説明

動物を含まない細胞培養方法

【課題】第一動物供与源の外因性成分の不在下における、動物の二倍体足場依存性細胞培養の方法、および該方法を実施するのに適した第一動物供与源の外因性成分を実質的に含まない細胞培養培地の提供。
【解決手段】
本発明は、第一動物供与源の外因性成分の不在下における、動物、好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞培養の方法、および該方法を実施するのに適した第一動物供与源の外因性成分を実質的に含まない細胞培養培地に関する。特に、本発明は、少なくとも1つ、より好ましくはいくつかの外因性動物非含有増殖因子を含む細胞培養培地に関する。本発明はまた、細胞を継代するために非動物供与源のトリプシン代替品を使用することを含み、本発明の培地中で、動物、好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞を培養する方法にも関する。本発明はさらに、ウイルス、ウイルスワクチン等の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一動物供与源の外因性成分の不在下における、動物、例えば哺乳動物の細胞培養、特に動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞培養の方法、および該方法を実行するのに適した第一動物供与源の外因性成分を実質的に含まない細胞培養培地に関する。特に、本発明は、少なくとも1つ、より好ましくは複数の外因性の動物非含有増殖因子を含む細胞培養培地に関する。このような培地は、動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞を、適切な血清を添加したその細胞型用の基礎培地と同等の性能で培養するのに特に適合される。本発明はまた、細胞を継代させるための非動物供与源のトリプシン代替物の使用を含む、動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞を本発明の培地中で培養する方法にも関する。本発明はさらに、ウイルス、ウイルスワクチン等を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
足場依存性細胞、特に二倍体足場依存性細胞は、大規模バイオプロセスでのワクチンおよび組換えタンパク質等の健康製品の製造のため、ヒト創傷の治療に使用される人工組織の生成のため、実験調査のため、in vitro毒物検査のため、新規薬剤のスクリーニングおよびテストのため等、幅広い方法において使用されている。
【0003】
従来、足場依存性細胞は、血清または血清の代替物として他の動物由来成分(ウシ血清アルブミン(BSA)またはタンパク質加水分解物等)を含む培地中で培養されている。血清または動物由来成分は、細胞継代および細胞低温保存においても使用される。血清は、代謝産物、ホルモン、ビタミン、鉄(トランスフェリン)、輸送タンパク質、接着因子(例えば、フィブロネクチン)、拡散および増殖因子の主要な供与源である。これは、in vitroでの多くの動物細胞培養の増殖のために必要とされている。さらに、血清は、pH変化、重金属イオンの存在、タンパク質分解活性、または内毒素等の多様な摂動および毒性作用に対する緩衝剤として作用する。アルブミンは、血清の主要なタンパク質成分であり、培養中の細胞の増殖および維持に寄与するいくつかの効果を発揮する。すなわち、これは一連の小分子のキャリアタンパク質として、および細胞にとって必須であるが非結合形態では毒性である脂肪酸の輸送体として作用する。
【0004】
二倍体足場依存性細胞は、常套的に、プラスチック表面、ガラス表面またはマイクロキャリア上で培養が行われる。細胞は、フィブロネクチン等の接着因子に接着して拡散する(F. GrinnelおよびM.K. Feld Cell, 1979, 17, 117-129)。トリプシンは、細胞継代の間の細胞剥離に使用される最もよくある動物由来成分の1つである(M. SchroderおよびP. Friedl, Methods in Cell Science, 1997, 19, 137-147;O.W. Mertens, Dev Biol Stand., 1999, Vol 99, pp 167-180)。これは、細胞の損傷を避けるために、細胞剥離後に血清またはダイズトリプシン阻害剤により阻害する必要がある。剥離後、新しい表面上に細胞を低密度で播種し、次の継代培養の前に増殖させてコンフルエントな細胞層を形成する。接着細胞を継代させる目的は、増殖させて、上記方法を実行するために十分な量の細胞を得ることである。
【0005】
これらの方法における血清および動物由来成分の使用に関連する様々な欠点、主にそれらのコスト、バッチ間の組成の変動、外来薬剤による高い汚染リスクとの関連性、および下流の処理において直面するその後の困難性(例えば、血清タンパク質または導入される動物由来タンパク質を除去するための精製)がある。さらに、上記したように、血清を含まない培地は足場依存性二倍体細胞に適さないことが報告されている(O.W. Mertens, Dev Biol Stand., 1999, Vol 99, pp 167-180;O.W. Merten, Dev. Biol. 2002, 101, 233-257)。
【0006】
足場依存性細胞培養、特に二倍体足場依存性細胞培養のために低血清または血清を含まないいくつかの培地調製物が開発されている(M. KanおよびI. Yamane, Journal of Cellular Physiology, 1982, 111, 155-162;S.P. Forestellら Biotechnology and Bioengineering, 1992, Vol 40, pp. 1039-1044)。このような培地に対する試みは満足いくものではなく、主な理由としては、形質転換されていない二倍体足場依存性細胞がいくつかの増殖因子およびホルモンを添加したどちらかといえば複雑な血清非含有培地を必要とし、またこのような細胞のための一般的な製造方法が少なくともバイオマス製造段階の間に血清を使用するためである(O.W. Merten, Dev. Biol. 2002, 101, 233-257)。さらに、これらの培地は、動物供与源の成分(BSA、タンパク質加水分解物、増殖因子、輸送タンパク質、アミノ酸、ビタミン等)をまだ含んでいる。動物供与源の成分を完全に含まない足場依存性細胞の培地調製物を開発する試みはほとんどない。動物成分をほとんど含まない調製物は、血清でみとめられるものと同等の細胞増殖速度を維持できず、継代培養ステップが少なく、その後早期の老化がみとめられることが報告されている(B.J. WalthallおよびR. Ham Experimental Cell Research (1981) 134 303-311)。さらに、足場依存性細胞から得た一次細胞培養物は、ほとんどの場合、動物供与源のプロテアーゼ、主にセリンプロテアーゼを用いた細胞層または組織の解離を行っており、これにより、外来のウイルスによる細胞培養物の汚染リスクが存在し、バッチ間のプロテアーゼの酵素活性の変動により細胞増殖に許容不可能な変動が生じる。例えば、足場依存性細胞培養を継代する際のブタ/ウシトリプシンの使用は、周知の技術である(O.W. Mertens, Cytotechnology, 2000, 34, 181-183)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】F. GrinnelおよびM.K. Feld Cell, 1979, 17, 117-129
【非特許文献2】M. SchroderおよびP. Friedl, Methods in Cell Science, 1997, 19, 137-147
【非特許文献3】O.W. Mertens, Dev Biol Stand., 1999, Vol 99, pp 167-180
【非特許文献4】O.W. Merten, Dev. Biol. 2002, 101, 233-257
【非特許文献5】M. KanおよびI. Yamane, Journal of Cellular Physiology, 1982, 111, 155-162
【非特許文献6】S.P. Forestellら Biotechnology and Bioengineering, 1992, Vol 40, pp. 1039-1044
【非特許文献7】B.J. WalthallおよびR. Ham Experimental Cell Research (1981) 134 303-311
【非特許文献8】O.W. Mertens, Cytotechnology, 2000, 34, 181-183
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、二倍体足場依存性細胞培養の分野においては、動物由来成分を実質的に含まない、好ましくは完全に欠き、適切な血清を添加したその細胞型用の基礎培地と同等の性能(例えば、血清含有方法で得られるものに対する細胞増殖速度、老化、細胞形態、ウイルスまたはタンパク質産生の点)で、二倍体足場依存性細胞培養の方法を実行するのに適した細胞培養培地を開発する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一動物供与源の外因性成分を実質的に含まず、非動物第二供与源に由来する少なくとも1つの外因性増殖因子を含む細胞培養培地の使用は、外因性第一および/または第二動物供与源に由来する成分を含むことが知られている従来の培養培地および血清非含有培地に有利に取って代わることができることを見出した。
【0010】
前記培養培地の使用を含み、動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒト細胞、好ましくは足場依存性細胞を、動物供与源に由来しないプロテアーゼ代替物の存在下で1回以上継代することをさらに含む細胞培養方法もまた、適切な血清を添加したその細胞型用の基礎培地を使用して実行される従来の方法で得られる性能と同等のレベルで実行できる。
【0011】
従って、第1の態様では、本発明は、第一動物供与源の外因性成分を実質的に含まず(好ましくは欠く)、EGF、FGF、トリヨード−L−チロニンおよびヒドロコルチゾンから構成される群より選択される非動物第二供与源の少なくとも1つ、好ましくは1つ以上の外因性増殖因子、ならびに非動物第二供与源のIGF−1および/またはインスリンの少なくとも1つを含む細胞培養培地に関する。適切には、該培養培地は、例えば、適切な血清を添加したその細胞型用の基礎培地と同等の性能で、動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒトの足場依存性細胞、好ましくは二倍体細胞の培養に適合している。
【0012】
任意に、本発明の培養培地は、非動供与源のタンパク質加水分解物をさらに含む。タンパク質加水分解物は存在することが好ましい。タンパク質加水分解物は、コムギ加水分解物であるのが適当である。
【0013】
さらに、本発明は、前記培地を、適切な血清を添加したその細胞型用の基礎培地で得られるものと同等の性能で、動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒトの足場依存性細胞、好ましくは足場依存性二倍体細胞を培養するために使用することに関する。
【0014】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明の培地が、特に、血清等の動物由来成分を添加したその細胞型用の基礎培地で得られるものと同等の性能(例えば、細胞増殖速度、老化、細胞形態、ウイルスまたはタンパク質産生)で、動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒトの足場依存性細胞、特に足場依存性二倍体細胞を培養するのに適合すると判断した。
【0015】
従って、本発明は、特に、動物、例えば哺乳動物、または好ましくヒトの足場依存性細胞、好ましくは二倍体細胞を、本発明の細胞培養培地中で作製する方法であって:
a)本明細書に定義する該培養培地に細胞を播種し、細胞を基板に接着させるステップ;
b)ステップa)で得たならし培地を回収し、細胞層をその基板から剥離して、非動物供与源のプロテアーゼで細胞を解離させて、細胞懸濁液を形成するステップ;
c)細胞接着を可能にする接着支持体を含む培養器において、ステップb)の細胞懸濁液を該培養培地に播種するステップ;および
d)該培養培地中で該細胞を増殖させるステップ
を含む方法に関する。ステップb)〜d)は数回にわたり繰り返すことができる。任意に、上記方法は、ステップb)で回収した細胞を凍結して、細胞バンクを作製するステップをさらに含む。
【0016】
細胞を作製する前記方法は、外因性動物由来成分を含まない培地中で細胞を培養する前の適合ステップを全く必要としないこと、およびこの適合ステップを欠くことにより細胞の老化が影響を受けないことも見出された。
【0017】
従って、本発明の別の態様は、本発明の培養培地において増殖するように適合した細胞系、特に動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞系を提供することであり、特に、生物学的に活性な生成物、好ましくはウイルス、特にワクチンとして使用する生存ウイルスの産生に適合した細胞系、特に動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞系を提供することである。
【0018】
本発明はまた、ウイルス産生に適した細胞培養培地中で、動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒトの足場依存性細胞においてウイルスを産生する方法であって、該培地は第一動物供与源の成分を欠いており、非動物第二供与源の少なくとも1つの外因性増殖因子を含み、任意に非動物供与源の1つのタンパク質加水分解物を含んでもよく、以下のステップ:
a)細胞にウイルスを感染させるステップ;
b)該ウイルスを増殖させるステップ;および
c)ウイルスを回収するステップ
を含む方法に関する。本方法は、回収したウイルスを、1つ以上の精製ステップに供することを含み得る。ウイルスは、薬学的に許容される担体、賦形剤および/またはアジュバントと共に、ワクチンとして適切に剤形化され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】フィシンおよびブロメラインプロテアーゼを細胞剥離に使用し、実施例I.1に定義する培地を使用した、MRC−5細胞老化試験における細胞密度である。
【図2】フィシンおよびブロメラインプロテアーゼを細胞剥離に使用し、実施例I.1に定義する培地を使用した、MRC−5細胞老化試験における細胞生存率である。
【図3】フィシンおよびブロメラインプロテアーゼを細胞剥離に使用し、実施例I.1に定義する培地を使用した、MRC−5細胞老化試験における細胞増殖である。
【図4】実施例I.1(個々の成分)および実施例I.2(添加ultra−MEM培地)に定義する培地で得られるMRC−5細胞老化試験における細胞密度の比較である。
【図5】実施例I.1(個々の成分)および実施例I.2(添加ultra−MEM培地)に定義する培地で得られるMRC−5細胞老化試験における細胞生存率である。
【図6】実施例I.1(個々の成分)および実施例I.2(添加ultra−MEM培地)に定義する培地で得られるMRC−5細胞老化試験における細胞増殖である。
【図7】フィシンおよびブロメラインプロテアーゼを細胞剥離に使用して増殖したMRC−5細胞におけるHAV産生である。
【図8】フィシンおよびブロメラインプロテアーゼを細胞剥離に使用して増殖したMRC−5細胞の細胞バンク作製における細胞密度である。
【図9】フィシンおよびブロメラインプロテアーゼを細胞剥離に使用して増殖したMRC−5細胞の細胞バンク作製における細胞生存率である。
【図10】フィシンおよびブロメラインプロテアーゼを細胞剥離に使用して増殖したMRC−5細胞の細胞バンク作製における細胞増殖である。
【図11】Trypzean(Prodigen)またはrProtease(Invitrogen)を細胞剥離に使用して増殖したMRC−5細胞の細胞バンク作製の間の細胞密度である。
【図12】Trypzean(Prodigen)またはrProtease(Invitrogen)を細胞剥離に使用して増殖したMRC−5細胞の細胞バンク作製の間の細胞生存率である。
【図13】Trypzean(Prodigen)またはrProtease(Invitrogen)を細胞剥離に使用して増殖したMRC−5細胞の細胞バンク作製における細胞増殖である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
特に好適な実施形態では、本発明の細胞培養培地は、第一動物供与源の外因性成分を実質的に含まない、好ましくは完全に欠いており、第一および第二動物供与源の外因性動物由来成分を含まないことが好ましい。適切には、前記培地は、動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒトの足場依存性細胞、特に足場依存性二倍体細胞を、例えば、適切な血清を添加したその細胞型用の基礎培地で得られる性能(例えば、細胞増殖速度、細胞形態、老化またはウイルス産生の点)と同等の性能で培養するのに適合される。例えば、動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒト細胞のための基礎培地は、ATCCカタログで見つけることができ、所与の細胞型用の基礎培地の例をさらに表1に示す。比較目的のために使用する血清は、典型的にウシ血清、特にウシ胎仔血清である。従って、典型的に10%v/vの濃度でウシ血清を含む表1の基礎培地との比較において同等性を評価することが最も良い。
【表1】

【0021】
「細胞増殖速度」とは、細胞バンクからの解凍から老化までの間に細胞が増殖する平均速度を意味する。これは、集団倍加(PD)/日で表され、細胞解凍および老化の間にみとめられる集団倍加の数と、細胞解凍から老化までの経過時間(日数で表す)との比率を計算することにより得る。本発明において同等の細胞増殖速度とは、適切な血清(通常、10%濃度のウシ血清)を添加した同じ細胞型用の基礎培地において培養された細胞(対照として使用)で得られる細胞増殖速度の少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは少なくとも95%以上の細胞増殖速度を意味する。さらに最も好ましいのは、血清含有培地中で培養された細胞で得られるものよりも高い細胞増殖速度である。
【0022】
「細胞形態」とは、光学顕微鏡検査で評価される細胞の形態を意味する。形態の観点から見た同等な性能とは、ウシ血清の存在下で培養された場合に示す形態を細胞が保持することを意味する。例えば、MRC−5細胞は、本発明の培地中での培養後、線維芽細胞性質を保持しているはずである。
【0023】
「老化」とは、ヘイフリック限界と一般的に称されている同一定数の集団倍加(集団倍加レベル、PDL)後にみとめられる細胞の複製能の損失を意味する(Harry Rubin, Nature Biotechnology, 2002, 20, 675-681)。本発明において同等の老化とは、適切な血清(通常、10%濃度のウシ血清)を添加した同じ細胞型用の基礎培地において培養された細胞(対照として使用)で得られる老化の少なくとも70%、好ましくは90%、より好ましくは少なくとも95%以上の老化を意味する。さらに最も好ましいのは、血清含有培地中で培養された細胞でみとめられるものよりも高いPDLで生じる老化である。典型的に、好ましいMRC−5細胞の場合、上記したような血清の存在下で培養された細胞について約PDL60〜約PDL75の老化が得られる。
【0024】
「足場依存性動物細胞」または「足場依存性ヒト細胞」とは、正常に成長および増殖するのに固体支持体を必要とする、動物またはヒト組織に由来する細胞系または細胞のいずれかで樹立された細胞を意味する。固体支持体は、基本的に、プラスチックまたはガラス表面等の増殖表面である。適切な固体支持体の例としては、ペトリ皿、組織培養フラスコ、細胞ファクトリー、ローラーボトル、またはマイクロキャリアがある。本発明の目的のために、表面は、動物供与源のタンパク質またはこのようなタンパク質から誘導されるペプチドによって被覆されていない。細胞は、接着により(すなわち、それらの自己分泌接着因子の分泌により)接着および拡散する。好ましい足場依存性細胞は、二倍体細胞である。二倍体足場依存性細胞の例は、限定するものではないが、ATCCカタログ(WI38:CCL−75、MRC−5:CCL−171、IMR−90:CCL−186、DBS−FRhL−2:CCL−160、MRC−9:CCL−212)、またはNIAカタログ(NIA Aging Cell Repositoryのために開発されたTIG−1およびTIG−7、TIG−1受託番号AG06173;IMR−91:191L)に見出すことができる。好ましい細胞は、MRC−5、WI−38、FRhL−2、MRC−9であり、最も好ましい細胞系はMRC−5である。
【0025】
「〜を実質的に含まない培地」は、血清、および第一動物供与源のいかなる外因性成分(例えば、BSA等)も欠く、新鮮培地およびならし培地を含む培地を指すのに使用する。このような新鮮培地またはならし培地は、第二動物供与源の微量の外因性成分を含みうる。「動物供与源の成分を含まない培地」とは、血清、ならびに第一動物供与源(例えば、BSA等)および第二動物供与源の両方のいかなる外因性成分も欠く培地を意味する。第一動物供与源の外因性成分は、例えば、ウシ(仔ウシを含む)、ヒト(ヒト血清アルブミン−HSA)、またはブタ供与源に由来する成分を含む。第二動物供与源の成分は、それらの製造ステップの1つにおいて、動物供与源の生成物と接触している成分として定義する。特に、第二動物供与源に由来し、高頻度で使用される成分は、インスリン、EGF、FGFおよびIGF−I等の組換え増殖因子である。大腸菌において生成され得るこれらの組換え増殖因子は、発酵飼料(fermentation feeding)および/または酵素切断に使用するウシまたはブタ成分と接触している。第二動物供与源の微量成分は、1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.01%未満、最も好ましくは0.001%、さらに最も好ましくは不在(0%)である。血清を含まない基礎培地および動物由来成分を含まない培地は、市販されているか、または個々の成分をそれぞれ混合することにより調製され得る。これらは、非動物供与源の増殖因子を適切に添加し得る。本発明によれば、動物供与源の外因性成分を完全に含まない培地を使用することが好ましい。動物供与源の外因性成分を完全に含まない培地は好ましい実施形態であるが、これらの成分は全て、上記方法の性能に全く影響を与えることなく第二動物由来成分(上記列挙したような増殖因子、コムギペプトン、アミノ酸、プロテアーゼ等)に置き換えられ得る。
【0026】
「動物供与源」または「動物由来」とは、哺乳動物(例えば、ヒト)、ならびに非哺乳動物(昆虫、魚類、鳥類、両生類および爬虫類等)を意味する。
【0027】
「外因性」という用語は、細胞により分泌される「内因性」と称される成分と対照的に、培地に添加される非動物供与源の成分を意味する。従って、相対的に、「外因性」という用語は、細胞により合成および分泌(自己分泌)されて、適切な基板上での接着、拡散および増殖に寄与する成分(フィブロネクチン、コラーゲン、プロテオグリカン、増殖因子等)を指す(M.R. KollerおよびE.T. Papoutsakis, Bioprocess Technol., 1995, 60, 61-110)。
【0028】
好ましくは、細胞培養培地は、第一動物供与源の外因性成分を欠き、非動物第二供与源の少なくとも1つの外因性増殖因子、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ以上の増殖因子を含む。適切には、細胞培養培地は、EGF、FGF、トリヨード−L−チロニンおよびヒドロコルチゾンからなる群より選択される非動物第二供与源の少なくとも1つの外因性増殖因子、ならびに非動物第二供与源のIGF−1および/またはインスリンの少なくとも1つを含む。適切には、培養培地は、非動物第二供与源のEGF、FGF、トリヨード−L−チロニンおよびヒドロコルチゾンと、非動物第二供与源のIGF−1および/またはインスリンの少なくとも1つとの組み合わせを含む。「増殖因子」という用語は、細胞増殖に必要で、培養プロセスの間に細胞により生成され得、例えば細胞接着および増殖を促すことによりそれ自身および/または様々な他の隣接もしくは遠位細胞に影響を及ぼし得るタンパク質、ペプチドもしくはポリペプチド、またはサイトカイン等のポリペプチドの複合体を指す。全てではないが一部の増殖因子は、ホルモンである。増殖因子の例としては、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF)、例えばIGF−1、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、例えば塩基性FGF(bFGF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、トランスフォーミング増殖因子α(TGFα)、血小板由来増殖因子(PDGF)、神経増殖因子(NGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、VEGF、形質転換増殖因子β(TGFβ)、インターロイキン8(IL−8)、インターロイキン6(IL−6)、トリヨード−L−チロニンおよびヒドロコルチゾンが挙げられる。好ましい増殖因子としては、例えば、EGF、FGF(好ましくはbFGF)、IGF−1またはインスリン、トリヨード−L−チロニンおよびヒドロコルチゾンが挙げられ、単独または好ましくは組み合わせて使用され得る。好ましい培養培地は、非動物由来EGF、FGFb、IGF−1またはインスリン、トリヨード−L−チロニンおよびヒドロコルチゾンを含む。さらにより好ましくは、本発明の細胞培養培地の表3に列挙するような全ての成分が、非動物第一供与源および第二供与源のものである。
【0029】
さらに好適な実施形態では、培養培地は、非動物由来タンパク質加水分解物、好ましくは植物または酵母由来タンパク質加水分解物をさらに含む。「タンパク質加水分解物」または「タンパク質ペプトン」とは、当技術分野でよく理解されているように、タンパク質加水分解物の精製調製物またはその粗画分を意味する(これは、つまりタンパク質を含まない)。タンパク質を含まないという用語は、どのような機能的に活性なタンパク質も含まないことを意味するが、タンパク質加水分解物に正確に由来する非機能ペプチドは排除しない場合もある。特に適切な加水分解物画分は、コムギペプトンタンパク質加水分解物、例えば、ペプチドの主要80%が300〜1000ダルトンである最大10,000ダルトンのペプチドから構成される酵素消化物を含む。培養培地中のタンパク質加水分解物の濃度は、それが存在する場合には、0〜10g/L、存在する場合には好ましくは1〜5g/L、特に好ましくは2.5g/Lである。具体的には、タンパク質加水分解物は植物(例えば、コメ、トウモロコシ、コムギ、ダイズ、マメ、綿、ジャガイモ)または酵母から誘導される。本発明の好ましい植物タンパク質加水分解物は、コムギペプトンタンパク質加水分解物である。
【0030】
本発明の細胞培養培地は、代替的に、「新鮮培地」、「ならし培地」、または両方の培地の混合物を指す。「新鮮培地」は、市販されているか、又は細胞を培養するのに全く使用されていない個々の成分のそれぞれから調製される任意の細胞培養培地を指す。本発明の好適な態様によれば、新鮮培地は、市販の培地、または上記したような個々の成分から調製される培地を指す。これは、本発明によれば、第一供与源の動物成分を欠き、上述したように非動物第二供与源の少なくとも1つの外因性増殖因子が添加され、任意であるが好ましくはコムギタンパク質加水分解物等の非動物供与源のタンパク質加水分解物が添加されている。
【0031】
「ならし培地」とは、1つの細胞培養で使用され、別の細胞培養で再利用される培地を意味する。このならし培地は、最初の培養による、内因性増殖刺激物質、内因性接着因子および特定の内因性栄養素の放出を含む。
【0032】
従って、本発明の別の態様は、本発明の新鮮培養培地と、動物または好ましくはヒトの足場依存性細胞とを混合して、ならし培養培地を作製するステップ、を含むならし培養培地の作製方法を提供することである。
【0033】
特に明記しない限り、新鮮培地、ならし培地、および両方の培地の混合物は、「培養培地」と称する。
【0034】
表2は、新鮮培地に添加される際の増殖因子およびタンパク質加水分解物の濃度範囲および好ましい濃度を示す。従って、本発明の適切な細胞培養培地中の増殖因子の濃度は、それが存在する場合には、表2に規定するとおりである。
【表2】

【0035】
培養する細胞型および達成しようとする性能に応じて、任意により、本発明の新鮮培養培地は、培養培地中に従来から見出されている非動物供与源の成分をさらに添加してもよいことが理解されよう。適切な成分は、例えば、アミノ酸(非必須アミノ酸を含む)、ビタミン、ヌクレオチド/ヌクレオシド、脂肪酸、抗生物質および酸化安定剤であり、これらは全て非動物供与源由来のものである。
【0036】
適切な新鮮培地は、DMEMに基づく(高グルコースダルベッコ改変イーグル培地)、MEM(最小必須培地)、培地199、RPM−I 1640等の動物成分を含まない標準培地であり、これらは全て、特にLife-tecnologies-Gibco-BRL, BioWittaker、Sigma-Aldrichから市販されており、上で教示した非動物供与源の増殖因子および任意によりタンパク質加水分解物をさらに適当に添加する。当業者は、出発培地を、培養する細胞型に応じて選択する必要があることを理解するであろう。好ましい市販の新鮮培地は、BioWhittaker(カタログ番号12−745F)から入手可能なUltra−MEMである。あるいはまた、新鮮培地は、培養する細胞型に応じて、個々の成分のそれぞれから調製される動物を含まない培地であり、炭水化物の供与源、無機塩成分、微量元素、アミノ酸(非必須アミノ酸を含む)、ビタミン、ヌクレオチド/ヌクレオシド、脂肪酸、抗生物質、酸化安定剤および水(完全には網羅していない一覧)を含み、上で教示した非動物供与源外因性増殖因子、および任意だが好ましくは非動物供与源タンパク質加水分解物を適切に添加した培地である。このような培地の基礎組成の例は、実施例1および表3に示す。
【0037】
上記培地は、動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒト細胞、特に足場依存性動物、例えば、哺乳動物または好ましくはヒト細胞、好ましくは足場依存性二倍体細胞の培養に適しており、これは本発明の別の態様を示す。
【0038】
本発明の好適な態様では、動物または好ましくはヒトの足場依存性細胞、好ましくは二倍体細胞を、本発明の培養培地中で作製する方法であって:
a)該培養培地に細胞を播種し、該細胞を基板に接着させるステップ;
b)ステップa)で得たならし培地を回収し、細胞層をその基板から剥離して、非動物供与源のプロテアーゼで細胞を解離させて、細胞懸濁液を形成するステップ;
c)細胞接着を可能にする接着支持体を含む培養器において、ステップb)の細胞懸濁液を該培養培地に接種するステップ;
d)該細胞を同じ培養培地中で増殖させるステップ;
e)任意に、ステップb)〜d)を繰り返すステップ
を含む方法も提供する。任意に、本方法は、ステップb)で回収した細胞を凍結して、細胞バンクを作製するステップを含む。任意に、ステップb)で使用するプロテアーゼは、処理後に不活性化される。
【0039】
細胞型および達成する細胞培養方法の性能に応じて、当業者は、使用する培養培地が、特にステップa)およびc)において、新鮮培地もしくは先の培養に由来するならし培地、または新鮮培地およびならし培地の混合物であり得ることを理解するであろう。混合物において、新鮮培養培地とならし培養培地との比率は1:0(100%新鮮培地)〜0:1(100%ならし培地)である。ならし培地は、培地の合計容量の0〜約75%を占めることが好ましい。新鮮培養培地とならし培養培地との好ましい比率は1:1(50%新鮮/50%ならし)であり、さらにより好ましい比率は約7:1(87.5%新鮮/12.5%ならし)〜1:7、最も好ましい比率は約3:1(75%新鮮/25%ならし)〜1:3、最も好ましい比率は3:1(75%新鮮/25%ならし)である。好ましい比率は、培養過程において培地を交換する度ごとに維持されることが好ましい。
【0040】
プロテアーゼは、非動物供与源に由来するものであり、つまり、プロテアーゼは、動物供与源から精製されていない。プロテアーゼは、組換え供与源に由来してもよいが、好ましくは細菌、酵母または植物供与源、適切には非動物第二供与源に由来する。組換え供与源に由来するプロテアーゼは、組換えDNA技術により生成され、その生成のために微生物(例えば、細菌、ウイルス、酵母、植物等)の使用を含む、あらゆるプロテアーゼを意味する。好ましいプロテアーゼとしては、システインエンドペプチダーゼ;中性真菌プロテアーゼ(麹菌(A.oryzae)由来);中性細菌プロテアーゼ(枯草菌(Bacillus subtilis)由来)(Brocklehurst, K.ら, Cysteine proteinases. New Comprehensive Biochemistry Vol. 16, Hydrolytic Enzymes掲載;Neuberger, A.およびBrocklehurst, K.編, pp. 39-158(1987)Elsevier, Amsterdam);トリプシン様プロテアーゼ等のセリンプロテアーゼ(Invitrogen, 3175 Staley Road, Grand Island, NY 14072製のrProtease、供給元カタログ番号02−106等)、または組換えトリプシン(Trypzean、トウモロコシ中で生成される組換えトリプシン、Prodigen, 101 Gateway Blvd, Suite 100 College Station, Texas 77845. 製造コード:TRY)が挙げられる。トリプシン様プロテアーゼファミリーに由来するプロテアーゼは、一般的に、原核生物、動物およびウイルスにおいて見出され、驚くべきことにこれまで植物においては見出されていない。これらの酵素は、様々な生理学的プロセス(なかでもよく知られているのは消化、受精、血液凝固カスケードおよび発生プロセス)に関与する。これらは、共通の先祖タンパク質から分化していると考えられている。これらの酵素は、文献において広く説明されており(A.J. Greer, "Comparative modelling methods-application to the family of mammalian serine proteases" Proteins, Vol. 7, p317-334, 1990)、それらの構造に基づいて異なるファミリーに分類され得る(A. SaliおよびT. Blundell, "definition of general topological equivalence in protein structures" J. Mol. Biol., 212, p 403-428, 1990)。適切なプロテアーゼは、組換えトリプシンまたはトリプシン様プロテアーゼ等のセリンプロテアーゼである。好ましいプロテアーゼは、中性真菌プロテアーゼまたは中性細菌プロテアーゼである。本発明においてより好ましいプロテアーゼは、システインエンドペプチダーゼである。特に好ましいシステインプロテアーゼは野菜(vegetal)供与源に由来する。野菜供与源の好ましいシステインエンドペプチダーゼは、以下からなる群より選択される:フィシン(イチジク(Ficus glabrata)のラテックスの主要タンパク質分解成分)(Liener, I.E.およびFriedenson, B. Methods Enzymol, 1970, 19, 261-273)、茎ブロメライン(パイナップル植物(Ananas comosus)の茎から抽出)、アクチニジン(キウイフルーツまたはチャイニーズグーズベリー(Actinidia chinensis)ならびにパパイン(パパイヤ(Carica papaya)果実のラテックス)。システインプロテアーゼの中でも、フィシンが特に好ましい。
【0041】
プロテアーゼは、妥当な剥離時間内での効率的な細胞解離(個別化細胞)が確実な任意の適切な濃度で使用され得る。
【0042】
二倍体足場依存性細胞を作製する方法は、実施例2に例示するようなステップを参照することで理解される。簡潔に説明すると、細胞層は、本発明の培養培地において、細胞培養のために解凍および播種した細胞から、または以前の継代培養から得られる。次いで、第1のステップにおいて、細胞剥離のために、足場依存性細胞培養の培地を取り出し、接種ステップ用のならし培地として使用し続ける。好ましくは洗浄された細胞層を、プロテアーゼ溶液を使用し、フラスコを振とうすることにより、個別化細胞に剥離し、解離させる。細胞を剥離および個別化したら、細胞懸濁液を回収し、細胞接種または細胞バンク作製に使用できる。任意に、プロテアーゼの活性が細胞系の培養に毒性である場合には、適切なプロテアーゼ阻害剤を用いて阻害しうる。第2のステップでは、細胞接種のために、作製する細胞系に適用される通常の細胞密度で細胞を新しいフラスコに細胞を播種する。次いで、培養培地、好ましくは新鮮培養培地とならし培地の混合物を、新しいフラスコに添加する。第3のステップでは、細胞増殖のために、新しい細胞培養物を、細胞系作製に使用される通常の方法で適用されるものと同じ温度および同じ雰囲気下でインキュベートする。ステップ1(細胞剥離)の後、ステップ2(細胞接種)および3(細胞増殖)の代わりに、任意の第4のステップを細胞バンク作製のために適用できる。これは、細胞系凍結に使用する動物供与源を含まない通常の抗凍結剤(通常、DMSOおよびメチルセルロース)を添加した動物由来成分を含まない培地において細胞を凍結することにより実行する。
【0043】
通常、低濃度の外因性動物由来成分を用いた複数回の培養を含む所定の手法の後、外因性動物供与源の成分を完全に含まない培地における培養の前に、細胞を外因性動物由来成分を含まない培地における増殖のために適合させる必要がある(Chandler JP., Am Biotechnol Lab 1990, 8, 18-28)。この適合ステップは、通常の細胞増殖および典型的な細胞形態を確実にするために必要である。
【0044】
本発明の細胞を作製する方法は、外因性動物供与源の成分を含まない培地中で細胞を培養する前に適合ステップを全く必要としないこと、およびこの適合ステップの不在により細胞の老化が影響を受けないことが分かった。これは、本発明のさらなる利点である。実際、通常の細胞増殖および典型的な細胞形態が、細胞の老化が観察される集団倍加レベル(PDL)の2/3に相当するPDLに到達するのに必要とされる数世代(集団倍加)の間維持される。通常の細胞増殖および典型的な細胞形態が、細胞の老化が観察される集団倍加レベル(PDL)に到達するのに必要とされる数世代(集団倍加)の間維持されることが好ましい。細胞の老化は、動物由来成分を含む通常の方法において観察されるPDLと同等のPDLにおいて観察される。例えば、マスター細胞バンク(PDL 13)から入手し、本発明の培地において培養するMRC−5細胞については、通常の細胞増殖および典型的な細胞形態が、細胞の老化が観察される50世代(集団倍加)を上回る間維持される。
【0045】
従って、本発明は、本発明の培養培地における増殖のために適合した細胞系、好ましくは動物、例えば哺乳動物、より好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞系も提供する。「適合した」とは、典型的な細胞増殖および細胞形態を、動物由来成分を含む従来の培地で観察されるのと同様の数世代維持することか、あるいはまた、従来の培地で観察されるよりも有意に早く老化が観察されないことを意味する。さらに、本発明は、本発明の培養培地における生物学的に活性な生成物、好ましくはウイルスの産生に適合した細胞系、好ましくは動物、例えば哺乳動物、より好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞系も提供する。
【0046】
従って、別の実施形態では、本発明はまた、本発明の培養培地における組換えタンパク質またはウイルス産生のための、動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞培養の作製方法であって、該細胞培養を上記定義したプロテアーゼで継代するステップを含む方法も提供する。特に、足場依存性細胞、典型的に二倍体細胞は、動物供与源の外因性成分を実質的に含まない栄養培地に低密度で播種し、それらが増殖してコンフルエントな層または多層を形成した後に剥離して、懸濁液を形成し、低密度で再度播種する。細胞を剥離および継代するのに使用するプロテアーゼは、非動物供与源または組換え供与源のものであり、システインエンドペプチダーゼ、中性真菌プロテアーゼ、中性細菌プロテアーゼ、またはトリプシン様プロテアーゼからなる群より選択されることが好ましい。適切なプロテアーゼは、Trypzean等のトリプシン様プロテアーゼ、またはrProteaseもしくはシステインエンドペプチダーゼ等の組換えトリプシン、より好ましくはフィシン、茎ブロメラインおよびアクチニジンである。システインプロテアーゼの中でもフィシンが特に好ましい。
【0047】
好適な実施形態では、本発明は、本発明の細胞培養培地において、動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒト足場依存性細胞、好ましくは二倍体細胞中でウイルスを産生する方法であって:
a)細胞にウイルスを感染させるステップ;
b)ウイルスを増殖させるステップ、および
c)ウイルスを回収するステップ
による方法に関する。任意に、回収したウイルスを1つ以上の精製ステップに供する。本発明のさらなる態様は、本明細書に記載するように産生され、薬学的に許容される担体、賦形剤および/またはアジュバントと混合してワクチン等の免疫原性組成物として製剤化したウイルスを提供することである。
【0048】
細胞型および達成するウイルス産生方法の性能に応じて、当業者は、ステップa)において細胞を播種するために使用する培養培地が、代替的に、新鮮培地もしくは先の培養で得られるならし培地、または新鮮培地とならし培地の混合物であり得ることを理解するであろう。最適なウイルス産生のために、新鮮培養培地とならし培養培地との比率は1:0(100%新鮮培地)〜0:1(100%ならし培地)であることが好ましい。ならし培地は、培地の合計容量の0〜約75%を占めることが好ましい。新鮮培養培地とならし培養培地との好ましい比率は1:1(50%新鮮/50%ならし)、さらにより好ましくは約7:1(87.5%新鮮/12.5%ならし)、最も好ましくは約3:1(75%新鮮/25%ならし)である。1:0(100%新鮮培地)の新鮮な培養培地とならし培地との比率が特に好ましい。細胞に感染させ、ウイルスを増殖させるのに使用する培地は、増殖培養培地と同じであってよく、より好ましくは25%w/v EGF、25%w/v bFGFおよび25%w/v T3を含み、任意に20%w/vタンパク質加水分解物、好ましくはコムギペプトンE1(Organotechnie SA, France)をさらに添加してもよい。さらに最も好ましくは、培地はタンパク質加水分解物を全く含まない。
【0049】
ウイルス産生方法は、実施例3に例示するステップを参照することによりより良く理解される。
【0050】
簡単に説明すると、第1のステップでは、ウイルス感染のために、本発明の方法に従い本発明の培地において培養される足場依存性細胞に、ウイルス産生に使用される通常の方法で適用されるのと同じ感染多重度で適切なウイルスを感染させる。第2のステップでは、ウイルス増殖のために、感染細胞を、ウイルス産生に適用される通常の方法で常套的に適用されるのと同じ温度および同じ雰囲気下にてインキュベートする。第3のステップでは、ウイルス産生に使用される通常の方法で適用するのと同じ増殖時間の後に、ウイルスを回収する。ウイルス回収の方法は、ウイルス回収の方法で常套的に適用される方法に従って行う。ウイルス産生の全般的な培養条件については、A型肝炎ウイルス培養方法(WO95/24468号)、A型肝炎ウイルスワクチン(WO94/06446号;A. Hagen J., 2000, Bioprocess Engineering 23, 439-449)を参照のこと。
【0051】
本発明の培地および方法を使用して製造できるウイルスおよびヒトウイルスワクチンの例としては、生存、弱毒化、不活性化、組換え改変ウイルスが挙げられる。特に、足場依存性細胞上で増殖可能なワクチン用途のための弱毒化ウイルスとしては、以下のものが挙げられるがこれらに限定されない:アデノウイルス科(すなわち、アデノウイルス1〜49)、ヘルペスウイルス科(すなわち、ヘルペスウイルスHSV、サイトメガロウイルスCMV、水痘−帯状疱疹ウイルスVZV、エプスタイン−バーウイルスEBV)、フラビウイルス科(すなわち、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルスHEV、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス)、ポックスウイルス科(すなわち、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルス)、ピコルナウイルス科(すなわち、エコーウイルス、コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス)、レオウイルス科(すなわち、ロタウイルス、コロラドダニ熱ウイルス)、トガウイルス科(すなわち、東部ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス)、ヘパドナウイルス科(すなわち、B型肝炎ウイルス)、レトロウイルス科(すなわち、免疫不全ウイルスHIV/SIV)、パラミクソウイルス科(すなわち、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルスRSV)、ラブドウイルス科(すなわち、狂犬病ウイルス、水泡性口内炎ウイルス)、オルトミクソウイルス科(すなわち、インフルエンザウイルス)、未分類ウイルス(すなわち、E型肝炎ウイルス、デルタ肝炎ウイルス)、アストロウイルス科(すなわち、アストロウイルス)、コロナウイルス科(すなわち、コロナウイルス)、アレナウイルス科(すなわち、フニンウイルス)、ブンヤウイルス科(すなわち、リフトバレー熱ウイルス)。別の実施形態では、本発明の方法を使用したウイルスワクチンの製造は、接着細胞において発現される組換えタンパク質の産生を含む。好ましい足場依存性細胞としては、例えば、AGMK、VERO、MDCK(イヌ上皮腎臓細胞)、CEF(ニワトリ、胚線維芽細胞)およびCHO(チャイニーズ卵巣)細胞が挙げられ、より具体的に好ましい細胞は、例えば、MRC−5、WI−38、TIG−1、TIG−7、FRhL−2、MRC−9、IMR−90およびIMR91等の足場依存性二倍体細胞である。MRC−5は、特に好ましい細胞系である。本発明の方法は、A型肝炎ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルスおよびVZVの製造について成果を上げることが分かっている。
【0052】
本発明の好ましい態様によれば、以下のウイルスのいずれかに感染した細胞が好ましい:肝炎、特にHAV、ポリオウイルス、HSV、特にHSV−1およびHSV−2、CMV、EBV、風疹ウイルス、パラミクソウイルス科(すなわち、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルスRSV)、VZV。
【0053】
平均では、マスター細胞バンクを開始するために15世代が必要とされ、実用的な細胞バンクを作製するためには10世代が必要とされる。400L規模で平均的なバッチ培養を実施するために、少なくとも約15世代が必要である。足場依存性細胞系で出発し、本発明の培地を使用すれば、約15世代でマスター細胞バンク(MCB)を調製し、約10世代で実用的な細胞バンク(WCB)を調製するのに同じ計画、つまり、動物供与源の外因性成分を含まない培地について開発した条件下で約15世代の培養を行うことが可能である。
【0054】
本発明はまた、細胞、好ましくは二倍体足場依存性細胞、より好ましくは真核細胞、最も好ましくは動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒト細胞の培養について本明細書に記載した培養培地の使用も想定する。本発明の培養培地、および細胞、好ましくは二倍体足場依存性細胞、より好ましくは真核細胞、最も好ましくは動物、例えば哺乳動物または好ましくはヒト細胞を含む細胞培養物を提供することも、本発明の目的である。
【0055】
本発明はさらに、本明細書に定義する方法により得られるウイルス集団に関する。本発明はさらに、前記ウイルス集団を、薬学的に許容される担体、賦形剤またはアジュバントと混合するステップを含む、ウイルスワクチンの製造方法に関する。
【0056】
本発明を以下の限定しない実施例によりさらに説明する。
【実施例1】
【0057】
I.1.個々の成分からの新鮮培地の調製
有利な新鮮培養培地の例は、表3に挙げる一般的な成分の全てまたは大部分を含む。本発明によれば、表2に示すような増殖因子およびタンパク質加水分解物を適当に添加し得る。
【表3】



【0058】
I.2.適切に添加した市販の培地からの新鮮培地の調製
市販の培地:BioWhittakerから入手可能なUltra−MEMカタログ番号12−745F(低血清培地、タンパク質を含まない基礎培地、L−グルタミンを含まない)。
【0059】
この基礎培地処方は、動物供与源(由来)の成分を含まないが、製造元の指示書に従うと、少量の血清(10%未満等)および他の添加物(ITES=インスリン(動物由来)+トランスフェリン(動物由来)+エタノールアミン+セレン)を添加するように従来通りに設計されている。培地は、動物由来の推奨添加物(血清およびITES)の不在下で使用した。
【0060】
この培地には、以下の成分(全て、第一および第二動物供与源の成分を含まない)を添加した:
1.IGF:1−0.1mg/L
2.EGF:0.005mg/L
3.bFGF:0.003mg/L
4.トリヨード−L−チロニン(T3):0.066mg/L
5.コムギペプトンE1:2.5g/L
そしてさらに
6.フルクトース第二鉄(ferric fructose):0.1667ml/L
7.ピルビン酸ナトリウム:0.055g/L
動物由来成分の不在下で実施する培養方法を最適化するために以下の成分も添加した:
−グルタミン:0.2922g/L
−グルコース:0.33g/L
−セレン(Na2SeO3):0.01mg/L
−エタノールアミン:0.0006μl/L
動物を含まない細胞バンク(PDL21)から得たMRC−5細胞を解凍し、上記培地および以下の継代培養スキームを使用して、実施例2および4に開示する方法に従って培養する:
・D7:12.5%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/8の比率で細胞接種
・D12:25%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/4の比率で細胞接種
・D16:12.5%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/8の比率で細胞接種
・D21:D7から出発してスキームを繰り返す。
【0061】
175cmTフラスコ中で、細胞を、老化(±PDL65)まで±3ヶ月間(例えば、80日間)培養する。この手順において、細胞接種は、特定の細胞密度に固定しない。対照について実施した細胞計数は、細胞接種密度が、老化が観察される前に9000細胞/cm〜40000細胞/cmの範囲内にあることを示す。MRC−5細胞は、0.57PDL/日の細胞増殖速度で培養の81日後にPDL66に到達し、その後老化が観察された。図4、5および6に示すこれらの結果は、I.2節に示した、約PDL65で81日後に老化を生じ、細胞増殖速度が約0.56PDLである個別の成分から調製した培地で観察されるものと同等である。
【0062】
並行して、この培養物に由来する細胞を使用し、実施例3に記載の方法に従い、EGF、bFGFおよびT3濃度が細胞増殖培養培地に存在する濃度の25%まで減少したこと以外、ならびにコムギペプトン濃度が0.5g/Lに減少したこと以外は上記したのと同じ培地を使用してHAVを産生させる。ウイルスの回収は、培養開始の2ヵ月後に実施する。
【実施例2】
【0063】
動物供与源のいずれの成分も実質的に含まない培養培地において動物またはヒト足場依存性細胞を作製する方法
ステップ1:細胞剥離
細胞培養フラスコ中で増殖させた足場依存性細胞培養の培養培地を取り、滅菌容器に保存する。この回収した培地は、ならし培地として、細胞の接種に使用する。細胞層を、EDTAを添加したリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で二度洗浄する。1リットルのPBS当たり約0.04グラム〜約1グラムのEDTA、好ましくは約0.2グラム/Lの目標が望ましい。
【0064】
細胞層を洗浄したら、細胞層全体が覆われるように十分な容量のプロテアーゼ溶液を添加する。約0.01ml/cm〜2ml/cm、好ましくは0.0333ml/cmの目標容量が望ましい。このプロテアーゼ溶液は、EDTAを添加したPBSにおける酵素の剥離により調製される。1リットルのPBS当たり約0.02グラム〜約0.5グラム、好ましくは約0.1グラム/LのEDTA目標が望ましい。PBS/EDTAに添加するプロテアーゼの量は、効率的な細胞剥離を達成するのに十分なタンパク質分解活性を有する溶液を生成するのに必要な量である。細胞剥離は、約5分間〜約30分間、好ましくは約12分間の所望の目標時間の後に、大部分の細胞がフラスコから剥離し、細胞凝集体が個々の細胞に解離した場合に効率的であると考えられる。足場依存性細胞に使用できる一部のプロテアーゼの酵素活性は、例えば以下の一覧に示しているがこれらに限定されるものではない。
【0065】
−約5.5μUPABA/ml〜約550μUPABA/ml、好ましくは約55μUPABA/mlの目標酵素活性が、フィシンには望ましい(1単位のPABAは、37℃にて1μモルのNa−ベンゾイル−DL−アルギニン−p−ニトロアニリン/分を加水分解する酵素の活性である)(Methods in Enzymology Vol XIX Proteolytic enzymes p261-284)。
【0066】
−約0.001ゼラチン消化単位(GDU)/ml〜約0.1GDU/ml、好ましくは約0.01 GDU/mlの目標酵素活性が、ブロメラインには望ましい(1単位のGDU活性は、アッセイ条件下で1mgのアミノ酸を所定のゼラチン基質から遊離させる酵素の活性である)(上記参考文献に同じ)。
【0067】
−麹菌(A.オリゼ)由来の中性真菌プロテアーゼについては、約12.5μg/mlのタンパク質量に対応する目標酵素活性(1.25μg/ml〜約125μg/ml、好ましくは約12.5μg/ml)が望ましい(製造元、Lyven Zac Normandial, 11 avenue du Pays de Caen 14460 Colombelles, Franceによる)。
【0068】
−枯草菌由来の中性細菌プロテアーゼについては、約150μg/mlのタンパク質量に対応する目標酵素活性(15μg/ml〜約1.5μg/ml、好ましくは約150μg/ml)が望ましい(製造元、Lyven Zac Normandial, 11 avenue du Pays de Caen 14460 Colombelles, Franceによる)。
【0069】
−約100USP/ml〜0.1USP/ml、好ましくは1USP/mlの目標酵素活性が、Trypzeanについて望ましい(製造元、Prodigen, 101 Gateway Blvd, Suite 100 College Station, Texas 77845(製造コード:TRY)による)。
【0070】
−約3倍〜300倍、好ましくは30倍のストック溶液の目標希釈が、rProteaseについて望ましい(供給元、Invitrogen, 3175 Staley Road, Grand Island, NY 14072(供給元カタログ番号02−106)による)。
【0071】
細胞剥離が観察されたら、フラスコを緩やかに振とうさせ、細胞懸濁液を滅菌容器に回収する。最大限の細胞を回収するために、フラスコを新鮮培養培地で濯ぎ、これを同じ滅菌容器に回収する。これにより細胞懸濁液は、細胞接種ステップまたは細胞バンク作製ステップへの準備が整う。
【0072】
ステップ2:細胞接種
ステップ1に記載した細胞剥離後の足場依存性細胞は、以下の指示に従って新しいフラスコに接種できる。
【0073】
−動物由来成分を用いた足場依存性細胞培養の通常の方法で適用されるものと同じ細胞密度で細胞を接種する。例えば、MRC−5細胞を、約5000細胞/cm〜約40000細胞/cm、好ましくは7500細胞/cm〜25000細胞/cmの目標細胞密度で接種する。
【0074】
−細胞接種後にフラスコに添加する増殖培地の容量は、動物由来成分を用いた足場依存性細胞培養の通常の方法で添加されるものと同じである。増殖培地は、新鮮な培養培地およびならし培地の混合物から構成される。ならし培地は、細胞剥離ステップの始めに回収された細胞培養培地である(ステップ1を参照)。新鮮培地に添加されるならし培地の量は、接種する細胞系に応じて異なる。0%〜約75%のならし培地の一般的目標が望ましい。例を挙げると、MRC−5細胞培地については、約10%〜約35%のならし培地の目標が望ましく、好ましくは約0.025ml/cm〜約3ml/cmの目標の培養培地がフラスコに添加される目標が望ましい。
【0075】
ステップ3:細胞増殖
細胞培養フラスコに接種される足場依存性細胞を、動物供与源の成分を用いた足場依存性細胞培養の通常の方法で適用されるものと同じ温度にてインキュベートする。例えば、約30℃〜約40℃、好ましくは37℃の目標温度が、MRC−5細胞のインキュベーションに望ましい。
【0076】
細胞培養フラスコに接種した足場依存性細胞は、動物由来成分を用いた足場依存性細胞培養の通常の方法で適用されるものと同じ雰囲気下でインキュベートする。例えば、MRC−5細胞は、CO制御を行って又は行わないで、かつ相対的な湿度制御を行って又は行わないでインキュベートできる。
【0077】
ステップ4:細胞バンク作製
ステップ1に記載した細胞剥離の後に得た足場依存性細胞は、細胞バンク作製のために、以下の点以外は動物由来成分を用いた足場依存性細胞培養の通常の方法で適用されるものと同じ手順に従って凍結され得る:
細胞は、動物由来成分を用いた足場依存性細胞凍結の通常の方法で使用されるものと同じ動物供与源を含まない抗凍結添加剤を添加した動物由来成分を含まない培地において凍結する必要がある。例えば、MRC−5細胞は、所望の目標である約2.5%〜約12.5%のDMSOおよび所望の目標である約0.01%〜約1%のメチルセルロースを添加した、動物由来成分を含まない培地中で凍結される。
【実施例3】
【0078】
培養培地における動物またはヒト足場依存性細胞でのウイルスの産生方法
ステップ5:ウイルス感染
足場依存性細胞に、動物由来成分を用いた足場依存性細胞培養の通常の方法で適用されるものと同じ感染多重度(MOI)で感染させる。例えば、約0.005〜約1のMOI目標が、A型肝炎ウイルス(HAV)のMRC−5細胞感染に望ましい。細胞は、本明細書で説明し、表2の成分を添加した、動物由来成分を含まない培地において感染させる。ウイルス産生のためには、タンパク質加水分解物は任意である。
【0079】
ステップ6:ウイルス増殖
感染した足場依存性細胞は、動物由来成分を用いた足場依存性細胞培養におけるウイルス増殖の通常の方法で適用されるものと同じ温度にてインキュベートする。例えば、約31℃〜約33℃、好ましくは32℃の目標温度が、MRC−5細胞上でのHAV増殖のために望ましい。感染した足場依存性細胞は、動物由来成分を用いた足場依存性細胞培養でのウイルス増殖の通常の方法で適用するものと同じ雰囲気下でインキュベートする。例えば、HAVに感染したMRC−5細胞は、CO制御を行って又は行わないで、かつ相対的な湿度制御を行って又は行わないでインキュベートできる。
【0080】
ステップ7:ウイルス回収
足場依存性細胞のウイルス感染とウイルス回収の間のウイルス増殖時間は、動物由来成分を用いた足場依存性細胞培養におけるウイルス増殖の通常の方法で適用するものと同じである。例えば、MRC−5細胞上でのHAV増殖は、ウイルス感染の約21〜29日後に達成される。
【0081】
ウイルス回収の方法は、動物由来成分を用いた足場依存性細胞培養におけるウイルス回収の通常の方法で適用するものと同じである。例えば、MRC−5細胞で産生されるHAVの回収は、PBSでの細胞層の二度の洗浄で開始し、その後、0.1〜1g/LのEDTAを添加したPBSを用いた細胞剥離、次いで凍結による細胞溶解により、ウイルスを回収する。
【実施例4】
【0082】
細胞剥離のためにフィシンプロテアーゼを用いた、老化までのMRC−5細胞培養(図1、2および3を参照)
MRC−5細胞老化試験の小規模手順は、老化が観察されるまで、ステップ1〜3に記載の動物由来成分を含まない方法での細胞作製方法の繰り返しを必要とする。細胞バンクPDL21から得たMRC−5細胞(動物供与源からの成分を含まない)を解凍し、表2に記載するように適切に添加した100mlの新鮮培地を含むNunc T175cmフラスコに接種し、37℃でインキュベートする。7日後、継代培養(ステップ1〜3を参照)を、NuncT−175cmフラスコ中で、37℃にて、45μUPABA/mlの酵素活性を有する4.2mlのフィシン溶液を細胞剥離のために用いて実施する。継代培養は、以下のスキームに従い実施する:
・D7:12.5%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/8の比率で細胞接種
・D12:12.5%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/8の比率で細胞接種
・D17:25%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/4の比率で細胞接種
・D21:D7から出発してスキームを繰り返す。
【0083】
この手順では、細胞接種は特定の細胞密度に固定されるものではない。対照に対して行った細胞計数は、細胞接種密度が8000細胞/cm〜33000細胞/cm以内にあることを示す。MRC−5細胞は、培養の90日後に集団倍加レベル71に到達し、細胞増殖速度は0.56PDL/日で、その後老化が観察された。図1、2および3に示すこれらの結果は、細胞剥離にブタトリプシンと、ウシ血清を使用する手順で観察されるもの(83日後に約PDL65で老化、約0.55PDL/日の細胞増殖速度)と同じである(Wistrom C, Villeponteau. B. Exp. Gerontol, 1990; 25(2):97-105)。
【実施例5】
【0084】
細胞剥離にブロメラインプロテアーゼを使用する、老化までのMRC−5細胞培養(図1、2および3を参照)
この方法は、以下の点以外は実施例3に開示したものと同様である:
−フィシン溶液の代わりに、0.01105ゼラチン消化単位(GDU)/mlの酵素活性を有するブロメライン溶液を細胞剥離に使用する。
【0085】
−以下のスキームに従って継代培養を行う:
・D7:12.5%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/8の比率で細胞接種
・D12:12.5%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/8の比率で細胞接種
・D17:12.5%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/4の比率で細胞接種
・D21:D7から出発してスキームを繰り返す。
【0086】
対照に対して行った細胞計数は、細胞接種密度が8000細胞/cm〜33000細胞/cm以内にあることを示す。MRC−5細胞は、培養の82日後に集団倍加レベル67に到達し、細胞増殖速度は0.56PDL/日で、その後老化が観察された。図1、2および3に示すこれらの結果は、細胞剥離にブタトリプシンと、ウシ血清を使用する手順で観察されるもの(83日後に約PDL65で老化、約0.55PDL/日の細胞増殖速度)と同じである(Wistrom C, Villeponteau. B. Exp. Gerontol, 1990; 25(2):97-105)。
【実施例6】
【0087】
細胞剥離にフィシンプロテアーゼを使用して増殖したMRC−5細胞でのHAV産生(図7を参照)
フィシンプロテアーゼを細胞剥離に使用して培養するMRC−5細胞でのNunc細胞ファクトリー(CF)におけるHAV産生は、実施例2のステップ5〜7に記載の方法の実施を必要とする。動物由来成分を含まない細胞バンク(PDL21)から得たMRC−5細胞を、実施例1のステップ1〜3に記載する方法を使用して、Nunc T175cmフラスコ中で、次いでCF中で、集団倍加レベル36に到達するまで増殖させる(図7)。MRC−5細胞を、表2に記載の培地中で調製したHAVストック種を、0.01の目標MOIにて感染させる。感染後、細胞を32℃にて27日間、7、14および21日後に培地を3回交換してインキュベートする(図7)。HAV回収は、感染の27日後に、PBSで細胞層を2回洗浄することから開始し、次いで約0.2g/LのEDTAを添加したPBSで細胞を剥離し、最終的に細胞を凍結して実施する。この手順を使用して得たHAVバルクの抗原力価は250〜350E.L.I.S.A単位(ELU)/0.1mlである。この結果は、細胞剥離のためにブタトリプシンと、ウシ血清を用いた手順で見られるものと同等である(HAVバルク抗原力価 約250ELU/0.1ml)。
【実施例7】
【0088】
ブロメラインプロテアーゼを細胞剥離に使用して増殖したMRC−5細胞でのHAV産生(図7を参照)
この方法は、フィシン溶液の代わりに0.01105ゼラチン消化単位(GDU)/mlの酵素活性を有するブロメライン溶液を細胞剥離に使用すること以外は、実施例5に開示したものと同様である。この手順を使用して得たHAVバルクの抗原力価は250〜350E.L.I.S.A単位/0.1mlである。この結果は、細胞剥離にブタトリプシンと、ウシ血清を使用する手順で観察されるものと同等である(HAVバルク力価 約250ELU/0.1ml)。
【実施例8】
【0089】
細胞剥離にフィシンプロテアーゼを使用して増殖するMRC−5細胞の細胞バンク作製(図8、9および10を参照)
フィシンで増殖したMRC−5細胞の細胞バンク作製手順は、実施例1のステップ1〜3に記載の、動物供与源の成分を含まない方法を用いた細胞作製方法の繰り返しを、選択したPDL(PDL21)に到達するまで行うことが必要である。このPDLにおいて、実施例1のステップ4に記載の方法に従って細胞を凍結する。血清を含む細胞バンクから得たMRC−5細胞(PDL14)を解凍し、表2に記載した100mlの培地を含むNunc T175cmフラスコに接種し、37℃にてインキュベートする。7日後、継代培養(ステップ1〜3を参照)を、Nunc T175cmフラスコ中、37℃にて、細胞剥離のために45μUPABA/mlの酵素活性を有する4.2mlのフィシン溶液を用いて実施する。以下のスキームに従い継代培養を行う:
・D7:12.5%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/8の比率で細胞接種
・D12:25%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/4の比率で細胞接種
・D16:1/4の比率で細胞バンク作製。
【0090】
この手順では、細胞接種は特定の細胞密度に固定されるものではない。細胞計数結果を図8、9および10に示す。MRC−5細胞は16日後にPDL21に到達した。このPDLにおいて、MRC−5細胞を、7.5%DMSOおよび0.1%のメチルセルロースを添加した動物由来成分を含まない培地中で凍結する。解凍後、これらのMRC−5細胞は、凍結前に観察されたものと同等の生存率および細胞増殖を示す(約90〜95%の生存率および0.55PDL/日を超える細胞増殖速度)(図1、2および3を参照)。この結果は、細胞剥離にブタトリプシンと、ウシ血清を使用する手順で観察されるもの(約90〜95%の生存率および0.55PDL/日の細胞増殖速度)と同等である(Wistrom C, Villeponteau. B. Exp. Gerontol, 1990; 25(2):97-105)。
【実施例9】
【0091】
細胞剥離にブロメラインプロテアーゼを使用して増殖するMRC−5細胞の細胞バンク作製(図8、9および10を参照)
この方法は、以下の点以外は、実施例7に開示されるものと同様である:
−フィシン溶液の代わりに、0.01105ゼラチン消化単位(GDU)/mlの酵素活性を有するブロメライン溶液を細胞剥離に使用する
−以下のスキームに従って継代培養を行う:
・D7:25%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/4の比率で細胞接種
・D11:12.5%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/8の比率で細胞接種
・D16:1/4の比率で細胞バンク作製。
【0092】
細胞計数結果を図8、9および10に示す。MRC−5細胞は16日後に集団倍加レベル21に到達した。解凍後、これらのMRC−5細胞は、凍結前に観察されたものと同等の生存率および細胞増殖を示す(約90〜95%の生存率および0.55PDL/日を超える細胞増殖速度)(図1、2および3を参照)。これらの結果は、細胞剥離にブタトリプシンと、ウシ血清を使用する手順で観察されるもの(約90〜95%の生存率および0.55PDL/日の細胞増殖速度)と同等である(Wistrom C, Villeponteau. B. Exp. Gerontol, 1990; 25(2):97-105)。
【実施例10】
【0093】
細胞剥離にTrypzean(Prodigen)またはrProtease(Invitrogen)を用いた、老化までのMRC−5細胞培養
実施例2のステップ1〜3に記載の動物由来成分を含まない方法を用いた細胞作製方法を老化が観察されるまで繰り返し行うことを含む、MRC−5細胞老化試験のための小規模手順を実施する。動物供与源の成分を含まない約PDL27の細胞培養で得たMRC−5細胞を、Nunc T175cmにおいて、1USP/mlの活性を有するTrypzean溶液を使用して、またはrProtease(Invitrogen)溶液(細胞剥離に使用するようにEDTAを添加したPBSに30倍希釈したストック溶液、実施例2のステップ1を参照)を使用して、以下のスキームに従い増殖させる:
・D0:12.5%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/8の比率で細胞接種
・D5:25%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/4の比率で細胞接種
・D9:12.5%のならし培地から構成される100mlの増殖培地に1/8の比率で細胞接種
・D14:D0から出発してスキームを繰り返す。
【0094】
この手順では、細胞接種は特定の細胞密度に固定されることはない。対照サンプルについて実施した細胞計数は、細胞接種密度が8000細胞/cm〜30000細胞/cmであることを示す。MRC−5細胞は、培養の61日後に60を上回るPDLに到達し、細胞増殖速度は約0.56PDL/日で、その後老化が観察された。図11、12および13に示すこれらの結果は、細胞剥離にブタトリプシンと、ウシ血清を使用する手順で観察されるもの(83日後に約PDL65で老化、および約0.55PDL/日の細胞増殖速度)と同等である(Wistrom C, Villeponteau. B. Exp. Gerontol, 1990; 25(2):97-105)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一動物供与源の外因性成分を欠く細胞培養培地であって、
i)EGF、FGF、トリヨード−L−チロニンおよびヒドロコルチゾンからなる群より選択される非動物第二供与源の少なくとも1つの外因性増殖因子;ならびに
ii)非動物第二供与源のIGF−1および/またはインスリンの少なくとも1つ
を含む、細胞培養培地。
【請求項2】
EGF、FGF、トリヨード−L−チロニンおよびヒドロコルチゾンからなる群より選択される非動物第二供与源の2つ以上の外因性増殖因子と、非動物第二供与源のIGF−1および/またはインスリンの少なくとも1つとの組み合わせを含む、請求項1に記載の細胞培養培地。
【請求項3】
非動物第二供与源のEGF、FGF、トリヨード−L−チロニンおよびヒドロコルチゾンと、非動物第二供与源のIGF−1および/またはインスリンの少なくとも1つとの組み合わせを含む、請求項2に記載の細胞培地。
【請求項4】
全ての成分が非動物第一供与源および第二供与源のものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞培養培地。
【請求項5】
非動物供与源のタンパク質加水分解物をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞培養培地。
【請求項6】
前記タンパク質加水分解物がコムギに由来する、請求項5に記載の細胞培養培地。
【請求項7】
動物、好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞の培養に適合させた、請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞培養培地。
【請求項8】
EGFは、存在する場合、約0.00001〜0.3mg/lの濃度であり;FGFは、存在する場合、約0.00001〜0.1mg/lの濃度のbFGFの形態をとり;トリヨード−L−チロニンは、存在する場合、約0〜1mg/lの濃度であり;ヒドロコルチゾンは、存在する場合、約0〜10mg/lの濃度であり;IGF−1は、存在する場合、約0.00001〜5mg/lの濃度であり;インスリンは、存在する場合、約0.1〜1000mg/lの濃度である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞培養培地。
【請求項9】
新鮮培地およびならし培地の混合物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の細胞培養培地。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の培地において増殖するように適合した、動物、好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞系。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の培養培地における生物学的生成物の産生に適合した、動物、好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞系。
【請求項12】
前記生物学的生成物がウイルスである請求項11に記載の細胞系。
【請求項13】
MRC−5、WI−38、TIG−1、TIG−7、FRhL−2、MRC−9、IMR−90およびIMR91からなる群より選択される、請求項10〜12のいずれか一項に記載の細胞系。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の新鮮培養培地と、動物または好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞とを混合してならし培養培地を作製するステップを含む、ならし培養培地の作製方法。
【請求項15】
a)請求項1〜9のいずれか一項に定義する細胞培養培地に細胞を播種し、該細胞を基板に接着させるステップ;
b)ステップa)で得たならし培地を回収し、細胞層をその基板から剥離して、非動物供与源のプロテアーゼで細胞を解離させて、それにより細胞懸濁液を形成するステップ;
c)細胞接着を可能にする接着支持体を含む培養器において、ステップb)の細胞懸濁液を該培養培地に接種するステップ;および
d)該培養培地中で該細胞を増殖させるステップ
を含む、動物または好ましくヒトの二倍体足場依存性細胞の作製方法。
【請求項16】
前記ステップb)で回収した細胞を凍結して細胞バンクを作製するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップa)〜c)のいずれかで使用する細胞培養培地が、i)ならし培地、もしくはii)新鮮培地、またはiii)ならし培地と新鮮培地との混合物である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
1:0〜0:1の比率(新鮮:ならし)で前記ならし培地を新鮮培地で希釈する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
7:1〜1:7の比率(新鮮:ならし)で前記ならし培地を新鮮培地で希釈する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
3:1〜1:3の比率(新鮮:ならし)で前記ならし培地を新鮮培地で希釈する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
3:1の比率(新鮮:ならし)で前記ならし培地を新鮮培地で希釈する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップb)で使用した非動物供与源のプロテアーゼが、システインエンドペプチダーゼ、中性真菌プロテアーゼ、中性細菌プロテアーゼ、またはセリンプロテアーゼからなる群より選択される、請求項15〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記セリンプロテアーゼが組換えトリプシンまたはトリプシン様プロテアーゼである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記システインエンドペプチダーゼが、フィシン、茎ブロメラインおよびアクチニジンからなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜9のいずれか一項に定義した培養培地において動物または好ましくはヒトの足場依存性細胞培養を作製する方法であって、該細胞培養を非動物供与源のプロテアーゼで継代するステップを含む、方法。
【請求項26】
前記非動物供与源のプロテアーゼが、システインエンドペプチダーゼ、中性真菌プロテアーゼ、中性細菌プロテアーゼ、またはトリプシン様プロテアーゼからなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記システインエンドペプチダーゼが、フィシン、茎ブロメラインおよびアクチニジンからなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞培養が、MRC−5、WI−38、TIG−1、TIG−7、FRhL−2、MRC−9、IMR−90およびIMR91細胞の培養である、請求項14〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
a)細胞にウイルスを感染させるステップ;
b)該ウイルスを増殖させるステップ;および
c)ウイルスを回収するステップ
を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の細胞培養培地中で、動物または好ましくはヒトの二倍体足場依存性細胞培養においてウイルスを産生する方法。
【請求項30】
前記細胞培養培地が、請求項17〜21のいずれか一項にさらに定義されている通りである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記回収ウイルスを1つ以上の精製ステップに供することをさらに含む、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記ウイルスが、MRC−5、WI−38、TIG−1、TIG−7、FRhL−2、MRC−9、IMR−90およびIMR91細胞から産生される、請求項29〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ウイルスが、HAV、ポリオウイルス、HSV、CMV、EBV、風疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス等のパラミクソウイルス科のグループ、VZVからなる群より選択される、請求項29〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
請求項29〜33のウイルスを、薬学的に許容される担体、賦形剤またはアジュバントと混合するステップを含む、ワクチンの製造方法。
【請求項35】
請求項29〜33のいずれか一項に記載の方法により得られる、ウイルス集団。
【請求項36】
請求項34の前記ウイルス集団を、薬学的に許容される担体、賦形剤またはアジュバントと混合するステップを含む、ウイルスワクチンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−273683(P2010−273683A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157682(P2010−157682)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2006−504501(P2006−504501)の分割
【原出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】