動物用血球測定装置
【課題】凝集型の網状赤血球を計数することが可能な動物用血球測定装置を提供する。
【解決手段】蛍光強度と前方散乱光強度とを座標軸とするスキャッタグラムから赤血球と網状赤血球とを含む第1の座標領域を分画し、この第1の座標領域内のプロットデータに基づいて蛍光強度に対する血球数の分布を求め、求めた分布から血球数がピークとなる蛍光強度Xと前記分布の分散σとを取得する。取得した蛍光強度Xおよび分散σと、凝集型の網状赤血球の測定に適用される係数αとをもとに、Thr=X+α・σの演算を行って、蛍光強度の閾値Thrを求め、この閾値Thrをもとに凝集型の網状赤血球を含む第2の座標領域を分画し、第2の座標領域内のプロット数を計数して凝集型の網状赤血球数を取得する。ここで、係数αは、凝集型の網状赤血球を含まないイヌ等の網状赤血球数を計数する場合の2倍程度の大きさに設定される。
【解決手段】蛍光強度と前方散乱光強度とを座標軸とするスキャッタグラムから赤血球と網状赤血球とを含む第1の座標領域を分画し、この第1の座標領域内のプロットデータに基づいて蛍光強度に対する血球数の分布を求め、求めた分布から血球数がピークとなる蛍光強度Xと前記分布の分散σとを取得する。取得した蛍光強度Xおよび分散σと、凝集型の網状赤血球の測定に適用される係数αとをもとに、Thr=X+α・σの演算を行って、蛍光強度の閾値Thrを求め、この閾値Thrをもとに凝集型の網状赤血球を含む第2の座標領域を分画し、第2の座標領域内のプロット数を計数して凝集型の網状赤血球数を取得する。ここで、係数αは、凝集型の網状赤血球を含まないイヌ等の網状赤血球数を計数する場合の2倍程度の大きさに設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用の血球測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動物の診断において、網状赤血球を計数することは、例えば貧血の診断に有用である。現在、動物病院では、赤血球や白血球の計数は分析装置により自動化されている場合もあるが、網状赤血球は目視にて計数することが一般的である。
【0003】
また、動物の網状赤血球を自動的に計数する分析装置も知られている(例えば、特許文献1)。上記特許文献1記載の分析装置は、分析対象の動物種の選択を受け付け、受け付けられた動物種に対応する分析条件を用いて血球を計数する。計数される血球には、赤血球および白血球等に加え、網状赤血球も含まれる。
【0004】
ここで、網状赤血球は、単一のタイプから構成されている動物種もあるが、例えばネコの場合には、点状型と凝集型とを含む複数のタイプから構成されている。このように網状赤血球が複数のタイプから構成されている動物種について貧血を診断する場合には、凝集型を計数することが有用である。例えば、ネコの場合、点状型の数は急性失血後10〜20日目にピークとなり、その後約4週間かけて消失する。一方、凝集型の数は、4〜7日目にピークとなる。したがって、例えば、貧血からの回復状況(すなわち、投薬の効果)を判断するには、早期にピークに到達する凝集型を計数するのが有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−17637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、網状赤血球を自動的に計数する分析装置が知られているが、上記特許文献1には、複数のタイプから構成されている網状赤血球のうち、凝集型のみを計数することについては記載がない。従って、上記特許文献1に記載の分析装置を用いたとしても、凝集型の網状赤血球については、目視に頼らざるを得ず、獣医、検査技師等の負担が大きいという問題があった。
【0007】
本発明は、凝集型の網状赤血球を計数することが可能な動物用血球測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様に係る動物用血球測定装置は、動物の血液から測定試料を調製する試料調製部と、前記試料調製部によって調製された前記測定試料から、前記測定試料の特徴を表す特徴情報を取得する特徴情報取得部と、前記特徴情報取得部によって取得された前記特徴情報に基づいて、前記血液に含まれる凝集型の網状赤血球を他の血球から分類する凝集型分類手段と、前記凝集型分類手段によって分類された前記凝集型の網状赤血球の数に関する情報を出力する出力部とを備える。
【0009】
本態様に係る動物用血球測定装置によれば、凝集型の網状赤血球を目視に頼らずに計数可能となるため、獣医、検査技師等の負担を軽減することができる。
【0010】
本態様に係る動物用血球測定装置は、前記凝集型分類手段による分類結果に基づいて、前記凝集型の網状赤血球の数を取得する血球数取得手段をさらに備え得る。この場合、前記出力手段は、前記血球数取得手段によって取得された前記凝集型の網状赤血球の数を、前記凝集型の網状赤血球の数に関する情報として出力するよう構成され得る。
【0011】
本態様に係る動物用血球測定装置において、前記試料調製部は、前記血液と網状赤血球の核酸を染色する染色液とから前記測定試料を調製する構成とされ得る。また、前記特徴情報取得部は、前記測定試料に光を照射する光源を備え、前記光源から前記測定試料に光が照射されることにより生じる蛍光を受光し、受光強度に応じた蛍光強度情報を前記特徴情報として取得し、前記凝集型分類手段は、前記蛍光強度情報に基づいて、前記血液に含まれる凝集型の網状赤血球を他の血球から分類する構成とされ得る。
【0012】
この場合、前記特徴情報取得部は、より好ましくは、前記光源から前記測定試料に光が照射されることにより生じる散乱光を受光し、受光強度に応じた散乱光強度情報を前記特徴情報としてさらに取得し、前記凝集型分類手段は、前記蛍光強度情報および前記散乱光強度情報に基づいて、前記血液に含まれる凝集型の網状赤血球を他の血球から分類する構成とされ得る。
【0013】
このように構成すれば、蛍光強度と散乱光強度とをそれぞれ座標軸とするスキャッタグラムを分画することにより、凝集型の網状赤血球の座標領域を特定することができる。よって、この座標領域に含まれるプロットデータをもとに、凝集型の網状赤血球の数を取得することができる。
【0014】
なお、本態様に係る動物用血球測定装置は、ネコの血球測定に用いて好ましいものであるが、ネコに限らず、血液中に凝集型の網状赤血球を含み得る動物であれば、他の動物の血球測定にも用い得るものである。
【0015】
また、本態様に係る動物用血球測定装置は、測定対象となる動物の種類を少なくとも第1の動物種および第2の動物種から選択する選択手段と、前記特徴情報取得部によって取得された前記特徴情報に基づいて、前記血液に含まれる全ての型を含む網状赤血球を他の血球から分類する網状赤血球分類手段とをさらに備える構成とすることができる。そして、前記第1の動物種が選択された場合には、前記凝集型分類手段によって凝集型の網状赤血球を他の血球から分類し、前記第2の動物種が選択された場合には、前記網状赤血球分類手段によって全ての型を含む網状赤血球を他の血球から分類する構成することができる。
【0016】
このように構成すれば、測定対象とされる動物種を適宜切り替えることにより、第1の動物種から凝集型の網状赤血球の数に関する情報を出力できる他、第2の動物種から、網状赤血球の総数に関する情報をも出力することができる。
【0017】
この場合、前記第1の動物種の典型例はネコであり、前記第2の動物種の典型例はイヌとされ得る。選択手段によってネコが選択されると、凝集型の網状赤血球の個数に関する情報が出力され、イヌが選択されると、網状赤血球の総数に関する情報が出力される。こうして、獣医、検査技師等は、選択手段により選択するだけで、ネコまたはイヌの診断に有用な網状赤血球の個数に関する情報を取得することができ、診断時の負担を軽減することができる。
【0018】
なお、前記特徴情報取得部によって、前記蛍光強度の他、前記散乱光強度が取得される場合、前記凝集型分類手段は、前記蛍光強度と前記散乱光強度とをそれぞれ座標軸とするスキャッタグラムから前記凝集型の網状赤血球を含む凝集型座標領域を分画し、前記血球数取得手段は、前記凝集型座標領域に含まれるプロットデータの数に基づいて、前記凝集型の網状赤血球の数を取得する構成とされ得る。
【0019】
より詳細には、前記凝集型分類手段は、前記スキャッタグラムから赤血球と網状赤血球とを含む赤血球系座標領域を分画し、前記赤血球系座標領域内のプロットデータに基づいて前記凝集型座標領域を分画する構成とされ得る。
【0020】
この場合、前記凝集型分類手段は、前記赤血球系座標領域内のプロットデータに基づいて前記蛍光強度に対する血球数の分布を求め、前記分布から前記血球数がピークとなる前記蛍光強度Xと前記分布の分散σとを取得し、取得した前記蛍光強度Xおよび前記分散σと、前記動物の前記凝集型の網状赤血球の測定に適用される係数αとをもとに、Thr=X+α・σの演算を行うことにより、前記凝集型座標領域を分画する際の前記蛍光強度の閾値Thrを求める構成とされ得る。
【0021】
なお、前記係数αは、凝集型の網状赤血球を含まない動物種の血液における前記スキャッタグラムから網状赤血球の座標領域を分画する際に適用される前記係数αよりも所定の大きさだけ大きく設定される。ここで、前記係数αは、凝集型の網状赤血球を含まない動物種の血液における前記スキャッタグラムから網状赤血球の座標領域を分画する際に適用される前記係数αの2倍程度の大きさに設定され得る。
【0022】
こうすると、凝集型の網状赤血球を含む座標領域を適正に特定することができる。
【0023】
なお、本態様に係る動物用血球測定装置の効果は、以下の実施の形態における検証において、より明確となろう。
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、本発明によれば、凝集型の網状赤血球を計数することが可能な動物用血球測定装置を提供することができる。
【0025】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態に係る血球測定装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】実施の形態に係る測定ユニットの外観を示す斜視図である。
【図3】実施の形態に係る測定ユニットの内部構造を示す斜視図である。
【図4】実施の形態に係る測定ユニットの内部構造を示す側面図である。
【図5】実施の形態に係る測定ユニットの構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態に係る測定ユニットの試料調製部の流体回路図である。
【図7】実施の形態に係るフローセルの構成を模式的に示す斜視図である。
【図8】実施の形態に係るフローサイトメータの構成を模式的に示す図である。
【図9】実施の形態に係るデータ処理ユニットの構成を示すブロック図である。
【図10】実施の形態に係る網状赤血球計測時の処理フローチャートである。
【図11】実施の形態に係る解析処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図12】実施の形態に係る解析処理を説明するためのスキャッタグラムである。
【図13】実施の形態に係るスキャッタグラムの分画過程を示す図である。
【図14】実施の形態に係るスキャッタグラムの分画状態を示す図である。
【図15】実施の形態に係る閾値Thrの設定方法を模式的に示す図である。
【図16】ネコの血液を撮影した顕微鏡写真を模式的に示す図である。
【図17】実施の形態に係る血球測定装置の検証例を示す図である。
【図18】実施の形態に係る分析ルーチンの変更例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係る動物用の血球測定装置について、図面を参照して説明する。以下では、動物用の血球測定装置に係る構成のうち、主として、網状赤血球の計数に関する構成を説明し、白血球の測定に関する構成等については、説明を省略する。
【0028】
図1は、実施の形態に係る動物用の血球測定装置の概略構成を示す正面図である。図1に示すように、本実施の形態に係る血球測定装置1は、測定ユニット2と、データ処理ユニット3とにより主として構成されている。測定ユニット2は、血液検体中に含まれる成分について所定の測定を行い、測定データをデータ処理ユニット3に送信する。データ処理ユニット3は、この測定データをもとに分析処理を行い、分析結果をモニタ上に表示する。かかる血球測定装置1は、例えば、動物病院に設置されている。
【0029】
測定ユニット2とデータ処理ユニット3とは、互いにデータ通信が可能なように、データ伝送ケーブル3aによって接続されている。なお、データ伝送ケーブル3aで測定ユニット2とデータ処理ユニット3とを直接接続する構成に限らず、例えば、電話回線を使用した専用回線、LAN、またはインターネット等の通信ネットワークを介して測定ユニット2とデータ処理ユニット3とが接続されていてもよい。
【0030】
図2は、測定ユニット2の外観を示す斜視図である。図2に示すように、測定ユニット2の正面の右下部分には、血液試料を収容した採血管20をセット可能な採血管セット部2aが設けられている。この採血管セット部2aは、その近傍に設けられたボタンスイッチ2bをユーザが押すことにより前方へ開いて迫り出すようになっており、この状態でユーザが採血管20をセットすることが可能となっている。採血管20がセットされた後、ユーザが再度前記ボタンスイッチ2bを押すことによって、採血管セット部2aが後方へ移動して閉止する。また、測定ユニット2の正面には、検体の測定を開始させるためのスタートボタン2cが設けられている。
【0031】
図3は、測定ユニット2の内部構造を示す斜視図であり、図4は、その側面図である。
【0032】
採血管20がセットされた採血管セット部2aは、前述のように測定ユニット2の内部に収容される。これにより、採血管20が所定の吸引位置に位置決めされる。測定ユニット2の内部には、試料を吸引するピペット21、血液と試薬とを混合するためのチャンバ22、23等を有する試料調製部4が設けられている。
【0033】
ピペット21は、上下方向に延びた管状に形成されており、その先端は鋭く尖っている。また、ピペット21は、図示しないシリンジポンプに連結されており、このシリンジポンプの動作によって液体を所定量だけ吸引し、また吐出することが可能である。さらに、ピペット21は、移動機構に接続されており、上下方向および前後方向にそれぞれ移動可能となっている。
【0034】
採血管20はゴム製のキャップ20aによって密閉されている。このキャップを、ピペット21の鋭利な先端によって穿刺することで、採血管20に収容された血液試料が、ピペット21によって所定量吸引される。図4に示すように、採血管セット部2aの後方にはチャンバ22、23が設けられている。血液試料を吸引した状態のピペット21を前記移動機構により移動させて、チャンバ22、23の中に血液試料が吐出されることにより、チャンバ22、23に血液試料が供給される。
【0035】
図5は、測定ユニット2の構成を示すブロック図であり、図6は、試料調製部4の構成を示す流体回路図である。図5に示すように、測定ユニット2は、試料調製部4と、RET検出部5と、RBC検出部6と、HGB検出部7と、制御部8と、通信部9とを備えている。
【0036】
制御部8は、CPU、ROM、RAM等から構成されており、測定ユニット2の各種構成要素の動作制御を行う。通信部9は、例えばRS-232Cインタフェース、USBインタフェース、Ethernet(登録商標)インタフェースであり、データ処理ユニット3との間でデータの送受信を行う。
【0037】
図6に示すように、試料調製部4は、チャンバ、複数の電磁弁、ダイヤフラムポンプ等を備えた流体ユニットである。チャンバ22は、赤血球、血小板の測定、およびヘモグロビンの測定に供される試料の調製に使用される。また、チャンバ23は、網状赤血球の測定に供される試料の調製に使用される。なお、図6では、説明を簡単にするためにチャンバ23の周辺の流体回路の構成のみを示している。
【0038】
チャンバ23は、希釈液を収容する試薬容器RC1と、染色液を収容する試薬容器RC2とにチューブ等の流体通流路P1、P2を介して接続されている。チャンバ23と試薬容器RC1とを繋ぐ流体通流路P1の途中には、電磁弁SV19、SV20が設けられており、また電磁弁SV19、SV20の間には、ダイヤフラムポンプDP4が設けられている。ダイヤフラムポンプDP4は、陽圧源および陰圧源が接続されており、ダイヤフラムポンプDP4を陽圧駆動および陰圧駆動することができるようになっている。また、チャンバ23と試薬容器RC2とを繋ぐ流体通流路P2の途中には、電磁弁SV40、SV41が設けられており、また電磁弁SV40、SV41の間には、ダイヤフラムポンプDP5が設けられている。
【0039】
これら電磁弁SV19、SV20、SV40、SV41およびダイヤフラムポンプDP4、DP5を制御部8が次のように制御して、溶血剤および染色液がチャンバ23に供給される。
【0040】
まず、ダイヤフラムポンプDP4よりも試薬容器RC1側に配されている電磁弁SV19を開放し、ダイヤフラムポンプDP4よりもチャンバ23側に配されている電磁弁SV20を閉止した状態で、ダイヤフラムポンプDP4を陰圧駆動することにより、試薬容器RC1から溶血剤が定量分取される。その後、電磁弁SV19を閉止し、電磁弁SV20を開放させ、ダイヤフラムポンプDP4を陽圧駆動することにより、定量された溶血剤がチャンバ23に供給される。
【0041】
同様に、ダイヤフラムポンプDP5よりも試薬容器RC2側に配されている電磁弁SV40を開放し、ダイヤフラムポンプDP5よりもチャンバ23側に配されている電磁弁SV41を閉止した状態で、ダイヤフラムポンプDP5を陰圧駆動することにより、試薬容器RC2から染色液が定量分取される。その後、電磁弁SV40を閉止し、電磁弁SV41を開放させ、ダイヤフラムポンプDP5を陽圧駆動することにより、定量された染色液がチャンバ23に供給される。このようにして、血液試料と試薬(溶血剤、染色液)が混合され、網状赤血球測定用の試料が調製される。
【0042】
また、チャンバ23は、チューブおよび電磁弁SV4を含む流体通流路P3を介してフローサイトメータであるRET検出部5に接続されている。この流体通流路P3は途中で分岐しており、その分岐先に電磁弁SV1、SV3が直列接続されている。また、電磁弁SV1、SV3の間には、シリンジポンプSP2が設けられている。シリンジポンプSP2にはステッピングモータM2が接続されており、このステッピングモータM2の動作によってシリンジポンプSP2が駆動される。
【0043】
また、チャンバ23とRET検出部5とを繋ぐ流体通流路P3は、更に分岐しており、この分岐先には電磁弁SV29およびダイヤフラムポンプDP6が接続されている。RET検出部5により網状赤血球を測定する場合には、電磁弁SV4、SV29を開放した状態でダイヤフラムポンプDP6を陰圧駆動して、チャンバ23から試料を吸引することにより、流体通流路P3に当該試料がチャージングされる。試料のチャージングが終了すると、電磁弁SV4、SV29が閉止される。その後、電磁弁SV3を開放し、シリンジポンプSP2を駆動することにより、チャージングした試料がRET検出部5へと供給される。
【0044】
図6に示すように、試料調製部4にはシース液チャンバ24が設けられており、このシース液チャンバ24がRET検出部5に流体通流路P4を介して接続されている。この流体通流路P4には、電磁弁SV31が設けられている。かかるシース液チャンバ24は、RET検出部5に供給されるシース液を貯留するためのチャンバであり、チューブ、電磁弁SV33を含む流体通流路P5を介して、シース液が収容されたシース液容器EPKに接続されている。なお、試薬容器RC1に収容されている希釈液をシース液として用いることも可能である。
【0045】
網状赤血球の測定の開始前には、電磁弁SV33が開放されてシース液がシース液チャンバ24に供給され、予めシース液チャンバ24にシース液が貯留される。そして、網状赤血球の測定が開始されるときには、前述したRET検出部5への試料の供給と同期して、電磁弁SV31が開放され、シース液チャンバ24に貯留されたシース液がRET検出部5へ供給される。
【0046】
RET検出部5は、光学式のフローサイトメータであり、網状赤血球を半導体レーザによるフローサイトメトリー法により測定することが可能である。かかるRET検出部5は、試料の液流を形成するフローセル51を備えている。
【0047】
図7は、フローセル51の構成を模式的に示す斜視図である。フローセル51は、透光性を有する石英、ガラス、合成樹脂等の材料によって管状に構成されており、その内部が試料およびシース液が通流する流路となっている。フローセル51には、内部空間が他の部分よりも細く絞り込まれたオリフィス51aが設けられている。フローセル51の当該オリフィス51aの入口付近は二重管構造となっており、その内側管部分が試料ノズル51bとなっている。この試料ノズル51bは、試料調製部4の流体通流路P3に接続されており、この試料ノズル51bからオリフィス51aに向かって試料が吐出される。
【0048】
また、試料ノズル51bの外側の空間はシース液が通流する流路51cであり、この流路51cは前述の流体通流路P4に接続されている。シース液チャンバ24から供給されたシース液は、流体通流路P4を介して流路51cを通流し、オリフィス5 1aへ導入される。こうして、フローセル51に供給されたシース液は、試料ノズル51bから吐出された試料を取り囲むように流れることとなる。そして、オリフィス51aによって試料の流れが細く絞り込まれ、試料に含まれる網状赤血球、赤血球等の粒子がシース液に取り囲まれて一つずつオリフィス51aを通過する。
【0049】
図8は、RET検出部5の構成を模式的に示す概略平面図である。RET検出部5には、半導体レーザ光源52が、フローセル51のオリフィス51aへ向けてレーザ光を出射するように配置されている。半導体レーザ光源52とフローセル51との間には、複数のレンズからなる照射レンズ系53が配されている。この照射レンズ系53によって、半導体レーザ光源から出射された平行ビームがビームスポットに集束されるようになっている。
【0050】
また、半導体レーザ光源52から直線的に延びた光軸上には、フローセル51を挟んで照射レンズ系53に対向するように、ビームストッパ54aが設けられている。半導体レーザ光源52からのビームのうちフローセル51内で散乱されずに直進するビーム(以下、直接光という)は、ビームストッパ54aによって遮光される。また、ビームストッパ54aの更に光軸下流側には、フォトダイオード54が配されている。
【0051】
フローセル51に試料が流れると、レーザ光により散乱光および蛍光の光信号が発生する。このうち前方の信号光(散乱光)が前記フォトダイオード54へ向けて照射される。半導体レーザ光源52から直線的に延びた光軸に沿って進行する光のうち、半導体レーザ光源52の直接光は、ビームストッパ54aによって遮断され、フォトダイオード54には概ね前記光軸方向に沿って進行する散乱光(以下、前方散乱光という)のみが入射する。
【0052】
フローセル51から発せられた前方散乱光は、フォトダイオード54で光電変換され、これによって生じた電気信号(以下、前方散乱光信号という)がアンプ54bによって増幅されて、制御部8に出力される。かかる前方散乱光信号は、血球の大きさを反映しており、制御部8により信号処理された後、通信部9を介してデータ処理ユニット3に出力される。
【0053】
また、フローセル51の側方であって、半導体レーザ光源52からフォトダイオード54へ直線的に延びる光軸に対して直交する方向には、側方集光レンズ55が配されている。フローセル51内を通過する血球に半導体レーザを照射したときに発生する側方光(前記光軸に対して交差する方向へ出射される光)がこの側方集光レンズ55で集められるようになっている。側方集光レンズ55の下流側にはダイクロイックミラー56が設けられており、側方集光レンズ55から送られた信号光は、ダイクロイックミラー56で散乱光成分と蛍光成分とに分けられる。
【0054】
ダイクロイックミラー56の側方(側方集光レンズ55とダイクロイックミラー56とを結ぶ光軸方向に交差する方向)には、側方散乱光受光用のフォトダイオード57が設けられている。また、ダイクロイックミラー56の前記光軸下流側には、光学フィルタ58aおよびアバランシェフォトダイオード58が設けられている。
【0055】
ダイクロイックミラー56により反射された側方散乱光成分は、フォトダイオード57で光電変換される。かかる光電変換によって生じた電気信号(以下、側方散乱光信号という)がアンプ57aによって増幅され、制御部8に出力される。この側方散乱光信号は、血球の内部情報(核の大きさ等)を反映しており、制御部8により信号処理された後、通信部9を介してデータ処理ユニット3に出力される。
【0056】
また、ダイクロイックミラー56を透過した側方蛍光成分は光学フィルタ58aによって波長選択された後、アバランシェフォトダイオード58で光電変換される。かかる光電変換によって生じた電気信号(側方蛍光信号)がアンプ58bによって増幅され、制御部8に出力される。この側方蛍光信号は、血球の染色度合いに関する情報を反映しており、制御部8により信号処理された後、通信部9を介してデータ処理ユニット3に出力される。
【0057】
RBC検出部6は、赤血球数および血小板数を、シースフローDC検出法により測定することが可能である。このRBC検出部6は、電気抵抗方式の検出器を有しており、この検出器に上述したチャンバ22から試料が供給されるようになっている。赤血球および血小板の測定を行う場合には、チャンバ22において、血液に希釈液を混合した試料が調製される。かかる試料がシース液とともに試料調製部4から検出器に供給され、検出器中では、上記と同様、シース液によって試料が取り囲まれた液流が形成される。
【0058】
かかる検出器中の流路の途中には、電極を有するアパーチャが設けられている。試料中の血球が一つずつ当該アパーチャを通過するときのアパーチャにおける直流抵抗が検出され、この電気信号が制御部8へ出力される。前記直流抵抗は、アパーチャを血球が通過するときに増大するため、この電気信号はアパーチャの血球の通過情報を反映している。この電気信号は、制御部8により信号処理され、通信部9を介してデータ処理ユニット3に送信される。データ処理ユニット3は、受信したデータを解析し、赤血球および血小板を計数する。
【0059】
HGB検出部7は、血色素量を、SLSヘモグロビン法によって測定することが可能である。HGB検出部7には、希釈試料を収容するセルが設けられており、このセルにチャンバ22から試料が供給されるようになっている。ヘモグロビンの測定を行う場合には、チャンバ22において血液に希釈液と溶血剤とを混合した試料が調製される。この溶血剤は、血液中のヘモグロビンをSLS−ヘモグロビンへと転化する性質を有している。また、セルを間に挟んで発光ダイオードとフォトダイオードとが対向配置されており、発光ダイオードからの光がフォトダイオードで受けられる。
【0060】
発光ダイオードは、SLS−ヘモグロビンによる吸光率が高い波長の光を発するようになっており、また、セルは透光性の高いプラスチック材料で構成されている。これにより、フォトダイオードでは、発光ダイオードの発光が概ね希釈試料によってのみ吸光された透過光が受光されることとなる。フォトダイオードは、受光量(吸光度)に応じた電気信号を制御部8へと出力する。制御部8は、この吸光度と予め測定された希釈液のみの吸光度とを信号処理し、通信部9を介してデータ処理ユニット3に送信される。データ処理ユニット3は、上記2つの吸光度を比較して、ヘモグロビン値を算出する。
【0061】
図9に示す如く、データ処理ユニット3は、CPU101、ROM102、RAM103、ハードディスクドライブ(HDドライブ)104、通信インタフェース105、キーボードおよびマウス等の入力インタフェース106、および、モニタ、スピーカ等の出力インタフェース107を備えるコンピュータシステムによって構成されている。
【0062】
通信インタフェース105は、例えば、RS-232Cインタフェース、USBインタフェース、Ethernet(登録商標)インタフェースであり、測定ユニット2との間でデータの送受信を行うことが可能である。HDドライブ104内のハードディスクには、オペレーティングシステムと、測定ユニット2から受信した測定データを分析処理するためのアプリケーションプログラムがインストールされている。
【0063】
このアプリケーションプログラムをCPU101が実行することにより、測定ユニット2からの測定データが分析処理され、赤血球数(RBC)、血色素量(HGB)、ヘマトクリット値(HCT)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素量(MCH)、平均赤血球血色素濃度(MCHC)、血小板数(PLT)が算出される。また、前方散乱光信号と側方蛍光信号を用いてスキャッタグラムが作成され、網状赤血球数(RET)が計数される。
【0064】
図10は、本実施の形態に係る血球測定装置の網状赤血球測定時の処理フローを示す図である。なお、同図中、データ処理ユニット3側の処理フローは、データ処理ユニット3内のCPU101が、HDドライブ104内のアプリケーションプログラムを実行することによって行われるものである。
【0065】
網状赤血球の測定モードが開始されると、データ処理ユニット3のモニタ上に動物種の選択を受け付ける受付画面が表示される(S101)。かかる受付画面には、選択候補の動物種(ネコ、イヌ、等)を示すアイコンが含まれている。
【0066】
表示された動物種の中からマウスを用いてユーザが所望の動物種を選択すると(S101:YES)、スタートボタン2cを有効化するための信号が測定ユニット2に送信される(S102)。CPU101は、その後、測定ユニット2からのデータ送信を待つ(S103)。
【0067】
測定ユニット2は、スタートボタン2cが押下されると(S201:YES)、スタートボタン2cが有効化されているか否かが判断され(ステップS202)、有効化されていれば(ステップS202:YES)、上記のとおり、チャンバ23による試料の調製を行う。さらに、測定ユニット2は、調製された試料を用いてRET検出部5による測定を行って、上記前方散乱光信号と側方蛍光信号を取得し(S203)、取得した前方散乱光信号と側方蛍光信号を信号処理したデータをデータ処理ユニット3に送信する(S204)。
【0068】
こうして、前方散乱光信号と側方蛍光信号に関するデータを受信すると(S103:YES)、CPU101は、これらデータを、ステップS101にて選択された動物種に応じた方法で解析して試料中に含まれる網状赤血球数を取得し(S104)、取得した網状赤血球数に関する情報をモニタ上に表示する(S105)。こうして、ユーザ所望の動物種における網状赤血球の測定と表示が行われると、その後、システムがシャットダウンされなければ(S106:NO、S205:NO)、ステップS101、S201に戻って、ユーザによる次の測定指示が待たれる。
【0069】
図11は、ステップS104における解析処理の処理ルーチンを示す図、図12ないし図14は、当該処理ルーチンにおけるスキャッタグラムの分画方法を示す図である。なお、図12ないし図14(a)には、ネコの血液を測定する場合のスキャッタグラムが例示されている。図14(b)は、イヌの血液を測定する場合のスキャッタグラムが例示されている。スキャッタグラムとは、2次元でも3次元でもよく、例えば2次元であれば、縦軸として設定されたパラメータおよび横軸として設定されたパラメータの大きさに応じて血球を示すプロットデータを所定の座標に割り当てた分布図である。各座標には、割り当てられたプロットデータの数が対応付けられる。
【0070】
上記のように、ステップS104における解析処理は、ステップS101にて選択された動物種に応じて行われる。したがって、ステップS101にて動物種が選択されると、選択された動物種に対応する分画条件(分画のための各種パラメータ値)が設定され、この分画条件に従ってスキャッタグラムの分画が行われて網状赤血球の計数が行われる。
【0071】
測定ユニット2から前方散乱光信号と側方蛍光信号に関するデータを受信すると、CPU101は、まず、ステップS301において、前方散乱光の強度と側方蛍光の強度をそれぞれ縦軸と横軸とするスキャッタグラムを生成する(図12(a)参照)。次に、CPU101は、ステップS302において、当該スキャッタグラムから、血小板(PLT)の座標領域を分画し(図12(b)参照)、さらに、白血球(WBC)の座標領域を分画する(図13(a)参照)。ここで、白血球(WBC)の座標領域の分画は、以下のようにして行われる。
【0072】
まず、赤血球(RBC)の分布重心を通る軸Oがスキャッタグラムに設定される(図13(a)参照)。ここで、分布重心は、赤血球(RBC)の座標領域の側近に予め設定された固定領域R内のプロットデータに基づいて設定される。すなわち、固定領域R内のプロットデータについて、縦軸方向のヒストグラムを求め、求めたヒストグラムの縦軸方向の平均位置が求められる。この平均位置が、赤血球(RBC)の分布重心として設定され、この分布重心を通り、かつ、横軸に平行な軸Oが設定される。こうして設定された軸Oと、側方蛍光強度の最大値の境界線との交点からβだけ縦軸方向にシフトした点から傾きγの直線を引き、この直線と、前記境界線から固定幅Wの直線とに囲まれた領域が、白血球(WBC)の座標領域とされる。
【0073】
このようして、血小板(PLT)と白血球(WBC)の座標領域を分画した後、CPU101は、ステップS304において、これらの座標領域を除いたスキャッタグラムから、側方蛍光の強度に対するプロットデータの頻度分布150を求める(図13(b)参照)。
【0074】
なお、図13(b)に示す例では、スキャッタグラムの横軸を時計方向にθだけ回転させた軸にプロットデータを投影することによって、前記回転させた軸を側方蛍光強度とする頻度分布150が求められている。これは、図13(b)から分かるように、赤血球(RBC)のプロットデータの集合領域が時計方向にやや回転した楕円状の領域となっているためである。かかる集合領域の回転角は、試料の調製に用いる試薬によって変り得るものである。また、用いる試薬によっては、赤血球(RBC)のプロットデータの集合領域が回転せずに、縦軸方向に長細い楕円形状になることもある。よって、頻度分布を求める際には、用いる試薬に応じて側方蛍光強度の軸の回転角θが調整される。また、赤血球(RBC)のプロットデータの集合領域が回転しない場合には、スキャッタグラムの横軸に対するプロットデータの頻度分布が求められる。
【0075】
こうして、頻度分布が求められると、次に、CPU101は、ステップS305において、この頻度分布がピークとなるときの蛍光強度Xを取得し、さらに、この頻度分布の分散σを求める。そして、CPU101は、ステップS306において、図10のステップS101においてユーザに設定された動物種が第1の動物種(例えば、“ネコ”)であるか否かが判断される。第1の動物種の場合(ステップS306:YES)、CPU101は、ステップS307において、蛍光強度Xおよび分散σと、第1の動物種(図12〜14の例示では“ネコ”)に対応する係数αとから、次式の演算を行って、凝集型の網状赤血球(RET)の境界となる閾値Thrを求める。
【0076】
Thr=X+α×σ …(1)
【0077】
このようして閾値Thrを求めた後、CPU101は、ステップS309において、スキャッタグラムの縦軸に対し角度θだけ傾き、かつ、閾値Thrを通る直線L1と、この直線と上記軸Oとの交点から縦軸に平行に下ろした直線L2とによって、凝集型の網状赤血球(RET)の座標領域と赤血球(RBC)の座標領域(点状型の網状赤血球(RET)も含まれる)を分画する(図13(b)参照)。こうして、凝集型の網状赤血球(RET)の座標領域が特定される(図14(a)参照)。しかる後、CPU101は、ステップS311において、凝集型の網状赤血球(RET)の座標領域内に含まれるプロットデータの個数(血球数)を計数する。
【0078】
一方、ステップS101においてユーザに設定された動物種が第1の動物種ではない場合(ステップS306:NO)、CPU101は、ステップS308において、第1の動物種以外の動物種に対応する係数αを用いて上記式(1)から閾値Thrを求める。そして、CPU101は、ステップS310において、スキャッタグラムの縦軸に対し角度θだけ傾き、かつ、閾値Thrを通る直線L1と、この直線と上記軸Oとの交点から縦軸に平行に下ろした直線L2とによって、網状赤血球(RET)の座標領域(点状型も凝集型も含まれる)と赤血球(RBC)の座標領域を分画する。こうして、網状赤血球(RET)の座標領域が特定される(図14(b)参照)。しかる後、CPU101は、ステップS311において、網状赤血球(RET)の座標領域内に含まれるプロットデータの個数(血球数)を計数する。
【0079】
なお、第1の動物種以外の動物種(例えば、“イヌ”)の場合、上記式(1)中の係数αは、ネコの場合の係数αの1/2に設定されている。回転角θ、シフト量β、傾きγ、固定幅Wは、ネコの場合とイヌの場合とで同じである。図14(a)および(b)を対比して分かるとおり、イヌの場合は、ネコの場合に比べ、赤血球(RBC)の座標領域と網状赤血球(RET)の座標領域との境界が、スキャッタグラムの左方向にシフトしている。かかる境界の差により、ネコの場合は凝集型の網状赤血球の座標領域が分画され、イヌの場合は点状型、凝集型の区別なく全ての網状赤血球を含む座標領域が分画される。
【0080】
上述のとおり、ステップS307およびS308にて用いられる上記式(1)の係数αは、動物種に応じて適宜変更されるものである。図15(a)および(b)は、それぞれ、図11のステップS304にて求められた側方蛍光強度に対するプロットデータの頻度分布を、血球種別毎に区分したときの、各血球の分布領域を模式的に示す図である。同図(a)は、ネコの血液についての分布図であり、同図(b)は、イヌの血液についての分布図である。
【0081】
同図(a)に示す如く、ネコの血液の場合には、正規分布する赤血球(RBC)に続いて点状型の網状赤血球(RET)が分布し、さらに、これに続いて凝集型の網状赤血球(RET)が分布する。このように網状赤血球が複数のタイプから構成されている動物種について貧血等を診断する場合には、凝集型の網状赤血球を計数することが有用であるとされている。よって、ネコの血液の場合には、点状型の網状赤血球と凝集型の網状赤血球の境界位置に閾値Thrを設定して網状赤血球(RET)の座標領域を分画する必要がある。
【0082】
これに対し、イヌの血液の場合には、同図(b)に示す如く、網状赤血球に含まれる点状型と凝集型とを区別する必要はなく、正規分布する赤血球(RBC)に続いて分布する網状赤血球(RET)の総数を計数する必要がある。よって、イヌの血液の場合には、赤血球(RBC)と網状赤血球(RET)の境界位置に閾値Thrを設定して網状赤血球(RET)の座標領域を分画する必要がある。
【0083】
このように、ネコとイヌとでは、測定対象とされる網状赤血球の分布領域が異なっている。このため、上記式(1)における係数αは、ネコの血液の場合とイヌの血液の場合とで変えられる必要があり、少なくとも、ネコの血液における係数αはイヌの場合よりも所定の大きさだけ大きく設定する必要がある。具体的には、ネコの血液の場合には、イヌの血液の場合に比べて係数αが2倍程度大きな値に調整される。
【0084】
RET領域内の血球が計数された後、CPU101は、ステップS312において、ステップS309又はステップS310にて分画した赤血球(RBC)の座標領域をもとに、赤血球(RBC)の座標領域に含まれるプロットデータの個数を計数する。さらに、CPU101は、ステップS313において、かかる赤血球(RBC)の個数に対する網状赤血球の個数の割合RET%を求める。
【0085】
これに並行して、CPU101は、S314において、同じ血液についてRBC検出部6にて取得された赤血球(RBC)の個数に関する情報を測定ユニット2から取得し、さらに、ステップS315において、当該赤血球(RBC)の個数に割合RET%を乗じて網状赤血球の個数RET#を取得する。
【0086】
なお、ここでは、RBC検出部6にて検出された赤血球の個数に割合RET%を乗じて網状赤血球の個数RET#を取得したが、これに替えて、S311にて取得された網状赤血球(RET)の個数をそのまま網状赤血球の個数RET#として用いることも可能である。
【0087】
こうして測定された網状赤血球の割合RET%と個数RET#が、図10のS106において、モニタ上に表示される。
【0088】
次に、本実施の形態に係る血球測定装置(試作機)によって凝集型の網状赤血球(ネコ)の測定を行ったので、その測定結果について説明する。
【0089】
図16は、ネコの血液の顕微鏡写真の模式図である。図中、内部に顆粒(RNA)を2個以上有する血球が網状赤血球(RET)である。また、網状赤血球のうち、顆粒が凝集しているものが凝集型で、顆粒が点在しているものが点状型である。
【0090】
本測定では、本実施の形態に係る血球測定装置(試作機)でネコの血液を測定したときの凝集型の網状赤血球の測定結果と、顕微鏡による目視により血球を測定したときの凝集型の網状赤血球の測定結果とを比較して、本実施の形態に係る血球測定装置の測定精度を検証した。各測定は47個の検体について行った。目視による測定結果は、複数人で測定した測定結果の平均値とした。血球測定装置(試作機)による測定は、上記図11〜図14にて説明したプロセス処理に従うものであり、スキャッタグラムを分画する際のパラメータ値は、ネコ用のものに設定した。なお、上記式(1)における係数αは、α=10(ヒトやイヌの2倍)とした。
【0091】
図17は、測定結果を示す図である。同図(a)および(b)には、縦軸を試作機による値、横軸を目視による値として、同じ検体に対する試作機と目視の測定結果が一つの点でプロットされている。また、全プロットを近似する直線を求め、試作機の測定結果と目視の測定結果との相関が求められている。
【0092】
同図(a)には、赤血球の個数に対する凝集型網状赤血球の割合RET%が測定結果として示されており、同図(b)には、凝集型網状赤血球の個数RET#が測定結果として示されている。なお、RET#は、上記と同様、電気抵抗値の変化をもとに求めた赤血球の個数(図5のRBC検出部6による計測結果)に、同図(a)で求めたRET%を乗算することにより求めたものである。
【0093】
同図(a)および(b)の測定結果では、試作機の測定結果と目視の測定結果との相関rが、それぞれ、r=0.924およびr=0.896となっており、両測定結果の間に極めて高い相関が得られた。この測定結果から、本実施の形態に係る血球測定装置(試作機)の測定精度は、ネコの血液の測定に用いて十分な程度に高いものであることが検証できた。
【0094】
以上、本実施の形態によれば、凝集型の網状赤血球を精度よく計数することができる。よって、目視に頼らず凝集型の網状赤血球を計数可能となるため、獣医、検査技師等の負担を顕著に軽減することができる。
【0095】
また、本実施の形態によれば、測定対象とされる動物種を適宜選択できるため、ネコ等の動物種から凝集型の網状赤血球を測定できる他、イヌ等の動物種から網状赤血球の総数を測定することもできる。すなわち、測定対象としてネコが選択されると、凝集型の網状赤血球の個数に関する情報(RET%、RET#)が出力され、イヌが選択されると、網状赤血球の総数に関する情報(RET%、RET#)が出力される。よって、獣医、検査技師等は、測定対象の動物を選択するだけで、その動物種の診断に有用な網状赤血球の個数に関する情報を取得することができ、診断時の負担が顕著に軽減され得る。
【0096】
なお、上記実施の形態では、測定対象としてネコとイヌを例示したが、その他の動物種も勿論測定対象とされ得る。この場合、ネコ以外に凝集型の網状赤血球を含み得る動物種があれば、その動物種についても、式(1)の係数αが調整され、凝集型の網状赤血球の測定が行われる。凝集型の網状赤血球を含み得る動物種としては、例えば、ウサギ、フェレットが挙げられる。
【0097】
また、上記実施の形態では、第1の動物種(ネコ)の場合は凝集型の網状赤血球を測定・表示するようにしたが、これに加えて、点状型の網状赤血球を測定・表示するようにしてもよく、あるいは、網状赤血球の総数を測定・表示するようにしても良い。また、第1の動物種(ネコ)において、凝集型の網状赤血球のみを測定・表示するか、さらに、点状型の網状赤血球あるいは網状赤血球の総数をも測定・表示するかを、ユーザが適宜選択できるようにしても良い。
【0098】
図18は、第1の動物種(ネコ、等)において、凝集型の網状赤血球の他に、点状型の網状赤血球と網状赤血球の総数を計測・表示する場合の処理フローを示す図である。この処理フローでは、上記実施の形態と同様、スキャッタグラムが生成され(S401)、上記式(1)の係数αが凝集型の網状赤血球を計測するための係数α1に設定される(S402)。そして、係数α1を用いて、上記実施の形態と同様に、凝集型網状赤血球の座標領域が分画され(S403)、凝集型網状赤血球の血球数N1が計数される(S404)。
【0099】
ここで、ユーザが、マルチプル表示を選択していなければ(S405:NO)、上記実施の形態と同様、表示すべき網状赤血球の個数がステップS404にて計数された血球数N1とされ(S412)、この血球数に基づく表示出力が行われる(S413)。
【0100】
一方、ユーザが、マルチプル表示を選択していれば(S405:YES)、上記式(1)の係数αが網状赤血球の総数(全ての型(例えば、点状型と凝集型の両方)を含む)を計測するための係数α2に設定される(S406)。そして、この係数α2を用いて、上記実施の形態と同様に、網状赤血球(全ての型(例えば、点状型と凝集型の両方)を含む)の座標領域が分画され(S407)、網状赤血球の総血球数N2が計数される(S408)。さらに、N2−N1の演算を行って、点状型の網状赤血球の個数N3が求められる。
【0101】
こうして求めた個数N1、N2、N3が、それぞれ、凝集型の網状赤血球数、網状赤血球の総数、点状型の網状赤血球数に設定され(S410)、上記実施の形態と同様、各血球数に基づく表示出力(RET%、RET#)が行われる(S411)。なお、ユーザが、凝集型の網状赤血球の計測結果の他に、網状赤血球の総数の表示のみを選択した場合は、凝集型の網状赤血球と網状赤血球の総数に関する表示が行われる。この場合、図18のステップS409はスキップされる。また、ユーザが、凝集型と点状型の網状赤血球の計測結果の表示のみを選択した場合は、凝集型の網状赤血球と点状型の網状赤血球に関する表示が行われる。
【0102】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も上記の他に種々の変更が可能である。
【0103】
たとえば、上記実施の形態では、前方散乱光強度と側方蛍光強度とをもとにスキャッタグラムを生成して凝集型の網状赤血球を計測するようにしたが、たとえば、側方散乱光と側方蛍光強度をもとに凝集型の網状赤血球を計測するようにしてもよく、また、特定波長のレーザ光を照射したときに生じる複数種類の蛍光をもとに凝集型の網状赤血球を計測するようにしても良い。
【0104】
また、上記実施の形態にて参照した図12ないし図14には、凝集型の網状赤血球を含む第1の動物種としてネコを例示し、凝集型の網状赤血球を含まない第2の動物種としてイヌを例示したが、各動物種は、これらネコ、イヌの他にも他の動物を含み得るものであり、本発明は、これらネコ、イヌの他の動物の血球測定装置にも適宜採用可能なものである。
【0105】
さらに、上記実施の形態では、RET%とRET#の両方を表示するようにしたが、これらのうち何れか一方のみを表示するようにしても良く、また、これら以外に、凝集型の網状赤血球の個数に基づく他の情報を表示するようにしても良い。
【0106】
なお、上記実施の形態における測定例では、ネコの血液の測定における上記式(1)の係数αを、凝集型の網状赤血球を含まない動物種(ヒト、イヌ)の2倍に設定したが、この係数αは、必ずしも、ヒトやイヌの場合の2倍でなくとも良く、ヒトやイヌの場合の2倍の値を中心として適正な値に設定されれば良い。請求項12に記載の“2倍”は、2倍を中心にやや前後する範囲を許容するものである。
【0107】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 … 血球測定装置(動物用血球測定装置)
2 … 測定ユニット
3 … データ処理ユニット
4 … 試料調整部
5 … RET検出部(特徴情報取得部)
23 … チャンバ(試料調整部)
101 … CPU(凝集型分離手段、血球数取得手段、網状赤血球分類手段)
106 … 入力インタフェース(選択手段)
107 … 出力インタフェース(出力部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用の血球測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動物の診断において、網状赤血球を計数することは、例えば貧血の診断に有用である。現在、動物病院では、赤血球や白血球の計数は分析装置により自動化されている場合もあるが、網状赤血球は目視にて計数することが一般的である。
【0003】
また、動物の網状赤血球を自動的に計数する分析装置も知られている(例えば、特許文献1)。上記特許文献1記載の分析装置は、分析対象の動物種の選択を受け付け、受け付けられた動物種に対応する分析条件を用いて血球を計数する。計数される血球には、赤血球および白血球等に加え、網状赤血球も含まれる。
【0004】
ここで、網状赤血球は、単一のタイプから構成されている動物種もあるが、例えばネコの場合には、点状型と凝集型とを含む複数のタイプから構成されている。このように網状赤血球が複数のタイプから構成されている動物種について貧血を診断する場合には、凝集型を計数することが有用である。例えば、ネコの場合、点状型の数は急性失血後10〜20日目にピークとなり、その後約4週間かけて消失する。一方、凝集型の数は、4〜7日目にピークとなる。したがって、例えば、貧血からの回復状況(すなわち、投薬の効果)を判断するには、早期にピークに到達する凝集型を計数するのが有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−17637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、網状赤血球を自動的に計数する分析装置が知られているが、上記特許文献1には、複数のタイプから構成されている網状赤血球のうち、凝集型のみを計数することについては記載がない。従って、上記特許文献1に記載の分析装置を用いたとしても、凝集型の網状赤血球については、目視に頼らざるを得ず、獣医、検査技師等の負担が大きいという問題があった。
【0007】
本発明は、凝集型の網状赤血球を計数することが可能な動物用血球測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様に係る動物用血球測定装置は、動物の血液から測定試料を調製する試料調製部と、前記試料調製部によって調製された前記測定試料から、前記測定試料の特徴を表す特徴情報を取得する特徴情報取得部と、前記特徴情報取得部によって取得された前記特徴情報に基づいて、前記血液に含まれる凝集型の網状赤血球を他の血球から分類する凝集型分類手段と、前記凝集型分類手段によって分類された前記凝集型の網状赤血球の数に関する情報を出力する出力部とを備える。
【0009】
本態様に係る動物用血球測定装置によれば、凝集型の網状赤血球を目視に頼らずに計数可能となるため、獣医、検査技師等の負担を軽減することができる。
【0010】
本態様に係る動物用血球測定装置は、前記凝集型分類手段による分類結果に基づいて、前記凝集型の網状赤血球の数を取得する血球数取得手段をさらに備え得る。この場合、前記出力手段は、前記血球数取得手段によって取得された前記凝集型の網状赤血球の数を、前記凝集型の網状赤血球の数に関する情報として出力するよう構成され得る。
【0011】
本態様に係る動物用血球測定装置において、前記試料調製部は、前記血液と網状赤血球の核酸を染色する染色液とから前記測定試料を調製する構成とされ得る。また、前記特徴情報取得部は、前記測定試料に光を照射する光源を備え、前記光源から前記測定試料に光が照射されることにより生じる蛍光を受光し、受光強度に応じた蛍光強度情報を前記特徴情報として取得し、前記凝集型分類手段は、前記蛍光強度情報に基づいて、前記血液に含まれる凝集型の網状赤血球を他の血球から分類する構成とされ得る。
【0012】
この場合、前記特徴情報取得部は、より好ましくは、前記光源から前記測定試料に光が照射されることにより生じる散乱光を受光し、受光強度に応じた散乱光強度情報を前記特徴情報としてさらに取得し、前記凝集型分類手段は、前記蛍光強度情報および前記散乱光強度情報に基づいて、前記血液に含まれる凝集型の網状赤血球を他の血球から分類する構成とされ得る。
【0013】
このように構成すれば、蛍光強度と散乱光強度とをそれぞれ座標軸とするスキャッタグラムを分画することにより、凝集型の網状赤血球の座標領域を特定することができる。よって、この座標領域に含まれるプロットデータをもとに、凝集型の網状赤血球の数を取得することができる。
【0014】
なお、本態様に係る動物用血球測定装置は、ネコの血球測定に用いて好ましいものであるが、ネコに限らず、血液中に凝集型の網状赤血球を含み得る動物であれば、他の動物の血球測定にも用い得るものである。
【0015】
また、本態様に係る動物用血球測定装置は、測定対象となる動物の種類を少なくとも第1の動物種および第2の動物種から選択する選択手段と、前記特徴情報取得部によって取得された前記特徴情報に基づいて、前記血液に含まれる全ての型を含む網状赤血球を他の血球から分類する網状赤血球分類手段とをさらに備える構成とすることができる。そして、前記第1の動物種が選択された場合には、前記凝集型分類手段によって凝集型の網状赤血球を他の血球から分類し、前記第2の動物種が選択された場合には、前記網状赤血球分類手段によって全ての型を含む網状赤血球を他の血球から分類する構成することができる。
【0016】
このように構成すれば、測定対象とされる動物種を適宜切り替えることにより、第1の動物種から凝集型の網状赤血球の数に関する情報を出力できる他、第2の動物種から、網状赤血球の総数に関する情報をも出力することができる。
【0017】
この場合、前記第1の動物種の典型例はネコであり、前記第2の動物種の典型例はイヌとされ得る。選択手段によってネコが選択されると、凝集型の網状赤血球の個数に関する情報が出力され、イヌが選択されると、網状赤血球の総数に関する情報が出力される。こうして、獣医、検査技師等は、選択手段により選択するだけで、ネコまたはイヌの診断に有用な網状赤血球の個数に関する情報を取得することができ、診断時の負担を軽減することができる。
【0018】
なお、前記特徴情報取得部によって、前記蛍光強度の他、前記散乱光強度が取得される場合、前記凝集型分類手段は、前記蛍光強度と前記散乱光強度とをそれぞれ座標軸とするスキャッタグラムから前記凝集型の網状赤血球を含む凝集型座標領域を分画し、前記血球数取得手段は、前記凝集型座標領域に含まれるプロットデータの数に基づいて、前記凝集型の網状赤血球の数を取得する構成とされ得る。
【0019】
より詳細には、前記凝集型分類手段は、前記スキャッタグラムから赤血球と網状赤血球とを含む赤血球系座標領域を分画し、前記赤血球系座標領域内のプロットデータに基づいて前記凝集型座標領域を分画する構成とされ得る。
【0020】
この場合、前記凝集型分類手段は、前記赤血球系座標領域内のプロットデータに基づいて前記蛍光強度に対する血球数の分布を求め、前記分布から前記血球数がピークとなる前記蛍光強度Xと前記分布の分散σとを取得し、取得した前記蛍光強度Xおよび前記分散σと、前記動物の前記凝集型の網状赤血球の測定に適用される係数αとをもとに、Thr=X+α・σの演算を行うことにより、前記凝集型座標領域を分画する際の前記蛍光強度の閾値Thrを求める構成とされ得る。
【0021】
なお、前記係数αは、凝集型の網状赤血球を含まない動物種の血液における前記スキャッタグラムから網状赤血球の座標領域を分画する際に適用される前記係数αよりも所定の大きさだけ大きく設定される。ここで、前記係数αは、凝集型の網状赤血球を含まない動物種の血液における前記スキャッタグラムから網状赤血球の座標領域を分画する際に適用される前記係数αの2倍程度の大きさに設定され得る。
【0022】
こうすると、凝集型の網状赤血球を含む座標領域を適正に特定することができる。
【0023】
なお、本態様に係る動物用血球測定装置の効果は、以下の実施の形態における検証において、より明確となろう。
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、本発明によれば、凝集型の網状赤血球を計数することが可能な動物用血球測定装置を提供することができる。
【0025】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態に係る血球測定装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】実施の形態に係る測定ユニットの外観を示す斜視図である。
【図3】実施の形態に係る測定ユニットの内部構造を示す斜視図である。
【図4】実施の形態に係る測定ユニットの内部構造を示す側面図である。
【図5】実施の形態に係る測定ユニットの構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態に係る測定ユニットの試料調製部の流体回路図である。
【図7】実施の形態に係るフローセルの構成を模式的に示す斜視図である。
【図8】実施の形態に係るフローサイトメータの構成を模式的に示す図である。
【図9】実施の形態に係るデータ処理ユニットの構成を示すブロック図である。
【図10】実施の形態に係る網状赤血球計測時の処理フローチャートである。
【図11】実施の形態に係る解析処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図12】実施の形態に係る解析処理を説明するためのスキャッタグラムである。
【図13】実施の形態に係るスキャッタグラムの分画過程を示す図である。
【図14】実施の形態に係るスキャッタグラムの分画状態を示す図である。
【図15】実施の形態に係る閾値Thrの設定方法を模式的に示す図である。
【図16】ネコの血液を撮影した顕微鏡写真を模式的に示す図である。
【図17】実施の形態に係る血球測定装置の検証例を示す図である。
【図18】実施の形態に係る分析ルーチンの変更例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係る動物用の血球測定装置について、図面を参照して説明する。以下では、動物用の血球測定装置に係る構成のうち、主として、網状赤血球の計数に関する構成を説明し、白血球の測定に関する構成等については、説明を省略する。
【0028】
図1は、実施の形態に係る動物用の血球測定装置の概略構成を示す正面図である。図1に示すように、本実施の形態に係る血球測定装置1は、測定ユニット2と、データ処理ユニット3とにより主として構成されている。測定ユニット2は、血液検体中に含まれる成分について所定の測定を行い、測定データをデータ処理ユニット3に送信する。データ処理ユニット3は、この測定データをもとに分析処理を行い、分析結果をモニタ上に表示する。かかる血球測定装置1は、例えば、動物病院に設置されている。
【0029】
測定ユニット2とデータ処理ユニット3とは、互いにデータ通信が可能なように、データ伝送ケーブル3aによって接続されている。なお、データ伝送ケーブル3aで測定ユニット2とデータ処理ユニット3とを直接接続する構成に限らず、例えば、電話回線を使用した専用回線、LAN、またはインターネット等の通信ネットワークを介して測定ユニット2とデータ処理ユニット3とが接続されていてもよい。
【0030】
図2は、測定ユニット2の外観を示す斜視図である。図2に示すように、測定ユニット2の正面の右下部分には、血液試料を収容した採血管20をセット可能な採血管セット部2aが設けられている。この採血管セット部2aは、その近傍に設けられたボタンスイッチ2bをユーザが押すことにより前方へ開いて迫り出すようになっており、この状態でユーザが採血管20をセットすることが可能となっている。採血管20がセットされた後、ユーザが再度前記ボタンスイッチ2bを押すことによって、採血管セット部2aが後方へ移動して閉止する。また、測定ユニット2の正面には、検体の測定を開始させるためのスタートボタン2cが設けられている。
【0031】
図3は、測定ユニット2の内部構造を示す斜視図であり、図4は、その側面図である。
【0032】
採血管20がセットされた採血管セット部2aは、前述のように測定ユニット2の内部に収容される。これにより、採血管20が所定の吸引位置に位置決めされる。測定ユニット2の内部には、試料を吸引するピペット21、血液と試薬とを混合するためのチャンバ22、23等を有する試料調製部4が設けられている。
【0033】
ピペット21は、上下方向に延びた管状に形成されており、その先端は鋭く尖っている。また、ピペット21は、図示しないシリンジポンプに連結されており、このシリンジポンプの動作によって液体を所定量だけ吸引し、また吐出することが可能である。さらに、ピペット21は、移動機構に接続されており、上下方向および前後方向にそれぞれ移動可能となっている。
【0034】
採血管20はゴム製のキャップ20aによって密閉されている。このキャップを、ピペット21の鋭利な先端によって穿刺することで、採血管20に収容された血液試料が、ピペット21によって所定量吸引される。図4に示すように、採血管セット部2aの後方にはチャンバ22、23が設けられている。血液試料を吸引した状態のピペット21を前記移動機構により移動させて、チャンバ22、23の中に血液試料が吐出されることにより、チャンバ22、23に血液試料が供給される。
【0035】
図5は、測定ユニット2の構成を示すブロック図であり、図6は、試料調製部4の構成を示す流体回路図である。図5に示すように、測定ユニット2は、試料調製部4と、RET検出部5と、RBC検出部6と、HGB検出部7と、制御部8と、通信部9とを備えている。
【0036】
制御部8は、CPU、ROM、RAM等から構成されており、測定ユニット2の各種構成要素の動作制御を行う。通信部9は、例えばRS-232Cインタフェース、USBインタフェース、Ethernet(登録商標)インタフェースであり、データ処理ユニット3との間でデータの送受信を行う。
【0037】
図6に示すように、試料調製部4は、チャンバ、複数の電磁弁、ダイヤフラムポンプ等を備えた流体ユニットである。チャンバ22は、赤血球、血小板の測定、およびヘモグロビンの測定に供される試料の調製に使用される。また、チャンバ23は、網状赤血球の測定に供される試料の調製に使用される。なお、図6では、説明を簡単にするためにチャンバ23の周辺の流体回路の構成のみを示している。
【0038】
チャンバ23は、希釈液を収容する試薬容器RC1と、染色液を収容する試薬容器RC2とにチューブ等の流体通流路P1、P2を介して接続されている。チャンバ23と試薬容器RC1とを繋ぐ流体通流路P1の途中には、電磁弁SV19、SV20が設けられており、また電磁弁SV19、SV20の間には、ダイヤフラムポンプDP4が設けられている。ダイヤフラムポンプDP4は、陽圧源および陰圧源が接続されており、ダイヤフラムポンプDP4を陽圧駆動および陰圧駆動することができるようになっている。また、チャンバ23と試薬容器RC2とを繋ぐ流体通流路P2の途中には、電磁弁SV40、SV41が設けられており、また電磁弁SV40、SV41の間には、ダイヤフラムポンプDP5が設けられている。
【0039】
これら電磁弁SV19、SV20、SV40、SV41およびダイヤフラムポンプDP4、DP5を制御部8が次のように制御して、溶血剤および染色液がチャンバ23に供給される。
【0040】
まず、ダイヤフラムポンプDP4よりも試薬容器RC1側に配されている電磁弁SV19を開放し、ダイヤフラムポンプDP4よりもチャンバ23側に配されている電磁弁SV20を閉止した状態で、ダイヤフラムポンプDP4を陰圧駆動することにより、試薬容器RC1から溶血剤が定量分取される。その後、電磁弁SV19を閉止し、電磁弁SV20を開放させ、ダイヤフラムポンプDP4を陽圧駆動することにより、定量された溶血剤がチャンバ23に供給される。
【0041】
同様に、ダイヤフラムポンプDP5よりも試薬容器RC2側に配されている電磁弁SV40を開放し、ダイヤフラムポンプDP5よりもチャンバ23側に配されている電磁弁SV41を閉止した状態で、ダイヤフラムポンプDP5を陰圧駆動することにより、試薬容器RC2から染色液が定量分取される。その後、電磁弁SV40を閉止し、電磁弁SV41を開放させ、ダイヤフラムポンプDP5を陽圧駆動することにより、定量された染色液がチャンバ23に供給される。このようにして、血液試料と試薬(溶血剤、染色液)が混合され、網状赤血球測定用の試料が調製される。
【0042】
また、チャンバ23は、チューブおよび電磁弁SV4を含む流体通流路P3を介してフローサイトメータであるRET検出部5に接続されている。この流体通流路P3は途中で分岐しており、その分岐先に電磁弁SV1、SV3が直列接続されている。また、電磁弁SV1、SV3の間には、シリンジポンプSP2が設けられている。シリンジポンプSP2にはステッピングモータM2が接続されており、このステッピングモータM2の動作によってシリンジポンプSP2が駆動される。
【0043】
また、チャンバ23とRET検出部5とを繋ぐ流体通流路P3は、更に分岐しており、この分岐先には電磁弁SV29およびダイヤフラムポンプDP6が接続されている。RET検出部5により網状赤血球を測定する場合には、電磁弁SV4、SV29を開放した状態でダイヤフラムポンプDP6を陰圧駆動して、チャンバ23から試料を吸引することにより、流体通流路P3に当該試料がチャージングされる。試料のチャージングが終了すると、電磁弁SV4、SV29が閉止される。その後、電磁弁SV3を開放し、シリンジポンプSP2を駆動することにより、チャージングした試料がRET検出部5へと供給される。
【0044】
図6に示すように、試料調製部4にはシース液チャンバ24が設けられており、このシース液チャンバ24がRET検出部5に流体通流路P4を介して接続されている。この流体通流路P4には、電磁弁SV31が設けられている。かかるシース液チャンバ24は、RET検出部5に供給されるシース液を貯留するためのチャンバであり、チューブ、電磁弁SV33を含む流体通流路P5を介して、シース液が収容されたシース液容器EPKに接続されている。なお、試薬容器RC1に収容されている希釈液をシース液として用いることも可能である。
【0045】
網状赤血球の測定の開始前には、電磁弁SV33が開放されてシース液がシース液チャンバ24に供給され、予めシース液チャンバ24にシース液が貯留される。そして、網状赤血球の測定が開始されるときには、前述したRET検出部5への試料の供給と同期して、電磁弁SV31が開放され、シース液チャンバ24に貯留されたシース液がRET検出部5へ供給される。
【0046】
RET検出部5は、光学式のフローサイトメータであり、網状赤血球を半導体レーザによるフローサイトメトリー法により測定することが可能である。かかるRET検出部5は、試料の液流を形成するフローセル51を備えている。
【0047】
図7は、フローセル51の構成を模式的に示す斜視図である。フローセル51は、透光性を有する石英、ガラス、合成樹脂等の材料によって管状に構成されており、その内部が試料およびシース液が通流する流路となっている。フローセル51には、内部空間が他の部分よりも細く絞り込まれたオリフィス51aが設けられている。フローセル51の当該オリフィス51aの入口付近は二重管構造となっており、その内側管部分が試料ノズル51bとなっている。この試料ノズル51bは、試料調製部4の流体通流路P3に接続されており、この試料ノズル51bからオリフィス51aに向かって試料が吐出される。
【0048】
また、試料ノズル51bの外側の空間はシース液が通流する流路51cであり、この流路51cは前述の流体通流路P4に接続されている。シース液チャンバ24から供給されたシース液は、流体通流路P4を介して流路51cを通流し、オリフィス5 1aへ導入される。こうして、フローセル51に供給されたシース液は、試料ノズル51bから吐出された試料を取り囲むように流れることとなる。そして、オリフィス51aによって試料の流れが細く絞り込まれ、試料に含まれる網状赤血球、赤血球等の粒子がシース液に取り囲まれて一つずつオリフィス51aを通過する。
【0049】
図8は、RET検出部5の構成を模式的に示す概略平面図である。RET検出部5には、半導体レーザ光源52が、フローセル51のオリフィス51aへ向けてレーザ光を出射するように配置されている。半導体レーザ光源52とフローセル51との間には、複数のレンズからなる照射レンズ系53が配されている。この照射レンズ系53によって、半導体レーザ光源から出射された平行ビームがビームスポットに集束されるようになっている。
【0050】
また、半導体レーザ光源52から直線的に延びた光軸上には、フローセル51を挟んで照射レンズ系53に対向するように、ビームストッパ54aが設けられている。半導体レーザ光源52からのビームのうちフローセル51内で散乱されずに直進するビーム(以下、直接光という)は、ビームストッパ54aによって遮光される。また、ビームストッパ54aの更に光軸下流側には、フォトダイオード54が配されている。
【0051】
フローセル51に試料が流れると、レーザ光により散乱光および蛍光の光信号が発生する。このうち前方の信号光(散乱光)が前記フォトダイオード54へ向けて照射される。半導体レーザ光源52から直線的に延びた光軸に沿って進行する光のうち、半導体レーザ光源52の直接光は、ビームストッパ54aによって遮断され、フォトダイオード54には概ね前記光軸方向に沿って進行する散乱光(以下、前方散乱光という)のみが入射する。
【0052】
フローセル51から発せられた前方散乱光は、フォトダイオード54で光電変換され、これによって生じた電気信号(以下、前方散乱光信号という)がアンプ54bによって増幅されて、制御部8に出力される。かかる前方散乱光信号は、血球の大きさを反映しており、制御部8により信号処理された後、通信部9を介してデータ処理ユニット3に出力される。
【0053】
また、フローセル51の側方であって、半導体レーザ光源52からフォトダイオード54へ直線的に延びる光軸に対して直交する方向には、側方集光レンズ55が配されている。フローセル51内を通過する血球に半導体レーザを照射したときに発生する側方光(前記光軸に対して交差する方向へ出射される光)がこの側方集光レンズ55で集められるようになっている。側方集光レンズ55の下流側にはダイクロイックミラー56が設けられており、側方集光レンズ55から送られた信号光は、ダイクロイックミラー56で散乱光成分と蛍光成分とに分けられる。
【0054】
ダイクロイックミラー56の側方(側方集光レンズ55とダイクロイックミラー56とを結ぶ光軸方向に交差する方向)には、側方散乱光受光用のフォトダイオード57が設けられている。また、ダイクロイックミラー56の前記光軸下流側には、光学フィルタ58aおよびアバランシェフォトダイオード58が設けられている。
【0055】
ダイクロイックミラー56により反射された側方散乱光成分は、フォトダイオード57で光電変換される。かかる光電変換によって生じた電気信号(以下、側方散乱光信号という)がアンプ57aによって増幅され、制御部8に出力される。この側方散乱光信号は、血球の内部情報(核の大きさ等)を反映しており、制御部8により信号処理された後、通信部9を介してデータ処理ユニット3に出力される。
【0056】
また、ダイクロイックミラー56を透過した側方蛍光成分は光学フィルタ58aによって波長選択された後、アバランシェフォトダイオード58で光電変換される。かかる光電変換によって生じた電気信号(側方蛍光信号)がアンプ58bによって増幅され、制御部8に出力される。この側方蛍光信号は、血球の染色度合いに関する情報を反映しており、制御部8により信号処理された後、通信部9を介してデータ処理ユニット3に出力される。
【0057】
RBC検出部6は、赤血球数および血小板数を、シースフローDC検出法により測定することが可能である。このRBC検出部6は、電気抵抗方式の検出器を有しており、この検出器に上述したチャンバ22から試料が供給されるようになっている。赤血球および血小板の測定を行う場合には、チャンバ22において、血液に希釈液を混合した試料が調製される。かかる試料がシース液とともに試料調製部4から検出器に供給され、検出器中では、上記と同様、シース液によって試料が取り囲まれた液流が形成される。
【0058】
かかる検出器中の流路の途中には、電極を有するアパーチャが設けられている。試料中の血球が一つずつ当該アパーチャを通過するときのアパーチャにおける直流抵抗が検出され、この電気信号が制御部8へ出力される。前記直流抵抗は、アパーチャを血球が通過するときに増大するため、この電気信号はアパーチャの血球の通過情報を反映している。この電気信号は、制御部8により信号処理され、通信部9を介してデータ処理ユニット3に送信される。データ処理ユニット3は、受信したデータを解析し、赤血球および血小板を計数する。
【0059】
HGB検出部7は、血色素量を、SLSヘモグロビン法によって測定することが可能である。HGB検出部7には、希釈試料を収容するセルが設けられており、このセルにチャンバ22から試料が供給されるようになっている。ヘモグロビンの測定を行う場合には、チャンバ22において血液に希釈液と溶血剤とを混合した試料が調製される。この溶血剤は、血液中のヘモグロビンをSLS−ヘモグロビンへと転化する性質を有している。また、セルを間に挟んで発光ダイオードとフォトダイオードとが対向配置されており、発光ダイオードからの光がフォトダイオードで受けられる。
【0060】
発光ダイオードは、SLS−ヘモグロビンによる吸光率が高い波長の光を発するようになっており、また、セルは透光性の高いプラスチック材料で構成されている。これにより、フォトダイオードでは、発光ダイオードの発光が概ね希釈試料によってのみ吸光された透過光が受光されることとなる。フォトダイオードは、受光量(吸光度)に応じた電気信号を制御部8へと出力する。制御部8は、この吸光度と予め測定された希釈液のみの吸光度とを信号処理し、通信部9を介してデータ処理ユニット3に送信される。データ処理ユニット3は、上記2つの吸光度を比較して、ヘモグロビン値を算出する。
【0061】
図9に示す如く、データ処理ユニット3は、CPU101、ROM102、RAM103、ハードディスクドライブ(HDドライブ)104、通信インタフェース105、キーボードおよびマウス等の入力インタフェース106、および、モニタ、スピーカ等の出力インタフェース107を備えるコンピュータシステムによって構成されている。
【0062】
通信インタフェース105は、例えば、RS-232Cインタフェース、USBインタフェース、Ethernet(登録商標)インタフェースであり、測定ユニット2との間でデータの送受信を行うことが可能である。HDドライブ104内のハードディスクには、オペレーティングシステムと、測定ユニット2から受信した測定データを分析処理するためのアプリケーションプログラムがインストールされている。
【0063】
このアプリケーションプログラムをCPU101が実行することにより、測定ユニット2からの測定データが分析処理され、赤血球数(RBC)、血色素量(HGB)、ヘマトクリット値(HCT)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素量(MCH)、平均赤血球血色素濃度(MCHC)、血小板数(PLT)が算出される。また、前方散乱光信号と側方蛍光信号を用いてスキャッタグラムが作成され、網状赤血球数(RET)が計数される。
【0064】
図10は、本実施の形態に係る血球測定装置の網状赤血球測定時の処理フローを示す図である。なお、同図中、データ処理ユニット3側の処理フローは、データ処理ユニット3内のCPU101が、HDドライブ104内のアプリケーションプログラムを実行することによって行われるものである。
【0065】
網状赤血球の測定モードが開始されると、データ処理ユニット3のモニタ上に動物種の選択を受け付ける受付画面が表示される(S101)。かかる受付画面には、選択候補の動物種(ネコ、イヌ、等)を示すアイコンが含まれている。
【0066】
表示された動物種の中からマウスを用いてユーザが所望の動物種を選択すると(S101:YES)、スタートボタン2cを有効化するための信号が測定ユニット2に送信される(S102)。CPU101は、その後、測定ユニット2からのデータ送信を待つ(S103)。
【0067】
測定ユニット2は、スタートボタン2cが押下されると(S201:YES)、スタートボタン2cが有効化されているか否かが判断され(ステップS202)、有効化されていれば(ステップS202:YES)、上記のとおり、チャンバ23による試料の調製を行う。さらに、測定ユニット2は、調製された試料を用いてRET検出部5による測定を行って、上記前方散乱光信号と側方蛍光信号を取得し(S203)、取得した前方散乱光信号と側方蛍光信号を信号処理したデータをデータ処理ユニット3に送信する(S204)。
【0068】
こうして、前方散乱光信号と側方蛍光信号に関するデータを受信すると(S103:YES)、CPU101は、これらデータを、ステップS101にて選択された動物種に応じた方法で解析して試料中に含まれる網状赤血球数を取得し(S104)、取得した網状赤血球数に関する情報をモニタ上に表示する(S105)。こうして、ユーザ所望の動物種における網状赤血球の測定と表示が行われると、その後、システムがシャットダウンされなければ(S106:NO、S205:NO)、ステップS101、S201に戻って、ユーザによる次の測定指示が待たれる。
【0069】
図11は、ステップS104における解析処理の処理ルーチンを示す図、図12ないし図14は、当該処理ルーチンにおけるスキャッタグラムの分画方法を示す図である。なお、図12ないし図14(a)には、ネコの血液を測定する場合のスキャッタグラムが例示されている。図14(b)は、イヌの血液を測定する場合のスキャッタグラムが例示されている。スキャッタグラムとは、2次元でも3次元でもよく、例えば2次元であれば、縦軸として設定されたパラメータおよび横軸として設定されたパラメータの大きさに応じて血球を示すプロットデータを所定の座標に割り当てた分布図である。各座標には、割り当てられたプロットデータの数が対応付けられる。
【0070】
上記のように、ステップS104における解析処理は、ステップS101にて選択された動物種に応じて行われる。したがって、ステップS101にて動物種が選択されると、選択された動物種に対応する分画条件(分画のための各種パラメータ値)が設定され、この分画条件に従ってスキャッタグラムの分画が行われて網状赤血球の計数が行われる。
【0071】
測定ユニット2から前方散乱光信号と側方蛍光信号に関するデータを受信すると、CPU101は、まず、ステップS301において、前方散乱光の強度と側方蛍光の強度をそれぞれ縦軸と横軸とするスキャッタグラムを生成する(図12(a)参照)。次に、CPU101は、ステップS302において、当該スキャッタグラムから、血小板(PLT)の座標領域を分画し(図12(b)参照)、さらに、白血球(WBC)の座標領域を分画する(図13(a)参照)。ここで、白血球(WBC)の座標領域の分画は、以下のようにして行われる。
【0072】
まず、赤血球(RBC)の分布重心を通る軸Oがスキャッタグラムに設定される(図13(a)参照)。ここで、分布重心は、赤血球(RBC)の座標領域の側近に予め設定された固定領域R内のプロットデータに基づいて設定される。すなわち、固定領域R内のプロットデータについて、縦軸方向のヒストグラムを求め、求めたヒストグラムの縦軸方向の平均位置が求められる。この平均位置が、赤血球(RBC)の分布重心として設定され、この分布重心を通り、かつ、横軸に平行な軸Oが設定される。こうして設定された軸Oと、側方蛍光強度の最大値の境界線との交点からβだけ縦軸方向にシフトした点から傾きγの直線を引き、この直線と、前記境界線から固定幅Wの直線とに囲まれた領域が、白血球(WBC)の座標領域とされる。
【0073】
このようして、血小板(PLT)と白血球(WBC)の座標領域を分画した後、CPU101は、ステップS304において、これらの座標領域を除いたスキャッタグラムから、側方蛍光の強度に対するプロットデータの頻度分布150を求める(図13(b)参照)。
【0074】
なお、図13(b)に示す例では、スキャッタグラムの横軸を時計方向にθだけ回転させた軸にプロットデータを投影することによって、前記回転させた軸を側方蛍光強度とする頻度分布150が求められている。これは、図13(b)から分かるように、赤血球(RBC)のプロットデータの集合領域が時計方向にやや回転した楕円状の領域となっているためである。かかる集合領域の回転角は、試料の調製に用いる試薬によって変り得るものである。また、用いる試薬によっては、赤血球(RBC)のプロットデータの集合領域が回転せずに、縦軸方向に長細い楕円形状になることもある。よって、頻度分布を求める際には、用いる試薬に応じて側方蛍光強度の軸の回転角θが調整される。また、赤血球(RBC)のプロットデータの集合領域が回転しない場合には、スキャッタグラムの横軸に対するプロットデータの頻度分布が求められる。
【0075】
こうして、頻度分布が求められると、次に、CPU101は、ステップS305において、この頻度分布がピークとなるときの蛍光強度Xを取得し、さらに、この頻度分布の分散σを求める。そして、CPU101は、ステップS306において、図10のステップS101においてユーザに設定された動物種が第1の動物種(例えば、“ネコ”)であるか否かが判断される。第1の動物種の場合(ステップS306:YES)、CPU101は、ステップS307において、蛍光強度Xおよび分散σと、第1の動物種(図12〜14の例示では“ネコ”)に対応する係数αとから、次式の演算を行って、凝集型の網状赤血球(RET)の境界となる閾値Thrを求める。
【0076】
Thr=X+α×σ …(1)
【0077】
このようして閾値Thrを求めた後、CPU101は、ステップS309において、スキャッタグラムの縦軸に対し角度θだけ傾き、かつ、閾値Thrを通る直線L1と、この直線と上記軸Oとの交点から縦軸に平行に下ろした直線L2とによって、凝集型の網状赤血球(RET)の座標領域と赤血球(RBC)の座標領域(点状型の網状赤血球(RET)も含まれる)を分画する(図13(b)参照)。こうして、凝集型の網状赤血球(RET)の座標領域が特定される(図14(a)参照)。しかる後、CPU101は、ステップS311において、凝集型の網状赤血球(RET)の座標領域内に含まれるプロットデータの個数(血球数)を計数する。
【0078】
一方、ステップS101においてユーザに設定された動物種が第1の動物種ではない場合(ステップS306:NO)、CPU101は、ステップS308において、第1の動物種以外の動物種に対応する係数αを用いて上記式(1)から閾値Thrを求める。そして、CPU101は、ステップS310において、スキャッタグラムの縦軸に対し角度θだけ傾き、かつ、閾値Thrを通る直線L1と、この直線と上記軸Oとの交点から縦軸に平行に下ろした直線L2とによって、網状赤血球(RET)の座標領域(点状型も凝集型も含まれる)と赤血球(RBC)の座標領域を分画する。こうして、網状赤血球(RET)の座標領域が特定される(図14(b)参照)。しかる後、CPU101は、ステップS311において、網状赤血球(RET)の座標領域内に含まれるプロットデータの個数(血球数)を計数する。
【0079】
なお、第1の動物種以外の動物種(例えば、“イヌ”)の場合、上記式(1)中の係数αは、ネコの場合の係数αの1/2に設定されている。回転角θ、シフト量β、傾きγ、固定幅Wは、ネコの場合とイヌの場合とで同じである。図14(a)および(b)を対比して分かるとおり、イヌの場合は、ネコの場合に比べ、赤血球(RBC)の座標領域と網状赤血球(RET)の座標領域との境界が、スキャッタグラムの左方向にシフトしている。かかる境界の差により、ネコの場合は凝集型の網状赤血球の座標領域が分画され、イヌの場合は点状型、凝集型の区別なく全ての網状赤血球を含む座標領域が分画される。
【0080】
上述のとおり、ステップS307およびS308にて用いられる上記式(1)の係数αは、動物種に応じて適宜変更されるものである。図15(a)および(b)は、それぞれ、図11のステップS304にて求められた側方蛍光強度に対するプロットデータの頻度分布を、血球種別毎に区分したときの、各血球の分布領域を模式的に示す図である。同図(a)は、ネコの血液についての分布図であり、同図(b)は、イヌの血液についての分布図である。
【0081】
同図(a)に示す如く、ネコの血液の場合には、正規分布する赤血球(RBC)に続いて点状型の網状赤血球(RET)が分布し、さらに、これに続いて凝集型の網状赤血球(RET)が分布する。このように網状赤血球が複数のタイプから構成されている動物種について貧血等を診断する場合には、凝集型の網状赤血球を計数することが有用であるとされている。よって、ネコの血液の場合には、点状型の網状赤血球と凝集型の網状赤血球の境界位置に閾値Thrを設定して網状赤血球(RET)の座標領域を分画する必要がある。
【0082】
これに対し、イヌの血液の場合には、同図(b)に示す如く、網状赤血球に含まれる点状型と凝集型とを区別する必要はなく、正規分布する赤血球(RBC)に続いて分布する網状赤血球(RET)の総数を計数する必要がある。よって、イヌの血液の場合には、赤血球(RBC)と網状赤血球(RET)の境界位置に閾値Thrを設定して網状赤血球(RET)の座標領域を分画する必要がある。
【0083】
このように、ネコとイヌとでは、測定対象とされる網状赤血球の分布領域が異なっている。このため、上記式(1)における係数αは、ネコの血液の場合とイヌの血液の場合とで変えられる必要があり、少なくとも、ネコの血液における係数αはイヌの場合よりも所定の大きさだけ大きく設定する必要がある。具体的には、ネコの血液の場合には、イヌの血液の場合に比べて係数αが2倍程度大きな値に調整される。
【0084】
RET領域内の血球が計数された後、CPU101は、ステップS312において、ステップS309又はステップS310にて分画した赤血球(RBC)の座標領域をもとに、赤血球(RBC)の座標領域に含まれるプロットデータの個数を計数する。さらに、CPU101は、ステップS313において、かかる赤血球(RBC)の個数に対する網状赤血球の個数の割合RET%を求める。
【0085】
これに並行して、CPU101は、S314において、同じ血液についてRBC検出部6にて取得された赤血球(RBC)の個数に関する情報を測定ユニット2から取得し、さらに、ステップS315において、当該赤血球(RBC)の個数に割合RET%を乗じて網状赤血球の個数RET#を取得する。
【0086】
なお、ここでは、RBC検出部6にて検出された赤血球の個数に割合RET%を乗じて網状赤血球の個数RET#を取得したが、これに替えて、S311にて取得された網状赤血球(RET)の個数をそのまま網状赤血球の個数RET#として用いることも可能である。
【0087】
こうして測定された網状赤血球の割合RET%と個数RET#が、図10のS106において、モニタ上に表示される。
【0088】
次に、本実施の形態に係る血球測定装置(試作機)によって凝集型の網状赤血球(ネコ)の測定を行ったので、その測定結果について説明する。
【0089】
図16は、ネコの血液の顕微鏡写真の模式図である。図中、内部に顆粒(RNA)を2個以上有する血球が網状赤血球(RET)である。また、網状赤血球のうち、顆粒が凝集しているものが凝集型で、顆粒が点在しているものが点状型である。
【0090】
本測定では、本実施の形態に係る血球測定装置(試作機)でネコの血液を測定したときの凝集型の網状赤血球の測定結果と、顕微鏡による目視により血球を測定したときの凝集型の網状赤血球の測定結果とを比較して、本実施の形態に係る血球測定装置の測定精度を検証した。各測定は47個の検体について行った。目視による測定結果は、複数人で測定した測定結果の平均値とした。血球測定装置(試作機)による測定は、上記図11〜図14にて説明したプロセス処理に従うものであり、スキャッタグラムを分画する際のパラメータ値は、ネコ用のものに設定した。なお、上記式(1)における係数αは、α=10(ヒトやイヌの2倍)とした。
【0091】
図17は、測定結果を示す図である。同図(a)および(b)には、縦軸を試作機による値、横軸を目視による値として、同じ検体に対する試作機と目視の測定結果が一つの点でプロットされている。また、全プロットを近似する直線を求め、試作機の測定結果と目視の測定結果との相関が求められている。
【0092】
同図(a)には、赤血球の個数に対する凝集型網状赤血球の割合RET%が測定結果として示されており、同図(b)には、凝集型網状赤血球の個数RET#が測定結果として示されている。なお、RET#は、上記と同様、電気抵抗値の変化をもとに求めた赤血球の個数(図5のRBC検出部6による計測結果)に、同図(a)で求めたRET%を乗算することにより求めたものである。
【0093】
同図(a)および(b)の測定結果では、試作機の測定結果と目視の測定結果との相関rが、それぞれ、r=0.924およびr=0.896となっており、両測定結果の間に極めて高い相関が得られた。この測定結果から、本実施の形態に係る血球測定装置(試作機)の測定精度は、ネコの血液の測定に用いて十分な程度に高いものであることが検証できた。
【0094】
以上、本実施の形態によれば、凝集型の網状赤血球を精度よく計数することができる。よって、目視に頼らず凝集型の網状赤血球を計数可能となるため、獣医、検査技師等の負担を顕著に軽減することができる。
【0095】
また、本実施の形態によれば、測定対象とされる動物種を適宜選択できるため、ネコ等の動物種から凝集型の網状赤血球を測定できる他、イヌ等の動物種から網状赤血球の総数を測定することもできる。すなわち、測定対象としてネコが選択されると、凝集型の網状赤血球の個数に関する情報(RET%、RET#)が出力され、イヌが選択されると、網状赤血球の総数に関する情報(RET%、RET#)が出力される。よって、獣医、検査技師等は、測定対象の動物を選択するだけで、その動物種の診断に有用な網状赤血球の個数に関する情報を取得することができ、診断時の負担が顕著に軽減され得る。
【0096】
なお、上記実施の形態では、測定対象としてネコとイヌを例示したが、その他の動物種も勿論測定対象とされ得る。この場合、ネコ以外に凝集型の網状赤血球を含み得る動物種があれば、その動物種についても、式(1)の係数αが調整され、凝集型の網状赤血球の測定が行われる。凝集型の網状赤血球を含み得る動物種としては、例えば、ウサギ、フェレットが挙げられる。
【0097】
また、上記実施の形態では、第1の動物種(ネコ)の場合は凝集型の網状赤血球を測定・表示するようにしたが、これに加えて、点状型の網状赤血球を測定・表示するようにしてもよく、あるいは、網状赤血球の総数を測定・表示するようにしても良い。また、第1の動物種(ネコ)において、凝集型の網状赤血球のみを測定・表示するか、さらに、点状型の網状赤血球あるいは網状赤血球の総数をも測定・表示するかを、ユーザが適宜選択できるようにしても良い。
【0098】
図18は、第1の動物種(ネコ、等)において、凝集型の網状赤血球の他に、点状型の網状赤血球と網状赤血球の総数を計測・表示する場合の処理フローを示す図である。この処理フローでは、上記実施の形態と同様、スキャッタグラムが生成され(S401)、上記式(1)の係数αが凝集型の網状赤血球を計測するための係数α1に設定される(S402)。そして、係数α1を用いて、上記実施の形態と同様に、凝集型網状赤血球の座標領域が分画され(S403)、凝集型網状赤血球の血球数N1が計数される(S404)。
【0099】
ここで、ユーザが、マルチプル表示を選択していなければ(S405:NO)、上記実施の形態と同様、表示すべき網状赤血球の個数がステップS404にて計数された血球数N1とされ(S412)、この血球数に基づく表示出力が行われる(S413)。
【0100】
一方、ユーザが、マルチプル表示を選択していれば(S405:YES)、上記式(1)の係数αが網状赤血球の総数(全ての型(例えば、点状型と凝集型の両方)を含む)を計測するための係数α2に設定される(S406)。そして、この係数α2を用いて、上記実施の形態と同様に、網状赤血球(全ての型(例えば、点状型と凝集型の両方)を含む)の座標領域が分画され(S407)、網状赤血球の総血球数N2が計数される(S408)。さらに、N2−N1の演算を行って、点状型の網状赤血球の個数N3が求められる。
【0101】
こうして求めた個数N1、N2、N3が、それぞれ、凝集型の網状赤血球数、網状赤血球の総数、点状型の網状赤血球数に設定され(S410)、上記実施の形態と同様、各血球数に基づく表示出力(RET%、RET#)が行われる(S411)。なお、ユーザが、凝集型の網状赤血球の計測結果の他に、網状赤血球の総数の表示のみを選択した場合は、凝集型の網状赤血球と網状赤血球の総数に関する表示が行われる。この場合、図18のステップS409はスキップされる。また、ユーザが、凝集型と点状型の網状赤血球の計測結果の表示のみを選択した場合は、凝集型の網状赤血球と点状型の網状赤血球に関する表示が行われる。
【0102】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も上記の他に種々の変更が可能である。
【0103】
たとえば、上記実施の形態では、前方散乱光強度と側方蛍光強度とをもとにスキャッタグラムを生成して凝集型の網状赤血球を計測するようにしたが、たとえば、側方散乱光と側方蛍光強度をもとに凝集型の網状赤血球を計測するようにしてもよく、また、特定波長のレーザ光を照射したときに生じる複数種類の蛍光をもとに凝集型の網状赤血球を計測するようにしても良い。
【0104】
また、上記実施の形態にて参照した図12ないし図14には、凝集型の網状赤血球を含む第1の動物種としてネコを例示し、凝集型の網状赤血球を含まない第2の動物種としてイヌを例示したが、各動物種は、これらネコ、イヌの他にも他の動物を含み得るものであり、本発明は、これらネコ、イヌの他の動物の血球測定装置にも適宜採用可能なものである。
【0105】
さらに、上記実施の形態では、RET%とRET#の両方を表示するようにしたが、これらのうち何れか一方のみを表示するようにしても良く、また、これら以外に、凝集型の網状赤血球の個数に基づく他の情報を表示するようにしても良い。
【0106】
なお、上記実施の形態における測定例では、ネコの血液の測定における上記式(1)の係数αを、凝集型の網状赤血球を含まない動物種(ヒト、イヌ)の2倍に設定したが、この係数αは、必ずしも、ヒトやイヌの場合の2倍でなくとも良く、ヒトやイヌの場合の2倍の値を中心として適正な値に設定されれば良い。請求項12に記載の“2倍”は、2倍を中心にやや前後する範囲を許容するものである。
【0107】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 … 血球測定装置(動物用血球測定装置)
2 … 測定ユニット
3 … データ処理ユニット
4 … 試料調整部
5 … RET検出部(特徴情報取得部)
23 … チャンバ(試料調整部)
101 … CPU(凝集型分離手段、血球数取得手段、網状赤血球分類手段)
106 … 入力インタフェース(選択手段)
107 … 出力インタフェース(出力部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の血液から測定試料を調製する試料調製部と、
前記試料調製部によって調製された前記測定試料から、前記測定試料の特徴を表す特徴情報を取得する特徴情報取得部と、
前記特徴情報取得部によって取得された前記特徴情報に基づいて、前記血液に含まれる凝集型の網状赤血球を他の血球から分類する凝集型分類手段と、
前記凝集型分類手段によって分類された前記凝集型の網状赤血球の数に関する情報を出力する出力部と、
を備える動物用血球測定装置。
【請求項2】
前記凝集型分類手段による分類結果に基づいて、前記凝集型の網状赤血球の数を取得する血球数取得手段をさらに備え、
前記出力手段は、前記血球数取得手段によって取得された前記凝集型の網状赤血球の数を、前記凝集型の網状赤血球の数に関する情報として出力する、
請求項1記載の動物用血球測定装置。
【請求項3】
前記試料調製部は、前記血液と網状赤血球の核酸を染色する染色液とから前記測定試料を調製し、
前記特徴情報取得部は、前記測定試料に光を照射する光源を備え、前記光源から前記測定試料に光が照射されることにより生じる蛍光を受光し、受光強度に応じた蛍光強度情報を前記特徴情報として取得し、
前記凝集型分類手段は、前記蛍光強度情報に基づいて、前記血液に含まれる凝集型の網状赤血球を他の血球から分類する、
請求項2に記載の動物用血球測定装置。
【請求項4】
前記特徴情報取得部は、前記光源から前記測定試料に光が照射されることにより生じる散乱光を受光し、受光強度に応じた散乱光強度情報を前記特徴情報としてさらに取得し、
前記凝集型分類手段は、前記蛍光強度情報および前記散乱光強度情報に基づいて、前記血液に含まれる凝集型の網状赤血球を他の血球から分類する、
請求項3記載の動物用血球測定装置。
【請求項5】
前記動物はネコである、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の動物用血球測定装置。
【請求項6】
測定対象となる動物の種類を少なくとも第1の動物種および第2の動物種から選択する選択手段と、
前記特徴情報取得部によって取得された前記特徴情報に基づいて、前記血液に含まれる全ての型を含む網状赤血球を他の血球から分類する網状赤血球分類手段と、をさらに備え、
前記第1の動物種が選択された場合には、前記凝集型分類手段によって凝集型の網状赤血球を他の血球から分類し、前記第2の動物種が選択された場合には、前記網状赤血球分類手段によって全ての型を含む網状赤血球を他の血球から分類する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の動物用血球測定装置。
【請求項7】
前記第1の動物種はネコであり、前記第2の動物種はイヌである、
請求項6記載の動物用血球測定装置。
【請求項8】
前記凝集型分類手段は、前記蛍光強度と前記散乱光強度とをそれぞれ座標軸とするスキャッタグラムから前記凝集型の網状赤血球を含む凝集型座標領域を分画し、
前記血球数取得手段は、前記凝集型座標領域に含まれるプロットデータの数に基づいて、前記凝集型の網状赤血球の数を取得する、
請求項4記載の動物用血球測定装置。
【請求項9】
前記凝集型分類手段は、前記スキャッタグラムから赤血球と網状赤血球とを含む赤血球系座標領域を分画し、前記赤血球系座標領域内のプロットデータに基づいて前記凝集型座標領域を分画する、
請求項8記載の動物用血球測定装置。
【請求項10】
前記凝集型分類手段は、前記赤血球系座標領域内のプロットデータに基づいて前記蛍光強度に対する血球数の分布を求め、前記分布から前記血球数がピークとなる前記蛍光強度Xと前記分布の分散σとを取得し、取得した前記蛍光強度Xおよび前記分散σと、前記動物の前記凝集型の網状赤血球の測定に適用される係数αとをもとに、Thr=X+α・σの演算を行うことにより、前記凝集型座標領域を分画する際の前記蛍光強度の閾値Thrを求める、
請求項9記載の動物用血球測定装置。
【請求項11】
前記係数αは、凝集型の網状赤血球を含まない動物種の血液における前記スキャッタグラムから網状赤血球の座標領域を分画する際に適用される前記係数αよりも所定の大きさだけ大きく設定されている、
請求項10記載の動物用血球測定装置。
【請求項12】
前記係数αは、凝集型の網状赤血球を含まない動物種の血液における前記スキャッタグラムから網状赤血球の座標領域を分画する際に適用される前記係数αの2倍の大きさに設定されている、
請求項11記載の動物用血球測定装置。
【請求項1】
動物の血液から測定試料を調製する試料調製部と、
前記試料調製部によって調製された前記測定試料から、前記測定試料の特徴を表す特徴情報を取得する特徴情報取得部と、
前記特徴情報取得部によって取得された前記特徴情報に基づいて、前記血液に含まれる凝集型の網状赤血球を他の血球から分類する凝集型分類手段と、
前記凝集型分類手段によって分類された前記凝集型の網状赤血球の数に関する情報を出力する出力部と、
を備える動物用血球測定装置。
【請求項2】
前記凝集型分類手段による分類結果に基づいて、前記凝集型の網状赤血球の数を取得する血球数取得手段をさらに備え、
前記出力手段は、前記血球数取得手段によって取得された前記凝集型の網状赤血球の数を、前記凝集型の網状赤血球の数に関する情報として出力する、
請求項1記載の動物用血球測定装置。
【請求項3】
前記試料調製部は、前記血液と網状赤血球の核酸を染色する染色液とから前記測定試料を調製し、
前記特徴情報取得部は、前記測定試料に光を照射する光源を備え、前記光源から前記測定試料に光が照射されることにより生じる蛍光を受光し、受光強度に応じた蛍光強度情報を前記特徴情報として取得し、
前記凝集型分類手段は、前記蛍光強度情報に基づいて、前記血液に含まれる凝集型の網状赤血球を他の血球から分類する、
請求項2に記載の動物用血球測定装置。
【請求項4】
前記特徴情報取得部は、前記光源から前記測定試料に光が照射されることにより生じる散乱光を受光し、受光強度に応じた散乱光強度情報を前記特徴情報としてさらに取得し、
前記凝集型分類手段は、前記蛍光強度情報および前記散乱光強度情報に基づいて、前記血液に含まれる凝集型の網状赤血球を他の血球から分類する、
請求項3記載の動物用血球測定装置。
【請求項5】
前記動物はネコである、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の動物用血球測定装置。
【請求項6】
測定対象となる動物の種類を少なくとも第1の動物種および第2の動物種から選択する選択手段と、
前記特徴情報取得部によって取得された前記特徴情報に基づいて、前記血液に含まれる全ての型を含む網状赤血球を他の血球から分類する網状赤血球分類手段と、をさらに備え、
前記第1の動物種が選択された場合には、前記凝集型分類手段によって凝集型の網状赤血球を他の血球から分類し、前記第2の動物種が選択された場合には、前記網状赤血球分類手段によって全ての型を含む網状赤血球を他の血球から分類する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の動物用血球測定装置。
【請求項7】
前記第1の動物種はネコであり、前記第2の動物種はイヌである、
請求項6記載の動物用血球測定装置。
【請求項8】
前記凝集型分類手段は、前記蛍光強度と前記散乱光強度とをそれぞれ座標軸とするスキャッタグラムから前記凝集型の網状赤血球を含む凝集型座標領域を分画し、
前記血球数取得手段は、前記凝集型座標領域に含まれるプロットデータの数に基づいて、前記凝集型の網状赤血球の数を取得する、
請求項4記載の動物用血球測定装置。
【請求項9】
前記凝集型分類手段は、前記スキャッタグラムから赤血球と網状赤血球とを含む赤血球系座標領域を分画し、前記赤血球系座標領域内のプロットデータに基づいて前記凝集型座標領域を分画する、
請求項8記載の動物用血球測定装置。
【請求項10】
前記凝集型分類手段は、前記赤血球系座標領域内のプロットデータに基づいて前記蛍光強度に対する血球数の分布を求め、前記分布から前記血球数がピークとなる前記蛍光強度Xと前記分布の分散σとを取得し、取得した前記蛍光強度Xおよび前記分散σと、前記動物の前記凝集型の網状赤血球の測定に適用される係数αとをもとに、Thr=X+α・σの演算を行うことにより、前記凝集型座標領域を分画する際の前記蛍光強度の閾値Thrを求める、
請求項9記載の動物用血球測定装置。
【請求項11】
前記係数αは、凝集型の網状赤血球を含まない動物種の血液における前記スキャッタグラムから網状赤血球の座標領域を分画する際に適用される前記係数αよりも所定の大きさだけ大きく設定されている、
請求項10記載の動物用血球測定装置。
【請求項12】
前記係数αは、凝集型の網状赤血球を含まない動物種の血液における前記スキャッタグラムから網状赤血球の座標領域を分画する際に適用される前記係数αの2倍の大きさに設定されている、
請求項11記載の動物用血球測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−223833(P2010−223833A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72646(P2009−72646)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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