説明

動画再生システム及びその制御方法

【目的】 動画による講義においてノートを取る速度に応じて動画再生速度を自動的に制御すること。
【解決手段】 従来は一方的に配信されていた講義映像に対して、各視聴者が自分のペースに合わせて再生速度を調整し、映像を閲覧しながら場面ごとにノートを記述できるインターフェースが実装されていた。本発明による動画再生システムでは、(1)動画を再生し(ステップ301)、(2)再生された動画による講義や授業について、視聴者がキーボードなどを介してノートを取る速度を検出し(ステップ302)、(2)検出されたノートを取る速度に応答して動画の再生速度が自動制御される(ステップ303、304、305)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画再生システム及びその制御方法に関する。更に詳しくは、視聴者の視聴態様に応じて再生速度が自動的に制御される動画再生システム及びその制御方法に関する。再生速度制御の基礎となる視聴態様としては、キーボードやタッチパネルなどの入力手段を用いて視聴者がノートを取る速度や、視線の移動軌跡から推定される視聴者の集中度などを想定している。
【背景技術】
【0002】
現在では、インターネットを介した動画の配信が広く行われている。インターネット経由で動画ニュースや映画を視聴することは既に一般的である。動画ニュースや映画だけではなく、インターネット経由で配信される各種の講義を利用して学習する者も多い。この出願では、インターネット経由で配信される講義を一例として、教育分野における動画利用について考察する。動画などの電子的な教材を利用した非対面型の学習形態はeラーニングと称されることが多いが、誰でも容易に理解するように、eラーニングに利用される電子的な教材は、インターネットを含む通信ネットワーク(LANやWANを含む)経由で配信される動画には限定されない。CD−ROMやDVDなどの記憶媒体に収録されたもの、あらかじめクライアント・コンピュータにダウンロードしたもの、通常のテレビジョン放送される講義なども含まれる。もちろん、どのような通信ネットワークが利用されるかは本発明にとって重要でない。
【0003】
講義など教育目的の動画配信が広く普及したのは、時間的地理的制限を受けずに優れた教師の講義を遠隔的に聴講できるからというのが主な理由であろう。また同時に、その効率性と低価格性も、普及原因であると考えられる。大学などの高等教育では、正規の講義を収録し視聴を希望する個人に無償で配信する形態が既に実現しており(例えば、米国のマサチューセッツ工科大学から始まり日本の大学でも徐々に増加しつつある「オープンコースウェア」)、eラーニングを利用した正規の学部及び大学院教育も既に実現している(信州大学、サイバー大学など)。また企業内の研修や資格試験の準備講座でも多種多様な学習コンテンツが提供され、活用範囲が拡大している。
【0004】
大学レベル又は社会人レベルのeラーニングにおいては、講義内容に対する興味と必要性とによって映像の内容を読み取ろうとする能動的な視聴が見られる。しかし、初等中等教育では状況が異なる。自分が子供だった頃を思い出せば誰でも推測できるように、上記のような動画再生を利用した学習をそのまま応用しても、児童や生徒に学習を継続させることが困難な場合が多い。
【0005】
従来においても、発展的な課題のように学習者の関心が高い教育コンテンツの場合には配信方法によって学習効果の差異は生じないことが確認されている。つまり、提供されるコンテンツに対する必要度が高ければ、提供の態様の重要性は小さい。しかし、小学生ないし高校生までの初等中等教育では、映像教材を一方的に配信しただけでは、学習者が受動的になるのは明らかである。講義映像を学習に活用するには、学習者が教材に対して能動的に働きかける契機を用意することが必要である。
【0006】
そこで、初等中等教育における動画再生を利用したeラーニングとして学習者に動画を受動的に視聴させる場合に、動画の視聴と並行してノートを取ることを促し、学習に能動的に参加させ学習意欲を継続させる、というのが、本発明による動画再生システムの基礎にある考え方である。
【0007】
インターネットを介した講義配信を行う場合、ビデオテープやDVDを用いた場合と比較して、教材自体にインタラクション(操作性・双方向性)を付与することができる。遠隔授業においては、3つのインタラクションがあると言われることがある。学習者間のインタラクション、学習者と教師とのインタラクション、そして、学習者とコンテンツとのインタラクションである。講義映像にこれらのインタラクションを付与することによって学習意欲と集中度と学習効果とに関してどのような差異が生じるか、という比較研究がいくつか行われている。
【0008】
オンライン上の学習者間のインタラクションに着目した研究には、同一のコンテンツをウェブ上で閲覧する際に映像の場面ごとに学習者相互間で閲覧可能なコメントを書き込む環境を用いた例がある。しかし、同一の講義内容を視聴する場合に、学習者と講師とのインタラクションと学習者間のインタラクションとのいずれが学習効果に影響するかは明らかになっていない。他方で、教材と学習者との間のインタラクションに着目した研究においては、インタラクティブ性のない映像を用いた場合は映像を用いない音声だけの場合と比較して学習効果に差が認められないが、同一の講義内容に対して学習者と教材との間にインタラクティブ性を付与した教材の場合には学習効果と学習の動機付けとの両者において効果が認められるという説がある。この説によると、講義を配信する場合、映像を付加しただけでは教材としての効果に変化はないが、スライドのページを移動する程度のインタラクションを付与すると、学習者自身がペースを作ることができ学習効果が現れる可能性があることを示唆している。
【0009】
本発明による動画再生システムは、上述したように、学習者が、動画による講義を視聴するのと並行してノートを取る機能を備えることにより、学習効果を生じさせようとするものである。すなわち、本発明による動画再生システムは、学習者が自学自習で利用することを想定し、上述した3つのインタラクションの中の、教材と学習者との間のインタラクションに着目している。具体的には、本発明による動画再生システムでは、従来のeラーニングにおいて重要視されることが少なかったノートを取る過程に着目し、ノートを取る作業を通じて学習者と教材とのインタラクションを促進させることにより、優れた学習効果が達成されることを目指す。
【0010】
学習者が授業のノートを取る過程が学習に影響を与えることは、初等中等教育の現場では重視されている。しかし、従来の映像教材は、学習者の事情を考慮せずに一方的に提供され、更に、ひとりの教師による授業よりも情報量が多い場合がほとんどであった。従って、学習者としては、大量の情報の一方的提供の結果として、想像力や創造力が失われ、受動的になりがちであり、格別な意欲がない限りノートを取らなくなってしまうことが多かった。しかし、本発明の発明者は、本発明による動画再生システムが、eラーニングにおいて学習者がノートを取りやすい環境を提供することによって、学習者が配信される教材との間でインタラクションを有することができ、結果的に優れた学習効果を達成することを目的とする。
【0011】
なお、ノートを取る過程が学習者が講義内容を整理する働きを有することに着目し、コンピュータ上で文字と手書きのノートを取ることを可能にするシステムは、既に開発されている(N. Ward et al., "Software for Taking Notes in Class", 33 ASEE/IEEE Frontiers in Educational Conference, S2E-2-8, 2003を参照のこと)。なお、他人が用意した講義要約やノートを読む場合と比較して、学習者自身で取ったノートを読み直すことが学習効果につながるという指摘も存在する。
【0012】
以上のような経験則に基づき、本発明においては、講義の視聴者がノートを取ることと学習効果との間には相関関係があることを前提とする。そして、本発明による動画再生システムでは、視聴者が動画を視聴しながらノートを取ることを推奨した上で、視聴者がノートを取ることを容易にする技術的工夫がなされている。具体的には、視聴者がノートを取る速度に応じて動画の再生速度が自動的に制御され、そのような自動制御によりノートを取りやすい環境が提供される。つまり、視聴者がノートをゆっくりと取る場合には再生速度を遅くし、逆に、視聴者がノートを取る速度が速い場合には再生速度を速くする。換言すると、場面あたりのノートの記述量が多い場合には再生速度を遅くし、逆に、場面あたりのノートの記述量が少ない場合には再生速度を速くする。動画の視聴と並行してノートを取る過程を通じて学習者と教材との間のインタラクションが生じる。その結果、(1)学習者による動画教材を用いた学習が能動的なものとなり、(2)学習者は、自分自身で記録したノートを、復習や見直しの際に利用することが可能となる。
【発明の開示】
【0013】
本発明によると、ディスプレイを含む出力手段とキーボードやタッチパネルを含む入力手段とを有するコンピュータにおいて動画データを再生するシステムであって、動画データが記憶された記憶手段と、記憶されている動画データを前記記憶手段から読み出し前記ディスプレイ上で表示することにより動画を再生する動画再生手段と、前記再生される動画を視聴する視聴者の特定の視聴態様をモニタし、前記視聴者の前記特定の視聴態様と関連するパラメータを検出する検出手段と、前記検出手段によって検出されたパラメータに応答して前記再生手段による動画の再生速度を自動的に制御する自動制御手段と、を備えた動画再生システムが提供される。
【0014】
上述の動画再生システムでは、前記パラメータの一例として、前記視聴者が前記入力手段を用いてノートを取る速度を使用することができる。
また、本発明によると、ディスプレイを含む出力手段とキーボードやタッチパネルを含む入力手段とを有するコンピュータにおいて動画データを再生するシステムを制御する方法であって、記憶手段に記憶されている動画データを読み出し前記ディスプレイ上で表示することにより動画を再生するステップと、前記再生される動画を視聴する視聴者の特定の視聴態様をモニタし、前記視聴者の前記特定の視聴態様と関連するパラメータを検出するステップと、前記検出されたパラメータに応答して前記再生ステップにおける動画の再生速度を自動的に制御するステップと、を含む動画再生システム制御方法が提供される。
【0015】
上述の動画再生システム制御方法では、前記パラメータの一例として、前記視聴者が前記入力手段を用いてノートを取る速度を選択することができる。
また、本発明は、上述の動画再生システム制御方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータ・プログラムが記憶されているコンピュータ可読な記憶媒体として把握することも可能である。
【0016】
更には、本発明は、上述の動画再生システム制御方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータ・プログラム自体として把握することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では、本発明による動画再生システムの動作を、図面を参照しながら説明する。既に述べたことであるが、ごく一般的なコンピュータのユーザにとって自明であるように、インターネットなどの通信回線を介して配信される動画データが再生される場合もあるし、CD−ROM、DVD、ハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶されている動画データを読み出して再生される場合もある。
【0018】
本発明による動画再生システムは、一方向的に動画による講義が提供されるだけの従来の場合との差別化を図るため、視聴者が再生される動画の視聴と並行してノートを取ることを容易にするインターフェースを提供し、視聴者と教材との間でのインタラクションを通じて能動的な学習を行うことを可能にする。
【0019】
更に、学習者が閲覧する際の補助機能として、例えば、映像の内容の要点をつかみやすくするために映像閲覧時に映像から抽出した静止画像によってしおりをつける機能を有するように構成することも可能である。このしおり機能は、本発明の発明者によって過去に開発された既存の機能である(谷内正裕他「映像資料から画像を抽出する英語e-Learning教材の実装」、日本教育工学会第21回大会講演論文集、第609−610頁、2005年)。
【0020】
動画再生の速度、特に動画に伴う音声の再生速度が講義の聴きやすさを左右することは明らかである。従って、講義を視聴している学習者が希望する適切な再生速度を手動で選択できる機能を備えていれば便利である。音声ファイルを再生する際に、音程などは変更せずに再生速度だけを適切な速度に手動で設定する技術は、既に広く知られ普及している従来技術である。市販の録音装置などで既に行われているように、一般的に、音程を変更することなく速度だけを0.7倍から1.2倍程度の範囲で変動させながらそれほど違和感のない音声を提供することが可能である。そこで、本発明の発明者は、従来型の動画再生システムへの追加機能として、学習者が動画の再生と並行してノートを取る速度を検出し、検出されたノート作成速度に応じて動画の再生速度を自動的に制御する機能を発明した。すると、この本発明による動画再生システムの動画再生速度自動制御機能により、動画の再生速度は、手動で設定しなくとも、視聴者のノート作成速度に応じたレベルに自動的に設定され、非常に便利である。
【0021】
これ以外にも、本発明による動画再生システムにおいて、従来から知られている次のような便利ないくつかの機能をシステム上で追加することが可能である。まず、第1に、動画数秒間に1枚の割合で静止画クリップを用意し、その画像をクリックするとその静止画に対応する場面にランダムにアクセスする機能である。DVDのメニュ機能に類似した機能である。この機能により、講義の中の特定の時点に瞬時にジャンプすることが可能になる。また、第2に、事前に講義映像の中から無音が続く部分を抽出し、連続する動画を無音部分に区切られた10秒から20秒程度の長さの段落と、短い無音部分に囲まれた句読点による文の区切りをシステムに保存しておき、ノートとしてコメントを記述する際に、次の段落に移るキー操作(例えば、改行キーを押す)を行うことで、直前の短い無音部分(分の区切り)に戻るように構成することができる。この機能により、ノートを取りやすくなり、該当する場面の動画から抽出された静止画像とテキストボックスが作られる。コメントをクリックすることにより再編集が可能であり、また、コメントに対応した静止画像はクリックするとその場面に移動することができる。
【0022】
本発明による動画再生システムは、基本的に自学自習のための装置であり、家庭学習で用いることが想定されている。従って、本発明による動画再生システムは、追加的に特別のソフトウェアをインストールすることなく、動画再生が可能な通常のインターネット接続環境を有する一般的なパーソナル・コンピュータで動作するように構成される(インターネット経由で配信される動画を再生する場合)。すなわち、本発明による動画再生システムは、ウィンドウズXPのインターネット・エクスプローラ6と、ウィンドウズ・メディア・プレーヤー10での動作が確認されている。再生される動画映像はウィンドウズ・メディア形式でインデクス情報が入ったストリーミング用のファイルであれば、ストリーミング・サーバもしくはクライアント・コンピュータ上にそのファイルを置くことで利用できる。ただし、再生する間に動画映像にランダムアクセスするため、httpストリーミングでは利用することができない。
【0023】
映像の静止画クリップやインターフェースは、ウェブ・アプリケーションとしてリナックス・サーバ上で動作する。抽出を希望する場面の静止画クリップを生成するためには、例えば、<http://ffmpeg.mplayerhq.hu/>から入手可能なFFMPEGを用い、学習履歴の保存には、例えば、<http://www.sqlite.org/>から入手可能なSQLiteを用いることができる。これらに関するサーバ側の機能連携にはPHPを用いることができる。
【0024】
学習者が表示装置上で見るインターフェースは、ジャバスクリプトを用いて実装することができる。キーボードで文章を書くのと同様の操作感を維持しながら、講義映像自体にインタラクティビティを付与させていくためキーボードからの入力に限定することも、ペンタブレット用いた手書き入力を含むそれ以外の入力装置を用いた入力を可能とすることもできる。
【0025】
なお、本発明による動画再生システムにおける入力手段の一例として、スウェーデンのアノト社から市販されている特殊なペン(アノトペン)を用いることもできる。アノトペンとはペン先にCCDカメラを備えたペンであり、特殊な図形が予め印刷された専用の紙にアノトペンを用いて文字や図形を書くと、CCDカメラがペン先がたどった紙の上の図形を読み取り、どのような文字や図形が書かれたのかをデジタルデータとして無線通信でサーバに伝送する仕組みを備えている。従って、アノトペンを用いてアノトペン専用の紙に文字や図形を書くと、そのノート情報が無線通信でコンピュータに伝送される。伝送されたノート情報からペンのストロークの長さとチェックボックスをチェックした時間とを取得すると、キーボードやタッチパネルと同様の情報を受け取ることができる。なお、専用の用紙の上にあるチェックボックスをチェックすることによって、文字や図形の書き込みを開始することができる。いずれにしても、キーボードであっても、ペンなどの接触によって入力がなされるタッチパネルであっても、アノトペンであっても、入力速度を検出することが可能であれば、本発明による動画再生システムにおける入力手段として用いることができる。本発明の核心は、視聴者がノートを取る速度に応じて動画の再生速度が自動的に制御される点にある。従って、どのような入力手段が用いられるかは重要でない。もちろん、キーボードもタッチパネルもアノトペンも既知の技術であるから、当然のことである。
【0026】
図1には、本発明による動画再生システムが動作中のディスプレイ上の表示が示されている。ディスプレイの左側で動画が再生され、ディスプレイの右側には視聴者がノートを取るためのインターフェースが表示されている。
【0027】
上述したように、本発明による動画再生システムは、動画を再生しながらノートを取ることを可能にする第1のインターフェースと、動画再生が終了しノートが完成した後で出来上がったノートを見直すための第2のインターフェースとの2つのインターフェースとを備えている。第1のインターフェースは、再生された動画の講義を視聴しながらノートを取る過程に相当する作業として、動画の再生と並行して各場面にコメントを書き込み保存するためのインターフェースである。第2のインターフェースは、講義終了後にノートを見て復習する過程に相当する作業として、ポートフォリオとして学習履歴を残しノートを復習するためのインターフェースである。図1に示されているのは、動画を再生しながら映像を閲覧しながらノートを取る際の第1のインターフェースである。
【0028】
次に、図1を参照しながら、学習者によるキーボード操作の一例を述べる。学習者が再生されている講義映像を閲覧している最中にある時点でリターンキーを押すと、リターンキーを押下した瞬間の静止映像とノートとなる文章を入力するテキストボックスとが、動画再生画面の右側に表示される。この間も動画の再生は継続している。講義ノートとして講義映像に対応する文字の入力を完了したら、改行(リターンキー)又はタブキーを押すと、次の静止画像とテキストボックスとが表示される。ここで注意すべきは、先に述べたように、本発明の動画再生システムは、学習者のキー入力の速度を自動的に検出し、それに応じて自動的に動画の再生速度を設定する機能を有している点である。具体的には、講義映像の中から無音を抽出し、無音が長く続く部分に囲まれた10秒から20秒程度の長さの段落中に学習者によって押下されるキーの個数を計数し、予め設けられている複数の基準のどれに該当するかによって、動画の再生速度が自動的に設定される。段落中に押下される平均的なキーの数をどのくらい上回るか下回るかに応じて、再生される動画における講義担当者の発話速度が上下に調節される。映像の再生が速すぎてノートが追いつかない場合には、直近の長い無音部分で再生が一時停止され、連続したキー入力が終わったのを検知してから続きを再生する。逆に段落中に入力が行われなかった場合は、学習者が必要と判断しキー入力を始める場面まで、自動的に再生速度を上げる。作成されたリストにある抽出したそれ以前の静止画像をクリックすると、クリックした静止画像の場面に戻る。右側中央のコントロールバーやキーボード操作で速度を調整することによって、再度講義を聴くことができる。
【0029】
以上のステップを繰り返すことで、学習者のノートとノートが取られた場面とを対応させたリストを、普段の文章をキーボード入力するペースで作成できる。本発明による動画再生システムを用いて作成されたノートは、印刷して復習用のシートを作成したり、再生される動画に字幕として表示させたりすることが可能である。また、作成されたノートを対象として文字検索を行うことにより、該当する場面の講義映像を閲覧するための検索用のメタデータとして活用することができる。
【0030】
以上で説明した本発明による動画再生システムを用いると、学習者と講義映像の提供者との両者にとって、従来技術による講義配信では得られないフィードバックを得ることができる。学習者に関しては、本発明による動画再生システムが有する動画再生速度調整機能や、自分で重要であると考えた特定の場面を任意に指定してノートを取ることを可能にする機能により、個々の学習者のペースに合わせた動画再生が可能になる。もちろん、動画再生の後で残されたノートは、講義内容の理解を進めながら後で学習を見直すための資料となる。スライドを映しながら行われた講義のノートを取った場合には、スライド画像と対応した復習用資料が得られる。
【0031】
講義をする側にとっては、動画が再生される際には個々の学習者の事情に応じて再生速度が個別的に調整されるため、講義の際には、映像収録を過渡に意識することなく自分自身のペースで講義してかまわない。また各学習者によるノートの内容を参照して講義内容と対応させることで、講義内容の伝達性の確認や、講師の講義手法の評価、理解度が高い学習者と低い学習者との間での講義内容に対する着目点の違いを調査するなど、以後の講義映像の収録に役立てることができる。さらに、講義中、次の場面に進む前に、学習者にノートの記述を促すため、事前に映像を一時停止する箇所を、講師が指定しておくことも可能であり、より学習者のペースに合わせた対面型の授業に近い講義配信を実現できる。
【0032】
次に、本発明による動画再生システムのハードウェア構成について簡単に述べる。本発明による動画再生システムの再生速度自動制御は、上述した各処理に対応するステップをコンピュータに実行させる命令セットから構成されるソフトウェアによって実現される。
【0033】
以下では、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源をどのように具体的に用いて実現されるのか、また、ソフトウェアがハードウェア資源とどのように協働して本発明の所期の目的が達成されるのか、について説明する。
【0034】
図2は、本発明による動画再生速度の自動制御を実行するソフトウェアが動作する典型的なコンピュータ・ハードウェアを図解するブロック図である。本発明による動画再生速度の自動制御を実行するソフトウェアによって動作するコンピュータ11の概要が示されている。コンピュータ11は、バス12を介して相互に接続されたプロセッサ13とメモリ14と記憶装置15と出力インターフェース16と入力インターフェース17とから構成される。そして、出力インターフェース16にはディスプレイ20が接続され、入力インターフェース17にはキーボード18やマウス19が接続されている。
【0035】
本発明による動画再生システムを構成するそれぞれの手段に所定の処理を実行させる命令セットから構成されるコンピュータ・プログラムは、記憶装置15に記憶されている。本発明による動画再生システムが情報処理を実行する際には、所定の命令が、バス12を介してメモリ14に転送される。メモリ14に読み出された命令は、プロセッサ13によって解釈され実行される。
【0036】
本発明による動画再生システムは、記憶手段に記憶されている動画データを読み出しディスプレイ上で動画を再生する再生手段と、再生される動画を視聴する視聴者の特定の視聴態様をモニタすることにより、視聴者の特定の視聴態様と関連するパラメータを検出する検出手段と、検出手段によって検出されたパラメータに応答して再生手段による動画の再生速度を自動的に制御する自動制御手段と、は、プロセッサ13がメモリ14にロードされた命令を解釈して実行する機能として実現される。メモリ14は、プロセッサ13によって実行される命令を、その結果と共に保持する。プロセッサ13は、メモリ14からフェッチすることによって、本発明による動画再生を構成するそれぞれの段階における処理を行う命令を実行する。プロセッサ13は、パーソナル・コンピュータやワークステーションの場合にはマイクロプロセッサであり、専用のASICでもありうる。キーボード18やマウス19の入力装置と入力インターフェース17とを介して、コンピュータ11への入力がなされ、出力装置であるディスプレイ20と出力インターフェース16とを介して、コンピュータ11からの出力がなされる。
【0037】
なお、図2のコンピュータ11は、スタンドアロンの単独のコンピュータとして図解されているが、通信機能を有するクライアント・コンピュータとして構成することも可能である。そのように構成されている場合は、記憶装置に記憶されている動画データを読み出して再生するのではなく、通信回線を介してダウンロードされる動画データをいったん記憶することなくストリーミング再生することもありうる。この技術分野の当業者であれば必要な修正を容易に理解することができるので、そのような場合に必要となる修正の詳細は割愛する。
【0038】
本発明による動画再生システムは、上述のように、再生手段と、検出手段と、自動制御手段と、を備えている。これらの手段が、本発明を構成するそれぞれのデータ処理を行う。図2に示されているブロック図に即して考察すると、それぞれのデータ処理は、記憶装置15に記憶されておりメモリ14に読み出されプロセッサ13によって解釈され所定の処理をコンピュータ11に実行させる命令セットから構成されるソフトウェアによって実現される。
【0039】
この技術分野の当業者であれば理解するように、上述の各手段によって実行されるそれぞれのデータ処理は、対応する命令で構成されるコンピュータ・プログラムによって、コンピュータ11上で実行される。これらの手段は、図2のプロセッサ13の枠の中に記載されているように、そのようなコンピュータ・プログラムを実行するコンピュータ・ハードウェアの中に埋め込まれた形式で存在することが可能であるし、あるいは、様々なコンピュータ可読媒体に記憶されることもありうる。コンピュータ可読媒体は、特定の情報処理システムにおいて実際に用いる際には復号可能な符号化された形式を有する。この出願において、ソフトウェア又はコンピュータ・プログラムとは、情報処理能力を有するコンピュータ・ハードウェアに特定の機能を実行させる命令セットの任意のプログラミング言語による表現を意味する。
【0040】
図2に示されているのはあくまで一例であり、本発明は、図2に図解されている特定のアーキテクチャに限定されることはない。本発明による動画再生システムを構成する手段が組み入れられるハードウェアの構成は、個々の実装によって変動する。このように、本発明による動画再生システム及び方法は、ハードウェアとソフトウェアとの組合せとして実現される。ハードウェアとソフトウェアとの典型的な組合せは、メモリにロードされプロセッサによって解釈され実行されるとコンピュータを制御して本発明を構成する手段及びステップを実行するコンピュータ・プログラムがインストールされたコンピュータ・システムである。
【0041】
なお、図3には、本発明による動画再生システムの動作の概略を示す流れ図が示されている。ステップ301では、動画再生が開始される。動画の再生速度をVpとする。ステップ302では、視聴者がキーボードを介してノートを取る速度を検出する。検出されたノートをとる速度をVnとする。ステップ303では、検出された入力速度と所定の基準とを比較する。すなわち、所定の基準をTとして、不等式Vn≧Tが成立するかどうかを判断する。検出された入力速度が所定の基準よりも大きい場合、すなわち、不等式Vn≧Tが成立する場合には、ステップ304で動画再生速度Vpを速めてVp’とする(Vp’>Vp)。検出された入力速度が所定の基準よりも小さい場合、すなわち、不等式Vn<Tが成立する場合には、Vpを維持するか、ステップ305で動画再生速度Vpを遅くしてVp’’とする(Vp<Vp’’)。
【0042】
図3では、ノートをとる速度Vnが所定のスレショルドT以上である場合には、ステップ304においてVpをVp’に変更し、ノートをとる速度Vnが所定のスレショルドTよりも小さい場合には、ステップ305においてVpを維持するか、又は、Vpよりも遅いVp’’に変更する、となっている。しかし、これは本発明の1つの実施例であり、異なる制御も可能である。例えば、ステップ304においてVpを維持するか、又は、VpをVp’に変更し、ステップ305においてVpよりも遅いVp’’に変更する、という制御をすることも可能である。本発明の基本的なアイデアは、再生されている動画の特定の場面において視聴者がノートをとる速度に基づいて、動画の再生速度が自動的に調整される動画再生速度自動制御機能にある。
【0043】
次に図4には、動画再生速度の自動調整の詳細を説明されている。また、図5には、図4との関係で、動画再生速度の自動調整の詳細を図解している流れ図である。このように、図4及び図5には、視聴者がノートをとる速度に基づいて動画の再生速度を自動的に制御する実例が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による動画再生システムにおけるノート作成のためのインターフェースの一例である。
【図2】本発明による動画再生システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明による動画再生システムの動作を示す流れ図である。
【図4】動画再生速度の自動調整の詳細を説明する図である。
【図5】図4との関係で、動画再生速度の自動調整の詳細を図解している流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイを含む出力手段とキーボードやタッチパネルを含む入力手段とを有するコンピュータにおいて動画データを再生するシステムであって、
動画データが記憶された記憶手段と、
記憶されている動画データを前記記憶手段から読み出し前記ディスプレイ上で表示することにより動画を再生する動画再生手段と、
前記再生される動画を視聴する視聴者の特定の視聴態様をモニタし、前記視聴者の前記特定の視聴態様と関連するパラメータを検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出されたパラメータに応答して前記再生手段による動画の再生速度を自動的に制御する自動制御手段と、
を備えていることを特徴とする動画再生システム。
【請求項2】
請求項1記載の動画再生システムにおいて、前記パラメータは前記視聴者が前記入力手段を用いてノートを取る速度であることを特徴とする動画再生システム。
【請求項3】
ディスプレイを含む出力手段とキーボードやタッチパネルを含む入力手段とを有するコンピュータにおいて動画データを再生するシステムを制御する方法であって、
記憶手段に記憶されている動画データを読み出し前記ディスプレイ上で表示することにより動画を再生するステップと、
前記再生される動画を視聴する視聴者の特定の視聴態様をモニタし、前記視聴者の前記特定の視聴態様と関連するパラメータを検出するステップと、
前記検出されたパラメータに応答して前記再生ステップにおける動画の再生速度を自動的に制御するステップと、
を含むことを特徴とする動画再生システム制御方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、前記パラメータは前記視聴者が前記入力手段を用いてノートを取る速度であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3又は請求項4のいずれかの請求項に記載の方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータ・プログラムが記憶されているコンピュータ可読な記憶媒体。
【請求項6】
請求項3又は請求項4のいずれかの請求項に記載の方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータ・プログラム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−163306(P2009−163306A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339466(P2007−339466)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
2.リナックス
【出願人】(591121498)株式会社ベネッセコーポレーション (30)
【Fターム(参考)】