説明

動脈血サンプルの少なくとも1つのパラメータを測定する装置

本発明は、動脈血サンプルの少なくとも1つのパラメータを測定するための装置に関し、これは、その貫流センサ(2)の測定セル(7)の入口側と出口側(5,6)とに接続される標準型接続部材(3,4)を備える貫流センサ(2)を有し、前記測定セル(7)は、前記血液サンプルに接触可能な少なくとも1つの光化学センサ素子(8)を備える。前記貫流センサ(2)にはコネクタ(9)が取り外し可能に取り付けられ、これは前記光化学センサ素子(8)を励起する少なくとも1つの光源(10)と、前記光化学センサ素子(8)の測定放射光を受ける少なくとも1つの光検出器(11)とを有する。電子モジュール(12)は前記コネクタ(9)への電気接続線(13)を有し、前記少なくとも1つの光源(10)と前記少なくとも1つの光検出器(11)とに接触し、前記貫流センサ(2)は、前記入口側において前記接続部材(3)を介して動脈カテーテル(1)の前記標準型接続部(14)に接続可能であり、前記出口側において前記接続部材(4)を介して動脈内注入セット(16)の標準型接続部(15)に接続可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動脈血サンプルの少なくとも1つのパラメータを測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば集中治療室において血液サンプルを採るために、患者に既に動脈アクセスシステムが提供されている場合、血液は、注入セットの吸入ピストンによって手動で吸引され、その注入セットの隔壁を介して一方向注射器によって引き出される。次に、その血液サンプルは、外部血液ガス分析器において分析されるか、或いは、小管内に移された後、分析のために試験室に送られる。隔壁を介する取り出しには、患者と係員にとっての怪我又は感染の虞がある、外部血液ガス分析器への輸送又は試験室へ送る場合には、ラベリングミスやサンプル間の混同によるエラーの可能性がある。
【0003】
この点に関して、患者に対していくつかの血液パラメータを直接に測定することが知られている。米国特許No.4,989,606Aは、患者の血管系と連通するチューブがセンサユニットに直接接続される血管内血液ガス測定システムを開示している。前記センサユニットは、例えば、OとCOの濃度、血液pHを測定するための蛍光光センサを備える貫流センサとして構成される。前記貫流センサの出口側には、チューブが設けられ、これはヘパリン化食塩水を収納した加圧袋に接続される。この加圧袋に接続されたチューブは、調節可能な滴下バルブと手動操作式フラッシング・バルブとを備えている。
【0004】
米国特許No.4,989,606Aの前記貫流センサは、血液サンプルのためのサーモスタット装置と、前記光センサのための励起放射光を提供すると共に測定された放射光を送信する多数の光ガイドと、を含む送信ユニット内に保持されている。患者の腕に取り付けられる前記センサ装置は全体として重く比較的嵩張るものであり、又、使用時に頻繁に炎症を引き起こす。更に、前記測定システムを従来の注入セットに組み込むことは不可能である。
【0005】
欧州特許No.0,994,669 B1から、外科手術中に体外循環システム(心肺装置)に使用することが可能な、血液パラメータを測定するためのシステムが知られている。このシステムは、血液サンプルを受け入れるチャンバを備える貫流カートリッジを有し、該カートリッジには少なくとも1つの光センサが含まれている。更に、このカートリッジの解除可能な接続のための装置が設けられ、これは、前記センサを励起する光源と、前記センサによって放出された光を受ける光検出器と、この光検出器に接続された少なくとも1つの信号トランスデューサーとを備えている。前記信号トランスデューサーは、少なくとも1つの光検出器によって検出される光の量に応じて変化するデジタル出力信号を提供する。ここでも米国特許No.4,989,606Aにおいて挙げられている欠点が支配的である。即ち、その装置は嵩張るものであり、従来の注入セットに組み込むことは不可能である。
【0006】
最後に、米国特許No.4,830,013Aから血液パラメータのための血管内測定システムが知られており、これは、カテーテルユニットを含み、その遠端部には、血液ガス(O−及びCO−濃度、pH−値)測定用の光センサが設けられ、これらのセンサのそれぞれは光ガイドの先端部に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許No.4,989,606A
【特許文献2】欧州特許No.0,994,669 B1
【特許文献3】米国特許No.4,830,013A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、動脈血サンプルの少なくとも1つのパラメータを測定するための装置であって、体積が小さく、しかも、従来の動脈アクセスシステムと共に容易に使用可能な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に拠れば、この課題は、下記のコンポーネントを備える装置を提案することによって達成される。
− その貫流センサの測定セルの入口側と出口側とに標準型の接続部材を備える貫流(流れ)センサ、前記測定セルは、前記血液サンプルに接触可能な少なくとも1つの光化学センサ素子を備える、
− 前記貫流センサに取り外し可能に差し込まれる(plug-onto)コネクタ、これは前記光化学センサ素子を励起する少なくとも1つの光源と、前記光化学センサ素子の測定放射光を受ける少なくとも1つの光検出器とを有する、
− 前記コネクタへの電気リード線を備える電子モジュール、これは、前記少なくとも1つの光源と前記少なくとも1つの光検出器とに接触する、
ここで、前記貫流センサは、前記入口側の接続部材を介して動脈カテーテルの標準型接続部に接続可能であり、又、前記出口側の接続部材を介して動脈内注入セットの標準型接続部に接続可能である。
【0010】
本発明の前記装置は、臨床作業手順に完全に組み込むことが可能である。なぜなら、測定装置を使用するために、動脈カテーテルと動脈内注入セットとの間の標準型接続部を解除し、本発明のシステムを差し込む(plug-in)するだけでよいからである。前記コネクタ内の光源と光検出器とに対して電力を供給する前記電子モジュールは、フレキシブルな電気リード線を介して評価及び表示装置に接続されるが、無線リンクを備えさせて、この評価及び表示装置へのケーブル接続の必要性を回避することも可能である。前記貫流センサを前記コネクタと共に患者の腕に取り付けることができ、前記電子モジュールもまた患者の腕に取り付けるか、もしくは、評価及び表示装置に組み込んだ状態とすることができる。
【0011】
本発明の一つの好適な変形例において、好適な光測定素子は、前記貫流センサの前記測定セルに設けられることができ、これは、血液サンプルと接触すると、パラメータ測定を開始させる開始信号を送信する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下、本発明を添付の図面を参照して更に詳細に説明する。
【図1】従来技術による、カテーテル及び注入セットを備える動脈アクセスシステムである。
【図2】動脈血液サンプルの少なくとも1つのパラメータを測定するための本発明による装置の一実施例である。これは図1に図示されているもののような動脈アクセスシステムに組み込まれる。
【図3】図2に図示の本発明による装置の異なる詳細である。
【図4】図2に図示の本発明による装置の異なる詳細である。
【図5】図2に図示の本発明の装置の好適な変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
血液分析のために血液サンプルを採るための従来の(state-of-the-art)動脈アクセスシステムは、動脈カテーテル1と、このカテーテルに直接差し込む(plug-on)することが可能な動脈内注入セット16とを有する。前記注入セットの出口側には、例えば、ヘパリン化洗浄溶液を収納した圧力袋20(概略図示)が設けられている。
【0014】
血液分析を行うためには、血液サンプルを採取する必要があるが、それには、以下の手順工程が必要である。
1.加圧袋20と吸引ピストン22との間の停止弁21を閉じる。
2.血液サンプルを注入セット16の吸引ピストン22を介して手動で吸引する。
3.吸引ピストン22と血液取り出し用の隔壁24との間の停止弁23を閉じる。
4.前記隔壁24を介して一方向注射器(図示せず)によって動脈血サンプルを取り出す(欠点:患者と係員とに対する感染のリスク、怪我のリスク)。
5.血液サンプルを、外部血液ガス分析器において分析するか、或いは、小管内に移した後、分析のために試験室に送る(欠点:取り扱いの増加、汚染の危険)。
6.停止弁23を開放し、吸引した血液を前記吸引ピストン22によって動脈に再注入する。
7.前記隔壁24をクリーニングする。
8.停止弁21を開放し、動脈ラインを前記フラッシング弁26を介してクリーニングする。
【0015】
前記注入セットの手動調節可能な滴下弁が25で示されている。前記動脈カテーテル1と注入セット16とは、標準型、例えば、ルアー式アダプタなどの、取り付け部材14,15を備え、これらによって、前記コンポーネント1及び16が周知の方法で流体密及び気密状態に接続される。
【0016】
上記と対照的に、図2に図示されている本発明の測定システムは、重要な利点を有する。すなわち、貫流(flow-through)センサ2によって患者に対して直接に所望の血液パラメータの測定が行われ、貫流センサ2は、動脈アクセスシステムの標準型コンポーネントの間、即ち、動脈カテーテル1と注入セット16との間に挿入される。
【0017】
本発明の装置の前記貫流センサ2は、標準型、例えば、ルアー式アダプタなどの、接続部材3,4を備え、これらが前記貫流センサ2の測定セル7の入口側と出口側5,6に接続される。前記測定セル7内には、光化学センサ素子8が設けられ、これらを血液サンプルと接触させることができる。尚、図2においては、これらのセンサ素子の一つのみが概略図示されている。
【0018】
前記装置は、更に、コネクタ9を備え、これを前記貫流センサ2に取り外し可能に差し込む(plug-on)ことができ、これには、前記光化学センサ素子8の励起用の少なくとも1つの光源10と、前記センサ素子8によって放出された測定放射光を受ける光検出器11と、が備えられている。前記測定システムは、低コストで作動可能である。なぜなら、装置が新たな測定処理に使用される時に、前記貫流センサを簡単に交換することができるからである。
【0019】
更に図3に図示されているように、前記コネクタ9は、電気線13を介して電子モジュール12に接続され、このモジュール12は、前記光源10(例えば、LED)のための電源として機能するとともに、前記光検出器11(例えば、光ダイオード)の信号を通過させる。前記貫流センサ2は、入口側において前記接続部材3を介して動脈カテーテル1の前記標準型接続部14に接続され、出口側において前記接続部材4を介して動脈内注入セット16の標準型接続部15に接続される。これにより、前記測定システム全体を、前記ルアー式接続部を開放することによって簡単に、図1のもののような市販の動脈システムに挿入することができる。
【0020】
前記コネクタ9の前記光源10と光検出器11と電気的に接触する前記電子モジュール12は、電気線17を介して、又は、無線リンクによって、評価及び表示装置18と通信する。図4に概略図示されているように、前記電子モジュール12は、又、評価及び表示装置18’に直接に組み込まれることも可能である。前記コネクタ9は、クランプ27を備え、これは、前記貫流センサを安定した方法でしっかりつかみ、それによって前記光学部材が適切にアラインメントされた状態で固定保持される。
【0021】
図5に図示の本発明の装置の変形例においては、前記貫流センサ2の入口側の接続部材3と前記測定セル7本体との間にフレキシブルなチューブ片19が設けられ、これによって、動脈カテーテル1にかかる機械的負荷を軽減している。この種類の機械的軽減は、出口側の接続部材4と測定セル7との間にも設けられてもよい。
【0022】
本発明の一変形例に拠れば、好適な光測定装置は、前記貫流センサ2の測定セル7に設けられることができ、これは血液サンプルと接触するとパラメータ測定を起動させる開始信号を生成する。この装置はまた、サンプリングシステムに誤って入った血液を即座に検出して、前記評価及び表示装置18,18’において対応する光又は音声警告信号を発生させ、所望の場合、カテーテルの洗い流しを開始させるものである。
【0023】
本発明の装置による血液分析では、以下の工程のみが必要とされる。
1.圧力袋20と吸引ピストン22との間の停止弁21を閉じる。
2.動脈内注入セット16の吸引ピストン22によって血液サンプルを手動吸引する。この後は、光学血液検出装置によって測定が自動的に開始されてもよい。
3.評価及び表示装置18又は18’からの、測定が行われたことの確認信号(音声又は光信号)を待つ。
4.吸引ピストン22によって血液サンプルを再注入する。
5.フラッシング弁26によって動脈ラインを洗い流す。
【0024】
自動化システムによって所定の時間間隔で測定をスケジューリングすることも可能であり、その場合、貫流センサ2の測定セル7への血液サンプルの吸引は、自動起動式のピストン又は蠕動ポンプ(図示せず)によって行われる。
【0025】
本発明に拠れば、前記貫流センサ2の測定セル7に、更に、温度測定用のセンサを備えることができる。好ましくは、この測定は、血液サンプルが静止状態になって始めて開始される。これにより、前記測定の自動開始を、温度測定と連動させることができる。血液サンプルの流速又はその静止状態は、例えば、測定された温度勾配から判定することができる。これに係る原理は、吸引された血液が移動する限り温度が上昇するという原理である。測定セル内の血液の移動が停止すると、温度は降下し始める。これにより、測定の最適な開始点を、より良好に決定し制御することが可能となり、それによって測定精度が改善される。
【0026】
好ましくは、前記貫流センサ2の測定セル7は、更に、O,CO、pH、ナトリウム、カリウム、グルコース、乳酸塩、及び温度のグループから1つのパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサを備える。
【0027】
本発明の測定システムの主要な利点は以下の通りである。
− 測定システムを、標準型取り付け部材(例えば、ルアー式コネクタ)によって、動脈カテーテルと動脈内注入セットの市販のシステムに容易に組み込むことができる。
− 従って、本発明の装置は任意の従来型採血システムと使用されることが可能である。
− その他全ての所望の用途のための動脈カテーテルの使用を続けることができる。
− 患者又は係員にとっての感染のリスクは無い。
− 測定は何ら血液を消費しない。
− 分析処理中において血液サンプルを混同する危険がない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈血サンプルの少なくとも1つのパラメータを測定するための装置であって、以下を特徴とする、
− その貫流センサ(2)の測定セル(7)の入口側と出口側(5,6)とに標準型の接続部材(3,4)を備える貫流センサ(2)、前記測定セル(7)は、前記血液サンプルに接触可能な少なくとも1つの光化学センサ素子(8)を備える、
− 前記貫流センサ(2)に取り外し可能に差込可能なコネクタ(9)、これは前記光化学センサ素子(8)を励起する少なくとも1つの光源(10)と、前記光化学センサ素子(8)の測定放射光を受ける少なくとも1つの光検出器(11)とを備える、
− 前記コネクタ(9)への電気接続線(13)を備える電子モジュール(12)、当該モジュールは、前記少なくとも1つの光源(10)と前記少なくとも1つの光検出器(11)とに接触する、
ここで、前記貫流センサ(2)は、前記入口側の接続部材(3)を介して動脈カテーテル(1)の標準型接続部(14)に接続可能であり、前記出口側の接続部材(4)を介して動脈内注入セット(16)の標準型接続部(15)に接続可能である。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記電子モジュール(12)は、評価及び表示装置(18)への、電気接続線(13)を備えるか、若しくは、無線リンクを備える。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、前記電子モジュール(12)は、評価及び表示装置(18’)に組み込まれる。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置であって、フレキシブル・チューブ片(19)が、前記貫流センサ(2)の前記入口側の接続部材(3)および前記出口側の接続部材(4)の一方又は双方と、前記測定セル(7)と、の間に備えられて、前記動脈カテーテル(1)を機械的負荷から軽減する。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の装置であって、前記コネクタ(9)は、前記貫流センサ(2)を機械的に安定した方法で保持するクランプ(27)を有する。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の装置であって、好適な光測定部材が、前記貫流センサ(2)の前記測定セル(7)に設けられ、前記光測定部材が、前記血液サンプルとの接触時に、パラメータ測定を起動するための開始信号を放出する。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の装置であって、前記貫流センサ(2)の前記測定セル(7)内への前記血液サンプルの吸引は、前記動脈内注入セット(16)の手動起動式吸引ピストン(22)によって行われる。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の装置であって、前記貫流センサ(2)の前記測定セル(7)内への前記血液サンプルの吸引は、自動起動式のピストン又は蠕動ポンプによって行われる。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の装置であって、前記貫流センサ(2)の前記測定セル(7)は、更に、温度測定のためのセンサを備える。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の装置であって、前記貫流センサ(2)の前記測定セル(7)は、O,CO、pH、ナトリウム、カリウム、グルコース、乳酸塩、及び温度のグループから1つのパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサを備える。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−515027(P2012−515027A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545718(P2011−545718)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050237
【国際公開番号】WO2010/081789
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(511170755)スマート・メディカル・ソリューションズ・ゲー・エム・ベー・ハー (2)
【Fターム(参考)】