動的引張試験方法及び装置


【課題】 試験片に圧縮応力が作用する虞を解消できるようにする。
【解決手段】 直列に配置した入力棒1と出力棒2の間に入力棒側と出力棒側のつかみ部9a,9bの間に平行部8を備えた試験片3を配置する。入力棒側つかみ部9aは、入力棒1側への相対変位は許容し且つ出力棒2側への相対変位は拘束できる応力波伝達調整治具10を介して上記入力棒1の先端部に連結し、他端側つかみ部9bは、上記出力棒2の基端部に取り付け、更に、応力波伝達調整治具10と、出力棒側2の基端面との間に、カラー12を介装する。打撃棒7の衝突により入力棒2の基端側から入射させる圧縮波は応力波伝達調整治具10とカラー21を介して出力棒2へ伝え、この際、出力棒2側へ押される応力波伝達調整治具10に対し、入力棒側つかみ部9aの入力棒1側への相対変位を許容させて、圧縮波の試験片3への伝達を防止させる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料が動的負荷を受ける場合の材料特性を取得すべく、試験片に動的な引張荷重を作用させて引張試験を行うために用いる動的引張試験方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や航空宇宙の分野、あるいは、ガスタービンやジェットエンジンや発電機のような高速回転機器の分野等では、高速衝突等により衝撃荷重が発生する問題を扱うことがあり、このような衝撃荷重に対する各種機器や構造物の安全設計のために、使用材料が動的負荷を受ける場合の材料特性に関するデータが必要とされることがある。
【0003】
上記のような動的負荷の下での材料特性データを得るための各種試験法のうち、たとえば、構造用鋼の動的強度特性を取得するための動的引張試験法(高速引張試験法)としては、油圧サーボ法、ホプキンソン棒法、ワンバー法(One−Bar法)、検力ブロック法が主として用いられている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0004】
このうち、油圧サーボ法は、油圧サーボ式の高速引張試験機を用いるもので、一端側を固定した試験片の他端側を、油圧シリンダにより所定の速度まで助走させたチャックによって引張るようにして試験を行い、試験片に貼った歪ゲージにより荷重を検出するようにしてある。
【0005】
ホプキンソン棒法による動的引張試験としては、カラーを用いる方式と、ヨークを用いる方式が主として用いられている。このうち、カラーを用いる方式のホプキンソン棒法による動的引張試験を行うための装置は、図8(イ)(ロ)に示す如き構成としてある。すなわち、同一の断面積で且つ同一の長さ寸法としてある細長い2本の応力棒としての入力棒1と出力棒2とを直列(一直線上)に配置し、該入力棒1の先端部となる一端部と、出力棒2の基端部となる他端部との間に、試験片3を挟み込むように配置すると共に、該試験片3の両端部を、上記入力棒1の先端面の中心部と、出力棒2の基端面の中心部にそれぞれ取り付けてある。更に、2個一組の半円筒形状のカラー4を、上記試験片3の外周を取巻くようにして上記入力棒1の先端面と出力棒2の基端面との間に介装させて、該カラー4により、上記入力棒1と出力棒2の互いに近接する方向への相対変位のみを拘束できるようにしてある。更に、図示してはいないが、上記入力棒1の基端側の外部位置に、所要の加速手段(撃ち出し手段)で加速して上記入力棒1の基端部に衝突させるための打撃棒を備えた構成としてある。これにより、上記図示しない打撃棒を上記入力棒1の基端部に衝突させて負荷を与えることにより、入射波としての圧縮波を上記入力棒1の基端部より入射させると、この圧縮波が、該入力棒1中を基端側から先端部まで伝播された後、上記試験片3の取付部分では、試験片3の外周に配されているカラー4を介して上記入力棒1の先端面より出力棒2の基端面へ透過されて、透過波としての圧縮波が該出力棒2中を基端側より先端側へ伝播され、その後、上記圧縮波が、自由端としてある出力棒2の先端に達して反射されることで反射波としての引張波が生じるようにしてあり、この反射引張波を、上記出力棒2を先端側から基端部まで伝播させた後、該出力棒2の基端部と入力棒1の先端部との間に取り付けられている上記試験片3に伝えることで、該試験片3に引張力(引張負荷)を作用させるようにしてある。そして、上記入力棒1と出力棒2の長手方向の所要個所、たとえば、入力棒1と出力棒2の長手方向中間部付近にそれぞれ取り付けてある歪ゲージ(図示せず)により、該入力棒1及び出力棒2中を伝播される圧縮波と、該圧縮波の反射波である反射引張波をそれぞれ検出して、その時間履歴を記録し、該記録されたデータに基いて上記入力棒1と出力棒2の運動解析を行うことにより、該入力棒1と出力棒2の間で高速変形される上記試験片3の応力−歪関係を求めることができるとされている。
【0006】
又、ヨークを用いる方式のホプキンソン棒法による動的引張試験の装置は、図9に示す如く、上記と同様に、直列に配置した入力棒1と出力棒2との間に試験片3を取り付けた構成において、入力棒1と出力棒2との間にカラー4を介装する構成に代えて、入力棒1の基端部に、外周方向へ突出する鍔状のヨーク5を一体に取り付け、更に、上記入力棒1の周りに円筒型の打撃棒6を遊嵌させた構成としてある。これにより、上記打撃棒6を、所要の加速手段で加速して、上記入力棒1に沿わせて該入力棒1の先端側から基端側へスライドさせて、入力棒1の基端部に一体に設けてある上記ヨーク5へ衝突させることで、上記入力棒1に、直接引張負荷を入力(入射)できるようにしてある。
【0007】
更に、上記いずれのホプキンソン棒法によっても、細長い入力棒1及び出力棒2中を伝播される応力波(圧縮波や反射引張波)は、該各応力棒1,2の長手方向に沿う方向にのみ伝播される一次元の波として取り扱うことができるとされている。
【0008】
ワンバー法は、原理的には、上記ホプキンソン棒法の一種であり、上記ホプキンソン棒法における出力棒と同様の細長い出力棒の基端部に、試験片の一端を取り付けると共に、該試験片の他端側には、大質量の打撃ブロック(衝撃ブロック)を取り付けて、この打撃ブロックを、所要のハンマーで打撃することで上記試験片の引張試験を行うようにしてある。
【0009】
検力ブロック法は、検力ブロック式高速材料試験機を用いて行うもので、これは、ベースブロックに該ベースブロックの大きさと比べて十分に小さい小突起を設けて、該小突起に試験片を取り付け、該試験片に、負荷ブロックに該負荷ブロックの大きさと比べて十分に小さいサイズとなるよう設けてあるブレードを衝突させるようにしてあり、これにより、上記試験片に負荷される動荷重が、負荷ブロックの振動のない状態で直接作用し、又、試験片に発生した動荷重が、ベースブロック中を伝播することによる応力波の乱れや、そのブロック外の振動の影響も受けない状態で十分長時間の計測がなされるとされている。
【0010】
【非特許文献1】谷村,「動的応力計測技術(1)−今後のものづくりのための基盤整備−」,機械の研究,株式会社養賢堂,2006年9月1日,第58巻,第9号,p.913−921
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記従来の動的引張試験法のうち、油圧サーボ法では、油圧サーボ式高速引張試験機の固有振動に起因して荷重が振動してしまうという問題が生じる。
【0012】
上記ホプキンソン棒法のうち、カラーを用いる方式のものでは、試験片3の取付部分にて、入力棒1側からの圧縮波をカラー4を介して出力棒2側へ透過させるときに、上記試験片3に一時的に圧縮力が作用することを避けられないという問題がある。そのために、試験片3に非常に大きい歪速度を与えようとして、打撃棒の入力棒1への衝突速度を大とすると、上記試験片3に一時的に作用する圧縮力も非常に大きくなってしまい、そのために、該試験片3が塑性座屈する虞が生じるというのが実状である。一方、ヨークを用いる直接引張方式のホプキンソン棒法によれば、試験片3に圧縮力が作用する虞は防止できる。しかし、従来提案されているいずれのホプキンソン棒法においても、入力棒1に打撃棒6を衝突させるときに生じる圧縮波(入射波)は、急峻に立ち上がる矩形波形となるため、この波形の急峻な立ち上がりに起因して、最終的に応力−歪曲線を得ようとすると、図7に示す如く、特に変形初期の領域に大きな振動がのってしまうという問題が生じる。しかも、上記圧縮波が急峻に立ち上がる矩形波形となることにより、高周波成分が重畳し易くなってしまうため、1次元波動論の近似精度が低くなり、そのために、従来のホプキンソン棒法による動的引張試験は、数値シミュレーションが難しい。
【0013】
上記ワンバー法では、衝突ブロックを打撃して発生させる衝突力の制御ができないという問題がある。
【0014】
上記検力ブロック法は、装置構成が複雑で、高価なものとなってしまうという問題がある。しかも、該検力ブロック法でも衝突力の制御ができず、更には、誤差の程度を定量的に把握することができないという問題もある。
【0015】
そこで、本発明は、打撃棒の衝突時の衝突力の形を制御でき、且つ試験片に圧縮力が作用する虞を解消でき、しかも、機構が単純で試験自体を数値シミュレーションで表現できて、結果を検証することが可能な動的引張試験方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、入力棒の先端側に出力棒を直列に配置し、該入力棒の先端部と出力棒の基端部との間に試験片を配置して、上記入力棒の基端側より打撃棒の衝突による圧縮波を入射させて、該圧縮波を、該入力棒中を基端側より先端側へ伝播させた後、該入力棒の先端部より試験片に作用させることなく出力棒へ伝えるようにし、次いで、該出力棒の基端部に伝えられた圧縮波を、出力棒中を先端まで伝播させて反射させることで反射引張波を生じさせた後、該引張波を、出力棒の先端側から基端部まで伝播させてから上記試験片の出力棒側端部に伝えて、該試験片の出力棒側端部と、試験片の入力棒側端部との間に引張力を作用させて、該試験片の引張試験を行うようにする動的引張試験方法及び装置とする。
【0017】
より具体的には、上記構成における応力波伝達調整治具を、試験片の入力棒側端部の外周に取り付ける内筒部材と、該内筒部材の外周に配置して上記内筒部材の入力棒側へのみ相対変位を許容できる外筒部材とを備えてなる構成とする。
【0018】
又、上記各構成において、入力棒の基端部における打撃棒の衝突個所に、打撃棒の衝突時に潰れて変形できる波形調整部材を配設して、該波形調整部材に打撃棒を衝突させることで上記入力棒の基端部より、立ち上がりの緩和された圧縮波を入射させるようにし、更に、上記入力棒及び出力棒中を伝播される上記圧縮波及び反射引張波を、上記入力棒及び出力棒の各長手方向の複数個所に所要間隔を隔てて取り付けてある歪ゲージで計測するようにする方法及び装置とする。
【0019】
更に、上記構成において、入力棒の基端部における打撃棒の衝突個所に配設する波形調整部材として、円柱形状の波形調整部材を用いるようにする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)入力棒の先端側に出力棒を直列に配置し、該入力棒の先端部と出力棒の基端部との間に試験片を配置して、上記入力棒の基端側より打撃棒の衝突による圧縮波を入射させて、該圧縮波を、該入力棒中を基端側より先端側へ伝播させた後、該入力棒の先端部より試験片に作用させることなく出力棒へ伝えるようにし、次いで、該出力棒の基端部に伝えられた圧縮波を、出力棒中を先端まで伝播させて反射させることで反射引張波を生じさせた後、該引張波を、出力棒の先端側から基端部まで伝播させてから上記試験片の出力棒側端部に伝えて、該試験片の出力棒側端部と、試験片の入力棒側端部との間に引張力を作用させて、該試験片の引張試験を行うようにする動的引張試験方法及び装置、より具体的には、上記構成における応力波伝達調整治具を、試験片の入力棒側端部の外周に取り付ける内筒部材と、該内筒部材の外周に配置して上記内筒部材の入力棒側へのみ相対変位を許容できる外筒部材とを備えてなる構成としてあるので、打撃棒の衝突により入力棒の基端側より入射させる圧縮波は、該入力棒と出力棒の間の試験片取付部分では、上記応力波伝達調整部材とカラーを介して出力棒へ伝えることができ、この際、上記圧縮波によって出力棒側へ押される応力波伝達調整部材に対し、上記試験片の入力棒側端部は入力棒側への相対変位が許容されているため、該試験片の入力棒側端部に上記圧縮波が作用することはない。このため上記試験片にいかなる歪み速度を与える条件の下においても、純粋な動的引張試験を実施することが可能になる。
(2)入力棒の基端部における打撃棒の衝突個所に、打撃棒の衝突時に潰れて変形できる波形調整部材を配設して、該波形調整部材に打撃棒を衝突させることで上記入力棒の基端部より、立ち上がりの緩和された圧縮波を入射させるようにし、更に、上記入力棒及び出力棒中を伝播される上記圧縮波及び反射引張波を、上記入力棒及び出力棒の各長手方向の複数個所に所要間隔を隔てて取り付けてある歪ゲージで計測するようにすることにより、最終的に得られる応力−歪曲線における変形初期の領域に、大きな振動がのってしまうという問題を回避することができて、荷重振動の少ない滑らかな応力−歪曲線を得ることができる。又、入力棒に入射される圧縮波の立ち上がりを緩和させることで、上記圧縮波及び反射引張波を、いずれも1次元波動論で良好に近似することが可能となる。このために、上記入力棒及び出力棒の複数個所に設けた各歪ゲージにて計測される上記圧縮波と反射引張波の合成された波形から、1次元波動論に基いて、上記入力棒と出力棒を伝播される圧縮波と反射引張波を、良好に分離することができて、動的引張試験を、数値シミュレーションすることも可能になる。
(3)入力棒の基端部における打撃棒の衝突個所に配設する波形調整部材として、円柱形状の波形調整部材を用いるようにすることにより、製作コストが安価になると共に、該波形調整治具の解析的検討が可能で、理論的取り扱いが容易となる効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
図1(イ)(ロ)乃至図3は本発明の動的引張試験方法及び装置の実施の一形態を示すもので、従来のホプキンソン棒法と同様に、2本の応力棒である入力棒1と出力棒2とを直列に配置して、上記入力棒1の先端部と、出力棒2の基端部との間に試験片3を連結し、更に、上記入力棒1の基端面より所要寸法離れた一直線上位置に、図示しない所要の加速手段(撃ち出し手段)によって加速させて上記入力棒1の基端側に衝突させることで負荷を与えるための打撃棒7を備えた構成において、上記試験片3を、図1(ロ)及び図2に示す如く、長手方向中間部に所要断面積で長手方向に所要寸法延びる平行部8を有し、且つ該平行部8の両側となる長手方向の両端部に、上記平行部8よりも大径として外周面に雄ねじを刻設してなる入力棒側つかみ部9aと出力棒側つかみ部9bをそれぞれ設けてなる構成とする。
【0023】
上記試験片3は、上記入力棒側つかみ部9aを、該入力棒側つかみ部9aの入力棒1側への相対変位は許容できる一方、出力棒側への相対変位は拘束できるようにしてある応力波伝達調整治具10を介して上記入力棒1の先端部に連結すると共に、上記出力棒側つかみ部9bを、上記出力棒2の基端面の中心部に設けてあるねじ孔11に螺着させて取り付けるようにする。更に、上記試験片3の入力棒側つかみ部9aに取り付けてある上記応力波伝達調整治具10の出力棒2に臨む先端面と、上記出力棒側つかみ部9bが連結してある出力棒2の基端面との間に、1対の半円筒形状のカラー12を介装して、該各カラー12が、上記試験片3の平行部8の外周を非接触で取巻くようにする。これにより、上記試験片3の入力棒側つかみ部9aに取り付けてある上記応力波伝達調整治具10の先端面と、上記出力棒2の基端面との互いに近接する方向への相対変位を拘束できるようにしてあり、よって、上記入力棒1の基端部への打撃棒7の衝突により該入力棒1に基端側より入射された圧縮波が、該入力棒1の先端部まで伝播されると、該圧縮波を、入力棒1の先端面より上記応力波伝達調整治具10とカラー12のみを介して上記出力棒2の基端面まで伝えることができ、一方、上記圧縮波が出力棒2の先端で反射されることで生じる反射引張波は、出力棒2の基端部より上記試験片3の出力棒側つかみ部9bへ伝えることで、上記応力波伝達調整治具10を介して上記入力棒1の先端部に取り付けてある該試験片3の入力棒側つかみ部9aとの間の平行部8に対して、引張力を作用させることができるようにしてある。
【0024】
更に、上記入力棒1の基端面における打撃棒7の衝突個所には、波形調整治具13を配設する。これにより、上記入力棒1の基端側に上記打撃棒7を衝突させて負荷を与える際には、上記打撃棒7が入力棒1の基端面に配設してある上記波形調整治具13に衝突するようにして、この衝突時に該波形調整治具13が潰れるように大変形することで、上記打撃棒7の衝突によって上記入力棒1の基端部に入射される圧縮波(入射波)の立ち上がりを、従来の打撃棒を入力棒1の基端部に直接衝突させていた場合に生じていた矩形波形の入射波(圧縮波)の立ち上がりに比して緩和できるようにしてある。
【0025】
更に又、上記入力棒1と出力棒2には、それぞれ長手方向に所要の間隔を隔てた2個所ずつに、歪ゲージ14a,14bと15a,15bを取り付けるようにする。
【0026】
詳述すると、上記応力波伝達調整治具10は、図1(ロ)及び図2に示す如く、上記試験片3の入力棒側つかみ部9aの外周面に設けてある雄ねじに螺着させるための内筒部材16と、上記内筒部材16の外周に配置して該内筒部材16の入力棒1側への相対変位のみを許容できるようにした外筒部材17と、該外筒部材17の入力棒側端部を入力棒1の先端部に連結するための連結部材18とからなる3分割構造としてある。
【0027】
より具体的には、上記内筒部材16は、上記試験片3の入力棒側つかみ部9aの外径に対応する内径を有し、且つ該入力棒側つかみ部9aと同等か若しくはやや短い軸心方向寸法を有する円筒形状として、その内周面に、試験片3の入力棒側つかみ部9aの雄ねじに螺着させるための雌ねじ19が刻設してある。
【0028】
上記外筒部材17は、軸心方向中間部の内側に、上記内筒部材16の外径よりもわずかに大きい内径で、上記試験片3の入力棒側つかみ部9aの軸心方向寸法よりもやや長い寸法で軸心方向に延びる内筒収納部20を備え、且つ該内筒収納部20よりも出力棒2寄りに配されることとなる軸心方向一端部の内周面部を、上記試験片3の出力棒側つかみ部9bの外径よりもわずかに大きい内径寸法となるまで縮径させて縮径部21とし、該縮径部21と上記内筒収納部20との間に、上記内筒部材16の軸心方向一端面を当接させて係止させるための段差部22を形成するようにしてある。更に、上記内筒収納部20よりも入力棒1寄りに配されることとなる該外筒部材17の軸心方向他端部の内周面には、ねじ山先端部の内側の径が上記内筒部材16の外径よりも大となる雌ねじ23が刻設してある。
【0029】
上記連結部材18は、上記外筒部材17寄りとなる軸心方向の一端部に、該外筒部材17の軸心方向他端部内周面の雌ねじ23に螺着させる雄ねじ部24を備え、且つ、軸心方向の他端部に、入力棒1の先端面の中心部に設けたねじ孔26に螺着させるための入力棒連結用雄ねじ部25を備えた構成としてある。これにより、上記内筒部材16を、試験片3の入力棒側つかみ部9aの外周の雄ねじに螺着させた後、該内筒部材16が取り付けてある上記試験片3を、上記外筒部材17の内側に、該外筒部材17の軸心方向他端側から挿入して、該試験片3の出力棒側つかみ部9bを、上記外筒部材17の縮径部21を通して該外筒部材17の軸心方向一端側の外部へ突出させるようにすることで、上記内筒部材16の軸心方向一端面が該外筒部材17の段差部22に当接されるようにする。更に、この状態で上記外筒部材17の軸心方向他端部内周面の雌ねじ17に、上記連結部材18の軸心方向一端部の雄ねじ部24を螺着させることで、上記試験片3への応力波伝達調整治具の取り付けを行い、この際、上記試験片3の入力棒側つかみ部9aの端面と、上記連結部材18の軸心方向一端側の雄ねじ部24の端面との間に、所要の隙間27を形成できるようにしてある。よって、上記試験片3の入力棒側つかみ部9aに取り付けてある内筒部材16の軸心方向一端面が外筒部材17の段差部22に接している初期状態から、上記試験片3の入力棒側つかみ部9aが、応力波伝達調整治具10内で入力棒1側へ移動しようとする相対変位は、該入力棒側つかみ部9aに取り付けてある内筒部材16を外筒部材17の内筒収納部20の内側でスライドさせることで許容できる一方、上記初期状態から、上記試験片3の入力棒側つかみ部9aが、応力波伝達調整治具10内で出力棒2側へ移動しようとする相対変位は、上記内筒部材16の軸心方向一端面と外筒部材17の段差部22が既に接していることで拘束できるようにしてある。
【0030】
上記波形調整治具13は、上記入力棒1及び打撃棒7に比して十分柔らかい材質、たとえば、純アルミニウムにより、図3に示す如く、所要の半径寸法Rで且つ軸心方向に所要の長さ寸法Lを有する円柱形状に形成してある。このように上記波形調整治具13を単純な円柱形状としたのは、塑性歪と体積との積が緩衝に重要であるという本発明者等の考察と、製作が安価となるためであることに加えて、該波形調整治具13を円柱形状とすることで、解析的検討が可能で、理論的取り扱いが容易となるためである。
【0031】
このことは、本発明者等が、上記波形調整治具13について、半径寸法R及び長さ寸法Lを種々変更させた場合に得られる入射波(圧縮波)の立ち上がり波形について実施した、図4(イ)に示す如き理論解析結果と、図4(ロ)に示す如き数値シミュレーションの結果(なお、上記いずれの結果も、上記波形調整治具13の半径寸法R[mm]と長さ寸法L[mm]についてはそれぞれ図中に記載してある)との比較からも明らかである。すなわち、図5(ロ)に示した数値シミュレーションの結果にて、半径寸法R及び長さ寸法Lを種々変更させた場合に得られる入射波の立ち上がり波形の勾配の傾向は、図4(イ)に示した理論解析結果における同条件の下で得られる入射波の立ち上がり波形の勾配によく一致していることから、上記数値シミュレーションの有効性が確認できるのである。よって、所要の試験片3の動的引張試験を行う際に打撃棒7の衝突により入力棒1へ入射させるべき圧縮波の強度が定まると、該圧縮波の立ち上がりをどの程度緩和させればよいかが定まるため、その緩和量が得られるように、数値シミュレーションの結果を考慮して上記波形調整治具13の半径寸法Rや長さ寸法L、更には、該波形調整治具13に用いる材料の硬度(加工硬化も考慮した硬度)を適宜選択するようにすればよい。
【0032】
なお、上記波形調整治具13を用いて入力棒1に対して入射する圧縮波の立ち上がりを緩和させる場合の緩和時間としては、該波形調整治具13を用いないで入力棒1の基端面に打撃棒を直接衝突させるときに該入力棒1に入射されることとなる圧縮波の矩形波形の急峻な立ち上がりに比して、100マイクロ秒程度の緩和時間が取れるようにすればよい。このように、立ち上がりの緩和時間を100マイクロ秒程度としたのは、100マイクロ秒程度の緩和時間を取ると、上記波形調整治具13への打撃棒7の衝突によって上記入力棒1へ入射されることとなる圧縮波に対し、1次元波動論による近似が十分妥当となるためである。
【0033】
ところで、上記のようにして入力棒1へ入射される圧縮波の立ち上がり時間を緩和させると、この立ち上がり時間を緩和させた分だけ該圧縮波の継続時間が長くなる。このように入力棒1に入射される圧縮波の継続時間が長くなると、入力棒1に入射した圧縮波が、上記入力棒1の基端側から、応力波伝達調整治具10及びカラー12を透過させて上記出力棒2の先端まで伝播される間に、該出力棒2の先端で上記圧縮波が反射されることで生じた後、該出力棒2の先端側から試験片3及び応力波伝達調整治具10を経て上記入力棒1の基端側へ戻る反射引張波が重畳することが避けられなくなり、このために、上記入力棒1と、出力棒2に取り付けられている個々の歪ゲージ14a,14b,15a,15bでは、上記圧縮波と反射引張波が合成された波形が計測されるようになる。
【0034】
そのため、本発明では、上記したように、上記入力棒1の基端面に波形調整治具13を設けることにより、打撃棒7の衝突により上記入力棒1に入射させる上記圧縮波の立ち上がりを緩和させて、1次元波動論により近似して取り扱うことに十分な妥当性が生じるようにしてある。このことに鑑みて、本発明では、更に、上記入力棒1と出力棒2に、それぞれ長手方向に所要の間隔を隔て2個ずつの歪ゲージ14a,14bと15a,15bを取り付けてなる構成として、図5(イ)に示す如き上記各歪ゲージ14a,14b,15a,15bでそれぞれ計測される波形と、該入力棒1と出力棒2の2個所ずつに配設してある歪ゲージ14aと14b同士、及び、15aと15b同士の間の距離を上記圧縮波及び反射引張波が進むのに要する時間とから、1次元波動論を用いて連立方程式を構築し、これを解くことで、図5(ロ)に示す如く、上記入力棒1と出力棒2について、たとえば、上記入力棒1における歪ゲージ14bの設置個所での圧縮波と反射引張波の波形、及び、上記出力棒2における歪ゲージ15bの設置個所での圧縮波と反射引張波の波形を、それぞれ分離して求めることができるようにしてある。
【0035】
したがって、その後、従来のホプキンソン棒法と同様に、上記入力棒1と出力棒2中をそれぞれ伝播する応力波の時間履歴を記録し、上記各入力棒1と2の運動解析を行うことにより、上記2本の入力棒1と出力棒2の間で作用する引張力によって高速変形する試験片3の時々刻々の平均応力、歪及び歪速度を求めて、応力−歪関係を、たとえば、図7に示す如き応力−歪曲線図として得ることができるようにしてある。
【0036】
なお、図示してはいないが、上記入力棒1及び出力棒2は、摩擦抵抗の少ない支持部材、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂製のリング等を用いた支持部材により、軸心方向への変位のみが許容された状態で支持してあるものとする。
【0037】
以上の構成としてある本発明の動的引張試験装置を用いて動的引張試験を行う場合は、先ず、試験片3の入力棒側つかみ部9aに応力波伝達調整治具10を取り付ける。
【0038】
次に、上記応力波伝達調整治具10の連結部材18における入力棒連結用雄ねじ部25を、入力棒1の先端面中心部のねじ孔26に取り付けると共に、上記応力波伝達調整治具10より出力棒2側に突出させてある上記試験片3の出力棒側つかみ部9bを、出力棒2の基端面中心部のねじ孔11に取り付け、更に、上記応力波伝達調整治具10の先端面となる外筒部材17の軸心方向一端面と、出力棒2の基端面との間に、1対の半円筒形状のカラー12を介装する。
【0039】
又、上記入力棒1と出力棒2の長手方向に所要間隔を隔てた2個所ずつには、歪ゲージ14a,14b,15a,15bをそれぞれ取り付けておく。
【0040】
更に、上記入力棒1の基端面に、所要の波形調整治具13を取り付ける。この場合、上記波形調整治具13の軸心方向の一端面を、たとえば、グリス等を用いて上記入力棒1の基端面の中心部に貼り付けるようにすればよい。
【0041】
その後、上記のように入力棒1の基端側の外方位置に配置してある打撃棒7を、図示しない所要の加速手段で所要速度に加速して、上記入力棒1の基端部に配設してある波形調整治具13に衝突させるようにする。
【0042】
この打撃棒7の衝突により、上記波形調整治具13は潰れるように大変形され、これにより、上記入力棒1の基端側より、立ち上がりの緩和された圧縮波が入射され、この入射された圧縮波は、該入力棒1中を先端側へ向けて伝播される。上記圧縮波が入力棒1の先端まで達すると、該圧縮波は、入力棒1の先端部より応力波伝達調整治具10の連結部材18と外筒部材17を順に経た後、該外筒部材17の先端面と出力棒の基端面との間に介装してあるカラー12を経て出力棒2の基端部へ伝えられるようになる。この際、上記応力波伝達調整治具10では、上記連結部材18より圧縮波を受ける上記外筒部材17に対し、上記試験片3の入力棒側つかみ部9aに取り付けてある内筒部材16の入力棒1側への相対変位が許容されており、しかも、上記試験片3の入力棒側つかみ部9aの端面と、これに対面する上記連結部材18の雄ねじ部24の端面との間には隙間27が形成してあって両者が互いに接触することはないため、上記外筒部材17に伝えられた圧縮波が上記試験片3へ伝えられることはなく、よって、該試験片3に圧縮力が作用することはない。
【0043】
その後、上記出力棒2の基端部へ伝えられた圧縮波は、該出力棒2中を先端側へ伝播された後、自由端としてある出力棒2の先端に達した時点で反射されて反射引張波となり、この反射引張波が、該出力棒2中を、先端側から基端側へ伝播される。その後、該反射引張波が出力棒2の基端部に達すると、該反射引張波は、出力棒2の基端部に取り付けられている上記試験片3の出力棒側つかみ部9bへ伝えられ、この際、該試験片3の入力棒側つかみ部9aは、その外周に取り付けられている内筒部材16が、外筒部材17の段差部22に係止されていて出力棒2側への相対変位が拘束されているため、試験片3における上記出力棒側つかみ部9bと入力棒側つかみ部9aとの間に形成されている平行部8に対して、上記反射引張波の作用による引張力が作用されるようになる。
【0044】
その後、上記反射引張波は、該試験片3から、上記応力波伝達調整治具10の外筒部材17及び連結部材18を介して入力棒1の先端部へ伝えられて、該入力棒1中を基端側へ伝播されるようになる。
【0045】
更に、上記のようにして試験片3の平行部8に引張力を作用させる際に上記入力棒1と出力棒2の2個所ずつに取り付けてある歪ゲージ14a,14bと15a,15bによって計測される波形を基に、1次元波動論を用いた連立方程式を構築した後、これを、各歪ゲージ14aと14b同士、及び、15aと15b同士の間の距離と、上記入力棒1中及び出力棒2中での圧縮波及び反射引張波の進行速度とを用いて解いて上記入力棒1と出力棒2の所要個所に作用している圧縮波と反射引張波の波形を分離して求め、該分離された上記入力棒1と出力棒2中をそれぞれ伝播される圧縮波と反射引張波の時間履歴を記録して、入力棒1と出力棒2の運動解析を行う。このようにして、該入力棒1と出力棒2の間で上記引張力の作用により試験片3が高速変形するときの時々刻々の平均応力、歪及び歪速度等を応力−歪関係として求めて、たとえば、図6に示す如き示す応力−歪曲線図を得るようにすればよい。
【0046】
このように、本発明の動的引張試験方法及び装置によれば、上記応力波伝達調整治具10とカラー12を用いることで、打撃棒7の衝突により入力棒1の基端部より入射させる圧縮波が試験片3へ伝えられる虞を解消できる。このため該試験片3にいかなる歪み速度を与える条件の下においても、純粋な動的引張試験を実施することが可能になる。
【0047】
更に、上記入力棒1の基端面部に波形調整治具13を配設して、該波形調整治具13に打撃棒7を衝突させることによって上記入力棒1へ入射させる圧縮波の立ち上がりを緩和させることができる。これにより、従来のホプキンソン棒法で生じていたような、最終的に得られる応力−歪曲線における変形初期の領域に、大きな振動がのってしまうという問題を回避することができて、荷重振動の少ない滑らかな応力−歪曲線を得ることができる。このことは、後述するように図6の応力−歪曲線と、図7の応力−歪み曲線との比較からも明らかである。
【0048】
更に、上記入力棒1に入射される圧縮波の立ち上がりを緩和させることができることから、上記圧縮波、及び、該圧縮波が出力棒の先端で反射されて生じる反射引張波を、いずれも1次元波動論で良好に近似することが可能となる。よって、上記入力棒1及び出力棒2について、それぞれ2個所ずつで歪ゲージ14a,14b及び15a,15bによって計測される圧縮波と反射引張波の合成された波形から、1次元波動論に基いて、上記入力棒1と出力棒2を伝播される圧縮波と反射引張波を、良好に分離することができる。更には、本発明の動的引張試験方法及び装置を用いた動的引張試験を、数値シミュレーションすることが可能になる。
【0049】
なお、実際の動的引張試験を実施すると、歪速度は一定ではないため、試験結果から直ちに強度の歪速度依存性は決定できない。しかし、実用上は、厳密性は欠いても、簡単な構成則(スケーリング則)が構築できれば便利である。よって、構成則を仮定した数値シミュレーションを、実際の動的引張試験と全く同様にデータ処理して応力−歪関係を求めるよう行い、その数値シミュレーションの結果と、実際の動的引張試験とで、歪みエネルギー密度と平均歪み速度の差を最小化できるようにすれば、構成則のパラメータを求めることが可能になる。
【0050】
更には、上記波形調整治具13を、円柱形状とすることにより、該円柱形状の半径寸法R、長さ寸法L、及び、該波形調整治具13の硬度と、該波形調整治具13が打撃棒7の衝突位置に存在することで上記入力棒1に入射されるようになる圧縮波が立ち上がるときの緩和量とを、解析的検討することが可能になって、理論的な取り扱いができることから、上記入力棒1に入射させるべき圧縮波の強度と、該圧縮波に所望される立ち上がりの緩和時間を、たとえば、100マイクロ秒とするために必要とされる波形の立ち上がりの緩和量から、上記入力棒1の基端面部に配設すべき上記波形調整治具13の半径寸法R及び長さ寸法Lや、硬度を適宜設定することも可能になる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、図1(イ)(ロ)乃至図3に示した入力棒1及び出力棒2、打撃棒7、試験片3、応力波伝達調整治具10、波形調整治具13のそれぞれの寸法は、図示するための便宜上の寸法であって、これらの部材の実際の寸法を反映するものではない。更に各部材同士の寸法の比は適宜変更してもよい。
【0052】
応力波伝達調整治具10は、その外径が入力棒1や出力棒2と異なる径であってもよい。既存の入力棒を利用できるようにするという観点、及び、衝撃を受ける部分を容易に交換可能にするという観点からは、応力波伝達調整治具10に連結部材18を備えて、外筒部材17を、上記連結部材18を介して入力棒1の先端面中心部に設けてあるねじ孔26に取り付ける構成とすることが望ましいが、上記連結部材18は省略してもよい。この場合は、上記入力棒1の先端部に、上記応力波伝達調整治具10の外筒部材17の入力棒側端部の内側に形成してある雌ねじ23に螺着可能な雄ねじ部を設けて、該入力棒1の先端部を、上記外筒部材17に直接連結するようにすればよい。
【0053】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明者等が実施した本発明の動的引張試験方法及び装置の有効性を検証した結果について示す。
【0055】
(1)
図3に示した如き円柱形状の波形調整治具13の半径寸法Rと長さ寸法Lをそれぞれ変化させた場合に、該波形調整治具13の存在下で入力棒1に入射されることとなる応力波(圧縮波)の波形の立ち上がりの緩和量の変化について、理論解析と数値シミュレーションをそれぞれ行った。理論解析結果を図4(イ)に、又、数値シミュレーションの結果を図4(ロ)にそれぞれ示す。なお、上記波形調整治具13の半径寸法R[mm]と長さ寸法L[mm]の設定値は、それぞれ図中に記載してある。
【0056】
図4(イ)(ロ)のいずれの結果からも、波形調整治具13を用いることで、入力棒1に入射される応力波(圧縮波)の波形の立ち上がりを緩和できることが分かる。
【0057】
更に、図4(イ)の理論解析結果と、図4(ロ)の数値シミュレーションの結果の比較から、波形調整治具13の半径寸法Rと長さ寸法Lをそれぞれ変化させたいずれの場合においても、数値シミュレーション結果として得られる波形の全体的な勾配が、理論解析結果の勾配とよく一致していることが分かる。よって、このことから、上記波形調整治具13を円柱形状とすることで、解析的検討が可能で、理論的取り扱いが容易となることが判明した。
【0058】
(2)
図1(イ)(ロ)乃至図3に示した本発明の動的引張試験装置を用いて、SUS304材による試験片3を対象とする動的引張試験を行った。
【0059】
入力棒1に取り付けた2つの歪ゲージ14a,14bと、出力棒2に取り付けた2つの歪ゲージ15a,15bでそれぞれ計測された波形を、図5(イ)に示す。線28、線29、線30、線31は、それぞれ歪ゲージ14a,14b,15a,15bで計測された波形である。
【0060】
上記のように入力棒1に取り付けられた2つの歪ゲージ14a,14bで得られた波形、及び、出力棒2に取り付けられた2つの歪ゲージ15a,15bで得られた波形を基に、1次元波動論を用いて入力棒1へ入射された圧縮波、及び、該圧縮波が出力棒2の先端で反射されて生じる反射引張波についての連立方程式を構築し、これを、各歪ゲージ14a,14b同士の間の距離データ及び各歪ゲージ15a,15bの間の距離データと、上記圧縮波及び反射引張波が入力棒1中及び出力棒2中を進行する速度に関するデータとを用いて解くことで、上記入力棒1における歪ゲージ14bの取付位置での圧縮波(入射波)と反射引張波の波形を分離すると共に、同様に、出力棒2における歪ゲージ15bの取付位置での圧縮波と反射引張波の波形を分離した。その結果を図5(ロ)に示す。図5(ロ)における線32と線33は、入力棒1の歪ゲージ14bの取付位置での圧縮波(入射波)と反射引張波の分離した波形をそれぞれ示す。又、線34と線35は、出力棒2の歪ゲージ15bの取付位置での圧縮波(入射波)と反射引張波を分離した波形をそれぞれ示す。
【0061】
図5(ロ)の結果から、上記入力棒1及び出力棒2を伝播される圧縮波と反射引張波の波形は、いずれも立ち上がりが十分に緩和されていることが分かる。又、図5(イ)に示した各歪ゲージ14a,14b,15a,15bによる計測波形では、上記入力棒1及び出力棒2を伝わる圧縮波と反射引張波を分離して判別することはできないが、該計測波形を基に、上記したような1次元波動論に基く分離操作を行うことで、図5(ロ)に示す如く、圧縮波と反射引張波とを良好に分離可能であることが明らかとなった。
【0062】
上記図5(ロ)に示したようにそれぞれ分離される入力棒1中を伝播される圧縮波(線32)と反射引張波(線33)、及び、出力棒2中を伝播される圧縮波(線34)と反射引張波(線35)の時間履歴を記録して、各入力棒1と出力棒2の運動解析を行い、その運動解析結果を基に、上記入力棒1と出力棒2との間に連結されている試験片3が、作用する引張力によって高速変形するときの入力棒側応力、出力棒側応力、平均応力、歪速度及び歪速度の平均値を求めた。その結果を図6の応力−歪曲線図として示す。線36は入力棒側応力、線37は出力棒側応力、線38は平均応力、線39は歪速度、線40は歪速度の平均値をそれぞれ示す。比較として、図7に、上記と同様の条件の下で、波形調整治具13を用いずに動的引張試験を行った場合に得られる応力−歪曲線図を示す。各線の符号は、図6に示したものと同様としてある。
【0063】
図6と図7を比較すると、図7に示した応力−歪曲線図では、変形初期の領域に大きな荷重振動が生じているが、図6の応力−歪曲線図では、変形初期の領域においても大きな荷重振動が生じずに、滑らかな応力−歪曲線が得られることが分かる。したがって、上記波形調整治具13を用いることの有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の動的引張試験方法及び装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は装置全体を示す概要図、(ロ)は試験片の取付部分を拡大して示す切断側面図である。
【図2】(イ)は、図1(ロ)の試験片の取付部分を分解した状態を示す図、(ロ)は、カラーを軸心方向から見た図である。
【図3】図1の装置における波形調整治具を拡大して示す斜視図である。
【図4】波形調整治具の半径寸法と長さ寸法をそれぞれ変化させた場合に得られる、入力棒に入射される圧縮波の波形の立ち上がりの変化について示すもので、(イ)は理論解析による結果を、(ロ)は数値シミュレーションの結果をそれぞれ示すものである。
【図5】本発明者等が図1の装置を用いて実施した動的引張試験により得られた結果を示すもので、(イ)は入力棒と出力棒にそれぞれ取り付けてある各歪ゲージによる計測波形を、(ロ)は(イ)の計測波形を分離操作して得られた入力棒と出力棒を伝播される圧縮波と反射引張波の波形を示す図である。
【図6】本発明者等が図1の装置を用いて実施した動的引張試験により試験片が高速変形するときの応力と歪の関係を示す図である。
【図7】本発明者等が図1の装置構成から波形調整治具を除いた装置構成を用いて実施した動的引張試験により試験片が高速変形するときの応力と歪の関係を示す図である。
【図8】従来のカラーを用いる方式のホプキンソン棒法による動的引張試験を行うための装置を示す概要図である。
【図9】従来のヨークを用いる方式のホプキンソン棒法による動的引張試験を行うための装置を示す概要図である。
【符号の説明】
【0065】
1 入力棒
2 出力棒
3 試験片
7 打撃棒
10 応力波伝達調整治具
12 カラー
13 波形調整治具
14a,14b 歪ゲージ
15a,15b 歪ゲージ
16 内筒部材
17 外筒部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力棒の先端側に出力棒を直列に配置し、該入力棒の先端部と出力棒の基端部との間に試験片を配置して、上記入力棒の基端側より打撃棒の衝突による圧縮波を入射させて、該圧縮波を、該入力棒中を基端側より先端側へ伝播させた後、該入力棒の先端部より試験片に作用させることなく出力棒へ伝えるようにし、次いで、該出力棒の基端部に伝えられた圧縮波を、出力棒中を先端まで伝播させて反射させることで反射引張波を生じさせた後、該引張波を、出力棒の先端側から基端部まで伝播させてから上記試験片の出力棒側端部に伝えて、該試験片の出力棒側端部と、試験片の入力棒側端部との間に引張力を作用させて、該試験片の引張試験を行うようにする動的引張試験方法。
【請求項2】
入力棒の基端部より立ち上がりの緩和された圧縮波を入射させるようにし、更に、上記入力棒及び出力棒中を伝播される圧縮波及び反射引張波を、上記入力棒及び出力棒の各長手方向の複数個所に所要間隔を隔てて取り付ける歪ゲージで計測させるようにする請求項1記載の動的引張試験方法。
【請求項3】
入力棒の先端側に出力棒を直列に配置すると共に、上記入力棒の基端側の外部位置に、上記入力棒の基端部に衝突させることで負荷を与えるための打撃棒を備え、且つ上記入力棒の先端部と出力棒の基端部との間に試験片を配置して、該試験片の出力棒側端部を、上記出力棒の基端部に取り付けると共に、試験片の入力棒側端部を、該試験片の入力棒側端部の入力棒側への相対変位は許容でき且つ出力棒側への相対変位は拘束できるようにしてある応力波伝達調整治具を介して上記入力棒の先端部に取り付け、更に、上記応力波伝達調整治具の出力棒に臨む先端面と、上記出力棒の基端面との間にカラーを介装してなる構成を有することを特徴とする動的引張試験装置。
【請求項4】
応力波伝達調整治具を、試験片の入力棒側端部の外周に取り付ける内筒部材と、該内筒部材の外周に配置して上記内筒部材の入力棒側へのみ相対変位を許容できる外筒部材とを備えてなる構成とした請求項3記載の動的引張試験装置。
【請求項5】
入力棒の基端部における打撃棒の衝突個所に、打撃棒の衝突により潰れて変形できるようにしてある波形調整部材を配設する共に、上記入力棒及び出力棒の各長手方向の複数個所に所要間隔を隔てて歪ゲージを取り付けるようにした請求項4記載の動的引張試験装置。
【請求項6】
入力棒の基端部における打撃棒の衝突個所に配設する波形調整部材を、円柱形状とした請求項5記載の動的引張試験装置。


【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【公開番号】特開2008−216082(P2008−216082A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
物理学 | 測定;試験 | 材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析 | 機械的応力の負荷による固体材料の強さの調査 | 単衝撃力の適用によるもの
【出願番号】特願2007−54772(P2007−54772)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000000099)株式会社IHI
【Fターム(参考)】
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 調査方法;試験の仕方 | 引張試験
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 調査方法;試験の仕方 | 衝撃試験
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 力を掛ける方法(時間的、空間的) | 動的負荷による試験
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験片、形状、構造及び部分、部品 | 柱状、棒状
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験装置;構成、部分構成(治具を含む) | 荷重負荷装置
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 測定対象 | 歪み
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 測定対象の検出手段 | 電気的 | ロードセル
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 測定された変化量の取扱い | データの電気的処理 | 演算処理