説明

動線調査支援システム

【課題】導入や運営のコスト、手間を低減可能で、精度良い動線測定を可能とする。
【解決手段】動線観測域における基地局に設けられた複数のアンテナから無線送信されてくる位置標定信号を受信する位置標定信号受信部と、受信した前記各位置標定信号の位相差に基づき自身の現在位置を標定する位置標定部と、前記標定した現在位置を示す情報、当該情報の取得時刻の情報、および自身の識別情報を含んだ位置履歴情報を情報処理装置100に送信する履歴送信部とを具備する端末300と、前記端末300から前記位置履歴情報を受信して記憶部に格納し、前記取得時刻毎の位置履歴情報と、記憶部に予め保持している前記動線観測域のマップ情報とを照合して、動線観測域における端末位置の前記取得時刻毎の変遷履歴を動線情報として特定し、当該動線情報を出力部に出力する動線情報出力部を具備する情報処理装置100を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動線調査支援システムに関するものであり、具体的には、システムの導入や運営のコスト、手間を従来より低減可能で、精度良い動線測定を可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗等の商業施設を訪れる客に関して、どのように施設内を移動し、購買行動に至ったのかを調査・分析することは、店舗側の販売戦略を考える上で重要である。例えば、店舗内での客の動線が長いほど、客が特定エリアに滞在する時間が長く、また多くの商品を見ることになり、購買機会の増加すなわち客単価向上につながると言える。一方、客の動線が店舗の奥まで伸びずに入り口付近で留まるとすれば、その場所より店舗奥に配置された商品を客に知ってもらう機会は失われ、すなわち購買機会の逸失につながると言える。
【0003】
こうした「動線」に配慮した店舗では、例えば、入り口からフロアの外周に沿って購入頻度の高い商品等を連続的に配置したり、ポップ広告を活用して客を店奥にまで足を運ばせる工夫がされている。この客動線の改善を意図した工夫には、売り場レイアウトや商品陳列方法の変更も含まれる。
そこで、これら客動線に関する各種施策が、顧客の購買行動に与えた影響を検証するため、陳列棚や通路ごとにタグやセンサを設置し、顧客の動線把握を行うシステムが提案されている。こうしたシステムとして例えば、施設内を移動する移動体の正確な動線情報を生成するとの課題の下、次のようなものが提案されている。
【0004】
すなわち、移動体に付された無線IDタグと、施設内を区分することにより形成された複数の領域相互間の各境界位置に設置された複数のアンテナと、前記複数のアンテナのうちいずれかのアンテナを通過した無線IDタグから当該無線IDタグを示すタグ識別情報及び通過したアンテナを示すアンテナ識別情報を取得する通過情報取得手段と、前記タグ識別情報、前記アンテナ識別情報、及び、前記無線IDタグが前記アンテナを通過した時刻を示す通過時刻情報に基づいて、前記移動体の移動状況を示す動線情報を生成する動線情報生成手段と、を備えたことを特徴とする動線情報処理システム(特許文献1参照)である。
【0005】
また、店舗内で得られる様々な事象に関する情報を効率的に低コストで取得し、店舗やメーカーにマーケティングデータとして提供する、との課題の下、店舗内に無線LANアクセスポイントとRFIDタグの一方又は両方を設置し、前記無線LANアクセスポイントでショッピングカートに設けた無線LAN内蔵の装置の電波の受信強度を測定することにより前記ショッピングカートの位置を取得するか、又は前記RFIDタグの電波を前記ショッピングカートに設けたRFIDリーダで受信することにより前記ショッピングカートの位置を取得することの一方又は両方を行い、前記ショッピングカートの店舗内での動線をデジタルデータとして蓄積する店舗内動線把握システムにおいて、前記ショッピングカートの位置を取得するときに、その取得時刻に基づき始点と終点を判別し、前記始点から前記終点への移動速度が予め定められた基準値を外れたとき、前記始点と前記終点を取り除き、店舗内の棚などの通行不能の場所(以後「エリア」と表現する)に前記始点又は前記終点が位置したとき、当該エリアを対角線でくぎり、前記始点又は前記終点を最も近い対辺の外に移動させ、前記始点から前記終点への動線が前記エリアに重なったとき、前記動線を迂回させることにより修正する処理部を備えることを特徴とする店舗内動線把握システム(特許文献2参照)なども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−71252号公報
【特許文献2】特開2006−236146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タグやセンサ類を使用して動線把握を行う場合、対象エリア内に前記タグやセンサ類を緻密に設置すれば比較的正確に動線を把握することができる。しかしながら、タグやセンサ類を緻密に設置するコストや手間が大きい上、店舗レイアウト等を変更するたびにタグやセンサ類を設置し直す必要があるなど課題もある。また、無線LANを使用して低コストに動線把握を行う技術も想定されるが、測定誤差が大きくて客の動線を正確に把握することが難しいという問題がある。
【0008】
そこで本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、システムの導入や運営のコスト、手間を従来より低減可能で、精度良い動線測定を可能とする技術の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の動線調査支援システムは、動線観測域における基地局に設けられた複数のアンテナの夫々から無線送信されてくる位置標定信号を受信する位置標定信号受信部と、受信した前記各位置標定信号の位相差に基づき自身の現在位置を標定する位置標定部と、前記標定した現在位置を示す情報、当該情報の取得時刻の情報、および自身の識別情報を含んだ位置履歴情報を情報処理装置ないし基地局に送信する履歴送信部とを具備する端末と、前記端末から又は基地局を経由して前記位置履歴情報を受信して記憶部に格納し、前記記憶部に格納した前記取得時刻毎の位置履歴情報と、記憶部に予め保持している前記動線観測域のマップ情報とを照合して、動線観測域における端末位置の前記取得時刻毎の変遷履歴を動線情報として特定し、当該動線情報を出力部に出力する、動線情報出力部を具備する情報処理装置と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、前記動線調査支援システムの情報処理装置において、前記記憶部は、前記マップ情報として、動線観測域に所在する各商品、各商品の陳列器具、販売員、および販促器具の少なくともいずれかの所在位置情報を更に格納するものであり、前記動線情報出力部は、前記記憶部に格納した前記取得時刻毎の位置履歴情報と、前記動線観測域のマップ情報とを照合して、動線観測域における商品、陳列器具、販売員、および販促器具の少なくともいずれかと所定装置との位置関係の前記取得時刻毎の変遷履歴を動線情報として特定し、当該動線情報を表示装置に出力するものである、としてもよい。
【0011】
また、前記動線調査支援システムの情報処理装置において、前記記憶部は、動線観測域での商品、陳列器具、販売員、および販促器具の少なくともいずれかの所在位置の変化毎に世代を更新したマップ情報を保持するものであり、前記動線情報出力部は、前記記憶部に格納した前記取得時刻毎の位置履歴情報と、前記動線観測域の複数世代の各マップ情報とを照合して、前記世代毎の動線観測域における商品、陳列器具、販売員、および販促器具の少なくともいずれかと所定装置との位置関係の前記取得時刻毎の変遷履歴を動線情報として特定し、当該世代毎の動線情報を表示装置に出力するものである、としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、設置基地局等を抑制して、導入や運営のコスト・手間を従来より低減出来る上、顧客等の動線を高精度に把握することが可能となる。例えば、陳列棚、机などのレイアウト変更に際し、タグやセンサ類の位置替えが不要であり、余計なコスト・手間が生じない。
従って、システムの導入や運営のコスト、手間を従来より低減しつつ、精度良い動線測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】動線調査支援システム1の概略的な構成を示す図である。
【図2A】基地局200のハードウエア構成を示す図である。
【図2B】基地局200の機能を示す図である。
【図3A】カート300のハードウエア構成を示す図である。
【図3B】カート300の機能を示す図である。
【図4】位置標定信号のデータフォーマットを示す図である。
【図5】基地局200とカート300との位置関係を示す図である。
【図6】アンテナ群215を構成しているアンテナ2151とカート300との位置関係を説明する図である。
【図7】現場における基地局200とカート300の位置関係を示す図である。
【図8】位置標定処理(S1000)を説明するフローチャートである。
【図9A】情報処理装置100のハードウエア構成を示す図である。
【図9B】情報処理装置100の機能を示す図である。
【図10】本実施形態における位置履歴情報の例を示す図である。
【図11】本実施形態におけるマップ情報の例を示す図である。
【図12】動線情報の出力例を示す図である。
【図13】本実施形態における動線調査支援方法の処理手順例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
−−−動線調査支援システムの全体概要−−−
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態の動線調査支援システム1の概略構成例を示す図である。この動線調査支援システム1は、動線調査を行うシステムの導入や運営のコスト、手間を従来より低減可能で、なおかつ精度良い動線測定を可能とするコンピュータシステムである。この動線調査支援システム1は、動線調査対象である人物、例えばスーパーマーケット2=動線観測域内の客2Gが利用中のカート300(“端末”を付帯しており、以後、端末と同義とする)と、動線観測域の各所(スーパーマーケット2の天井や柱等)に設置される複数の基地局200、および店舗管理エリアなどに設置される情報処理装置100を含んでいる。ただし、動線観測域の例として本実施形態ではスーパーマーケット2をあげたがこれに本発明が限定されることはなく、動線観測を行う必要がある場所、状況であり、必要な装置類の設置が可能であればいずれの状況でも適用できる。
【0015】
基地局200は、専用線やインターネットなどの有線又は無線による通信網50を介して情報処理装置100に通信可能に接続している。通信網50を介した通信は、例えばTCP/IP等のプロトコルに従って行われる。情報処理装置100及び基地局200には、通信網50を介して通信を行うためのネットワークアドレス(例えばIPアドレス)が付与されている。カート300に付帯する端末は、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistance)、小型のパーソナルコンピュータ等である。
【0016】
前記動線観測域であるスーパーマーケット2では、前記カート300による買い物が可能であるよう必要な幅を備えた通路2Aが、商品3の陳列棚2B=陳列器具に面して張り巡らされている。また、商品の補充、整理、陳列、調理、実演販売等の各種業務を行う販売員2Dがスーパーマーケット内の所定箇所に配置され、客2Gへのサービス提供や販売促進活動等を随時行っている。販売促進活動などに際しては、例えば、商品の訴求を行うのぼり、看板、ポスター、映像や音声の再生・出力装置といった販促器具4も用いられるから、それらもスーパーマーケット2のいずれかの場所に配置されている。
【0017】
一方、前記カート300は、スーパーマーケット2内で買い物をする前記客2Gが、前記通路2Aに面して配置された前記陳列棚2Bから取り出した購入商品3を一旦収容し、レジ2Cまで運搬するための一般的なカートであるが、本実施形態においては動線調査支援実現のために必要な無線通信手段を具備した端末を備えている。一方、前記基地局200は無線信号を動線観測域内に送信し、前記カート300における位置標定を可能ならしめる。以下、この動線調査支援システム1に含まれる各装置について、その構成、構造等につき詳述する。
【0018】
−−−ブロック図−−−
図2Aは基地局200の構成を示すブロック図である。同図に示すように、基地局200は、CPU211、メモリ212、通信インタフェース213、及びアンテナ群215等を有している。CPU211は、メモリ212に記憶されているプログラムを実行し、基地局200が備える各種の機能を実現する。通信インタフェース213は、情報処理装置100との間で通信網50を介した通信を行う。無線通信インタフェース214は、後述する位置標定のための無線信号を送信する。
【0019】
アンテナ群215は複数の円偏波指向性アンテナ2151によって構成される(詳細は図6を参照)。CPU211、メモリ212、通信インタフェース213、及びアンテナ群215は、バス220を介して互いに通信可能に接続されている。アンテナ群215には切替スイッチ2152が併設されている。切替スイッチ2152はアンテナ群215を構成しているアンテナ2151のうちのいずれか一つを設定により又は自動的に選択して無線通信インタフェース214に接続する。
【0020】
図2Bに基地局200の主な機能を示している。通信部261は通信インタフェース213を制御して情報処理装置100と各種情報の送受信を行う。位置標定信号送信部263はカート300の現在位置の標定に用いられる無線信号(以下、位置標定信号と称する)を送信する。設定情報記憶部264は前述した設定情報を記憶する。
【0021】
図3Aにカート300のハードウエア構成を示している。同図に示すように、カート300は、CPU311、メモリ312、無線通信インタフェース313、指向性アンテナ314、RTC(Real Time Clock)等を用いて構成される計時回路317、RSSI回路216(RSSI : Radio Signal Strength Indicator)を有している。
【0022】
CPU311は、メモリ312に記憶されているプログラムを実行することによりカート300が備える各種の機能を実現する。計時回路317は、CPU311等からの要求に応じて現在時刻を生成/出力する。RSSI回路320は、無線通信インタフェース313によって受信される位置標定信号等の電波の受信信号強度を示す信号を生成して出力する。
【0023】
図3Bにカート300の機能を示している。同図において、位置標定信号受信部331は、無線通信インタフェース313により基地局200から送信される位置標定信号を受信する。情報送受信部332は、通信網50を介して情報処理装置100と通信し、ファームウエア等のカート300で実行されるプログラムやデータの更新情報の受信(ダウンロード)、及び情報処理装置100において用いられる各種情報についてのカート300から情報処理装置100への送信(アップロード)を行う。
【0024】
位置標定部334は、位置標定信号受信部331によって受信された位置標定信号に基づきカート300の現在位置を標定する。必要な場合には、標定されたカート300の現在位置は、無線通信によりカート300から基地局200に送信され、基地局200から通信網50を介して情報処理装置100に送信される。位置標定の具体的な仕組みについては後述する。位置標定部334によって標定されたカート300の現在位置を示す情報は、基地局200に設定された直交座標系(X軸、Y軸)で表現されたカート300の現在位置を示す情報(ΔX,ΔY)を含む。なお、カート300は、車輪や荷籠などの一般的なフレーム構造を当然有している。
【0025】
<位置標定機能>
動線調査支援システム1においてカート300の位置標定を行う仕組みは、基地局200と当該基地局200の周辺に存在するカート300とを含んで構成される位置標定システム10の機能によって実現される。
【0026】
前述した基地局200の無線通信インタフェース214は、アンテナ群215を構成している複数のアンテナ2151を周期的に切り換えながら、スペクトル拡散された無線信号を送信する。一方、カート300の位置標定信号受信部331は、アンテナ314によって基地局200の各アンテナ2151から送信される信号を受信する。尚、隣接基地局間の電波干渉を防ぐべく、各基地局200は、基地局200間で同期信号を共有することにより、隣接する基地局200から同時期に位置標定信号が送信されないように送信タイミングの調節制御を行っている。
【0027】
図4に基地局200から送信される位置標定信号のデータフォーマットを示している。同図に示すように、位置標定信号は、上述した同期信号611、場所コード612(UCODE)、アンテナ情報613、及び測定信号614を含んで構成されている。尚、同期信号611は、32bitのプリアンブル信号と16bitの同期信号の合計48bitのデータで構成される。
【0028】
場所コード612(UCODE)は、基地局200の設置場所を特定する情報である。場所コード612は統一基準に従って位置毎に割り当てられる128bitのコードからなる。
【0029】
アンテナ情報613は、アンテナ2151の高さやアンテナ2151の識別子、アンテナ2151の指向方向を示す16bitのデータ等で構成される。
【0030】
測定信号614は、カート300の存在する方向とカート300までの相対距離を検出するための信号を含み、基点となる4つのアンテナ2151を順次切り替えながら送信される2048チップの拡散符号を含む。
【0031】
図5はカート300を利用中の客2Gが、基地局200が設置された柱の側に存在する場合を示している。同図において、カート300は地上高1(m)の位置に存在し、基地局200は地上高H(m)の位置に設置されている。また基地局200の直下からカート300までの距離はL(m)である。
【0032】
図6に基地局200のアンテナ群215を構成している各アンテナ2151とカート300との相対的な位置関係を示している。基地局200のアンテナ群215を構成している各アンテナ2151は、例えば指向方向を斜め下方向に向けて設置されている。同図示すアンテナ群215は、3cmの間隔(この間隔は位置標定信号として2.4GHz帯の電波を用いた場合における1/4波長に相当)をあけて略正方形状に隣接配置された4つの円偏波指向性アンテナを有している。
【0033】
ここでアンテナ群215の高さ位置における水平方向とアンテナ群215に対するカート300の方向とのなす角をαとすれば、
α=arcTan(D(m)/L(m))=arcSin(ΔL(cm)/3(cm))
となる。但し、上式におけるΔL(cm)は、アンテナ群215を構成しているアンテナ2151のうちの特定の2基とカート300との間の伝搬路長差である。
【0034】
アンテナ群215を構成している特定の2基のアンテナ2151から送信される位置標定信号の位相差をΔθとすれば、上記ΔLは、
ΔL(cm)=Δθ/2π/λ(cm)
となる。位置標定信号として、例えば2.4GHz帯の電波を用いる場合は波長λ≒12(cm)であるので
α=arcSin(2Δθ/π)
となる。ここで測定可能範囲(−π/2<Δθ<π/2)ではα=Δθ(ラジアン)であるので、上式から基地局200が存在する方向を特定できる。
【0035】
次に上記結果を利用してカート300の位置を標定する方法について説明する。図7に現場における基地局200とカート300の位置関係を示している。同図に示すように、基地局200のアンテナ群215の地上高をH(m)、カート300の地上高をh(m)、基地局200の直下の地表面の位置を原点として直交座標軸(X軸、Y軸)を設定した場合における、基地局200からカート300の方向とX軸とがなす角をΔΦ(x)、基地局200からカート300の方向とY軸とがなす角をΔΦ(y)とすれば、原点に対するカート300の位置は次式から求められる。
Δd(x)=(H−h)×Tan(ΔΦ(x))
Δd(y)=(H−h)×Tan(ΔΦ(y))
原点の位置を(X1,Y1)とすれば、カート300の現在位置(Xx,Yy)は、
Xx=X1+Δd(x)
Yy=Y1+Δd(y)
として求められる。尚、以上に説明した位置標定の原理は、例えば特開2004−184078号公報、特開2005−351877号公報、特開2005−351878号公報、特開2006−23261号公報、及び特開2008−256559号公報等に開示されている。
【0036】
次にカート300の位置標定部334によって行われる、カート300の現在位置の標定処理(以下、位置標定処理S1000と称する。)の具体例について説明する。尚、現在位置の標定処理は、例えば情報処理装置100にカート300の現在位置を報告する予め設定されたタイミング等に随時実行される。
【0037】
図8は位置標定処理を説明するフローチャートである。同図に示すように、位置標定に際しては、まず位置標定部334が、RSSI回路320から位置標定信号受信部331によって受信される位置標定信号の受信信号強度を取得する(S1011)。次に位置標定部334は、前述した仕組により位置標定信号を用いてカート300の現在位置を標定し、更には計時回路317から得た時刻情報=取得時刻と、自身のカート識別情報とを対応付けて位置履歴情報を生成する(S1012)。そして位置標定部334は、生成した位置履歴情報を、履歴送信部336に引き渡す(S1013)。
【0038】
−−−情報処理装置の構成−−−
続いて、前記情報処理装置100が備える構成、および例えばプログラムに基づき構成・保持する機能部(手段)につき説明を行う。図9Aは情報処理装置100のハードウエア構成を示す図であり、図9Bは情報処理装置100の機能を示す図である。
【0039】
情報処理装置100は、例えばサーバ装置を想定することができる。この情報処理装置100は、プログラムや必要なデータベース類を格納したハードディスクドライブなどの記憶部101、記憶部101からプログラムを読み出す先となるメモリ103、プログラムの実行など各種制御を担うCPU等の演算装置104、ユーザ等の指示を受け付けるキーボード、マウスなどの入力装置105、動線情報の出力先であるディスプレイやスピーカー等の表示装置106、および前記基地局200と通信網50を介した通信を行う通信インタフェース107を備えている。
【0040】
また、情報処理装置100は、位置標定機能等の基地局200が機能を提供する際に利用する情報(以下、設定情報と称する)が含まれたマップ情報125を記憶した設定情報記憶部123を備えている。尚、前記設定情報は、基地局200の、動線観測域(ここではスーパーマーケット2の床面)の座標系における座標値、或いは緯度・経度・設置高さ等も含まれている。
【0041】
こうした情報処理装置100は、通信インタフェース107により通信網50を介して前記基地局200と通信するか、或いは、基地局200を介して前記カート300と通信して、位置履歴情報1800(現在位置を示す情報、当該情報の取得時刻の情報、およびカート300の識別情報を含んだ情報)を受信して記憶部101に格納する動線情報出力部111を備える。カート300は、現在位置を示す情報を取得する度に位置履歴情報1800を生成して、基地局経由で情報処理装置100に送信するとしてもよいし、位置履歴情報1800を一定時間メモリ等に蓄積しておいて定期的に蓄積情報を送信するとしてもよい。
【0042】
図10は本実施形態におけるカート300が基地局経由で情報処理装置100に送信してくる位置履歴情報1800の例を示す図である。カート300が情報処理装置100に送信してくる位置履歴情報1800は、現在位置を示す情報1801、当該情報1801の取得時刻の情報1802、およびカート300の識別情報1803を含んだ情報から構成されている。
【0043】
また、前記動線情報出力部111は、前記記憶部101に格納した前記取得時刻毎の位置履歴情報1800と、記憶部101に予め保持している前記動線観測域のマップ情報125とを照合して、動線観測域であるスーパーマーケット2におけるカート位置の前記取得時刻毎の変遷履歴を動線情報として特定し、当該動線情報を表示装置106に出力する。
【0044】
図11は本実施形態におけるマップ情報125の例を示す図である。一方、情報処理装置100が記憶部101で保持するマップ情報125は、動線観測域内たるスーパーマーケット2に設置されている各基地局200の識別情報125aと、スーパーマーケットの床面を座標平面とした場合の各基地局200の座標値125bと、商品3、陳列器具たる陳列棚2B、レジ2C、販促器具4、および販売員2Dの配置位置の各座標値125cとを含んでいる。また、このマップ情報125は、前記商品3、陳列器具たる陳列棚2B、販売員2D、および販促器具4の少なくともいずれかの所在位置の変化毎に世代情報125dを付して記憶部101に蓄積されていくものでもある。従って、マップ情報125には世代情報125dとして、例えばマップ情報の更新日時などが対応付けされている。
【0045】
そこで、前記動線情報出力部111は、前記記憶部101より、ある取得時刻1802の位置履歴情報1800を読み出し、この位置履歴情報1800の「現在位置を示す情報」1801を、前記マップ情報125(設定情報)に照合してスーパーマーケット2の座標平面上でのカート300の位置とする。この処理を、同一カート300について、各取得時刻に関して繰り返すことで、カート位置の変遷履歴=動線情報を特定することができる。
【0046】
動線情報出力部111は、この動線情報をディスプレイ等の表示装置106に出力することとなる。図12に動線情報の出力例を示す。出力する動線情報としては、例えば、スーパーマーケット2の床面の図(=座標平面となる)に、各基地局200、商品3、陳列器具2B、販売員2D、および販促器具4の各アイコン等を該当座標位置に配置し、前記カート300の動線、つまり座標値の変遷に応じた軌跡を描画したものを想定できる。
【0047】
なお、動線情報出力部111は、前記取得時刻毎の位置履歴情報1800と前記マップ情報125とを照合して、スーパーマーケット2における商品3、陳列器具2B、販売員2D、および販促器具4の少なくともいずれかとカート300との位置関係の、前記取得時刻毎の変遷履歴を同様に動線情報として特定し、当該動線情報を表示装置106に出力するとしてもよい。
【0048】
また、動線情報出力部111は、前記取得時刻毎の位置履歴情報1800と、前記マップ情報125の各世代分とを照合して、前記世代毎のスーパーマーケット2における商品3、陳列棚2B、販売員2D、および販促器具4の少なくともいずれかとカート300との位置関係の、前記取得時刻毎の変遷履歴を同様に動線情報として特定し、当該世代毎の動線情報を表示装置106に出力するとしてもよい。図12では、“2010/01”と、“2010/02”のそれぞれの動線情報を並べて表示している例を示した。
【0049】
なお、前記情報処理装置100における各機能部111は、RAMなどのメモリ103やHDD(Hard Disk Drive)などの適宜な記憶部101に格納されたプログラムとして実現してもよいし、ハードウェアとして実現するとしてもよい。各機能部がプログラムとして実現されている場合、情報処理装置100の演算装置104等がプログラム実行に合わせて記憶部101より該当プログラムをメモリ103に読み出して、これを実行することとなる。
【0050】
−−−動線調査支援方法のフロー−−−
以下、本実施形態における動線調査支援方法の実際手順について、図に基づき説明する。図13は本実施形態における動線調査支援方法の処理手順例を示すフロー図である。ここでは、カート300の位置特定等の処理については上述までの説明に譲り、主として情報処理装置100が実行する処理内容について説明する。想定する状況としては、スーパーマーケット2にて買い物に訪れた客がおり、この客がカート300(勿論、買い物カゴ等でもよい)を利用して店内で買い物を行う状況となる。スーパーマーケット2において用意されているカート300は、上述した本実施形態のカート300であって、基地局200からの無線信号を受信して自身の位置を示す情報=位置履歴情報1800を生成の上、基地局200を経由して情報処理装置100に送信する機能を備えるものとなる。また当然ながら、このスーパーマーケット2の例えば天井面や柱には上述してきた基地局200が所定間隔で設置されている。
【0051】
そこで、スーパーマーケット店内において客2Gと共に移動中のカート300は、基地局200からの無線信号を基に自身の現在位置を示す情報を取得する度に位置履歴情報1800を生成し、情報処理装置100に送信すべく基地局200にアップロードする(s100)。基地局200ではこの位置履歴情報1800を受信し、情報処理装置100に転送する(s101)。当然ながら、基地局200はカート300からの位置履歴情報の転送要求を受けて、情報処理装置100に位置履歴情報を転送する機能を備えるものとする。カート300は、位置履歴情報1800を一定時間メモリ等に蓄積しておいて定期的にその蓄積情報を基地局200を経由して情報処理装置100に送信するとしてもよい。
【0052】
一方、前記情報処理装置100の動線情報出力部111は、通信インタフェース107により基地局200を経由して前記カート300からの位置履歴情報1800(現在位置を示す情報、当該情報の取得時刻の情報、およびカート300の識別情報を含んだ情報)を受信して記憶部101に格納する(s102)。位置履歴情報1800は、現在位置を示す情報1801、当該情報1801の取得時刻の情報1802、およびカート300の識別情報1803を含んだ情報から構成されている。現在位置を示す情報1801は、カート300の座標値、および基地局200の識別情報を含んでいる。
【0053】
次に、情報処理装置100の動線情報出力部111は、前記記憶部101より、ある取得時刻1802の位置履歴情報1800を読み出し、この位置履歴情報1800の「現在位置を示す情報」1801が含むカート300の座標値を抽出し、これを前記マップ情報125に照合する(s103)。例えば、動線情報出力部111は、前記記憶部101より、ある取得時刻1802として“2010/01/24/11:30”の、識別情報“c001”のカート300の位置履歴情報1800を読み出し、この位置履歴情報1800の「現在位置を示す情報」1801が含む座標値、例えば“(101.5,102.6)”を抽出する。
【0054】
動線情報出力部111は、こうしたカート毎の座標値の特定処理を、前記取得時刻毎の位置履歴情報1800について実行して、特定した座標値の時刻毎の変遷履歴を動線情報として得る(s104)。例えば、カート“c001”に関して、“2010/01/24/11:30”から1分おきの座標値として、“(101.5,102.6)”、“(101.5,103.0)”、“(101.5,104.5)”、“(101.5,106.0)”、“(103.0,106.0)”、“(104.4,106.0)”、“(104.4,105.3)”、“(104.4,100.3)”、“(106.8,100.3)”、“(110.0,100.3)”、“(111.0,100.3)”、の計10値を得たとする。
【0055】
また動線情報出力部111は、こうした動線情報をディスプレイ等の表示装置106に出力することとなる(s105)。この場合、動線情報出力部111は、図12に既に例示したように、スーパーマーケット2の床面を座標平面(例:図12で左下隅の頂点が“(0,0)”、右上隅の頂点が(200,200)の座標値を持つ平面)と見て、この座標平面上において、記憶部101のマップ情報125から読み出した各基地局200の座標に基地局アイコン(記憶部101に保持)を配置する。また同様に、動線情報出力部111は、前記座標平面において、商品3、陳列器具2B、販売員2D、および販促器具4の各アイコン等をマップ情報125から得た該当座標位置に配置し、さらには、前記カート“c001”の動線、つまり“2010/01/24/11:30”から1分おきの計10の座標値を結んだ軌跡を描画する。
【0056】
このような動線情報をディスプレイ等で閲覧するユーザは、例えばスーパーマーケット2における店舗責任者や、販売戦略の担当者等である。動線情報を閲覧した店舗責任者らは、該当店舗における、ある時期の客の高精度の動線を効率よく把握することができる。
【0057】
こうした客動線を把握した店舗責任者らは、日々の売り上げ動向をにらみながら、売り場レイアウトの再考、販売員2Dや販促器具4の再配置を検討することになる。例えば、ある陳列棚2Bの前に、多くの客が長く滞留しやすい傾向を把握したとする。この陳列棚2Bが店舗入り口付近にある場合、店舗中程に配置換えをし、その代わりに入り口から該当陳列棚2Bまでの客誘導を図るポップ広告や販促器具4を重点的に配置する。このことで、前記陳列棚2Bに陳列していた商品を目印に、より店舗奥まで客を誘導することが期待できる。つまり、店舗奥まで客が移動する間に他の商品に着目する機会が増えて、ひいては購買機会の増大にもつながることが期待できるのである。
【0058】
そこで客動線に応じて売り場レイアウトが変更された場合、当然ながら商品3や陳列棚2Bらの座標値が変更されることなり、情報処理装置100が保持するマップ情報125も、新たな世代のものが入力装置105から追加されることになる。従ってこの場合、情報処理装置100は、その記憶部101において、例えばマップ情報の更新日時などを世代情報として対応付けた、各世代のマップ情報125を格納している。
【0059】
この場合、動線情報出力部111は、前記取得時刻毎の位置履歴情報1800と、前記マップ情報125の各世代分とを照合して、前記世代毎のスーパーマーケット2における商品3、陳列棚2B、販売員2D、および販促器具4の少なくともいずれかとカート300との位置関係の前記取得時刻毎の変遷履歴を同様に動線情報として特定し、当該世代毎の動線情報を表示装置106に出力することとなる。この場合の動線情報出力部111は、例えば、旧世代である「2010年1月」のマップ情報125に基づいて商品3や陳列棚2B等を配置し動線情報を描画したウィンドウと、新世代である「2010年2月」のマップ情報125に基づいて商品3や陳列棚2B等を配置し動線情報を描画したウィンドウとを、1画面に列挙する(図12参照)。こうした新旧の動線情報、つまりレイアウト変更等の前後での客動線の変化を前記店舗責任者らはわかりやすく認識することができる。このことは、レイアウト変更等が客動線に与えた効果を検証できることを意味する。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態の動線調査支援システム1によれば、動線観測域内のカート等の位置を高精度に特定できる。しかも、タグやセンサ類を多数配置しなければならない従来技術と比べて、所定数の基地局200を動線観測域内に配置すればよいため、導入や運用のコストも良好である。
【0061】
ところで、以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0062】
なお、こうした本実施形態の動線把握の技術は、客の動線把握のほか、店舗内での客の避難誘導支援(例:客が所在するエリアに配置されたスピーカーや表示装置等に、非常口までの案内メッセージを出力するなど)、店員支援(例:客が滞留しているエリアを特定し、そこに応対に向かうべく店員の端末等に通知を送信するなど)などにも適用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 動線調査支援システム
2 動線観測域(スーパーマーケット)
2A 通路
2B 陳列棚(陳列器具)
2C レジ
3 商品
4 販促器具
10 位置標定システム
100 情報処理装置
101 記憶部
103 メモリ
104 CPU(演算装置)
105 入力装置
106 出力装置
107 通信インタフェース
111 動線情報出力部
125 マップ情報
200 基地局
213 通信インタフェース
214 無線通信インタフェース
216 RSSI回路
263 位置標定信号送信部
300 カート、かご(端末)
313 無線通信インタフェース
317 計時回路
320 RSSI回路
331 位置標定信号受信部
332 情報送受信部
334 位置標定部
336 履歴送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動線観測域における基地局に設けられた複数のアンテナの夫々から無線送信されてくる位置標定信号を受信する位置標定信号受信部と、
受信した前記各位置標定信号の位相差に基づき自身の現在位置を標定する位置標定部と、
前記標定した現在位置を示す情報、当該情報の取得時刻の情報、および自身の識別情報を含んだ位置履歴情報を情報処理装置ないし基地局に送信する履歴送信部とを具備する端末と、
前記端末から又は基地局を経由して前記位置履歴情報を受信して記憶部に格納し、前記記憶部に格納した前記取得時刻毎の位置履歴情報と、記憶部に予め保持している前記動線観測域のマップ情報とを照合して、動線観測域における端末位置の前記取得時刻毎の変遷履歴を動線情報として特定し、当該動線情報を出力部に出力する、動線情報出力部を具備する情報処理装置と、
を含むことを特徴とする動線調査支援システム。
【請求項2】
前記情報処理装置において、
前記記憶部は、前記マップ情報として、動線観測域に所在する各商品、各商品の陳列器具、販売員、および販促器具の少なくともいずれかの所在位置情報を更に格納するものであり、
前記動線情報出力部は、前記記憶部に格納した前記取得時刻毎の位置履歴情報と、前記動線観測域のマップ情報とを照合して、動線観測域における商品、陳列器具、販売員、および販促器具の少なくともいずれかと所定装置との位置関係の前記取得時刻毎の変遷履歴を動線情報として特定し、当該動線情報を出力部に出力するものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の動線調査支援システム。
【請求項3】
前記情報処理装置において、
前記記憶部は、動線観測域での商品、陳列器具、販売員、および販促器具の少なくともいずれかの所在位置の変化毎に世代を更新したマップ情報を保持するものであり、
前記動線情報出力部は、前記記憶部に格納した前記取得時刻毎の位置履歴情報と、前記動線観測域の複数世代の各マップ情報とを照合して、前記世代毎の動線観測域における商品、陳列器具、販売員、および販促器具の少なくともいずれかと所定装置との位置関係の前記取得時刻毎の変遷履歴を動線情報として特定し、当該世代毎の動線情報を出力部に出力するものである、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の動線調査支援システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−186628(P2011−186628A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49392(P2010−49392)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)