説明

動物固定装置及び動物固定方法

【課題】安楽死及び固定を、瞬時に且つ確実に行うことのできる、動物固定装置、及び動物固定方法を提供する。
【解決手段】動物が入れられる円柱型のケージと、前記ケージを回転させる回転機構と、安楽死用ガスを前記ケージ内に供給する、安楽死用ガス供給機構と、前記ケージ内に、固形冷媒を供給する、固形冷媒供給機構とを具備する。前記安楽死用供給機構は、前記安楽死用ガスが前記ケージの内壁を周方向に沿って流れるように、前記ケージに接続された、安楽死用ガスマニホールドを備える。前記固形冷媒供給機構は、前記ケージが回転しているときに、前記ケージ内に固形冷媒を供給可能となるように前記ケージに接続された、固形冷媒供給ラインを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物固定装置及び動物固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新規な医薬品などの開発にあたり、動物を用いた実験が行われる。実験用の動物は、所定の実験環境下で飼育された後、分析される。動物が実験環境下におかれていたときから、分析されるまでの間に、時間が経過することがある。また、実験環境下に置かれていたときから分析される時までの間で、動物が実験環境とは異なる環境下におかれることもある。時間経過や異なる環境下におかれることにより、分析時における動物の状態が、実験環境下における状態から変化してしまうことがある。
【0003】
動物の状態を実験環境下における状態に保つため、動物を安楽死させ、さらに生物学的に固定する技術が知られている。そのような技術として、非特許文献1(「回収型バイオ・サイエンス小型実験衛星システムの開発に関するフィージビリティスタディ」 報告書−要旨−、2008年3月、財団法人 機械システム振興協会)に記載された、安楽死/固定手段が挙げられる。
【0004】
図1は、非特許文献1に記載された安楽死/固定手段を示す概略図である。この安楽死/固定手段は、地上と宇宙とを往復する回収型実験衛星に搭載されるものである。この安楽死/固定手段は、ケージ106と、液体窒素ボンベ101と、二酸化炭素ボンベ102とを備えている。ケージ106は、小動物を飼育するために設けられており、断熱保冷機構103によって覆われている。二酸化炭素ボンベ102は、小動物を安楽死させるために設けられている。液体窒素ボンベ101は、小動物を固定するために設けられている。また、ケージ106には、リリーフ弁104が取り付けられた排気ライン105が設けられている。この手段では、回収型実験衛星が宇宙に打ち上げられた後、ケージ106内の小動物は、実験環境である微小重力環境下で飼育される。地上への帰還前に、二酸化炭素ボンベ102からケージ106内に二酸化炭素が供給される。これにより、小動物は、窒息して、安楽死する。また、液体窒素ボンベ101からは、温度調節器を介して、冷却された窒素ガスがケージ106内に供給される。これにより、小動物は冷却され、生物学的に固定される。地上への帰還時に、小動物は、過重力環境におかれる。過重力環境におかれることにより、小動物の状態が微小重力環境で飼育されていたときの状態から変化してしまうことが懸念される。しかし、非特許文献1に記載された安楽死/固定手段を用いれば、小動物が固定されているため、微小重力環境下で飼育されていたときの状態を維持することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「回収型バイオ・サイエンス小型実験衛星システムの開発に関するフィージビリティスタディ」 報告書−要旨−、2008年3月、財団法人 機械システム振興協会;URL:http://ringring−keirin.jp/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実験環境下における状態を維持したまま固定するためには、安楽死及び固定を、瞬時に且つ確実に行うことが重要である。しかし、安楽死前の動物は、生きているため、動き回ることが考えられる。そのため、瞬時に安楽死させることは難しい。また、固定にあたっても、その手法によっては、固定処理が開始されてから実際に動物が固定されるまでの間に時間が経過してしまい、実験環境下における状態が維持できない可能性がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、安楽死及び固定を、瞬時に且つ確実に行うことのできる、動物固定装置、及び動物固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、[発明を実施するための形態]で使用する番号・符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための形態]の記載との対応関係を明らかにするために付加されたものであるが、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明に係る動物固定装置は、動物が入れられる円柱型のケージ(2)と、ケージ(2)を回転させる回転機構(3)と、安楽死用ガスをケージ(2)内に供給する、安楽死用ガス供給機構(6)と、ケージ(2)内に、固形冷媒を供給する、固形冷媒供給機構(4)とを具備する。安楽死用ガス供給機構(6)は、安楽死用ガスがケージ(2)の内壁を周方向に沿って流れるように、ケージ(2)に接続された、安楽死用ガスマニホールド(61)を備える。固形冷媒供給機構(4)は、ケージ(2)が回転しているときに、ケージ(2)内に固形冷媒を供給可能となるようにケージ(2)に接続された、固形冷媒供給ライン(41)を備えている。
【0010】
この発明によれば、安楽死用ガスが、円柱型のケージ(2)の内壁を周方向に沿って流れるように供給される。これにより、安楽死用ガスの供給が開始されると、ケージ(2)内は、隅々まで速やかに安楽死用ガスで満たされる。そのため、動物がケージ(2)内のどの位置に存在したとしても、確実に且つ瞬時に安楽死させることができる。また、固形冷媒供給機構(4)は、ケージ(2)が回転している状態で、固形冷媒を供給する。固形冷媒をケージ(2)内に供給する場合、ケージ(2)が固定されていると、ケージ(2)の固形冷媒の受け入れ口近傍に固形冷媒が溜まってしまうことがある。これにより、固形冷媒の受け入れ口が閉塞されてしまい、十分な量の固形冷媒を供給できないことがある。これに対して、本発明では、ケージ(2)が回転するため、固形冷媒が一箇所に留まってしまうことが防止される。これにより、十分な量の固形冷媒をケージ(2)に投入することが可能となり、動物を速やかに冷却して固定することが可能となる。
【0011】
本発明にかかる動物固定方法は、動物が入れられる円柱型のケージ(2)内に、安楽死用ガスが前記ケージ(2)の内壁を周方向に沿って流れるように、安楽死用ガスを供給するステップと、安楽死用ガスを供給するステップの後に、ケージ(2)を回転させるステップと、ケージ(2)が回転しているときに、ケージ(2)内に、固形冷媒を供給するステップとを具備する。
【発明の効果】
【0012】
本実施形態によれば、安楽死及び固定を、瞬時に且つ確実に行うことのできる、動物固定装置、及び動物固定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】安楽死/固定手段を示す概略図である。
【図2】動物固定システム11を示す概略図である。
【図3】ケージを示す概略図である。
【図4】ケージの構成を示す概略図である。
【図5】動物固定装置の動作方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。図2は、本実施形態に係る動物固定システム11を示す概略図である。
【0015】
図2に示されるように、動物固定システム11は、実験衛星10内に搭載されている。実験衛星10は、地上から宇宙へ打ち上げられ、宇宙から地上へ帰還する装置である。
【0016】
動物固定システム11は、宇宙の微小重力環境において、動物(例えばマウス)の飼育を行い、帰還時に動物を生物学的に固定する装置である。動物固定システム11は、動物固定装置1と、動物固定装置1の制御を行う制御装置9とを備えている。制御装置9は、コンピュータに例示され、予めインストールされたプログラムに従って動作する。
【0017】
動物固定装置1は、ケージ2と、二酸化炭素ガス供給機構6と、換気機構5と、ドライアイス供給機構4と、回転機構3と、排気ライン7とを備えている。
【0018】
ケージ2は、動物を飼育するための筐体であり、円柱型である。
【0019】
二酸化炭素ガス供給機構6(安楽死用ガス供給機構)は、動物を安楽死させるために設けられている。二酸化炭素ガス供給機構6は、安楽死用ガスとして、二酸化炭素ガスをケージ2内に供給する。
【0020】
ドライアイス供給機構4(固形冷媒供給機構)は、動物を固定させるために設けられている。ドライアイス供給機構4は、固形冷媒として、ドライアイスをケージ2内に供給する。
【0021】
回転機構3は、ドライアイスの供給時に、ケージ2を回転させるために設けられている。
【0022】
換気機構5は、動物の飼育時に、ケージ2内を換気するために設けられている。
【0023】
排気ライン7は、二酸化炭素ガスの供給時に、ケージ2内の内圧を一定に保つために設けられている。排気ライン7は、ケージ2と実験衛星10の船外とを連結している。排気ライン7には、リリーフ弁8が介装されている。二酸化炭素の供給時には、ケージ2の内圧を保つため、リリーフ弁8が開けられる。これにより、ケージ2内の気体が船外へ排気され、ケージ2内の圧力が一定に保たれる。
【0024】
続いて、動物固定装置1の構成を詳細に説明する。図3(a)は、ケージ2の概略図を示している。また、図3(b)は、ケージ2を図3(a)に示されるa方向から見たときの図であり、図3(c)は、ケージ2を図3(a)に示されるb方向から見たときの図である。
【0025】
図3(a)乃至(c)に示されるように、ケージ2は、円柱型である。ケージ2の内部は、動物の居住空間になっている。ケージ2は、回転機構3と連結されている。回転機構3は、ケージ2を、ケージ2の中心軸c周りに回転させるように構成されている。
【0026】
図3(a)に示されるように、ケージ2には、二酸化炭素ガス供給機構6と、換気機構5と、ドライアイス供給機構4とが接続されている。
【0027】
二酸化炭素ガス供給機構6について説明する。図3(a)に示されるように、二酸化炭素ガス供給機構6は、GCOマニホールド61と、GCOポート62とを備えている。GCOポート62は、図示しない二酸化炭素ガスボンベに連結されている。GCOマニホールド61は、一端でGCOポート62に接続され、他端でケージ2に接続されている。GCOポート62が開かれると、二酸化炭素ガスボンベから、GCOマニホールド61を介して、二酸化炭素ガスがケージ2内に供給される。ここで、GCOマニホールド61は、二酸化炭素ガスが、ケージ2の内壁を周方向に沿って流れるように、ケージ2に接続されている。周方向に沿って二酸化炭素が流れることにより、二酸化炭素をケージ2の隅々まで行き渡らせることが可能である。
【0028】
また、図3(b)及び図3(c)に示されるように、GCOマニホールド61は、複数の(本実施形態では4本)のラインに分岐している。複数のラインは、ケージ2の長さ方向に沿って配置されている。そして、複数のラインの各々の先端部が、ケージ2に連結されている。このような構成により、これにより、二酸化炭素ガスは、ケージ2の長さ方向に沿って並ぶ複数の部分から、ケージ2内に供給される。これにより、二酸化炭素ガスを、ケージ2の長さ方向においても、満遍なく行き渡らせることが可能である。
【0029】
続いて、換気機構5について説明する。図3(a)に示されるように、換気機構5は、換気ライン53と、換気ポート51と、換気ポート用シャッタ52とを備えている。換気ライン53は、一端でケージ2に接続されており、他端で換気ポート51に接続されている。図3(c)に示されるように、換気ポート51には、メッシュ状の蓋が配置されている。これにより、換気ポート51は、動物がケージ2外へ逃れるのを防ぐと同時に、実験衛星10の船室と換気ライン53とを連通させている。換気ポート用シャッタ52は、換気ポート51を開閉する為に設けられている。動物の飼育時には、換気ポート用シャッタ52が換気ポート51とは別の位置に配置されており、ケージ2の内部が船室と連通する。これにより、ケージ2の内部が換気される。一方、安楽死処理及び固定処理の実行時には、換気ポート用シャッタ52が換気ポート51を覆う。これにより、ケージ2の内部が船室から遮断される。
【0030】
図3(c)に示されるように、換気ライン53の途中には、排気ライン7が連結されている。排気ライン7は、既述のように、リリーフ弁8を介して、船外に接続されている。
【0031】
続いて、ドライアイス供給機構4について説明する。図3(a)に示されるように、ドライアイス供給機構4は、ドライアイス供給ライン41と、圧縮バネ42と、板43とを備えている。ドライアイス供給ライン41の内部には、ドライアイスが充填されている。ドライアイス供給ライン41は、先端部でケージ2に連結されている。ドライアイス供給ライン41の基端部には、圧縮バネ42が取り付けられている。圧縮バネ42の先端部には板43が取り付けられている。このような構成により、ドライアイス供給ライン41内に充填されたドライアイスは、板43及び圧縮バネ42によって、ケージ2側に押されている。
【0032】
ここで、ケージ2について詳細に説明する。図3(a)に示されるように、ケージ2は、外ケージ23と、内ケージ24との二重構造となっている。図3(c)の一部には、内ケージ24の形状が点線で示されている。図3(c)に示されるように、内ケージ24には、ドライアイスを受け入れるためのドライアイス受け入れ口21が、周方向に沿って複数設けられている。また、ケージ2には、複数のドライアイス受け入れ口21の開閉を行う、ドライアイス受け入れ口用シャッタ22が設けられている。ドライアイス受け入れ口用シャッタ22は、ドライアイスの供給時には複数のドライアイス受け入れ口21を開放し、それ以外の時には複数のドライアイス受け入れ口22を閉じるように構成されている。
【0033】
図4は、ケージ2の構成をより詳細に説明するための概略図である。上述のように、ケージ2は、外ケージ23と、内ケージ24との二重構造となっている。外ケージ23は、円柱型であり、その両端面は閉じられている。一方、内ケージ23は、円筒型であり、外ケージ23の側面内壁を覆うように、外ケージ23内に挿入されている。ここで、外ケージ23は、ドライアイス供給ライン41、換気ライン53、及びGCOマニホールド61に対して固定されている。一方、内ケージ24は、回転機構3によって回転させられる部分である。すなわち、回転機構3は、外ケージ23は回転させず、内ケージ24だけを回転させるように構成されている。
【0034】
外ケージ23は、断熱性を有する素材により構成される。外ケージ23は、ドライアイス供給ライン接続口29と、換気ライン接続口28と、GCO供給ライン接続口27とを有している。外ケージ23は、ドライアイス供給ライン接続口29において、ドライアイス供給ライン41に接続されている。また、換気ライン接続口28において、換気ライン53と接続されている。また、GCO供給ライン接続口27において、GCOマニホールド61と接続されている。
【0035】
一方、内ケージ24には、既述のように、複数のドライアイス受け入れ口21が設けられている。複数のドライアイス受け入れ口21は、ドライアイス供給ライン接続口29と対応する位置において、周方向に沿って設けられている。ドライアイスの供給時には、内ケージ24が回転することにより、複数のドライアイス受け入れ口21が、順に、ドライアイス供給ライン接続口29上に位置することになる。これにより、ドライアイスは、複数のドライアイス受け入れ口21から、順に、ケージ2内に供給される。その結果、ドライアイスが各ドライアイス受け入れ口21を塞いでしまうことが防止され、十分な量のドライアイスをケージ2内に投入することが可能となる。
【0036】
また、内ケージ24には、換気ライン53と対応する位置に設けられた換気用開口26と、GCOマニホールド61に対応する位置に設けられたGCO受け入れ口25とを備えている。内ケージ24の内部は、換気用開口26を介して、換気ライン53と連通している。また、GCOマニホールドからは、GCO受け入れ口25を介して、二酸化炭素ガスが供給される。
【0037】
続いて、本実施形態に係る動物固定装置の動作方法について説明する。図5は、動物固定装置の動作方法を示すフローチャートである。
【0038】
ステップS1;実験衛星(ロケット)に搭載
まず、ケージ2内に動物を入れ、動物固定システム1を実験衛星10に搭載する。
【0039】
ステップS2;打ち上げ
続いて、実験衛星10を地上から宇宙に打ち上げる。実験衛星10は、宇宙における軌道上に投入され、微小重力環境下に置かれる。ケージ2内に入れられた動物は、微小重力環境下で飼育される。このとき、制御装置9により、換気機構5における換気ポート51は、開状態にされている。また、排気ライン7に設けられたリリーフ弁8は、閉じられている。また、内ケージ24の複数のドライアイス受け入れ口21は、ドライアイス供給口用シャッタ22により閉じられる。また、GCO供給ポート62も閉じられている。
【0040】
ステップS3;安楽死用ガスの供給
微小重力環境下での飼育が終了すると、制御装置9により、安楽死処理及び固定処理が行われる。具体的には、まず、換気ポート51が換気ポート用シャッタ52により閉じられる。そして、GGOポート62が開かれる。これにより、二酸化炭素ボンベから、ケージ2内に、二酸化炭素ガスが供給される。これにより、動物は、窒息し、安楽死する。この際、既述のように、二酸化炭素がケージ2内を周方向に沿って流れる。従って、ケージ2の内部は、速やかに、二酸化炭素ガスが行き渡る。その結果、動物を確実に且つ速やかに安楽死させることができる。
【0041】
また、二酸化炭素ガスの供給時には、排気ライン7に設けられたリリーフ弁8が、必要に応じて開かれる。これにより、ケージ2内の過剰な気体が船外に排気される。その結果、ケージ2内の内圧が以上に高くなることが防止される。
【0042】
ステップS4;ケージ回転
動物が安楽死すると、回転機構3により、ケージ2が回転させられる。具体的には、ケージ2の内ケージ24だけが回転させられる。
【0043】
ステップS5;固形冷媒(ドライアイス)の供給
ケージ2が回転している状態で、内ケージ24に設けられた複数のドライアイス受け入れ口21が、開放される。これにより、ドライアイス供給機構4から、各ドライアイス受け入れ口21を介して、ケージ2内にドライアイスが供給される。この際、既述のように、複数のドライアイス受け入れ口21が順番にドライアイスを受け入れる。従って、ドライアイスによる閉塞が防止され、十分な量のドライアイスをケージ2内に投入することができる。これにより、安楽死した動物は、すぐさま冷凍(生物学的に固定)される。
【0044】
ステップS6;帰還
動物が固定された後、制御装置9は、ケージ2内を密封する。すなわち、ドライアイス受け入れ口用シャッタ22により、複数のドライアイス受け入れ口21を閉じ、GGO供給ポートを閉じる。また、換気ポート51も閉状態に維持される。この状態で、実験衛星10が地上に帰還する。この際、動物は、過重力環境下にさらされる。しかし、動物は固定されているため、過重力環境が動物の生態状態に影響を及ぼすことはない。
【0045】
地上への帰還後、ケージ2内から動物が取り出され、分析される。この際、動物は、微小重力環境下で飼育されていたときの状態を維持しているので、微小重力環境が動物に与える影響を知ることができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、動物の安楽死処理及び固定処理を、自動で行うことができる。
【0047】
また、本実施形態では、二酸化炭素が、ケージ2の内壁を周方向に沿って流れるように供給されるため、速やかに二酸化炭素をケージ2内の全体に行きわたらせることが可能となる。これにより、動物を瞬時に且つ確実に安楽死させることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、ケージ2が回転している状態で、ドライアイスがケージ2内に供給される。これにより、ドライアイスが供給口を塞いでしまうことが防止され、十分な量のドライアイスを投入することが可能となる。その結果、動物を瞬時に且つ確実に冷却し、固定することができる。
【0049】
尚、本実施形態では、動物固定装置が実験衛星10に搭載される場合について説明した。実験衛星10内では無人であることが想定されるため、安楽死処理及び固定処理を自動で行うことが求められる。また、地球への帰還時において、動物は、過重力環境にさらされる点から、安楽死処理及び固定処理を確実に行うことが求められる。更に、固定処理を行ってから分析を行うまでの期間が長くなることからも、確実に安楽死処理及び固定処理が実行されることが求められる。本実施形態に係る動物固定装置によれば、これらの要求を答えることができるため、実験衛星10に搭載させて使用されることが好適である。しかし、本発明に係る動物固定装置は、必ずしも実験衛星10に搭載される必要はなく、地上で使用されてもよい。地上で使用されたとしても、本実施形態で述べたのと同様の作用効果を奏することができる。
【0050】
また、本実施形態では、安楽死用ガスとして、二酸化炭素を例に挙げて説明した。ただし、安楽死用ガスとしては、二酸化炭素に限定されるものではなく、動物を安楽死させることのできるガスであれば、他の種類のガスが用いられてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、固形冷媒として、ドライアイスを例に挙げて説明した。但し、固形冷媒はドライアイスに限定されるものではない。固形冷媒として、例えば、氷などの、他の種類の冷媒を用いることもできる。なお、ドライアイスを用いた場合には、ケージ2内が、冷凍状態(氷点下)に保たれる。一方、氷を固形冷媒として用いれば、ケージ2内が冷蔵状態(4℃〜10℃)程度に保たれる。ケージ2内を冷蔵状態に保つことによっても、動物の生態状態を固定することは可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 動物固定装置
2 ケージ
21 ドライアイス受け入れ口
22 ドライアイス受け入れ口用シャッタ
23 外筒
24 内筒
25 GCO受け入れ口
26 換気用開口
27 GCO供給ライン接続口
28 換気ライン接続口
29 ドライアイス供給ライン接続口
3 回転機構
4 ドライアイス供給機構
41 トライアイス供給ライン
42 圧縮バネ
43 板
5 換気機構
51 換気ポート
52 換気ポート用シャッタ
53 換気ライン
6 安楽死用ガス供給機構
61 GCOマニホールド
62 GCOポート
7 排気ライン
8 リリーフ弁
9 制御装置
10 実験衛星
11 動物固定システム
101 液体窒素ボンベ
102 二酸化炭素ボンベ
103 断熱保冷機構
104 リリーフ弁
105 排気ライン
106 ケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物が入れられる円柱型のケージと、
前記ケージを回転させる回転機構と、
安楽死用ガスを前記ケージ内に供給する、安楽死用ガス供給機構と、
前記ケージ内に、固形冷媒を供給する、固形冷媒供給機構と、
を具備し、
前記安楽死用ガス供給機構は、前記安楽死用ガスが前記ケージの内壁を周方向に沿って流れるように、前記ケージに接続された、安楽死用ガスマニホールドを備え、
前記固形冷媒供給機構は、前記ケージが回転しているときに、前記ケージ内に固形冷媒を供給可能となるように前記ケージに接続された、固形冷媒供給ラインを備えている
動物固定装置。
【請求項2】
請求項1に記載された動物固定装置であって、
前記ケージは、
円柱型であり、前記固形冷媒供給ラインに対して固定された外ケージと、
前記外ケージの内部に配置され、前記外ケージの側面内壁を覆う円筒部を有する、内ケージとを備え、
前記回転機構は、前記内ケージを回転させるように構成されている
動物固定装置。
【請求項3】
請求項2に記載された動物固定装置であって、
前記外ケージには、前記固形冷媒供給ラインが接続される、固形冷媒接続口が設けられており、
前記内ケージにおける前記固形冷媒接続口に対応する位置には、周方向に沿って複数の複数の固形冷媒受け入れ口が形成されており、
前記複数の固形冷媒受け入れ口は、前記内ケージが回転することにより、順番に前記固形冷媒を受け入れる
動物固定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載された動物固定装置であって、
前記安楽死用ガス供給マニホールドは、前記ケージの長さ方向に沿って配置される複数のガス供給ラインを有しており、
前記複数のガス供給ラインの各々は、前記安楽死用ガスが前記ケージの内壁を周方向に沿って流れるように、前記ケージに接続されている
動物固定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載された動物固定装置であって、
更に
実験時に前記ケージ内の換気を行う、換気機構
を具備する
動物固定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載された動物固定装置であって、
前記安楽死用ガス供給機構は、前記安楽死用ガスとして、二酸化炭素を供給するように構成されている
動物固定装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載された動物固定装置であって、
前記固形冷媒供給機構は、前記固形冷媒として、ドライアイスを供給するように構成されている
動物固定装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載された動物固定装置であって、
前記回転機構は、前記安楽死用ガス供給機構により前記安楽死用ガスが供給された後に、前記ケージを回転させ、
前記固形冷媒供給機構は、前記ケージが回転しているときに、前記固形冷媒を供給する
動物固定装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載された動物固定装置であって、
前記ケージ、前記回転機構、前記固形冷媒供給機構、及び前記安楽死用ガス供給機構は、地上と宇宙とを往復移動する実験衛星内に搭載されており、
前記安楽死用ガス供給機構は、前記実験衛星が宇宙に存在するときに前記安楽死用ガスを供給し、
前記回転機構は、前記実験衛星が宇宙に存在するときに、前記ケージを回転させ、
前記固形冷媒供給機構は、前記実験衛星が宇宙に存在するときに、前記固形冷媒を供給する
動物固定装置。
【請求項10】
動物が入れられる円柱型のケージ内に、前記安楽死用ガスが前記ケージの内壁を周方向に沿って流れるように、安楽死用ガスを供給するステップと、
前記安楽死用ガスを供給するステップの後に、前記ケージを回転させるステップと、
前記ケージが回転しているときに、前記ケージ内に、固形冷媒を供給するステップと、
を具備する
動物固定方法。
【請求項11】
請求項10に記載された動物固定方法であって、
更に、
前記ケージを実験衛星内に搭載するステップと、
前記搭載するステップの後に、前記実験衛星を宇宙に移動させるステップと、
を具備し、
前記安楽死用ガスを供給するステップは、前記移動させるステップの後に実行される
動物固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−200623(P2010−200623A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46745(P2009−46745)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)