説明

動脈性高血圧症、他の心血管疾患、及びその合併症を治療するためのアンギオテンシンIIAT1受容体拮抗薬製剤の調製

【課題】動脈性高血圧症、他の心血管疾患及びその合併症を治療するための、シクロデキストリン、その誘導体及び/又は生分解性ポリマーを使用したAT1受容体拮抗薬製剤の調製。
【解決手段】現在までのところ、従来技術において、動脈性高血圧症、他の心血管疾患及びその合併症を治療するためのAT1受容体拮抗薬、シクロデキストリンまたは誘導体及び/又は生分解性ポリマーを使用する適用は見出されていない。本発明は、2つの異なる技術の組合せ、1つは、シクロデキストリン中にAT1受容体拮抗薬を分子カプセル化する技術、もう1つは、生分解性ポリマー中にミクロカプセル化する技術の組合せを特徴とする。本発明はまた、AT1受容体拮抗薬の有効性の増大及びその生物学的有効性の増大も含む。本発明は、動脈性高血圧症、他の心血管疾患及びその合併症を治療するための新規でより有効な代替法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈性高血圧症、他の心血管疾患、及びその合併症を治療するために、シクロデキストリン又はその誘導体、リポソーム、及び生分解性ポリマーを使用したアンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬の新規な製剤の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の大多数の国では、成人人口の15%から25%は動脈圧が高い(S.MacMahon,et al.,「血圧、脳卒中、及び冠状動脈性心臓病(Blood pressure,stroke,and coronary heart disease)」,Lancet 335:765−774,1990)。心血管病のリスクは、動脈圧のレベルと共に上昇する。すなわち、動脈圧が高いほど、冠血管病の発症の危険性は高くなる。冠血管疾患、大脳疾患及び腎血管性疾患の主要因と考えられる高血圧症は、成人における死亡及び身体障害(inacapacity)の第1の原因である。
【0003】
心不全は、世界的に、年齢60〜80才の年齢グループで入院の主因である。人々の高齢化だけでも既に、その発生の増加の一因となっている。年齢25〜54才で心不全を患う人は1%であるが、高齢者では、その発生はさらに多く年齢75才を超える人々の10%の水準に達する(W.B.Kannel,et al.,「心疾患の変化する疫学的特徴(Changing epidemiological features of cardiac failure)」,Br.Hear J 1994;72(suppl 3):S3−S9)。
【0004】
心不全は、その臨床的特徴のために、悪化すると患者の生活の質を低下させ、最も重篤な場合は、現代でも、1年目に死亡率が60%を超える悪性疾患の特徴を示す、制限の多い疾患である(M.T.Oliveira,「高度に鬱血性心不全の患者の臨床的特徴、及び予後(Clinical features and prognosis of patients with high congested heart failure)」,College of Medicine USP,1999)。今日、先進工業国世界だけでも1500万人を超える人々がこれに罹患し、例えば、米国だけでも1973〜1990年の間に症例数は450%増加したと推定されている(W.B.Kannel et al.,「心疾患の変化する疫学的特徴(Changing epidemiological features of cardiac failure)」,Br.Hear J 1994;72(suppl 3):S3−S9)。
【0005】
高血圧症は、複合的、多因子性であり有病率が高く、様々な有害な影響の原因となり、罹患率及び死亡率が高い(N.M.Kaplan,「心血管の危険因子としての血圧:予防と治療(Blood pressure as a cardiovascular risk factor:prevention and treatment.)」JAMA.275:1571−1576,1996)。この疾患の理解を深める目的で、一般集団及び特殊グループにおける、その抑制効率の評価に関して無数の研究がなされてきた。関連する危険因子(糖尿病、肥満、タバコ)に対する広範な非薬物的介入及び/又は薬剤介入なしに血圧を制御すると、死亡率の低下における、動脈性高血圧症の長期的治療の恩恵をかなり低減させる恐れがある(P.W.Wilson et al.,「高血圧症(Hypertension)」,Raven Press.94−114)。
【0006】
高血圧症は、心臓動脈硬化症の最も有力な原因となっている病気である(「高血圧の発見、診断、及び治療に関する米国合同委員会の第5次報告(The Fifth Report of the Joint National Committee on detection,evaluation,and treatment of High Blood Pressure)」,National Institute of Health(VJNC).Arch,Intem,Med.153:154−181,1994)。統計によれば、アメリカ人の4人に1人は、現在又は将来高血圧となり、478万の人々が心不全を患っていると推定される。毎年、40万件の新規症例が診断され、80万人の入院をもたらし、その治療に米国ドルで178億ドルが費やされている。
【0007】
ブラジルでは、SUS(Sistema Unificado de Saude)のデータから、1997年、心不全は、心血管疾患のうちで主たる入院の原因であり、その治療に政府は1億5000万レアル支出したことが判明したが、この数字は保健医療に当てた全支出の4.6%に相当した(Albanesi F.Filho,「ブラジルにおける心不全(Heart failure in Brazil)」,Arq.Bras.Cardiol.71:561−562,1998)。
【0008】
強力な血管収縮薬であるアンギオテンシンII(AngII)は、レニン−アンギオテンシン系(RAS)の最も重要な活性ホルモンであり、高血圧症の病態生理の重要な決定要因となっている。AngIIは、直接的及び間接的に末梢抵抗を増大させる。直接的には、小動脈の血管収縮を引き起こし、それよりも程度は低いが、多数のアンギオテンシンII AT1受容体が見出される後毛細血管細静脈のレベルでも血管収縮を引き起こす。AngIIによって媒介される動脈収縮により、血管抵抗は増大するが、これは動脈圧上昇に関与する基本的な血行力学的機構である。収縮の強度は、腎臓において高く、脳、肺及び骨格筋において低い。また、AngIIは、副腎腺によるアルドステロンの放出をも導く。アルドステロンの放出によって、ナトリウム及び水の再吸収が増加し、腎臓によるカリウムの排泄も増加して血液量が増加する(E.D.Frohlich,「アンギオテンシン変換酵素阻害剤(Angiotensin converting enzyme inhibitors)」,Hypertension 13(suppl I):125−130,1989)。それにより心拍出量の増大に応答して動脈圧が上昇することが、動脈圧の上昇における第2の基本的な血行力学的機構と考えられている。AngIIによる副腎髄質からのカテコールアミンの放出、神経終末によるノルエピネフリン放出の刺激、及び中枢神経系の活性化によって交感神経放電が増加することが示唆されている(Goodman and Gilmanの「薬物療法学の薬理学的基礎第8版(The Pharmacological Basis of Therapeutics 8th ed.)」,Pergamon Press,New York,p755,1990)。
【0009】
RASは、血漿中にアンギオテンシンIを産生するために、レニンが肝臓由来のアンギオテンシン前駆体に作用する内分泌系である。次いで、このペプチドは、アンギオテンシン変換酵素(ACE)の作用によってAngIIに変換される。その後、AngIIは、血流によってその標的臓器に取り込まれ、選択的にアンギオテンシンII AT1受容体に結合する(k.Sasaki et al.,「ウシの副腎性アンギオテンシンII受容体1型をコードする相補DNAのクローニング及び発現(Cloning and expression of a complementary DNA enconding a bovine adrenal angiotensin II receptor type−1)」,Nature,351:230−233,1991)。
【0010】
高血圧症の治療は、保健医療費の削減のみならず、生活の質の変化と、必要な場合には薬物療法の使用によって、標的臓器の障害を予防することをも目的とする「高血圧の発見、診断、及び治療に関する米国合同委員会の第5次報告(The Fifth Report of the Joint National Committee on detection,evaluation,and treatment of High Blood Pressure)」,National Institute of Health(VINC).Arch.Intem.Med.153:154−181,1994)。
【0011】
収縮期動脈圧が180mmHgを上回る、又は拡張期動脈圧が110mmHgを超える患者は全て、他の現在の要因の有無にかかわらず、薬理的治療を受けなければならない「カナダ高血圧学会報告、第3回コンセンサス会議、本態性高血圧の薬理的治療(Report the Canadian Hypertension Society.Consensus Conference.3.Pharmacologic treatment of essential hypertension)」,Xan.Med.Assoc.J.149(3):575−584,1993)。
【0012】
しかし、60年代以降、抗高血圧薬は、高血圧の治療における重要なツールとなった(J.Menard,「レニン・アンギオテンシン系選集:アンギオテンシンII拮抗薬についての100の参照手引き(Anthology of the renin−angiotensin system:A one hundred reference approach to angiotensin II antagonists)」,J.Hypertension 11(suppl 3):S3−S11,1993)。過去40年間に、高血圧症を治療するために薬理学的研究によって新しいタイプの薬物、60年代に利尿薬、70年代にベータ遮断薬、80年代にカルシウムチャネル遮断薬及びアンギオテンシン変換酵素阻害剤、90年代にアンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬が生み出された。
【0013】
ACE阻害剤(ACEI)は、アンギオテンシンIのAngIIへの変換を阻害することができる。したがって、AngIIの血管収縮作用は最小限に抑えられる。予備調査では、臨床的に使用された初めての阻害剤であるテプロタイドが、静脈内経路で投与した場合には抗高血圧作用を有するが、経口経路では不活性であることが示された。このためその使用はごく限られていた。
【0014】
今日、ACEは、多作用性酵素であることが知られており、それはACEが様々な基質に作用することを意味している。アンギオテンシンI及びブラジキニンにおいてジペプチダーゼとして作用する以外にも、ACEは、いくつかのペプチドを加水分解する能力を有し、様々な組織でこの酵素が作用できることを示唆している。
【0015】
ACEIは、単独療法で投与したときに優れている。ACEIは、動脈性高血圧症の患者の60〜70%において、比較的迅速に動脈圧を低下させる(W.Ganong,「心血管制御における神経ペプチド(Neuropeptides in cardiovascular control)」,J.Hypertens 2(suppl 3):15−22,1984)。これは、一般的に許容性は良好であるが、その使用によって有害な副作用及び反応が引き起こされる恐れがあり、そのいくつかはやや重篤で、それらの中には血管神経性浮腫及び空咳(8〜10%)が含まれる。
【0016】
AngII拮抗薬を開発するための最初の試みは、70年代初めにさかのぼり、AngIIに類似するペプチドの開発に努力が注がれ、その最初のものがサララシン(1−サルコシン、8−イソロイシンアンギオテンシンII)である。しかし、これらの誘導体は、部分的なアゴニスト活性をも示したので臨床には受け容れられなかった。1982年、2種類の、初めてのアンギオテンシンII AT1受容体の非ペプチド拮抗薬が開発された(S−8307及びS−8308)。しかし、これらは高度に特異的であるにもかかわらず、アゴニスト活性がなくAngII受容体への結合が弱かった。これら2種類の前駆体の分子構造に一連の変更を加えて、経口用で高度に特異的な、新規で強力な生成物ロサルタンが開発された。次いで、カンデサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、エプロサルタン、タソサルタン、ゾロサルタンなど、他の多くの非ペプチド拮抗薬が開発された。
【0017】
ロサルタンは、2−ブチル−4−クロロ−1−[[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1’−ビフェニル]−4−イル]メチル]−1H−イミダゾール−5−エタノールのモノカリウム塩として化学的に記述される分子である。実験式はC2222CIKNOで、自由流動する青味を帯びた白色の透明度の高い粉末で、モル質量は461.01g/molである。速やかに吸収され生物学的有効性は33%を示し、1時間以内に最高濃度のピークに達し、半減期は約2時間である。水に可溶、アルコールにも可溶、アセトニトリルやメチル−エチル−ケトンなど通常の有機溶媒にはわずかに溶ける。ロサルタンは、新規で特異的、かつ選択的な作用機序、すなわちAngII受容体を遮断することにより、AngIIの供給源又は生成方式にかかわらず動脈圧だけを低下させる。ロサルタンは、心血管調節の際に、他のホルモン受容体、酵素、又は重要なイオンチャンネルを遮断しない。
【0018】
イミダゾール環中の5−ヒドロキシメチル基を酸化すると、EXP−3174と称されるロサルタンの活性代謝物が得られる。ロサルタンのこの特異な作用の機構は、血漿中で誘発されたレニン活性、及びAngIIのレベルの上昇を測定することによって、ACEの阻害と区別することができる(Agostinho Tavares et al,「アンギオテンシンII受容体拮抗薬、薬理学及び心血管薬物療法学(Antagonists of the Receptors of the Angiotensin II,Pharmacology and Cardiovascular Therapeutics)」,305−315,1998)。ロサルタンの投与中は、レニン活性が増大することにより、血漿中のAngIIも増加する。ロサルタンの投与を中止すると、レニン活性及びAngIIレベルは治療前レベルに戻る。ロサルタンの経口投与量の約92%は糞尿中に検出され、5%はロサルタンとして、8%はEXP−3174として、残りは不活性代謝産物として排泄される(M.Melntyre et.al.,「ロサルタン、経口的に活性なアンギオテンシン、アンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬:本態性高血圧におけるその効力と安全性の総説(Losartan,an orally active angiotensin ANGIOTENSIN II AT1 receptor antagonist:a review of its efficacy and safety in essential hypertension)」,Pharmacol.Ther.74(2):181−194,1997)。
【0019】
バルサルタン(1−オキソペンチル−N’[[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1’−ビフェニル]−4−イル]メチル]−L−バニリン)は、受容体ATの競合的拮抗薬であり、生物学的有効性は25%を示し、半減期は9時間、約2時間で最大ピークに達する。代謝は最小限であり、特に糞便によって排出され、尿中には15〜20%しか排出されない(L.de Gasparo Criscione et.al.,「バルサルタンの薬理学的プロフィール(Pharmacological profile of valsartan)」 Br.J.Pharmacol 110:761−771,1993)。アテノロール、シメチジン、ジゴキシン、フロセミドと共に投与した場合、薬物動態的相互作用の効果が強化される。
【0020】
イルべルサルタン(2−ブチル−3−[[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1’−ビフェニル]4−イル1,3−ジアザスピロル[4,4]−ノン−1エン−4−オロン)は、アンギオテンシンII AT1受容体の競合的拮抗薬である。本来、酸化によって代謝され、1.5〜2時間で濃度のピークが示され、半減期は、およそ11〜15時間である(D.Nisato,「新しいアンギオテンシンII拮抗物質薬イルべサルタンの総説(A review of the new angiotensin II antagonist irbesartan)」,Cardiovasc Drug Rev)。有効性は60〜80%であり、これも胆汁によって大部分が排出される(80%)。
【0021】
カンデサルタン(2−エトキシ−1−[[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボン酸)は、アンギオテンシンII AT1受容体に対して高親和性を有し、徐々に分解し、半減期は9時間、生物学的有効性は約40%を示し、大部分は尿と胆汁によって排出される(Y.Shibouta et.al.,「極めて強力で長時間作用するアンギオテンシンII受容体拮抗薬の薬理学的プロフィール(Pharmacological profile of a highly potent and long−acting angiotensin II receptor antagonist)」,J.Pharmacol.Exp.Ther.266:114−120,1993)。ニフェジピン、ジゴキシン又はグリベンクラミドと共に投与したとき、より良好な結果が得られている。
【0022】
エプロサルタン((E)−α−[[2−ブチル−1−[(4−カルボキシフェニル)メチル]−1H−イミダゾール−5−イル]メチレン]−2−チオフェンプロパン酸)も、アンギオテンシンII AT1受容体に対して高親和性を有し、生物学的有効性は13〜15%、約2時間で最高濃度に達する。約90%は糞便を介し、残りは尿中に排出される(Michael C.Ruddy et.al.,「アンギオテンシンII受容体拮抗薬(Angiotensin II Receptor Antagonists)」、71:621−633,1999)。
【0023】
テルミサルタン(4’−[(1,4’−ジメチル]−2’プロピル[2,6’−bi−1H−ベンズイミダゾール]−1’−イル)メチル]−1,1’−ビフェニル]−2−カルボン酸)は、アンギオテンシンII AT1受容体の競合的阻害剤であり、生物学的有効性は45%を示す。大部分は胆汁によって排出される(97%)(Michael C.Ruddy et.al.,「アンギオテンシンII受容体拮抗薬(Angiotensin II Receptor Antagonists)」71:621−633,1999)。
【0024】
アンギオテンシン−(1−7)、(Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro)、及びその誘導体Sar−Ang−(1−7)も、ヒト(Ueda et al.,Mol.Biol.Cell 11:259A−260A suppl.S Dec 2000)、及びラットにおいてAngIIの血圧への効果を打ち消す。ウサギ及びヒトの摘出した動脈においても、AngIIによって生じた収縮は、アンギオテンシン−(1−7)によって軽減される(Roks et al.Eur.Heart J 22:53−53 Suppl.S Sep,2001)。
【0025】
Yoshiyasu,ToyonaraらのUS4340598(1982年)(CA1152515、JP56071073、EP0028833、DE3066313D)は、イミダゾール誘導体を得るために、イミダゾール環をフェニル基、ハロゲン基、ニトロ基又はアミノ基で置換することによって、新規な抗高血圧化合物を得る方法を開発している。これらの化合物は、アンギオテンシンII AT1受容体に対して優れたアンタゴニスト活性を示し、降圧剤として利用されている。
【0026】
Ruth R.WexlerのUS4576958(1986年)(US4372964)も、その血管拡張特性のために抗高血圧効果を示す、4,5−ジアリール−1H−イミダゾール−2−メタノールの誘導体を複数開発している。この知見は、一連の化学反応、特に、フリーデル−クラフツアシル化反応、ホルムアミド中での還流、及び酸化に基づいていた。
【0027】
Mashiro,KawaharaらのUS4598070(1986年)(CA1215359、DK356684、EP135044、ES8506757、GR82322、JP60025967)は、抗高血圧剤トリパミドとシクロデキストリン(−シクロデキストリン及び−シクロデキストリン)の間の包接化合物の調製に基づく発明を開発している。シクロデキストリンの使用によって、トリパミドの溶解性が向上した。
【0028】
Mark.T.de CrostaらのUS4666705(1987年)は、高血圧症を治療するための新規な薬剤徐放システムを提案している。半減期が2時間であり、吸収が速やかであるという理由でACE阻害剤カプトプリルが使用された。体内での存在を長引かせるために、錠剤の形で、カプトプリルがポリマー又はコポリマーと結合された。使用したポリマーはポリビニルピロリドン(PVP)であり、利用した技術は乾燥造粒法であった。その結果、薬物の持続性は4〜16時間増加した。
【0029】
K.Prasun,ChakravartyらのUS5064825(1991年)は、7員環であり、アンギオテンシンII AT1受容体に対してアンタゴニスト活性を示す新規なイミダゾール環誘導体を得ている。
【0030】
Hans BundgaardらのUS5073641(1991年)は、ACE阻害剤として新規なカルボン酸のエステル誘導体を得ている。特に、エチルエステルのペントプリル(Pentopril)は、ヒト血漿中で高度に安定していることが判明した。
【0031】
David RobertsらのUS5171748(1992年)(JP3005464、CA2017065、EP0399732)も、新規なイミダゾール環の複素環誘導体を得ているが、これはアンギオテンシンIIの作用を打ち消す。
【0032】
Reinhard BeckerらのUS5256687(1993年)は、利尿剤(フロセミド又はピレタニド)に関連付けたACE阻害剤(タンドールプリル(Tandolpril)又はパミプリル(Pamipril))からなる薬剤組成物、及び高血圧症の治療におけるその使用を特許請求しており、このようにしてACE阻害剤の有効性が増大している。
【0033】
Masakatsu OtawaのUS5266583(1993年)は、アンギオテンシンII AT1受容体に対してアンタゴニスト活性を示すロサルタンの代謝物を単離している。
【0034】
Darja Fercej−TemeljoovらのUS5519012(1996年)は、1,4−ジヒドロピリジンと、メチル−β−シクロデキストリンやβ−シクロデキストリンヒドロキシレートなどの他の誘導体との、抗高血圧剤用の新規な包接化合物を請求している。
【0035】
Chih−Ming ChenらのUS5728402(1998年)は、カプトプリル(ACE阻害剤)及びヒドロゲルから構成される内部相と、胃内で不溶な外部相とを含む薬剤組成物の調製及び使用を特許請求している。この製剤によって、薬物の吸収の持続時間が延長された。
【0036】
Rodgers、Kathlen ElizabethらのUS5834432(1998年)(AU5990796、CA2221730、EP0828505、WO09639164、JP115073625)は、AT受容体の作用薬を使用して創傷治癒を改善した。
【0037】
Patrick BreenらのUS5859258(1999年)(HR970565、CN124186、SK57099、EP0937068、AU5089898)は、溶媒(特に、イソプロパノール、水、シクロヘキサン)の添加と、それに続く蒸留によって、アンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬ロサルタンを結晶化する方法を開発している。
【0038】
S D.Anker及びAj.S.CatsらのAU200012728−A(1999年)は、経口投与した場合、ロサルタンよりも有効な新規なイミダゾール環の誘導体を開発している。
【0039】
Giuseppe RemuzziのWO9916437(1999年)は、新規なイミダゾール誘導体を開発している。得られた薬物は、腎臓及び心臓移植を行った患者の生存率を上げることができた。
【0040】
Galbiat Barbara Via GoldomiらのWO0110851(1999年)は、リソノプリル(Lisonopril)の合成の際の中間生成物であるリジン−カルボン酸無水物の調製方法を開発している。
【0041】
Synthelabo,Elizabeth SanofiらのWO0037075(1999年)は、アンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬(イルベサルタン)と、免疫抑制剤(シクロスポリン)とを組み合わせて使用することを特許請求している。この組合せは、心血管疾患の治療に有効であることが判明した。
【0042】
Tzyy−Show H.ChenらのUS6087386(WO9749392A1)(2000年)は、ロサルタン(アンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬)の一層と、マレイン酸エナラプリル(ACE阻害剤)の別の層とを含む薬剤の調製及び使用を特許請求している。この製剤は、副作用を減らし吸収を長引かせ、薬理学的作用の向上をもたらした。
【0043】
Lars FandriksらのUS6096772(AU1184097、AU706660、CA2225175、HU9901448、CN1192681、JP11507921T、ZA9604690)は、非ペプチド性(dispeptidic)症状の治療又は予防のために、アンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬を使用している。
【0044】
Roberts S.KievalらのUS6178349(2001年)は、心血管疾患を治療するための、神経の刺激による薬物の放出を基礎とするデバイスを開発している。このデバイスは、神経に接続した電極と、移植可能なパルス発生装置と、投与する薬物を入れる貯蔵部からなる。使用中、電極及び薬剤の放出が神経を刺激し、心血管系に関わる制御に作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
動脈性高血圧症を治療するための、より有効でかつ/又はより毒性が少ない薬物を得るために、様々な方法が開発されている。これは、背景端技術の所で挙げた多数の特許から明らかである。しかし、これらの方法でも依然として深刻な副作用が現れ、得られた薬物は、しばしば半減期が短く生物学的有効性が低い。
【課題を解決するための手段】
【0046】
本発明の知見は、薬物の半減期を9〜60時間増加させるシクロデキストリン及びその誘導体を使用して、生体系で拮抗薬の生物学的有効性の上昇をもたらす、アンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬用の徐放システムの調製及び使用を含む。これは、得られた製剤が、温血動物の高血圧症の治療に使用する際に、代替薬物として大きな潜在能力を有することを意味している。
【0047】
特定の薬物を化学的に改変して、体内分布、薬物動態学、溶解性など、その特性を変化させることができる。薬物の溶解性及び安定性を上げるための様々な方法、特に、有機溶媒の使用、乳濁液又はリポソーム内への取り込み、pHの調整、化学的改変、シクロデキストリンとの複合体の形成が利用されてきた。
【発明を実施するための形態】
【0048】
シクロデキストリンは、環状オリゴ糖類であり、6、7又は8個のグルコピラノース単位を含む。立体配置による相互作用のために、シクロデキストリンCDは、内部空洞が無極性の(円錐台)の形をした環状構造を形成している。これらは、位置選択的に改変することができる、化学的に安定した化合物である。シクロデキストリンホストは、その空洞内で様々な疎水性ゲスト(分子)と錯体を形成する。J.Szejtli,Chemical Reviews,(1998),98,1743−1753.J.Szejtli,J.Mater.Chem.,(1997),7,575−587に記載されるように、CDは、薬物、香水、香料の可溶化及びカプセル化に使用されてきた。
【0049】
[R.A.Rajewski,V.Stella,J.Pharmaceutical Sciences,(1996),85,1142−1169]に記載される、シクロデキストリンに関する毒性、突然変異生成、奇形発生及び発癌性についての詳細な研究によれば、J.Szejtli,「シクロデキストリン:特性及び応用(Cyclodextrins:properties and applications)」,Drug investing.,2(suppl.4):11−21,1990に報告された通り、これらは、特に(ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)の低毒性を示す。赤血球に有害となる、多少高濃度の一部の誘導体を除き、これらの生成物は、一般に健康に有害ではない。食品の添加物としてのシクロデキストリンの使用は、日本やハンガリーなどの国では既に認可されており、フランス及びデンマークでは、より特異的な適用が認可されている。その上、これらは、アミドの再生可能な分解源から入手される。全てのこうした特徴は、新規な適用の研究開発に向かう大きな動機となっている。CD分子の構造は、円錐台の構造に類似し、Cnはほぼ対称である。主たる水酸基は、分子内水素結合によって円錐の最も狭い側に位置し、この要素(element)は、十分な柔軟性を有し規則正しい形から相当逸脱することが可能である。
【0050】
既知のシクロデキストリン誘導体は、その極性、大きさ、生体活性などによって分類することができ、その実用性によって以下のように分類される。1.生体活性物質用担体(可溶化剤、安定剤)、2.酵素モデル、3.分離剤(クロマトグラフィー法又はバッチ法用)、4.触媒及び添加剤(洗浄剤、粘度調節剤などとして)、L.Szente and J.Szejtli,Adv.Drug Deliv.Rev.36(1999),17。CDは、水、メタノール及びエタノールに適度に可溶であり、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミドピリジンなどの極性溶媒に容易に溶ける。
【0051】
包接化合物の利用による、シクロデキストリンを使用した水にほとんど不溶なゲストの水溶性上昇の効果について、多数の研究成果が文献に見られ、J.Szejtli,Chemical Reviews,(1998),98,1743−1753.J.Szejtli,J.Mater.Chem.,(1997),7,575−587に記載されている。
【0052】
薬物送達システム(DDS)を設計するために、必要量の薬物を標的部位へ必要期間、効率的にかつ正確に送達する、様々な種類の高性能担体材料が開発されている。
【0053】
シクロデキストリン、生分解性又は非生分解性ポリマー、リポソーム、乳濁液、複合乳濁液は、ゲスト分子の物理的、化学的、及び生物学的特性を変化させる能力があるので、このような役割に対する潜在的な候補である。
【0054】
シクロデキストリンに加え、ポリマー、ミクロカプセル、ミクロ粒子、リポソーム、乳濁液を含めて、複数の薬物送達システムが調べられてきた。これらの多くは、ポリ無水物やポリ(ヒドロキシ酸)などの合成生分解性ポリマーから調製される。こうした系では、薬物は、重合性ミクロ球中に組み込まれ、このミクロ球は、数日、数ヶ月、又は数年間、少量ずつ制御した一日量で生体内に薬物を放出する。
【0055】
既に、数種のポリマーが徐放システムで、例えば、ポリウレタンでは弾性、ポリシロキサン又はシリコンでは良好なその遮断性、ポリメタクリル酸メチルでは物理的な強度、ポリビニル・アルコールでは疎水性及び耐性、ポリエチレンでは硬度及び不浸透性についてテストされている(D.K.Gilding,「生分解性ポリマー(Biodegradable polymers)」,Biocompat.Clin.Impl.Mater.2:209−232,1981)である。生分解性ポリマー及び生体適合性ポリマーは、表面分解を受けることができるので、徐放システムの賦形剤として徹底的に調べられている。Tamada and Langer,J.Biomater.Sci.Polym.Edn,3(4):315−353に記載されるように、この種のポリマーは、ポリ(2−ヒドロキシ−エチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、乳酸(PLA)由来ポリマー、グリコール酸(PGA)由来ポリマー、及びその各々のポリマーのコポリマー、(PLGA)、ポリ(無水物)から選択することができる。
【0056】
本発明の製剤は、薬剤として許容される賦形剤などの他の成分を含むことができる。例えば、本発明の製剤は、保護する動物に許容可能な賦形剤に入れ製剤することができる。賦形剤は、緩衝液の等張性及び化学的安定性を高める物質など、少量の添加剤を含むことができる。標準的な製剤は、注射用液体、又は注射もしくは経口製剤用に懸濁液又は溶液として適当な液体に溶解することができる固体のどちらでもよい。適当な徐放賦形剤には、生体適合性ポリマー、他の重合性マトリックス、カプセル、ミクロカプセル、ナノカプセル、ミクロ粒子、ナノ粒子、巨丸調製物、浸透圧性ポンプ、拡散デバイス、リポソーム、リポ球(lipospheres)、インプラントが可能な又は不可能な経皮送達システムが含まれるがそれだけには限らない。
【0057】
過去数年、薬物の吸収を改善し、薬物の安定性を高め、特定の細胞集団を標的として薬物を送達するため、薬物送達システムの複数のシステムが研究されてきた。これらの研究によって、シクロデキストリン、乳濁液、リポソーム及びポリマーをベースとする、薬物の運搬及び送達のための幾つかの生成物が開発されるに至った。こうした製剤は、筋肉内注射、静脈内注射、皮下注射、経口投与、吸入、又はインプラントすることができるデバイスを介して投与することができる。
【0058】
現在までのところ、動脈性高血圧症、又は温血動物での心不全など他の心血管疾患を治療するための従来技術において、アンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬、シクロデキストリンまたはその誘導体、リポソーム、生分解性ポリマー、及びそれらの組合せを使用する適用は見出されていない。これにより、本発明は、これらの病気及びその合併症を治療するための新規でより有効な代替法として特徴付けられる。
【0059】
本発明は、2つの異なる技術の組合せを特徴とする。一つは、アンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬をシクロデキストリン及び/又はリポソーム中に分子カプセル化する技術、もう一つは、生分解性ポリマー中にミクロカプセル化する技術である。また、本発明は、アンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬の有効性の増進、及びその生物学的有効性の増進を特徴とする。
【0060】
さらに、本発明は、シクロデキストリンと組み合わせたアンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬、及び生分解性ポリマーと組み合わせた同拮抗薬の血圧降下剤効果を増大させる。
【0061】
本発明は、以下の実施例のいくつかによって容易に理解できるが、本発明はそれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0062】
β−シクロデキストリンとアンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬(例としてロサルタン)の包接化合物の調製
調製は、シクロデキストリンと、AT1受容体拮抗薬とを等モル比で行う。手短に言えば、β−シクロデキストリン及び/又はその誘導体を水中で攪拌、加熱しながら溶解する。次いで、当該量のロサルタンをこの水溶液に加える。溶解に続いて、混合液を液体窒素中で凍結し、凍結乾燥法にかけると乾燥固体が得られる。次いで、得られた固体を、赤外域での吸収分光、熱分析(TG/DTG及びDSC)及びX線回析を利用して物理化学的特徴付けを行う。β−シクロデキストリンの赤外スペクトルでは、3500cm−1付近でνOH、2910cm−1でνCH3(非対称)、及び1440cm−1でvC=Oのバンドが観察された。ロサルタンでは、3400cm−1付近でνNHに対応するバンド、2980cm−1でνCH3(非対称)、2770cm−1でνCH3(対称)、1600cm−1付近で芳香族のνC=C、1350cm−l付近でνCHのバンド、1500〜1600cm−1でνC=C+C=Nの振動様式の組合せに関連するバンド、760cm−1でCH3「rock(振動)」の動作に対応する強いバンドが確認された。包接化合物のIRスペクトルでは、CH3「rock」、2770cm−1でのνC−H(対称)、3400cm−lでのνN−Eのバンドは見られず、1500〜1600cm−1でイミダゾール及び芳香環のモードに関連するバンドが減少した。これらの観察から、包接化合物の形成が証明される。
【0063】
β−シクロデキストリンのTG/DTG曲線は、2つの分解段階を示し、一つは85℃付近での空洞中に含まれていた7つの水分子の損失による段階、もう一つは、320℃付近での物質の分解に対応する段階で、この結果は、個々のDSC曲線によっても支持される。ロサルタンのTG/DTG曲線は、3つの分解を示し、第1は、水の損失に対応する110℃付近での分解、第2は、物質の溶融を表す190℃付近での分解、第3は、ロサルタンの完全分解が起きる400℃付近での分解である。包接化合物のTG曲線は、高純度ロサルタンと比較した場合、熱安定性の上昇を示している。他方で、この同じTG曲線で2つの熱分解事象が観察される。第1は、3つの水分子の損失に対応する60℃付近での事象であり、もう1つは、約300℃で超分子化合物の完全分解によるものである。
【0064】
包接化合物のX線パターン回折では新規な結晶相が示され、観察時、β−シクロデキストリンのXRDパターンでは、主ピークは4°、12°、25°(2θ)に、ロサルタンのXRDパターンでは11°、15.2°、19°、23°及び29.2°(2θ)に示され、他方、包接化合物のXRDパターンでは、4°、23°及び25°(2θ)でピークの消失、6°及び15°(2θ)で新たなピークの出現というよりアモルファスな特徴が示された。
【実施例2】
【0065】
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンとアンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬(例としてロサルタン)の包接化合物の調製
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンとアンギオテンシンII AT1受容体との調製物をモル比1:1で調製した。手短に言えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン及び/又はその誘導体を水中で攪拌、加熱しながら溶解する。次いで、当該量のロサルタンをこの水溶液に加える。溶解に続いて、この混合液を液体窒素中で凍結し、凍結乾燥法にかけると乾燥固体が得られる。次いで、得られた固体を、赤外域での吸収分光、熱分析(TG/DTG及びDSC)及びX線回析を利用して物理化学的特徴付けを行う。ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの赤外スペクトルでは、3400cm−1でνO−H、2900cm−1付近でνC−H、1140cm−1でνC−O−C、及び1630cm−lでνOHの吸収バンドが示された。包接化合物のIRスペクトルでは、CH3「rock(振動)」、2770cm−lでのνC−H(対称)、及び3400cm−1でのνN−Hのバンドの不在が確認されたが、これは包接化合物の形成を証明する。
【0066】
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのTG/DTG曲線では、2つの水分子の損失に関連する質量損失が60℃付近で示された。次いで、約300℃で熱安定となるが、そのとき試料は完全に分解される。同じ現象は、DSC曲線でも確認され、367℃で発熱ピークが観察された所で、この物質の分解が示されていた。包接化合物のTG/DTG曲線では、2つの分解プロセスが示されていた。第1は、3つの水分子の損失に対応する100℃付近で、もう1つは、完全分解に起因する約300℃で示された。包接後、ゲスト分子の熱安定性が上昇することも確認されている。
【0067】
包接化合物のX線パターン回折では、アモルファス物質として示されるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンX線パターンと比較したとき、新規な結晶相が示された。ロサルタンのX線パターンでは、11°、15.2°、19°、23°及び29.2°(2θ)でピークが示された。
【実施例3】
【0068】
生分解性ポリマー(PLGA)と実施例1及び2から入手した包接化合物とをベースとするミクロ球の調製
まず、ジクロロメタンに溶かしたポリ(乳酸−グリコール酸)(PLGA)から構成される有機相と、アンギオテンシンII AT1受容体の拮抗剤、例えばロサルタンから構成される水相とから構成される乳濁液を調製する。次いで、この乳濁液を30秒間超音波処理し、1%の(PVA)溶液に加えると、第2の乳濁液が生成する。この乳濁液を1分間攪拌して、ミクロ乳濁液の均質化を完了する。この系を溶媒が蒸発するまで、加熱せずに2時間攪拌下で維持する。この混合液を2、3回遠心分離機にかけ、水で3度洗浄して表面に吸着したPVAを除去し、最終的に水2mlで再懸濁して凍結乾燥する。次いで、この固体のミクロ球を熱分析及び走査型電子顕微鏡SEMによって特徴付ける。このミクロ球のDSC曲線は、PLGAポリマーで観察されたガラス転移に類似するガラス転移を示した。個々のSEM顕微鏡写真から、粒径は50ミクロンであった。また、ミクロ球の表面が多孔質であることも確認されている。使用した異なる系の較正曲線をUV−VIS分光法によって作成し、濃度と吸光度の関係を得てカプセル化能力を決定し、それによって取り込まれたロサルタンの量を定量した(表1を参照のこと)。
【0069】
【表1】

【0070】
表1のデータからカプセル化の割合の値に大きな差異が確認された。この結果は、ロサルタン、β−シクロデキストリン、及びヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの溶解度の違いによるもので、β−シクロデキストリンは、溶解度が低く、カプセル化の割合が高いことを示している。
【実施例4】
【0071】
ラットでの、AngIIの昇圧効果における、β−シクロデキストリン及びHP−β−シクロデキストリンに包接されたロサルタンの効果の比較
大腿動脈及び大腿静脈にカテーテルを埋め込んだラットに、ロサルタン投与の前、及び投与(0,2mg/Kg)の2、6、24、48時間後に、アンギオテンシンIIを傾斜用量(5、10及び20ng/100μL)で注入した。ロサルタンはシクロデキストリンに包接されていた(胃管栄養法)。シクロデキストリンに包接されたロサルタンは、48時間までAngIIの昇圧効果を約75%妨害した。ロサルタン単独では、約8時間AngIIの効果を妨害した。
【実施例5】
【0072】
ラットでのAngIIの昇圧効果における、ロサルタンと生分解性ポリマーに取り込まれたロサルタンとの効果の比較
動脈圧遠隔測定記録装置(Data Science System)を装着した体重(330〜350g)の雄ラットに麻酔をかけ、大腿静脈にカテーテルを埋め込んだ。ロサルタン(0,7mg)、この薬物を(0,7mg)含む、生分解性ポリマーに取り込ませたロサルタン、又はポリマーのみの皮下注射の前後に、AngII(5、10及び20ng/100μL)の注射を行った。AngIIの注射を2、8及び24時間後、次いで24時間間隔で15日間行った。生分解性ポリマー−ロサルタン−β−シクロデキストリンの組合せを用いて、AngIIの昇圧効果の著しい妨害を15日目まで実証することができた。賦形剤の投与による著しい変化は観察されなかった。ロサルタンは、単独で約8時間AngIIの効果を妨害した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈性高血圧症、他の心血管疾患、及びその合併症を治療するための、シクロデキストリン及びその誘導体の使用を特徴とする、アンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬の製剤。
【請求項2】
動脈性高血圧症、他の心血管疾患、及びその合併症を治療するための、シクロデキストリン及びその誘導体を組み合わせた、又は組み合わせない生分解性ポリマーの使用を特徴とする、アンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬の製剤。
【請求項3】
動脈性高血圧症、他の心血管疾患、及びその合併症を治療するための、シクロデキストリン、又はアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシプロピル及びアシル又はシクロデキストリンを含む群から選択されたシクロデキストリンの誘導体、又はシクロデキストリンのポリマーの有機水溶液と、アンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬とを混合する請求項1又は2の製剤。
【請求項4】
拮抗効果の持続時間及び/又は有効性の増大を特徴とする、シクロデキストリン、その誘導体、及び生分解性ポリマーを使用したアンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬の製剤。
【請求項5】
ロサルタン、その誘導体/類似体、及び請求項1又は2の製剤の拮抗作用の持続時間及び/又は有効性を増大させる方法。
【請求項6】
拮抗薬の生物学的有効性の増大を特徴とする、シクロデキストリン、その誘導体、及び生分解性ポリマーを使用した、アンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬の製剤。
【請求項7】
ロサルタン、その誘導体/類似体、及び請求項1又は2の製剤の生物学的有効性を増大させる方法。
【請求項8】
動脈性高血圧症、他の心血管疾患及びその合併症を治療するための、シクロデキストリン、その誘導体、及び生分解性ポリマーの使用を特徴とする、アンギオテンシン−(1−7)及び/又はロサルタン、及びその誘導体/類似体の製剤。
【請求項9】
拮抗効果の持続時間及び/又は有効性の増大を特徴とする、アンギオテンシン−(1−7)及び/又はロサルタン、及びその誘導体/類似体と、シクロデキストリン、その誘導体及び生分解性ポリマーとの製剤。
【請求項10】
アンギオテンシン−(1−7)及び/又はロサルタン、及びその誘導体/類似体、及び請求項1、2、8又は9の製剤の、拮抗効果の持続時間及び/又は有効性を増大する方法。
【請求項11】
拮抗薬の生物学的有効性の増大を特徴とする、アンギオテンシン−(1−7)及び/又はロサルタン、及びその誘導体/類似体と、シクロデキストリン、その誘導体、及び生分解性ポリマーとの製剤。
【請求項12】
動脈性高血圧症、他の心血管疾患、及びその合併症を治療するための、シクロデキストリン及びその誘導体を含む、請求項1、2、8又は9に記載のアンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬の製剤であって、経口投与、筋肉注射、静脈内注射、皮下注射、吸入、又は生体適合性ポリマー、他の重合性マトリックス、カプセル、ミクロカプセル、ナノカプセル、ミクロ粒子、ナノ粒子、巨丸調製物、浸透圧ポンプ、拡散デバイス、リポソーム、リポ球(liposphere)を含む徐放賦形剤、及びインプラント又は注入することができる経皮送達システム、動物に投与するとイン・サイツで固体又はゲルを形成する液体を含む本発明の他の徐放組成物を特徴とする製剤。
【請求項13】
動脈性高血圧症、他の心血管疾患、及びその合併症を治療するための、シクロデキストリン及びその誘導体と組み合わせた、又は組み合わせない重合性生分解物の使用を特徴とする、請求項1、2、8又は12に記載のアンギオテンシンII AT1受容体拮抗薬の製剤であって、経口製剤、筋肉注射、静脈内注射、皮下注射、吸入、又はインプラント又は注入することができるデバイスであることを特徴とする製剤。

【公開番号】特開2010−47611(P2010−47611A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272002(P2009−272002)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【分割の表示】特願2002−578949(P2002−578949)の分割
【原出願日】平成14年4月9日(2002.4.9)
【出願人】(503374053)ユニベルシダデ フェデラル デ ミナス ジェライス − ユーエフエムジー (2)
【Fターム(参考)】