説明

動脈硬化性プラークの検出のために使用されるフィブロネクチンのドメインB外ドメインのための結合分子

本発明は、動脈硬化性プラークを検出するために使用される医薬組成物の生成のためへのL19誘導体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈硬化工程、特に動脈硬化性プラークの検出のための診断試薬としての、フィブロネクチンのドメインB外(ED-B)ドメインの結合分子、例えばED-Bドメインに対するラベルされた抗体又は抗体フラグメント、例えばL19誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈硬化は、多くの年月にわたって進行し、そして最初に、検出されないまま進行する、血管における変化である。この場合、動脈硬化の進行は、種々の段階にわたって進行する。それが機械的又は化学的外傷のために、動脈壁の内皮細胞層又はその非付着表面に対する損傷をもたらす場合、それに起因する正常な血流の変化は、動脈壁における血液凝固、いわゆる血栓の形成をもたらすことができる、特に動脈網の枝上での血小板の付着及び凝集、を促進する。
【0003】
時間にわたって、脂肪層の蓄積が、細胞防御システムの単球からの血栓形成のために形成される気泡性細胞の収集、連続的細胞侵入、コレステロール付着、平滑筋の拡張、及び追加の結合組織の形成をもたらし、それにより、ますます強い損傷をもたらす。それらの進行した損傷は究極的に、動脈の内部空間を膨張し、そして狭くする、内部血管壁上に形成される、いわゆる動脈硬化性プラークを表わす。のちに、動脈硬化性プラークは、結合組織の薄層により、すばやく被覆される。時間にわたって、それらのプラークは石灰化し、そしてこれが、さらなる変化、例えば動脈の部分的又は全体的な閉塞をもたらす裂け目又は出血をもたらす。血液が流れなくなるとすぐに、後方に位置する組織及び細胞は、その供給から排除される。狭窄の結果として、心筋梗塞及び狭心症の攻撃、並びに発作、眼における黄斑変性又は血栓症が発生する。
【0004】
動脈硬化は、静かに且つ知らない間に進行し、そして長期間、いずれの症状も発生しない。血管直径が動脈硬化性プラークの進行性形成によりますます低められるにつれて、症状はゆっくりと、但し着実に進行している。すでに発生している動脈硬化性プラークの石灰化は分解され得ず、そして弾性はそれに起因する硬い動脈壁に戻れ得ないが、しかし疾病の進行はその情報により相当に遅められ得るので、高い感受性及び特異性を伴って容易に行われる動脈硬化検出方法が特に重要なものである。
【0005】
現在まで、動脈硬化の診断のための種々の研究方法、中でも、対比媒体−増強された血管造影法、複−スライスられん状CT、超音波ドップラー法、磁気共鳴断層撮影法及び電子線断層撮影法が開発されている。
【0006】
対比媒体−増強された血管造影法は、放射線学により血管を可視化するための試験方法である。可視化されるべき器官又は身体領域に依存して、中空針又はカテーテルが局部麻酔下で動脈、静脈又は組織中に挿入される。次に、対比媒体又はマーカーが注入され、そしてその対応する身体領域がx−線照射される。この場合、両動脈、静脈及びリンパドレナージ経路が描写され、これにより、疾病の型及び程度の表示が可能である。しかしながら、この方法は、利用できる対比媒体及びマーカーにより有意な制限を受ける。後者は、それらが見出される空間、例えば動脈硬化性プラークの検出が有意に阻害される血液空間の比較的非特異的な可視化のみを可能にする。
【0007】
多−スライスらせん状CTは、対比媒体−増強された血管造影法に変わる方法を提供する。石灰化された動脈硬化プラークの効果的な証拠書類提出の他に、それはさらに、高−解像対比媒体−増強されたCT血管造影法の利点を提供し、そして従ってまた、石灰化されていないプラークの可視化を可能にする。しかしながら、初期臨床学的研究は、その方法のすでに明白な限界を示し、その結果、熟考されていない臨床学的使用は一般的に推薦され得ない。
【0008】
超音波ドップラー法は、ドップラー方法が使用され、そして心臓疾患の診断のために使用される超音波研究である。超音波ドップラー法により、血流の方向及び速度のデータが得られ、それにより、動脈の中空空間の構成が検出され得る。しかしながら、動脈硬化性プラーク組織の可視化は、超音波ドップラー法により可能ではない。
【0009】
種々のパルス順序を用いることにより、磁気共鳴断層撮影法は、動脈硬化性プラーク組織の可視化、及び個々のプラーク成分の組織特徴化を可能にする。しかしながら、主要予防のためへのこの方法の使用は、相当なさらなる開発を必要とする。
【0010】
電子線断層撮影法により、冠状動脈硬化の程度の非侵襲性決定を可能する方法が利用できる。電子線断層撮影法により、冠状動脈硬化の進行がまた、考慮され得る。しかしながら、この方法の決定は、それが非常に高価であり、そして電子線断層撮影機の購入を要することである。
【発明の開示】
【0011】
従って、本発明の目的は、高い感受性及び特異性を有し、そして単純で早く且つ経済的な主要予防を可能にする、動脈壁における動脈硬化性プラークの検出のための他の方法を提供することである。
【0012】
この目的は、動脈硬化性工程の検出、特に動物硬化性プラーク、例えば石灰化されていない及び/又は石灰化されたプラークの検出のためへの、フィブロネクチンのED-Bに対する結合分子の使用により、本発明に従って達成される。
【0013】
フィブロネクチン分子中に選択のスプライシングにより挿入される、91個のアミノ酸の配列である、フィブロネクチンのED-Bドメインの結合分子(Castellaniなど. (1994), Int. j. Cancer 59, 612-618)は、WO97/45544号、WO01/62800号及びWO03/055917号にすでに記載されている。好ましい結合分子は、ED-Bドメインに対して直接的に及び特異的に結合する分子、例えばED-Bドメインに対する抗体又はそのような抗体のフラグメント、例えばタンパク質分解により得られる抗体フラグメント、例えばFab-, Fab’-, F(ab)2フラグメント、等、又は組換え抗体フラグメント、例えば一本鎖Fvフラグメントである。ED-B結合分子は好ましくは、診断用途のために適切であるラベリンググループとの接合体として使用される。
【0014】
本発明の好ましい態様は、動脈硬化性プラークの検出のための医薬組成物の生成のためへの、ラベリンググループとの接合体として存在する、抗体L19又はこの抗体のフラグメント(L19誘導体)の使用に関する。驚くべきことには、本発明に基づく研究の助けにより、動脈硬化性プラークがラベルされたL19 誘導体を結合することにより、高い特異性態様で及び高い感受性を持って診断され得ることを決定することが可能であった。
【0015】
L19は、フィブロネクチンのドメインB外(ED-B)ドメインに対するモノクローナル抗体のscFvフラグメント(scFv:一本鎖の可変抗体フラグメント)であり、そして次のアミノ酸配列(配列番号1)を有する:
(VH):
EVQLLESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS
SFSMSWVRQA PGKGLEWVSS ISGSSGTTYY
ADSVKGRFTI SRDNSKNTLY LQMNSLRAED
TAVYYCAKPF PYFDYWGQGT LVTVSS
【0016】
(リンカー):
GDGSSGGSGG ASTG
(VL):
EIVLTQSPGT LSLSPGERAT LSCRASQSVS
SSFLAWYQQK PGQAPRLLIY YASSRATGIP
DRFSGSGSGT DFTLTISRLE PEDFAVYYCQ
QTGRIPPTFG QGTKVEIK
【0017】
L19は、従来技術において時折、すでに言及されている。従って、Tarliなど. (Blood, Vol. 94, No. 1 (1999), pp. 192-198)は、腫瘍組織の領域に進行した脈管形成を有する腫瘍担持のマウスにおける高い親和性のヒト125I−ラベルされたL19の生物分布を記載する。さらに、WO01/62800号は、脈管形成の検出及び処理のためへの、scFv-フラグメントL19を含んで成る放射性ラベルされた接合体の使用を開示する。しかしながら、動脈硬化性プラークの検出のためへのラベルされたL19誘導体の使用は、従来技術には開示も又は示唆もされていない。
【0018】
従って、本発明の目的は、特に、
(aa)HCDR3領域における5個までのアミノ酸及びLCDR3領域における6個までのアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換を示す、表1に示される相補性決定領域HCDR3及び/又はLCDR3、又はその変異体を含んで成る、フィブロネクチンのドメインB外(ED-B)ドメインのための少なくとも1つの抗原結合部位(配列番号1に示される活性L19と同じ機能を示す)、
【0019】
(ab)HCDR1領域における3個までのアミノ酸、HCDR2領域における8個までのアミノ酸、HCDR3領域における5個までのアミノ酸、LCDR1領域における6までのアミノ酸、LCDR2領域における4個までのアミノ酸及びLCDR3領域における6個までのアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換を示す、表1に示される相補性決定領域HCDR1, HCDR2, HCDR3, LCDR1, LCDR2及びLCDR3、又はその変異体を含んで成る、フィブロネクチンのドメインB外(ED-B)ドメインのための少なくとも1つの抗原結合部位(配列番号1に示される活性L19と同じ機能を示す)、又は
【0020】
(ac)30個までの欠失、挿入及び/又は置換を示す、配列番号1に示される活性L19の配列、又はその変異体を含んで成る、フィブロネクチンのドメインB外(ED-B)ドメインのための少なくとも1つの抗原結合部位(配列番号1に示される活性L19と同じ機能を示す)、及び任意には、
【0021】
(ba)アミノ酸配列Xaa1-Xaa2-Xaa3-Cys (配列番号2)、ここでXaa1, Xaa2 及び Xaa3はお互い独立して、いずれかの天然に存在するアミノ酸を表わし、
(bb)アミノ酸配列Xaa1-Xaa2-Xaa3-Cys-Xaa4 (配列番号3)、ここでXaa1, Xaa2, Xaa3 及び Xaa4はお互い独立して、いずれかの天然に存在するアミノ酸を表わし、
(bc)アミノ酸配列(His)n(配列番号4)、ここでnは4〜6の整数であり、又は
(bd)配列番号5,6又は7で示される配列を含んで成るアミノ酸配列を含んで成る(ここで(aa), (ab)又は(ac)のC−末端が、(ba), (bb), (bc)又は(bd)のN−末端にペプチド結合を通して任意に結合される)、ラベルされたL19誘導体の、動脈硬化性プラークの検出のための医者組成物の生成のためへの使用に関する。
【0022】
本発明の範囲においては、ラベルされたL19誘導体は、抗原結合部位(aa)、(ab)又は(ac)から選択されたフィブロネクチンのドメインB外(ED-B)ドメインのためのN−末端抗原結合部位、及び任意には、アミノ酸配列(ba)、(bb)、(bc)又は(bd)から選択されたC−末端アミノ酸配列を含んで成り、ここで前記抗原結合部位は、配列番号1に記載される活性L19と同じ機能を示す。本発明によれば、これは、ラベルされたL19誘導体の抗原結合部位(aa)、(ab)及び(ac)が、配列番号1で示される活性scFv−フラグメントL19に対して実質的に同一である、動脈硬化性プラークに対する結合定数を有することを意味する。
【0023】
特に、抗原結合部位(aa)、(ab)及び(ac)は、ラベルされたL19誘導体と動脈硬化性プラークとの間の結合を仲介し、それにより、ラベルされたL19誘導体及び動脈硬化性プラークから成る複合体は、ナノモル以下の範囲(例えば、10-9M以下)での解離定数を示す。ラベルされたL19誘導体及び動脈硬化性プラークから成る複合体の解離定数は好ましくは、WO99/58570号に記載される、L19誘導体及び抗原ED-Bフィブロネクチンから成る複合体の解離定数と同じ範囲にある。
【0024】
本発明によれば、ラベルされたL19誘導体(aa)又は(ab)のフィブロネクチンのドメインB外(ED-B)ドメインのための抗原結合部位は、表1に示される相補性−決定領域HCDR3及び/又はLCDR3、又はHCDR1, HCDR2,HCDR3, LCDR1, LCDR2及びLCDR3を含んで成る。本発明の範囲においては、相補性−決定領域HCDR1、HCDR2, HCDR3, LCDR1, LCDR2及びLCDR3は次の通りに定義される:
【0025】
【表1】

【0026】
表1に定義される相補性−決定領域の他に、ラベルされたL19誘導体(aa)又は(ab)のフィブロネクチンのドメインB外(ED-B)ドメインのための抗原結合部位はまた、それらの領域の変異体を含んで成ることができる。本発明によれば、HCDR1領域の変異体は、HCDR1領域における3個までのアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換、すなわち表1に示される配列(配列番号8)に関して、1,2、又は3個のアミノ酸の欠失、挿入及び又は置換を包含する。HCDR2領域の変異体は、HCDR2領域における8個までのアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換、すなわち表1に示される配列(配列番号9)に関して、1,2, 3,4, 5,6, 7 又は 8個のアミノ酸の欠失、挿入及び又は置換を包含する。HCDR3領域の変異体は、HCDR3領域における5個までのアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換、すなわち表1に示される配列(配列番号10)に関して、1,2, 3,4 又は 5個のアミノ酸の欠失、挿入及び又は置換を包含する。
【0027】
しかしながら、LCDR1領域の変異体は、LCDR1領域における6個までのアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換、すなわち表1に示される配列(配列番号11)に関して、1,2, 3,4, 5 又は6個のアミノ酸の欠失、挿入及び又は置換を包含する。さらに、LCDR2領域の変異体は、LCDR2領域における4個までのアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換、すなわち表1に示される配列(配列番号12)に関して、1,2, 3 又は4個のアミノ酸の欠失、挿入及び又は置換を包含する。LCDR3領域の変異体は、LCDR3領域における6個までのアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換、すなわち表1に示される配列(配列番号13)に関して、1,2, 3,4, 5 又は6個のアミノ酸の欠失、挿入及び又は置換を包含する。
【0028】
本発明によれば、ラベルされたL19誘導体(ac)のフィブロネクチンのドメインB外(ED-B)ドメインのための抗原結合部位は、30個までのアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換、すなわち配列番号1に示される配列に関して、1,2, 3,4, 5,6, 7,8, 9,10, 11,12, 13,14, 15,16, 17,18, 19,20, 21,22, 23, 24,25, 26,27, 28,29 又は 30個のアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換を示す、配列番号1で示される活性L19の配列又はその変異体を含んで成る。
【0029】
ラベルされたL19誘導体のアミノ酸配列(ba)、(bb)又は(bc)は、配列Xaa1,-Xaa2-Xaa3-Cys (配列番号2), Xaa1-Xaa2- Xaa3-Cys-Xaa4 (配列番号3) 又は(His)n (配列番号4)を含んで成る。
本発明の好ましい態様においては、アミノ酸配列(ba)Xaa1-Xaa2-Xaa3-Cys(配列番号2)は、配列Gly- Gly-Gly-Cys (配列番号14) 又は Gly-Cys-Gly-Cys (配列番号15)である。配列Gly- Gly-Gly-Cys配列番号14)が特に好ましい。
【0030】
本発明の好ましい態様においては、アミノ酸配列(bb)Xaa1-Xaa2-Xaa3-Cys-Xaa4 (配列番号3)は、配列Gly-Gly-Gly-Cys-Ala (配列番号16) 又はGly-Cys-Gly-Cys-Ala(配列番号17)である。配列Gly-Gly-Gly-Cys-Ala (配列番号16)が特に好ましい。
本発明のもう1つの好ましい態様においては、アミノ酸配列(bc)(His)n (配列番号4)は、配列(His)6 (nは6である)(配列番号18)である。
【0031】
本発明のもう1つの好ましい態様においては、(aa)、(ab)又は(ac)のN−末端は、リンカーアミノ酸配列のC−末端に、ペプチド結合を通して結合される。前記リンカーアミノ酸配列は好ましくは、30個までの長さのアミノ酸、好ましくは25個までの長さのアミノ酸、及び特に好ましくは、22個までの長さのアミノ酸を有する。配列番号19で示される配列であるリンカーアミノ酸配列が特に好ましい。
【0032】
本発明によれば、特に好ましいラベルされたL19誘導体は、配列番号1 (活性 L19), 配列番号20 (AP38), 配列番号21 (AP39), 配列番号22 (L19-GlyCysGlyCys), 配列番号23 (L19-GlyCysGlyCysAla), 配列番号24 (ZK225293), 配列番号25 (ZK217691/217695), 配列番号26 (ZK210917) 及び配列番号27 (ZK248219/248220)を含んで成る。
【0033】
ED-Bドメインのための結合分子は好ましくは、ラベリング物質との接合体の形で存在する。ラベリング物質として、診断用途、特にインビボ診断用途のために適切であるすべてのラベリング物質、例えば放射性ラベリング物質が適切であり、又は非放射性検出方法に関しては、磁気共鳴方法のために適切であるラベリング物質が適切である。
【0034】
ポリペプチド、ペプチド及び特にscFvフラグメントへのラベリング物質の導入方法は、従来技術において良く知られている。結合分子は好ましくは、放射性同位体、例えばヨウ素(I)、インジウム(In)、テクネチウム(Tc)及びレニウム(Re)の放射性同位体によりラベルされる。特に、放射性同位体125I, 111In, 186Re, 188Re, 94mTc又は99mTcが好ましい。
【0035】
本発明の好ましい態様においては、抗体フラグメント、例えば還元された形でのL19誘導体が使用される。本発明の範囲においては、用語“還元された形”とは、フラグメントが、モノマー形で存在し、そして例えば分子間ジスルフィド橋により介在されるダイマー又はマルチマー形で存在しないことを意味する。抗体フラグメントの還元された形は好ましくは、適切な還元剤を添加することにより得られる。適切な還元剤は、従来技術において良く知られており、そしてTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)及び1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールを包含する。
【0036】
さらに、本発明は、結合分子の他に、任意には、生理学的に適合できるアジュバント、ビークル及び/又は希釈剤を含む医薬組成物を提供する。適切なアジュバント、ビークル及び/又は希釈剤は、医薬化学の分野における当業者に良く知られている。
動脈硬化性プラークの検出は好ましくは、ED-B結合分子を含んで成る医薬組成物を、試験されるべき患者の静脈及び/又は動脈中に注入し、そして存在するなら、動脈硬化性プラークに結合されるラベルされたED-B結合分子を検出することにより、本発明の範囲内で行われる。心筋梗塞、及び狭心症の攻撃、また、発作、眼における黄斑変性、又は血栓症は、本発明に従って、動脈硬化性プラークの初期検出により妨げられ得る。
さらに、本発明は、図1及び下記例により詳細に説明される。
【実施例】
【0037】
例1L19誘導体の生成
L19誘導体の生成を、引用により本明細書に組み込まれるWO03/055917号に記載のようにして行う。
【0038】
例2放射性同位体の助けによるL19誘導体のラベリング
ラベルされたL19誘導体の生成を、引用により本明細書に組込まれるWO03/055917号に記載のようにして行う。
【0039】
例3WHHLウサギの動脈硬化血管検体への種々のラベルされたL19誘導体の結合の特定のインビトロ灌流装置の研究
種々のラベルされたL19誘導体の適合性を研究するために、インビトロ灌流装置(Ussingチャンバー)を使用した。この灌流装置は、WHHLウサギ(Watanabe遺伝性高脂血症ウサギ)の大動脈からの血管検体を含んだ。
【0040】
大動脈の確かな切片における遺伝子欠陥のために、それらのWHHLウサギは、動脈硬化性プラークを進行する。従って、前記大動脈のそれらの動脈硬化性切片からの血管検体を、ヒトにおける疾病性動脈硬化についてのモデアルとして使用した。比較対照として、個々の場合、同じウサギからの大動脈の非動脈硬化性切片の血管検体を使用した。
【0041】
血管検体を、研究されるべき、それぞれラベルされたL19誘導体が大動脈の管腔側に対してのみ結合するような手段で血管装置に位置決定した。ラベルされたL19誘導体の溶液を、この場合、1ml/分の速度で蠕動ポンプの助けにより灌流した。灌流を、室温で20分間にわたって行った。灌流回路の体積は9mlであった。この体積においては、本発明のラベルされたL19誘導体が、表2に示される量で含まれた。
【0042】
灌流が終結した後、大動脈の動脈硬化性プラークに結合される、研究されるべきラベルされたL19誘導体の量を、γ−カウンター(Elscint SP4 HRγ−カメラ)の助けにより決定した。大動脈の動脈硬化及び非動脈硬化性切片に対して結合されるラベルされたL19誘導体の量の割合に基づいて、それぞれラベルされたL19誘導体の等級因子を決定する。
【0043】
【表2】

【0044】
例3.1125I−ラベルされたL19誘導体ZK225293の研究
ZK225293(配列番号24)の適合性の研究を、例3に記載のようにして行った。この研究において決定されるZK225293についての等級因子は、4.5であった。この研究の結果は、動脈硬化性プラークの検出及び従って、動脈における動脈硬化の診断のためのラベルされたL19誘導体の卓越した可能性を示す。
【0045】
例3.2125I−ラベルされたL19誘導体ZK212667の研究
ZK212667(L19;配列番号1)の適合性の研究を、例3に記載のようにして行った。この研究において決定されるZK212667についての等級因子は、2.8であった。この研究の結果は、動脈硬化性プラークの検出及び従って、動脈における動脈硬化の診断のためのラベルされたL19誘導体の卓越した可能性を示す。
【0046】
例3.3111In−ラベルされたL19誘導体ZK217691/217695の研究
ZK217691/217695(配列番号25)の適合性の研究を、例3に記載のようにして行った。この研究において決定されるZK217691/217695についての等級因子は、8.7であった。この研究の結果は、動脈硬化性プラークの検出及び従って、動脈における動脈硬化の診断のためのラベルされたL19誘導体の卓越した可能性を示す。
【0047】
例3.4111In−ラベルされたL19誘導体ZK210917の研究
ZK210917(配列番号26)の適合性の研究を、例3に記載のようにして行った。この研究において決定されるZK210917についての等級因子は、3.4であった。この研究の結果は、動脈硬化性プラークの検出及び従って、動脈における動脈硬化の診断のためのラベルされたL19誘導体の卓越した可能性を示す。
【0048】
例3.599mTc−ラベルされたL19誘導体ZK217052/217053の研究
ZK217052/217053(配列番号21)の適合性の研究を、例3に記載のようにして行った。この研究において決定されるZK217052/217053についての等級因子は、4.8であった。この研究の結果は、動脈硬化性プラークの検出及び従って、動脈における動脈硬化の診断のためのラベルされたL19誘導体の卓越した可能性を示す。
【0049】
例499mTc−ラベルされたL19誘導体ZK248219/248220の助けによる動脈硬化性プラークのWHHLウサギにおけるイメージングのインビボ研究
ZK248219/248220(配列番号27)の適合性の研究を、WHHLウサギに対してインビボで行った。遺伝子欠陥のために、それらのWHHLウサギは、大動脈の確かな切断において動脈硬化性プラークを進行せしめ、そして従って、ヒトにおける疾病性動脈硬化のためのモデルとして使用された。
【0050】
麻酔(Rompun/Ketavet(1:2)、kg 体重当たり1mg、i.m.)下で、41MBqの99mTc−ラベルされたL19誘導体ZK248219/248220を、試験動物(3.4kgの体重)の耳の周囲に投与した。5時間にわたって、全体シンチグラムを、γ−カウンター(Elscint SP4 HRγ−カメラ)により記録した。5時間後、試験動物を殺害し、そしてその大動脈を、オートラジオグラフィーにより研究し、大動脈に結合される活性の正確な分布を決定した。
【0051】
前記イメージング研究の結果は、注入後の時間まで、大動脈弓の明白な可視化を示す。オートラジオグラフィー研究は、試験動物の大動脈弓において、プラークフリー腹部大動脈においてよりも12倍、高い活性濃度が存在することを確証する。従って、この研究の結果は、動脈硬化性プラークの診断のためのラベルされたL19誘導体ZK248219/248220の卓越した可能性を明白に示す。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1−1】図1−1は、配列表をまとめたものである。
【図1−2】図1−2は、配列表をまとめたものである。
【図1−3】図1−3は、配列表をまとめたものである。
【図1−4】図1−4は、配列表をまとめたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈硬化性プラークの検出のための医薬組成物の生成のためへのフィブロネクチンのドメインB外ドメインに対する結合分子の使用。
【請求項2】
前記結合分子が、抗体及びそのフラグメントから選択されることを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記結合がラベリンググループを担持する請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
前記結合分子が、
(aa)HCDR3領域における5個までのアミノ酸及びLCDR3領域における6個までのアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換を示す、表1に示される相補性決定領域HCDR3及び/又はLCDR3、又はその変異体を含んで成る、フィブロネクチンのドメインB外(ED-B)ドメインのための少なくとも1つの抗原結合部位(配列番号1に示される活性L19と同じ機能を示す)、
(ab)HCDR1領域における3個までのアミノ酸、HCDR2領域における8個までのアミノ酸、HCDR3領域における5個までのアミノ酸、LCDR1領域における6までのアミノ酸、LCDR2領域における4個までのアミノ酸及びLCDR3領域における6個までのアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換を示す、表1に示される相補性決定領域HCDR1, HCDR2, HCDR3, LCDR1, LCDR2及びLCDR3、又はその変異体を含んで成る、フィブロネクチンのドメインB外(ED-B)ドメインのための少なくとも1つの抗原結合部位(配列番号1に示される活性L19と同じ機能を示す)、又は
(ac)30個までの欠失、挿入及び/又は置換を示す、配列番号1に示される活性L19の配列、又はその変異体を含んで成る、フィブロネクチンのドメインB外(ED-B)ドメインのための少なくとも1つの抗原結合部位(配列番号1に示される活性L19と同じ機能を示す)、及び任意には、
(ba)アミノ酸配列Xaa1-Xaa2-Xaa3-Cys (配列番号2)、ここでXaa1, Xaa2 及び Xaa3はお互い独立して、いずれかの天然に存在するアミノ酸を表わし、
(bb)アミノ酸配列Xaa1-Xaa2-Xaa3-Cys-Xaa4 (配列番号3)、ここでXaa1, Xaa2, Xaa3 及び Xaa4はお互い独立して、いずれかの天然に存在するアミノ酸を表わし、
(bc)アミノ酸配列(His)n(配列番号4)、ここでnは4〜6の整数であり、又は
(bd)配列番号5,6又は7で示される配列を含んで成るアミノ酸配列を含んで成る(ここで(aa), (ab)又は(ac)のC−末端が、(ba), (bb), (bc)又は(bd)のN−末端にペプチド結合を通して任意に結合される)19−誘導体から選択される請求項1〜3のいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
アミノ酸配列Xaa1-Xaa2-Xaa3-Cysが、配列Gly- Gly-Gly-Cys (配列番号14) 又は Gly-Cys-Gly-Cys (配列番号15)である請求項4記載の使用。
【請求項6】
アミノ酸配列Xaa1-Xaa2-Xaa3-Cys-Xaa4が、配列Gly-Gly-Gly-Cys-Ala (配列番号16) 又はGly-Cys-Gly-Cys-Ala(配列番号17)である請求項4又は5記載の使用。
【請求項7】
前記アミノ酸配列(His)nにおけるnが、6(配列番号18)である請求項4〜6のいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
(aa)、(ab)又は(ac)のN−末端が、リンカーアミノ酸配列のC−末端に、ペプチド結合を通して結合される請求項4〜7のいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
前記リンカーアミノ酸配列が、30個までの長さのアミノ酸を示す請求項8記載の使用。
【請求項10】
前記リンカーアミノ酸配列が、配列番号19で示される配列である請求項8又は9記載の使用。
【請求項11】
前記ラベルされたL19誘導体が、配列番号1, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26又は27で示される配列を含んで成る請求項4〜10のいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
前記結合分子が放射性同位体によりラベルされる請求項1〜11のいずれか1項記載の使用。
【請求項13】
前記放射性同位体が、ヨウ素(I)、インジウム(In)、テクネチウム(Tc)及びレニウム(Re)の放射性同位体から選択される請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記放射性同位体が、125I, 111In, 186Re, 188Re, 94mTc又は99mTcである請求項12又は13記載の使用。
【請求項15】
前記結合が、抗体フラグメント、特に還元された形でのL19誘導体から選択される請求項1〜14のいずれか1項記載の使用。
【請求項16】
前記医薬組成物が、追加の生理学的に適合できるアジュバント、ビークル及び/又は希釈剤を含む請求項1〜15のいずれか1項記載の使用。
【請求項17】
前記組成物が、患者の静脈及び/又は動脈への注射のために供給される請求項1〜16のいずれか1項記載の使用。
【請求項18】
前記組成物が、検出のために適切である放射性ラベルされた結合分子を含む請求項1〜17のいずれか1項記載の使用。
【請求項19】
心筋梗塞、及び狭心症の攻撃、また、発作、眼における黄斑変性、又は血栓症の防御のためへの請求項1〜18のいずれか1項記載の使用。
【請求項20】
動脈硬化性プラークの検出のための方法であって、試験されるべき疾患、特にヒト患者に、フィブロネクチンのドメインB外ドメインに対する結合分子を、診断的に適切な量で投与し、そして前記患者の血管における前記結合分子の位置を決定することを含んで成る方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【公表番号】特表2007−508352(P2007−508352A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534712(P2006−534712)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011654
【国際公開番号】WO2005/037312
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(300049958)シエーリング アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】