説明

動的流体弁およびその構築方法

−プロセス空間雰囲気圧のプロセス空間雰囲気を用意することと、−プロセス空間雰囲気圧とは異なる外部雰囲気圧の外部雰囲気を用意することと、−外部雰囲気がプロセス空間雰囲気に開口連通する通路であって、外部雰囲気とプロセス空間雰囲気との間での基板の交換が可能である通路を設けることと、−この通路の少なくとも一部を通って延在する交換用流体の流れを生じさせるように、少なくとも1つの交換用流体注入点において交換用流体を通路に注入することと、を含む方法であって、この流れの方向は、−外部雰囲気圧がプロセス空間雰囲気圧より大きい場合は、外部に向かい、−外部雰囲気圧がプロセス空間雰囲気圧より小さい場合は、プロセス空間に向かう、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理の分野に関し、特に、プロセス空間雰囲気を外部雰囲気から隔てながら、プロセス空間雰囲気と外部雰囲気との間での基板の交換を可能にする流体弁を構築する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置は、基板の挿入および取り出しが可能な気体雰囲気を運転中保持するプロセス空間を含みうる。プロセス空間雰囲気は、一般に、装置の外部雰囲気の特性とは異なる特性を有しうる。プロセス空間雰囲気は、例えば、化学組成、温度、および/または圧力が外部雰囲気とは異なりうる。
【0003】
プロセス空間雰囲気が外部雰囲気の圧力とは異なる圧力に維持されている場合は、その間に開口接続部があれば、その開口接続部は雰囲気流体を圧力が高い方の雰囲気から圧力が低い方の雰囲気側に追いやろうとする圧力差にさられる。このような雰囲気流体の流れは、受入側雰囲気の汚染を招きうると共に、供給側雰囲気の枯渇を招く虞もありうる。さらに、開口接続部を介して外部とプロセス空間との間で交換されている基板も圧力差にさらされる。この圧力差が比較的小さいとしても、基板に対してかなりの影響を依然として有しうる。これが特に当てはまるのは、基板の質量が同様に小さく、基板が非接触で(すなわち、その動きを抑制する機械的接触なしに)扱われる場合である。
【0004】
外部雰囲気とプロセス空間雰囲気との間での基板の交換を可能にしながら、外部雰囲気がプロセス空間雰囲気に混ざり合うことを防止するために、従来、外部はエアロックまたは同様の装置を介してプロセス空間に接続されうる。エアロックは、外部およびプロセス空間に選択的に連通させることが可能な中間空間をもたらしうる。したがって、外部とプロセス空間との間での基板の交換は、外部空間とプロセス空間とを互いに直接開口連通させずに、中間空間を介して行われうる。この中間空間を適切に与圧することによって、エアロックは基板を圧力差にさらすこと、すなわち、異なる端部を同時に異なる圧力にさらすこと、も防止しうる。ただし、エアロックおよび同様の装置は、動作が比較的緩慢であるという欠点を有する。この理由の一部はその機械的性質によるものであり、一部はその設計自体が外部とプロセス空間との間での基板の単一またはバッチ単位の交換を目的としているという事実による。この結果、エアロックの使用は、装置の処理能力への悪影響を伴いうる。すなわち、エアロックは、プロセス空間への基板の挿入および取り出し速度を制限しうる。
【0005】
本発明の目的は、上記の問題の1つ以上を克服または軽減し、圧力が互いに異なる雰囲気を備えた外部とプロセス空間との間での基板の連続的交換を可能にする開口連通を外部とプロセス空間との間で可能にする装置および方法を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、基板処理装置に関する。本装置は、プロセス空間と、このプロセス空間内のプロセス空間雰囲気を基板処理装置の外側の外部雰囲気の外部雰囲気圧とは異なるプロセス空間雰囲気圧に維持するように構成された圧力調節手段とを備える。本装置は、基板処理装置の外部をプロセス空間に開口連通させて外部とプロセス空間との間での基板の交換を可能にする、通路方向に延在する通路をさらに備える。本装置は、この通路の少なくとも一部を通って延在する交換用流体の流れを生じさせるように、少なくとも1つの交換用流体注入点において交換用流体を通路に注入するように構成された交換用流体注入手段をさらに備える。前記流れは、外部雰囲気圧がプロセス空間雰囲気圧より大きい場合は、外部に向かい、外部雰囲気圧がプロセス空間雰囲気圧より小さい場合は、プロセス空間に向かう。
【0007】
交換用流体注入手段は、交換用流体注入点に終端する交換用流体注入路を備えうる。交換用流体注入路の少なくとも下流部分、すなわち交換用流体注入点に隣接する交換用流体注入路の部分、は、通路に注入される交換用流体に圧力が高い方の雰囲気の方向への速度成分が与えられるように、通路方向に対して(好ましくは0〜45度の範囲内の)鋭角を含みうる。
【0008】
本発明の別の態様は、方法に関する。本方法は、プロセス空間雰囲気圧のプロセス空間雰囲気を用意することと、プロセス空間雰囲気圧とは異なる外部雰囲気圧の外部雰囲気を用意することとを含む。本方法は、外部雰囲気とプロセス空間雰囲気とを開口連通させて外部雰囲気とプロセス空間雰囲気との間での基板の交換を可能にする通路を設けることをさらに含む。本方法は、通路の少なくとも一部を通って延在する交換用流体の流れを生じさせるように、少なくとも1つの交換用流体注入点において交換用流体を前記通路に注入することをさらに含む。この流れは、外部雰囲気圧がプロセス空間雰囲気圧より大きい場合は、外部雰囲気に向かい、外部雰囲気圧がプロセス空間雰囲気圧より小さい場合は、プロセス空間雰囲気に向かう。
【0009】
本発明は、外部雰囲気とプロセス空間雰囲気とを相互接続する通路を特徴とする。この通路は、運転中、機械的に「開口」されうるので、2つの雰囲気間での基板の自由な交換を可能にする。
【0010】
雰囲気流体の流れが通路の両端の圧力差により、外部雰囲気からプロセス空間雰囲気側に、またはこの逆方向に、制御不能に追いやられることを防ぐために、交換用流体が通路に注入される。この注入は、圧力が高い方の雰囲気側に向かう交換用流体の流れを通路内の少なくとも一部に生じさせるように、行われる。例えば、プロセス空間雰囲気が外部雰囲気に対して過圧に維持されている場合は、交換用流体はプロセス空間側に流れるように通路に注入される。このように、交換用流体は通路の両端の圧力差とは逆に流される。注入された交換用流体が通路を通って流れるに伴い、その速度は徐々に低下し、その(静)圧が増し、最終的にその運動量を失う。このような淀みを所望される如何なる位置にでも発生させうる。例えば、そこから交換用流体を対応する雰囲気に拡散、または別様に排出、させうる通路の一端に近い位置で発生させうる。理解すべき点は、交換用流体の流れは通路の少なくとも一部分を占拠することによって、そこの圧力プロファイルを決定することである。交換用流体の注入時の流量などの注入パラメータを注意深く選択することによって、通路の両端の圧力差を通路内部の圧力プロファイルによって部分的または完全に補償しうる/打ち消しうる。したがって、圧力が高い方の雰囲気の雰囲気流体が圧力が低い方の雰囲気側に流れるという自然な傾向が調節されうる。
【0011】
交換用流体の流れは、通路の少なくとも一部における圧力プロファイルを決定するほか、通路を介して交換されている基板に対して牽引力をもたらす。基板に対する牽引力は、通路両端の圧力差とは逆に向かう。この結果、この牽引力は基板に対する圧力差の影響を軽減し、その影響を打ち消すか、またはその影響に打ち勝つことさえありうる。例えば、プロセス空間雰囲気が外部雰囲気に対して過圧に維持されている場合、通路内に静止している(しかしその両端はそれぞれの雰囲気中に突き出している)基板に対する正味牽引力は、基板の両端の圧力差が基板を外部に押し出しうる場合でも、プロセス空間側に向かいうる。したがって、この牽引力は、圧力が高い方のプロセスへの基板の挿入を容易にするために使用されうる。この目的または他の目的のための牽引力の使用について以下に説明する。
【0012】
本文中に使用されている術語に関して、以下に留意されたい。用語「静圧」は、流体の熱力学的圧力を指す。すなわち、流体が動いている場合、その流体中の如何なる位置についてもその値は、その位置と共に動くことによって、すなわちその位置に対して「静的」であることによって、測定可能である。用語「動圧」および「淀み点圧」は、非圧縮性流体の流れについてのベルヌーイの式と関係があり、流れている流体中の運動エネルギーを流体の停止に伴う圧力上昇に変換することから生じる。非圧縮性の流れについては、動圧は静圧と淀み点圧との間の差に等しい。当該技術分野において、「動圧」は、特に圧縮性流れについて論じる際に、「衝撃圧」と称されることもある。ここでは、この概念に言及する際は、用語「動圧」のみを使用する。一方、淀み点圧は、流体流中の淀み点における静圧、すなわち、流体の速度がゼロである流体中の位置における圧力、である。
【0013】
交換用流体は非圧縮性流体である必要はないが、交換用流体は多くの状況において良好な近似で非圧縮性流体に適用可能な規則に従いうる。したがって、本文では、交換用流体は、非圧縮性の流れという術語で扱われる。特に、非圧縮性の流れの淀み点圧と、静圧と、動圧との間の関係は、交換用流体についても当てはまると想定する。非圧縮性の流れの挙動についてのこの想定を維持できない状況においては、本文の術語は、当該技術分野において公知の圧縮性の流れの理論に用いられている対応する概念を指すと解釈されるものとする。
【0014】
さらに、本文中では、用語「雰囲気」は、何れかの局所的流体、何れか所望の化学組成の、一般にはガス状の、塊または媒質を含むことを意図している。したがって、雰囲気という用語は、単に空気塊を指すとは解釈されないものとする。本文が雰囲気などの「圧力」に、「静的」または「動的」に関して特定せずに、言及している場合、本文は、一般には通路の対応する端部に隣接した位置における、静圧に言及している。用語「開口連通」は、機械的に閉鎖または密閉されていない何れかの接続を指す。「にほぼ等しい」という句は、定量的解釈が必要とされる箇所では、一般に、「明記された量に等しい/明記された量±20%の範囲内である」と解釈されうる。
【0015】
本発明の一詳細によると、通路は、少なくとも1つの注入点の下流に位置する淀み領域(または通路部分)を備えうる。この淀み領域は、交換用流体排出路にさらに接続されうる(例えば、交換用流体排出路の一端に設けられうる)。明確にするために、ここで「下流」とは、通路内の交換用流体の流れの方向を指していることに留意されたい。
【0016】
この通路は、外部とプロセス空間との間に開口接続を形成する。この結果、通路内を移動中で十分な運動量を有する交換用流体の流れは、外部またはプロセス空間のどちらかより高い圧力を有する、ひいては流体の流れの目標方向を画定する、雰囲気内に押しやられてから停止する、または淀む。交換用流体の流れが外部雰囲気またはプロセス空間雰囲気内で淀むと、その後、交換用流体はそこで拡散することになる。これを問題にする必要はないにしても、交換用流体を外部雰囲気および/またはプロセス空間雰囲気から実質的に分離しておくことが望ましいこともある。この分離は、通路の一部分を淀み領域と指定し、この部分に交換用流体排出路を設けることによってもたらされうる。運転中、淀み領域は、交換用流体流が圧力が高い方の雰囲気に遭遇して少なくとも部分的に淀む位置のすぐ上流に形成されうる。この淀み領域における交換用流体の(淀みが発生した位置の上流への後退を伴う)蓄積を防止するために、交換用流体排出路が設けられる。この排出路は、交換用流体を淀み領域から適した場所に排出するように構成される。
【0017】
本発明の1つの実施形態によると、運転中、淀み領域から排出された交換用流体が交換用流体注入手段に供給されて通路に注入されるように、交換用流体排出路は交換用流体注入手段に接続されうる。
【0018】
交換用流体を次のように循環させうる。すなわち、交換用流体注入手段が交換用流体を通路に注入した後、交換用流体は淀み領域に流れてそこで淀み、その後にそこから交換用流体排出路を介して排出され、交換用流体注入手段に戻る。本発明の一部の実施形態においては、特に空気を交換用流体として用いる実施形態においては、交換用流体の循環路は外部雰囲気を含みうる。例えば、交換用流体排出路は、外部に開口連通して交換用流体を淀み領域から外部に排出するように構成されうる。一方、交換用流体注入手段は、交換用流体を外部から引き込むように構成されうる。このような空気を用いた実施形態は、選択された交換用流体を移送するための精密に密閉された循環路を不要にする。
【0019】
別の詳細によると、交換用流体注入手段は、通路を通る交換用流体の流れが淀み領域で淀むような流量で交換用流体を通路に注入するように構成されうる。
【0020】
交換用流体の流れが淀む場所は、通路に注入される交換用流体の流量を選択することによって決定されうる。一般に、注入流量が大きいほど、淀み位置はより下流に生じる。この流量は、交換用流体の流れが淀み領域で淀むように選択されうる。その場合、淀み領域における圧力は、外部雰囲気圧とプロセス空間雰囲気圧のうちの大きい方の圧力にほぼ等しい淀み点圧で安定する。これにより、圧力が高い方の雰囲気から通路を封鎖する動的な流体弁として淀み領域を機能させることができる。
【0021】
通路に注入される交換用流体の流量の選択により、注入直後の交換用流体の静圧および動圧が選択される。本発明の1つの実施形態において、交換用流体注入手段は、外部雰囲気圧とプロセス空間雰囲気圧のうちの小さい方の圧力にほぼ等しい静圧で交換用流体を注入するように構成されうる。別の実施形態において、交換用流体注入手段は、外部雰囲気圧とプロセス空間雰囲気圧との間の絶対差にほぼ等しい動圧で交換用流体を注入するように構成されうる。
【0022】
静圧および動圧をこのように選択すると、交換用流体の流れと外部およびプロセス空間雰囲気との間の最適な分離を可能にしうる動的平衡が通路内にもたらされうる。注入点では静圧が優勢でありうるが、その後、交換用流体内の圧力は圧力が低い方の雰囲気の圧力にほぼ等しくなりうる。流体の流れが淀む場所においては、圧力が高い方の雰囲気にほぼ等しい淀み点圧を生じさせるように、流れの動力学的ポテンシャルが熱力学的圧力に変換されうる。したがって、通路の両端の圧力差は、通路内の交換用流体の流れによって平衡化されうる。これにより、隣接する両雰囲気からの流体は通路に実際にアクセスできなくなる。
【0023】
本発明の別の詳細によると、通路は通路方向に延在しうる。また、交換用流体注入手段は、前記通路方向にほぼ平行な向きのほぼ層状の交換用流体の流れを生じさせるように構成されうる。
【0024】
通路は基板の交換に用いられ、基板によっては壊れやすいものもありうるので、通路内部の流動様式は(乱流の対語としての)層流であることが好ましい場合もある。また、不平衡な流れ成分が基板を歪ませる、および/または基板を通路の境界壁側に押しやる、または境界壁に押し付ける、ことを防ぐように、交換用流体の流れは、好ましくは、通路方向に平行な方向、すなわち通路内の基板の搬送方向、に延在しうる。
【0025】
本発明の一実施形態において、通路は少なくとも通路上壁および通路下壁に界接しうる。また、少なくとも1つの交換用流体注入路を通路上壁および通路下壁に設けうる。通路上壁内の少なくとも1つの交換用流体注入路は、上側の交換用流体ベアリングをもたらすように構成されうる一方で、通路下壁内の少なくとも1つの交換用流体注入点は、下側の交換用流体ベアリングをもたらすように構成されうる。これらの交換用流体ベアリングは、その間に基板を浮動状態で支持して収容するように構成されうる。したがって、通路は、外部とプロセス空間との間で基板を非接触で交換すると共に、基板と通路の何れの境界壁との機械的接触も防止するために基板の両面に対して緩衝体として働き、基板を両面で担持するように構成されうる。
【0026】
本発明の上記および他の特徴および利点は、本発明を限定するためではなく例示することを目的とした添付図面と組み合わせて以下に記載の本発明の諸実施形態の詳細説明からより深く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】基板交換区間(左側)とプロセストンネル(右側)とを備えた本発明による一例示的基板処理装置を長手方向断面図で模式的に示す。
【図2】交換区間の通路に注入される流体の気体容積流量と、交換区間から内側を見た、プロセストンネル空間内の圧力プロファイルとの間の関係を示す測定データを含むグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による装置の構成を以下に概説する。その際、図1に示されている例示的実施形態に言及する。この実施形態は、浮動状態に支持された複数の半導体基板10を処理するための空間分離による原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)装置1として構成されている。図1は、交換区間100とこれに接続されたプロセストンネル200とを備えた例示的ALD装置1の一部分の長手方向概略断面図である。
【0029】
交換区間100は、本体102を備えうる。本体102は、装置1の外部2がプロセス空間202に開口連通して外部2とプロセス空間202との間での基板10、例えばシリコンウエハ、の交換が可能である通路104の少なくとも一部分を画成しうる。通路104は、通路方向Pに延在しうる。交換区間100の本体102によって画成される通路104の部分は、通路上壁110と、通路下壁120と、2つの通路側壁(図示せず)とに界接しうる。通路上壁110と通路下壁120とは互いに平行に水平に向けられ、通路上壁110と通路下壁120とに平行な向けられた厚さが例えば0.1〜0.8mmのほぼ平坦な、または平板状の、基板10が通路上壁110と通路下壁120とに接触せずに通路104を通過しうるように、僅かに、例えば0.5〜1mm、離隔させうる。勿論、本体102によって画成される通路104の部分の正確な寸法は、一般に、装置1の種類およびその内部で処理される基板10の種類に応じて異なりうる。例えば、シリコンウエハの代わりに厚さが4〜5mmのガラス板を処理する場合は、通路上壁110と通路下壁120との間の間隙はこれより大きくなるであろう。
【0030】
通路104内の交換用流体注入点に終端する少なくとも1つの交換用流体注入路112、122を通路上壁110および通路下壁120の両方に設けうる。通路104に注入される交換用流体に所望される方向への速度成分を与えるために、交換用流体注入路112、122、または少なくとも交換用流体注入点に隣接する部分、は、通路方向Pに対して適切な角度に向けられうる。例えば、図1の例示的実施形態では、プロセス空間202内の雰囲気は、外部2の雰囲気に対して過圧に維持されることになる。したがって、通路104に生じる交換用流体の流れは、プロセス空間202側、すなわち右側、に向かうことになる。そのため、注入される交換用流体に対して圧力が高い方の雰囲気、すなわちプロセス空間雰囲気、の方向への速度成分が与えられるように、交換用流体注入点に隣接する交換用流体注入路112、122の部分は、通路方向Pに対して鋭角、好ましくは0〜45度の範囲内の角度、に向けられうる。
【0031】
交換用流体注入路112、122の各々は、ポンプまたは質量流量制御装置などの交換用流体流供給手段114、124に接続されうる。交換用流体流供給手段114、124は、交換用流体の流れをそれぞれの交換用流体注入路112、122を介して選択された流量で供給するように構成されうる。このために、交換用流体流供給手段には、何れか適した方法で交換用流体が供給されうる。交換用流体は、例えば(図1実施形態のように)外部2の雰囲気から引き込んでもよく、または閉鎖型循環回路から受け入れてもよく、または(加圧)交換用流体貯留槽または容器から引き込まれてもよい。
【0032】
交換区間100の本体102とプロセストンネル200の構造体との間に、鉛直に延在する間隙106が存在する。間隙106は、通路104と外部2との間に開口接続をもたらす交換用流体排出路を形成する。なお、分かり易くするために、図1の実施形態においては、通路104は交換区間100の本体102を超えて延在している、すなわち、通路104は外部2(左側)から、交換区間100の本体102を通って、さらに右側にプロセス空間202まで延在していることに注目されたい。交換用流体排出路106は、位置108において通路104につながる。この位置は、通路104と排出路106との交差点に位置すると言ってもよい。図1の実施形態において、位置108は、以下にその機能を明らかにする淀み領域として選択されうる。
【0033】
本発明による装置1は、基板10が、好ましくは基板列の一部として、その内部で直線的に搬送されうるプロセストンネル200をさらに備えうる。すなわち、基板10は、交換区間100を通ってプロセストンネル200に挿入され、図示の交換区間と同様の別の交換区間を備えうるプロセストンネルの出口まで一方向に搬送されれうる。あるいは、プロセストンネル200はデッドエンドを有しうる。この場合、基板10は図示されているプロセストンネル200の交換区間100からデッドエンドに向かい、再び交換区間100に戻るという双方向運動を受けうる。このような代替の双方向システムは、比較的小さい設置面積の装置が望まれる場合に好適でありうる。プロセストンネル200自体は直線状であってもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0034】
プロセストンネル200は4つの壁、すなわち上壁210と、下壁220と、2つの横壁または側壁(図示せず)、を備えうる。上壁210および下壁220は、水平に互いに平行に向けられてもよく、上壁210および下壁220に平行に向けられた、厚さが例えば0.1〜0.8mmのほぼ平坦な、または平板状の、基板10が上壁210および下壁220に接触せずにその間に収容されるように、僅かに、例えば0.5〜1mm、離隔されうる。両側壁は、ほぼ鉛直に互いに平行に向けられてもよく、上壁210と下壁220とをそれぞれの側面で相互に連結しうる。両側壁は、処理対象の基板10の幅より若干大きな距離、例えば基板10の幅プラス0.1〜3mm、だけ離隔されうる。したがって、プロセストンネル200の各壁は、トンネルの長手方向に連続的に配置される1つ以上の基板10を収容可能な、トンネルの長さ単位当たりの容積が比較的小さい細長いプロセストンネル空間202を画成し、その境界を定めうる。
【0035】
トンネル上壁210およびトンネル下壁220の両方に、複数のガス注入路212、222が設けられうる。各壁210、220のガス注入路212、222は、そのうちの少なくともいくつかがトンネル200の長さ全体に分散されるのであれば、所望どおりに配置されうる。ガス注入路212、222は、対応する壁210、220の内面全体にわたって、その長手方向および横断方向のどちらにも規則的にガス注入路が分散されるように、例えば、仮想的な矩形格子、例えば25mm×25mmの格子、の各コーナーに配設されうる。
【0036】
ガス注入路212、222は、好ましくは同じトンネル壁210、222内の、かつその長手方向位置が同じである、各ガス注入路が同じガスまたはガス混合物のガス源に接続されるように、複数のガス源に接続されうる。ALD用の場合、下壁210および上壁220の少なくとも一方にある各ガス注入路212、222は、使用時に第1の前駆体ガスと、パージガスと、第2の前駆体ガスと、パージガスとをそれぞれ含む連続する(トンネル幅の)ガスゾーンを複数備えたプロセストンネルセグメント204を生じさせるように、トンネルの長手方向に見て、第1の前駆体ガス源と、パージガス源と、第2の前駆体ガス源と、パージガス源とに連続的に接続されうる。このような1つのトンネルセグメント204は、単一のALD堆積サイクルに対応することを理解されたい。したがって、所望厚の薄膜の堆積を可能にするために、複数のトンネルセグメント204がプロセストンネル200の長手方向に沿って順次配設されうる。プロセストンネル200内のそれぞれのセグメント204は、前駆体の同じ組み合わせを含みうるが、必ずしもそうである必要はない。混合膜の堆積を可能にするために、例えば異なった構成の複数のセグメント204が使用されうる。
【0037】
プロセストンネルの同じ長手方向位置を共有する、向かい合ったトンネル壁210、220内に配置された対向するガス注入路212、222を同じガス組成のガス源に接続するかどうかは、装置1の所望の構成により決まりうる。両面堆積、すなわちプロセストンネル200内を通過する基板10の上面10aおよび下面10bの両方のALD処理、が望まれる場合は、対向するガス注入路212、222を同じガス源に接続しうる。あるいは、片面のみの堆積、すなわち処理対象の基板10の上面10aおよび下面10bのどちらか一方のみのALD処理、が望まれる場合は、処理対象の基板面に面したトンネル壁210、220のガス注入路212、222を反応性ガス源と不活性ガス源とに交互に接続し、もう一方のトンネル壁の全てのガス注入路を不活性ガス源に接続しうる。
【0038】
図1の例示的実施形態においては、酸化アルミニウム(Al)原子層堆積サイクルを実施するために適した一連の同一トンネルセグメント204を形成するように、上壁210のガス注入路212はトリメチルアルミニウム(Al(CH、TMA)源、窒素(N)源、水(HO)源、および窒素源に順次接続される。これに対して、トンネル下壁220のガス注入路222は全て窒素源に接続される。したがって、例示的装置1は、浮動状態で支持されて通過する基板10の上面10aへの片面堆積を連携して行うように構成された上側の堆積用ガスベアリングと下側の非堆積用ガスベアリングとを維持するように構成される。
【0039】
プロセストンネル200の各側壁には、その長さ全体またはその一部に沿って、プロセスガスをプロセス空間から排出するように構成されたガス排出路が複数設けられうる。各ガス排出路は、プロセストンネルの外側に設けられたガス排出管路に接続され、このガス排出管路内に排出しうる。装置1がALDを実施するように構成される場合、排出ガスは大量の未反応前駆体を含有しうる。したがって、互いに異なる複数の反応性ガスゾーンに対応付けられた複数のガス排出路を同じガス排出管路に接続することは(偶発的な化学蒸着をもたらしうるため)望ましくないことがある。したがって、それぞれ異なる複数の前駆体のために複数の異なるガス排出管路が設けられうる。ガス注入路212、222が接続される各ガス源と各ガス排出路とは、プロセス空間202内の圧力を調節するために連携することを理解されるであろう。
【0040】
装置1の全般的動作は、以下のように説明されうる。最初に交換区間100について説明する。
【0041】
使用時、通路上壁および通路下壁110、120の両方の交換用流体注入路112、122は交換用流体を通路104に注入する。図1の実施形態において、この交換用流体は、交換用流体流供給手段114、124によって外部雰囲気から引き込まれた空気である。
【0042】
注入時の交換用流体の流量は、交換用流体の静圧が外部雰囲気の圧力にほぼ等しくなり、交換用流体の動圧が外部雰囲気の圧力とプロセス空間内の雰囲気の圧力との間の絶対差にほぼ等しくなるように、選択されうる。これは、交換用流体の淀み点圧がプロセス空間雰囲気の圧力にほぼ等しくなることを意味する。交換用流体は通路104に注入されると、プロセス空間202に向かって流れる。ただし、比較的狭い通路104を介してのプロセス空間202への進入は、プロセス空間202内の気圧によって妨げられる。この気圧は交換用流体の流れの淀み点圧に意図的に等しくされているため、交換用流体の流れはプロセス空間202への入り口にある位置108の辺りで淀む。交換用流体が連続的に注入され、かつ外部雰囲気と淀んだ交換用流体との間に圧力差があるため、交換用流体は必然的に交換用流体排出路106を介して、先にそこから引き込まれた外部2へと排出される。圧力平衡の結果として、淀み領域108とプロセス空間202との間では流体の交換が実質的に皆無であることを理解されたい。このように、プロセス空間202は、機械的な閉鎖手段を用いずに、外部2から実質的に密閉されるが、通路104を介した基板10の交換は依然として可能である。
【0043】
基板10は、例えば、通路104を介してプロセス空間202に挿入されうる。基板10が通路104内に移動されるに伴い、基板10は上側および下側の交換用流体ベアリングの間に収容される。これらの流体ベアリングは、通路上壁110および通路下壁120の交換用流体注入路112、122を介してそれぞれ注入される交換用流体によってもたらされる。これらの流体ベアリングは、基板10のための緩衝体として働き、基板10の上側主面10aおよび下側主面10bに対して牽引力をもたらし、これにより基板をプロセス空間202の方向に押しやる。
【0044】
注入される交換用流体の淀み点圧がプロセス空間雰囲気の圧力とほぼ等しくなるように選択された場合、装置1の精密な構成およびその運転パラメータ、例えばプロセス空間雰囲気の圧力など、によっては、基板10に働く牽引力が通路104の両端の圧力差の影響に打ち勝つほど十分ではない場合もありうる。すなわち、交換用流体の流れによって基板10に働く牽引力は、圧力差の影響に打ち勝って内向きの正味の力、すなわちプロセス空間202に向かう力、を基板10にもたらすには不十分な場合もありうる。このような場合は、トンネル200内への基板10の挿入をさらに容易にするように、通路104に注入される交換用流体の流量を増加することによって基板10に対する内向きの牽引力を増大させうる。上記の平衡状態からの流量の増加は、恒久的である必要はなく、実際の交換時、例えば基板10の挿入または抜き取り時、にのみ適用してもよい。
【0045】
通路104に注入される交換用流体の流量の変化による効果を図2を参照して説明する。図2は、交換区間104の通路104に注入された交換用流体の気体容積流量と、交換区間100から内側を見た、プロセストンネル空間202内の圧力プロファイルとの間の関係を示す測定データを含むグラフである。図2は、8つの異なる交換用流体注入流量を含む、10の異なる状況についての圧力プロファイルを示している。各圧力プロファイルは、6つの圧力データ点を含む。この圧力データは、通路104またはプロセス空間202内に基板が皆無の状態で取得されたものである。
【0046】
「空気弁開放」と示されている圧力プロファイルは、交換用流体が通路104内に注入されていない状況に該当する。外部2に対してプロセス空間202のバルク内の約3.4mbar(すなわち340Pa)の過圧により、プロセス空間202からの雰囲気流体の流出が発生する。この流出は、圧力低下を当然伴う。雰囲気流体の流出は、「空気弁を機械的に閉鎖」と示されている圧力プロファイルによって示されているように、通路104を機械的に閉鎖することによって阻止されうる。通路104が機械的に閉鎖されると、プロセス空間202内の圧力はその長さ方向にほぼ一様になる。ただし、外部2とプロセス空間202との間の基板10の交換は不可能である。
【0047】
図2は、交換用流体が通路104内に145標準リットル/分(slm:standard liters per minute)の流量で注入された場合は、雰囲気流体をプロセス空間202の外または内に追いやる圧力勾配がない平衡状態が存在することを示している。この流量において、交換用流体の淀み点圧は、プロセス空間雰囲気の圧力にほぼ等しい。流量145slmでは、交換用流体の流れが通路104の内部に延在する基板10に及ぼす牽引力は、基板に対して正味の内向きの力をもたらすには不十分であることが複数のテストにより示されている。
【0048】
プロセス空間202内への基板10の挿入を容易にするために、注入される交換用流体の流量を増加させうる。なお、この流量は交換用流体の淀み点圧に直接関連しうることに留意されたい。この理由は、注入時の交換用流体の流量は、良好な近似で、動圧の平方根に比例することが示されうるからである。したがって、交換用流体の注入流量の増加は、その淀み点圧の増大に対応する。
【0049】
図2は、流量が185slm、210slm、230slm、および260slmであれば、基板を内側に追いやるために十分な牽引力を基板に対して発生させることを示している。このような(平衡状態をもたらす145slmからの)流量の増加は、プロセス空間202内への交換用流体の流入を伴う。すなわち、交換用流体の流れの淀み点はプロセス空間内にある。これを問題にする必要はない。図2から明らかなように、プロセス空間202に進入する交換用流体の影響は、基本的に、プロセストンネル200内の最初の1メートルに限定される。この点に関して、プロセス空間202内の堆積プロセスへの干渉を回避するために、交換区間100に隣接したプロセストンネル200の最初の区間を、例えば挿入された基板10の予熱、または処理が完了した基板10の冷却、を目的とした、非堆積区間にしてもよい。
【0050】
基板がプロセス空間202内に「牽引される」構成は、基板の挿入を大幅に容易にすることを理解されるであろう。この構成は、プロセストンネル200内への基板10の機械的押し込みを不要にするばかりでなく、基板がプロセストンネル200内を通過しうる少なくとも初期速度にまで基板を加速する助けにもなる。同様に、プロセストンネル200の一端/出口に設けられた交換区間100を用いて基板10を減速させうる。このような出口において、通路104の両端の差圧は、通常、基板10をプロセス空間202から高速で押し出しうる。このような高速での押し出しは、圧力差の影響を都合よく軽減または平衡させる逆方向の牽引力を基板10に加えることによって、防止可能である。圧力差によるプロセス空間202からの基板10の「発射」を防止するには、基板10の交換中、50slmおよび100slmなど、145slm未満の流量が回避されうることが好ましい。プロセストンネル200の入り口における基板10の「高速化」およびプロセストンネル200の出口における基板10の「低速化」は、どちらも「交換用流体の流れ方向への加速」と記述されうることを指摘しておく。したがって「加速」は、ニュートンの第2法則に従って、物体に働く正味の力の結果として物理的に解釈されるものとする。
【0051】
完全を期すために、1標準リットル/分は、温度0℃および圧力1.01325bar/1気圧/1.01325×10Paにおける60秒当たりの1dmの流体の流れを指すことに留意されたい。
【0052】
次に、プロセストンネル200の動作に注目されたい。使用時、上壁210および下壁220内の両方のガス注入路212、222は、ガスをプロセストンネル空間202に注入する。各ガス注入路212、222は、接続先のガス源から供給されたガスを注入しうる。装置1は大気圧および非大気圧の両方で運転可能であるため、ガス注入は何れか適した圧力で行われうる。ただし、真空ポンプを不要にするため、かつ外部雰囲気からプロセス空間202内への流体の偶発的漏入を防止するために、プロセス空間は大気圧より僅かに高い圧力に維持されうることが好ましい。したがって、ガス注入は、大気圧より多少高い圧力、例えば1〜2mbar(すなわち100〜200Pa)台の過圧で行われうる。これより低い圧力、例えば大気圧、が側壁に設けられたガス排出路内に維持されている場合は、トンネル空間202に注入されたガスは横方向に、すなわちプロセストンネルの長手方向を横切る方向に、当然流れることになる。
【0053】
基板10が上壁および下壁210、220の間にある場合、上壁210内のガス注入路212によってトンネル空間202内に注入されたガス(単数または複数)は、上側のガスベアリングをもたらすように、上壁と基板の上面10aとの間を横方向に流れうる。同様に、下壁220内のガス注入路222によってトンネル空間202内に注入されたガス(単数または複数)は、下壁と基板10の下面10bとの間を横方向に流れ、下側のガスベアリングを効果的にもたらす。下側および上側のガスベアリングは共に基板10を取り囲み、基板10を浮動状態で支持しうる。
【0054】
基板10上に膜を堆積させるために、基板をプロセストンネル空間202内で移動させうる。基板10の移動は、接触法および非接触法の両方によって、何れか適した方法で行われうる。非接触法が好ましいが、その理由はとりわけ、基板駆動用の摩耗しうる機械部品は一般に装置設計を複雑化し、保守の必要性を増大させうるからである。基板10を非接触式で前進させる方法として、注入されたガス流が搬送方向に接線成分を有するように搬送方向に対して斜めに配置されたガス注入路212、220を通して方向付けられたガス流による推進、電気力および/または磁力による推進、重力による推進(プロセストンネル200全体を水平に対して傾けることによって行いうる)、および他の何れか適した方法が挙げられる。
【0055】
基板10を駆動するために選択される方法が何であろうと、適した基板搬送速度が確実にもたらされるように注意する必要がある。図1のALD装置においては、基板10の搬送速度は、基板の表面積の一区画が特定の前駆体ガスゾーンを通過するときに、その区画が前駆体に十分に長時間さらされて完全に飽和することを保証する速度であることが好ましい。前駆体ゾーンが長いほど、一般に搬送速度の高速化が可能であり、その逆も成り立つ。ただし、飽和時間は、使用される前駆体の性質に応じて、さらには対応するゾーンにおける前駆体の濃度に応じて、異なりうることに留意されたい。
【0056】
基板10が図1のプロセストンネル202内を移動するに伴い、その上面10aは順次配置された横方向のガスゾーンの各々に存在するガスに帯状にさらされる。各ゾーンの配置とそれぞれのガスとが適切に選択されていれば、1つのトンネルセグメント204の横断は、基板10を1つの原子層堆積サイクルにかけることに相当しうる。トンネル200は所望数のセグメント204を備えうるので、基板10がトンネルを通過する間に任意の厚さの膜を基板10上に成長させうる。プロセストンネル200の直線性は、処理対象の基板140の連続流をさらに可能にし、これにより、かなりの処理能力を有する原子層堆積装置1を提供する。
【0057】
部分的に添付図面を参照しながら本発明の例示的実施形態を上で説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことを理解されたい。当業者は図面、開示、および添付の特許請求の範囲を検討することにより、開示された実施形態の複数の変形例を理解し、特許請求された本発明の実施の際に実現可能である。本願明細書全体にわたって「1つの実施形態(”one embodiment”)」または「一実施形態(”an embodiment”)」への言及は、その実施形態に関連して説明されている特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本願明細書全体にわたってさまざまな箇所で出現する「1つの実施形態において」または「一実施形態において」という句は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているとは限らない。さらに、1つ以上の実施形態の特定の特徴、構造、または特性は、明示的に記載されていない新しい実施形態を形成するために、何れか適した方法で組み合わせられうる。
【符号の説明】
【0058】
1 基板処理装置
2 外部
10 基板
10a、b 基板の上側主面(a)および下側主面(b)
100 交換区間
102 交換区間の本体
104 通路
106 交換用流体排出路
108 淀み領域
110 通路上壁
112 通路上壁内の交換用流体注入路
114 交換用流体流供給手段
120 通路下壁
122 通路下壁内の交換用流体注入路
124 交換用流体流供給手段
200 プロセストンネル
202 プロセストンネル空間
204 プロセストンネルセグメント
210 トンネル上壁
212 トンネル上壁内のガス注入路
220 トンネル下壁
222 トンネル下壁内のガス注入路
P 通路方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置(1)であって、
−プロセス空間(202)と、
−前記基板処理装置の外部(2)の外部雰囲気の外部雰囲気圧とは異なるプロセス空間雰囲気圧に前記プロセス空間内のプロセス空間雰囲気を維持するように構成された圧力調節手段と、
−前記基板処理装置の前記外部(2)が前記プロセス空間(202)に開口連通して前記外部と前記プロセス空間との間での基板(10)の交換が可能な通路(104)と、
−前記通路の少なくとも一部を通って延在する交換用流体の流れを生じさせるように、少なくとも1つの交換用流体注入点において交換用流体を前記通路(104)内に注入するように構成された交換用流体注入手段(114,124;112,122)と、
を備え、前記流れは、
○前記外部雰囲気圧が前記プロセス空間雰囲気圧より大きい場合は、前記外部に向かい、
○前記外部雰囲気圧が前記プロセス空間雰囲気圧より小さい場合は、前記プロセス空間に向かう、
装置。
【請求項2】
前記交換用流体注入手段(114,124;112,122)は、運転中、前記外部雰囲気圧と前記プロセス空間雰囲気圧との間の差による前記通路両端の逆方向の圧力差にも拘らず、前記通路内に延在する基板(10)が交換用流体の流れの方向に加速されるような流量で、交換用流体を前記通路(104)に注入するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記通路(104)は、前記少なくとも1つの注入点の下流に淀み領域(108)を備え、前記淀み領域は交換用流体排出路(106)に接続される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
運転中、前記淀み領域(108)から排出された交換用流体が前記交換用流体注入手段(114,124;112,122)に供給されて前記通路(104)に注入されるように、前記交換用流体排出路(106)は前記交換用流体注入手段(114,124;112,122)に接続される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記交換用流体注入手段(114,124;112,122)は、前記通路内の前記交換用流体の流れが前記淀み領域(108)で淀むような流量で、前記交換用流体を前記通路(104)に注入するように構成される、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記交換用流体注入手段(114,124;112,122)は、前記外部雰囲気圧と前記プロセス空間雰囲気圧のどちらか小さい方の圧力にほぼ等しい静圧で、前記交換用流体を注入するように構成される、請求項1乃至5の何れかに記載の装置。
【請求項7】
前記交換用流体注入手段(114,124;112,122)は、前記外部雰囲気圧と前記プロセス空間雰囲気圧との間の絶対差にほぼ等しい動圧で、前記交換用流体を注入するように構成される、請求項1乃至6の何れかに記載の装置。
【請求項8】
前記通路(104)は通路方向(P)に延在し、前記交換用流体注入手段(114,124;112,122)は、前記通路方向にほぼ平行な層状の交換用流体の流れを生じさせるように構成される、請求項1乃至7の何れかに記載の装置。
【請求項9】
前記通路(104)は少なくとも通路上壁(110)と通路下壁(120)とに界接し、前記通路上壁および前記通路下壁の両方に少なくとも1つの交換用流体注入路(112,122)が設けられ、前記通路上壁(110)内の前記少なくとも1つの交換用流体注入路(112)は上側の交換用流体ベアリングをもたらすように構成され、前記通路下壁(120)内の前記少なくとも1つの交換用流体注入路(122)は下側の交換用流体ベアリングをもたらすように構成され、前記交換用流体ベアリングはその間に基板(10)を浮動状態で支持して収容するように構成される、請求項1乃至8の何れかに記載の装置。
【請求項10】
前記圧力調節手段は、外部雰囲気圧より大きいプロセス空間雰囲気圧を維持するように構成される、請求項1乃至9の何れかに記載の装置。
【請求項11】
−トンネル下壁(220)と、トンネル上壁(210)と、2つのトンネル側壁とを含むプロセストンネルであって、前記トンネル壁は、前記トンネル上壁および前記トンネル下壁に平行に向けられた少なくとも1つのほぼ平板状の基板(10)を収容するように構成された、トンネル方向に延在する前記プロセス空間(202)の境界を一緒に画成する、プロセストンネルと、
−前記トンネル上壁内に設けられた第1の複数のガス注入路(212)および前記トンネル下壁内に設けられた第2の複数のガス注入路(222)であって、前記トンネル上壁内に設けられた前記ガス注入路は上側のガスベアリングをもたらすように構成され、前記トンネル下壁内に設けられた前記ガス注入路は下側のガスベアリングをもたらすように構成され、前記両ガスベアリングは前記基板(10)をその間に浮動状態に支持して収容するように構成される、第1の複数のガス注入路(212)および第2の複数のガス注入路(222)と、
をさらに備える、請求項1乃至10の何れかに記載の装置。
【請求項12】
−プロセス空間雰囲気圧のプロセス空間雰囲気を用意することと、
−前記プロセス空間雰囲気圧とは異なる外部雰囲気圧の外部雰囲気を用意することと、
−前記外部雰囲気が前記プロセス空間雰囲気に開口連通して前記外部雰囲気と前記プロセス空間雰囲気との間での基板の交換が可能である通路(104)を設けることと、
−前記通路の少なくとも一部を通って延在する交換用流体の流れを生じさせるように、少なくとも1つの交換用流体注入点において交換用流体を前記通路に注入することと、
を含む方法であって、前記流れは、
○前記外部雰囲気圧が前記プロセス空間雰囲気圧より大きい場合は、前記外部雰囲気に向かい、
○前記外部雰囲気圧が前記プロセス空間雰囲気圧より小さい場合は、前記プロセス空間雰囲気に向かう、
方法。
【請求項13】
前記交換用流体は、前記外部雰囲気圧と前記プロセス空間雰囲気圧の間の差による前記通路の両端の逆方向の圧力差にも拘らず、前記通路内に延在する基板(10)が前記交換用流体の前記流れの方向に加速されるような流量で、前記通路(104)に注入される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記交換用流体は、前記外部雰囲気圧と前記プロセス空間雰囲気圧のうちの小さい方の圧力にほぼ等しい静圧で、前記通路に注入される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記交換用流体は、前記外部雰囲気圧と前記プロセス空間雰囲気圧との間の絶対差にほぼ等しい動圧で、注入される、請求項12乃至14の何れかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−518985(P2013−518985A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551108(P2012−551108)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【国際出願番号】PCT/NL2011/050059
【国際公開番号】WO2011/093709
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512107916)
【Fターム(参考)】