説明

動的過膨張を測定するための方法及びシステム

【課題】被験者の動的過膨張の存在(及び量)又は不存在を非観血的に測定する。
【解決手段】本発明は、被験者に対して非観血的且つ押し付けがましくない方法で測定することができる今までになく新しい呼吸パラメータの組み合わせに基づいている。動的過膨張は、様々な閉塞性肺疾患に罹った患者のクオリティ・オブ・ライフにおいて重大な要因であることがしばしばであり、本発明は、感染した患者において、動的過膨張の単純な且つ日常的な追跡及び管理を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人の肺パラメータの測定に関し、特に、閉塞性肺疾患患者の肺パラメータに関する。さらに詳細には、本発明は、必要であればほんの少し患者の注意が必要とされる方法を用いて動的過膨張を測定するシステム及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び類似の生理的欠陥を伴う疾患(たとえば、急性及び慢性の喘息)は、重大な世界規模の罹病率及び死亡率の原因であることから、重要な臨床上の関心となっている。これらの疾患の主症状は、他の呼吸不快と同様に呼吸困難又は息切れを含んでいる。これらは、労作時及び病気の末期では安静時でも起こる。つまり、これらの症状は、呼気流制限が増加した気道の背後にトラップされた空気で肺がますますいっぱいになるような(「過膨張」)、自発呼吸のための肺容量の進行性喪失に起因する。気道の呼気流制限は、例えば、気道内閉塞(例えば粘液増加による)又は部分気道虚脱(例えば実質性破壊に起因する連結減少による)を引き起こすこれらの疾患の基本的な病状に起因する。肺容量の増加は、胸壁の圧容量関係を変化させ、呼吸筋の能力を弱める。
【0003】
病理学的には、COPDは、通常、狭窄し、おそらく虚脱した気道を起因とする呼気流制限によって特徴付けられる雑多な疾患である。肺気腫又は慢性気管支炎によって発症する場合、実質性破壊及び血管破壊は、小気道及び大気道の呼気虚脱を引き起こす肺収縮や気道連結の状態に至る。慢性気管支炎と共に、急性喘息及び慢性喘息は、気管支肥大、気管支痙攣、及び気管支への粘性分泌物の増加に起因した気道狭窄化による呼気流制限をもたらす可能性もある。顕著な呼気流制限によって特徴付けられる肺疾患は、一般的に本明細書では閉塞性肺疾患(OPD)と呼ばれている。
【0004】
急激に増加した過膨張(「動的過膨張」)の期間が、慢性の根本的で且つ多くの場合緩慢な進行性過膨張を併発することは、これらの疾患の経過中にはよく起きることある。動的過膨張(「DH」と省略する)は、運動(「運動呼吸困難」)、興奮、肺の伝染病、朝の歩行、及びその他多数の要因に起因し得る、呼吸の増加原動力の期間に関係する。DHに起因する付加的な過膨張は、自発呼吸に利用できる肺容量をさらに減少させる可能性さえある。故に、上記の付加的な過膨張は、COPD及び類似疾患の患者の体験において、患者の機能的能力及びクオリティ・オブ・ライフに悲観的な影響を与える重要な要因である可能性がある。
【0005】
このため、可能な範囲でDHの発病を追跡し且つ治療することは、臨床的に有利である。従来技術において、DHは、通常、例えばスパイロメータへの呼吸中又は調整された肺タコグラフフ・チャンバー内への呼吸中に、患者に、安静状態で独特の呼吸法を行うことを要求する最大吸気量(本明細書では「IC」と省略する)の連続測定によって追跡されてきた。この独特な方法では、患者はまず、くつろいだ状態で吸気と呼気を繰り返し行ない、その後に最大限に空気を吸い込み通常の呼吸を再開しなければならないことが要求される。ICは、最終的な吸気量と最終的な呼気量との差である。この方法は、2つ以上の一貫したIC値が得られるまで繰り返されるのが好ましい。
【0006】
この測定技術のこの必要条件は、IC測定をゆがめる可能性があり、それゆえさらに、DHの認証とDHの測定を妨げる。患者は、それまで行っていた全てを中断し、やがて意識的に、せいぜい扱いにくい機器を使用する間、独特の呼吸の連続に専心し、行わなければならない。IC測定で要求される大きな吸気は、不快にさせる可能性が高く、実際に過膨張の期間を誘発することもある。IC方法の実行は、特に運動の間邪魔し、運動によって突発したDH(「運動性呼吸困難」)の測定値は、他の態様のDHの測定値よりもおそらくひどくなるであろう。
【0007】
従来技術は、患者がほとんど或いは全く注意を要することなくDHを測定するためのシステム及び方法を欠いている。そのような方法及びシステムは、例えばCOPDや他の肺疾患を評価し及び取り扱う際に役立つでしょう。
【0008】
多数の参考文献が本明細書において引用されているが、それらの全ての開示は、全ての目的のために参照することにより、本明細書中においてそれらの全体に組み入れられる。さらに、これらの参考文献はいずれも、上記でどのように特徴付けられたかに関わらず、本明細書で特許請求された主題の発明に先行するものと認められるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、患者に押し付けがましくなく患者の動的過膨張(DH)を評価する方法及びシステムを含み、それらは、患者による注意をほとんど或いは全く必要とせず、また好ましくは非観血的であり、患者に通常の日常活動を行うことを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
DHは、患者の疾病経験の重大な要因となる可能性があるため、本発明を用いてDHを追跡し及び管理することは、閉塞性肺疾患(OPD)患者のクオリティ・オブ・ライフの向上に役立つ可能性がある。OPDの患者には、例えばCOPD、慢性気管支炎、肺気腫、慢性及び急性喘息、及び同様の生理学的効果を伴うその他の疾患といった閉塞性肺疾患の患者を含む。
【0011】
本発明は、DHの有無及びその量(例えば、動的に保持された空気の容量)が今までになく新しい呼吸パラメータの組み合わせによって評価できるという発明者の発見に基づく。より詳細には、1回呼吸量に対する胸郭中央部の貢献(百分率で測定する場合、M%RC)及び呼気終末肺容量の変化の絶対値の中央値(MqdEELV)の変化のパターンは、DHを確実に検出できる。呼吸需要が増加する期間中(例えば運動中)、これらのパラメータは、DHの症状がない通常の患者においては、しばしば両方とも増加する。他の通常の患者においては、これらのパラメータの一方は変化し他方は変化しない場合もあれば、これらのパラメータのいずれも変化しない場合もある。対照的に、呼吸需要が増加する期間中にDHを経験するOPD患者においては、MqdEELVが増加する一方でM%RCが減少するといった、異なる独自のパターンを示す。これらMqdEELV及びM%RCの変化の異なるパターンは、DHを経験する患者とそうでない患者とを確実に識別する。本明細書で使用されたように、2つの条件で観察されるその値、若しくは、その値の平均値、中央値、最頻値又はその値の他の統計基準が統計上意義のある程度に異なる場合、パラメータは、「変化」(又は「増加」若しくは「減少」)する。
【0012】
本発明は、この発見を実行する方法及びプログラミングされたコンピュータ・システムを提供する。これらの方法及びシステムは、MqdEELV及びM%RCを測定するのに充分な呼吸データを受信し、このデータを処理し、DHの有無の評価及び任意にその量を出力する。本発明者の各種の好適な実施例は、多かれ少なかれ、特に、例えば病院環境、臨床環境、外来環境、研究室環境及び同種のものの異なる患者測定環境に向けられる。具体的には、これら各種の実施例は、これらの異なる環境に設置された異なる呼吸センサーから呼吸データを受理するように適合させられ、また、携帯が制限されたコンピュータから患者による持ち運びが可能な携帯型コンピュータまで、これらの異なる環境に設置された様々なタイプのコンピュータ上で実行される。
【0013】
好適な一実施例は、外来患者に向けられる。本明細書で使用される「外来の環境」(又は「外来」)とは、患者に実質上強制によらない方法で通常の日常活動に従事することを可能にする環境を意味するものと解される。本実施例において、呼吸データは、快適に装着可能なアイテム上に構成された、及び/又は、そのアイテムに収容されたセンサーを使って測定される。好適な呼吸センサーは、プレチスモグラフ技術、詳細には磁気プレチスモグラフ技術を用いて、患者の胴体のサイズを、1以上の平面、例えば胸郭平面及び/又は腹部平面、で測定する。データは、少なくともセンサー・データから1回呼吸量(V)を抽出し次にV・データからMqdEELV及びM%RCを測定する、患者によって持ち運び可能な携帯型処理装置又はリモート・コンピュータ・システムのいずれかによって処理される。次に、後者2つのパラメータに依存してDHが評価される。処理された呼吸データ及び/又は生の呼吸データは、患者に重大な制限がほとんど又は全くない状態で通常の活動を可能にする手段を用いて、ローカル装置からリモート・システムへと送信されるのが好ましい。例えば、データは無線で送信するか、又はコンピュータ読み取り可能媒体で物理的に転送することが可能である。
【0014】
具体的に、「プレチスモグラフ」及びその派生語は、本明細書では、身体部分のサイズの外面的に測定された(非観血)測定を示す。また、「磁気プレチスモグラフ」は、本明細書では、身体部位に配置されたインダクタンス又は導電性要素の相互インダクタンスの測定に基づくプレチスモグラフ測定である。「プレチスモグラフ信号」は、プレチスモグラフにより生成された信号であり、通常は磁気プレチスモグラフによって生成された信号である。プレチスモグラフによって測定された身体部位には、胸部、腹部、頸部、腕部、又は同種のものの1つ以上の一部を、単独で又は組み合わせて含んでもよい。
【0015】
本発明はまた、プロセッサに本発明の方法を実行させるためのコード化された命令、及び/又は、これらの方法で使用される生データ又は処理済データによって構成される長期記憶及び携帯用記憶の両用のコンピュータ読み取り可能媒体も含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の具体的な実施例は、以下の詳細な説明、添付の請求項、及び添付の図面によって十分に理解されるであろう。
【0017】
以下及び本出願全体において、ただ明快さと利便性のためだけに見出しが使用されるが、これにより本発明の範囲を変更し又は狭める趣旨ではない。
【0018】
[動的過膨張]
この項では、本発明を記載し及びサポートするのに有用な肺機能に関する既知の態様についての簡単な説明を提供し、より詳細には、呼吸器の仕組み及び呼吸器容量の態様を提供する。
【0019】
図1A1乃至図1A4は、呼吸器の解剖学的構造及び仕組みについての態様を示す。図1A1及び図1A2は、吸気中の胸郭の側面図及び断面図を示す。図1A3及び図1A4は、呼気中の胸郭の側面図及び断面図を示す。胸郭に直接作用する呼吸筋は図示されず、横隔膜23のみ図示される。まず図1A1及び図1A2を参照すると、吸気中の呼吸筋は、胸郭を位置11へと持ち上げ且つ拡張させ、横隔膜を位置15へと下ろす。次に図1A3及び図1A4を参照すると、呼気中、呼吸筋は弛緩し、組織弾性及び受動的萎縮は、胸郭が位置19と接触し横隔膜が位置21へと上昇することを可能にする。その結果、胸郭サイズ(RC)の測定値は、吸気中に増加し呼気中には減少する。これは、胸郭と等長矢印13(図1A1及び図1A3)との関係から十分理解することができる。同様に、腹部(AB)サイズの測定値は、吸気中に増加し呼気中に減少する。これは、腹部と等長矢印17(図1A2及び1A4)との関係から十分理解することができる。
【0020】
RC及びABサイズ測定(又はそのどちらか単独で)は、例えば一回呼吸量等の様々な肺容量を測定するために、2区画呼吸モデルに従って線形に組み合わせることが可能であり、様々な肺容量の5〜10%以内がスパイロメーター(最新の測定基準)を用いて測定されたものである。さらに、胸郭サイズ及び腹部サイズの変化の測定値を測定された肺容量と比較すると、個人のどの位の変化が胸郭運動に起因するのか、及び、横隔膜運動に起因するのかを判定することが可能である。
【0021】
吸気及び呼気が、容量範囲の中央部、およそそれらの最小値と最大値との中間部分の胸部容量で起こる時、肺容量の任意の変化は、直線的又は呼吸筋運動(胸壁及び肺の弾性に反して働く)に応じた量を必要とする。すなわち、これらの容量範囲では、肺コンプライアンスは、分時呼吸量(VE)がほぼ直線的に且つ呼吸筋作用に応じて増加するように、略一定となっている。しかしながら、図1A1及び1A2からもわかるように、胸部容量及び肺容量の範囲の上部すなわち最大値付近で呼吸がされる場合、各呼吸は、既に拡張した胸郭11をさらに拡張させ、既に下がった横隔膜15をさらに下げざるを得ない。これは、機械的及び弾性的に不利であり、各呼吸は、非直線的で且つ呼吸筋運動に不釣合いなより大きな量を必要とする。この減少する肺コンプライアンスによって、ますます大きな運動とVEを増加させることが要求される。
【0022】
次に、図1B−Cは、機能的肺容量の関連態様を図式的に(縮尺せずに)示したものである。まず図1Bを参照すると、全肺気量(TLC)とは、肺における空気の総容量であり、残気量(RV)とは、最大限の呼出努力の後に肺に残留する空気の総容量であり、機能的残気量(FRC)とは、1回呼気の後に肺に残留する空気の総容量である(代わりに、TLCは、しばしば有意な空気交換のない死容積を含むようにも定義される)。これらの容量の測定は、一般的に、例えば、体プレチスモグラフ法又はガス希釈法といった扱いにくい技術を必要とする。
【0023】
この残留肺容量は、正常な呼吸の間は比較的容易に測定される。肺活量(VC)とは、最大吸気から最大呼気に至るまでの呼気容量である。正常な呼吸は、1回吸気終末肺容量(EILV)及び1回呼気終末肺容量(EELV)を定義し、さらに、これらの容量の差は、1回換気量(V)を定義する。最大吸気量(IC)、吸気予備量(IRV)及び呼気予備量は、そのとき図示のようにVC及びV(安静時又は運動時)から測定することが可能である。より詳細には、ICは、通常の呼気から最大吸気に至るまでの吸気容量であり、EELVに比例して変動する。
【0024】
図1Cは、例えば運動時に起こる、増加した呼吸需要に対する正常な被験者の反応を示す。主要な反応はVを増加させることであり、二次的な反応は呼吸頻度を増加させることであるが、これは通常、呼吸需要の高いレベルでのことである。正常な被験者は相当なIC及びIRVを有することから、Vは、EELVを変化させずに、単により深い吸気を行うことによって容易に増加する。健康な被験者はまた、VC及びERVの可能な限りEELVの減少を示す。これらの吸気容量の増加(及び呼気容量の増加も)は、TLCの中間領域、例えばTLCの20%乃至60%間で起こる。この領域において、呼吸システム・コンプライアンスはほとんど一定で、呼出努力の増加は、V及びVEを、実質的に直線的又は比例的に増加へと導く。
【0025】
COPD、及び同様の生理的障害に至らしめるその他の肺疾患は、増加した呼吸需要に対する正常な呼吸反応を、劇的に損なう可能性がある。図1Dは、末期COPD患者について示している。この患者の換気予備量は、気流制限、不完全呼気肺、及びそのような患者がなる換気がほとんどない肺の部分内における呼気されない静的エアー・トラッピングによって、劇的に減少する。安静時(例えば、図1Dの10L/min近傍での換気に該当する。)、肺の略70%は、自発呼吸及びガス効果がもはや不可能である。TCLの略20%のみが、予備換気量、VC、IC、及びERVのために残され、これらは、必要時にVを増加させるために使用できる。また、自発肺容量及び換気肺容量が上方へ移動し全肺容量に近づくにつれ、呼吸コンプライアンスは減少する。VE及びVの増加は、ますます多くの呼吸努力を必要とし、また、呼吸は、ますます疲れさせる。OPDはまた、気道抵抗を増加させることによって呼吸仕事量を増加させる。よって図1Dに示す患者は、(例えば、運動などの)呼吸需要に応じてVEを実質的に増加させるという正常な被験者の能力を失う。
【0026】
慢性化することに加えて、エアー・トラッピングは、例えば運動中に生じるかも知れないのと同じくらいVEを増加させる患者の試みといった様々な増悪因子によって、ひどく悪化させ且つ増加させる可能性がある。これは、図1C及び図1D中のEELV及びICの過程を比較することで理解できる。正常な被験者では、VE増加時にEELV及びICが実質上変わらないことを、図1Cは示している。従って、換気残留量、又は換気の増加に役立つ肺容量は損なわれず、Vの増加に役立つように残される。しかしながら、図1Dに示されるように、OPD患者においては、VEがより控えめに増加する間にEELVはさらに増加しICはさらに減少する可能性がある。ここにおいては、換気残留量は悪化し、Vの増加に役立たない。実際に、Vの増加可能性は非常に限られることが理解される。しかしながら、VEが増加する間、EELV及びICが実質的に一定であれば、患者の換気残留量は、既に非常に限られてはいるが、少なくともさらに悪化せず、V従ってVEを増加させるために完全に利用される可能性があることが、図1Dからまた明らかである。このOPDの付加的な効果は、エアー・トラッピングの動的増加に起因するにも関わらず、「動的過膨張(DH)」として知られる。増悪因子が止まった後、肺容量は前回の値に戻るため、DHは動的である。
【0027】
DHの発生及び程度は、様々である。DHの測定要素には、肺基準過膨張、呼気流制限、換気需要、及び呼吸パターンが含まれる。DHの発生もまた様々である。DHは、いろいろな患者において、例えば、運動、肺感染、感冒、アレルゲン等の異なる原因によって突然引き起こされる。エアー・トラッピングは、0.1L以下から0.3Lまで、さらには1.0L以上の範囲にまで及ぶ可能性があり、絶対容積は、患者に残された肺機能と比較されなければならない。たった0.1から0.2Lの追加のエアー・トラッピングであっても、既に実質的に換気予備能の全くない状態で呼吸している個人を著しくに危険にさらすかもしれない。
【0028】
従って、DHは、患者が換気を増加させるために予備量を必要とするまさにその時に予備量をさらに減少させるため、患者の基礎疾患をさらに悪化させるように作用する。これらの状況において、特に運動中、OPD患者は、呼吸困難、息切れ、及びその他の不快感の増大を体験するかもしれない。このため、OPD患者のDHの追跡及び管理は、患者の機能的能力及びクオリティ・オブ・ライフを守るのに役立つかもしれない。
【0029】
[動的過膨張の測定]
この項では、非観血的に且つ押し付けがましくなく動的過膨張を測定するための本発明の新しい技術及び方法について述べる。これらは、運動中又はその他の増悪因子の後に生じる特定の2つの呼吸パラメータの共同の変化についての特定のパターンを見つけることによって、DHの有無、及びその量(容量)の表示を確実に測定することができるという発見に基づく。一方で、他方のパラメータから分離されたこれらのパラメータのうちの1パラメータだけでは、DHは確実に測定できない。
【0030】
この2つの重要なパラメータは、「中央値%胸郭(M%RC)」及び「呼気終末肺容量の中央値累積変化(MqdEELV)」として知られる。これらのパラメータ及びその測定は、以下に記述される。まず、M%RCは、各呼吸に利用可能なパラメータであり、胸郭の伸縮に起因する呼吸の相対的な部分を測定する。呼吸の残存部分は、上述したように、横隔膜の収縮及び弛緩に起因する。図2は、典型的なデータを例示する。グラフ45は、連続する呼吸の1回換気量(V)を示し、各呼吸は、上昇する吸気部分及び下降する呼気部分を有する。グラフ47は、胸郭容量において同時に起こる関連した変化を示し、グラフ49は、腹部容量で同時に起こる関連した変化を示す。各呼吸において、%RC(百分率RC)は、対応するグラフ45における振幅に対するグラフ47における振幅の比率である。
【0031】
M%RCとは、1回換気量又はそれと同等の値及び胸郭サイズ又はそれと同等の値を含む呼吸の測定値から判定することが可能であり、1回換気量に対する胸郭サイズの変化の加重比及び/又は標準比である。好適な実施例において、呼吸データは、RCとして知られる胸郭サイズとABとして知られる腹部サイズについての、非観血的で、押し付けがましくない、瞬時毎の測定値を含む。その場合、1回換気量が次の式から確実に判定できるように、適切な加重値α及びβを選択することが可能である。
【数1】

%RC(百分率RC)は、その時、次の式で表される。
【数2】

M%RCは、連続する30秒、又は1分、又は2分、又は他の期間中に生じる呼吸について測定される%RCの統計上の中央値である。その他の実施例において、Vは、AB及びRCの線形機能又は非線形機能から交互に測定することが可能であり、また、代わりの統計的測定(例えば平均)が、連続する期間中の%RCの値を表すために使用されることが可能である。
【0032】
次に、MqdEELVを発見するためには、EELVの変化の事前測定が必要となる。EELVの変化のパターンは、十分であり、本発明に係る方法は、EELVの絶対値を必要としない。好適な実施例において、EELVの変化は、各呼吸の呼気容量に対する吸気容量を比較することによって呼吸毎に測定される。図3は、好適な実施例を示す。グラフ31は、Vを図式的に(縮尺せず)表し、4つの例示的な呼吸を含み、呼吸36、呼吸40、呼吸42が具体的に特定されている。呼吸36は、前の呼吸の呼気終末から呼吸36の吸気のピークまでで測定される吸気容量35と、呼吸36の吸気のピークから呼吸36の呼気終末までで測定される呼気容量37とを有する。吸気容量35は、呼気容量37よりも大きいため、呼吸36は、これらの容量の差によってEELVを増加させる。EELVは、グラフ33によって表され、このグラフは、ステップ39において呼吸36に起因してEELVが増加することを描写している。呼吸40も同様であり、吸気容量39は呼気容量41よりも大きく、また、グラフ33は、ステップ43でこのEELVが増加することを表す。
【0033】
従って、EELVについてのグラフ31は、呼吸36で量39まで、呼吸40で量43まで、及び呼吸42でさらなる量まで、逓増する。これら3つの呼吸の間に、EELVは、量45まで累積的に逓増する。実際の呼吸データでは、EELVは、増加及び減少のいずれもが可能であり、この期間に対するEELVの累積変化は、その期間中の全ての増加及び全ての減少を累積する。最終的に、MqdEELVは、連続する30秒、又は1分、又は2分間、または他の期間中に行われたEELV測定における多数の累積変化のうちの絶対値の統計上の中央値である。他の実施例において、MqdEELVの変化は、2以上の呼吸の吸気容量又は呼気容量の線形又は非線形組み合わせによって測定することが可能である。また、EELV変化は、移動平均又は同種のものによって累積することが可能である。また、代替統計手段(例えば、平均)は、連続する期間中のEELVの変化を特徴付けるために使用することが可能である。
【0034】
一旦これらのパラメータが測定されると、M%RCの減少とともにMqdEELVが増加するため、本発明の方法は、刺激する出来事(例えば、運動、感染等)に応じて空気を動的にトラップする患者を識別する。本明細書ではそのような患者を、「+DH」と表す。動的に空気をトラップしない、「−DH」と表される患者においては、MqdEELV及びM%RCは、このパターンを呈しない。そのような患者においては、MqdEELVが減少するか、又はMqdEELV及びM%RCが共に増加する。
【0035】
図4及び図5は、これらの2パターンを示す。これらの図において、中央値は、垂直のグリッドラインの間隔のおおよそ1つ及び1つ半に等しい時間について測定される。図4は、運動中のMqdEELV及びM%RCの共同変化の正常なパターンを示す健康な、−DHの被験者を示す。この患者は、おおよそ1分間に70回(bpm)から170回超に心拍数が増加することから分かるように、かなりの運動能力を有する。この運動期間中、M%RCがおおよそ40%からおおよそ50%に微量に増加する一方、MqdEELVは安定している。このパターンは、胸郭筋及び横隔膜をおおよそ同じくらいの割合で使用して1回換気量を増加させることによって、分換気が増加する正常な運動反応を反映している。エアー・トラッピングは顕著でない。別の普通の正常なパターンは、胸郭筋の相対的に増加した使用によるM%RCの相対的にわずかな増加と共に、いくぶん大きな呼気によるMqdEELVの相対的にわずかな減少である。また正常パターンは、意味がないか又は減少するM%RCの変化を伴う、MqdEELVのわずかな増加を示す場合がある。
【0036】
図5は、閉塞性肺疾患(本明細書ではCOPD)の被験者を示す。まず、この被験者の運動耐性は、分換気を増加させる彼らの能力の限界に起因して減少する。これは、本明細書においては、既に高揚した安静時の心拍数からおおよそ20bpmのみの心拍数の増加として示されている。次に、MqdEELVは、おおよそ140mlとかなり増加し、M%RCは、おおよそ正常レベルの40%超からかなり低下した16%より下へ落ち込むほど、さらに著しく減少する。これらの変化は、動的なエアー・トラッピングと一致する。MqdEELVの増加は、エアー・トラッピングの増加と換気に利用できる容量の減少を反映する。M%RC著しい減少は、既に過膨張した肺における、さらなる生理的に重要な動的エアー・トラッピングを反映する。過膨張した肺でさらにトラップされた空気は、胸郭収縮を制限し、さらには既に異常に減少した肺コンプライアンスを減少させる。両因子は胸郭筋の機械的効率を減少させ、また、減少するM%RCはこれらの筋肉が換気を維持する余分な努力が今できないことを示す。
【0037】
表1はさらに、増加するMqdEELVと減少するM%RCの新たなパターンが−DH患者と+DH患者とをどのように区別するのかを示す。
【表1】

【0038】
この表は、15名の患者についての研究から得られたデータをまとめたもので、ある者は標準的な測定技術によってDH有りと確認され、またある者は標準技術によってDH無しと確認されている。MqdEELV及びM%RCにおける変化は、各患者ごとに測定された。+DH患者は増加するMqdEELV及び減少するM%RCのパターンを示し、一方−DH患者が別のパターンを示すことは容易に明白である。
【0039】
さらに好適な実施例では、MqdEELV及びM%RCの値は、特定の患者の母集団のための統計パターン認識技術によって各母集団の−DHから+DHを明確に区別する識別変数として発展するモデルを用いて、組み合わされる。さらに、DHの存在及び量が両方とも測定できるように、これらの識別変数は、DHの量(mlでの)が変数の値と関連するように選択することできる。その他の実施例は、統計技術以外で開発されたモデルを使用し、さらなる変数(例えば運動の強度又はその他の誘因の強度のような)を組み込むことが可能である。
【0040】
[本発明の好適なシステム及び方法]
本発明の実施に適した好適なシステム及び方法を、次に記述する。
【0041】
本発明は、少なくとも瞬時毎のVデータとVに対する胸郭の寄与が測定できる呼吸データが利用できる限り、多数の異なる患者観察環境で実践することが可能である。例えば、本発明は、病院環境、臨床環境、又は研究所環境で実践することが可能であり、また、これらの環境で利用可能な呼吸センサーからのデータを利用することができる。そのようなセンサーは、例えばスパイロメータ測定装置、体プレチスモグラフ、及び同様の装置を含み、多くの場合携帯用でなく、患者の動きを制限し又は妨げる可能性があるが、より高い測定精度を提供する。これらの環境はまた、多くの場合、例えば、DHを促進するための段階的な刺激を提供する単調な運動および同種のものを提供する。本発明はまた、患者が日々の活動を行う(本明細書では「外来環境」と称する)間に、患者の日々の環境で実践することが可能である。そのような実施例において、本発明は通常、携帯型で、軽量で、非観血性であり患者の動き又は活動を制限しないように配置及び構成された呼吸センサーからのデータを処理する。外来環境における実践が好適であり本明細書に詳述されているが、これは、本発明の幅広い適用可能性を限定するものと理解されるべきでない。
【0042】
外来環境のために、呼吸センサーは、例えば、少なくとも胸郭又は腹部の長さ、外周、直径、又は幾何学的に類似の尺度及び呼吸中の瞬時毎のそれらの変化といった、身体サイズの徴候に好ましく反応する。既に記述したように、胸郭及び腹部サイズ測定から、瞬時毎のVとVへの胸郭の貢献とを測定することができる。1つ以上の追加の胴体又は四肢の断面面でのそのようなセンサー(「サイズ・センサー」と称する)は、心臓及び大動脈の拍動、静脈及び動脈の脈拍及び同種のものに反応する追加データを提供することができる。
【0043】
サイズ・センサーは、磁力計、磁力を用いるひずみ計、機械的又は光学的手段(光学技術は、干渉分光法、電気的インピーダンス、電気的又は磁気的表面活性を含む)、体プレチスモグラフ法、体壁動作又は体直径の超音波及びドップラー測定等を含む、多様な技術に基づくことができる。好適なサイズ・センサーは、磁気プレチスモグラフ(IP)技術を基礎にし、測定される解剖学的な部位に配置される1つ以上の導電素子(金属又は非金属の)の自己インダクタンスを測定することによって解剖学的サイズに反応する。つまり、IPセンサー自己インダクタンスは、基礎をなす身体部位に応じてそのサイズが変化するように変化する。その変化する自己インダクタンスは、可変の周波数発振器/復調器モジュールによって感知される。これらのモジュールは、発振器周波数及び最終的にはセンサー・サイズに応答するデジタル信号を出力する。IP技術によって得られた呼吸測定値は、規定どおりに、現在の臨床標準である肺活量法によって得られた測定値の5〜7%(または10ml台)以内にある。
【0044】
IP技術は、米国特許第6,551,252号、第6,413,225号、第6,047,203号、第6,341,504号、第5,331,968号、第5,301,678号、第4,807,640号、第4,373,534号及び第4,834,209号、さらにまた、米国特許出願第10/822,260号を含む本出願の譲受人に譲渡された特許出願又は登録特許に記載されている。本明細書に引用される全ての特許及び公開米国出願は、全ての目的のためにその全体を参照することにより、本明細書中において具現化される。
【0045】
追加センサーは、DHが発症するとわかった時に前後関係を記録するために有利である。例えば、観察される患者に機械的に接続された加速度計は、活動レベル及び姿勢を反映するデータを提供することができる。血中酸素飽和用センサーは、DHを併発するあらゆる不飽和を反映するデータを提供することができる。他のセンサーは、皮膚コンダクタンス、電気インピーダンス、体温、センサー、超音波及び同種のものを反映するデータを提供することができる。
【0046】
呼吸データ又はその他のセンサー・データは、観察される患者から、本発明の方法のプログラム化された実施態様による処理および分析用の処理装置、又はコンピュータ、若しくはコンピュータ・システムに伝達される。患者が束縛される場合、センサーは、ケーブル等の処理システムに直接結合することができる。患者が外来環境のように束縛されない場合、被験者によって持ち運びされる携帯型処理装置又はコンピュータ(「携帯用データ・ユニット」又は「PDU」と称する)がセンサー・データを受信することが好ましい。ある実施例において、PDUはまた、分析用のリモート・コンピュータにデータを一時的に格納及び/又は送信する。外来環境において、データ送信は、被験者を制限することがなく、例えば無線通信、又はコンピュータ読み取り可能な媒体の物理的輸送又は同種のものであってもよい。その他の実施例において、PDUはまた、本発明の方法を実行する。
【0047】
外来環境のために、呼吸センサー及び他のセンサーは、実質的に運き又は活動を制限しないように、患者に控え目に且つ心地よく構成されるのが好ましい。一例として、センサーは、例えばシャツ、ジャケット、ベルト、記章及び同種のもといった1つ以上の装着型アイテムで構成することができる。図6A〜図6Cは、装着型アイテムで構成されるセンサーを有する外来用観察システムを例示的に示す。
【0048】
図6Aの被験者は、単一の胸ベルト71及び腕時計として構成されたPDU73による同時観察によってのびのびと活発に運動している。この単一のバンドは、呼吸に敏感に反応するサイズ・センサーを組み込むのが好ましく、またさらに加速度計、ECGセンサー、体温センサー等を組み込むこともできる。図6Bは、胸郭(RC)及び腹部(AB)サイズに対し敏感に反応することが好ましい2つ(又はそれ以上)のサイズ・センサー77、2本のECGリード線及び任意の追加センサー(図示せず)を含む、数種類のセンサーを有するシャツ様の衣類75を示す。ここで、PDU81は、データを表示し且つユーザの入力を受け取ることができる。図6Cは、呼吸数及び呼吸容量、静脈及び動脈の脈拍、心臓の拍動、個人の肺機能及び同種のものを測定するためのより広範囲に配列されたサイズ・センサー85を装備したボディスーツ様の衣類83を示す。ここでは、PDU87は、上記衣類に付けられ、記憶及び分析システムへのセンサー・データを検索し、無線で送信する。観察用衣類及びシステムは、カリフォルニア州ヴェンチャーのヴィヴォメトリック社から入手可能である。
【0049】
センサー・データは、PDUの処理装置によって、部分的に又は完全に処理することができる。ある実施例においては、処理済データ及び/又は生データもまた、リモート・コンピュータ・システムに送信される。図6Dは、未処理及び処理中のセンサー・データを見るための付属モニター付きのPC型又はワークステーション型のコンピュータ91を含む例示的な分析システムを示す。データ89は、例えば、無線接続、物理的な転送又は有線接続によって、システム91に伝えられる。ローカルの又はリモートのオンライン・コンピュータ読み取り可能記憶装置93と、着脱式コンピュータ読み取り可能記憶装置95(例えば、光学ROM)は、未処理及び/又は処理済の、データ及び/又はプログラム及び同種のものを保持する。
【0050】
本発明の方法は、一般的に、コンピュータ又は他の処理装置によって実行される。従って、これらの方法は、例えばアセンブリ言語、C言語またはC++言語のような便利なコンピュータ言語でプログラミングされ、実行可能な形式にコンパイルされ、コンピュータのプログラムメモリ又はプログラマブルデバイスのコンフィギュレーションレジスタ及び同種のものへロードするためにコンピュータ読み取り可能媒体に記憶される。図7は、これらの方法の典型的な実施例を示す。これらの図示されたステップは、多数のDH評価を行うために、要求に応じて、又は断続的に又は周期的に繰り返すことができる。
【0051】
ステップ101において開始された後、次のステップ103では、現在の観察データ及び任意の比較測定データを、測定し、及び/又は検索し、及び/又は入力する。DHは、慢性過膨張、基準(BL)過膨張に急激に併発された追加の過膨張である。現在のDHの発作の程度又は重大性を評価するために、BL過膨張を測定した利用可能な比較データを持つことは、従って有利である。比較データは、過去のDHの発作中のMqdEELV及びM%RCの値又は組み合わせと、MqdEELV及びM%RCの多数の所見の統計分布とを含むことができる。MqdEELV及びM%RCの値は、特定の増悪因子、残留空気量及び同種のものに起因する。
【0052】
万一、入力データがRCサイズ及びABサイズ測定を含んでいれば、ステップ105は、次に、これらの生の方法からIPとして知られる方法に従って、1回呼吸量(V)と1回呼吸量に対する胸郭の貢献とを抽出する。ステップ107は、MqdEELV及びM%RCを見つけるための前述の方法の実施例を実行する。最後に、ステップ109は、前述した区別に従って測定したMqdEELV及びM%RCパラメータから、DH、その有無と任意にその量又は容量を評価する。DHの重大性は、肺容量の増加、若しくは、比較データに提供された過去の値を考慮して測定されたその他ものから、評価することができる。
【0053】
確認ステップ111は任意であるが、DH評価の信頼性を保証し、及び/又は、向上させるために好適である。1つの単純な代替例では、MqdEELV及びM%RCパラメータの単一測定が、例えば、少なくとも30秒、又は少なくとも60秒、又は少なくとも120秒、又はそれ以上の長さの十分に長い測定期間から得られる。別の代替例では、DH評価は、これらのパラメータの2つ以上の独自の測定を統計的に組み合わせることによって測定されるMqdEELV及びM%RCの値を使用する。さらに別の代替例では、最終的なDH評価は、例えば運動等の増悪因子の個別の発生によって増悪された2回以上のDHの発病から、統計的に組み合わされる値によって測定される。値は、統計的に精度を向上させ且つエラーを限定するために、最頻値、中央値、平均及び同種のものを用いて組み合わせることができる。先のDH発病は、比較データで提供することができる。
【0054】
これらの実施例は、本発明のいくつかの態様の例とすることを意図されるため、本明細書において記載され及び特許請求された発明は、本明細書で開示された好適な実施例によって範囲を限定されるものではない。あらゆる同等の実施例は、本発明の範囲内になるように意図される。実際に、本明細書で示され記載されたものに加えての本発明の様々な変更は、前述の記載から、当業者に明白となるであろう。そのような変更は、添付の請求項の範囲内に収まるように意図される。
【0055】
多数の参考文献が本明細書において引用されているが、それらの全ての開示は、全ての目的のために参照することにより、本明細書中においてそれらの全体に組み入れられる。さらに、これらの参考文献はいずれも、上記でどのように特徴付けられたかに関わらず、本明細書で特許請求された主題の発明に先行するものと認められるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1A】A1〜A4は、態様又は呼吸器の解剖学的構造を示す。
【図1B】態様又は呼吸機能を示す。
【図1C】態様又は呼吸機能を示す。
【図1D】態様又は呼吸機能を示す。
【図2】測定された呼吸データを示す。
【図3】本発明におけるEELVの測定を示す。
【図4】正常な患者の呼吸データを示す。
【図5】OPD罹患患者の呼吸データを示す。
【図6】外来用モニタリング装置を示す。
【図7】本発明の方法を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当期の観察期間中に観察された呼吸データを受信し、
前記観察期間中に1回以上受信された前記データから、被験者の1回換気量(V)に対する前記被験者の胸郭(RC)の伸縮の相対的寄与を反映するパラメータ(M%RC)を測定し、
前記観察期間中に1回以上受信した前記データから、呼気終末肺容量(MqdEELV)における蓄積された変化を反映するもう1つのパラメータ(MqdEELV)を測定し、
測定された前記MqdEELVパラメータ及び測定された前記M%RCパラメータの両方に従って、前記観察期間中における前記被験者の動的過膨張(DH)を評価する
ことを特徴とする、被観察被験者の動的過膨張(DH)の評価をコンピュータよって実行する方法。
【請求項2】
前記観察期間は複数の細分期間を有し、各細分期間の前記M%RCパラメータ及び前記MqdEELVパラメータは、前記細分期間において受信された呼吸データからのみから測定される
ことを特徴とする、請求項1に記載のコンピュータによって実行する方法。
【請求項3】
前記観察期間中に前記M%RCパラメータ値が増加し且つ前記MqdEELVパラメータ値が減少する場合に、前記観察期間中にDHが存在する
ことを特徴とする、請求項1に記載のコンピュータによって実行する方法。
【請求項4】
当期の観察期間中の前記M%RCパラメータ値が前回の観察期間中の前記M%RCパラメータ値よりも大きく、且つ、当期の観察期間中の前記MqdEELVパラメータ値が前回の観察期間中の前記MqdEELVパラメータ値よりも小さい場合に、前記前回の観察期間に比べて前記当期の観察期間中にDHが存在する
ことを特徴とする、請求項1に記載のコンピュータによって実行する方法。
【請求項5】
前記前回の観察期間が、DHの不存在が認められている基準期間である
ことを特徴とする、請求項4に記載のコンピュータによって実行する方法。
【請求項6】
前記M%RCパラメータ値の測定が、VによるRCの伸縮によって呼吸容量を分割する
ことを備えることを特徴とする、請求項1に記載のコンピュータによって実行する方法。
【請求項7】
前記受信したデータが、前記被験者の前記RCの1つ以上の選択された位置でのサイズを備え、RC伸縮による呼吸容量が1つ以上のRCサイズに依存して測定される
ことを特徴とする、請求項6に記載のコンピュータによって実行する方法。
【請求項8】
前記MqdEELVパラメータの測定が、
呼吸毎の呼気肺容量(EELV)の変化を測定し、
複数の連続した呼吸毎のEELVの変化に依存して累積的なEELVの変化を測定し、
複数の累積的なEELVの変化の絶対値に依存して前記MqdEELVパラメータを測定する
ことを備えることを特徴とする、請求項1に記載のコンピュータによって実行する方法。
【請求項9】
呼吸毎のEELVの変化の測定は、前記呼吸の吸気容量から前記呼吸の呼気容量を減算する
ことを備えることを特徴とする、請求項8に記載のコンピュータによって実行する方法。
【請求項10】
前記受信したデータが、1つ以上の前記RCの位置及び1つ以上の腹部(AB)の位置を含む、前記被験者の胴体の1つ以上の位置におけるサイズを備え、
前記RCのサイズ及び前記ABのサイズを線形に組み合わせることによって瞬時毎の肺容量のパラメータを測定し、
吸気終末での肺容量パラメータと呼気終末での肺容量パラメータとの差に依存してVを測定する
ことをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載のコンピュータによって実行する方法。
【請求項11】
前記被験者には哺乳動物を含む
ことを特徴とする、請求項1に記載のコンピュータによって実行する方法。
【請求項12】
前記被験者は前記観察期間中に通常の日常活動を行う
ことを特徴とする、請求項1に記載のコンピュータによって実行する方法。
【請求項13】
プロセッサと、
前記プロセッサに動作可能なように接続されたコンピュータ読み取り可能な記憶装置であって、
当期の観察期間中に観察された比較呼吸データを受信し、
前記観察期間中に1回以上受信された前記データから、被験者の1回換気量(V)に対する前記被験者の胸郭(RC)の伸縮の相対的寄与を反映するパラメータ(M%RC)を測定し、
前記観察期間中に1回以上受信した前記データから、呼気終末肺容量(MqdEELV)における蓄積された変化を反映するもう1つのパラメータ(MqdEELV)を測定し、
測定された前記MqdEELVパラメータ及び測定された前記M%RCパラメータの両方に依存して前記観察期間中における前記被験者の動的過膨張(DH)を評価する手順を、前記プロセッサに実行させるコンピュータ命令で構成されたコンピュータ読み取り可能な記憶装置と、
を備えることを特徴とする、被観察被験者の動的過膨張(DH)を評価するためのコンピュータ。
【請求項14】
前記プロセッサ及び前記記憶装置は、前記被験者が容易に持ち運び可能な大きさに作られ且つ構成される
ことを特徴とする、請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項15】
前記観察期間は複数の細分期間を有し、各細分期間の前記M%RCパラメータ及び前記MqdEELVパラメータは前記細分期間において受信された呼吸データからのみから測定される
ことを特徴とする、請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項16】
前記観察期間中に前記M%RCパラメータ値が増加し且つ前記MqdEELVパラメータ値が減少する場合に、前記観察期間中にDHが存在する
ことを特徴とする、請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項17】
当期の観察期間中の前記M%RCパラメータ値が前回の観察期間中の前記M%RCパラメータ値よりも大きく、且つ、当期の観察期間中の前記MqdEELVパラメータ値が前回の観察期間中の前記MqdEELVパラメータ値よりも小さい場合に、前記前回の観察期間に比べて、前記当期の観察期間中にDHが存在する
ことを特徴とする、請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項18】
前記M%RCパラメータ値の測定が、VによるRCの伸縮によって呼吸容量を分割することを含み、
前記MqdEELVパラメータの測定が、
呼吸毎の呼気肺容量(EELV)の変化を測定し、
複数の連続的な呼吸毎のEELVの変化に依存して累積的なEELVの変化を測定し、
複数の累積的なEELVの変化の絶対値に依存して前記MqdEELVパラメータを測定することを含む
ことを特徴とする、請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項19】
被験者の、RCの1つ以上の位置及び腹部(AB)の1つ以上の位置とを含む胴体上の1つ以上の選択した位置であって前記胴体サイズが呼吸に伴って変化するように選択された位置におけるサイズを備えるデータを提供する1つ以上のセンサーを備える装着型アイテムと、
前記センサーに使用可能なように連結された携帯用データ・ユニットであって、
処理装置と、前記処理装置に使用可能なように結合されたコンピュータ記憶装置とを備え、
当期の観察期間中に観察されたセンサー・データを受信し、
前記RCサイズと前記ABサイズとを線形に組み合わせることにより測定された瞬時毎の吸気終末肺容量パラメータと、それに続く呼気終末肺容量パラメータとの差に従ってVを測定し、
M%RCパラメータの測定は前記Vによる前記RC伸縮に起因する呼吸容量の分割を備え、前記観察期間中に1回以上受信された前記データから前記被験者の1回換気量(V)に対する前記被験者の胸郭(RC)の伸縮の相対的寄与を反映するパラメータ(M%RC)を測定し、
前記MqdEELVパラメータの測定は呼気肺容量(EELV)の呼吸毎の変化の測定を備え、前記観察期間中に1回以上受信された前記受信データから呼気終末肺容量(MqdEELV)における累積変化を反映するもう1つのパラメータ(MqdEELV)を測定し、複数の連続的な呼吸毎のEELVの変化に依存して累積的なEELVの変化を測定し、さらに前記複数の累積なEELVの変化の絶対値に依存してMqdEELVパラメータを測定し、
前記測定されたMqdEELVパラメータ及び前記測定されたM%RCパラメータの両方に依存して前記観察期間中の前記被験者の動的過膨張(DH)を評価する手順を、前記プロセッサに実行させるコンピュータ命令で構成される携帯用データ・ユニットと、
を備えることを特徴とする、被観察被験者の動的過膨張(DH)を評価するための携帯用観察システム。
【請求項20】
前記装着型アイテムは、衣服及び/又はシャツ及び/又はベルトを備える
ことを特徴とする、請求項19に記載の携帯用観察システム。
【請求項21】
前記携帯用データ・ユニットは、持ち運びするために装着型アイテム又は被験者によって装着された衣類のアイテムに収容される
ことを特徴とする、請求項19に記載の携帯用観察システム。
【請求項22】
前記センサーは、1つ以上のプレチスモグラフ・センサー又は1つ以上の姿勢センサー及び/又は活動センサーを備える
ことを特徴とする、請求項19に記載の携帯用観察システム。
【請求項23】
前記携帯用データ・ユニットは、着脱式のコンピュータ読み取り可能な記憶装置にデータを格納する
ことを特徴とする、請求項19に記載の携帯用観察システム。
【請求項24】
前記携帯用データ・ユニットは、リモート・コンピュータへデータを無線で送信する
ことを特徴とする、請求項19に記載の携帯用観察システム。
【請求項25】
請求項1に記載の方法をプロセッサに実行させるためのコード化された命令
を備えることを特徴とする、コンピュータ読み取り可能媒体。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−540062(P2008−540062A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512586(P2008−512586)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/019683
【国際公開番号】WO2006/127573
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(507378525)ヴィヴォメトリクス・インク (8)
【Fターム(参考)】