説明

動電型変換器の磁気モータ

【課題】
【解決手段】本発明は、専用の環状ボンド磁石(11)からなる磁気回路を有する可動コイルを備えた動電型変換器の磁気モータ装置(10)に関し、前記 専用の環状ボンド磁石は、中空環状構造を備え、該中空環状構造は、前記可動コイルの第1巻線(17)を可動とする第1空隙を形成する第1環状溝(15)によって該中空環状構造の外表面(14)の頂部(13)に接続される環状空隙(12)を備えることを特徴とする磁気モータ装置(10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ボンド磁石からなる磁気回路を備えた形式の可動コイルを備えた動電型変換器の磁気モータ装置に関する。
【0002】
この発明は、特に、動電型スピーカーの一部を形成することを意図する。しかしながら、この発明は、可動コイルを備えたいかなるタイプの磁気モータにも適用することができる。
【背景技術】
【0003】
ボンド磁石によって形成される磁気回路からなる可動コイルを備えた動電型スピーカーの磁気モータは、本出願人によって出願された参照番号WO2009/133149で公開された特許文献に例示され、既に知られている。この特許文献によれば、磁力線を案内するための永久磁石及び鉄製プレートを前後に備えた従来のスピーカーモータは、塑性磁気材料(熱可塑性結合材)又は弾性磁気材料(エラストマー結合材)からなるリング状のボンド磁石構造に取って代わられる。これらのボンド磁石は、実際、多種多様な形態を有するモールドへの注入によって製造される。これによって、有効磁場が改善され、結果として、従来の焼結磁石の主な欠陥である磁場漏洩が制限された部品を製造することが可能となる。
【0004】
このように、この特許文献WO2009/133149は、フィールドプレートを有さない磁気モータ装置に関するものであって、永久磁石は、円筒状表面とそれに対向する凸状表面を有する特徴的形状を備えた環状ボンド磁石である。この特許文献は、特に、ボンド磁石が可動コイル支持部材の内側に設けられた磁気装置を開示し、このボンド磁石は、コイルのワイヤー巻線に面する方向に延設される外側円筒状表面と、磁石の内側に向かって延設される凸状表面とを備える。この凸状表面は、ボンド磁石の軸面によって追跡される形状が半楕円形又は半円形である。さらに、この外側円筒状表面は、磁石の中央平面を挟んで互いに対向する二つの円筒状部品を備える。
【0005】
このように、軸面に沿って、磁力線は、磁石内側の一方の側面から他方の側面に、半楕円凸状表面によって形成される曲面と平行に、円筒状表面と実質的に垂直に交差するように延びる。これによって、コイル支持部材のワイヤー巻線に向かって効果的に磁場が集中する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、磁力線は、コイル支持部材を超えて、磁石に向かい合って容易には閉鎖しない。このように、特許文献WO2009/133149は、磁力線を閉鎖し、より直線的な磁場を得、磁場漏洩を制限するため、コイル支持部材の周りに、内側に収容された磁石と対称的な位置に第2のボンド磁石を配置することを開示する。
【0007】
しかし、コイル支持部材の周りに磁石を追加して設置することによって、磁気モータ装置の重量と体積が増加する。この点において、動電型変換器をより組み込み易くするため、磁気質量を減少させることが特に望ましい。
【0008】
さらに、特許文献WO2009/133149に開示されるような、半円形状又は半楕円形状を有するボンド磁石環状構造物の内側に生じる磁場のシュミレーションによって、この形式は、有効磁場の点で最適でないことが結論付けられた。図1は、これに関連して、この特許文献WO2009/133149におけるボンド磁石環状モータ30において得られた磁場の計算例を示し、このボンド磁石環状モータ30は、円筒状内側表面と、これに対向し、磁石の外側に向かって延設される凸状表面と、図1のグラフの側にその断面が示されるように、ボンド磁石の軸面と凸状表面とが交差する面が半円形状である凸状表面とを備える。このボンド磁石は、内側円筒状表面がコイルのワイヤー巻線と向かい合うように延設されるようにコイル支持部材を包囲することを目的としている。図1のグラフは、円筒状表面から一定距離にある環状モータの内側に得られ、テスラ(T)で表される磁場の一例を示し、磁石の回転軸Zに垂直な構造物の中央平面Pに対してミリメートルで表される磁石構造物の高さZの関数として表現されている。グラフの斜線部は、磁場が弱いか、又は磁石を工業的に生産する際に磁場を制御するのが困難な環状モータの中央領域に相当する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、少なくとも上記障害を部分的に克服することが可能なボンド磁石に基づいた磁気モータ装置を提案することを目的とする。特に、本発明は、最適化された有効磁場を有すると共に、組み込みを促進させるため、装置の重量及び/又は体積を減少させることが可能な磁気モータを提供することを目的とする。
【0010】
この目的のため、本発明は、上記前文によって提供される一般的定義に従うと共に、さらに、前記環状ボンド磁石は、中空環状構造を備え、該中空環状構造は、前記可動コイルの第1巻線を可動とする第1空隙を形成する第1環状溝によって該中空環状構造の外表面の頂部に接続される環状空隙を備える特徴を有することを必須とする。
【0011】
この構成によれば、ボンド磁石の環状構造の中心における使用価値のない磁気質量、すなわち図1における斜線を付した領域に対応する磁気質量は消滅し、これにより、磁気質量の最適化において確実に有利となる。
【0012】
前記環状空隙は、前記環状ボンド磁石の固体状部分の内側に配置される内部中空空間によって形成され、該環状ボンド磁石の内表面に境界を接し、前記環状ボンド磁石の該外表面は、環状ボンド磁石の該内表面から放射状に離間すると共に、環状ボンド磁石の該固体状部分によって前記内表面に接続され、該固体状部分は、前記環状ボンド磁石の前記固体状部分の内側の前記環状空隙に境界を接する前記内表面と、前記環状ボンド磁石の前記外表面との間に残余の磁性材料の厚さを形成することが有利である。
【0013】
前記環状ボンド磁石の前記内表面と前記外表面の各々と、前記環状ボンド磁石の軸平面との交線は、円を形成することが好ましい。
【0014】
改変例としては、前記環状ボンド磁石の前記内表面と前記外表面の各々と、前記環状ボンド磁石の軸平面との交線は、楕円を形成することができる。
【0015】
具体的な実施例としては、該環状ボンド磁石は、該環状空隙を包囲する固体状中央コアを備えることができる。
【0016】
この具体的な実施例では、前記環状ボンド磁石の該固体状部分は、その一部が該環状ボンド磁石の回転軸に実質的に面するように配置され、該回転軸の方向に、前記環状ボンド磁石の中央部に向かって延設され、該固体状中央コアを形成するように設計することができる。
【0017】
前記環状ボンド磁石の該外表面の該頂部は、該環状空隙へ導く面取ゾーンを備え、該面取ゾーンは、2つの円筒状表面を有し、該2つの円筒状表面は、前記環状ボンド磁石の前記回転軸に対して実質的に平行となるように相対向し、各々、該外表面の該頂部と該環状空隙との間に延設され、前記環状ボンド磁石の該外表面の頂部に前記環状空隙を接続する第1環状溝を形成することが有利である。
【0018】
特に、二重巻線のために設計された形態において、該環状空隙は、該環状空隙を横切る該第1環状溝と一直線になると共に、第2可動コイル巻線が内部を移動可能な第2空隙を形成する第2環状溝によって、前記環状ボンド磁石の該外表面の底部であって前記環状ボンド磁石の中央平面を挟んで該頂部に対向する底部に接続される。
【0019】
前記環状ボンド磁石の該外表面の該底部は、該環状空隙へ導く面取ゾーンを備え、該面取ゾーンは、2つの円筒状表面を有し、該2つの円筒状表面は、前記環状ボンド磁石の前記回転軸に対して実質的に平行となるように相対向し、各々、該外表面の該底部と該環状空隙との間に延設され、前記環状ボンド磁石の該外表面の底部に前記環状空隙を接続する該第2環状溝を形成することが有利である。
【0020】
前記環状ボンド磁石の該固体状部分は、該環状ボンド磁石が、前記環状ボンド磁石の回転軸に対して垂直な面に環状ボンド磁石が交差することによって生ずる磁性表面に対応する磁束の通路のための断面を有するように、可変厚さを有し、この可変厚さは、該環状ボンド磁石の垂直方向の寸法全体にわたって一定であることが好ましい。
【0021】
改変例によれば、前記環状ボンド磁石の該固体状部分は、一定の厚さを有することができる。
【0022】
前記環状ボンド磁石の該外表面の該頂部は、実質的に平らな部分を有することが有利であり、これによって、動電型変換器の他の部品、特にフレームとの組み立てが促進される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の他の特徴や利点について、限定されない例として提供される、本発明の特定の実施態様を通じて、以下の添付の図面を参照しながら説明する。
【0024】
− 図1は、先行技術に係るボンド磁石の環状磁気モータの概略断面図と、既に説明したが、このモータ構造内に生ずる磁界を高さの関数として示すグラフとを示す。
【0025】
− 図2は、本発明に係る動電型変換器の磁気モータを形成するボンド磁石の環状構造の断面を概略的に示す。
【0026】
− 図3は、本発明に係るボンド磁石の環状構造の実施例の改変例を概略的に示し、該ボンド磁石の環状構造が一定の厚さを有する場合を示す。
【0027】
− 図4は、二重巻線を有する可動コイルの支持部材の構造を概略的に示す。
【0028】
− 図5は、本発明に係るボンド磁石の環状構造の実施例の他の改変例を概略的に示し、該ボンド磁石の環状構造が二重巻線に適するように設計された場合を示す。
【0029】
− 図6は、本発明に係るボンド磁石の環状構造の実施例の他の改変例を概略的に示し、該ボンド磁石の環状構造が小径巻線に適するように設計された場合を示す。
【0030】
各々の図面における共通の部分には、同一の参照番号を付している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図2の例は、一例として塑性磁気材料からなり、回転軸Zに対して対象な中空円環状のボンド磁石11からなる磁気モータ10の断面図を示す。
【0032】
すなわち、回転軸Zを有する環状ボンド磁石11は、先行技術に係る中実の環状のボンド磁石とは対照的に、中空本体を形成する。この環状ボンド磁石11は、環状ボンド磁石11の固体状部分の内部に配置されると共に、環状ボンド磁石11の内表面23と境界を接する内部中空空間からなる環状空隙12又は凹部を備え、環状空隙12がこの環状ボンド磁石の軸面と交差してできる線は例えば円である。環状ボンド磁石11は、環状ボンド磁石の固体状部分の内側に形成される内表面23から放射状に離れる外表面14を有し、内表面23と、外表面14との間に位置する残留磁性材料の厚さを形成する。該環状ボンド磁石の軸面を有する外表面14の交線は、例えば円を形成する。この外表面14がこの環状ボンド磁石の軸面と交差してできる線は例えば円である。
【0033】
改変例では、環状ボンド磁石11の内表面23と外表面14の各々と、環状ボンド磁石11の軸面との交線は楕円である。
【0034】
環状空隙12の存在により、環状ボンド磁石11の中心における使用価値のない磁気質量を排除することができて有利である。
【0035】
さらに、環状空隙12は、第1空隙を形成する目的で、第1環状溝15によって、環状ボンド磁石11の外表面14の頂部13に連結される。この第1空隙は、ボンド磁石の2つの垂直面15a、15bの間に、狭いスペースを形成し、これら2つの垂直面15a、15bは第1環状溝15の縁によって形成され、そこでは、この空隙の中央に位置する可動コイル支持部材16上に設けられた第1コイル17が垂直方向にスライドすることができる。ボンド磁石の内部に生み出される磁界は、円(又は楕円)の曲部の至る所で続けて生じ、第1空隙を形成する2つの垂直面15a、15bを介して磁石の外側へ逃げるため、後者の領域で、可動コイル17がその間に配置されることを意図する2つの垂直面15a、15bに垂直方向に磁化がなされる。これは、空隙の各表面15a、15bと、コイル支持部材16との間の角度を最小とすることと同等である。最適な状態においては、これら3つの表面が平行でなければならない。
【0036】
そこで、環状ボンド磁石の外表面14の頂部13は、環状ボンド磁石11の固体状部分24を介して環状空隙12へ導く面取ゾーンを備え、この面取ゾーンは、従って、相対向する2つの円筒状表面を有し、これらは後述するように表面15a、15bであって、環状ボンド磁石11の回転軸Zに対して実質的に平行であり、各々、外表面14の頂部13と環状空隙12との間に延設され、環状ボンド磁石11の外表面14の頂部13に環状空隙12を接続する第1環状溝15を形成する。
【0037】
このように、磁力線は磁石を通って、軸面に沿って、円状(又は楕円状)の内表面及び外表面によって形成される曲線に正確に追従するように、また、環状溝15の2つの相対向する円筒状表面15a、15bと実質的に垂直に交差するように延びる。従って、これらは、可動コイル17と放射状に交差する。
【0038】
図2に示す例によれば、本発明に係る磁気モータを形成する、ボンド磁石の中空環状構造は、開放中空トーラスを形成する。この実施例において、この構造は、そのため、円形断面を備える。異なる形態においては、ボンド磁石は、楕円形の断面を備える。
【0039】
この構造は、例えば、可動コイルの動作面を挟んで相対向するように位置する環状ボンド磁石の2つの部品に対応し、それから、環状ボンド磁石11の中空環状構造を形成するために組み立てられて2つの一体成型集合体を成形する射出成形手段によって得られる。
【0040】
ボンド磁石の磁気構造の磁気質量の最適化は、従って、主に中空環状構造の形成における特定の配置に基くものであって、塑性磁気材料からなる環状構造の中央における使用価値のない磁気質量を排除することができて有利である。
【0041】
しかしながら、環状構造の中央における使用価値のない磁気質量の排除によって得られる利点に加えて、質量に関する追加的な利点もまた、ボンド磁石11の中空環状構造の環状空隙12と外表面14との間に残留する残留磁性材料の形状を最適化することによって得ることができる。この環状空隙12は、ゆえに、この環状空隙12と、該外表面に沿った中空環状構造の外表面との間の残留磁性材料の可変厚さを形成するように形状が決められている。言い換えれば、環状ボンド磁石11の固体状部分の内側の環状空隙12と境界を接する内表面23と、環状ボンド磁石の外表面13との間に位置する固体状部分24は、厚さが可変となるように形成される。
【0042】
特に、図2で用いられる表記を参照すると、そのような最適化は、環状空隙12と外表面14との間に構成される環状ボンド磁石の固体状部分24によって形成される残留磁性材料の厚さθ(e)を変化させることにより環状空隙12を構成することにあり、角度θの関数として、環状ボンド磁石11が磁束の垂直寸法に沿って、すなわち環状ボンド磁石11の回転軸Zに平行な方向に沿って一定であるような、磁束が通過するための断面を備えるように環状空隙12を構成する。この磁束が通過するための断面は、軸Zに直交する平面に沿って切断されるボンド磁石の中空環状構造の磁気面によって形成される。この磁束が通過するための断面は、ゆえに、環状ボンド磁石11の回転軸Zと直交する平面に環状ボンド磁石11が交差することで生じる磁気面に対応する。
【0043】
厚さを改良することによる残留磁性材料の形状の最適化は、モータの全体高さzにおいて一定の磁気面を維持するため、磁気面Sが、磁束の関数として一定であることを確保しなければならない。
【0044】
これを達成するため、下記の式で用いられる表記のために図2も参照しながら、角度θの関数としての変数である厚さe(θ)は、後述の法則に従わなければならない。

【0045】
ここで、Rは、表面15a、15bとの間の空隙内をスライドすることを目的とする可動コイルの半径であり、
【0046】
ext(θ)は、中空環状構造の外径であり、
int(θ)は、中空環状構造の内径である。
【0047】
外径又は内径が一定であるような形状は、製造における観点から最適な形状である。しかしながら、楕円形を思い描くことももちろん可能である。
【0048】
可能な限りモータの効率を最適化するためには、断面の曲率を急変させることを可能な限り回避することが望ましい。これは、曲率の二次導関数を最小化する(ゼロに向かわせる)ことと同等である。
【0049】
このようにして磁気質量を最適化することにより、磁場をボンド磁石に案内し、後者を極めて小さな空隙の内側の「コイルパス」に集中的に投入することができ、これにより、従来の構造と比較して磁場漏洩を大幅に制限することが可能となる。
【0050】
この構造は、小さなモータ質量を有する空隙において強い磁場を生じさせることが要求されるような磁気モータに適用することで特に有利である。実際、本発明に係る中空環状構造により、モータの質量を、従来のモータと比較して50%〜80%低減することが可能となる。
【0051】
上述の図2の例に係る原理を適用することにより、環状ボンド磁石11の軸面と、環状ボンド磁石11の内表面23及び外表面14の各々とが交差することによって形成される複数の円は偏心しているため、環状ボンド磁石11の固体状部分の内側の環状空隙12と境界を接する内表面23と、外表面13との間に位置する環状ボンド磁石11の中実体の固体状部分24の厚さが異なる。
【0052】
図3に示すような改変例によれば、磁気モータ10は、一定の厚さを有する開口トーラスの形状をした中空環状構造を備えるボンド磁石11からなる。言い換えれば、図2に示す例によれば、環状ボンド磁石11の軸面と、環状ボンド磁石11の内表面23及び外表面14の各々とが交差して形成される円は同心であるため、環状ボンド磁石11の固体状部分の内側の環状空隙12と境界を接する内表面23と、外表面13との間に位置する環状ボンド磁石11の中実体の固体状部分24は、一定の厚さeを備えることになる。一定の厚さを備えた中空環状構造もまた、楕円形状断面で境界を示すことができる。この改変例によれば、環状空隙12は、そのため、環状構造の空隙と外表面との間の残留磁性材料の一定の厚さeを確保するため、中空環状構造の中央に配置される。そのため、可変パラメータは、環状ボンド磁石11の厚さeと、中空環状構造の内径r1である。最小内径によって、コイル17の最大変位XMaxが決定され、ここで、XMax<2*r1である。そこで、モータの構造がより対称的であれば、より安価に製造され得るため有利である。しかし、それは、図2を参照しながら説明した可変厚さを有する中空環状構造に比較して質量の点で最適とは言えない面がある。
【0053】
本発明が提案する磁気モータの構造はまた、図4に示すような二重巻線にも適する。可動コイル支持部材16は、この構造では、第1可動コイル巻線17を形成する第1の上方巻線と、第2可動コイル巻線18を形成する第2の下方巻線と、可動コイル支持部材の上端に固定するメンブレン19とで構成される。第1可動コイル巻線17及び第2可動コイル巻線18は、互いに軸方向に離間し、一本のワイヤからなる。しかし、これらは、異なる方向に巻回されているため、第2巻線18には、第1巻線17で流れる電流とは、反対方向に電流が流れる。
【0054】
磁気モータ構造10は、二重巻線可動コイルを備えた動電型変換器に適用するため、図5に示すように改良することができる。これを達成するため、第2環状溝20を中空環状構造の環状空隙12と外表面14との間に設け、第2環状溝20を外表面の底部21に導き、そこを通って第1環状溝15が出現するこの面の頂部13に対向させる。2つの環状溝15、20は、環状空隙12とを挟んで一直線に並び、各々第1空隙及び第2空隙を形成し、2つの空隙の中央に位置する可動支持部材16に巻回される第1可動コイル巻線17及び第2可動コイル巻線18を受けるために用いられる。
【0055】
そこで、環状ボンド磁石11の外表面14の底部21は、環状ボンド磁石11の中央面を挟んで外表面14の頂部13に対向し、また、環状ボンド磁石11の固体状部分24を通って環状空隙12に導かれる面取ゾーンからなり、従ってこの面取ゾーンは、相対向する2つの円筒状表面20a、20bを有し、円筒状表面20a、20bは環状ボンド磁石11の回転軸Zに平行で、各々外表面14の底部21と環状空隙12との間に延び、環状空隙12を環状ボンド磁石11の外表面14の底部21に接続する第2環状溝20を形成する。
【0056】
従って、2つの巻線17、18は、各々第1環状溝15の2つの相対向する円筒状表面15a、15b、及び第2環状溝20の2つの相対向する円筒状表面20a、20bに直角に配置され、2つの巻線を通過する2つの磁束は互いに反対の方向に方向付けられる。すなわち、筒状エレメントに働く力は2倍となり、これによってモータ装置の動力が増加する。
【0057】
1つの巻線を有する可動コイルの場合に適した磁気モータ構造の場合には、例えば図2及び図3に示すように、中空環状構造は、より良好に磁力線を案内し、それによって空気への漏れを制限するため、その底部において閉じている。言い換えれば、外表面14の底部21は、従って、面取ゾーンを全く備えない。
【0058】
図6は、もう一つの改変例を示し、モータ10の中空環状構造は、環状空隙12によって囲まれた磁性体22からなる中実中央コアからなる。すなわち、本改変例では、環状ボンド磁石11の固体状部分24、これは環状ボンド磁石11の回転軸Zに面するように配置されているが、磁性体22からなる中実中央コアを形成するため、環状ボンド磁石11の回転軸Zの方向に環状ボンド磁石11の中心部に向かって延びるように設計されている。この改変例は、2つの空隙を有するものとして描かれている。図6に示した例によれば、中空環状構造は、閉じた中空のトーラスを形成する。しかし、この改変例における中空環状構造は、楕円状の断面を形成することもできる。環状空隙12とこの構造の外表面14との間の残留磁気厚さの変化が、角度θに応じて、上記図2との関係でさらに定義したものと同じ法則に従うように、環状空隙12が形成される。しかし、外径rext(θ)は、角度θlimと共に、


のようになる。この形式は、小型巻線を有するスピーカのモータを製造するのに特に有利である。
【0059】
上述の種々の改変例とは別に、中空環状構造の外表面14の頂部13を、フレームからモータの部分を組み立て易くするため、実質的に平らな領域を有するように形成することができる。
【0060】
さらに、図6に示した改変例では、減圧孔を形成するように、実質的に回転軸Zに沿って、固体状中央コア22を一つの側面から他方に通過するオリフィス(不図示)を思い描くこともできる。この減圧孔は、固体状中央コア22による空気の圧縮に伴う可動コイル17の変位を妨げるいかなる制約をなくすように機能し、運転中は非線形となる。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ボンド磁石(11)からなる磁気回路を有する可動コイルを備えた動電型変換器の磁気モータ装置(10)であって、該環状ボンド磁石(11)は、中空環状構造を備え、該中空環状構造は、前記可動コイルの第1巻線(17)を可動とする第1空隙を形成する第1環状溝(15)によって該中空環状構造の外表面(14)の頂部(13)に接続される環状空隙(12)を備えることを特徴とする磁気モータ装置(10)。
【請求項2】
前記環状空隙(12)は、前記環状ボンド磁石(11)の固体状部分の内側に配置される内部中空空間によって形成され、該環状ボンド磁石(11)の内表面(23)に境界を接し、前記環状ボンド磁石(11)の該外表面(14)は、環状ボンド磁石の該内表面(23)から放射状に離間すると共に、環状ボンド磁石(11)の該固体状部分(24)によって前記内表面(23)に接続され、該固体状部分(24)は、前記環状ボンド磁石(11)の前記固体状部分の内側の前記環状空隙(12)に境界を接する前記内表面(23)と、前記環状ボンド磁石(11)の前記外表面(14)との間に残余の磁性材料の厚さを形成することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記環状ボンド磁石(11)の前記内表面(23)と前記外表面(14)の各々と、前記環状ボンド磁石(11)の軸平面との交線は、円を形成することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記環状ボンド磁石(11)の前記内表面(23)と前記外表面(14)の各々と、前記環状ボンド磁石(11)の軸平面との交線は、楕円を形成することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
該環状ボンド磁石(11)は、該環状空隙(12)を包囲する固体状中央コア(22)を備えることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記環状ボンド磁石(11)の固体状部分(24)は、該環状ボンド磁石(11)の回転軸Zに実質的に当接するように配置され、該回転軸Zの方向に、前記環状ボンド磁石(11)の中央部に向かって延設され、該固体状中央コア(22)を形成するように設計されることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記環状ボンド磁石(11)の該外表面(14)の該頂部(13)は、該環状空隙(12)へ導く面取ゾーンを備え、該面取ゾーンは、2つの円筒状表面(15a、15b)を有し、該2つの円筒状表面(15a、15b)は、前記環状ボンド磁石(11)の前記回転軸(Z)に対して実質的に平行となるように相対向し、各々、該外表面(14)の該頂部(13)と該環状空隙(12)との間に延設され、前記環状ボンド磁石(11)の該外表面(14)の頂部(13)に前記環状空隙(12)を接続する第1環状溝(15)を形成することを特徴とする前記先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
該環状空隙(12)は、該環状空隙(12)を横切る該第1環状溝(15)と一直線になる第2環状溝(20)によって、前記環状ボンド磁石(11)の該外表面(14)の底部(21)であって前記環状ボンド磁石の中央平面を挟んで該頂部(13)に対向する底部(21)に接続され、第2可動コイル巻線(18)が内部を移動可能な第2空隙を形成することを特徴とする前記先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記環状ボンド磁石(11)の該外表面(14)の該底部(13)は、該環状空隙(12)へ導く面取ゾーンを備え、該面取ゾーンは、2つの円筒状表面(20a、20b)を有し、該2つの円筒状表面(20a、20b)は、前記環状ボンド磁石(11)の前記回転軸(Z)に対して実質的に平行となるように相対向し、各々、該外表面(14)の該底部(21)と該環状空隙(12)との間に延設され、前記環状ボンド磁石(11)の該外表面(14)の底部(21)に前記環状空隙(12)を接続する第2環状溝(15)を形成することを特徴とする前記先行する請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記環状ボンド磁石(11)の該固体状部分(24)は、該環状ボンド磁石(11)が、前記環状ボンド磁石(11)の回転軸(Z)に対して垂直な面に環状ボンド磁石(11)が交差することによって生ずる磁性表面に対応する磁束の通路のための断面を有するように、可変厚さ(e(θ))を有し、この可変厚さe(e(θ))は、該環状ボンド磁石の垂直方向の寸法全体に沿って一定であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項11】
前記環状ボンド磁石(11)の該固体状部分(24)は、一定の厚さ(e)を有することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項12】
前記環状ボンド磁石の該外表面(14)の該頂部(13)は、実質的に平らな部分を有することを特徴とする前記先行する請求項のいずれかに記載の装置。

【公表番号】特表2013−520061(P2013−520061A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552447(P2012−552447)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/FR2011/050275
【国際公開番号】WO2011/098727
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(507308902)ルノー エス.ア.エス. (281)
【出願人】(510288518)ユニベルシテ ドゥ メーヌ (3)
【Fターム(参考)】