説明

動電型エキサイタ

【課題】動電型エキサイタの信頼性を確保した上で、その小型化を図る。
【解決手段】コイル20および磁気回路ユニット30を上方側から覆うケース40の上面壁42におけるコイル20の内周側の位置に、その上面壁42を上下方向に貫通する開口部42bが形成されるとともに、ケース40の上面壁42の上面に、この開口部42bを囲むとともに上面壁42の周縁部まで延びる段下がり部42cが形成された構成とする。また、この段下がり部42cに、1対の端子部を有する配線部材としてプリント基板70が、その各端子部としての各導電膜70aの一端部を開口部42bに位置させた状態で取り付けられた構成とする。そして、コイル20から延出する1対のコイル端末20aの各々が、コイル20の内周側へ引き回された状態で各導電膜70aの一端部にそれぞれ導通固定された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、励振用パネル(例えば液晶ディスプレイのタッチパネル等)を振動させるために、この励振用パネルに取り付けられた状態で使用される動電型エキサイタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶ディスプレイを備えた携帯機器等において、そのスピーカとして、液晶ディスプレイのタッチパネルを振動させるように構成されたものが知られている。そして、このスピーカを駆動するためのアクチュエータの1つとして動電型エキサイタが知られている。
【0003】
この動電型エキサイタは、コイルと、このコイルの下端部を収容する磁気間隙が形成された磁気回路ユニットと、これらコイルおよび磁気回路ユニットを上方側から覆うように配置され、上面壁においてコイルを固定支持するケースと、このケースに対して磁気回路ユニットを上下方向に変位可能に支持するサスペンションとを備えた構成となっている。そして、この動電型エキサイタは、そのケースの上面壁において励振用パネルに取り付けられるように構成されている。
【0004】
このような動電型エキサイタにおいては、従来より、例えば「特許文献1」に記載されているように、コイルから延出する1対のコイル端末の各々が、磁気回路ユニットの外周側まで引き回された状態で1対の端子部の各々に導通固定された構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−114763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の動電型エキサイタにおいては、各コイル端末が磁気回路ユニットの外周側において各端子部に導通固定された構成となっているので、動電型エキサイタが大型化してしまう、という問題がある。
【0007】
また、上記従来の動電型エキサイタにおいては、各コイル端末が、上下方向に振動する磁気回路ユニットを経由してその外周側まで引き回された構成となっているので、磁気回路ユニットがコイル端末に接触してこれを断線させてしまうおそれがある、という問題がある。
【0008】
さらに、上記従来の動電型エキサイタにおいては、磁気回路ユニットが上下方向に振動すると、その振動反力によって各コイル端末も多少振動することとなるが、その際の振動数がコイル端末の固有振動数に一致したときにはコイル端末が大きく振動してしまい、その基端部や先端部に断線が発生してしまうおそれがある、という問題がある。
【0009】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、動電型エキサイタの信頼性を確保した上で、その小型化を図ることができる動電型エキサイタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、ケースの構成およびコイル端末の引き回し構造に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0011】
すなわち、本願発明に係る動電型エキサイタは、
コイルと、このコイルの下端部を収容する磁気間隙が形成された磁気回路ユニットと、これらコイルおよび磁気回路ユニットを上方側から覆うように配置され、上面壁において上記コイルを固定支持するケースと、このケースに対して上記磁気回路ユニットを上下方向に変位可能に支持するサスペンションとを備え、上記ケースの上面壁において励振用パネルに取り付けられるように構成された動電型エキサイタにおいて、
上記ケースの上面壁における上記コイルの内周側の位置に、該上面壁を上下方向に貫通する開口部が形成されており、
上記ケースの上面壁の上面に、上記開口部を囲むとともに上記上面壁の周縁部まで延びる段下がり部が形成されており、
上記ケースの段下がり部に、1対の端子部を有する配線部材が、上記各端子部を上記開口部に位置させた状態で取り付けられており、
上記コイルから延出する1対のコイル端末の各々が、該コイルの内周側へ引き回された状態で上記各端子部にそれぞれ導通固定されている、ことを特徴とするものである。
【0012】
上記構成において、「下端部」や「上方側」等の方向性を示す用語は、動電型エキサイタを構成する各部材相互間の位置関係を明確にするために便宜上用いたものであって、これにより動電型エキサイタを実際に使用する際の方向性が限定されるものではない。
【0013】
上記「開口部」は、コイルの内周側の位置において上面壁を上下方向に貫通するように形成されていれば、その具体的な形状や形成位置等については特に限定されるものではない。
【0014】
上記「導通固定」とは、電気的に接続される態様で固定することを意味するものであって、その具体的方法は特に限定されるものではなく、例えばハンダ付けや熱圧着等が採用可能である。
【発明の効果】
【0015】
上記構成に示すように、本願発明に係る動電型エキサイタは、コイルおよび磁気回路ユニットを上方側から覆うケースの上面壁におけるコイルの内周側の位置に、その上面壁を上下方向に貫通する開口部が形成されるとともに、ケースの上面壁の上面に、この開口部を囲むとともに上面壁の周縁部まで延びる段下がり部が形成されており、また、この段下がり部には、1対の端子部を有する配線部材が、その各端子部を開口部に位置させた状態で取り付けられており、そして、コイルから延出する1対のコイル端末の各々が、コイルの内周側へ引き回された状態で各端子部にそれぞれ導通固定された構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0016】
すなわち、本願発明に係る動電型エキサイタにおいては、各コイル端末がコイルの内周側において各端子部に導通固定された構成となっているので、従来のように各コイル端末を磁気回路ユニットの外周側において各端子部に導通固定する必要をなくすことができ、これにより動電型エキサイタを小型化することができる。
【0017】
また、本願発明に係る動電型エキサイタにおいては、各コイル端末がコイルの内周側に引き回された構成となっているので、磁気回路ユニットが上下方向に振動してもコイル端末に接触しまうことはなく、これによりコイル端末が断線してしまうおそれをなくすことができる。
【0018】
さらに、本願発明に係る動電型エキサイタにおいては、各コイル端末がコイルの内周側に引き回された構成となっているので、各コイル端末がコイルの外周側に引き回された構成となっているとした場合に比して、その全長を大幅に短くしてその質量を十分小さくすることができる。したがって、磁気回路ユニットの振動にコイル端末が共振して大きく振動してしまうのを未然に防止することができ、これによりコイル端末の基端部や先端部に断線が発生してしまうおそれをなくすことができる。
【0019】
その際、本願発明に係る動電型エキサイタにおいては、ケースの上面壁に形成された段下がり部に対して、配線部材がその各端子部を開口部に位置させた状態で取り付けられているので、配線部材を上面壁の上面よりも上方へ突出させないようにした状態で配置することができ、これにより励振用パネルへの取付けを適切に行うことができる。
【0020】
このように本願発明によれば、動電型エキサイタの信頼性を確保した上で、その小型化を図ることができる。
【0021】
一方、動電型エキサイタのサイズを小型化する必要がない場合においても、本願発明のように、各コイル端末がコイルの内周側において各端子部に導通固定された構成を採用することにより、その分だけ磁気回路ユニットを大型化して、動電型エキサイタの振動部分の質量を大きくすることができるので、これにより動電型エキサイタの最低共振周波数F0を低い値に設定することができる。したがって、この動電型エキサイタをHaptics(触感フィードバック)対応型の動電型エキサイタとして構成することが容易に可能となる。しかも、磁気回路ユニットを大型化することにより、そのマグネットも大きくなるので、ローレンツ力の増大によって振動特性の向上を図ることができる。
【0022】
上記構成において、ケースの上面壁に、1対のコイル端末を挿通させるための溝部が形成された構成とすれば、各コイル端末を、ケースの上面壁の肉厚の範囲内で引き回すことが可能となり、これにより動電型エキサイタの薄型化を図ることができる。しかも、このような構成を採用することにより、磁気回路ユニットに過大振幅が生じてケースの上面壁に衝突するようなことがあっても、これによりコイル端末が損傷して断線が発生してしまうのを未然に防止することができる。
【0023】
上記構成において、ケースの上面壁の下面に環状リブが形成された構成とした上で、コイルの上端部がこの環状リブの下面に固定された構成とすれば、環状リブの高さの分だけケースの上面壁と磁気回路ユニットとの間の上下方向の間隔を広く確保することができる。そしてこれにより、ケースの上面壁の開口部内において、各コイル端末と各端子部との導通固定部分に形成される下方突出部(例えば、導通固定がハンダ付けによって行われる場合に形成されるハンダの塊や、導通固定が熱圧着によって行われる場合に追加形成されるオーバコート等)が、磁気回路ユニットが振動したときに、これと干渉してしまうのを容易に回避することができる。
【0024】
上記構成において、磁気回路ユニットがコイルの内周側に配置された内磁型の磁気回路ユニットである場合において、そのマグネットの下面に固定された断面略U字形のベースとマグネットの上面に固定された平板状のヨークとで磁気間隙を形成する構成とした上で、そのヨークにおけるケースの開口部の下方に位置する部分に、該ヨークの上面に対して段下がりの凹部または該ヨークを上下方向に貫通する開口部が形成された構成とすれば、上記下方突出部と磁気回路ユニットとの干渉を回避した上で、動電型エキサイタの薄型化を図ることができる。
【0025】
上記構成において、配線部材の具体的な構成は特に限定されるものではないが、これをプリント基板で構成されたものとすれば、配線部材を薄型化することができ、これにより配線部材をケースの上面壁の肉厚の範囲内において配置することが一層容易に可能となる。また、このように配線部材をプリント基板で構成することにより、その各端子部に各コイル端末を導通固定するための作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は、本願発明の一実施形態に係る動電型エキサイタを斜め上方から見て示す斜視図、(b)は、上記動電型エキサイタを斜め下方から見て示す斜視図
【図2】上記動電型エキサイタを主要構成要素に分解して斜め上方から見て示す斜視図
【図3】上記動電型エキサイタを主要構成要素に分解して斜め下方から見て示す斜視図
【図4】(a)は、上記動電型エキサイタを示す平面図、(b)は、(a)のb方向矢視図、(c)は、(b)のc方向矢視図
【図5】上記動電型エキサイタを励振用パネルに取り付けた状態で示す、図4(a)のV−V線断面図
【図6】図5のVI方向矢視図
【図7】図6のVII−VII線断面図
【図8】上記動電型エキサイタのサスペンションを斜め上方から見て示す斜視図
【図9】上記実施形態の2つの変形例に係る動電型エキサイタを示す、図5と同様の図であって、同図(a)は、第1変形例を示す図、同図(b)は、第2変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1(a)は、本願発明の一実施形態に係る動電型エキサイタ10を斜め上方から見て示す斜視図であり、同図(b)は、これを斜め下方から見て示す斜視図である。また、図2は、この動電型エキサイタ10を主要構成要素に分解して斜め上方から見て示す斜視図であり、図3は、これを斜め下方から見て示す斜視図である。
【0029】
図4(a)は、この動電型エキサイタ10を示す平面図であり、同図(b)は、同図(a)のb方向矢視図、同図(c)は、同図(b)のc方向矢視図である。また、図5は、図4(a)のV−V線断面図であり、図6は、図5のVI方向矢視図であり、図7は、図6のVII−VII線断面図である。
【0030】
これらの図に示すように、本実施形態に係る動電型エキサイタ10は、コイル20と、このコイル20の下端部を収容する磁気間隙が形成された磁気回路ユニット30と、これらコイル20および磁気回路ユニット30を上方側から覆うように配置され、上面壁42においてコイル20を固定支持するケース40と、このケース40に対して磁気回路ユニット30を上下方向に変位可能に支持するサスペンション50とを備えた構成となっている。
【0031】
そして、この動電型エキサイタ10は、図5に示すように、そのケース40の上面壁42において、液晶ディスプレイのタッチパネル等の励振用パネル2に貼着等により取り付けられた状態で用いられるようになっている。その際、この動電型エキサイタ10は、そのコイル20に給電されて磁気回路ユニット30が上下方向に振動し、その振動反力によって励振用パネル2を振動させるように構成されている。
【0032】
ケース40は、液晶ポリマー等からなる樹脂成形品であって、平面視において横長矩形状の外形形状を有しており、その上面壁42の外周縁部から下方へ延びる周面壁44を有している。その際、このケース40における上面壁42の長辺側の長さは、15〜19mm程度(例えば17mm程度)の値に設定されており、その短辺側の長さは、10〜14mm程度(例えば12mm程度)の値に設定されている。また、このケース40における周面壁44の高さは、3〜7mm程度(例えば5mm程度)の値に設定されている。
【0033】
この周面壁44は、その4箇所の各コーナ部44Aが、それ以外の長辺側の各側面部44B1および短辺側の各側面部44B2よりも内周側に張り出しており、これにより厚肉の柱状部として形成されている。また、この周面壁44は、その各側面部44B1、44B2の下端面が、各コーナ部44Aの下端面44Aaよりも段上がりの段上がり面44B1a、44B2aとして形成されている。
【0034】
コイル20は、ケース40の外形形状よりもひと回り小さい横長略矩形状に巻回されており、その短辺部分中央部の上端縁から内周側へ向けて1対のコイル端末20aが延びている。このコイル20のケース40の上面壁42への固定支持は、上面壁42の下面に形成された環状リブ42aの下面にコイル20の上端縁を接着することにより行われている。
【0035】
磁気回路ユニット30は、コイル20の内周側にマグネット32が配置された内磁型の磁気回路ユニットであって、マグネット32の下面に固定された断面略U字形のベース34とマグネット32の上面に固定された平板状のヨーク36とで磁気間隙を形成するように構成されている。
【0036】
サスペンション50は、0.1〜0.3mm程度(例えば0.2mm程度)の板厚を有するステンレス鋼等の金属板を打ち抜くことにより板バネ状に形成されている。このサスペンション50は、略矩形リング状に形成された中心部52と、この中心部52から延びる4つの可撓性アーム54A、54Bとで構成されている。そして、このサスペンション50は、その中心部52において磁気回路ユニット30のベース34の下面に接着等により固定されており、また、その4つの可撓性アーム54A、54Bによって磁気回路ユニット30とケース40とを4箇所において連結するようになっている。
【0037】
これら各可撓性アーム54A、54Bは、そのケース40側の先端部54A1、54B1が、ケース40の周面壁44における各コーナ部44Aの下端面44Aaに固定されている。そして、これら各可撓性アーム54A、54Bは、その先端部54A1、54B1から同一周方向に延びるように形成されている。
【0038】
これら4つの可撓性アーム54A、54Bのうち2つの可撓性アーム54Aは、残り2つの可撓性アーム54Bよりも長尺で形成されている。そして、長尺の各可撓性アーム54Aは、その先端部54A1から各段上がり面44B1aの下方において、各側面部44B1に沿って延びるように形成されており、また、短尺の各可撓性アーム54Bは、その先端部54B1から各段上がり面44B2aの下方において各側面部44B2に沿って延びるように形成されている。
【0039】
その際、これら各可撓性アーム54A、54Bは、その先端部54A1、54B1が固定されているコーナ部44Aに対して上記同一周方向に隣接するコーナ部44Aの近傍まで延びている。そして、これら各可撓性アーム54A、54Bにおける磁気回路ユニット30側の基端部54A2、54B2は、内周側に折れ曲がった略L字状に形成されており、この基端部54A2、54B2において中心部52の各コーナ部に連結されている。
【0040】
図8は、サスペンション50を斜め上方から見て示す斜視図である。
【0041】
同図にも示すように、このサスペンション50における各可撓性アーム54A、54Bの先端部54A1、54B1には、その長手方向と略直交する鉛直面に沿って上方へ折れ曲がる突起片54A1a、54B1aが形成されている。これら各突起片54A1a、54B1aの中心部には、各可撓性アーム54A、54Bの基端部54A2、54B2側へ向けて切り起こされた下向きの切起し片54A1b、54B1bが形成されている。
【0042】
一方、図6に示すように、ケース40の周面壁44における各コーナ部44Aの下端面44Aaには、各突起片54A1a、54B1aが圧入固定される鉛直溝44Aa1が形成されている。その際、各突起片54A1a、54B1aが鉛直溝44Aa1に挿入されたとき、その切起し片54A1b、54B1bが鉛直溝44Aa1の側面壁に係合して圧入固定が行われるようになっている。
【0043】
図2および3に示すように、磁気回路ユニット30のベース34は、その下面壁34Aの外周縁部からケース40の各側面部44B1、44B2に沿って上方へ延びる側面壁34B1、34B2を有しており、これら各側面壁34B1、34B2相互間のコーナ部には上下方向に延びる隙間が形成されている。そして、このベース34の各側面壁34B1、34B2における上記同一周方向の端縁部の下端部には、切欠き部34B1a、34B2aが上記隙間を拡げるようにして形成されている。
【0044】
このような切欠き部34B1a、34B2aが形成された構成することにより、図6に示すように、各可撓性アーム54A、54Bの基端部54A2、54B2が、ベース34の下面壁34Aと接触する位置をその先端部54A1、54B1からできるだけ離して、各可撓性アーム54A、54Bの長さを最大限に確保するようにしている。
【0045】
図7に示すように、ケース40には、磁気回路ユニット30が下方側へ所定量変位したとき該磁気回路ユニット30に当接する1対のストッパ60が設けられている。
【0046】
これら各ストッパ60は、ケース40の周面壁44における短辺側の各側面部44B2の段上がり面44B2aに取り付けられた板状部材で構成されている。その際、これら各ストッパ60は、段上がり面44B2aに沿ってその略全長にわたって延びており、上記同一周方向側の端部にはケース40の内側に折れ曲がる鉤部60aが形成されている。そして、これら各ストッパ60には、その2箇所に係合用の孔60bが形成されている。
【0047】
一方、ケース40の周面壁44における短辺側の各側面部44B2の段上がり面44B2aには、その2箇所に高さの異なる2つのボス44B2b、44B2cが形成されている。そして、これら各ボス44B2b、44B2cが、ストッパ60の各孔60bに挿入されるようにした状態で、各ストッパ60が各段上がり面44B2aに接着されることにより、ストッパ60の位置決め固定が行われるようになっている。
【0048】
磁気回路ユニット30のベース34における各側面壁34B1、34B2に形成された切欠き部34B1a、34B2aのうち、短辺側の各側面壁34B2に形成された切欠き部34B2aは、長辺側の各側面壁34B1に形成された切欠き部34B1aよりも上方まで拡大して形成されている。そして、これら短辺側の各側面壁34B2に形成された切欠き部34B2aは、ストッパ60との干渉を回避した上で、磁気回路ユニット30が下方側へ所定量変位したときストッパ60の鉤部60aと当接するようになっている。
【0049】
図4に示すように、ケース40の周面壁44における各コーナ部44Aの下端面44Aaにおける上記同一周方向側の端部には、切欠き部44Aa2がそれぞれ形成されている。
【0050】
図2に示すように、ケース40の上面壁42には、その中央部(すなわち環状リブ42aの内周側に位置する部分)に、該上面壁42を上下方向に貫通する開口部42bが形成されている。また、この上面壁42の上面には、開口部42bを囲むようにして段下がり部42cが形成されている。その際、これら開口部42bおよび段下がり部42cは、ケース40の外形形状と略相似形の横長矩形状に形成されている。
【0051】
1対の短辺側の側面部44B2のうち一方の側面部44B2の上端部には、段下がり部42cよりも深い段下がり部44B2dが、該側面部44B2と上面壁42との稜線に沿って延びるように形成されている。その際、この段下がり部44B2dは、段下がり部42cの短辺部分と略同じ範囲内において形成されている。また、段下がり部42cには、上記一方の短辺側の側面部44B2へ向けて段下がり部44B2dまで帯状に延びる帯状延長部42c1が形成されている。さらに、ケース40の上面壁42には、開口部42bから帯状延長部42c1の幅方向中央部において、段下がり部44B2dの近くまで、上面壁42を上下方向に貫通するようにして延びる溝部42dが形成されている。
【0052】
ケース40の上面壁42には、配線部材としてのプリント基板70が取り付けられている。
【0053】
このプリント基板70は、平面視において段下がり部42c、帯状延長部42c1および段下がり部44B2d全体の外形形状よりも僅かに小さい、これらと略相似形の外形形状を有しており、段下がり部42cの深さよりも薄い板厚で形成されている。そして、このプリント基板70は、段下がり部42cおよび帯状延長部42c1に載置された状態で、接着剤により上面壁42に固定されている。
【0054】
図3に示すように、このプリント基板70の下面には、左右1対の導電膜70aが形成されており、これら各導電膜70aは、その途中部分が絶縁膜70bで被覆されている。その際、これら各導電膜70aは、プリント基板70が上面壁42に取り付けられたとき、その一端部が開口部42bに位置する一方、その他端部が段下がり部44B2dに位置するように形成されている。
【0055】
そして、図5に示すように、コイル20から延出する1対のコイル端末20aの各々が、該コイル20の内周側において溝部42dを挿通するようにして引き回された状態で、各導電膜70aの一端部にそれぞれ導通固定されている、この導通固定は、熱圧着により行われており、その熱圧着部分にはオーバコート72が施されている。
【0056】
プリント基板70には、上面壁42に取り付けられる前の段階で、その1対の導電膜70aの各々の他端部に1対の配線コード74がハンダ付けによって固定されるようになっている。なお、プリント基板70が上面壁42に取り付けられたとき、その1対の導電膜70aの他端部が段下がり部44B2dに位置するようになっているので、ハンダ付けされた1対の配線コード74が不用意にケース40と干渉してしまうことはない。
【0057】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0058】
本実施形態に係る動電型エキサイタ10は、コイル20および磁気回路ユニット30を上方側から覆うケース40の上面壁42におけるコイル20の内周側の位置に、その上面壁42を上下方向に貫通する開口部42bが形成されるとともに、ケース40の上面壁42の上面に、この開口部42bを囲むとともに上面壁42の周縁部まで延びる段下がり部42cが形成されており、また、この段下がり部42cには、1対の端子部を有する配線部材としてのプリント基板70が、その各端子部としての各導電膜70aの一端部を開口部42bに位置させた状態で取り付けられており、そして、コイル20から延出する1対のコイル端末20aの各々が、コイル20の内周側へ引き回された状態で各導電膜70aの一端部にそれぞれ導通固定された構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0059】
すなわち、本実施形態に係る動電型エキサイタ10においては、各コイル端末20aがコイル20の内周側において各導電膜70aの一端部に導通固定された構成となっているので、従来のように各コイル端末20aを磁気回路ユニット30の外周側において各端子部に導通固定する必要をなくすことができ、これにより動電型エキサイタ10を小型化することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る動電型エキサイタ10においては、各コイル端末20aがコイル20の内周側に引き回された構成となっているので、磁気回路ユニット30が上下方向に振動してもコイル端末20aに接触しまうことはなく、これによりコイル端末20aが断線してしまうおそれをなくすことができる。
【0061】
さらに、本実施形態に係る動電型エキサイタ10においては、各コイル端末20aがコイル20の内周側に引き回された構成となっているので、各コイル端末20aがコイル20の外周側に引き回された構成となっているとした場合に比して、その全長を大幅に短くしてその質量を十分小さくすることができる。したがって、磁気回路ユニット30の振動にコイル端末20aが共振して大きく振動してしまうのを未然に防止することができ、これによりコイル端末20aの基端部や先端部に断線が発生してしまうおそれをなくすことができる。
【0062】
その際、本実施形態に係る動電型エキサイタ10においては、ケース40の上面壁42に形成された段下がり部42cに対して、プリント基板70がその各導電膜70aの一端部を開口部42bに位置させた状態で取り付けられているので、プリント基板70を上面壁42の上面よりも上方へ突出させないようにした状態で配置することができ、これにより励振用パネル2への取付けを適切に行うことができる。
【0063】
このように本実施形態によれば、動電型エキサイタ10の信頼性を確保した上で、その小型化を図ることができる。
【0064】
しかも、本実施形態に係る動電型エキサイタ10においては、ケース40の上面壁42に、1対のコイル端末20aを挿通させるための溝部42dが形成された構成となっているので、各コイル端末20aを、ケース40の上面壁42の肉厚の範囲内で引き回すことが可能となり、これにより動電型エキサイタ10の薄型化を図ることができる。しかも、このような構成を採用することにより、磁気回路ユニット30に過大振幅が生じてケース40の上面壁42に衝突するようなことがあっても、これによりコイル端末20aが損傷して断線が発生してしまうのを未然に防止することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る動電型エキサイタ10においては、ケース40の上面壁42の下面に環状リブ42aが形成されており、この環状リブ42aの下面にコイル20の上端部が固定された構成となっているので、この環状リブ42aの高さの分だけケース40の上面壁42と磁気回路ユニット30との間の上下方向の間隔を広く確保することができる。そしてこれにより、ケース40の上面壁42の開口部42b内において、各コイル端末20aと各導電膜70aの一端部との熱圧着部分に下方突出部として追加形成されるオーバコート72が、磁気回路ユニット30が振動したときに、そのヨーク36と干渉してしまうのを容易に回避することができる。
【0066】
なお、各コイル端末20aと各導電膜70aの一端部との導通固定がハンダ付けによって行われる場合には、導通固定部分に下方突出部としてハンダの塊が形成されることとなるが、このような場合においても、磁気回路ユニット30が振動したときに、ハンダの塊が磁気回路ユニット30のヨーク36と干渉してしまうのを容易に回避することができる。
【0067】
本実施形態に係る動電型エキサイタ10においては、配線部材がプリント基板70で構成されているので、配線部材を薄型化することができ、これにより配線部材をケース40の上面壁42の肉厚の範囲内において配置することが容易に可能となる。また、このように配線部材をプリント基板70で構成することにより、その各端子部としての各導電膜70aの一端部に各コイル端末20aを導通固定するための作業を容易に行うことができる。
【0068】
上記実施形態の構成を採用することにより動電型エキサイタ10を小型化することができるが、この動電型エキサイタ10を小型化する必要がない場合においても、上記実施形態のように、各コイル端末20aがコイル20の内周側において各導電膜70aの一端部に導通固定された構成とすることにより、その分だけ磁気回路ユニット30を大型化して、動電型エキサイタ10の振動部分の質量を大きくすることができるので、これにより動電型エキサイタ10の最低共振周波数F0を低い値に設定することができる。したがって、この動電型エキサイタ10をHaptics(触感フィードバック)対応型の動電型エキサイタとして構成することが容易に可能となる。しかも、磁気回路ユニット30を大型化することにより、そのマグネット32も大きくなるので、ローレンツ力の増大によって振動特性の向上を図ることができる。
【0069】
上記実施形態においては、ケース40が平面視において横長矩形状の外形形状を有しているものとして説明したが、これ以外の外形形状(例えば正方形や円形等の外形形状)を有する場合においても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0070】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0071】
図9は、上記実施形態の2つの変形例に係る動電型エキサイタを示す、図5と同様の図であって、同図(a)は、その第1変形例に係る動電型エキサイタ110を示す図であり、同図(b)は、その第2変形例に係る動電型エキサイタ210を示す図である。
【0072】
図9(a)に示すように、第1変形例に係る動電型エキサイタ110は、その基本的な構成は上記実施形態に係る動電型エキサイタ10と同様であるが、その磁気回路ユニット130におけるヨーク136の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0073】
すなわち、本変形例のヨーク136も、上記実施形態のヨーク36と同様、平板状に形成されているが、そのケース40の開口部42bの下方に位置する部分に、該ヨーク136の上面に対して段下がりの凹部136aが形成された構成となっている。この凹部136aは、ケース40の開口部42bよりもやや小さい矩形形状で形成されている。
【0074】
本変形例の構成を採用することにより、ケース40の上面壁42の開口部42b内において、各コイル端末20aと各導電膜70aの一端部との熱圧着部分に下方突出部として追加形成されるオーバコート172が、上記実施形態のオーバコート72よりも厚めに形成されているような場合においても、磁気回路ユニット130が振動したときに、そのヨーク136と干渉してしまうのを一層容易に回避することができる。そしてこれにより、オーバコート172の厚さの管理を簡素化することができる。なお、導通固定部分に下方突出部としてハンダの塊が形成されるような場合においても同様である。
【0075】
一方、オーバコート172が一定値以下の厚さに管理することができる場合には、オーバコート172と磁気回路ユニット130との干渉を回避した上で、動電型エキサイタ110を一層薄型化することができる。
【0076】
図9(b)に示すように、第2変形例に係る動電型エキサイタ210は、その基本的な構成は上記実施形態に係る動電型エキサイタ10と同様であるが、その磁気回路ユニット230におけるヨーク236の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0077】
すなわち、本変形例のヨーク236も、上記実施形態のヨーク36と同様、平板状に形成されているが、そのケース40の開口部42bの下方に位置する部分に、該ヨーク236を上下方向に貫通する開口部236aが形成された構成となっている。この開口部236aは、ケース40の開口部42bよりもやや小さい矩形形状で形成されている。
【0078】
本変形例の構成を採用することにより、ケース40の上面壁42の開口部42b内において、各コイル端末20aと各導電膜70aの一端部との熱圧着部分に下方突出部として追加形成されるオーバコート272が、上記実施形態のオーバコート72よりも厚めに形成されているような場合においても、磁気回路ユニット230が振動したときに、そのヨーク236やマグネット32と干渉してしまうのを一層容易に回避することができる。そしてこれにより、オーバコート272の厚さの管理を簡素化することができる。なお、導通固定部分に下方突出部としてハンダの塊が形成されるような場合においても同様である。
【0079】
一方、オーバコート272が一定値以下の厚さに管理することができる場合には、オーバコート272と磁気回路ユニット230との干渉を回避した上で、動電型エキサイタ210を、第1変形例の場合よりもさらに薄型化することができる。
【0080】
上記第1変形例に係る動電型エキサイタ110においては、そのヨーク136に凹部136aが形成されており、また、上記第2変形例に係る動電型エキサイタ210においては、そのヨーク236に開口部236aが形成されているが、その際、これら凹部136a、開口部236aは、磁気回路ユニット130、230の磁路にほとんど影響を及ぼさないヨーク136、236の中央部に形成されているので、各磁気回路ユニット130、230の磁気回路性能を維持した上で上記作用効果を得ることができる。
【0081】
なお、上記実施形態および変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0082】
2 励振用パネル
10、110、210 動電型エキサイタ
20 コイル
20a コイル端末
30、130、230 磁気回路ユニット
32 マグネット
34 ベース
34A 下面壁
34B1、34B2 側面壁
34B1a、34B2a 切欠き部
36、136、236 ヨーク
40 ケース
42 上面壁
42a 環状リブ
42b 開口部
42c 段下がり部
42c1 帯状延長部
42d 溝部
44 周面壁
44A コーナ部
44Aa 下端面
44Aa1 鉛直溝
44Aa2 切欠き部
44B1、44B2 側面部
44B1a、44B2a 段上がり面
44B2b、44B2c ボス
44B2d 段下がり部
50 サスペンション
52 中心部
54A、54B 可撓性アーム
54A1、54B1 先端部
54A1a、54B1a 突起片
54A1b、54B1b 切起し片
54A2、54B2 基端部
60 ストッパ
60a 鉤部
60b 孔
70 プリント基板(配線部材)
70a 導電膜(端子部)
70b 絶縁膜
72、172、272 オーバコート
74 配線コード
136a 凹部
236a 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、このコイルの下端部を収容する磁気間隙が形成された磁気回路ユニットと、これらコイルおよび磁気回路ユニットを上方側から覆うように配置され、上面壁において上記コイルを固定支持するケースと、このケースに対して上記磁気回路ユニットを上下方向に変位可能に支持するサスペンションとを備え、上記ケースの上面壁において励振用パネルに取り付けられるように構成された動電型エキサイタにおいて、
上記ケースの上面壁における上記コイルの内周側の位置に、該上面壁を上下方向に貫通する開口部が形成されており、
上記ケースの上面壁の上面に、上記開口部を囲むとともに上記上面壁の周縁部まで延びる段下がり部が形成されており、
上記ケースの段下がり部に、1対の端子部を有する配線部材が、上記各端子部を上記開口部に位置させた状態で取り付けられており、
上記コイルから延出する1対のコイル端末の各々が、該コイルの内周側へ引き回された状態で上記各端子部にそれぞれ導通固定されている、ことを特徴とする動電型エキサイタ。
【請求項2】
上記ケースの上面壁に、上記1対のコイル端末を挿通させるための溝部が形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の動電型エキサイタ。
【請求項3】
上記ケースの上面壁の下面に、環状リブが形成されており、
上記コイルの上端部が、上記環状リブの下面に固定されている。ことを特徴とする請求項1または2記載の動電型エキサイタ。
【請求項4】
上記磁気回路ユニットが、上記コイルの内周側にマグネットが配置された内磁型の磁気回路ユニットであって、上記マグネットの下面に固定された断面略U字形のベースと上記マグネットの上面に固定された平板状のヨークとで上記磁気間隙を形成するように構成されており、
上記ヨークにおける上記ケースの開口部の下方に位置する部分に、該ヨークの上面に対して段下がりの凹部または該ヨークを上下方向に貫通する開口部が形成されている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の動電型エキサイタ。
【請求項5】
上記配線部材が、プリント基板で構成されている、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の動電型エキサイタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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