説明

動画を生じさせる特殊折丁、およびこれを備えた冊子

【課題】動画を生じさせる冊子の構造を簡略化し、大量生産を実現する。
【解決手段】1枚のシート材を折り畳んで構成される折丁11に動画生成要素20a固定してなる特殊折丁。動画構成要素20aは、フィルムゲージ45を保持するフィルムゲージ保持区画21と、ベース区画と、折丁11に固定されるストローク付与区画と、下絵フラップ24とで構成される。この動画構成要素20aを折丁11の折り畳んだ1辺に沿って固定することで、中綴じ製本用の特殊折丁とすることができ、したがって、冊子の構造が簡単で、大量生産が可能となる。製本された冊子において折丁11で構成されるページを捲ると、折丁11に固定されたストローク付与区画23が共に移動し、これと連動して下絵フラップ24がフィルムゲージ45に対して相対的にスライドして、上記動画が生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中綴じ製本されて冊子を構成する特殊折丁に関する。本発明の特殊折丁は、複合画像で構成される下絵の上で、フィルムゲージをスライド移動させることで、絵が動いているかの如き視覚的効果を与える。
さらに本発明は、この特殊折丁を含めて中綴じ製本された冊子に関する。この冊子は、例えば、簡易な雑誌、カタログ、パンフレットとして好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
「下絵」と「フィルムゲージ」を利用して、パラパラ漫画とよく似た原理で、あたかも絵が動いているかのような視覚的効果を与える技術は、従来から知られている(例えば、特許文献1、2)。その原理を簡単に説明すると、次の通りである。
【0003】
≪画素が2つの場合:図1、図2≫
図1は、「複合画像で構成される下絵」の作成原理を示している。ここでは、複合画像は、2つの画素から構成される。まず、画素1、2をそれぞれ等間隔“α”で間引いて、「残像」と「欠け」が繰り返す中間画素を作成する。次に、中間画像1の「欠け」部分に、中間画像2の「残像」部分が一致するようにして、両者を組み合わせて複合画像を作成する。
【0004】
一方、図2に示したフィルムゲージは、透明の基材上に「黒塗りの細長い帯状領域」を等間隔で印刷したものであって、「帯状領域の幅」と「各帯状領域間の間隔」とが等しい(共に“α”)。
このフィルムゲージを複合画像上に重ね合わせて、両者を相対的にスライドさせると、図2に示したように、中間画素1の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに星形模様が視認される(A)。
一方、中間画素2の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに丸形模様が視認される(B)。
【0005】
以上の相対スライド動作を適度な速度で行うと、人間の目には、あたかも星形模様と丸形模様が動的に変化しているかのように視認される。
【0006】
≪画素が3つの場合:図3、図4≫
以上に説明した画素が2つの場合は、(i)画素を間引く際の「残像」と「欠け」の幅寸法を等しくし(“α”)、かつ、(ii)フィルムゲージ上の「帯状領域の幅」および「各帯状領域間の間隔」を共にこの“α”と等しくしている。
【0007】
画素が3つの場合は、図3、図4に示したように、(i)画素を間引く際に、「欠け」の幅寸法“β”を「残像」の幅寸法“γ”の2倍とし、(ii)フィルムゲージ上における「帯状領域の幅」を「欠け」の幅寸法“β”に等しく、「各帯状領域間の間隔」を「残像」の幅寸法“γ”に等しくする。
「欠け」の幅寸法“β”が「残像」の幅寸法“γ”の2倍であるため、中間画素1の「欠け」部分に他の2つの中間画素2、3の「残像」を収めることができ、したがって、3つの画素からなる複合画像を作成することができる。
【0008】
そして、図4に示したように、中間画素1の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに星形模様が視認される(A)。中間画素2の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに丸形模様が視認される(B)。中間画素3の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに菱形模様が視認される(C)。
【0009】
同様の考え方で、画素が4つ、5つの場合にも、複合画像および対応するフィルムゲージを作成できる。
【0010】
以上に説明した例では、ストライプ状のフィルムゲージを使用しているが、格子状のフィルムゲージと、これと対応する下絵とを利用して、同様の視覚的効果を与える構成も知られている。
ストライプ状のフィルムゲージの場合には、視覚的効果を得るために「下絵」と「フィルムゲージ」を相対移動させる方向は、ストライプに直交する1方向に限られる。これに対して、格子状のフィルムゲージの場合には、タテ、ヨコ、ナナメのいずれの方向に相対移動させた場合であっても、視覚的効果を得ることができる。
【0011】
【特許文献1】特表2007−526500号
【特許文献2】実用新案登録第3095265号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記視覚的効果によって得られる動画を利用して冊子を構成すれば販売促進効果を高めることが期待できるが、その反面、構造が複雑であるため大量生産が難しいという問題がある。
【0013】
したがって、本発明の目的は、動画を生じさせる冊子について、簡易で大量生産に適した具体的な構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を有効に解決するために創案されたものであって、次の特徴を備えた特殊折丁を提供する。
本発明の特殊折丁は、「複合画像で構成される下絵が表示された下絵フラップと、当該下絵に対応するフィルムゲージとを重ね、両者を相対的にスライド移動させることで、動画を生じさせる動画生成要素」を、「1枚のシート材を折り畳んで構成される折丁」に固定して構成される。
動画構成要素は、折罫を介して一列に連設された第1〜第4区画で構成される。第1区画は、「フィルムゲージを保持するフィルムゲージ保持区画」を構成する。第3区画は、「上記折丁に固定されるストローク付与区画」を構成する。第4区画は、下絵フラップを構成する。
下絵フラップが第2区画上に折り返されるとともに、当該下絵フラップをスライド可能に挟み込むように、フィルムゲージ保持区画が折り返されて第2区画上に固定されている。さらに、動画構成要素は、ストローク付与区画を上記折丁の折り畳んだ1辺に沿って固定することで、当該折丁に固定されている。
製本された冊子において上記折丁で構成されるページを捲ると、当該折丁に固定されたストローク付与区画が共に移動し、これと連動して下絵フラップがフィルムゲージに対して相対的にスライドして、上記動画が生じる。
【0015】
「下絵」は、例えば図1〜4で説明したような「残像」と「欠け」で構成される複数の画素から作成される複合画像である。また、下絵に「対応するフィルムゲージ」とは、複合画像の「残像」および「欠け」に対応した「透明領域」および「不透明領域」を含み、相対スライドによって動画を生じさせるフィルムゲージを意味する。
また、フィルムゲージは、ストライプ状および格子状のいずれであってもよく、対応する下絵(複合画像)と相対スライドすることで動画を生じさせる。
【0016】
本発明においては、動画構成要素は、折丁の外表面において、上記1辺に沿って固定されていることが、製造工程上好ましい。しかし、折丁の内表面側に動画構成要素を固定することも可能である。
【0017】
また本発明により、上記特殊折丁を用いて中綴じ製本した冊子が提供される。この冊子においては、特殊折丁に対応するページを捲る動作と連動して下絵フラップがフィルムゲージに対して相対的にスライドし、これにより上記動画が生じる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、冊子において動画を生じさせる要素を特殊折丁として提供しているので、大量生産が容易となる。すなわち、「1枚のシートを折り畳んで構成される折丁」に対して動画生成要素を固定しているので、当該折丁を開いた状態で集積すれば、通常の中綴じ製本による生産ラインに乗せて、大量生産することが可能となる。
中綴じ製本は、数ページで構成される簡易冊子に適した製本手法であり、したがって、パンフレットや、無料配布冊子として、低コストで大量に生産することができる。
【0019】
特に、動画生成要素の下絵フラップが、ストローク付与区画に連設される根元部においては、当該ストローク付与区画の全幅に渡って延在するとともに、根元部とは反対側の自由端部においては、上記全幅よりも短い寸法を有し、根元部と自由端部の両端同士を直線で結んだ台形形状を為す場合には、特殊折丁自体も機械的に折り畳んで組み上げることが容易となり、大量生産という意味でさらに好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る冊子の構造を説明する斜視図である。
【0021】
≪冊子全体の概略構造:図5≫
冊子は、針金15を用いて中綴じ製本されたものであって、図5(a)では、センター折丁10に対応するページが開かれている。数ページ捲っていくと、特殊折丁20に対応したページが現れ、ここに動画が生じる。
この冊子の代表的な製本工程を、図6を参照して説明する。本発明では、動画を生じさせる要素が特殊折丁20として提供されるため、一般的な大量生産ラインにのせて、動画を生じさせる冊子を製造することが可能となる。
【0022】
≪冊子の製造工程:図6≫
冊子は、「センター折丁10」、「中間折丁11」、「特殊折丁20」、「表紙30」から、次の工程(1)〜(3)により中綴じ製本される。
なお、センター折丁10および中間折丁11という場合の「センター」、「中間」という語は、単に位置関係を表す言葉であり、折丁10、11の物理的な構造は同じである。一方、「特殊折丁20」とは、他の折丁10、11に対して、「別の特殊な機能」を有する折丁という意味であって、後述するように、物理的構造が異なる。本発明における「別の特殊な機能」とは、動画を生じさせる機能である。
【0023】
(1)集積工程
複数の折丁10、11を集積した上に表紙30を乗せる。すなわち、集積コンベヤの上に、まずセンター折丁10を置き、その上に複数の中間折丁11を乗せ、その中に特殊折丁20を1つ(または複数)含めておく。最後に、表紙30を乗せて、次の工程に移行する。
【0024】
なお、図6の例では、各折丁10、11は、1枚のシート材を単に2つ折りしたものとして描いているが、4つ折り(あるいはそれ以上)であってもよい。後述する断裁工程が最後に行われるので、4つ折り以上の折丁を用いた場合でも、冊子として製本できる。
また、図6において、中間折丁11が複数存在するが、中間折丁を1つだけにすることも可能である。その場合は、特殊折丁20を中間折丁とする。
【0025】
(2)針金綴じ工程
集積された「センター折丁10」、「中間折丁11(特殊折丁20を含む)」、「表紙」に対して、針金15を用いて針金綴じを行う。
【0026】
(3)断裁工程
針金15で固定された1辺を除いた、他の3辺に対して、カッター機構を用いて裁断を行う。これで、中綴じ製本が完了して、冊子が構成される。
【0027】
≪動画生成要素20aの構成:図7≫
後述するように、特殊折丁20は、「折丁11」に「動画生成要素20a」を固定して構成される。まず、図7を参照して動画生成要素20aの構造を説明する。動画生成要素20aは、折罫a、b、cを介して一列に連設された第1区画21、第2区画22、第3区画23、第4区画24からなる1枚のブランクで構成される(図7a)。
【0028】
第2区画22はベース区画を構成し、下に説明するように、このベース区画22の両サイドに、フィルムゲージ保持区画21およびストローク付与区画23が連設される。
【0029】
ベース区画22に対して、図7a中左側に連設された第1区画21は、フィルムゲージ保持区画を構成する。
すなわち、フィルムゲージ保持区画21には、矩形の開口21aが形成されていて、この開口21aを塞ぐようにして、フィルムゲージ45が貼り付けられる。
【0030】
ベース区画22に対して、図7a中右側に連設された第3区画23は、折丁11の外表面に固定されるストローク付与区画を構成する。
ストローク付与区画23は、糊などを用いて折丁11の外表面に固定され、当該区画23の幅寸法に応じたスライドストローク量を下絵フラップ24に与える。詳しくは後述する。
【0031】
ストローク付与区画23に対して、図7a中右側に連設された第4区画24は下絵フラップ24を構成する。この下絵フラップ24上に複合画像26が表示される。複合画像26は、下絵フラップ24上に直接印刷されていても、別のシート片に印刷したものを貼り付けてもよい。
【0032】
動画生成要素20aを組み立てるには、まず、下絵フラップ24をベース区画22上に折り返えす。次に、下絵フラップ24をスライド可能に挟み込むように、上方からフィルムゲージ保持区画21を折り返して、ベース区画22上に貼付・固定する。このとき、フィルムゲージ保持区画21は、ベース区画22の側方領域22aに貼り付けられ、したがって、台形形状の下絵フラップ24は、貼付後においても、ベース区画22とフィルムゲージ保持区画21とに挟まれた状態を保ってスライド移動が可能となる。
なお、折罫aのやや内側領域においても、フィルムゲージ保持区画21とベース区画22を接着固定しておくことが好ましく、これにより裁断工程で折罫aに沿う側辺領域を裁断した後でも、ベース区画22とフィルムゲージ保持区画21の自由端を接着固定した状態を保つことができる。
【0033】
≪下絵フラップ24の台形形状について≫
図示した実施形態では、動画生成要素20aを含んだ冊子を大量生産にさらに適したものとするために、下絵フラップ24の形状を富士山のような台形形状としている。
すなわち、図7に示したように、下絵フラップ24は、ストローク付与区画23に連設される根元部24aにおいては、ストローク付与区画23の全高に渡って延在する(製本後の冊子の天地方向全体に渡って延在する)。一方、根元部24aとは反対側の自由端部24bは、下絵フラップ24のスライド移動を可能とするために、根元部24bよりも短い寸法を有する。
そして、根元部24aと自由端部24bの両端同士をそれぞれ直線24cで結び、全体として台形形状を為している。
【0034】
これには、次のような理由がある。製本機械を用いて動画生成要素20aを折り畳む際には、まず機械のアームが自由端部24bを掴んで下絵フラップ24を折り返す(この工程は、図示していない)。このとき、下絵フラップ24は湾曲アーチ状に折り返された状態にあるが、その後、折罫b、cに沿って機械的に鋭角の折り目が付けられる。つまり、機械アームが摘むのは幅狭の自由端部24bだけであるが、このアームによる摘み力を幅広の根元部24a全体に良好に伝えるには、自由端部24bの両端を根元部24aの両端まで直線24cで連結し、全体として台形形状とすることが好ましい。
直線24cが内側に入り込むと、アームによる摘み力が根元部24aの両端領域に良好に伝わらず、良好に折り返すことができない。一方、直線24cが外側に膨出すると、特殊折丁20の組立後において、下絵フラップ24のスムーズなスライド移動を阻害してしまう。
下絵フラップ24を直線で囲まれた台形形状とすることで、いずれの不都合もなく、機械による大量生産を実現することが可能となる。
【0035】
≪特殊折丁20の構成:図8≫
特殊折丁20は、図7で説明した「動画生成要素20a」を「折丁10」に固定して構成される。
図8に示した代表的な製造工程に沿って説明すると、まず、折り畳んだ折丁11の外表面の1辺11aに糊を塗布して、この上に動画生成要素20aを置く。このとき、折丁11上の糊が塗布された1辺領域11aに対して、ストローク付与区画23を貼り合わせるようにする。すなわち、図7(c)に示した動画生成要素20aの上面が、図8の製造工程図では、下方を向いていることとなる。次に、重ね合わせた端部をローラで圧接して、接着強度を高める。
以上で、図8(b)に示した特殊折丁20となる。
【0036】
その後、折り畳まれた折丁部分11を開いた状態を図8(c)に示している。さらに、開いた折丁部分11を下方側に向けて鞍状にしたのが図8(d)で、これが図6中の集積工程に示した特殊折丁20に対応している。
このように、本発明の特殊折丁20は、中綴じ製本による製造ラインに乗せることができるよう構成されたものである。中綴じ製本は、数ページで構成される簡易冊子に適した製本手法であり、したがって、パンフレットや、無料配布冊子として、低コストで大量に生産することができる。
【0037】
なお、図8(a)に示した製造工程から分かるように、動画生成要素20aは、折り畳まれた折丁11に対して上方から位置合わせされる。つまり、製造を簡単にするという観点からは、動画生成要素20aは、折丁11の外表面側において、1辺11aに沿って固定されることが好ましい。
【0038】
≪特殊折丁20の別構成:図10≫
ただし、別の製造工程を採用すれば、折丁11を開いたときに露出する内面側で、当該1辺11aに沿う領域に動画生成要素20aのストローク付与区画23を貼り合わせることも可能である。その例を、図10を参照して説明する。
【0039】
図10に示した別の製造工程は、(b)段階までは、図8に示したものと同じである。ただし、動画生成要素20aのストローク付与区画23を貼り付ける領域(折丁11の1辺)を符号11a’で示している。これは、次のことを意図している。
すなわち、図10(b)の工程において折丁11を反転させるので、最終的に1辺11a’は、折丁11の内表面側に沿う1辺となる。先に説明した図8の製造工程では、1辺11aは最後まで折丁11の外表面側に位置する。図10において最終的に折丁11の内表面に位置する1辺11a’をこれと区別するために、符号11aと11a’を使い分けている。
図10(d)において、折丁11の内表面側に動画生成要素20aが固定されていることが最も良く現れている。下方に向かって鞍状に開いた折丁部分11は、図8(d)の場合と同様に、図6中の集積工程に示した特殊折丁20に対応している。
【0040】
また、図11を参照して後述するが、動画生成要素20aが折丁11の内表面側に位置するので、表紙30の内側に動画生成要素20aを配置することも可能となる。
【0041】
≪生じる動画との関係:図9≫
図9は、製本後の冊子18と、生じる動画との関係を示している。特殊折丁20を構成する折丁11および動画生成要素20aに対応するページを捲る動作に伴って、下絵フラップ24がフィルムゲージ45に対して相対的にスライド移動し、これによって、視覚的効果を利用した動画が現れる。図9では、3つの画素から構成される動画の一例を示しているが、具体的な図柄や画素の数は、任意に設定することができる。
生じる動画を、当該冊子の内容あるいは出版社と関連付けたものとすることで、宣伝効果あるいは販売促進効果を高めることができる。この関連性は、当該冊子の内容や出版社に直接関連するものに限られず、広い意味で何らかの関連があればよい。
【0042】
≪格子状のフィルムゲージ≫
本発明においては、ストライプ状のフィルムゲージ45に限らず、格子状のフィルムゲージ45’を採用することも可能である(図7中の円内)。勿論、その場合には、下絵26は、これに対応して動画を生じさせるものが採用される。
ストライプ状のフィルムゲージ45の場合、一方向の相対スライドによって動画が生じるが、格子状のフィルムゲージ45’の場合、タテ、ヨコ、ナナメのいずれの方向に相対スライドした場合でも動画が生じる。これは、動画生成要素20aあるいは特殊折丁20の組立て精度が高くなく、相対スライド方向が予定の一方向から逸れた場合でも動画に変化が生じるという点で有効である。
【0043】
≪下絵フラップとフィルムゲージとの密着性を高めるための構成:図9≫
さらに本発明においては、特殊折丁20の動画生成要素20aにストローク付与区画23を設けていることに起因して、下絵フラップ24とフィルムゲージ45との密着性が高まるというメリットがある。
一般的に、下絵フラップ24とフィルムゲージ45を重ねて相対スライドさせることで動画を生じさせる場合、両者の隙間が大きいと、動画がボヤケて見えることがある。動画をクリアにするためには、下絵フラップ24とフィルムゲージ45が適度に圧接することが好ましい。
【0044】
図9に部分的に拡大して示したように、ストローク付与区画23が存在するが故に、下絵フラップ24は、折丁11で構成される紙面において、折罫bから一定距離“L”だけ離れた位置から立ち上がることとなる(オフセットされている)。これにより、下絵フラップ24をフィルムゲージ45に対して圧接させる力が生じる。つまり、下絵フラップ24とフィルムゲージ45が適度に密着して、クリアな動画を得ることができる。
【0045】
≪冊子の表紙内面側に特殊折丁を固定した例:図11≫
図11は、冊子と生じる動画との関係を示しており図9に対応するものであるが、冊子の表紙30内面側に動画生成要素20aが固定されている点が異なる。このように冊子を構成するためには、図10で説明した製造工程と同様の考え方で、表紙30の内面側に動画生成要素20aを固定し、当該表紙30を図6の集積工程に示したように、最上部に集積すればよい。
なお、図11に示した例では、表紙30に窓(開口部)31を形成している。これにより、冊子を閉じた場合にも動画構成要素が外部から視認可能となる。すなわち、冊子を閉じた場合にも、開いた場合にも、動画を外部から視認可能となり、販売促進効果を高めることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】2つの画素から動画を生じさせる原理を示す説明図。
【図2】2つの画素から動画を生じさせる原理を示す説明図。
【図3】3つの画素から動画を生じさせる原理を示す説明図。
【図4】3つの画素から動画を生じさせる原理を示す説明図。
【図5】本発明の一実施形態に係る冊子の構造を説明する斜視図。
【図6】図5の冊子の代表的な製造工程を説明する図。
【図7】動画生成要素を説明する図。
【図8】特殊折丁の代表的な製造工程を説明する図。
【図9】図5の冊子と生じる動画との関係を説明する図。
【図10】特殊折丁の別の製造工程を説明する図。この工程では、折丁の内表面側に動画構成要素を固定することで、特殊折丁を構成する。
【図11】表紙の内表面側に特殊折丁を固定した場合において、冊子と生じる動画との関係を説明する図。
【符号の説明】
【0047】
10、11 折丁
15 針金
18 冊子
20 特殊折丁
20a 動画生成要素
21 フィルムゲージ保持区画(第1区画)
21a 開口
22 ベース区画(第2区画)
23 ストローク付与区画(第3区画)
24 下絵フラップ(第4区画)
26 複合画像
30 表紙
31 窓
45 フィルムゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合画像(26)で構成される下絵が表示された下絵フラップ(24)と、当該下絵に対応するフィルムゲージ(45)とを重ね、両者を相対的にスライド移動させることで、動画を生じさせる動画生成要素(20a)を、1枚のシート材を折り畳んで構成される折丁(11)に固定してなる特殊折丁であって、
動画構成要素(20a)は、折罫を介して一列に連設された第1〜第4区画で構成され、
第1区画(21)は、フィルムゲージ(45)を保持するフィルムゲージ保持区画(21)を構成し、
第3区画(23)は、上記折丁(11)に固定されるストローク付与区画(23)を構成し、
第4区画(24)は、下絵フラップ(24)を構成し、
下絵フラップ(24)が第2区画(22)上に折り返されるとともに、当該下絵フラップ(24)をスライド可能に挟み込むように、フィルムゲージ保持区画(21)が折り返されて第2区画(22)上に固定されるとともに、
動画構成要素(20a)は、ストローク付与区画(23)を上記折丁(11)の折り畳んだ1辺(11a、11a’)に沿って固定することで、当該折丁(11)に固定されており、
製本された冊子において上記折丁(11)で構成されるページを捲ると、当該折丁(11)に固定されたストローク付与区画(23)が共に移動し、これと連動して下絵フラップ(24)がフィルムゲージ(45)に対して相対的にスライドして、上記動画が生じることを特徴とする、特殊折丁。
【請求項2】
上記動画構成要素(20a)は、折丁(11)の外表面において、上記1辺(11a)に沿って固定されていることを特徴とする、請求項1記載の特殊折丁。
【請求項3】
上記動画構成要素(20a)は、折丁(11)の内表面において、上記1辺(11a’)に沿って固定されていることを特徴とする、請求項1記載の特殊折丁。
【請求項4】
上記折丁は、冊子の表紙(30)を構成するもので、冊子を閉じた場合にも動画構成要素(20a)が外部から視認可能とする窓(31)を有していることを特徴とする、請求項3記載の特殊折丁。
【請求項5】
上記動画構成要素(20a)の下絵フラップ(24)は、ストローク付与区画(23)に連設される根元部(24a)においては、当該ストローク付与区画(23)の全幅に渡って延在するとともに、根元部とは反対側の自由端部(24b)においては、上記全幅よりも短い寸法を有し、根元部(24a)と自由端部(24b)の両端同士を直線(24c)で結んだ台形形状を為すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の特殊折丁。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の特殊折丁を含めて中綴じ製本されたことを特徴とする、冊子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−120364(P2010−120364A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319885(P2008−319885)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)