説明

動的シャフトシールおよびその取付け方法

【課題】軸方向に延在する環状動滑面に沿って動的シールを形成するためのシャフトシールを提供する。
【解決手段】軸方向に延在する環状動滑面に沿って動的シールを形成するためのシャフトシールおよびその取付け方法が提供される。シャフトシールは、静止ハウジングに接続するよう構成される装着部、およびシールリップを有し、シールリップはそのオイル側端部と空気側端部との間に延在する環状シーリング面を有する。シーリング面はシャフト動滑面に沿って軸方向に延在するよう構成される。環状ブリッジ部はシールリップを装着部に接続する。複数のウェブはブリッジ部と装着部との間に略放射状に延在して、取付けの際または使用の際にシールリップが不適切に広がるのを防ぐ。二次的動作の必要なく、シャフトシールをハウジング内におよびシャフトの周りに取付けるために輪を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2007年3月9日に出願された米国特許仮出願第60/894,040号の利益を主張し、その全体が引用によりここに援用される。
【0002】
背景
1.発明の分野
本発明はオイルシール、より特定的には外側静止ハウジングと中央回転シャフトとの間に封止を行なうためのオイルシールに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
静止ハウジングと回転シャフトとの間に流体密閉封止を行なうためのシャフトシールはよく知られている。シールと回転シャフトとの間の摩擦の影響を最小にしながら流体密閉封止を得るための努力が続けられている。一部のシャフトシールは、シャフトとシーリング係合する際に封止のシールリップを維持しやすくするためにガータばねを用いる。この種の封止は有用であるが、関わる製造処理およびばねの材料費により全体のコストが上がることになる。さらに、ばねを収容するための空間を増やさなければならないという要件、さらにシールアセンブリの重量が一般に増えることにもなる。
【0004】
別の既知のシャフトシール構造では、リバースシールリップ構造が設けられ、シールリップはシャフトと係合するためのシーリング面を有し、組立てられた状態において反対方向に折り曲げられたヒンジ部がシールリップに対して実質的に平行に重なっている。シールリップのシーリング面がシャフトに対してシーリング係合を維持するために、封止はヒンジ部の反対方向に折り曲げられた構造に大きく依存する。この構造は使用の際に相対的に少ない摩擦で密閉封止を得るのに有用であるが、組立ておよび使用の際に潜在的な問題がある。組立ての際、シールリップのシーリング面とシャフトとの間の摩擦が大きすぎると、ヒンジ部の折り曲げが解かれてしまう。このような場合、シールを取除いて新しいシールを入れなければならない。この問題が発見されないままでいると、シャフトとハウジングとの間に封止が得られず、漏れに関連する問題が早く表われことになる。さらに、シールが正しく取付けられたとしても、ヒンジ部が使用の際に広がってしまい、それにより後で漏れの問題が起こり得る。使用の際にヒンジ部が広がってしまう1つの要因としては、シールの空気側に対するオイル側の圧力の増加である。オイル側の圧力が大きくなりすぎると、ヒンジ部はシールの空気側に押されてその折り曲げが広がってしまう。こうして、この種のシールは組立ておよび使用の両方において潜在的な欠点を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明の一局面に従い、軸方向に延在する環状動滑面に沿って動的シールを形成するためのシャフトシールが提供される。シャフトシールは静止ハウジングに接続するよう構成されている装着部、およびシールリップを有し、シールリップはそのオイル側端部と空気側端部との間に延在する環状シーリング面を有する。シーリング面は動滑面に沿って軸方向に延在するよう構成されている。環状ブリッジ部はシールリップを装着部に接続する。複数のウェブは、ブリッジ部と装着部との間に略放射状に延在する。
【0006】
本発明の別の局面に従い、シャフトシールが提供され、シャフトシールは静止ハウジン
グに接続するよう構成されている装着部と、裏面およびシールリップのオイル側端部と空気側端部との間に延在する環状シーリング面を有するシールリップとを含む。シーリング面は回転シャフトの動滑面に沿って軸方向に延在するよう構成されている。環状ヒンジ領域はシールリップのオイル側から半径方向外側に、シールリップ上に反対方向に折り曲げられた配向で延在し、環状ポケットがヒンジ領域の一方側とシールリップの裏面との間に形成される。環状凹部はヒンジ領域の反対側であって装着部に対向する側と装着部との間に形成される。複数の補強ウェブは、ヒンジ領域と装着部との間の凹部の中に延在する。
【0007】
本発明のさらに別の局面に従い、シャフトシールをハウジングのボアの中に、かつシャフトの周りに取付けるための方法が提供される。シャフトシールは装着部と、裏面およびシールリップのオイル側端部とシールリップの空気側端部との間に延在する対向する環状シーリング面を有するシールリップとを含む。環状ヒンジ領域はシールリップのオイル側から半径方向外側に、シールリップの裏面上で反対方向に折り曲げられた配向で延在する。環状ポケットはヒンジ領域とシールリップの裏面との間に形成され、環状凹部はヒンジ領域と装着部との間に形成される。取付け方法は、所定の外径を有する輪を設けるステップと、シャフトシールをハウジングのボアと略同心円状に調整するステップとを備える。さらに、輪をシールに対して軸方向に環状ポケット内に移動させて、シールリップのオイル側端部を半径方向外側に移動させる。次に、輪を環状ポケット内に残して、シールの装着部をハウジングのボアの中に押し込む。次に、輪を環状ポケット内に残して、シャフトをシールに対して軸方向にシーリング面の下で移動させる。最後に、輪をシールに対して軸方向に環状ポケットの外に移動させて、シールリップのシーリング面をシャフトの動滑面と係合させる。
【0008】
本発明の上記の局面および他の局面、特徴、ならびに利点は、示される好ましい実施例および最良モードの詳細な説明、添付の請求項および図面と関連して考慮すると、容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の好ましい局面に従い構成されるシールの部分斜視図である。
【図2】取付け前の状態で示される、図1のシールの断面図である。
【図3】取付けられた状態で示される、図1のシールの断面図である。
【図4】本発明の別の好ましい局面に従い構成されるシールの部分斜視図である。
【図5】本発明のさらなる好ましい局面に従い構成され、取付けられた状態で示されるシールの断面図である。
【図6】本発明のさらなる好ましい局面に従い構成され、取付けられた状態で示されるシールの断面図である。
【図7】本発明のさらなる好ましい局面に従い構成され、取付けられた状態で示されるシールの断面図である。
【図8】本発明の別の好ましい局面に従い構成され、取付け前の状態で示されるシールの断面図である。
【図9】取付けられた状態で示される、図8のシールの断面図である。
【図10】本発明のさらに別の局面に従い、シールをハウジング内におよびシャフトに取付けるための方法を示す図である。
【図11】本発明のさらに別の局面に従い、シールをハウジング内におよびシャフトに取付けるための方法を示す図である。
【図12】本発明のさらに別の局面に従い、シールをハウジング内におよびシャフトに取付けるための方法を示す図である。
【図13】本発明のさらに別の局面に従い、シールをハウジング内におよびシャフトに取付けるための方法を示す図である。
【図14】本発明のさらに別の局面に従い、シールをハウジング内におよびシャフトに取付けるための方法を示す図である。
【図15】本発明のさらに別の局面に従い、シールをハウジング内におよびシャフトに取付けるための方法を示す図である。
【図16】本発明のさらに別の局面に従い、シールをハウジング内におよびシャフトに取付けるための方法を示す図である。
【図17】本発明のさらに別の局面に従い、シールをハウジング内におよびシャフトに取付けるための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好ましい実施例の詳細な説明
図面をより詳細に参照して、図1−図3は総括的に10で示されるシャフトシールの一実施例を示す。シャフトシール10は構造的に剛性である、角度の付いた装着つば部12を含み、つば部12は、クランクシャフトのような回転可能シャフト18が中を通って延在する、ハウジングの開口16を中心として、シャフトシール10をたとえばエンジンのクランクケースのような静止ハウジング14に取付けるよう適合されるが、これは一例であって、限定するものではない。主要シールリップ20は介在するブリッジ部22によって装着つば部12に接続される。複数の補強リブまたはウェブ24はブリッジ部22と装着つば部12との間に延在し、シャフトシール10の周囲を、周方向に間隔があけられた位置で、ブリッジ部22を装着つば部12に接続する。ウェブ24はシールアセンブリ10に対して軸方向に剛性を与えるための補強スポークとして働き、主要シールリップ20に対して半径方向に優れた可撓性および弾性を与える。この軸方向の剛性はシャフトシール10の取付けを助けるものであり、シールアセンブリ10がシャフト18上に取付けられる際に、ブリッジ部22が裏返しになる可能性を少なくするまたは完全に防ぐ。したがって、シャフトシール10は所望ならツールを用いることなく、シャフト16の周りにかつハウジング14の中に取付けることができる。他の態様として、シャフトシール10は所望なら、後でより詳細に説明される、革新的なアセンブリ方法によってツール機構を用いることによって取付けることもできる。
【0011】
装着つば部12は構造的に剛性のコンポーネント26を含む。剛性のコンポーネント26はシャフトシール10の残りの部分よりも硬い材料からなる。剛性のコンポーネント26は、シャフトシール10のハウジング14への装着を補助し、装着つば部12についての全体の構造的剛性を向上させる。剛性のコンポーネント26は、装着つば部12に十分な剛性を与え、かつ意図される態様でハウジング14内に装着されるのに適するいくつもの形状のいずれかを取り得る。図1−図3に示される実施例において、剛性のコンポーネント26は軸方向の断面が略矩形である1個の環状リングの形をとる。しかし、図4、図5、図6および図7に示されるように、それぞれのシャフトシール110、210、310および410は、例示的に剛性コンポーネントの代替的構造を有してもよい。たとえば、キーリングのような二重巻きの環状リング126(図4)、単一の環状リング226(図5)、プレス加工された金属リング構造体326(図6)、または連続するもしくは分割されたリングを含んで、たとえば円筒ビレットからリングを切断することによって形成されたリング状構造体426(図7)を含み得る。剛性のコンポーネントに適するとしていくつかの形状が示されているが、これらは単なる一例であって、シール10に適切な強度および構造的剛性を与えるのに適する上記のような構造または他の構造が考えられる。
【0012】
剛性のコンポーネント26は、金属および/または非金属の剛性のコア28であって、円周方向が連続して継目のない材料、または環状リングに巻回された1本の材料ストランドから形成できる。このような構造は装着つば部12に対して軸方向および半径方向に剛性および優れたフープ強度を与える。構造コア28はゴムなどのような弾性材からなる環状ブロックまたはボディ30によって、部分的にまたは完全に被覆成形されてもよい。エラストマーのボディ30は装着つば部12に弾性を与え、コア28は装着つば部12に構
造的剛性を与える。
【0013】
装着つば部12はハウジング14のボア32内に押し込まれるように構成されている。コア28は装着つば部12の外径で露出して、直接ボア32の壁に係合する。代替的に、コア28は薄いエラストマー層によって被覆されて、ハウジング14とシャフトシール10との間の流体密閉封止を促進および強化する。さらに確実な流体密閉封止の形成を容易にするため、装着つば部2はボア保持部および封止強化構成を含んでもよい。たとえばエラストマー材ボディ30と同じエラストマー材からなる1つ以上の環状リブ34を含んでもよい。図示されているように、2本以上のリブ34を組み込んだ場合、隣接するリブ34間に環状チャネル36が形成される。したがって、リブ34が半径方向の圧縮により少なくとも部分的に弾性変形されると、シールアセンブリ10とハウジング14のボア32との間に半径方向に固定した流体密閉封止が出来上がる。この流体密閉封止は、隣接するリブ34間に形成される、完全に閉鎖された環状シーリングチャネル36を有することによって強化される。何らかの理由により、流体または異物が1本のリブ34を超えて漏れると、その流体または異物は該チャネル36内に捉えられ、次のリブ34を超えてシールアセンブリ10を完全に通ってしまうことを防ぐ。
【0014】
シャフトシール10はブリッジ部22によって剛性のコンポーネント26に対して半径方向内側に離れている主要シールリップ20を含む。取付けられた状態において、シャフトシール10は図3で最もよく示されるように、流体またはオイル側Oと、軸方向において反対側の外部または空気側Aとを有する。主要シールリップ20はつば状の形をとり、シャフト18の外径動滑面40の周囲を封止するシーリング面38と、反対側の裏面42とを有する。本実施例において、ブリッジ部22はシールリップ20の流体側端部44において主要シールリップ20と接続する。シールリップ20は流体側端部44から軸方向反対側の空気側端部46に延在する。シールリップ20が流体側端部44においてブリッジ部22と接続されていることは別として、シールリップ20はその長さ方向に沿って他には支えられていないので、裏面42には装着つば部12への支持部、ばね、または接続部がない。図2で最もよく示されるように、つば状主要シールリップ20はわずかにじょうご状に、または裁頭円錐形の形状に形成されてもよく、応力が加わっておらず取付けられていない状態では、シールリップ20の直径は空気側端部46よりも流体側端部44においてより大きい。主要シールリップ20の裁頭円錐形状により、弛緩した状態では少し先細りとなり、最初にシャフトシール10をボア32内にかつシャフト18の周囲に取付ける際に、シャフト18の自由端部48において開口が少しだけ広くなる。
【0015】
図1−図3の実施例に示されるように、ブリッジ部22は流体側端部44からシールリップ20の空気側端部46に延在するヒンジ領域50を有し、ヒンジ領域50は主要シールリップ20の裏側に折り返すように、ただしシールリップ20の裏面42に対して半径方向外側に離れている。ブリッジ部22はさらに、ヒンジ領域50から半径方向外側に延在する環状の放射状脚52を有し、脚52はブリッジ部22のヒンジ領域50を装着つば部12に結合させる。反対方向に延在するまたは折り曲げられたヒンジ領域50は、主要シールリップ20を支えるための環状ヒンジとして働く。反対側に折り曲げられたヒンジ領域50は非常に軟らかく、半径方向に柔軟であるので、主要シールリップ20は取付けの際にシャフト18と最初に整合するために半径方向に浮くように、さらに取付け後の使用の際に、シャフト18がボア32の軸に対して軸方向にわずかにずれてしまった(すなわち、シャフトずれ状態)場合に、シャフト18とともに半径方向に動くまたは浮動することができる。
【0016】
ヒンジ領域50の反対方向の折り曲げにより、2つのピボットもしくはヒンジ点、または領域が与えられることになる。第1のヒンジ領域54は、ヒンジ領域50の先端オイル側Oにおいて、主要シールリップ20と結合する湾曲した接合部にあり、第2のヒンジ領
域56は、第1のヒンジ領域54から軸方向に離れて、シールアセンブリ10の空気側Aの方にある。軸方向に離れていることに加え、第1のヒンジ領域54および第2のヒンジ領域56は互いに半径方向においても離れていてもよい。図3に示されるように、ヒンジ領域50は組立てられると、主要シールリップ20に対して鋭角αをなし、それによりヒンジ領域50はシール10の空気側Aの方向にシールリップ20からそれて、シールリップ20とヒンジ領域50との間に凹部の環状ポケット57を形成する。組立てられると、この角度αは90度未満、好ましくは45度未満、より好ましくは約5〜30度の間にある。
【0017】
環状ポケットまたは凹部58は反対方向に延在するヒンジ領域50と装着つば部12のボディ30との間に形成される。反対方向のヒンジ領域50は装着つば部12と半径方向において一致しているが、凹部58により離れている。複数のリブまたはウェブ24は凹部58を横切って延在し、ヒンジ領域50を装着つば部12に結合させる。ウェブ24はブリッジ部22の半径方向脚52にも結合され得る。ウェブ24は反対方向のヒンジ領域50の外周に沿って円周方向に離れている場所に設けられる。ある好ましい局面に従い、ウェブ24の各々はシール10の外周に沿って互いに等間隔で離れている。別の好ましい局面に従い、隣接するウェブ24の複数の対は、シール10の外周に沿って他の対と互いに等間隔で離れている。したがって、シール10をその外周に沿って半径方向に圧縮するのに必要な力は実質的に一定または等しい。上記のように、ウェブ24は反対方向のヒンジ領域50においてシールアセンブリ10に対して軸方向に剛性を与えながら、主要シールリップ20およびヒンジ領域50について半径方向に優れた可撓性を維持する。ウェブ24によって与えられる軸方向の剛性は、シールアセンブリ10がシャフト16上に取付けられる際に、ヒンジ領域50が裏返しになる可能性を減らすまたは完全に防ぐ。図2および図3を比較することによって示されるように、主要シールリップ20の先端流体またはオイル側端部44がまずシャフト18の面取りされたノーズ60上に案内されて、次に外径シャフト動滑面40上に案内されると、軸力がシールアセンブリ10の空気側Aの方向に主要シールリップ20に対して加えられる。これにより、主要シールリップ20が空気側Aの方向に引かれるまたは引っ張られる。主要シールリップ20およびヒンジ領域50によって形成される巻き込みは、ヒンジ領域50の折り曲げが広がって反対方向の空気側Aに配向または向けられてしまうほど軸方向にもたらされると、それにより反対方向のヒンジ部50およびヒンジ部50によって形成される環状凹部58が失われてしまう可能性がある。しかし、軸方向の取付け力が空気側方向にシールリップ20およびヒンジ領域44に加えられると、ウェブ24は引っ張られ、それによりシールリップ20およびヒンジ領域50をそれぞれの場所に保持する。したがって、主要シールリップ20はヒンジ領域50に対して反対方向に折り曲げられた構造を維持し、取付けまたは使用の際に軸方向でのこのような著しい変位が防止される。
【0018】
図1で最もよく示されるように、ウェブ24はヒンジ領域50の半径方向外部面62と装着つば部12との間に延在する。ウェブ24はここでは略Z字および/またはS字に形成されて、隣接するウェブ24が互いに略鏡の関係に構成されるように示されているが、それは一例であって限定するものではない。ウェブ24は内側放射状脚64、外側放射状脚66、ならびにそれぞれの脚64および66間に延在しかつ接続される、横方向に延在する中間脚68を有する。それぞれの名前のとおり、放射状脚64および66は略放射状に延在し、横脚68は脚64および66を相互接続するために略円周方向に延在する。放射状脚64および66はヒンジ領域50と装着つば部12との間に半径方向に所定の剛性を与えるのに対して、横方向の脚68はヒンジ領域50と装着つば部12との間に所定の可撓性および軟らかさを与えて、取付けの際または使用の際にその間にある程度の相対的半径方向移動を可能にする。中間脚58は装着つば部12およびヒンジ領域50から離れており、ここでは互いに等間隔で示されるが、これは一例であって限定するものではない。したがって、ヒンジ領域50および装着つば部12は、シールリップのシーリング面3
8とシャフト動滑面40との間で流体密閉封止を維持しながら、シャフト18とハウジング14および/または完全な円ではないシャフト動滑面40との間にある程度の半径方向の不整合に対応することができる。
【0019】
装着つば部12のエラストマーボディ30、ブリッジ部22、および主要シールリップ20はすべて同じエラストマー材から一体的に成形されてもよい。代替的に、主要シールリップ20はシーリング面38上にPTFEライナ(図示されず)を含んでもよい。
【0020】
主要シールリップ20はシーリング面38に形成されるさまざまな構成をさらに含んでもよい。図1−図3はシーリング面38に成形される一連の流体力学構成70を示し、これらの構成70はリップ20の下から入ってくるオイルをシール10のオイル側Oに汲み出すことにより、主要シールリップ20の封止能力を高めるよう働く。
【0021】
流体力学構成70は1個または複数の始点を有する螺旋状の溝または突起として、連続するまたは可変の断面を有する同心円の溝または突起(同心円とは、軸方向に互いに離れている、複数の外周に沿って連続する個々の溝または突起があることを意味する)として、断続する流体力学的補助部を有する同心円の溝または突起として、断続する凹状または凸状の流体力学補助部として、および所望なら他の構造として形成できる。
【0022】
主要シールリップ20の空気側端部46から延在するのは、異物排除リップ72であり、これは主要シールリップ20で用いられるのと同じエラストマーからなる。排除リップ72はシャフト動滑面40に対して当接して、またはギャップによって表面40から少し離れていてもよい。どちらにしても、排除リップ72は異物が主要シール20のシーリングインターフェイス38に、およびシールアセンブリ10のオイル側Oにある流体含有領域に入らないように働く。
【0023】
図3はシャフトシール10が完全に取付けられた状態を示す。動作の際、シール10のオイル側Oにある封止されたオイル(または他の流体)部分は、空気側Aの大気圧に対して加圧されて、シール10のブリッジ部22に軸方向外側に力を加える。ウェブ24はブリッジ部22を軸方向に強化し、それによりシール10の空気側A方向へのブリッジ部22に対する軸方向の撓みにいくらかの抵抗を与える。オイルの圧力により、ブリッジ部22にある程度の軸方向の変位が起こると、ブリッジ部22のヒンジ領域50の広がる動作により、ヒンジ領域50はその形および対応するヒンジ領域54、56の配置により、半径方向内側に動く。これは主要シールリップ20をシャフト18に対して半径方向内側に押し、流体圧力の作用により、シャフト動滑面40に対するシールリップ20の封止力を効果的に増加させる。
【0024】
別の好ましい実施例において、図4に示されるように、同じ参照番号に100番台の番号をつけることにより、上記と同様の部分が特定されるが、シャフトシール110が有するウェブ124は、略Z字型またはS字型ではなく、ヒンジ領域150と装着部112との間に略放射状におよび直線状に延在するが、真の半径方向に対して角度がつけられてもよい。ウェブ24と同様に、隣接するウェブ124は互いに平行でない態様で反対方向に延在することができ、それにより互いに略鏡に映し出されたような関係にある。こうして、交互のウェブまたは1つおきのウェブ124は互いに平行に、同じ略半径方向に延在する。ウェブ124の角度のつけられた配置は、主要シールリップ120の半径方向の移動に対する抵抗を減らす働きをし、取付けやシャフトのぶれおよび/または不整合の際のこのような動きに対応し、上記のようにシャフトを取付ける際に、著しい軸方向の変位に対して、主要シールリップ120およびヒンジ部150を装着つば112に対して保持するために、ウェブ124の軸方向に剛性の効果を維持する。ウェブ124の数および設計上の構造は任意であり、所望なら放射状であってもよい。
【0025】
本発明に従って構成される、別の実施例のシャフトシール510が図8および図9に示される。上記の部分と同じものを示すために同じ参照番号が用いられるが、それぞれ500番台の参照番号がつけられている。
【0026】
シャフトシール510は装着つば部を有し、装着つば部は典型的に金属ケース512であるが、所望なら上記のように適切な構造で構成されてもよい。ブリッジ部522、主要シール部520および異物排除リップ572はエラストマーから一体的に成形され、金属ケース512に結合される。ブリッジ部522はシールリップ520と金属ケース512との間に延在する。本実施例において、主要シールリップ520はオイル側Oに延在するが、半径方向内側のシーリング面538は圧力が加わっていない状態では裁頭円錐形または漏斗の形状で角度がつけられ、裁頭円錐形の開いている端部はシャフト18の自由端部48に対向し、シールリップ520は案内用のツールを用いることなく自由端部48上に取付けることができる。複数のウェブ524はブリッジ部522と装着部512との間に延在し、ここでは主要シールリップ520の裏面542と装着部512との間に延在するよう示されている。取付けられると、図9に示されるように、オイル側Oへの圧力により、ブリッジ部522に対するシールリップ520の反対側の折り曲げによって、シャフト18に対するシールリップ520の圧力を増加させる。上記のように、ウェブ524は組立ての際および使用の際に引っ張られ、十分な強度でもって、主要シールリップ520をシャフト18に対する意図されるシーリング位置に維持するために、主要シールリップ520が広がることを防ぐ。主要シールリップ520は第1の実施例で説明したように同じ代替的流体力学補助部を有することができ、任意にPTFEライナを含んでもよい。
【0027】
本発明の別の局面に従い、本発明に従って構成されたシャフトシールを取付ける方法が提供される。図10−図17に示されるように、取付け方法は、それぞれのシャフトシール10,110のポケット57,157に軸方向にすべり入るような寸法の所定の直径を有する輪80を設けるステップを含む。以降の説明はシャフトシール10に言及して行なわれるが、本方法は同様にシャフトシール110に用いることができる。輪80の外径はヒンジ領域50の第2のヒンジ領域56によって定められる直径とほぼ同じである。したがって、図11に示されるように、輪80をポケット57内に少なくとも部分的に軸方向に挿入する動作を開始して続けていくと、ヒンジ領域50は半径方向外側に広がるようになり、それによりシールリップ20が半径方向に拡張し、ポケット57は実質的に潰れて、ウェブ24は半径方向に圧縮される。輪80から半径方向外側に延在するフランジ82が装着つば部12の端部面と係合するようになるまで、輪80は軸方向にポケット57内に移動させられる。
【0028】
図12に示すように、装着つば部12と係合したフランジ82は、シール10をハウジング14のボア32内に移動させるのに十分な軸力を加える。シール10がボア32内に軸方向に案内されると、リブ34は少し圧縮されてハウジング14とのシール10の締りばめを形成する。図13に示されるように、フランジ82はボア32内において少なくとも部分的に受け入れられるよう好ましくは寸法決めされ、それによりシール10は二次的動作の必要なく完全に挿入可能となる。上記のように、シール10がボア32内に完全に挿入されると、リブ34は部分的に圧縮されるが、チャネル36が完全に潰される程ではない。したがって、チャネル36はリブ34間に少なくとも部分的に残り、それにより上述の高められたシーリング保護を与える。
【0029】
図14に示されるように、シール10がボア32内に完全に挿入されると、シャフト18はオイル側Oから空気側Aに軸方向に動かされる。シャフト18の面取りされたノーズ60は主要シールリップ20の傾斜したシーリング面38と係合する。このとき、輪80は好ましくはヒンジ領域50に係合したまま残り、それによりシールリップ20を傾斜し
た配向に維持して、シール10を通すシャフト18の組立てを容易にする。図15に示されるように、シャフトの動滑面40がシール10のシーリング面38の下に完全に受け入れられるまで、シャフト18は輪80に向かって軸方向に動かされる。その後、図16に示されるように、輪80は軸方向にシール10から離れるように移動させられて、図17に示されるように完全に引出されたようになり、シール10はハウジング14内およびシャフト18の周りに完全に組立てられた配置となり、それによりポケット57およびウェブ24は実質的に潰されない状態に戻る。
【0030】
同じ機能および取付け方法を達成する本発明の他の実施例は、特許請求の範囲に従い組み込まれることは理解されるであろう。たとえば、組立て方法は異なることができ、シール10はボア32内におよびシャフト18上に同時に挿入することができる。さらに、シール10を先にシャフト18に取付け、次にボア32内に挿入することができる。したがって、上記の好ましい実施例は限定するものではなく、特許請求の範囲内において適合する実施例の一部に過ぎない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延在する環状動滑面に沿って動的シールを形成するためのシャフトシールであって、
静止ハウジングに接続するよう構成される装着部と、
オイル側端部と空気側端部との間に延在する環状シーリング面を有するシールリップとを備え、前記シーリング面は動滑面に沿って軸方向に延在するよう構成されており、さらに
シールリップを装着部に接続する環状ブリッジ部と、
前記ブリッジ部と前記装着部との間に略放射状に延在する複数のウェブとを備える、シャフトシール。
【請求項2】
前記ブリッジ部は、前記シールリップの前記オイル側から半径方向外側に延在するヒンジ領域を含み、前記ヒンジ領域は前記シールリップ上に反対方向に折り曲げられた配向にある、請求項1に記載のシャフトシール。
【請求項3】
前記ヒンジ領域と前記シールリップとの間に環状ポケットが形成され、前記ヒンジ領域と前記装着部との間に環状凹部が形成され、前記ウェブは前記ヒンジ領域と前記取付け部との間に延在する、請求項2に記載のシャフトシール。
【請求項4】
前記ウェブの各々は、中間の横方向に延在する脚によって相互接続される1対の放射状に延在する脚を有する、請求項3に記載のシャフトシール。
【請求項5】
前記ウェブは前記ヒンジ領域と前記装着部との間に線形に延在し、前記ウェブの隣接するものは互いに平行でない態様で延在する、請求項3に記載のシャフトシール。
【請求項6】
1つおきのウェブは互いに略平行に延在する、請求項5に記載のシャフトシール。
【請求項7】
前記環状凹部は支えられていない、請求項3に記載のシャフトシール。
【請求項8】
シャフトシールであって、
静止ハウジングに接続するよう構成される装着部と、
裏面、およびオイル側端部と空気側端部との間に延在する反対側の環状シーリング面を有するシールリップとを備え、前記シーリング面は回転シャフトの動滑面に沿って軸方向に延在するよう構成され、さらに
前記シールリップの前記オイル側から半径方向外側に、前記シールリップ上に反対方向に折り曲げられた配向で延在する環状ヒンジ領域を備え、環状ポケットが前記シールリップに面する前記ヒンジ領域の一方側と前記シールリップの前記裏面との間に形成され、環状凹部が前記装着部に面する前記ヒンジ領域の他方側と前記装着部との間に形成され、さらに
前記ヒンジ領域と前記装着部との間の前記凹部を通って延在する複数の補強ウェブを備える、シャフトシール。
【請求項9】
前記ウェブは前記環状ヒンジ領域の周囲を、円周方向に等間隔に離れている、請求項8に記載のシャフトシール。
【請求項10】
前記装着部は静止ハウジングのボア内に締りばめするために寸法決めされている外径を有する、請求項8に記載のシャフトシール。
【請求項11】
前記外径は環状チャネルによって互いに離されている、複数の円周方向に延在するリブを有し、前記リブは部分圧縮のために寸法決めされ、前記環状チャネルはボアに圧入されても、前記リブ間に残る、請求項10に記載のシャフトシール。
【請求項12】
前記ウェブの各々は横方向に延在する中間脚によって互いに相互接続する1対の放射状に延在する脚を有し、前記中間脚は前記シールリップの前記裏面からおよび前記装着面から離れている、請求項8に記載のシャフトシール。
【請求項13】
前記ウェブの隣接するものは、互いに鏡に映された姿を有する、請求項12に記載のシャフトシール。
【請求項14】
前記ウェブは前記ヒンジ領域と前記装着部との間に線形に延在し、前記ウェブの隣接するものは互いに平行でない関係で延在する、請求項8に記載のシャフトシール。
【請求項15】
1つおきのウェブは互いに略平行に延在する、請求項14に記載のシャフトシール。
【請求項16】
シャフトシールをハウジングのボア内におよびシャフトの周囲に取付ける方法であって、シャフトシールは装着部とシールリップとを含み、シールリップは裏面およびシールリップのオイル側端部とシールリップの空気側端部との間に延在する反対側の環状シーリング面を有し、環状ヒンジ領域はシールリップのオイル側から半径方向外側に、シールリップの裏面上に反対方向に折り曲げられた配向で延在し、環状ポケットがヒンジ領域とシールリップの裏面との間に形成され、環状凹部がヒンジ領域と装着部との間に形成され、前記方法は
所定の外径を有する輪を設けるステップと、
シャフトシールをボアと略同心円的に調整するステップと、
前記輪をシールに対して軸方向に環状ポケット内に移動させて、シールリップのオイル側端部を半径方向外側に移動させるステップと、
前記輪を環状ポケットに残して、シールの装着部をハウジングのボア内に押し込むステップと、
前記輪を環状ポケットに残して、シャフトをシールに対して軸方向にシーリング面の下で移動させるステップと、
前記輪をシールに対して軸方向に環状ポケットから外に移動させて、シールリップのシーリング面をシャフトの動滑面と係合させるステップとを備える、方法。
【請求項17】
前記輪を環状ポケット内に移動させる場合に、ヒンジ領域と装着部との間の前記環状凹部を実質的に潰すステップをさらに備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記輪を環状ポケットの外に移動させて、前記環状凹部を潰されていない状態に実質的に復元するステップをさらに備える、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−64507(P2013−64507A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−265241(P2012−265241)
【出願日】平成24年12月4日(2012.12.4)
【分割の表示】特願2009−552924(P2009−552924)の分割
【原出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】