説明

動画シートおよび動画本

【課題】絵シートの端部の操作部を折り曲げ操作して絵シートをスライドさせることにより透明スリットを通じて絵が動いているように見える動画シートにおいて、操作部を折り曲げ操作しても必要な情報を常に見えるようにすることにある。
【解決手段】表示窓2を有するシート1と、前記表示窓の内側に貼布され細長い透明スリット3をその幅aの整数倍の不透明部分4をおいて形成されたフィルム5と、このフィルムの内面側に位置し分割画6を透明スリットの幅を1単位として前記整数倍に細断され動いた状態を表示した絵シート7と、この絵シートをスライド可能に重合支持する厚手の基板11とで構成し、前記絵シートの端部の折曲操作部9と重なる基板11の端部を固定表示部11aとしたことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート端の折曲操作により画面に現れる絵が複数種の動作を現出する動画シートおよびこのシートを用いた動画本に関する。
【背景技術】
【0002】
動物などの絵が複数種の動きを呈してあたかも動く映像を思わせるようになされた動画シートが特許文献1および2により知られている。
【0003】
この動画シートの原理は、特許文献1にみられかつ図9に示すように、シート1に形成された表示窓2内に透明スリット3,3…とこれら透明スリット間を不透明とされた不透明部4,4…とを交互に有するフィルム5が貼布され、このフィルム5の下面側に前記透明スリット3の幅を一つの基準単位として複数の動きを表す分割絵6を表示した絵シート7をスライド自在に重ね、この絵シート7を矢印方向へ動かすことによりフィルム5の透明スリット3,3…に現れる絵が連続的に変化して見え、あたかも絵が動いているかのような現象を呈するものである。
【0004】
すなわち具体的にみると、図9(A)、(B)に示すようにフィルム5の透明スリット3の幅を「a」としたとき、透明スリット3,3間の不透明部4の幅を例えば「4a」とすると、絵シート7に表示する絵6は透明スリット3の幅「a」をもって5つに動いた状態を分けて表示し、絵シート7をピッチaずつスライドさせることによりその分解して表示された分割絵6,6…が順次透明スリット3,3…に現れることによりあたかも描かれた動物等の絵の手や頭が動いているかのように見えることになる。
【0005】
上記原理に基づく従来の動画シートは、図10に断面図を示すように、表面となるシート1の面に前述のフィルム5が裏面に貼付される表示窓2を有する2つ折りのシート8の間に前述の分割絵6が表示された絵シート7が挿入され、この絵シート7の端部と前記シート8の下面側の端部とが操作部9により一体的に連設され、この操作部9を矢印方向に動かすことにより前記絵シート7が図において左右方向にスライドして前述の分割絵6がフィルム5の透明スリット3,3…に順次現れて分割絵6に基づく絵が動いて見えるように構成されている。
【0006】
特許文献2に示されるものは、原理的には特許文献1と同様であるが、開閉操作する表紙(カバー)の内面側に絵シートを連設し、この表紙を開けると絵シートが引張られてスライドし、絵シートの分割絵がフィルムの透明スリットに順次現れるというものである。
【0007】
しかして上記特許文献1に示されているものは、絵シート7の端部の操作部9を折り曲げて絵シート7を動かすので、絵シート7が1枚のみの場合には特別問題は生じないとしても、数ページにわたる複数枚を重ねてブック状としたとき各ページの端部の操作部9をそれぞれ折り曲げることができる構造となり、その結果本としての外観体裁を著しく損ない、加えて操作部9の折り曲げ操作もやりにくいものとなる。
【0008】
特に絵シート7の端部に種々の解説などの説明文や各種表示がなされていると、操作部9の折り曲げ操作時にこれらの表示内容を見ることができず、不便をきたすものとなる。
【0009】
さらに操作部9はシートを折り返しているだけであるから他部に比べ厚みがなく、したがって本としたとき左右で厚みが異なってしまい、店頭で積み重ねて置くときなどバランスが悪く、安定性に欠けるものとなる。
【0010】
特許文献2に示されているものは、表紙を開けることにより絵シートが引張られてスライドする方式であるので、表紙を全開乃至はそれに近い開度を与えたときはまだしも、表紙の開度が小さいときはその表紙がフィルム部分を覆ってしまうので画面の全域をよく見ることができないという致命的な欠点があるうえ、1枚のみの構成にせざるを得ないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】USP1,259,297号明細書
【特許文献2】USP2,367,967号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記の点に鑑み、絵シートの端部を折り曲げて絵柄を動かすとき、絵シート端に表示されるべき表示内容を支障なく見ることができるとともに、複数枚重ねて動画本としたとき操作を妨げることなく本としての厚みを均一化することができてその外観体裁を損なうことがないようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する手段として本発明は、表示窓を有するシートと、この表示窓の内側に貼布され細長い透明スリットがその幅の整数倍の不透明部分をおいて形成されたフィルムと、このフィルムの内面側に位置し絵柄を前記透明スリットの幅を1単位として前記整数倍に細断され動いた状態を表示した絵シートと、この絵シートをスライド可能に重合支持する厚手の基板とで構成し、絵シートの端部の折曲操作部と重なる基板の端部を固定表示面として動画シートとしたことにある。
【0014】
上記動画シートを複数枚重ね、その上面に表紙を、同下面に裏表紙を重ね合わせ、動画シートの操作部とは反対端に背表紙をそわせて綴じ合わせ、ブック状に形成して動画本としたことにある。
【0015】
前記フィルムの上部および下部の左右位置に切起し爪を形成し、これら切起し爪に前記絵シートの上下縁を係合して絵シートのスライド動作を案内するようにすることが好ましい。
【0016】
前記表紙に、前記絵シートの表示窓に対応し該表示窓が見えるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、絵シートをスライドさせるために折り曲げ操作する操作部の下に基板の端部が重なるように位置しており、この重なる部分を固定表示部として種々の情報等を表示するようにしたので、操作部をつまんで折り曲げ操作を行っても基板の固定表示面に表示される説明文や解説文等の表示を不動の状態で見ることができ、動く絵と併せて読むことを可能とすることができる。
【0018】
一方、前記絵シートを複数枚用いて表紙と裏表紙との間に挟在させて綴じ合わせ、見開き可能なブック構造とすれば、絵シートに表現される絵を基にストーリーを組むことができ、動画を一層面白く構成することができ、子供に多くの興味を覚えさせることができながら各ページの操作部の下に基板の固定表示面が位置することになるので各ページ毎の動画で表される動物等の名前やその解説を見ながら絵を動かすことができ、一層興趣を増すことができる。
【0019】
そして複数枚の動画シートを重ねてブック状としたとき、基板の存在によって本としての厚みが左右均一となり、多数重ねて店頭に置いても傾くことなく安定した状態を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による動画シートの一実施形態を示す斜視図。
【図2】同、一部の拡大斜視図。
【図3】図1の平面図。
【図4】同、側面図。
【図5】本発明を動画本とした一例を示す端面図。
【図6】動画本とする場合の動画シートの裁断形態例を示し、(A)は最上位の動画シート、(B)は中間に位置する動画シート、(C)は最下位の動画シートの各展開図。
【図7】動画本とする場合の表紙、裏表紙、背表紙の裁断形態例を示し、(A)は表紙、裏表紙、背表紙の表面用の用紙、(B)は芯材用厚紙を示す展開図。
【図8】フィルムの平面図。
【図9】動画シートを構成する公知の材料を示し、(A)は透明スリットを有するフィルムの平面図、(B)は同絵シートの平面図。
【図10】従来の動画シートの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明による動画シート10の一実施形態を示すもので、動画シートとしての基本的な原理に関しては先記の図9で示したものと同様であるのでこれと対応する部分にはその符号を援用して付すに留め詳細な説明は省略するが、本発明においては絵シート7の下面側に基板11が設けられ、この基板11に絵シート7と一体に連設される操作部9の両側部の接着片9a,9aが貼着されている。
【0022】
この操作部9は、前記接着片9a,9aに折曲線9b,9bを介して連設されていて、図1、図2の矢印A⇔B方向へ折り曲げ自在とされ、この操作部9に折曲線9cを介して絵シート7が連設されるが、この折曲線9cは接着片9a,9aの折曲線9b,9bより操作部9側へ距離Lだけ入り込んだ位置に設けられ、操作部9をA方向へ起こすように回動させたとき絵シート7がA’方向へスライドするようになっている。
【0023】
前記操作部9を矢印B方向へ倒したときは、前記基板11に重なり合い、操作部9を矢印A方向へ起こしたとき基板11の端部表面が現れる固定表示面11aとされている。
【0024】
したがって操作部9をつよんで矢印A⇔B方向へ動かしても前記固定表示面11aは不動状態に固定表示される。それ故絵シート7の内容の表示文字12や説明など、常時静止した状態として見ることができるようになる。
【0025】
これにより動画シート10は基板11により保形性が保たれ、操作部9をつまんで動かす際にも従来のように動画シート10の一端が操作部9となる不安定さがなく、基板11がベースとなって基準になるので操作もしやすくなる。
【0026】
図5は前記動画シート10を複数枚綴じ合わせてブック状とした一実施形態を示すもので、複数枚の動画シート10,10…を重ね、その操作部9,9…とは反対端の折り返し端を含む外周を表紙13、裏表紙14、および背表紙15によりくるみ、これら表紙13、裏表紙14を上下に位置する動画シート10,10の一面と基板11とを接着することによって固定し、中間の動画シート10はその一面同士を接着して一体化させている。
【0027】
上記表紙13には、最上位の動画シート10の表示窓2を臨む窓孔16が開口されている。
【0028】
前記フィルム5は、図8に一例を示しているようにその上下部に左右一対として切起し爪17,17が形成されており、この切起し爪17,17に絵シート7の上下縁が係合されて絵シート7の移動時にスムーズに安定してスライドさせることができるようになっている。
【0029】
図6(A)〜(C)は前記ブック状に形成する際の各動画シート10a,10a…を形成する用紙の裁断形態の一例を示している。
【0030】
すなわち図6(A)は最上位の動画シート10(便宜上符号にサフィックスを付して区別けする)、図6(B)は中間の動画シート10,10,10、図6(C)は最下位の動画シート10の場合であり、いずれも前述の説明と対応する部位にはこれと同一の符号を付して対応させてある。
【0031】
図7(A)は表紙13、裏表紙14、背表紙15の裁断形態例、図7(B)はその芯材(厚紙)13a,14a,15aを示している。
【0032】
しがたって本発明による動画シート10は、単体構造、ブック構造のいずれかにおいても絵シート7をスライドさせるために折り曲げ操作する操作部9の下に基板11の端部の固定表示面11aが重なるように位置し、この固定表示面11aに表示される説明文や絵柄の名称等の情報の表示文字12等が操作中でも常に見え、動く絵と併せて観賞することが容易にできる。
【0033】
上記作用は複数枚の動画シート10〜10をブック状とした場合であっても同様に機能する。そして基板11の存在によって本としての厚みを左右均一となり、店頭に積んで置いても安定した状態を保つことができる。
【符号の説明】
【0034】
1 シート
2 表示窓
3 透明スリット
4 不透明部
5 フィルム
6 分割絵
7 絵シート
8 シート
9 操作部
10 本発明による動画シート
11 基板
11a 固定表示面
12 表示文字
13 表紙
14 裏表紙
15 背表紙
16 窓孔
17 切起し爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示窓を有するシートと、前記表示窓の内側に貼布され細長い透明スリットがその幅の整数倍の不透明部分をおいて形成されたフィルムと、このフィルムの内面側に位置し絵柄を前記透明スリットの幅を1単位として前記整数倍に細断され動いた状態を表示した絵シートと、この絵シートをスライド可能に重合支持する厚手の基板とで構成され、前記絵シートの端部の折曲操作部と重なる基板の端部が固定表示面とされていることを特徴とする動画シート。
【請求項2】
表示窓を有するシートと、前記表示窓の内側に貼布され細長い透明スリットがその幅の整数倍の不透明部分をおいて形成されたフィルムと、このフィルムの内面側に位置し絵柄を前記透明スリットの幅を1単位として前記整数倍に細断され動いた状態を表示した絵シートと、この絵シートをスライド可能に重合支持する厚手の基板とで構成され、前記絵シートの端部の折曲操作部と重なる基板の端部が固定表示面とされた動画シートを複数枚重ね、その上面に表紙を、同下面に裏表紙を重ね合わせ、動画シートの操作部とは反対端に背表紙をそわせて綴じ合わせ、ブック状に形成されていることを特徴とする動画本。
【請求項3】
前記フィルムの上部および下部の左右位置に切起し爪が形成され、これら切起し爪に前記絵シートの上下縁を係合して絵シートのスライド動作を案内するようになされている請求項1記載の動画シート。
【請求項4】
前記表紙に、前記絵シートの表示窓に対応し該表示窓が見えるようになされている請求項2記載の動画本。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−228340(P2010−228340A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79614(P2009−79614)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000010021)株式会社小学館 (7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】