説明

動脈瘤のための診断バイオマーカー

動脈瘤の診断およびモニタリングのためのバイオマーカーが、複数のこれらのバイオマーカーを測定するためのアッセイの使用との関連で記載される。組織変性、特にエラスチンおよび/またはコラーゲン分解を、患者の血液(血清)および/または尿内でモニターして、動脈瘤性疾患の存在、進行または破裂の可能性を診断することができる。さらに、この分解に関与する酵素およびこれらの酵素の活性化または阻害に関与するバイオマーカーを、さらにまたは代わりにモニターすることができる。迅速な診断は、治療介入のための機会を提供することができ、衰弱性および生命を脅かす動脈瘤の発生を抑えることによって患者の健康を潜在的に増加させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、参照することにより本発明に援用される、「動脈瘤のための診断バイオマーカー」と題する、Ogleらの2008年1月18日出願の米国仮特許出願61/011,648に対して優先権を主張する。
技術分野
本発明は、一般に、体液中のバイオマーカーのためのアッセイを用いる動脈瘤の検出およびモニタリングに関する。本発明はさらに、動脈瘤のためのバイオマーカーアッセイをサポートする製品に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈瘤は、最終的に致命的な破裂にいたらしめる動脈構造の破壊およびそれに続く血管の拡張を特徴とする変性疾患である。動脈瘤がよくあるいくつかの位置として、腹大動脈(腹部大動脈瘤、AAA)、胸大動脈および脳動脈が挙げられる。さらに、脚の末梢動脈瘤、すなわち、膝窩動脈瘤および大腿動脈瘤は、この血管病変の一般的な位置である。末梢動脈瘤の患者の30〜60%が、AAAも有していると評価されているので、このような末梢動脈瘤の発生は、他の位置における動脈瘤の存在との関連性が強いと思われる(Mousa AY、Beauford RB、Henderson P、Patel P、Faries PL、Flores L、Fogler R.の「Update on the diagnosis and management of popliteal aneurysm and literature review」、Vascular 2006;14(2):103-108;Watelet J.の「Popliteal aneurysms」、J Cardiovasc Surg(Torino)2007;48(3):263-265、両方の文献は、参照することにより本発明に援用される)。
【0003】
動脈瘤は、多年にわたって成長し、健康上の大きな危険をもたらす。動脈瘤は、大量出血、脳卒中および出血性ショックをもたらす解離または破裂を引き起こす可能性があり、80%以上の症例において致命的でありうる(Isselbacher EM.の「Thoracic and abdominal aortic aneurysms」、Circulation 2005;111(6):816-828;この文献は、参照することにより本発明に援用される)。AAAは、特に老齢人口にとって重篤な健康上の懸念であり、50歳以上の患者の死因の上位10位内にある。腹部大動脈瘤の推定発現率は、年間10万人当たり約50人である。合衆国ではAAA単独に対して毎年およそ6万件の手術が行われている。児童では、AAAは、腹部の鈍的外傷または大動脈などの主幹動脈壁における弾性線維形成の欠陥であるマルファン症候群からもたらされうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の要旨
たとえば、デスモシンおよびイソデスモシン、エラスチン分解のペプチド生成物、コラーゲン分解の生成物、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(u-PA)、MMP-2およびMMP-9などのマトリックスメタロプロテイナーゼ、ホモシステイン、メタロプロテイナーゼの組織インヒビター(TIMPs)、それらの組み合わせまたはそれらの比率などの動脈瘤のための診断バイオマーカーを本明細書に記載する。診断バイオマーカーは、患者の血液、患者の尿またはそれらの組み合わせから得ることができる。1つの実施態様において、バイオマーカーの量、バイオマーカーの組み合わせまたは患者の血液もしくは尿サンプルにおいて検出された複数のバイオマーカーの比率は、動脈瘤状態の発症および進行と相関させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、患者における動脈瘤、動脈瘤関連障害またはその傾向の増加を診断する方法、存在する動脈瘤の段階を評価する方法または可能性のある将来の動脈瘤破裂の傾向を決定する方法に関する。該方法は、一般に、規定の常套的手法により、患者から得られる生体サンプル中で測定される複数のバイオマーカーのレベルを相関させて、動脈瘤の可能性、存在する動脈瘤の段階または動脈瘤破裂の可能性を評価するステップを含む。複数のバイオマーカーは、少なくとも1つのエラスチン分解生成物および少なくとも1つのコラーゲン分解生成物を含むことができる。1つの実施態様において、エラスチン分解生成物は、デスモシン、イソデスモシンまたはそれらの組み合わせである。1つの実施態様において、コラーゲン分解生成物は、ピリジノリン、デオキシピリジノリンまたはそれらの組み合わせである。
【0006】
いくつかの実施態様において、該手法は、バイオマーカーの基準レベルに対するバイオマーカーのレベルの比較を含み、ここで、基準レベルは、健常人または動脈瘤の所定の段階にあるコントロール患者から検出される複数のバイオマーカーのレベルの測定を通して得られているものである。もう1つの実施態様において、該手法は、バイオマーカーの基準レベルに対するバイオマーカーのレベルの比較を含む。基準レベルは、患者からの予め得られた値に基づいて得ることができる。1つの実施態様において、複数のバイオマーカーレベルの相関は、約6ヶ月〜約5年の間隔で繰り返され、少なくとも1つの繰り返されるバイオマーカーレベルが、患者から予め得られた値と比較されうる。いくつかの実施態様において、間隔は、約10ヶ月〜約18ヶ月でありうる。さらなる実施態様において、複数のバイオマーカーはさらに、マトリックスメタロプロテイナーゼを含む。特に、マトリックスメタロプロテイナーゼは、マトリックスメタロプロテイナーゼ1、2、8、9、12、13、18またはそれらの組み合わせを含むことができる。1つの実施態様において、エラスチン分解生成物は、デスモシン、イソデスモシンまたはそれらの組み合わせを含み、コラーゲン分解生成物は、ピリジノリン、デオキシピリジノリンまたはそれらの組み合わせを含み、マトリックスメタロプロテイナーゼは、マトリックスメタロプロテイナーゼ1、2、8、9、12、13、18またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施態様において、複数のバイオマーカーはさらに、エラスチン分解ペプチド、III型プロコラーゲンN末端プロペプチド、I型コラーゲンN末端テロペプチド、メタロプロテイナーゼの組織インヒビター、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子、ホモシステインまたはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0007】
もう1つの態様において、本発明は、患者における動脈瘤、動脈瘤関連障害またはその傾向の増加を診断する方法、存在する動脈瘤の段階を評価する方法または可能性のある将来の動脈瘤破裂の傾向を決定するもう1つの方法に関する。該方法は、一般に、規定の常套的手法により、患者から得られる生体サンプル内で測定される複数のバイオマーカーのレベルを相関させて、動脈瘤の可能性、存在する動脈瘤の段階または動脈瘤破裂の可能性を評価するステップを含む。複数のバイオマーカーは、少なくともデスモシンおよび/またはイソデスモシンならびにメタロプロテイナーゼを含む。いくつかの実施態様において、マトリックスメタロプロテイナーゼは、マトリックスメタロプロテイナーゼ1、2、8、9、12、13、18またはそれらの組み合わせを含む。特に、マトリックスメタロプロテイナーゼは、マトリックスメタロプロテイナーゼ2、9またはそれらの組み合わせを含むことができる。1つの実施態様において、バイオマーカーアッセイは、約6ヶ月〜約5年の間隔で繰り返すことができる。
【0008】
さらにもう1つの態様において、本発明は、患者における動脈瘤、動脈瘤関連障害またはその傾向の増加を診断する試験、存在する動脈瘤の段階を評価する試験または可能性のある将来の動脈瘤破裂の傾向を決定する試験を行うためのキットに関する。該キットは、患者からの生体サンプル中の複数のバイオマーカーのそれぞれのレベルを検出して、サンプル中の複数のバイオマーカーのレベルを決定するための1つ以上の作用剤を含むことができる。該バイオマーカーは、1つの集団におけるバイオマーカーレベルの既知の分布に関して、バイオマーカーのレベルの相関関係が、患者における動脈瘤の可能性、存在する動脈瘤の段階または動脈瘤破裂の可能性の評価として用られうるように選ばれる。1つの実施態様において、少なくとも1つの作用剤を、サンプル中のデスモシンおよびイソデスモシンのレベルの評価のために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】尿中デスモシンと動脈瘤進行の相関関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好ましい実施態様の詳細な説明
本明細書に記載するアプローチは、関連する生物学的マーカーの同定による、動脈瘤についてのより詳細あるいはより高価なスクリーニングを受けるべき個人を同定するための、患者の効率のよいスクリーニング手順のためのメカニズムを提供する。バイオマーカーの同定および選択は、動脈瘤の形成および進行を伴いうる生化学的プロセスに基づく。いくつかの実施態様において、複数のバイオマーカーを審査して、追跡することができる集合視野(aggregate scope)を提供することができる。複数のバイオマーカーの評価は、動脈瘤の臨床開発のより正確な評価を提供することもあり、特に複数バイオマーカーの再検討は、偽陽性測定の危険を減少させることができる。バイオマーカーアッセイを用いて、可能性のある動脈瘤発生の証拠を同定し、該疾患の進行を追跡し、また動脈瘤破裂の可能性を評価することができる。安価な初期検出手順の有効性は、該疾患の早期における治療介入を提供する。後期動脈瘤の場合、動脈瘤破裂の危険性により、外科的介入の必要性が促進される。バイオマーカーアッセイを、他の造影またはアッセイ方法と組み合わせて用いて、動脈瘤破裂の可能性をさらに決定することができる。
【0011】
動脈瘤は、アテローム性動脈硬化症、動脈成分の欠損、遺伝的感受性、高血圧その他などの1つ以上の様々なメカニズムによってひき起こされる。多くの場合、動脈瘤は、大動脈の構造内における石灰化脂質蓄積または動脈硬化性プラークの発生を伴う。プラーク発生中、慢性的に炎症がおこり、血管の構造が継続的に劣化する。血管劣化についてのさらなる記載を、Daugherty A、Cassis LA.の「Mouse models of abdominal aortic aneurysms.」、Arterioscler Thromb Vasc Biol 2004;24(3):429-434(これは、参照することにより本発明に援用される)に見出すことができる。動脈瘤の発症および進行は、活性化血管細胞および浸潤性炎症細胞から誘導されるトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)によるラスチンおよびコラーゲンなどの酵素的分解を伴う。結果として、動脈瘤の特徴は、エラスチンおよびコラーゲンなどの動脈構造タンパク質の分解、炎症性浸潤、石灰化および動脈構造の総合的破壊である。このことは、血管の少なくとも一部の機械的特性の喪失および進行性の拡張をもたらす。
【0012】
CTスキャン、MRIイメージングなどの高分解能イメージングテクノロジーの発達により、動脈瘤拡大の度合いを診断および同定する方法が利用可能である。これらの手順は高価なので、より進行した段階になる前に動脈瘤が検出されるように、症状を提示していない患者において高分解能イメージングが日常的に行われるというわけではない。小さいAAA(直径2cm以上)の初期診断後、最も一般的な医療的アプローチは、その発達を定期的に(たとえば、6ヶ月毎に)モニターし、もしそれが一定の程度に達したならば(典型的には直径5.5cm以上)、外科的処置を適用することである。同様のモニタリングは、他の動脈瘤に適用することができる。
【0013】
したがって、現在利用可能な動脈瘤の診断ツールは、動脈瘤のサイズに応じて大きく変わり、動脈瘤の最終的重篤度には相関関係があるかどうかはわからない。たとえば、5.5cmのサイズに達した動脈瘤は、発達の相対的に安定した段階に入っているかもしれず、したがって破裂またはさらなる動脈瘤の発生する傾向にはなく、この場合、迅速な外科的介入は必要でないかもしれない。特に、多くの動脈瘤患者が動脈瘤の外科的介入が危険でありうる他の疾患をすでに有していることを考慮すると、動脈瘤のより正確な評価が有利でありうる。他方、5.5cm以下の動脈瘤の切断は、予想外に潜在的になり、破裂を招くかもしれない。したがって、動脈瘤のさらな発達を評価する別の診断方法を有することが有利である。本明細書に開示するバイオマーカーアッセイは、このような別法を提供する。従来のサイズ評価と組み合わせた場合、本発明のバイオマーカーアッセイは、動脈瘤の状態のより正確な評価を提供することができ、結果として、介入の選択およびタイミングを提供することができた。特に、本発明バイオマーカーアッセイは、動脈瘤発達に関与するインビボメカニズムで活発な測定を提供する。
【0014】
適切な外科的処置は、血管内ステント移植修復(血管の内側への管の設置)または人工メッシュ血管移植片と病んだ大動脈との交換を含むことができる。動脈瘤の外科的処置は、毎年数千人の命を救い、生活の質を改善する。しかしながら、生存率は、手術関連合併症または器具関連問題により、外科手術後10年間で50%まで低下する。さらに、フルサイズ移植片の挿入のための観血手術は、非常に浸潤的であり、手術危険度の高い患者にはその使用を制限される。さらに、血管内ステントは、最初に、AAA患者のわずか30%〜60%のみにとって解剖学的に適切であり、エンドリークおよび移植片置換の危険が存在する。さらに、Isselbacherの「Thoracic and abdominal aortic aneurysms」、Circulation 2005;111(6):816-828(これは、参照することにより本発明に援用される)において、ステントおよびAAAの外科的処置に関する論点が議論されている。
【0015】
動脈瘤の早期診断は、これらの潜在的に衰弱性であり、生命を脅かす血管病変のための新しい種類の治療および介入に機会を提供することができた。そうすることによって、治療をより早く提供することができたが、このことは、年齢が動脈瘤を治療する現在のアプローチに伴う主な危険因子の1つであるので、有利である。Irvineらの「A comparison of the mortality rate after elective repair of aortic aneurysms detected either by screening or incidentally」、Eur J Vasc Endovasc Surg 2000;20(4):374-378(これは、参照することにより本発明に援用される)を参照。動脈瘤の非外科的処置のためのアプローチおよび関連器具ならびにデリバリーシステムが、Vyavahareらの「Elastin Stabilization of Connective Tissue」と題する公開された米国特許出願2006/0240066、Isenburgらの「Compositions for Tissue Stabilization」と題する米国特許仮出願61/113,881、Isenburgらの「Treatment of Aneurysm with Application of Elastin Stabilization Agent Embedded in a Delivery System」と題する米国特許仮出願61/066,688、およびOgleらの「Devices for the Treatment of Aneurysm」と題する米国特許出願12/173,726(これらはすべて、参照することにより本発明に援用される)に記載されている。
【0016】
さらに、動脈瘤進行の状態の予測を補佐することができる評価ツールは、非常に有利である。たとえば、AAAのための外科的バイパスまたは置換を受けたすべての患者の半分だけが、無視されるならば、最終的に動脈瘤破裂を経験することになる。たとえば、Lindholt JS.の「Activators of plasminogen and the progression of small abdominal aortic aneurysms」、Ann N Y Acad Sci 2006;1085:139-150(これは、参照することにより本発明に援用される)を参照。本発明のバイオマーカーの組み合わせを用いるアッセイパネルなどの動脈瘤進行をモニターするさらに高度な方法は、将来の破裂のより明確な予測方法を提供するかもしれない。どの患者が将来の破裂に対して最も危険度が高いかを明らかにすることによって、治療および介入を適宜に行うことができる。
【0017】
一般に、いくつかのバイオマーカーは、エラスチン分解を追跡し、他のバイオマーカーは、コラーゲン分解を追跡し、さらなるバイオマーカーは、構造タンパク質分解の原因である酵素を追跡し、また他のバイオマーカーは、分解プロセスの調節酵素に関与する。デスモシンは、エラスチンに特異的な修飾アミノ酸である;その全身的放出は、エラスチン分解を示し、このバイオマーカーは、それ自体、動脈瘤進行をモニターするのに有用でありうる。しかしながら、いくつかの実施態様において、エラスチン分解に相関する少なくとも1つのバイオマーカーおよびコラーゲン分解に相関する少なくとも1つのバイオマーカーを含む一組のバイオマーカーを追跡するのが望ましい。任意に、この一組のバイオマーカーは、構造タンパク質分解に関与する酵素である少なくとも1つのバイオマーカーおよび/またはタンパク質分解酵素の調節に関与する他のバイオマーカーをさらに含むことができる。さらに以下に記載するように、複数のバイオマーカーの追跡を用いて、疾患の段階の評価に相関しうるスコアを決定することができる。複数のバイオマーカーの使用は、動脈瘤発生および進行に相関する血管組織への可能性のある損傷の有意により正確な評価を提供することができる。
【0018】
特異的バイオマーカーに関連する抗体および/または特異的結合剤を用いて、該バイオマーカーのためのアッセイを開発することができる。いくつかの実施態様において、装置は、たとえば、単一の試験器具を用いて複数のバイオマーカーの同時または連続的アッセイを行う。 複数のバイオマーカーのためのアッセイおよびどのようにアッセイを行うかの説明書は、興味の対象である1つ以上のバイオマーカーを検出するプロセスを容易にするためのキットにおいて提供されうる。治療処方は、間隔をおいて継続中の存在する動脈瘤のモニタリングと調和させることができ、それは動脈瘤の状態にしたがって選択されうる。
【0019】
動脈瘤のための複数のバイオマーカーの加工は、疾患の状態のより正確な評価を提供することができる。このより正確な評価は、体液の分析を利用する疾患の早期診断ならびに疾患の経過の改善されたモニタリングを行う能力と一致する。改善された診断およびモニタリングは、疾患のより早い治療ならびに高価なイメージングの使用が減少される、より低いコストのモニタリングの可能性を提供する。バイオマーカーアッセイは、さらに、動脈瘤破裂の可能性をより正確に評価するための既存のイメージング法および使用できる介入方法に敬意を表することができた。
【0020】
デスモシン、イソデスモシンおよびエラスチン分解生成物
繊維性タンパク質であるエラスチンおよびコラーゲン(I型およびIII型)は、血管壁に強度と弾力を与える、大動脈および他の動脈の主要構造タンパク質である。エラスチンは、特に、繰り返し拡張および収縮する能力をもつ血管組織を提供する。エラスチンは、主として、アミノ酸であるグリシン、バリン、アラニンおよびプロリンからなる。エラスチンは、分子量64〜66 kDaであり、830個のアミノ酸からなる不規則またはランダムなコイルコンホメーションをもつ特殊化したタンパク質である。エラスチンは、リシルオキシダーゼによって触媒される反応において多くの可溶性トロポエラスチンタンパク質分子を連結し、巨大な不溶性で耐久性のある架橋アレイを作成することによって作られる。
その不溶性および著しく長い生物学的半減期により、エラスチンは、一般に、分解に対して耐性であることが理解される。しかしながら、マトリックスメタロプロテイナーゼ(特に、MMP-2、MMP-9およびMMP-12)という、エラスチンを分解する能力がある酵素の特異的一組がある。
【0021】
動脈構造の重大な分解、中央エラスチン含量の減少および破裂または断裂した弾性ラメラのからも明らかなように、動脈瘤組織内の重篤なエラスチン分解についての矛盾のない報告が存在する。この分解は、いくつかの他の相対的に動的なマトリックス成分とは異なって、エラスチンの迅速再生不能性(そのほぼ70年という生物学的半減期からも明らかである)を考慮する場合に特に重要である。さらに、エラスチンの分解は、可溶性エラスチンペプチドならびにデスモシンおよびイソデスモシン架橋剤の放出をもたらす。分解したエラスチンペプチドは、分解プロセスの受動的生成物ではない;むしろ、分解したエラスチンペプチドが、プロテアーゼ生成、走化性、細胞増殖および様々な他の生物学的活性において活性であることが実証されている。エラスチンペプチドの放出は、さらなるマトリックス分解のカスケードをもたらしうる。特に、これらのペプチドと平滑筋細胞との相互作用が、エラスチンラミニン受容体(ELR)の発現を増加させることが明らかにされている。この多くの細胞型において見出される67 kDaの受容体であるELRとの結合は、続いて、mRNAおよびタンパク質レベルの両方において、より多いMMP合成の促進をもたらす。
【0022】
多くの研究が、アップレギュレートされたMMP活性とエラスチンペプチドの存在との間のこの相関関係を確認している。灌流部位においてMMPレベルおよびマトリックス分解の増加を引き起こす動脈瘤動物モデルとしての管腔的に灌流されたエラスチンペプチドの使用は、これらのペプチドの生物学的活性も実証する。実証されたエラスチンペプチドの生物活性は、動脈瘤組織内のエラスチン分解、ならびに動脈瘤の診断および/またはその進行のモニタリングのためのバイオマーカーとしてのエラスチン分解生成物を使用する続いて生じる可能性の臨床的重要性を強調する。
【0023】
デスモシンおよびイソデスモシンは、可溶性トロポエラスチンタンパク質のリシンの4つの側鎖から形成されるエラスチンの不可欠な構成要素であり、不溶性エラスチン内の架橋を構成する。ピリジニウムコアのの1、3、4および5位に4つのアミノカルボキシ側鎖を有する、ピリジニウムコアをもつデスモシンの構造を式Iに示す。イソデスモシンは、ピリジニウムコアのの1、2、3および5位に4つのアミノカルボキシ側鎖を有する、デスモシンの構造異性体である。
【0024】

式I
分子式:C24H40N5O8
【0025】
デスモシンおよびイソデスモシンは、エラスチンに特異的なあアミノ酸誘導体である。エラスチンが分解されるとき、エラスチン分解生成物としてデスモシンおよびイソデスモシンが放出される。さらに、デスモシンおよびイソデスモシンは、代謝されず、身体からの排泄のために尿へ移される。動脈瘤の発症および進行は酵素的エラスチンの分解を伴うので、患者の血液または尿中の所定のレベルのデスモシンおよびイソデスモシンの検出は、動脈瘤の徴候でありうる。さらに、健常人からの対応するコントロール値に対する、患者の血液または尿サンプル中のデスモシンおよびイソデスモシンのレベルの増加は、動脈瘤の進行に相関しうる。したがって、デスモシンおよびイソデスモシンは、動脈瘤のための診断バイオマーカーとして用いることができる。
【0026】
たとえば、酵素免疫測定法(Osakabe T.らの「Comparison of ELISA and HPLC for the determination of desmosine and isodesmosine in aortic tissue elastin」、J. Clin Lab Anal Vol. 9 pgs 293-296(1995)などを参照);同位体希釈(Stone P. J.らの「Measurement of urinary desmosine by isotope dilution and high performance liquid chromatography」、Am Rev Respir Dis Vol. 144 pgs 284-290(1991)などを参照);高性能液体クロマトグラフィー(Covault H. P.らの「Liquid-chromatographic measurement of elastin」、Clin Chem Vol. 28 pgs 1465-1468(1982)などを参照);および/またはラジオイムノアッセイ(Starcher B.の「A role for neutrophil elastase in the progression of solar elastosis」、Connect Tissue Res Vol. 31 pgs 133-140(1995)などを参照)(これらの4つの文献は、参照することにより本発明に援用される)などのデスモシンを測定するいくつかの方法があるデスモシンおよびイソデスモシンはまた、紫外分光法、蛍光分光法、質量分析または当業界で公知の他の分光技術を用いる手順によって定量してもよい。体液中のデスモシンの測定は、 Stoneらの「Measuring Tissue Breakdown Products in Bodily Fluids」と題する米国特許5,354,662(これは、参照することにより本発明に援用される)に記載されている。Cantorらの「Measurement of Elastic Fiber Breakdown Products in Sputum」と題する米国特許7,166,437は、ペーパークロマトグラフィーを用いるデスモシンおよびイソデスモシンの測定を報告した(これは、参照することにより本発明に援用される)。さらに、尿中のエラスチンペプチドおよびデスモシンのアッセイは、動脈瘤をもつ患者のエラスチン分解を特徴付けるのに有用であることが見いだされている;Osakabeらの「Characteristic change of urinary elastin peptides and desmosine in aortic aneurysm」、Biol. Pharm. Bull. 1999;22(8):854-857(これは、参照することにより本発明に援用される)を参照。
【0027】
エラスチンペプチドなどのエラスチン分解の他の直接生成物も同様にバイオマーカーとして用いることができる。Hagemanは、「Diagnostics and the Therapeutics for Macular Degeneration」と題する米国特許7,108,982(これは、参照することにより本発明に援用される)において、ペプチド Val-Gly-Val-Ala-Pro-Gly(VGVAPG)などのエラスチン分解生成物を検出する免疫学的方法を用いることを提案した。1つの実施態様において、患者の血液または尿サンプル中に検出されたデスモシンおよびイソデスモシンの量は、動脈瘤の発症および進行に直接相関しうる。もう1つの実施態様において、患者の血液または尿サンプル中で検出されたエラスチン分解生成物の量は、動脈瘤の発症および進行に直接相関しうる。1つの実施態様において、エラスチン分解生成物は、VAVAPGペプチドである。
【0028】
コラーゲン代謝産物
動脈瘤評価のためのさらなる有用なバイオマーカーは、コラーゲン代謝に関連している。エラスチン分解と同様に、動脈瘤の発症および進行は、結合組織中のコラーゲンの異常代謝を伴う。たとえば、Loftus IM、Thompson MM.のVasc Med 2002;7(2): 117-133(これは、参照することにより本発明に援用される)を参照。動脈瘤発達の過程において、コラーゲンの分解および再生の過程が交互に起こることが示唆されている。コラーゲン分解が特定の程度に達すると、動脈瘤組織の破裂が起こる場合がある。たとえば、Choke E、Cockerill G、Wilson WRらのEur J Vasc Endovasc Surg 2005;30(3): 227-244(これは、参照することにより本発明に援用される)を参照。患者の血液または尿中のコラーゲン代謝産物の異常なレベルの検出は、動脈瘤の徴候でありうる。患者の血液または尿サンプル中のコラーゲン代謝産物の異常なレベルは、動脈瘤の進行と相関しうる。したがって、コラーゲン代謝産物は、動脈瘤のための診断バイオマーカーとして用いることができる。1つの実施態様において、患者の血液または尿サンプル中に検出されたコラーゲン代謝産物の量は、動脈瘤の発症および進行と相関しうる。
【0029】
たとえば、コラーゲン代謝回転の増加は、患者体液中のIII型プロコラーゲンのアミノ末端プロペプチドの濃度によって決定することができる。III型プロコラーゲンN末端プロペプチドは、主なコラーゲン分解および代謝回転産物の1つである。1つの実施態様において、患者の血液または尿サンプル中で検出されたIII型プロコラーゲンN末端プロペプチドの量は、動脈瘤の発症および進行に相関しうる。一般に動脈壁に関連するコラーゲンであるIII型コラーゲンの分解産物の検出は、以下の特許に記載されている(これらは、参照することにより本発明に援用される):Brocksらの「Monoclonal Antibodies for the Selective Immunological Determination of Intact procollagen peptide (Type III)and procollagen (Type III)in Body Fluids」と題する米国特許5,679,583、Eyreの「Methods of Detecting collagenIII型 Degradation In Vivo」と題する米国特許6,010,862およびBondeらの「Estimation of the Fragmentation Pattern of collagen in Body Fluids and the Diagnosis of Disorders Associated with the metabolism of collagen」と題する米国特許6,210,902(これは、参照することにより本発明に援用される)。同様に、I型コラーゲンの既知の分解産物である、I型コラーゲンのアミノテロペプチド(NTx)も、動脈瘤検出バイオマーカーとして用いることができる。市販のアッセイであるOstex International製のオステオマーク(登録商標)は、患者からの血清または尿サンプル中のNTxを分析するのに用いることができる。
【0030】
ピリジノリン(PYR)は、成熟コラーゲンにおいて見いだされた3-ヒドロキシピリジニウム架橋化合物である。デオキシピリジノリン(dPYR)は、成熟コラーゲンにおいて架橋剤としても機能する少量存在するPYRの類縁体である。成熟コラーゲンは、これらの2つの安定な架橋剤によって主として安定化される。動脈瘤におけるコラーゲン分解の間、PYRおよびdPYRは、遊離分子またはコラーゲンペプチドのフラグメントに結合してのいずれかとして動脈瘤組織から放出される。いったん放出されると、PYRおよびdPYRは、かなりはさらには代謝されず、したがって、これらの化合物は、コラーゲンのための特異的バイオマーカーとして用いることができる。たとえば、PYRおよびdPYRは、特に、健常人および代謝性骨疾患を発症する危険性の高い患者において骨再吸収率を評価するためのツールとして用いられる。Millerらの「Practical Clinical Application of Biochemical Markers of Bone Turnover: Consensus of an Expert Panel」、J Clin Densitom、1999、2(3):323-42(これは、参照することにより本発明に援用される)を参照。骨中のPYR:dPYR比は、3.5:1である。Stoneらの「Cross-linked elastin and Collagen Degradation Products in the Urine of the Patients with Scleroderma」、Arthritis Rheum 1995;38: 517-24(これは、参照することにより本発明に援用される)に記載されているように、Stoneらは、軟組織に由来するPYRの量を測定するために、式:[stPYR]=[PYR]−3.5 x [dPYR]を用いて、検出された総PYRから骨再吸収によって生成されたPYRを差し引くことを提案した。Stoneによって提案された式を用いて、Istokらは、stPYRと皮膚の線維症とを成功裏に相関させることができた。Istokらの「Increased Urinary Pyridinoline Cross-link Compounds of Collagen in Patients with Systemic Sclerosis and Raynaud’s Phenomenon」、Rheumatology 2001、40:140-146(これは、参照することにより本発明に援用される)を参照。
【0031】
同様に、動脈瘤のためのバイオマーカーとしてPYRおよびdPYRを用いるとき、骨再吸収因子が考慮されうる。研究は、動脈瘤組織中の総コラーゲン含量が、古い成熟コラーゲン中の架橋の増加を伴うことを示唆する。健康な患者におけるPYRおよびdPYRレベルに対する動脈瘤患者における該レベルの変化により、PYRおよびdPYRは、疾患の進行に対するバイオマーカーとして用いることができる。マトリックスタンパク質における変化は、さらに、Carmoらの「Alteration of Elastin, Collagen and their Cross-links in Abdominal Aortic Aneurysms」、Eur J Vasc Endovasc Surg 23、543-549、2002(これは、参照することにより本発明に援用される)に記載されている。尿および血清PYRおよびdPYRレベルは、Quidel Corp.によって提供されるイムノアッセイなどの市販のアッセイを用いて測定することができる。別法として、紫外分光法、蛍光分光法、質量分析または当業界で公知の他の分光技術をを用いる手順によって、PYRおよびdPYRを定量してもよい。
【0032】
マトリックスメタロプロテイナーゼ
酵素のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリーは、胚発生、生殖および組織リモデリングなどの正常な生理的過程ならびに関節炎、アテローム性動脈硬化および動脈瘤などの疾病過程における過剰の細胞マトリックス(ECM)の分解に関与する。大部分のMMPは、細胞外プロテイナーゼによって切断されると活性化する不活性な前駆タンパク質として分泌される。動脈瘤に特異的であり、最もひろく研究されたMMPは、エラスチンを分解すると特定されている酵素である:MMP-2(72 kDaのゼラチナーゼ)、MMP-9(92 kDaのゼラチナーゼ)およびMMP-12(マクロファージメタロエラスターゼ)。このような酵素の役割は、実験結果ならびに移植されたヒトAAAにおける研究によって認証されている。
【0033】
MMP-2は、実験動物モデルおよびヒト組織における小さいかまたは初期動脈瘤内で高濃度で見いだされているので、初期の動脈瘤形成において重要な役割を演じると考えられている。たとえば、Ailawadiらの「Current concepts in the pathogenesis of abdominal aortic aneurysm」、J Vasc Surg 2003;38(3):584-588(これは、参照することにより本発明に援用される)を参照。Freestoneらの「Inflammation and マトリックスメタロプロテイナーゼs in the enlarging abdominal aortic aneurysm」、Arterioscler Thromb Vasc Biol 1995;15(8):1145-1151(これは、参照することにより本発明に援用される)に記載されているように、平滑筋および線維芽細胞によって分泌されうるMMP-2の増加というこの傾向は、酵素活性の増加と相関させることができる。MMP-2はさらに、基底膜の主な構造成分であるIV型コラーゲンを分解し、血管新生および炎症応答の調節において役割を演じる。
【0034】
MMP-9は、AAAの発達に寄与することも見いだされている。MMP-9は、エラスチンを分解することが観察されているが、MMP-2よりも程度がいくらか低い。Seniorらの「Human 92- and 72-kilodalton type IV コラゲナーゼs are elastases」、J Biol Chem 1991;266(12):7870-7875(これは、参照することにより本発明に援用される)を参照。MMP-9は、ヒト動脈瘤組織において正常な大動脈の10倍のレベルで測定されている。Thompsonらの「Production and localization of 92-kilodalton gelatinase in abdominal aortic aneurysms. An elastolytic metalloproteinase expressed by aneurysm-infiltrating macrophages」、J Clin Invest 1995;96(1):318-326(これは、参照することにより本発明に援用される)に記載されているように、この同じ研究は、MMP-9過剰発現の主な源が、マクロファージに位置することを明らかにした。Dawsonらの「Pharmacotherapy of abdominal aortic aneurysms」、Curr Vasc Pharmacol 2006;4(2):129-149(これは、参照することにより本発明に援用される)に記載されているように、MMP-9は、動脈瘤組織内で見いだされる最も豊富なエラスチン分解酵素であり、強いコラーゲン分解能力も有する。
【0035】
動脈瘤形成へのMMP-2およびMMP-9の関与は、ノックアウトマウスモデルの実施によってさらに認証されている。Longoらの「マトリックスメタロプロテイナーゼs 2 and 9 work in concert to produce aortic aneurysms」、J Clin Invest 2002;110(5):625-632(これは、参照することにより本発明に援用される)に記載されているように、MMP-2およびMMP-9ノックアウトマウスは、実験的動脈瘤形成に対して非常に耐性があり、大動脈直径の増加を事実上示さなかった。この研究は、いずれかのゼラチナーゼの不在が、組織のマトリックスへの保護を提供することを明らかにした。結果として、正確に動脈瘤形成を導き出すために、これらの2つのMMPの間の相互作用が、明らかに必要である;言い換えれば、証拠は、酵素がこの病変内で相乗的に働くことを示唆している。
【0036】
マクロファージメタロエラスターゼとしても知られているMMP-12は、可溶性および不溶性エラスチンを分解する。Curciの「Expression and localization of macrophage elastase(マトリックスメタロプロテイナーゼ-12)in abdominal aortic aneurysms」、J. Clin Invest 1998;102:1900-10(これは、参照することにより本発明に援用される)に記載されているように、MMP-12は、ヒト動脈瘤組織において見いだされている。MMP-12の発現パターンは、他のエラスチン分解酵素とは異なっており、エラスチン分解における独特の役割を示唆する。実験モデルにおいて、MMP-12ノックアウトマウスは、動脈瘤形成に対していくらか改善された耐性を示すことが観察されている。しかしながら、該マウスモデルにおいて、MMP-12のノックアウトの効果は、MMP-2およびMMP-9ノックアウト研究と比べて全く有意ではなかった。
【0037】
したがって、正常なコントロール個人と比べて患者において変化したMMP-2、MMP-9およびMMP-12の活性は、動脈瘤の発症および進行と相関させることができる。患者の血液または尿中のMMP-2、MMP-9およびMMP-12の変化の異常なレベルの検出は、動脈瘤の徴候でありうるか、または動脈瘤の進行と相関させることができる。したがって、MMP-2、MMP-9およびMMP-12は、動脈瘤の診断バイオマーカーとして用いることができる。
【0038】
直接および間接的にECM分解に寄与する他のMMPも同様にバイオマーカーとして用いることができる。たとえば、コラゲナーゼは、三重らせん線維状コラーゲンを分解する能力がある唯一の既知の哺乳動物酵素である。たとえば、コラゲナーゼとして、MMP-1、MMP-8、MMP-13およびMMP-18が挙げられる。MMP-1は、ヒト動脈瘤において正常レベルと比べて増加することが観察されている間質コラゲナーゼである。直接コラーゲンを消化する能力をもつことに加えて、MMP-1は、潜在性MMP-9をその活性型に切断することもできる。相対的に強力な好中球コラゲナーゼであるMMP-8は、ヒトAAA組織内で上昇していることが観察されている。この酵素は、アテローム性動脈硬化とも関連づけられており、最近では、動脈瘤破裂の部位においてMMP-9とともに豊富であることが明らかにされている。コラゲナーゼ-3とも呼ばれるMMP-13は、動脈瘤性大動脈において過活動であることも観察されている。このコラゲナーゼは、平滑筋細胞(SMC)に局在しており、他の潜在性MMPを活性化させることに巧みである。
【0039】
したがって、正常なコントロールと比べて変化したMMP-1、MMP-8、MMP-13およびMMP-18活性は、動脈瘤の発症および進行と相関させることができる。患者の血液または尿中のMMP-1、MMP-8、MMP-13およびMMP-18の変化の異常なレベルの検出は、動脈瘤の徴候でありうるか、または動脈瘤の進行と相関させることができる。したがって、MMP-1、MMP-8、MMP-13およびMMP-18は、独立して、および/または1つ以上の追加のバイオマーカーと組み合わせて、動脈瘤の診断バイオマーカーとして用いることができる。
【0040】
1つの実施態様において、患者サンプルにおいて検出されるMMP-1、MMP-8、MMP-2、MMP-9、MMP-10、MMP-13およびMMP-18またはそれらの組み合わせの量は、動脈瘤の発症および進行と相関させることができる。動脈瘤の異なる段階での患者におけるMMPの発現は、正常なコントロール個人と比べてその異なるパターンを提示する可能性がある。したがって、もう1つの実施態様において、患者サンプル中に検出される直接および間接的にECM分解に寄与するMMPの量は、動脈瘤の発症および進行と直接相関させることができる。患者サンプルは、血液サンプル、尿サンプルまたは他の体液でありうる。
【0041】
たとえば、商業的供給源からなどのELISAキットを用いる酵素免疫測定法、MMPの選択的基質の分解ならびにMMPの分子量によってMMPを同定するザイモグラフィー、およびプロテオミクスの概念を用いる質量分析など、マトリックスメタロプロテイナーゼの検出のために様々な方法が発達している。Lopez-Avilaらは、組織(すなわち、ヒト血清または血漿)からMMPを探し出すための抗MMP触媒性ドメイン抗体を用いる免疫親和性クロマトグラフィーおよび個々のタンパク質としてMMPを分離するための高圧液体クロマトグラフィーの両方を利用する二元分離法を提案している;Lopez-Avila V.らの「Methods for detection of matrix metalloproteinases as biomarkers in cardiovascular disease」、Clinical Medicine: Cardiology 2008:2 75-87(これは、参照することにより本発明に援用される)を参照。
【0042】
メタロプロテイナーゼの組織インヒビター(TIMPs)
マトリックスメタロプロテイナーゼ(TIMP)の組織インヒビターは、ECM中のMMPの活性をコントロールする天然のインヒビターのファミリーである。患者の血液または尿サンプル中のMMPとTIMPとの間の比率の異常なレベルは、血管病変、したがって動脈瘤の進行と相関させることができる。患者の血液または尿中のMMPとTIMPとの間の異常な比率の検出は、動脈瘤の徴候として用いることができる。したがって、MMPとTIMPとの間の比率は、動脈瘤のための診断バイオマーカーとして用いることができる。1つの実施態様において、患者の血液または尿サンプル中に検出されるMMPとTIMPとの間の比率は、動脈瘤の発症および進行と相関させることができる。1型TIMPの測定は、Holten-Andersenらの「Tissue Inhibitor of matrix metalloproteinases Type-1(TIMP-1)as a Cancer Marker」と題する米国特許7,108,983(これは、参照することにより本発明に援用される)に記載されている。1型TIMPは、MMP-9との複合体を形成することが観察されている。
【0043】
組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)
組織プラスミノーゲン活性化因子(PLATまたはtPAと略される)は、血管、毛細血管、肺動脈、心臓および子宮の内皮細胞の表面に通常見いだされるセリンプロテアーゼであり、血管外傷後に分泌される。組織プラスミノーゲン活性化因子は、プロ酵素プラスミノーゲンを、細胞外マトリックス(ECM)分解に直接または間接的(他の酵素を活性化することによって)に寄与する線維素溶解酵素であるプラスミンに変換する。正常レベルと比べて患者において変化したtPAレベルは、動脈瘤の発症および進行と相関させることができる。患者の血液または尿中のtPAの異常なレベルの検出は、動脈瘤の徴候となりうる。患者の血液または尿サンプル中のtPAの変化したレベルは、動脈瘤の進行と相関させることができる。したがって、tPAは、動脈瘤のためのバイオマーカーとして用いることができる。ECM分解に直接または間接的に寄与する他の線維素溶解酵素も同様にバイオマーカーとして用いることができる。1つの実施態様において、患者の血液または尿サンプル中に検出されるtPAの量は、動脈瘤の発症および進行と直接相関させることができる。もう1つの実施態様において、患者の血液または尿サンプル中に検出されるECM分解に直接または間接的に寄与する線維素溶解酵素の量は、動脈瘤の発症および進行と相関させることができる。tPAおよびウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子の生体サンプルにおける測定のためのアッセイは、Elvinらの「Assay Method」と題する米国特許7,045,280(これは、参照することにより本発明に援用される)に記載されている。
【0044】
ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)
ウロキナーゼ-型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)とも呼ばれるウロキナーゼ(アボキナーゼ)は、セリンプロテアーゼである(EC 3.4.21.73)。ウロキナーゼは、最初はヒトの尿から単離されたが、血流およびECMなどのいくつかの生理学的場所に存在する。uPAは、セリンプロテアーゼプラスミンの不活性な酵素前駆体型であるプラスミノーゲンの一次的生理的基質である。生理的環境に応じて血栓溶解またはECM分解に関与するプラスミンの活性化は、タンパク質分解カスケードを始動させる。同様に、uPA活性の増加は、動脈瘤の発症および進行と相関させることができる。患者の血液または尿中のuPAの異常なレベルの検出は、動脈瘤の徴候である。正常レベルと比べて患者の血液または尿サンプル中のuPAの変化したレベルは、動脈瘤の進行と相関させることができる。したがって、UPAは、動脈瘤のための診断バイオマーカーとして用いることができる。ECM分解に直接または間接的に寄与する他の線維素溶解酵素も同様にバイオマーカーとして用いることができる。1つの実施態様において、患者の血液または尿サンプル中に検出されるuPAの量は、動脈瘤の発症および進行と相関させることができる。
【0045】
ホモシステイン
動脈壁においてECMの激しいリモデリング、特にメタロプロテイナーゼであるtPAおよびuPAの活性化を引き起こす生理的アミノ酸ホモシステインの増加したレベルは、血管疾患の危険因子とみなされる。したがって、ホモシステインの増加したレベルは、動脈瘤の発症および進行と相関させることができる。患者の血液または尿中のホモシステインの異常なレベルの検出は、動脈瘤の徴候となりうる。独に、患者の血液または尿サンプル中のホモシステインの上昇したレベルは、動脈瘤の進行と相関させることができる。したがって、ホモシステインは、動脈瘤の診断バイオマーカーとして用いることができる。生体サンプルにおけるホモシステインの測定のためのアッセイは、Kawasakiらの「Enzymatic Cycling Assays for ホモシステイン and Cystathionine」と題する米国特許6,867,014(これは、参照することにより本発明に援用される)に記載されている。
【0046】
ECM分解に寄与するメタロプロテイナーゼであるtPAおよび/またはuPAの他の活性化因子も同様にバイオマーカーとして用いることができる。1つの実施態様において、患者の血液または尿サンプル中に検出されるホモシステインの量は、動脈瘤の発症および進行と相関させることができる。もう1つの実施態様において、患者の血液または尿サンプル中に検出されるECM分解に寄与するメタロプロテイナーゼであるtPAおよび/またはuPAの他の活性化因子の量は、動脈瘤の進行と直接相関させることができる。
【0047】
バイオマーカーの組み合わせ
単一のバイオマーカーの量の検出は、動脈瘤およびその進行の徴候として用いることができるが、バイオマーカーの組み合わせもまた有効に用いることができる。一般に、複数のバイオマーカーの測定は、動脈瘤の状態の評価の実行のために効果的に用いることができる。1つの実施態様において、エラスチン分解生成物およびコラーゲン分解生成物の組み合わせを用いて、動脈瘤の発症および/または進行を検出することができる。さらなる、あるいは別の実施態様において、ECM分解に寄与する酵素および/または該酵素の調節に関与する他バイオマーカーは、エラスチン分解生成物および/またはコラーゲン分解生成物に加えて、あるいは置換して、用いることができる。さらに、各グループからのバイオマーカーの組み合わせは、いくつかの実施態様において用いることができる。疾患の段階に応じて、すべてのバイオマーカーが、同時に正常値からシフトすることはないので、いくつかの実施態様において、複数のバイオマーカー、特に異なるタイプのバイオマーカーの使用は、偽陰性状態の発生率を低下させることができる。
【0048】
本明細書に記載したバイオマーカーの少なくとも数種は、バイオマーカーのレベルが、健常人についての狭い範囲に存在することができる。カットオフ値は、合理的に少ない偽陽性を得るように合理的に選択されうる。したがって、カットオフを超える値は、動脈瘤またはもう1つの結合組織疾患を示しうる。しかしながら、動脈瘤および他の結合組織疾患の複雑性ならびに該疾患の増悪中の変化状態により、たとえ疾患の有意な生理的徴候が起こるとしても、特定のバイオマーカーのレベルは、正常な分布の外側にはないかもしれない。したがって、選択されたカットオフ値による単一のバイオマーカーへの依存は、病態の状態の望ましくない不完全な見解をもたらしううる。
【0049】
動脈瘤の状態の評価は、様々なバイオマーカー測定のインプットに基づく多変数関数として開発されうる。したがって、スコアS(b1,b2,b3,b4)は、個々のバイオマーカー測定b1,b2,b3,b4の関数でありうる。一般に、スコアは、2、3、4またはそれ以上のバイオマーカーから決定することができ、10またはそれ以上のバイオマーカーに達することができる。一例として、1つの評価は、複数のマーカーをチェックして、各マーカーのレベルが選択されたカットオフ値の外側であるかどうか(必要に応じて上限または下限でありうる)を見ることを含みうる。複数のマーカーの評価を通して、偽陰性読み取りの可能性が低下する。また、複数のバイオマーカーのレベルの測定に基づいて、より複雑な式を用いることもできる。
【0050】
一般に、スコアは、より正確な疾患進行の決定因子でありうる。スコアは、何らかの直接イメージングなしの仮想の組織構造として血管の健康と有効に相関させることができる。1つの実施態様において、バイオマーカーの組み合わせにおけるエラスチン分解生成物は、デスモシンである。他の実施態様において、バイオマーカーの組み合わせにおけるコラーゲン分解生成物は、ピリジノリンである。1つの実施態様において、バイオマーカーの組み合わせにおける酵素は、tPA、uPA、MMP-1、MMP-2、MMP-8、MMP-9、MMP-13、MMP-18またはそれらの組み合わせである。他の実施態様において、酵素の調節に関与する他のバイオマーカーは、ホモシステイン、TIMPまたはそれらの組み合わせである。
【0051】
動脈瘤の様々な段階において、種々のバイオマーカーが正常な状態と比べて異なる変化したレベルにて存在することができるので、動脈瘤の段階を策定するてめのバイオマーカーの組み合わせに基づく評価方法論を開発することは、非常に遊離でありうる。たとえば、エラスチン分解は、動脈瘤の顕著な特徴である。したがって、エラスチン分解生成物であるデスモシンおよびイソデスモシンの増加レベルの検出は、活動性の動脈瘤の徴候でありうる。しかしながら、動脈瘤の成長サイクルの終点に向かって、動脈瘤組織中の大部分のエラスチンは、消耗してしまい、したがって、この段階で検出されるエラスチン分解生成物は、動脈瘤成長のピーク期で検出される値よりも少ない可能性がある。したがって、バイオマーカーの組み合わせをもちいることの利点が、非常に重要でありうる。
【0052】
健常人におけるバイオマーカーのレベルを測定し、記録して、バイオマーカーのレベルの基準値を提供することができる。具体的に言うと、健常人におけるバイオマーカーの記録されたレベルは、動脈瘤の疑いのある患者におけるレベルと比較することができる基準値を形成する。個人のバイオマーカーのレベルは、彼または彼女の寿命の間で大きく変化するので、異なる年齢および性別のグループに対して異なる基準値を確立することができる。
【0053】
同様に、動脈瘤の異なる段階にある個人のバイオマーカーのレベルを測定し、記録して、経時的な特定の患者の状態の展開の評価を支援することができる。動脈瘤患者からのバイオマーカーのレベルを、記録された基準レベルにより調節して、動脈瘤の異なる段階におけるバイオマーカーの変化パターンを確立することができる。健康な患者における値とは相違する動脈瘤バイオマーカーの確立されたパターンを用いて、今度は、患者をスクリーニングすることができる。日常的な健康診断としてバイオマーカーを用いることができ、あるいは、動脈瘤の疑いのある人口層のための独立したスクリーンとして用いることができる。いったん患者におけるバイオマーカーの変化したレベルが検出されると。バイオマーカーレベルのパターンを、他の動脈瘤患者からの動脈瘤バイオマーカーの確立されたパターンと比較して、あるいは、同じ患者の動脈瘤バイオマーカーの以前に決定されたパターンと比較して、動脈瘤の段階を評価することができる。続いて、適切な介入法を採用して、患者を治療することができる。動脈瘤の初期段階にある患者には、介入的手順を使用することはできないかもしれず、追跡スクリーン試験を行うことができる。1つの実施態様において、患者は、約10ヶ月〜約18ヶ月の間隔でスクリーニングされる。もう1つの実施態様において、患者は、約6ヶ月〜約3年の間隔でスクリーニングされる。さらにもう1つの実施態様において、患者は約6ヶ月〜約5年の間隔でスクリーニングされる。当業者は、上記の明確な範囲内にあるスクリーン間隔のさらなる範囲が、本願明細書の開示内に意図され、含まれることを認識するであろう。
【0054】
アッセイ測定方策
当業界で知られているアッセイ方法および装置を本明細書に開示するバイオマーカーの検出および分析に適合させることができる。いくつかの実施態様において、バイオマーカーの存在または量を、たとえば、抗体または各バイオマーカーに特異的なその他の特異的結合剤を用いて測定し、特異的結合を介して検出することができる。たとえば、酵素結合免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)および競合結合アッセイなどのいずれかの適当なイムノアッセイを利用してもよい。バイオマーカーへの抗体またはリガンドの特異的免疫学的結合は、直接または間接的に検出することができる。直接的標識として、抗体に結合している蛍光または発光タグ、金属、色素および放射性核種などが挙げられる。間接的標識は、アルカリホスファターゼおよびホースラディッシュペルオキシダーゼなどの当業界で既知の様々な酵素を含むことができる。
【0055】
一般に、様々な物理学的形式で、バイオマーカーの分析を行うことができる。たとえば、マイクロタイタープレートまたはオートメーションの使用を利用して、多数の試験サンプルの処理を支援することができる。別法として、単一サンプル形式を発展させて、たとえば、外来輸送または緊急治療室設定においてタイミングよく即時処理および診断を支援することができる。
【0056】
バイオマーカーに特異的な固定化抗体および/またはその他の結合剤の使用もまた、本明細書に記載のバイオマーカーの検出のために意図される。該抗体は、磁気またはクロマトグラフィーマトリックス粒子、アッセイ場所(マイクロタイターウエルなど)の表面、固相基質マトリックスまたは膜(プラスチック、ナイロン、紙など)の塊などの様々な固相担体上に固定化されることができた。いくつかの実施態様において、アッセイストリップは、固相支持体上に配列された抗体または複数の抗体をコーティングすることによって調製することができる。次いで、このストリップを試験サンプルに浸し、次いで、洗浄および検出ステップを通して迅速に処理して着色スポットなどの測定可能なシグナルを生成する。バイオマーカーの別々または連続的アッセイのために、適当な装置として、ElecSys(Roche)、AxSym(Abbott)、Access (Beckman)、ADVIA.RTMまたはCENTAUR.RTM. (Bayer) 免疫アッセイシステム、NICHOLS ADVANTAGE.RTM. (Nichols Institute) 免疫アッセイシステムなどの臨床ラボ分析装置が挙げられる。
【0057】
いくつかの実施態様において、装置は、単一の試験器具を用いて、複数のバイオマーカーの同時アッセイを行う。特に有用な物理学的形式は、複数の異なる分析物の検出のための複数の別個のアドレス可能な場所を有する表面を含む。このような形式として、たとえば、タンパク質マイクロアレイまたは「タンパク質チップ」(たとえば、NgらのJ. Cell Mol. Med. 6: 329-340(2002)(これは、参照することにより本発明に援用される)に記載されている)および特定のキャピラリーデバイス(たとえば、米国特許6,019,944(これは、参照することにより本発明に援用される)に記載されている)が挙げられる。これらの実施態様において、各別個の表面場所は、各場所において検出するためのバイオマーカーのための1つ以上の分析物を固定化する抗体を含んでもよい。表面場所は、微粒子が検出のために選ばれたバイオマーカーを固定化するための抗体またはその他の特異的結合剤を含む、表面の別個の位置に固定化された1つ以上の別個の粒子を含んでもよい。
【0058】
いくつかの実施態様において、アッセイデバイスは、各アッセイのために、サンドイッチイムノアッセイを行うための固相に結合された第1抗体およびシグナル発生構成要素に結合された第2抗体を含むことができる。サンドイッチアッセイのためのアッセイデバイスは、サンプルアプリケーションゾーンおよびサンプルアプリケーションゾーンから、第1抗体が固相に結合される第2デバイス場所への流路を含むことができる。血漿または血清を血液から分離するためのフィルター、混合室などのさらなるエレメントがデバイス設計に含まれでもよい。
【0059】
上述のバイオマーカーからなるパネルを構築して、鑑別診断に関する関連する情報を提供してもよい。このようなパネルは、1、2、3、4、5、10またはそれ以上の個々のバイオマーカーを用いて構築してもよい。単一のバイオマーカーまたはより大きいバイオマーカーのパネルを含むバイオマーカーのサブセットの分析は、当業者によって、様々な臨床設定において臨床的感受性または特異性を最適化することができた。これらの可能性のある臨床設定として、外来、緊急診療、救急救命診療、集中治療、観察ユニット、入院患者、外来患者、診療所、内科診療所および人間ドック設定が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、当業者は、前述のセッティングのそれぞれにおいて、診断閾値の調節と組み合わせて、単一のバイオマーカーまたはバイオマーカーのより大きいパネルから選ばれるバイオマーカーのサブセットを用いて、臨床的感受性および特異性を最適化ることができる。アッセイの臨床的感受性は、アッセイが正確に予測する疾患を有する人々のパーセンテージとして定義され、アッセイの特異性は、アッセイが正確に予測する疾患を有さない人々のパーセンテージとして定義される。Tietz Textbook of Clinical Chemistry、2nd. sup. edition、Carl Burtis and Edward Ashwood eds.、W.B. Saunders and Company、p. 496(これは、参照することにより本発明に援用される)を参照。
【0060】
もう1つの実施態様において、キットは、バイオマーカーの分析のために提供されうる。このようなキットは、少なくとも1つの試験サンプルの分析のための構成要素および/または試薬、および/またはアッセイを行うための説明書を含むことができる。適当な試薬として、たとえば、固相上に固定化された興味のある1つ以上のバイオマーカー(デスモシンおよび/またはPYRなど)を検出する抗体、検出可能な標識に結合された興味のある1つ以上のバイオマーカー(デスモシンおよび/またはPYRなど)を検出する抗体、あるいはさらなる実施態様において、固相および検出可能に標識された抗体の両方などを挙げることができる。任意に、キットは、特定の診断を「rule in」または「rule out」する診断バイオマーカーパネルのために行われたイムノアッセイから得られた情報を使用するための1つ以上の説明書を含んでもよい。このような説明書は、1つ以上のアッセイシグナルを診断または予後診断に変換するプログラミング指示を提供するコンピューター可読な媒体、あるいは1つ以上のアッセイシグナルを診断または予後診断に操作者が手動で変換するために用いることができる指示を含むラベルまたは添付文書などのヒトが可読な材料に保存してもよい。
【0061】
抗体および特異的結合剤の選択
いくつかの実施態様において、特異的バイオマーカーに関連する抗体および/または特異的結合剤は、バイオマーカーのための特定のアッセイにおいて使用される。抗体の生成および選択は、いくつかの方法で遂行される。たとえば、1つの方法は、興味のあるペプチドを精製するか、またはたとえば、当業界で公知の固相ペプチド合成法などを用いて興味のあるペプチドを合成することである。たとえば、「Guide to Protein Purification」、Murray P. Deutcher、ed.、Meth. Enzymol. Vol 182 (1990)および「Solid Phase Peptide Synthesis」、Greg B. Fields ed.、Meth. Enzymol. Vol 289 (1997)(両方は、参照することにより本発明に援用される)を参照。次いで、選択されたペプチドを、たとえば、ニワトリ、マウスまたはウサギなどに注射して、動物の体液から精製することができるポリクローナルまたはモノクローナル抗体を生成する。当業者は、たとえば、Antibodies、A Laboratory Manual、Ed Harlow and David Lane、Cold Spring Harbor Laboratory (1988)、Cold Spring Harbor、N.Y.(これは、参照することにより本発明に援用される)などに記載されているように、抗体の産生のための多くの手順が利用可能であることを認識するであろう。当業者はまた、抗体を模倣する結合フラグメントまたはFabが、様々な手順による遺伝情報から製造されうることも正しく理解するであろう。抗体の取り扱いのさらなる記載は、Antibody Engineering:A Practical Approach (Borrebaeck、C.、ed.)、1995、Oxford University Press、Oxford and J. Immunol. 149、3914-3920 (1992)(両方は、参照することにより本発明に援用される)を参照。
【0062】
さらに、多数の刊行物が、酵素などの選択された標的に結合するためのペプチドのライブラリを作成し、スクリーニングするためのファージ提示テクノロジーの使用を報告している。たとえば、CwirlaらのProc. Natl. Acad. Sci. USA 87、6378-82、1990;DevlinらのScience 249、404-6、1990、ScottおよびSmithのScience 249、386-88、1990;およびLadnerらのU.S. Pat. No. 5,571,698 (これらはすべて、参照することにより本発明に援用される)などを参照。ファージ提示法の基本概念は、スクリーニングされるポリペプチドをコードするDNAとポリペプチドの間の物理的関連性の樹立である。この物理的関連性は、ポリペプチドをコードするファージゲノムを包んでいるキャプシドの一部としてポリペプチドを提示するファージ粒子によって提供される。ペプチドとその遺伝物質との物理的関連性の樹立は、異なるペプチドを生み出す非常に多数のファージの同時質量スクリーニングを可能にする。標的への親和性を有するペプチドを提示するファージは、標的に結合し、このファージは、標的への親和性スクリーニングによって豊富になる。豊富になったファージから提示されるペプチドの同一性をそれぞれのゲノムから決定することができる。次いで、これらの方法を用いて、所望の標的に対する結合親和性を有することが同定されたペプチドを、従来の手段によって大量に合成することができる。たとえば、米国特許6,057,098(これは、参照することにより本発明に援用される)を参照。別の、あるいはさらなる実施態様において、酵素などに対する既知の基質を用いて、特異的結合剤を生成することができる。特に、基質の選択されたフラグメントを、酵素との親和性について試験することができる。
【0063】
次いで、これらの方法によって生成される抗体または特異的結合剤を、興味のある精製ポリペプチドとの親和性に対する第1スクリーニングによって、および、要すれば、結合から外されることを望まれるポリペプチドを有する抗体の親和性および特異性と結果を比較することによって、選択することができる。たとえば、スクリーニング手順は、マイクロタイタープレートの別のうえるにおける精製ポリペプチドの固定化を含むことができる。次いで、潜在的抗体または抗体のグループを含む溶液を各マイクロタイターウエルに入れ、約30分〜2時間インキュベートする。次いで、マイクロタイターウエルを洗浄し、標識した二次抗体(たとえば、もし惹起された抗体がマウス抗体ならば、アルカリホスファターゼに結合された抗マウス抗体)をウエルに加え、約30分間インキュベートし、次いで、洗浄する。アルカリホスファターゼのための基質をウエルに加え、固定化ペプチドに対する抗体が存在する場所に呈色反応が現れる。
【0064】
次いで、特異的アッセイ設計における親和性および特異性について、このスクリーニングプロセスにおいて選択された抗体または特異的結合剤をさらに分析する。標的タンパク質またはペプチドに対するイムノアッセイの開発において、精製標的タンパク質またはペプチドを、候補である抗体またはその他の特異的結合剤を用いるイムノアッセイの感受性および特異性の評価のための標準として用いることができる。様々な抗体の結合親和性は相違するので、そして、特定の抗体対(たとえば、サンドイッチアッセイにおける抗体)は、たとえば立体障害により結合に関してもう一方を妨害することができるので、実際のアッセイ形式における抗体または特異的結合剤の評価は、最終的な選択プロセスに関して非常に役立ちうる。
【0065】
治療処方の選択
動脈瘤の危険度を検出する能力および/または該疾患の進行をモニターする能力は、大出血する可能性がある無症状性の動脈瘤の検出を通して動脈瘤からの致死率を低下させることができる、ならびに早期治療およびモニタリングを提供する。患者における動脈瘤の進展は、数年間の間にいくつかの段階を経て進行しうる。たとえば、健常人において直径1.7 cmである大動脈は、個人が初期動脈瘤を発症すると、3.0 cmに増加しうる。初期動脈瘤は、大動脈の直径が4.0〜5.0 cmに増加する中等度動脈瘤に発達しうる。患者の大動脈が5.5 cmより大きくなると、後期動脈瘤に達し、この時点で外科的介入が通常必要となる。先に論じたように、動脈瘤の大きさは、該疾患の将来的進行あるいは動脈瘤破裂の可能性に必ずしも相関するものではない。
【0066】
すべてのAAA患者の約85%が、動脈瘤がより重篤な段階に到る前には検出されないことが多い初期および中等度動脈瘤のカテゴリーにある。本明細書に開示するバイオマーカーは、進行の様々な段階にある動脈瘤の診断およびモニタリングならびに動脈瘤破裂の可能性の評価に用いることができる。初期および中等度動脈瘤は、Vyavahareらの「Elastin Stabilization of Connective Tissue」と題する米国特許出願公開2007/0281026 、Isenburgらの「Treatment of Aneurysm with Application of Elastin Stabilizing Agent Embedded in a Delivery System」と題する米国仮出願番号61/066,688およびIsenburgらの「Compositions for Tissue Stabilization」と題する米国仮出願番号61/113,881、Ogleらの「Devices for the Treatment of 動脈瘤」と題する米国特許出番号12/173,726(すべては、参照することにより本発明に援用される)に開示の組成物および器具を用いて治療することができる。
【実施例】
【0067】
ラットにおける尿中デスモシンの検出
尿中デスモシンの検出は、ラットモデルにおいて動脈瘤の発生と相関されている。特に、尿中のデスモシンの量の増加が、動脈瘤の発生が誘発される状態の後に、ラットにおいて観察された。
【0068】
6週間にわたって、ラットの尿中デスモシンレベルを測定した。用いた動脈瘤モデルは、高濃度の塩化カルシウム(CaCl2)溶液の血管周囲適用に基づくものであり、GertzらのJ Clin Invest 1988;81(3):649-656(これは、参照することにより本発明に援用される)に記載の当初はウサギ頸動脈における動脈瘤を誘発するのに用いられた方法である。このアプローチは、近年になって齧歯類の腹部大動脈に用いられている。FreestoneらのArterioscler Thromb Vasc Biol 1995;15(8):1145-1151、FreestoneらのArterioscler Thromb Vasc Biol 1997;17(1):10-17およびTambiahらのBr J Surg 2001;88(7):935-940(すべては、参照することにより本発明に援用される)を参照。このモデルは、動脈組織に局在化された軽度の損傷をもたらす。大部分の研究において、大動脈直径の有意な増加(動脈瘤形成を示す)は、外傷後3〜6週間後に観察された。本実施例において、CaCl2に基づく化学的外傷は、ラット大動脈において行われた。
【0069】
成体雄性スプラーグ・ドーリー・ラットを全身麻酔下(2%〜3%イソフルラン)に置き、腎臓下腹部大動脈を露出するために、腹部に沿って正中切開した。露出したら、予め浸した8層滅菌綿ガーゼの細片(1.5 cm x 0.5 cm)を用い、腹部大動脈を0.5 M CaCl2溶液で15分間処理した。CaCl2で処理した後、ガーゼを除去し、腹腔を皮下縫合し、次いで、外科用ステープルにて閉じた。次いで、ラットを回復させた。数週間のうちにラットにおいて動脈瘤が徐々に形成された。合計10匹のラットを用いた。
【0070】
外科手術後、第1日、第28日および第42日にラットから尿を採取し、デスモシンを検出するために分析した。尿検査法には普通にあることだが、検出されたデスモシンをサンプル中のクレアチニンに対して標準化した。動脈瘤誘発手術前に採取した尿から、ラットの平均デスモシン値を得て、基準デスモシン値を形成した。得られたデータを図1に示した。動脈瘤誘発手術後第1日に、手術前の基準値と比べてわずかに上昇したデスモシンレベルが観察される。手術から3〜6週間後、処置ラットにおいて著しい動脈瘤が発現すると考えられる。したがって、手術後第28日に、デスモシンの有意な増加が検出される。手術後第42日におけるデスモシンレベルは、手術後第28日のレベルに相当する。結果は、動脈瘤が発現することを予測される状態下のラットからの尿においてデスモシンが測定可能であることを実証した。そして、データは、動脈瘤の進行と全身性尿中デスモシンの増加との間に相関があることを示唆する。デスモシンは、Starcherらの「A role for neutrophil elastase in the progression of solar elastosis」、Connect Tissue Res. 1995;31:133-140およびStarcherらの「Measurement of urinary desmosine as an indicator of acute pulmonary disease」、Respiration. 1995;62(5):252-257(両者は、参照することにより本発明に援用される)に詳述されているラジオイムノアッセイ(RIA)によって定量した。
【0071】
上記実施態様は、説明を意図するものであり、限定するものではない。さらなる実施態様が請求の範囲に包含される。さらも。本発明は、特定の実施態様に関して記載されているが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく形態および詳細において変更をなしうることを認識するであろう。前述の文献の参照による援用は、本明細書における明確な開示に反する発明の対象が援用されないように制限される。本明細書に引用したすべての特許、特許出願および刊行物は、援用された題材が本明細書の明確な開示のいずれかに反しないという限度において、参照することにより本発明に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における動脈瘤、動脈瘤関連障害またはその傾向の増加を診断する方法、存在する動脈瘤の段階を評価する方法または可能性のある将来の動脈瘤破裂の傾向を決定する方法であって、
規定の常套的手法により、患者から得られる生体サンプル中で測定される複数のバイオマーカーのレベルを相関させて、動脈瘤の可能性、存在する動脈瘤の段階または動脈瘤破裂の可能性を評価することを含み、
該複数のバイオマーカーが、少なくとも1つのエラスチン分解生成物および少なくとも1つのコラーゲン分解生成物を含む方法。
【請求項2】
エラスチン分解生成物が、デスモシン、イソデスモシンまたはそれらの組み合わせである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コラーゲン分解生成物が、ピリジノリン、デオキシピリジノリンまたはそれらの組み合わせである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生体サンプルが、尿サンプル、血液サンプルまたはそれらの組み合わせである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該手法が、バイオマーカーの基準レベルに対するバイオマーカーのレベルの比較を含み、基準レベルが、健常人または動脈瘤の所定の段階にあるコントロール患者から検出される複数のバイオマーカーのレベルの測定を通して得られたものである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該手法が、バイオマーカーの基準レベルに対するバイオマーカーのレベルの比較を含み、基準レベルが、患者からの予め得られた値に基づいて得られる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数のバイオマーカーレベルの相関が、約6ヶ月〜約5年の間隔で繰り返され、少なくとも1つの繰り返されるバイオマーカーレベルが、患者から予め得られた値と比較される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
間隔が、約10ヶ月〜約18ヶ月である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
複数のバイオマーカーがさらに、マトリックスメタロプロテイナーゼを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
マトリックスメタロプロテイナーゼが、マトリックスメタロプロテイナーゼ1、2、8、9、12、13、18またはそれらの組み合わせを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
エラスチン分解生成物が、デスモシン、イソデスモシンまたはそれらの組み合わせを含み、コラーゲン分解生成物が、ピリジノリン、デオキシピリジノリンまたはそれらの組み合わせを含み、マトリックスメタロプロテイナーゼが、マトリックスメタロプロテイナーゼ1、2、8、9、12、13、18またはそれらの組み合わせを含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
複数のバイオマーカーがさらに、エラスチン分解ペプチド、III型プロコラーゲンN末端プロペプチド、I型コラーゲンN末端テロペプチド、メタロプロテイナーゼの組織インヒビター、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子、ホモシステインまたはそれらの組み合わせを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
患者における動脈瘤、動脈瘤関連障害またはその傾向の増加を診断する方法、存在する動脈瘤の段階を評価する方法または可能性のある将来の動脈瘤破裂の傾向を決定する方法であって、
規定の常套的手法により、患者から得られる生体サンプル内で測定される複数のバイオマーカーのレベルを相関させて、動脈瘤の可能性、存在する動脈瘤の段階または動脈瘤破裂の可能性を評価することを含み、
該複数のバイオマーカーが、少なくともデスモシン、イソデスモシンおよびメタロプロテイナーゼを含む方法。
【請求項14】
マトリックスメタロプロテイナーゼが、マトリックスメタロプロテイナーゼ1、2、8、9、12、13、18またはそれらの組み合わせを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
マトリックスメタロプロテイナーゼが、マトリックスメタロプロテイナーゼ2、9またはそれらの組み合わせを含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
該サンプルが、尿サンプル、血液サンプルまたはそれらの組み合わせである請求項13に記載の方法。
【請求項17】
該手法が、バイオマーカーの基準レベルに対するバイオマーカーのレベルの比較を含み、基準レベルが、健常人または動脈瘤の所定の段階にあるコントロール患者から得られたものである請求項13に記載の方法。
【請求項18】
該手法が、バイオマーカーの基準レベルに対するバイオマーカーのレベルの比較を含み、基準レベルが、患者からの予め得られた値に基づいて得られる請求項13に記載の方法。
【請求項19】
バイオマーカーレベルの相関が、約6ヶ月〜約5年の間隔で繰り返される請求項13に記載の方法。
【請求項20】
複数のバイオマーカーがさらに、コラーゲン分解生成物を含む請求項13に記載の方法。
【請求項21】
コラーゲン分解生成物が、ピリジノリン、デオキシピリジノリンまたはそれらの組み合わせを含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
複数のバイオマーカーがさらに、エラスチン分解ペプチド、III型プロコラーゲンN末端プロペプチド、I型コラーゲンN末端テロペプチド、メタロプロテイナーゼの組織インヒビター、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子、ホモシステインまたはそれらの組み合わせを含む請求項13に記載の方法。
【請求項23】
患者における動脈瘤、動脈瘤関連障害またはその傾向の増加を診断する試験、存在する動脈瘤の段階を評価する試験または可能性のある将来の動脈瘤破裂の傾向を決定する試験を行うためのキットであって、
患者からの生体サンプル中の複数のバイオマーカーのそれぞれのレベルを検出して、サンプル中の複数のバイオマーカーのレベルを決定するための1つ以上の作用剤を含み、
該バイオマーカーが、1つの集団におけるバイオマーカーレベルの既知の分布に関して、バイオマーカーのレベルの相関関係が、患者における動脈瘤の可能性、存在する動脈瘤の段階または動脈瘤破裂の可能性の評価として用られうるように選ばれるキット。
【請求項24】
少なくとも1つの作用剤を、サンプル中のデスモシンおよびイソデスモシンのレベルの評価のために用いることができる請求項23に記載のキット。

【図1】
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【公表番号】特表2011−510297(P2011−510297A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543141(P2010−543141)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/000276
【国際公開番号】WO2009/091581
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(510196741)バトリックス・メディカル・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】VATRIX MEDICAL, INC.
【Fターム(参考)】