中、
Arは、2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル又は2−ニトロ−4−トリフルオロメチルフェニルであり;
Aは、S(O)、−CH=CH−、O又はNHであり;
WはNであり且つZはCRであるか、又は、WはCRであり且つZはN又はCRであり;
は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、ハロゲン又はR20S(O)であり;
及びRは、水素、アルキル、アルケニル若しくはアルキニル(ここで、これらの各々は、場合により置換されていてもよい)、アリール、シアノ、ハロゲン、ニトロ、YR20、S(O)NR、CHO、NR又はCYNRであり;
は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアルケニル、アシル又は場合により置換されていてもよいアルコキシカルボニルであり;
は、水素、アルキル、場合により置換されていてもよいアミノ又はハロゲンであり;
及びRは、同一であるか又は異なっていて、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、アシル又はアリールであり;
20は、場合により置換されていてもよいアルキルであり;
Yは、O又はSであり;
mは、0、1又は2であり;
pは、0又は1であり;
nは、0、1又は2であり;
及び
qは、0、1又は2であり;
また、ここで、(a)アルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基は、いずれも、1〜4個の炭素原子からなり;(b)アルケニル基又はアルキニル基は、いずれも、2〜5個の炭素原子からなり;(c)置換されているアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基又はアルキニル基は、いずれも、ハロゲン、YR20、ジハロシクロプロピル、シアノ、ニトロ、場合により置換されていてもよいアミノ、アシルオキシ及びアリールから選択される同一であるか又は異なっている1つ以上の基で置換されており;(d)アリール基は、いずれも、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルチオ、ハロアルキルチオ、ハロアルキルスルホニル、シアノ又はニトロで場合により置換されていてもよいフェニルであり;(e)アシル基は、いずれも、1〜4個の炭素原子からなるアルカノイルであるか、又は、アルキルスルホニル若しくはハロアルキルスルホニルであり;及び、(f)場合により置換されていてもよいアミノ基は、いずれも、式NRで表されるが、但し、WがCRであり且つZがCRであり、n及びpが共に0である場合、Rはアルキルではない]
で表されるハロアリールピラゾール化合物の使用に関する。
【0014】
式(I)で表されるハロアリールピラゾール化合物は、EP−0412849に記載されている。それらの化合物の調製方法も、EP−0412849に開示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
マダニ類を阻止するための非治療的な方法において使用する式(I)のハロアリールピラゾール化合物の卓越した代表的な化合物は、式(II):
【0016】
【化3】

で表される5−クロロ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−4−(4,5−ジシアノ−1H−イミダゾール−2−イル)−3−イソプロピル−1H−ピラゾールである。
【0017】
この化合物は、欧州特許第EP−0412849では、化合物22cとして示されている。この化合物の合成については、EP−0412849の実施例22bで開示されている。本出願の残りの部分では、この化合物のことは、「化合物22c」と称する。
【0018】
忌避剤及び阻止剤は、有害な又は厄介な節足動物が自分たちを引きつける領域(例えば、動物の皮膚など)に接触すること又はそのような領域を刺すこと若しくは摂食することを阻止するという任務を有している。本発明の目的は、この忌避効果が、宿主動物に当該アリールピラゾール化合物を前もって投与することにより達成できるということである。該化合物の投与後の阻止効果により、当該寄生虫、特に、マダニ類に対する抗付着性及び抗摂食性が得られる。本発明による阻止効果(忌避効果)は、実施例で示されている。生存しているが充血していないマダニは、対照群の周囲環境に比較して、本発明化合物で処理したイヌの囲いの中で有意に多く見いだされた。
【0019】
マダニ類を阻止することの利点は、当該化合物が、標的の寄生虫に対して非常に有効でありながら、同時に、宿主温血動物に対しては毒性が低いということである。これは、該化合物の活性が、標的寄生虫の死にのみ基づいているのではなく、標的寄生虫が宿主生物に付着する前に、又は、宿主生物を刺すか、摂食するか若しくは他の何らかの方法で危害を加える前に、(忌避剤として、又は、阻止剤として)標的寄生虫を回避することによる防御にも基づいているからである。阻止性化合物(忌避性化合物)の存在は、寄生虫が、付着若しくは摂食することなく、処理された動物から早急に離れるか、又は、寄生虫が、処理された宿主動物を全く侵襲しなくなるような方法で、寄生虫を阻害するように見える。
【0020】
代替的な実施形態では、マダニ類が動物を侵襲するのを阻止するために、式(I)の化合物 非治療的な方法で使用することができる。
【0021】
好ましくは、式(I)の化合物を、全身的に投与する。全身的な投与は、寄生虫が存在している部位から空間的に離れた動物の部位への該組成物の投与であり、該活性化合物は、宿主動物の血液、体液又は組織(例えば、皮膚)と一緒に寄生虫に接触し、該寄生虫に対して活性を示すことが可能となる。全身的投与は、寄生虫を防除する場合には動物の体表面で摂食している寄生虫を殺すのに充分な薬剤が組織又は体液中に存在し得るような、又は、寄生虫を阻止するのに充分な薬剤が組織又は体液中に存在し得るような、例えば、経口投与、注射による投与、インプラントによる投与、又は、他の手段による投与、例えば、スポットオン若しくはポアオンなどによる経皮的な投与である。
【0022】
該化合物は、好ましくは、経口用製剤に含ませて投与する。用語「経口用製剤」は、活性成分が、口を介して動物に投与するのに適した製剤又は生成物として製剤されていることを意味する。そのような生成物又製剤としては、限定するものではないが、錠剤、カプセル剤、溶液剤、ゲル剤、ペースト剤、口腔スプレー剤、口腔用製剤(buccal formulation)、散剤、顆粒剤、チュアブルトリート(chewable treat)又は該活性成分を含んでいる動物用飼料などを挙げることができる。そのような製剤には、製薬上許容される補助剤を含有させる。
【0023】
製薬上許容される補助剤は、当技術分野では知られており、例えば、標準的な教本(例えば、Remington: The science and Practice of Pharmacy, 20th Edition(2000), Chapter 45)に記載されている。経口用固体製剤、例えば、慣習的な錠剤は、一般に、活性成分と、粉末の量を都合の良い範囲にまで増量して圧縮性を改善するための希釈剤、圧縮された粉末をつなぎ合わせるための結合剤、並びに、高密度化及び錠剤金型からの取り出しを補助する滑沢剤を含んでいる。それらは、さらに、崩壊及び溶解を向上させるための崩壊剤や、安定化剤、着色剤及び矯味矯臭剤も含み得る。錠剤は、多くの場合、外観若しくは風味を改善するか、又は、溶解特性を変えるために、コーティングを施す。錠剤は、速く溶解するか又はゆっくりと溶解するように設計することが可能であり、また、薬物の実際の容積及び圧縮率に応じて、その大小にかかわらず設計することが可能である。それらは、咀嚼できるように調製することも可能であり、又は、舌下若しくは頬袋内で溶けるように調製することも可能である。
【0024】
慣習的な液体製剤は、通常、活性成分の溶液、懸濁液又はエマルションであり、適切な希釈剤、溶媒、矯味矯臭剤及び着色剤を加えて風味がよい投与形態を形成している。
【0025】
式(II)で表される化合物22c(5−クロロ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−4−(4,5−ジシアノ−1H−イミダゾール−2−イル−3−メチル−1−Hピラゾール)が、マダニ類の防除を向上させるために、体重1kg当たり4mgの初回量で投与し、その後、体重1kg当たり2mgの投与量で1週間に一度投与する投与計画で全身的に投与されたときに、マダニ類に対して有効であるということがわかった。この投与体系は、動物へのマダニの侵襲を防除するのに有効であり且つ宿主動物に対しては安全であるということが立証された。4mg/kgの初回量は、2つの用量に分けて2mg/kgとし、2日連続して投与することも可能である。
【0026】
かくして、本発明は、第二の態様において、動物の体重1kg当たり4mgの初回量で動物に経口投与し、その後、動物の体重1kg当たり2mgの投与量で1週間に一度投与するための、マダニ類防除用薬物を製造するための、5−クロロ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−4−(4,5−ジシアノ−1H−イミダゾール−2−イル−3−メチル−1−Hピラゾールの使用に関する。
【0027】
化合物22cは、マダニの侵襲を受ける全ての動物種に対して、忌避剤として、上記のような投与計画で投与することができる。当該組成物を投与されるのは、家畜動物、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、ヤギ、実験室試験用動物、例えば、モルモット、ラット若しくはマウス、又は、特に、コンパニオン動物、例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット若しくはウマなどであり得る。好ましくは、該動物は、コンパニオン動物であり、さらに好ましくは、イヌ又はネコである。イヌが特に好ましい。
【0028】
一般に、本発明の組成物は、有効量の活性成分を含有する。ここで、有効量とは、毒性は示さないが、所望の防除効果又は阻止効果を提供するのに充分な量のことを意味する。そのような量は、標的動物の年齢、状態、体重及び種類に依存する。
【実施例】
【0029】
マダニ−化合物22cの効果
処理する前、及び、処理後2つの異なった時点で、それぞれ6匹のイヌからなる2つの群に、マダニ(Rhipicephalus sanguineus)を侵襲させた。第I群は、体重(bw)1kg当たり4mgの用量の化合物22cで経口的に処理した後、2mg/kg(bw)の用量で1週間に1回の処理を3回行った。第II群は、陽性対照として、処理しないままの状態においた。
【0030】
侵襲させた48時間後、72時間後又は120時間後に、マダニを取り除いて数えることにより、個々のイヌの寄生虫の量について評価した。マダニは、活力(死/生存)及びマダニの寄生状態(充血状態/未摂食状態;付着/遊離)に従って、分類した。
【0031】
材料及び方法
(研究対象動物)
種類: 家イヌ
数: 12
健康状態: イヌは、研究の開始時点で健康であった。これは、第−2日に獣医が確認した。全てのイヌは、該研究の前の少なくとも8週間は、殺ダニ剤/殺虫剤で処理しなかった。
【0032】
(動物の住居)
研究対象動物は、周囲の環境から寄生虫を集めることができるように、家の中で、コンクリートの床及び特別な休息場を有する個別の囲いの中で飼った。研究は、“Testing and evaluation of the efficacy of antiparasitic substances for the treatment and prevention of tick and flea infestation in dogs and cats”(EMEA/CVMP/005/00)についての現在のガイドラインに従って実施し、それにより、当該イヌには、研究条件下での最大の快適さを与えた。
【0033】
(寄生虫の侵襲)
表1に記載してあるように、Rhipicephalus sanguineusの実験室系統(50〜100匹の未摂食成虫;性比 1:1)をイヌに実験的に侵襲させた。マダニを当該動物の背中に直接適用した。寄生虫が宿主の体全体に行きわたるようになるまでの時間、当該イヌは、鎮静剤により安静にさせておいた。
【0034】
Rhipicephalus sanguineusのマダニは、第−2日、第+5日、第+12日、第+16日及び第+23日に侵襲させた。
(薬品の明細)
治験薬品: 化合物22c錠剤
活性成分: 化合物22c 10.0%(w/w)
投与量: 体重1kg当たり4mg − 初回量;
体重1kg当たり2mg − 維持量;
経口投与
【0035】
(処理)
処理は、以下に記載してあるスケジュールに従って行った。
【0036】
【表1】

【0037】
(投与経路及び投与方法)
治験薬品は、嚥下を誘発するように、舌の裏側に直接投与した。用量の計算には体重を用いた。使用した最も小さな単位は、錠剤の半分であった。錠剤には刻み目がついていなかったが、等しい片に割った。必要に応じ、当該用量は、錠剤の半分を単位とした。投与した用量を記録した。
【0038】
(評価)
(マダニの数についての評価)
処理したイヌが対照群のマダニにより交差汚染されるのを防ぐために、各評価は処理群のイヌから開始した。
【0039】
イヌの体表面上のマダニの評価は、第+2日、第+7日、第+14日、第+21日及び第+26日に行った。マダニの数は、最初の処理の48時間後に計数し、また、再侵襲の48時間後、72時間後又は120時間後に計数した。計数のために、当該動物から全てのマダニを取り除き、以下のカテゴリーにグループ分けした。
【0040】
【表2】

【0041】
(忌避されたマダニの評価)
化合物22cによる処理に起因して忌避されたマダニの数を評価するために、各侵襲のあとで、当該イヌの囲いから生存しているが付着していないマダニを毎日採集した。各群に関して、付着していないマダニの数(対照イヌ)と忌避されたマダニの数(処理されたイヌ)を決定するために、各評価日に採集したマダニの総数を求めた。
【0042】
(効力の計算)
効力の計算は、対照群と比較した、処理したイヌの体表面上のマダニの数の算術平均に基づいている。効力(%)を計算するために、以下の式(Abbotの式による)を使用する:
効力=100×(m−m)/m
対照群(m):宿主動物の体表面上で生存しているマダニの平均数
処理群(m):宿主動物の体表面上で生存しているマダニ(カテゴリー1〜3)又は充血して死亡しているマダニ(カテゴリー6)の平均数。
【0043】
両方の群の囲いから採集した付着していない生存マダニの数を、「Pearson asymptotic and exact Chi−Square−Test」を用いて統計的に比較することにより、忌避/阻止効果を決定した。この統計的な評価により忌避の有意性が示された場合、当該囲いから採集された遊離マダニは、効力の計算には考慮に入れなかった。
【0044】
結果
マダニ(Rhipicephalus sanguineus)に対する総体的な効力は、図1に与えてある。
【0045】
忌避効果は、図2に与えてある。
【0046】
RHIPIPCEPHALUS SANGUINEUSに対する効力
第+2日:
各イヌには、第−2日に、50匹のRhipicephalus sanguinesを侵襲させた。第0日に、処理群の各イヌに、4mg/kg(bw)の初回量を投与した。処理の48時間後に、マダニについて評価し、記録した。
【0047】
処理したイヌの囲いの中で、44匹の生存しているが充血していないマダニが見いだされたが、対照群の周囲環境では、生存している遊離マダニは1匹も見いだされなかった。統計的データにより、化合物22cの忌避効果が強く示唆される(p<0.0001)。忌避性は、防除のパラメータである。総体的な効力は93.8%であった。
【0048】
第+7日:
各イヌには、処理後、第+5日に、100匹のRhipicephalus sanguinesを侵襲させた。侵襲させてから48時間後に、記述されているように評価を行った。
【0049】
処理後第+2日と同様に、処理したイヌの囲いの中の生存している遊離マダニ(n=91)は、対照の囲いから採集された生存している遊離マダニ(n=11)に対して、有意に異なっていた。忌避性は、高い有意性を示した(p<0.0001)。総体的な効力は93.2%であった。
【0050】
第+14日:
各イヌには、一番あとの処理(第+7日)の後、第+12日に、80匹のRhipicephalus sanguinesを侵襲させた。侵襲させてから48時間後に、評価を行った。
【0051】
前記と同様に、処理したイヌの囲いの中の生存している遊離マダニ(n=60)は、対照の囲いから採集された生存している遊離マダニ(n=17)に対して、有意に異なっていた(p<0.0001)。このことは、忌避性についての仮説を裏付けるものである。処理群の囲いから採集された60匹の生存マダニは全て、肉眼的に損傷を受けていた。このことは、マダニは薬物と接触したが、宿主にしっかりと付着しておらず、宿主から離れたことを示している。総体的な効力は94.6%であった。
【0052】
第+21日:
各イヌには、一番あとの処理(第+14日)の48時間後、第+16日に、60匹のRhipicephalus sanguinesを侵襲させた。侵襲させてから120時間後(第+21日)に、マダニについての評価を行った。マダニを48時間よりも長い時間にわたり該薬物に接触させることにより効力が増大するかどうかということを調べるために、評価の時間を延ばした。前記と同様に、処理したイヌの囲いの中の生存している遊離マダニ(n=60)は、対照の囲いから採集された生存している遊離マダニ(n=20)に対して、有意に異なっていた(p<0.0001)。このことは、忌避性についての仮説を裏付けるものである。処理群の60匹の生存遊離マダニの内の59匹は、肉眼的に損傷を受けていた。このことは、宿主にしっかりと付着せずに該薬物に接触したことを示している。総体的な効力は99.4%であった。
【0053】
第+26日:
各イヌには、一番あとの処理(第+21日)の48時間後、第+23日に、60匹のRhipicephalus sanguinesを侵襲させた。侵襲させてから72時間後に、評価を行った。
【0054】
処理群の囲いから採集された35匹の生存している遊離マダニの内の34匹は、肉眼的に損傷を受けていた。このことは、それらが、宿主から効果的に忌避されたことを示している(p<0.0001)。総体的な効力は98.3%であった
総体的に、化合物22cは、マダニに対して予防活性を示し、付着と摂食を防止した(忌避性)。各侵襲後、処理したイヌの囲いから、生存はしているが肉眼的に損傷を受けた有意な数のマダニが採集されたが、このことは、マダニが宿主にしっかりと付着できなかったことを示している。自然の攻撃条件下では、これは、マダニに対する予防効果として認識されるであろう。
【0055】
Rhipicephalus sanguineusに対して、最初の処理の後、48時間以内に、94%の初期効力が達成された。投与後48時間での攻撃的侵襲(第16日;第23日)は、98%〜99%の範囲で防除された。投与の120時間後に侵襲させたマダニ(第5日;第12日)は、93%〜95%が防除された。Rhipicephalus sanguineusに関し、治療的なマダニの防除は、1週間に1回の投与スケジュールで試験期間(28日)を通して達成された。要するに、化合物22cは、Rhipicephalus sanguineusに対して非常に有効であった。
【0056】
総体的に、4mg/kg(bw)の初回量とその後の2mg/kg(bw)の1週間当たりの用量で投与した化合物22cは、充分に許容され、また、非常に優れた殺ダニ剤としての可能性とマダニ類の付着及び摂食を防止し得る可能性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】マダニ(Rhipicephalus sanguineus)に対する総体的な効力を示す図である。
【図2】忌避効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マダニ類を阻止することにより動物へのマダニの侵襲を処置するための薬物を製造するための、式(I):
【化1】

[式中、
Arは、2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル又は2−ニトロ−4−トリフルオロメチルフェニルであり;
Aは、S(O)、−CH=CH−、O又はNHであり;
WはNであり且つZはCRであるか、又は、WはCRであり且つZはN又はCRであり;
は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、ハロゲン又はR20S(O)であり;
及びRは、水素、アルキル、アルケニル若しくはアルキニル(ここで、これらの各々は、場合により置換されていてもよい)、アリール、シアノ、ハロゲン、ニトロ、YR20、S(O)NR、CHO、NR又はCYNRであり;
は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアルケニル、アシル又は場合により置換されていてもよいアルコキシカルボニルであり;
は、水素、アルキル、場合により置換されていてもよいアミノ又はハロゲンであり;
及びRは、同一であるか又は異なっていて、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、アシル又はアリールであり;
20は、場合により置換されていてもよいアルキルであり;
Yは、O又はSであり;
mは、0、1又は2であり;
pは、0又は1であり;
nは、0、1又は2であり;
及び
qは、0、1又は2であり;
また、ここで、(a)アルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基は、いずれも、1〜4個の炭素原子からなり;(b)アルケニル基又はアルキニル基は、いずれも、2〜5個の炭素原子からなり;(c)置換されているアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基又はアルキニル基は、いずれも、ハロゲン、YR20、ジハロシクロプロピル、シアノ、ニトロ、場合により置換されていてもよいアミノ、アシルオキシ及びアリールから選択される同一であるか又は異なっている1つ以上の基で置換されており;(d)アリール基は、いずれも、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルチオ、ハロアルキルチオ、ハロアルキルスルホニル、シアノ又はニトロで場合により置換されていてもよいフェニルであり;(e)アシル基は、いずれも、1〜4個の炭素原子からなるアルカノイルであるか、又は、アルキルスルホニル若しくはハロアルキルスルホニルであり;及び、(f)場合により置換されていてもよいアミノ基は、いずれも、式NRで表されるが、但し、WがCRであり且つZがCRであり、n及びpが共に0である場合、Rはアルキルではない]
で表されるハロアリールピラゾール化合物の使用。
【請求項2】
前記化合物が、5−クロロ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−4−(4,5−ジシアノ−1H−イミダゾール−2−イル−3−メチル−1−Hピラゾールであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記化合物を動物に全身的に投与することを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記化合物を動物に経口的に投与することを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記化合物を錠剤として動物に投与することを特徴とする、請求項1〜4に記載の使用。
【請求項6】
前記化合物をイヌ又はネコに投与することを特徴とする、請求項1〜5に記載の使用。
【請求項7】
前記化合物を、動物の体重1kg当たり4mgの初回量で投与し、その後、動物の体重1kg当たり2mgの投与量で1週間に一度投与することを特徴とする、請求項1〜6に記載の使用。
【請求項8】
動物の体重1kg当たり4mgの初回量で動物に経口投与し、その後、動物の体重1kg当たり2mgの投与量で1週間に一度投与するための、マダニ類防除用薬物を製造するための、5−クロロ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−4−(4,5−ジシアノ−1H−イミダゾール−2−イル−3−メチル−1−Hピラゾールの使用。
【請求項9】
5−クロロ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−4−(4,5−ジシアノ−1H−イミダゾール−2−イル−3−メチル−1−Hピラゾールを錠剤として投与することを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
5−クロロ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−4−(4,5−ジシアノ−1H−イミダゾール−2−イル−3−メチル−1−Hピラゾールをイヌに投与することを特徴とする、請求項8又は9に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−527868(P2007−527868A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537311(P2006−537311)
【出願日】平成16年11月3日(2004.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052763
【国際公開番号】WO2005/046656
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(394010986)アクゾ・ノベル・エヌ・ベー (31)
【Fターム(参考)】