説明

動電学的な濃縮装置及びその使用方法

【課題】効率的な試料濃縮装置及びその使用方法を提供する。
【解決手段】本発明は、対象種を濃縮するにあたり、その装置及びその使用方法を提供し、かつ/または装置内の液体の流れを制御する。その方法は特に少なくとも基板の一部が、チャネルと結合しているような、少なくとも1つの硬質基板と結合している状態で、またイオン選択性膜が少なくとも基板の表面の一部に接着しており、その基板がチャネルと結合しているか、もしくは前述のチャネルの1つの一部表面に結合しているような状態で、対象種包含の液体を通過させることができるチャネルの平面アレイを構成する流体チップ含有の装置を利用する。当該装置は、チャネル内の電場を誘起させるためのシステムであり、チャネル内で界面動電流または圧力駆動流を誘導するためのシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中の荷電対象種を濃縮するための装置及びその使用方法を提供する。本発明は、荷電対象種の動電学的トラップに基づいた濃縮装置を提示し、それによって対象種をさらに分離分解できる。
【背景技術】
【0002】
プロテオミクスの主な課題として、血清または細胞抽出物などの生体分子試料の複雑性が挙げられる。通常の血液試料には10,000種類以上ものタンパク種を含有していることもあり、その10億倍以上もの種類の濃度がある。この様なタンパク種の多様性や広範な濃度幅のため、プロテオミクスにおける試料の準備には難題が残っている。
【0003】
多次元分離解析及び質量分析法(MS)に基づいた従来のタンパク質解析技術は、最大分離能力(最大3000)及び検出ダイナミックレンジ(最大10)が制限されるため、十分なものではない。生体分子解析用マイクロ流体システム(所謂、μTAS)は、生体分子の自動的な解析処理に期待できるものである。マイクロチップ上での様々な生体分子の分離及び精製や、また化学反応及び化学増幅をコンパクト化し、また何十倍もの速さで試料分離及び処理を行うことができる。さらに、2つの異なる分離法をマイクロ流体システムに統合し、1つの多次元解析デバイスに導入した。しかし、試料の分離や処理を行うマイクロ流体デバイスのほとんどは、試料量が食い違うという重要な問題を抱えている。マイクロ流体装置は、1pL〜1nL試料流体の取扱い及び処理を行うのに極めて有効である。しかし、ほとんどの生体分子試料は、1μLより大きい液体体積で使用できる、または取り扱われる。従って、マイクロチップを用いた分離法は、使用する試料のわずかな量だけしか解析していないことがよくあり、そのため全体の検出感度が著しく制限される。プロテオミクスでは、多くの情報を所有しているシグナリング分子(例えば、サイトカイン及びバイオマーカー)が微量濃度(nM〜pMの範囲)でしか存在しないことや、タンパク質及びペプチドに対するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などのシグナル増幅技術がないということがこの問題を悪化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号明細書
【特許文献2】米国特許第6,012,902号明細書
【特許文献3】米国特許第6,171,067号明細書
【特許文献4】米国特許第6,274,089号明細書
【特許文献5】米国特許第6,271,021号明細書
【特許文献6】米国特許第6,753,200号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Z. N. Yu, P. Deshpande, W. Wu, J. Wang and S. Y. Chou, Appl. Phys. Lett. 77 (7), 927 (2000)
【非特許文献2】S. Y. Chou, P. R. Krauss, and P. J. Renstrom, Appl. Phys. Lett. 67 (21), 3114 (1995)
【非特許文献3】Stephen Y. Chou, Peter R. Krauss and Preston J. Renstrom, Science 272, 85 (1996)
【非特許文献4】Astorga- Wells J. et al, Analytical Chemistry 75: 5207- 5212 (2003)
【非特許文献5】Joensson, M. et al, Proceedings of the MicroTAS 2006 Symposium, Tokyo Japan, Vol. 1, pp. 606-608
【非特許文献6】J. Han, H. G. Craighead, J. Vac. Sci. Technol., A 17, 2142-2147 (1999)
【非特許文献7】J. Han, H. G. Craighead, Science 288, 1026-1029 (2000)
【非特許文献8】Effenhauser et al., 1993, Anal. Chem. 65: 2637-2642
【非特許文献9】Harrison et al., 1993, Science 261: 895-897
【非特許文献10】Jacobson et al., 1994, Anal. Chem. 66: 1107-1113
【非特許文献11】Jacobson et al., 1994, Anal. Chem. 66: 1114-1118
【非特許文献12】Feng et al., 2000, Journal of the American Society For Mass Spectrometry 11: 94-99
【非特許文献13】Koziel, New Orleans, La. 2000
【非特許文献14】Khandurina et al., 1999, Analytical Chemistry 71: 1815-1819
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
必要とされているのは、マイクロリットルあるいはそれ以上の量が標準的な試料量として取り扱われ、分子をより少ない容量に濃縮することにより、試料の高感度な分離・検出が可能な、効率的な試料濃縮装置である。現在、例えば電場増幅試料スタッキング(FAS)、等速電気泳動法(ITP)、界面動電トラッピング法、ミセル界面動電のスイーピング法、クロマトグラフ予備濃縮、及び膜予備濃縮などの液体中の試料予備濃縮法を使用しているいくつかの方法がある。これら方法の多くは、もともとキャピラリー電気泳動のために開発されたものであり、特殊なバッファー(緩衝液)の調整及び/または試薬を必要とする。クロマトグラフ及びフィルタを用いた予備濃縮技術の効率は、標的分子の疎水性及び分子量に依存する。
【0007】
動電学的なトラッピングは、上記の荷電生体分子濃縮方法とは別の方法である。イオン選択性膜を通過する電界をかけると、電荷空乏領域が形成され、(圧力をかけるか、電気浸透による)接線流と組み合わせて、チャネル内の帯電した被分析物を濃縮することができる。しかし、装置内に非常に薄い(〜5um)イオン選択性膜を装置に内蔵するには手腕が必要なので、目下当該装置の制作は厄介で困難である。薄いナフィオン(登録商標)膜は破れやすく、また膜自体がカールして丸まってしまい、平面装置の製作が難しくなるので、取り扱いには細心の注意が必要である。
【0008】
平面装置のほかの試みとして、2つの平面マイクロチップ(すべてのチップにマイクロチャンネルが含まれている)の間に薄いイオン選択性膜を挟んだが、装置の密封が不完全で、膜周辺に間隙が形成され、その結果、漏電電流が発生した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態では、濃縮装置であって、
○対象種を包含する液体を流すことができる平面アレイ状の複数のチャネルを含む流体チップと、
○少なくともその表面の一部が前述のチャネルと結合するように流体チップに接続されている少なくとも1つの硬質基板と、
○前述の基板の表面の少なくとも一部に接着され、前述の複数のチャネルを結合するイオン選択性膜、または
○前述の複数のチャネルのうちの1つの表面の一部と結合するイオン選択性膜と、
○前述のチャネル内に電場を誘発するシステムと、
○前述のチャネル内に界面動電流または圧力駆動流を誘起するシステムとを含む濃縮装置を提供する。
【0010】
一実施形態では、チャネル内の電場を誘起する手段は電圧源であるが、電圧源は一実施形態では、50mVと1500Vの間で供給される。一実施形態では、電圧源は前述のマイクロチャネルの反対側にも同じ電圧を印加する、または、別の実施形態では、電圧源はあるチャネルに、ほかのチャネルと比べてより大きな電圧を印加する。もしくは別の実施形態では、電圧源は前述のマイクロチャネル内のほかのエリアに比べて、前述のマイクロチャンネルのエリアに電位差を生じさせる。別の実施形態では、電圧源は少なくとも2つの前述のチャネル間で電位差を生じさせる。
【0011】
幾つかの実施形態では、チャネルの幅は、約10〜200μmの間であり、別の実施形態では、チャネルの深さは、10μm〜50μmの間である。幾つかの実施形態では、チャネルの深さは約5μm〜50μmの間であり、別の実施形態では、チャネルの深さは5〜10μmの間である。幾つかの実施形態では、イオン選択性膜の幅は、50〜1000μmの間であり、また別の実施形態では、イオン選択性膜の深さは、100〜500μmの間である。幾つかの実施形態では、イオン選択性膜の幅は、100〜500nmであり、また別の実施形態では、イオン選択性膜の深さは、10〜50μmの間であり、また別の実施形態では、イオン選択性膜の深さは、5〜20μmである。
【0012】
幾つかの実施形態では、硬質基板はパイレックス(登録商標)ガラス、シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、石英、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、炭酸プロピレン(PC)またはアクリルから成る。
【0013】
一実施形態では、流体チップはポリジメチルシロキサンを含有する。
【0014】
一実施形態では、イオン選択性膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロスルホン酸、ポリホスファゼン、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリ・ジルコニア、ポリエチレンイミン-ポリ-アクリル酸、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(アクリル酸)、あるいは非フッ素化炭化水素ポリマーまたは、ポリマー無機複合物を含有する。一実施形態では、イオン選択性膜の膜厚は、100〜500nmの間であり、別の実施形態では、イオン選択性膜の膜厚は、5〜20μmの間である。
【0015】
幾つかの実施形態では、マイクロチャネルの表面に、前述の表面に前述の対象種が吸着するのを弱めたり強めたりする機能を持たせ、あるいは幾つかの実施形態では、マイクロチャネルの表面に装置の作業効率を高めたり下げたりする機能性を与えた。
【0016】
幾つかの実施形態では、チャネル内の電場を誘起させるシステムには、少なくとも1組の電極及び電源を搭載している。幾つかの実施形態では、基板にはイオン選択性膜の近くに配置されている電極が搭載される。
【0017】
幾つかの実施形態では、装置に分離システム、検出システム、解析システム、あるいはそれらの組合せに結合されている。幾つかの実施形態では、装置に質量分析計に結合されている。
【0018】
一実施形態では、本発明は、ある形態では10μm/秒〜10mm/秒の流液速度を持つ本発明の装置を構成するマイクロ流体ポンプを提供する。
【0019】
一実施形態では、本発明は、液体中の対象種を濃縮する方法、対象種を含有する液体を本発明の装置に適用する方法を提供する。
【0020】
一実施形態では、方法は、
●イオン選択性膜の近位にあるチャネル内の或る領域でイオン枯渇が生じ、かつチャネル内に空間電荷層が形成され、それにより前述の対象種にエネルギー障壁を提供するように、チャネル内に電場を誘起させるステップと、
●チャネル内で液体の流れを誘発するステップとをさらに含む。
【0021】
一実施形態では、流れは電気浸透流であり、または別の実施形態では、流れは圧力駆動である。
【0022】
一実施形態では、ステップは周期的に行なわれる。
【0023】
一実施形態では、前述の装置に電圧を印加して、前述のチャネル中の電場を誘起するが、一実施形態では、50mVから1500Vまでの電圧出力である。一実施形態では、チャネルの反対側にも同じ電圧を印加する。または別の実施形態では、陰極側と比べてより大きな電圧を陽極側に印加する。
【0024】
一実施形態では、前述のチャネルの陽極側にさらに大きな電圧を印加する前に、チャネル内に空間電荷層が生成される。
【0025】
一実施形態では、液体には器官ホモジェネート、細胞抽出液または血液試料が含まれる。別の実施形態では、対象種には、タンパク質、ポリペプチド、核酸、ウィルス粒子、またはそれらを組み合わせが含まれる。一実施形態では、対象種にはマイクロ粒子及び/またはナノ粒子が含まれる。
【0026】
発明の本特徴によると、また別の実施形態装置は、分離システム、検出システム、解析システム、あるいはそれらの組合せに結合されている。
【0027】
幾つかの実施形態では、本発明は、濃縮装置の準備方法であって、
濃縮装置が、
○対象種を包含する液体を流すことができる平面アレイ状の複数のチャネルを含む流体チップと、
○少なくともその表面の一部が前述のチャネルと結合するように前述の流体チップに接続されている少なくとも1つの硬質基板と、
○前述の基板の表面の少なくとも一部に接着され、前述の複数のチャネルを結合するイオン選択性膜とを含み、
方法が、
●陰圧下で液状ポリマーを前述の基板に適用するステップであって、該ステップにおいて、前述の基板が、複数のチャネルを含む流体チップに、複数のチャネルが前記基板の表面の少なくとも一部と結合するように接続され、それにより前記ポリマーが、前述の基板の表面上に前述のポリマーの層を形成するのに十分な時間にわたって適用されるような、該ステップと、
●前述の液状ポリマー層が前述の基板の表面上に膜構造を形成するような状態を提供するステップと、
●前述の膜構造を含む前述の基板の表面の少なくとも一部と結合する複数のチャネルを含む前述の流体チップに、前述の基板を装着するステップとを含む、該方法を提供する。
【0028】
幾つかの実施形態では、液状ポリマーには、ポリテトラフルオロエチレン、ポリホスファゼン、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリ・ジルコニア、ポリエチレンイミン−・ポリ(アクリル酸)あるいはポリ(エチレンオキシド)−ポリ(アクリル酸)が含まれる。
【0029】
幾つかの実施形態では、膜構造の厚さは、100〜500nmであり、また別の実施形態では、イオン選択性膜の膜厚は、5〜20μmの間である。幾つかの実施形態では、イオン選択性膜の幅は、20〜80μmの間であり、またある実施形態では、50μm〜100μmの間であり、また別の実施形態では、250〜500μmの間である。一実施形態では、基板を熱することによって、液状ポリマー層が基板の表面上で膜質構造を形成するという状態の提供が可能になる。一実施形態では、流体チップに基板を装着するのはプラズマ結合によるものである。
【0030】
別の実施形態では、本発明は、濃縮装置の準備方法であって、
濃縮装置が、
○対象種を包含する液体を流すことができる平面アレイ状の複数のチャネルを含む流体チップと、
○少なくともその表面の一部が前述のチャネルと結合するように前述の流体チップに接続されている少なくとも1つの硬質基板と、
○前述の基板の表面の少なくとも一部に接着され、前述の複数のチャネルを結合するイオン選択性膜とを含み、
方法が、
●液状ポリマーを、該ポリマーが前述の基板の表面上に前述のポリマーの層を形成するのに十分な時間にわたって適用されるように、所望の形状、パターン、もしくはそれらの組合せで、硬質基板上にスタンピングし、それによって、前述のポリマーは、そのポリマー層を前述の基板の表面で充分時間をかけて形成するステップと、
●前述の液状ポリマー層が前述の基板の表面上に膜構造を形成するような状態を提供するステップと、
●前述の膜構造を含む前述の基板の表面の少なくとも一部と結合する複数のチャネルを含む前述の流体チップに、前述の基板を装着するステップとを含む、該方法を提供する。
【0031】
幾つかの実施形態では、液状ポリマーの粘性を増加させることにより膜構造の厚さを増強させることができる。他の実施形態では、膜構造の厚さは、スタンピングのために疎水性スタンパーを使用することにより増強できる。別の実施形態では、スタンピングはポリジメチルシロキサンを含むスタンパーで達成される。
【0032】
幾つかの実施形態では、液状ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリホスファゼン、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリ・ジルコニア、ポリエチレンイミン−・ポリ(アクリル酸)あるいはポリ(エチレンオキシド)−ポリ(アクリル酸)から成る。
【0033】
幾つかの実施形態では、膜構造の厚さは100〜500nmであり、また別の実施形態では、イオン選択性膜の膜厚は5〜20μmの間である。幾つかの実施形態では、基板を加熱することによって、液状ポリマー層が基板の表面上で膜質構造を形成するという環境を提供できる。
【0034】
幾つかの実施形態では、プラズマ結合によって流体チップに基板を装着する。
【0035】
幾つかの実施形態では、本発明は、濃縮装置の準備方法であって、
濃縮装置が、
○対象種を包含する液体を流すことができる平面アレイ状の複数のチャネルを含む流体チップと、
○少なくともその表面の一部が前述のチャネルと結合するように前述の流体チップに接続されている少なくとも1つの硬質基板と、
○前述の複数のチャネルのうちの1つの表面の一部と結合する高アスペクト比のイオン選択性膜とを含み、
方法が、
●液状ポリマーを、該ポリマーが前述の基板の表面上に前述のポリマーの層を形成するのに十分な時間にわたって適用されるように、前述の複数のチャネルのうちの1つの少なくとも一部に適用するステップと、
●前述の液状ポリマー層が膜構造を形成するような状態を提供するステップとを含む、該方法を提供する。
【0036】
幾つかの実施形態では、液状ポリマーは液状ポリマーを浸透させるミクロビーズを包含する。一実施形態では、これらのミクロビーズは固体支援マトリクスとして働き、イオン選択性膜の機械的強度を高める。幾つかの実施形態では、液状ポリマーは液体ナフィオンである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】発明の装置の制作方法の実施形態を概略的に示している。
【図2】図1で概説した方法に匹敵する方法で作成した、発明の装置の実施形態の写真である。
【図3】本発明の濃縮装置及び同じ作成工程の実施形態を示している。図3aは、ガラス基板上でキャピラリー・リソグラフィーを使用したナフィオン(登録商標)ナノ・ブリッジの形成を示している:図3bは、ガラス上のPDMS(マイクロチャネル)及びナフィオン・ナノ・ブリッジ間の結合形成を示している:図3cは、ガラス上のPDMSやナフィオン・ブリッジを含む予備濃縮装置のチップについて説明している。電極接触が示されている。
【図4】図2の装置内の荷電種の濃度のメカニズムの実施形態を表している。トラッピング・モードでは、注入された試料をナフロン膜に通過させ、加電圧差Vdiff=200Vで、圧力駆動流を発生させながらトラッピングする。予備濃縮係数が目的に到達している場合、緩衝液をオートサンプラーで注入して、試料のpH値とトラッピングした分子のpI値とを適合させる。B)一度pH値が分子のpI価値に達すると分子は中性になり、界面動電トラップから解放される。分注(ディスペンシング)モードに切り替えるために電圧配置が変更されるが、高電圧シーケンサーを用いて遂行できる。ミドルチャネル内の電圧を1000Vにまで増強し、チャネルからMALDIプレートに液滴を生成させる。チャネル内の緩衝液のイオン強度を保持するために(そうしなければ分注された試料の塩濃度が高くなる)、枯渇領域を分注モードでさらに管理する。従って、ミドルチャネルの先端から放たれている分子に分注する間、主な両極にあるチャネルを通過させ、同じ電位差(Vdiff=200V(1000V〜800V))を持続させる。試料に分注する前に無駄を省くため、オリフィス付近に配置している空気ジェットを使用してもよい。MALDIプレートをX−Yテーブルに取り付ける場合には、プレート上の追加試料の採取を引き続き行うことができる。
【図5】予備濃縮装置の操作手順の実施形態を示している。図5a.では、試料チャネルの両サイドが、50V対バッファー・チャネルで一定に保たれている「捕獲」あるいはトラッピング・モードを示す。この電圧配置では、荷電粒子はナフィオン膜ブリッジ(表示)周辺でトラッピングされる;図5bは解放または分注モードを表示している。本モードでは、試料チャネルの片方の先端の電圧を25Vに減らし、2つの先端間の電位差を25Vにする。この電位差によって粒子流を誘発する:図5cは、生物学的マーカーの位置(a(上)及びb(下))の画像である。
【図6】β-フィコエリトリン予備濃縮(蛍光強度の単位で)を界面動電トラッピング時間で比較したプロットである。20分で10(5分で10)の予備濃縮係数が、この実施形態中に求められた。4nMのタンパク質の蛍光画像を表示。その隣のグラフは、トラッピング時間に応じて濃縮されたプラグの大きさ及び濃縮増加を示す。データは10mMリン酸緩衝液、pH=7溶液で示されている。
【図7】エンザイム(酵素)が少量の場合の反応ブースティング・ツールの装置操作の一実施形態を示している。
【図8】マイクロチャネル内の化合物のトラッピング及び分析の実施形態について表わす。ここでのアッセイは酵素分析である。
【図9】酵素の処理に関するアッセイで、濃縮モードで操作されなかった装置で形成された、生成物の蛍光シグナル強度を示している。
【図10】装置が濃縮モードで作動している状態での、図9のアッセイの生成物形成の蛍光シグナル強度を示している。
【図11a】ナフィオン膜のアスペクト比が高い場合の、装置の一実施形態を示している。高アスペクト比ナフィオン膜の上面図(左)及び側面図(右)を表示。表示しているプロセスでは、ナフィオン膜は、最初にガラス内の溝にナフィオン樹脂を導入することにより形成される。溝は所望の膜寸法で形成される。電極を硬化する。ナフィオンなどのほかの透水性物質は電解質物質に加えることができる。ヒドロゲルなどのほかの選択透過性の高分子材料も代わりに使用することができる。マイクロチャネルを含むPDMS構造を、高アスペクト比のイオン選択性膜上で結合する。
【図11b】他の実施形態では、図11bの中で示されるように、溝は、PDMSチップ(マイクロ/ナノチャネルの形で)内でパターン形成され、ナフィオンで充填される。
【図12】装置内の試料と緩衝液挿入口、予想されるプラグ形成エリアであるが、16個の予備濃縮装置の並列配列を概略的に示している。
【図13】質量分析で使用される濃縮装置統合化の実施形態を概略的に示している。
【図14】ガラス基板上の表面パターン化ナフィオン膜を備えたPDMS予備濃縮装置とその操作法の実施形態を概略的に示している。(b)免疫測定に応用したスライド・ガラス上のAuドットアレイ(直径=20μm)ミドルチャネルを、hcGタンパク質(PBS内)を満たし、またサイドチャネルを1X PBS緩衝液で充填する。予備濃縮については、電位差を界面動電流と組み合わせてミドルチャネル及びサイドチャネルで利用する。すべてのマイクロチャネルが、高さ12μm、幅70μmであった。
【図15】Au表面上のアルキルチオラート自己集合単分子層の形成によるhcGタンパク質の固定化の実施形態を概略的に示している。(a)Au表面上のトリ(エチレングリコール)ドデシルチオール(TEG)及びビオチン化トリ(エチレングリコール)ドデシルチオール(BAT)の形成。(b)ストレプトアビジンの結合(c)ビオチン化単クローン性抗hcGの結合、(d)非特異的な結合を防ぐためにBSA(PBS中1%)を用いた表面のブロッキング。(e)Alexa488で標識されたhcGタンパク質(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(HCG)、フィッツジェラルド社、マサチューセッツ州)を用いた免疫測定。
【図16】図16は、以下の実施形態を示している:(a)ビオチン化Au表面上でのcy3標識ストレプトアビジンの予備濃縮の操作(10分後、1X PBS内に10ug/mLストレプトアビジン;V1=50V、V3=V4=GND及びV2=25V)。(b)(PBS/PBST(Tween20入りPBS)/PBSの注入による)洗浄段階後の蛍光画像洗浄段階後(a)内の青いドット・エリアから取られた画像。(c)各Auドットの蛍光強度は、予備濃縮ゾーンで結合キネティクスを改善していることを示している。
【図17】図17は、以下の実施形態を示している:(a)タンパク質予備濃縮チップの光学画像。表面パターン形成されたナフィオン膜は、Auドット間に置かれた。(b)予備濃縮の操作(10秒の後、1X PBS内に1ug/mL bBE);1mg/mLのBSAバックグラウンド・タンパク質で;V1=50V、V2=25V、及びV3=V4=GND)。固定化した抗hcGとbPEタンパク質(画像では示されていない)との間の無非特異的な結合事象及び予備濃縮の安定した作動状態を示す。(c)hcGタンパク質の予備濃縮の蛍光画像及び強度プロフィール(10分の予備濃縮の後に得られた、1X PBS中500ナノグラム/mLのhcG抗原;1mg/mLのBSAバックグラウンド・タンパク質で;V1=50V及びV2=25V、V3=V4=GND)(装置bの洗浄段階(ステップ)の後に同じ装置を使用して)。(d)予備濃縮によるhcG Ag−Ab間の結合キネティクスの増強を示している、装置cの洗浄段階後の蛍光画像及び強度プロフィール。
【図18】マイクロチャネル内部のイオン選択性膜接合部の代替作成方法の実施形態を概略的に示す;a)緩衝液チャネルを[18−20]ナフィオン樹脂で満たす。試料チャネル[18−10]はミドルチャネルである。試料チャネルはあらかじめ型の定まったマイクロ接合部を通じて緩衝液チャネルに接続される。ミクロの接合部[18−30]は幅10〜50μmで、長さ20−50μmである;b)緩衝液チャネル上に陰圧を加えることによりナフィオン樹脂を洗い流すこと;c)余分なナフィオン樹脂を完全除去した後のナフィオン膜接合部の生成。フィオン膜接合部[18−40]を示している;d)作動中の濃縮装置。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は一実施形態では、対象種を濃縮する際に、使用する濃縮装置及びその方法を提供する。
【0039】
幾つかの実施形態では、本発明は、濃度及び/またはマイクロまたはナノスケールで、ある物質の予備濃縮用に装置を提供する。本発明の装置は、幾つかの実施形態では特有の作成工程を通じてマイクロ流体チップに置かれたナフィオン膜などのイオン選択性膜を使用し、幾つかの実施形態ではいわば平面装置内のイオン選択性膜の特定の沈着物に可能性を与え、物理的処置に当該の膜が周知のように非常に脆いものにも関わらず(従来は、当該装置にそれらを組み込むことは困難であった)、低コストで、迅速な沈着を促す。
【0040】
幾つかの実施形態では、本発明の装置及び方法には、ここに記述されるように、イオン選択膜を形成するために樹脂溶液をパターン形成し、前述の溶液を硬化する必要がある。幾つかの実施形態では、樹脂溶液を形成することによって、基板上の薄い平面膜のパターン形成や装置のマイクロチャネル内に同様の取り込むこと(例えば、上層のPDMSチャネルのプラズマ結合)が可能になる。
【0041】
本発明は、一実施形態では、濃縮装置であって、
○対象種を包含する液体を流すことができる平面アレイ状の複数のチャネルを含む流体チップと、
○少なくともその表面の一部が前述のチャネルと結合するように流体チップに接続されている少なくとも1つの硬質基板と、
○前述の基板の表面の少なくとも一部に接着され、前述の複数のチャネルを結合するイオン選択性膜、または
○前述の複数のチャネルのうちの1つの表面の一部と結合するイオン選択性膜と、
○前述のチャネル内に電場を誘発するシステムと、
○前述のチャネル内に界面動電流または圧力駆動流を誘起するシステムとを含む、該濃縮装置を提供する。
【0042】
幾つかの実施形態では、本発明は、濃縮装置の準備方法であって、
濃縮装置が、
○対象種を包含する液体を流すことができる平面アレイ状の複数のチャネルを含む流体チップと、
○少なくともその表面の一部が前述のチャネルと結合するように前述の流体チップに接続されている少なくとも1つの硬質基板と、
○前述の基板の表面の少なくとも一部に接着され、前述の複数のチャネルを結合するイオン選択性膜とを含み、
方法が、
●陰圧下で液状ポリマーを前述の基板に適用するステップであって、該ステップにおいて、前述の基板が、複数のチャネルを含む流体チップに、複数のチャネルが前記基板の表面の少なくとも一部と結合するように接続され、それにより前記ポリマーが、前述の基板の表面上に前述のポリマーの層を形成するのに十分な時間にわたって適用されるような、該ステップと、
●前述の液状ポリマー層が前述の基板の表面上に膜構造を形成するような状態を提供するステップと、
●前述の膜構造を含む前述の基板の表面の少なくとも一部と結合する複数のチャネルを含む前述の流体チップに、前述の基板を装着するステップとを含む、該方法を提供する。
【0043】
発明の本実施形態によれば、また一実施形態では、本発明は、先行方法に従って、制作した装置を提供する。
【0044】
幾つかの実施形態では、液状ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリホスファゼン、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリ・ジルコニア、ポリエチレンイミン−ポリ(アクリル酸)、あるいはポリ(エチレンオキシド)−ポリ(アクリル酸)からなる。
【0045】
幾つかの実施形態では、膜構造の厚さは、100〜500nmであり、また別の実施形態では、イオン選択性膜の膜厚は、5〜20μmの間である。一実施形態では、基板を熱することによって、液状ポリマー層が基板の表面上で膜質構造を形成するという状態の提供が可能になる。一実施形態では、流体チップに基板を装着するのはプラズマ結合によるものである。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、濃縮装置の準備方法であって、
濃縮装置が、
○対象種を包含する液体を流すことができる平面アレイ状の複数のチャネルを含む流体チップと、
○少なくともその表面の一部が前述のチャネルと結合するように前述の流体チップに接続されている少なくとも1つの硬質基板と、
○前述の基板の表面の少なくとも一部に接着され、前述の複数のチャネルを結合するイオン選択性膜とを含み、
方法が、
●液状ポリマーを、該ポリマーが前述の基板の表面上に前述のポリマーの層を形成するのに十分な時間にわたって適用されるように、所望の形状、パターン、もしくはそれらの組合せで、硬質基板上にスタンピングし、それによって、前述のポリマーは、そのポリマー層を前述の基板の表面で充分時間をかけて形成するステップと、
●前述の液状ポリマー層が前述の基板の表面上に膜構造を形成するような状態を提供するステップと、
●前述の膜構造を含む前述の基板の表面の少なくとも一部と結合する複数のチャネルを含む前述の流体チップに、前述の基板を装着するステップとを含む、該方法を提供する。
【0047】
発明の本実施形態によれば、また一実施形態では、本発明は、先行方法に従って、あるいは、幾つかの実施形態では、ここに記述し、図解し、表示し、例証したすべての方法に従って制作した装置を提供する。
【0048】
幾つかの実施形態では、液状ポリマーの粘性を増加させることにより膜構造の厚さを増強させることができる。他の実施形態では、膜構造の厚さは、スタンピングのために疎水性スタンパーを使用することにより増強できる。別の実施形態では、スタンピングはポリジメチルシロキサンを含むスタンパーで達成される。
【0049】
幾つかの実施形態では、液状ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリホスファゼン、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリ・ジルコニア、ポリエチレンイミン−ポリ(アクリル酸)あるいはポリ(エチレンオキシド)−ポリ(アクリル酸)からなる。一実施形態では、液状ポリマーは、すべての種類のイオン選択性ポリマー及び/またはイオン選択性物質で構成されてもよい。
【0050】
幾つかの実施形態では、膜構造の厚さは、100〜500nmであり、また別の実施形態では、イオン選択性膜の膜厚は、5〜20μmの間である。幾つかの実施形態では、基板を加熱することによって、液状ポリマー層が基板の表面上で膜質構造を形成するという環境を提供できる。
【0051】
幾つかの実施形態では、プラズマ結合で流体チップに基板を装着する。
【0052】
幾つかの実施形態では、発明は、本発明の装置を形成するために、硬質基板上にイオン選択性膜をパターン形成する様々な方法を提供する。当該方法をここに記述し、また後述の例1において例証する。
【0053】
幾つかの実施形態では、本発明のパターニング方法、またそのために作られた装置には以下の機能から構成される:特に、陰圧のかかった装置内のマイクロチャネルまたはナノ・チャネルの樹脂を洗い流すこと、また付着した薄層を硬化させること、平面膜構造を形成すること。 幾つかの実施形態では、樹脂の粘性は多様である、または幾つかの実施形態では、適応する圧力は多様である。それによって今度は形成された膜の厚さに影響してくると思われる。
【0054】
幾つかの実施形態では、本発明のパターニング法、またそのために作られた装置には以下の機能から構成される:特に、その技術に精通した人によって評価されるスタンピング技術によって、マイクロ-あるいはナノ・スタンピング液状樹脂を基板上に移すこと。幾つかの実施形態では、樹脂の粘性はさまざまある、または幾つかの実施形態では、適応する圧力はさまざまある。そのため、今度は形成された膜の厚さに影響してくるだろう。
【0055】
幾つかの実施形態では、本発明のパターンニング方法、またそのために作られた装置には以下の機能から構成される:基板上の樹脂のインクジェットプリンティング、そこでは沈着のパターンは、容易に、プリンティング機能として豊富にある。
【0056】
幾つかの実施形態では、本発明のパターン化方法、またそのために作られた装置には以下の方法から構成される:例えばポリマーまたはガラス基板上の、樹脂のUVリソグラフィーまたは電子ビームリソグラフィー。
【0057】
幾つかの実施形態では、本発明の高アスペクト比イオン選択性膜を使用する平面的マイクロ−あるいはナノ流体装置を制作するための方法に以下のことが含まれる:特に、個体支持マトリックスとしての役割のあるPSS/PAAなどの2つの逆帯電高分子電解質の使用。一実施形態では、ミクロビーズあるいはすべての種類のコロイド粒子を、高アスペクト比個体支持マトリックスを構築するためにPSS/PAAへの代替物質として使用することができる。また、膜に樹脂をしみ込ませることによって支持マトリックスにイオン選択性を与えることができる。そこで、例えば膜にナフィオン樹脂をしみ込ませるなどの前述の特性を持たせる。発明の本特徴によれば、また一実施形態では、膜のキャピラリー力により、高分子電解質膜の気孔は膜にイオン選択透過性を持たせているナフィオン樹脂で充満している。幾つかの実施形態では、脱イオン水でチャネルを洗い流すことで、チャネルから超過ナフィオン樹脂残渣を除去する。
【0058】
いかなる液状樹脂も、ここに記述されるような方法によってパターン形成し、硬化し、イオン選択性膜を生み出すことは言うまでもなく、本発明の一部、また発明をここに記述されるような当該樹脂剤の成分の実例に制限すべきではない。
【0059】
幾つかの実施形態では当該膜は、親水性のスルホン酸サイトがしみ込んだ架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)疎水性バックボーンから成るペルフルオロスルホン膜を包含するような構成が可能である。幾つかの実施形態では、非フッ素化炭化水素重合体、及びポリマー無機複合膜は、同様に用意でき、本発明の方法で使用される。
【0060】
幾つかの実施形態では、膜/樹脂は、ポリホスファゼン、ポリベンズイミダゾール(PBI)、及び/またはジルコニア重合体ゲル剤などのポリマーから成る。
【0061】
幾つかの実施形態では、LPEI/PAAあるいはPEO/PAA(LPEI:線形ポリエチレンイミン)(PAA:ポリ(アクリル酸);PEO:ポリ(エチレンオキシド)などの高分子電解質多層システムを使用してもよい。線形ポリエチレンイミン、(PAA:ポリ(アクリル酸);PEO:ポリ(エチレンオキシド)を使用してもよい。幾つかの実施形態では、LPEI及びPAAから構築されている膜は、100%の相対湿度及び室温で10−5S/cm−1程の高いイオン伝導度を示すので、本発明の装置には役立つ。
【0062】
幾つかの実施形態では、水素結合相互作用によって構成されたPEO及びPAAの膜は、周囲条件で10−5から10−4S/cm−1までの導電力を持つ膜を得ることができる。幾つかの実施形態では、装置中のマイクロ−かナノ・チャネルによって陰圧で樹脂を流し、樹脂を洗い流し、付着した薄層を硬化する方法は、前述の高分子電解質多層を使用して、本発明の装置内の所望のイオン選択性膜を生成するのに役立つ。
【0063】
幾つかの実施形態では、本発明の方法及び装置の優れた点として、本発明の装置に当該膜を適応させるため、壊れやすい膜を手動で処置する(物理的処置)を必要としないことである。幾つかの実施形態では、発明には膜を形成するために樹脂をパターン形成/沈殿化させ、樹脂を硬化させるプロセスが含まれる。それによって形成された膜を物理的処置せずに、装置に容易に統合できる。幾つかの実施形態では、本発明の装置及び同じことを準備するためのプロセスに、膜を形成するために装置の構成の一部として、イオン選択性樹脂を硬化させることが含まれる。また使い捨てできる媒介上に並列の濃縮装置の配置を形成するために、簡単に製造装置を提供し、簡単に大量作成することがように、使い捨て物質を利用する。
【0064】
一実施形態では、本発明は、以下に記述されるようなナフィオン・パターン形成に先立ってガラス基板の表面処理を施す。特にPBS 1Xのような高濃度緩衝液がマイクロ流体の濃縮装置内で使用される場合、平面的ナフィオン膜に深刻なデグラデーションが生じる場合がある。この結果に対する考えられる理由として、濃度が増すにつれ、Naイオンがガラス基板とナフィオン膜の間の接合部分を傷つけてしまうということである。ナフィオン膜は操作中に基板から完全に離れ落ちる可能性がある。また、装置は作動を停止する恐れがある。一実施形態では、本発明はガラス基板とナフィオン膜の間の粘着強度を高める有効表面処理法を提供する。まず、Sylgard Prime Coat溶液は、ガラス基板上でパターン形成する。一実施形態では、当該パターニング法により、様々な基板にシリコーンを付着させたり、粘着強度を増強させたりし、また付着面に有効成分が浸透できるようになる。基板上でプライマー層を沈殿させた後、ナフィオン樹脂を、前述のようにさまざまなパターンニング法を用いてパターン形成する。このように粘着強度が増強し、PBS 1Xなどの高イオン強度の基板でさえタンパク質試料の濃度で処理することができる。
【0065】
一実施形態では、本発明は選択透過性の接合部の代替作成方法を提供する。一実施形態では、上記にあるようにナフィオン樹脂をパターン成形することにより試料とサイド・バッファー・チャネルの間の平面的イオン選択性接合部を制作する代わりに、マイクロチャネル間のイオン選択性膜を作成する代替的方法を開発した。この製作技術を使用して、高アスペクト比イオン選択性膜を高濃度の試料予備濃縮で作成することができる。図18では、キャピラリー力を利用した充填法を示している。
【0066】
最初に、ナフィオン樹脂はサイド・バッファー・チャネルに転送され、チャネル間のファンネル型接合部を液体のナフィオン樹脂(図18a)で充填する。その接合部は、通常幅10〜50um、高さ20〜50umである。最初に、ナフィオン樹脂はサイド・バッファー・チャネルに転送され、チャネル間のファンネル型接合部を液体のナフィオン樹脂(図18a)で充填し、表面張力によって試料チャネルへ流れないようにする。次に、チャネル(図18b)をきれいにするため、バッファー・チャネルの別の先端上に陰圧を加えてナフィオン樹脂を除去する。バッファー・チャネルからの余分なナフィオン樹脂を除去した後、水やアルコールなどのナフィオン樹脂の主成分が完全に蒸発すると、接合部でトラッピングしたナフィオン樹脂はチャネル間でイオン選択性膜を形成する(図18c)。装置全体が熱版上で最大950℃にまで加熱され、30分後には使用できるよう準備が整う(図18d)。ナフィオン膜と装置の間の粘着強度を高めるために、上記にあるように装置の表面をまずプライムコート(Prime Coat)で処理し、次にチャネルをナフィオン樹脂で満たすことができる。
【0067】
一実施形態では、当該作成技術には利点がある。この作成技術の主な利点は以下の通りである:I)マイクロチャネルと同じくらい高アスペクト比を示すイオン選択性膜を作成することができる。この高アスペクト比膜は濃縮度を増強することができ、圧力駆動流によってさまざまなプロテオミクス試料を濃縮できる;II)ガラス基板へのPDMSチップの酸素プラズマを使用せずに、可逆的で非永続的な粘着が実現可能である。プラズマ処理を全く施さずに、可逆的にカバーを接合することができるので、界面化学をガラス基板上で免疫測定用に最初に(粘着に先立って)実行できる。次に、表面を機能化したガラス基板上に分子を可逆的にPDMS装置に接合した後濃縮することができる。それから、次のいかなる操作も実行するのにガラス基板をPDMS装置から簡単に話すことができる。この手順は全免疫測定を単純化することができる;III)この作成技術は、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレートあるいはCOC(環状オレフィン共重合体)などの様々な共通のマイクロ流体のチップ物質に適用することができる。従って、PDMSよりも耐久性のある塑性物質を使用した予備濃縮チップを製作することができる;IV)ナフィオンに加えて、表面電荷あるいはその組み合わせで、浮遊状態のコロイド粒子や液状で利用可能などんなイオン選択性樹脂剤も、この作成技術に適用することができる。
【0068】
幾つかの実施形態では、本発明のイオン選択性膜を備えた、平面的マイクロ-あるいはナノ流体装置を製作する方法に、幾つかの実施形態で例証しているような高アスペクト比イオン選択膜の生成が含まれる。幾つかの実施形態では、当該方法に当業者なら当然理解できるミクロビーズを用いたアプローチで高アスペクト比膜を作成することを含めても良い。ここに記述されるように、例えば自己集合したコロイド粒子に樹脂(例えばナフィオン)をしみ込ませることができる。他の実施形態では、樹脂で充填した溝を高アスペクト比膜を構築するために使用することができる。または別の実施形態では、ここに記述しているように例えば高分子電解質を利用した層流パターン形成技術を利用できる。後者は、例えば水素結合、または別の実施形態ではPSS/PAHを利用することができるPEO/PAA電解質を含んだ膜の構築により、実行することができる。それによって静電的相互作用を引き起こし、それから集合体に例えばナフィオンなどの樹脂をしみ込ませることができる。ガラス基板内、PDMSチップ内のいずれかのマイクロ/ナノチャネルのパターン形成によって、またそれらをナフィオンで満たすことによって、高アスペクト比膜をも作成することができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、本発明は、濃縮装置の準備方法であって、
濃縮装置が、
○対象種を包含する液体を流すことができる平面アレイ状の複数のチャネルを含む流体チップと、
○少なくともその表面の一部が前述のチャネルと結合するように前述の流体チップに接続されている少なくとも1つの硬質基板と、
○前述の複数のチャネルのうちの1つの表面の一部と結合する高アスペクト比のイオン選択性膜とを含み、
方法が、
●液状ポリマーを、該ポリマーが前述の基板の表面上に前述のポリマーの層を形成するのに十分な時間にわたって適用されるように、前述の複数のチャネルのうちの1つの少なくとも一部に適用するステップと、
●前述の液状ポリマー層が膜構造を形成するような状態を提供するステップとを含む、該方法を提供する。
【0070】
幾つかの実施形態では、液状ポリマーは液状ポリマーを浸透させるミクロビーズを包含する。幾つかの実施形態では、液状ポリマーは液体ナフィオンである。
【0071】
ここに記述している方法論に基づいて高アスペクト比のイオン選択性膜を構築するのに使用する任意の方法や、そのどんな変更(修正)も本発明の一部として見なすべきであることは言うまでもない。
【0072】
その発明は濃縮装置あるいは予備濃縮装置を提供する。幾つかの実施形態では、濃縮する装置は、通称「濃縮装置」と呼ばれるが、別の実施形態では、少なくとも1つのマイクロチャネル、または、少なくとも1つのナノチャネルを含み、大抵は平面的な形式で基板に置かれ、またそこではチャネルはイオン選択性膜を包含し、チャネルは硬質基板に結合している。
【0073】
一実施形態では、対象種を包含する液体が通過できるチャネルの平面アレイを構成する流体チップは、各チャネルを形成するためのクロファブリケーション及びナノファブリケーションの技術を用いて形成される。
【0074】
一実施形態では、ミクロファブリケーション技術、またはマイクロ技術、またはMEMSは、例えば物理的構造の形成に半導体工程のツール及びプロセスを適用する。ミクロファブリケーション技術は、一実施形態では、製作するチップ上に1mmから数cmの範囲内の寸法特性(例えば、ウェル、チャネルなど)正確に設計、または他の実施形態の中で、シリコンの、ガラス、あるいはプラスチックで設計することができる。当該技術は一実施形態では、濃縮装置のマイクロチャネルを形成するのに使用できる。
【0075】
他の実施形態では、濃縮装置のマイクロチャネル形成は、例えば以下に記載の通り、当技術で既知の任意の方法、例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、及び特許文献1に従って、あるいは基づいて、達成され得、上記文献は引用を以て本明細書の一部となす。一実施形態では、マイクロチャネルはインプリント・リソグラフィー、干渉リソグラフィー、自己集合した共重合体パターン転移、スピンコーティング、電子ビームリソグラフィー、集束イオンビーム加工、写真平版、リアクティブイオンエッチング、ウェットエッチング・プラズマ化学気相成長法、電子ビーム蒸着、スパッタ堆積及びその組み合わせによって形成することができる。幾つかの実施形態では、本発明の装置の準備方法に、非特許文献4または非特許文献5の内容またはその修正内容も含むことができる。あるいは、マイクロチャネルを形成するために他の従来方法を使用することができる。
【0076】
一実施形態では、非特許文献6及び非特許文献7に記載されているようにマイクロチャネルが形成され、上記文献は、全文を引用することを以て本明細書の一部となす。
【0077】
一実施形態では、一連の反応性イオン・エッチングが行なわれ、その後ナノ-またはマイクロチャネルを標準リソグラフィー・ツールでパターン形成する。一実施形態では、エッチングは特定の形状で行われ、別の実施形態では、マイクロチャネル間の接合部分及び/またはナノチャネルを決定する。一実施形態では、マイクロチャネルを作成するエッチングは、ナノチャネルのためのエッチングを作成するプレーンと平行に行なわれる。他の実施形態では、例えばローディング・ホールを製作するなど、濃縮装置内の付加構造を生むために、例えば一実施形態では、KOHエッチングなど付加したエッチングを利用する。
【0078】
他の実施形態では、濃縮装置の電気絶縁を行う。一実施形態では、当該絶縁は窒化物除去及び濃縮装置での熱酸化処置よって行われる。他の実施形態では、濃縮装置の表面、また別の実施形態では、底面は、一実施形態では、パイレックス(登録商標)ウエハーなどの基板に取り付けできる。一実施形態では、陽極接合技術を用いてウエハーを取り付けることができる。
【0079】
一実施形態では、チャネルの平面アレイを構成する流体チップの構築は、当業者なら当然理解できる方法、即ち、例えば、特許文献6に記載されているような方法を適用することによって実行される。特許文献6は、引用を以て本明細書の一部となす。
【0080】
一実施形態では、作成は加工間隙を定義している犠牲層の形状とともに、パーマネント・フロアとシーリング層の間にはさまれた犠牲層を使用できる。犠牲層を除去すると、加工間隙は所望の配置を持つ流路になる。本アプローチにより、一実施形態では、流体装置の構造の内部の行動空間または流体チャネルの高さ、幅、形状についての正確な定義を下すことができる。
【0081】
基板上で形成される犠牲層は、 例えば適切なリソグラフィー工程によって成形され、シーリング層によって保護される。それから、犠牲層は湿式化学エッチング法で取り除くことができ、濃縮装置のフローチャネル(流路)やチャンバーとして使用できる加工間隙を形成するフロアー層及びシーリング層の間に空間を残す。当該装置では、加工間隙の垂直寸法(または高さ)は、正確な化学蒸着(CVD)技術で作成する犠牲層膜の厚さによって決定される。それにより、この寸法を非常に小さくすることができる。
【0082】
犠牲層を除去するのに使用されるエッチング液が構造内に含まれる犠牲層にアクセスできるように、1つ以上のアクセスホールをシーリング層に通過できるようにし、湿式化学エッチング法でこれらのホールを通じて犠牲層を除去する。完成した装置を構成するフロア及びシーリング層を破壊せずに、アクセスホールからの距離を横方向に十分に保ちながら犠牲層内でエッチング法が行えるようにするために、犠牲層と誘電体層の間で非常に高いエッチングの選択性が求められる。当該プロセスに使用されるかもしれない物質のある合成は、犠牲層用、またフロア及びシーリング層用の、ポリシリコン及び窒化ケイ素である。幾つかの実施形態では、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、または別の実施形態では、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などの塩基性溶液で非常に高いエッチングの選択性が得られる。
【0083】
幾つかの実施形態では、シーリング層はイオン選択性膜が関係している硬質基板である。
【0084】
別の実施形態では上層で切りこまれたアクセスホールを保護できる。このため、二酸化ケイ素の密封層はアクセスホールを塞ぐためにシーリング層の上層に沈殿することができる。また、この付加薄膜層によって、加工間隙内の流体の漏出または蒸発しないような優れた密封を提供する。二酸化ケイ素CVD技術についてはほかの実施形態を表わしており、極低温酸化物(VLTO)沈着などの膜の一致性(conformality)が低い。アクセスホール付近で目詰まりを起こすため、装置の面積が過度に失われることなく、信頼性の高い密封を形成する。所望であれば、シーリング層のホールの代わりに、またはそのホールに加え、最下層を貫通するようにアクセスホールを開けることもでき、その後二酸化ケイ素の層を沈殿させることによって再度密封することができる。
【0085】
例えば、いくつかの実施形態では、化学蒸着(CVD)法を使用して、型崩れしない壁料を含む装置の材料を蒸着できる。装置の材料は、通常、窒化ケイ素または二酸化ケイ素などの誘電体や、アモルファスシリコンまたはポリシリコンなどの犠牲層の材料である。
【0086】
幾つかの実施形態では、マイクロチャネル及び/またはナノチャネルを、チップに対して平行に配置し、チャネルのアレイを形成し、各チャネルによって、濃縮装置がシングルチップ上で多くの濃縮を並行して行えるようにできる。幾つかの実施形態では、例えばアッセイ後や、特定試薬を分注した後、チャネル内で濃縮される物質を適切な条件下で運ぶことができる。本実施形態によると、また幾つかの実施形態では、交差する配列またはチャネルによって、例えば巧みな操作や、希薄環境への露出などの多段階式の濃縮操作を可能にし、所望の濃縮を反復できる。
【0087】
幾つかの実施形態では、マイクロチャネルは、特定目的または別の基軸などの収集スキームを適合させるのにふさわしいいかなる所望の定位にも配置される。
【0088】
一実施形態では、界面領域を構築し、例えば本発明の濃縮装置の2つのマイクロチャネルなど、チップ上のチャネルを接続する。一実施形態では、回折勾配リソグラフィー(DGL)は、所望する本発明のチャネル間の勾配接合部分の形成のために使用される。一実施形態では、勾配界面領域は濃縮装置によって流れを規制し、または別の実施形態では、マイクロチャネル内で形成された空間電荷層を規制する。別の実施形態では、それらは電場の強度に左右される。または別の実施形態では、マイクロチャネル中の空間電荷層を生成するのに必要な電圧の強さにも影響される。幾つかの実施形態では、イオン選択性膜は当該界面に配置する。
【0089】
一実施形態では、傾斜界面領域を、例えば横断面をミクロンからナノメートルの長さスケールまで所望の大きさに狭めるために、水平方向の空間的勾配構造で形成する。別の実施形態では、傾斜界面領域は横断勾配構造で形成される。別の実施形態では、その勾配構造は横断勾配及び垂直勾配の両方を提供できる。
【0090】
一実施形態では、濃縮装置は、回折勾配リソグラフィーによって、また基板上でマイクロチャネルを形成することで作成できる。また所望のチャネル間の傾斜界面領域を形成することで作成できる。一実施形態では、傾斜界面領域は、ブロッキングマスクをフォトマスク及び/またはフォトレジストの上に配置することによって、フォトリソグラフィーの実行中に形成することもできる。ブロッキングマスクのエッジは、光強度傾斜をもたらすように、フォトレジストに回折を与える。
【0091】
一実施形態では、濃縮装置は複数のチャネルを包み得、複数のマイクロチャネル、または複数のナノチャネル、またはそれらの組合せを包み得る。一実施形態では、・複数のチャネル・という言葉は、2つ以上のチャネル、または別の実施形態では、5つ以上のチャネル、あるいはその他の実施形態では、10、96、100、384、1,000、1,536、10,000、100,000または1,000,000以上のチャネル、または特定の目的に適合することを望む任意の数を意味する。同様に、チップ上のチャネルの配列は特定用途に適合できるように設計しても良い。
【0092】
一実施形態では、マイクロチャネルの幅は1〜100μmの間であり、あるいは別の実施形態では、1〜15μmの間であり、あるいは別の実施形態では、20〜50μmの間であり、あるいは別の実施形態では、25〜75μmであり、あるいは別の実施形態では、50〜100μmの間である。一実施形態では、マイクロチャネルの深さは、0.5〜50μmの間であり、あるいは別の実施形態では、0.5〜5μmの間であり、あるいは別の実施形態では、5〜15μmであり、あるいは別の実施形態では、10〜25μmの間であり、あるいは別の実施形態では、15〜50μmの間である。別の実施形態では、ナノチャネルの幅は、1μm〜50μmの間であり、あるいは別の実施形態では、1〜15μmの間であり、あるいは別の実施形態では、10〜25μmの間であり、あるいは別の実施形態では15〜40μmの間であり、或いは別の実施形態では、25〜50μmの間である。
【0093】
一実施形態では、濃縮装置は、図2で示す図のように構成される。あるいは図9で提示される図表に従って構成される。マイクロチャネル(9−10)は、チップのフロア層及びシーリング層内のチャネルと一緒に円形配列で配置される。シーリング層には、試料及び緩衝液の導入用の挿入口(9−20、9−30)がそれぞれある。
【0094】
発明の別の特徴によると、濃縮装置は、1つまたは複数のマイクロチャネルと流体連結する少なくとも1つの試料貯留容器を含む。他の実施形態では、試料貯留容器は対象種を包含する流体または液体を放出できる。一実施形態では、試料貯留容器は導管を用いてマイクロチャネルと接続される。導管は、マイクロチャネルと同様の寸法であっても良い。または、前述の傾斜界面領域を含んでいても良い。
【0095】
一実施形態では、対象種を含む液体を装置内に導入し、ナノチャネル及び/またはマイクロチャネル内に電場を個別に誘起させることによって、マイクロチャネル内で対象種を濃縮する。
【0096】
一実施形態では、濃縮装置はここに例証し、記述しているように、界面動電トラッピングを行うためのイオン枯渇領域を生成する。
【0097】
一実施形態では、電場を濃縮装置に適用し、緩衝溶液を含んだフラットなナノ流体フィルタを、イオン選択膜として使用し、陰性荷電分子をトラップするイオン枯渇領域及び拡張空間電荷層を生成する。陽極側の接線フィールドは電気浸透流を発生させることができる。その電気浸透流によってトラップ領域に分子を取り入れる。
【0098】
一実施形態では、装置内の流れは圧力駆動流で良い。また、流れは当業者なら当然知っているような方法でも実行して良い。他の実施形態では、流れは圧力駆動や界面動電流を組み合わせたものでも良い。
【0099】
一実施形態では、「圧力駆動流」という言葉は、その駆動された電流が中を流れるチャネルセグメントの外部にある圧力源によって駆動される流れのことを意味するものであり、これに対し、一実施形態では、チャネルセグメント内に電場を与えることによって、当該チャネルセグメントの中に発生する流れを、本明細書では、「界面動電駆動流」と呼ぶ。
【0100】
圧力源の実施例には、陰圧源及び陽圧源、または当該チャネルセグメントの外部にあるポンプが含まれる。ポンプは、動電学的な圧力ポンプ、例えば、当該チャネルセグメントから分離しているポンプチャネル内で動電学的な圧力を発生させるポンプを含む。そのようなポンプは、当該チャネルセグメントの外部に備えられる(特許文献2及び特許文献3を参照)。これらの文献は、全文を引用することを以て本明細書の一部となす。
【0101】
一実施形態では、「界面動電駆動流」という言葉は、誘起した電場の下で、流体または流体に含まれる物質が移動することを言う。界面動電駆動流は、概して電気泳動または電気浸透の一方あるいは双方を含むものであり、例えば電気泳動は、荷電種を含んだ媒体または流体内で荷電種が移動するものであり、電気浸透は、例えば、バルク流体がその構成要素のすべてを含めて、電気的に駆動して移動するものである。したがって、界面動電駆動流に関しては、種の移動が大体、あるいは実質的にすべて電気泳動によるものから、例えば非荷電物質などの物質の移動が主に電気浸透流によって駆動される場合までに至る、広範囲の動電的な駆動流を含み、その2種類の界面動電学的な駆動流の移動の範囲及び比率が、最大領域に及ぶと想定されるのは当然である。
【0102】
一実施形態では、「液体の流れ」という言葉は、経路内、導管内、チャネル内または表面上を流れる流体またはその他の材料の流れの、いずれかのあるいはすべての特性を含む。当該特性には、流動速度、流量、流体またはその他の材料の流れの構造及び関連する拡散プロフィール、それから例えば、層流、クリーピング流、乱流などの流れの、より一般的なその他の特性を含むがこれに限定されない。
【0103】
一実施形態では、複合流は、物質の界面動電的な移動に続いて、圧力を用いて、液体試料をチャネルのネットワークに送り込むことを含む、あるいは別の実施形態では、圧力駆動流に続いて、液体を界面動電的に移動させることを含む。
【0104】
一実施形態では、電源から装置に電圧を印加することによって、各チャネル内に電場を誘起させることができる。一実施形態では、電圧は、少なくとも一方向に、少なくともチャネルの一部に電場を与えることが可能なように配置した少なくとも1組の電極を用いて印加される。電極の金属製のコンタクトは、標準的な集積回路製造技術を利用して一体化させることが可能で、少なくとも1つのマイクロチャネル、または別の実施形態では、少なくとも1つのナノチャネル、あるいは別の実施形態では、その組み合わせと接続するようにし、方向性のある電場を形成できるように配置される。交流(AC)、直流(DC)、またはその両方の電場を与えることができる。電極は、ほとんどのものが金属製であり、一実施形態では、画定された線状の経路に薄いAl/Au金属層を蒸着したものを含む。一実施形態では、一方の電極の少なくとも1つの端部が、容器内の緩衝液と接触する。
【0105】
別の実施形態では、濃縮器は少なくとも2組の電極を含み、各々が方向が異なる電場を与える。一実施形態では、電場のコンタクトは、電場の方向及び振幅を独立して変化させるために用いることができ、一実施形態では、空間電荷層を方向付けるようにし、または別の実施形態では、マクロ分子を所望の速度で、または所望の方向に移動させるようにし、あるいは別の実施形態では、その組み合わせで実行する。
【0106】
一実施形態では、50m〜500Vの電圧が印加される。一実施形態では、電源は、マイクロチャネルの陽極及び陰極側に等しい電圧を印加し、または別の実施形態では、電源は、マイクロチャネルの陽極側に、その陰極側と比較して、より大きい電圧を印加する。
【0107】
一実施形態では、電源は、所望の電圧を供給するのに用いられるよう、様々な電源であって良い。電源は、所望の電圧を発生することができるように、様々な電力供給源であって良い。例えば、電源はピゾ電源(pizoelectrical source)、バッテリ、または家庭用電流によって作動する装置であってもよい。一実施形態では、ガス点火器からのピゾ電気放電を使用できる。
【0108】
一実施形態では、装置内の動電学的なトラップ及び試料の収集は、時間の経過とともに行うことができ、あるいは別の実施形態では、数時間にわたって維持することができる。一実施形態では、時間の経過とともに行われる濃縮は、10〜10ほどの高い濃縮係数を示し、別の実施形態では、例えば、マイクロチャネル及びナノチャネル間の界面、印加電圧、液体の塩濃度、液体のpH値、またはその組み合わせを変化させ、濃縮中の状態を最適化することによって、濃縮係数をさらに高くすることができる。
【0109】
別の実施形態では、濃縮装置は、濃縮装置の1つまたは複数のマイクロチャネル、若しくは1つまたは複数のナノチャネルと流体連通する少なくとも1つの廃棄用容器をさらに備える。一実施形態では、廃棄用容器は、流体を貯留可能なものである。
【0110】
一実施形態では、マイクロチャネルの表面は、濃縮装置の表面への対象種の吸着を減少させるまたは促進させるような機能性を有するようにしたものである。別の実施形態では、ナノチャネル及び/またはマイクロチャネルの表面は、装置の操作効率を上げるまたは下げるような機能性を有するようにしたものである。別の実施形態では、装置の操作効率を高めたり、または下げたりできるよう、外部ゲート電位を装置の基板に適用する。別の実施形態では、装置は透明な物質から構成される。別の実施形態では、透明な材料は、パイレックス(登録商標)、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、石英、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、炭酸プロピレン(PC)またはアクリルである。
【0111】
別の実施形態では、濃縮装置は対象種の解析が行われるように構成され、一実施形態では、解析は濃縮装置内で行われ、あるいは別の実施形態では、濃縮装置の下流側で行われる。一実施形態では、濃縮器の下流側での解析のため、装置から濃縮された種を取り出し、それを解析するために適切な配置場所に配置する、あるいは別の実施形態では、濃縮された物質を濃縮装置から解析するために適切な配置場所まで送る導管を構成する。一実施形態では、当該解析は、信号収集を含むものであり、別の実施形態では、データ処理装置を含む。一実施形態では、信号とは、光子、電流またはインピーダンスの測定値または測定値の変化を指す。本発明の濃縮装置は、その簡素さ、性能、構造安定性、そしてその他の分離及び検出システムとの統合のしやすさなどから、生物解析用のマイクロシステムを含む様々な解析システムに有用なものであり、本発明の装置の当該システムへの統合は、本発明の一端であることは言うまでもない。
【0112】
別の実施形態では、濃縮装置は、あるいは別の実施形態では、1つまたは複数のマイクロチャネルは、2次元検出器を用いて撮像することもできる。濃縮装置、またはその一部を画像に撮ることは、放出信号の収集に適切な装置に、濃縮装置、またはその一部を表示させることによって実行できる。適切な装置とは、例えば、幾つかの実施形態では、マイクロチャネルからの光を収集する光学素子である。
【0113】
別の実施形態では、装置は分離システムと接続し、または別の実施形態では、検出システムと接続し、あるいは別の実施形態では、解析システムと接続し、または別の実施形態では、その組み合わせと接続する。別の実施形態では、装置は照明用光源と接続する。本実施形態においては、また幾つかの実施形態では、濃縮された物質のアッセイを、ここに記述されている装置で遂行できる。また当該解析を行うに当たり、当分析は適切な検出装置及びシステムを当装置に接続することで実現できる。幾つかの実施形態では、当該アッセイ(分析)は、酵素の分析、所望の生成物のプローブ検出、合成法、物質の消化力、または当業者であれば理解できるその他の分析であってもよい。
【0114】
次のように予備濃縮装置に表面パターン化ナフィオン膜を接着させ、PBS 1X媒体内で免疫測定器と連結し実行する:マイクロ流体の予備濃縮装置を表面免疫測定(図14を参照)と連結し、備濃縮装置を使用して免疫測定の結合率の増加の測定が可能である。これらの機能を統合した予備濃縮免疫測定法装置で、前述のように最初にガラス基板上にプライム・コートでパターン形成し、次にナフィオン樹脂でパターン形成する。一実施形態では、ガラス基板にはあらかじめ電子ビームで沈殿化したAuドットを含んでいる。次に、Auドットの表面を、抗hcGなどの抗体で機能的にする。表面機能化については、標準チオールの化学的性質を利用する(図15)。ストレプトアビジン及びビオチン化した表面の間の結合を測定するため、ストレプトアビジン分子を、PBS 1X内にあるビオチン化したAu表面上で濃縮し、Au表面上での結合の増加率を調べる。(図16)最終的に、hcGタンパク質を、PBS 1X緩衝液内にある表面を機能的にした数Auドット上で濃縮し、hcGの抗hcGへの結合率の増加を実証する(図17を参照)。
【0115】
一実施形態では、濃縮器は、使い捨てできるものであり、別の実施形態では、個々にパッケージに入れられたものであり、別の実施形態では、個々の流体試料を含有する能力が1〜50,000個のものである。一実施形態では、濃縮装置は、商用としてすぐ準備のできるような、便利なカートリッジまたはカセットを提供できるよう、例えば樹脂のような適切なハウジングに入れることができ、一実施形態では、濃縮装置は、ハウジングの外側または内側に、装置を挿入し、誘導し、また連携させるのに十分な特性を備えた、例えば、試料充填室が濃縮装置と接続する別の装置の容器に組み込むことができるような装置である例えば、本発明の装置によって濃縮処理を自動化させるため、濃縮装置には、挿入用スロット、トラック、またはその組み合わせ、またはその他の適当な備品を取り付けることができる。
【0116】
濃縮装置は、一実施形態では、複数の試料をハイスループットスクリーニングするように構成され、そのようにしたものは、プロテオミクスアプリケーションに有用であることは、当業者であれば理解できるであろうことは言うまでもない。
【0117】
一実施形態では、濃縮装置は電極に接続されている。電極は、電位ジェネレータに接続されており、別の実施形態では、金属製コンタクトで接続するものである。適切な金属製コンタクトは、外部との接触面を有するものであり、別の実施形態では、外部のスキャナ/撮像装置/電場チューナに接続することもできる。
【0118】
本発明の一実施形態では、濃縮装置は、大型システムの一部を構成するものであり、そのような大型システムには、チャネル内で分子を励起し、それによって発生する信号を検出し、収集するような装置を含む。一実施形態では、レーザビームを試料プラグに集中させるようにすることもでき、別の実施形態では、フォーカスレンズを利用して集中させるようにすることもできる。マイクロチャネルの分子から生成された光信号は、フォーカス/収集レンズによって収集されるようにし、別の実施形態では、ダイクロイックミラー/バンドパスフィルタに反射して光路に入るようにし、別の実施形態では、CCD(電荷結合素子)カメラに送られるようにすることもできる。
【0119】
別の実施形態では、励起光源を、濃縮装置の上面から、ダイクロイックミラー/バンドパスフィルタボックス及びフォーカス/収集レンズを通過させるようにすることもできる。光信号を検出するため、様々な光学部品及び装置をシステムに用いることもでき、例えば、デジタルカメラ、PMT(光電子増倍管)、及びAPD(アバランシェフォトダイオード)などを用いることも可能である。
【0120】
別の実施形態では、システムにはさらにデータ処理装置を含んで良い。一実施形態では、データ処理装置は、CCDからの信号を処理するために用いられ、濃縮された種のデジタル画像をディスプレイに表示させる。一実施形態では、データ処理装置は、サイズ統計、ヒストグラム、核型、写像、診断情報などの特性解析にデジタル画像分析を行い、それら情報をデータ読み出しに適したフォームで表示する。
【0121】
一実施形態では、装置は、マイクロチャネル内に活性薬剤を含むことができるようにさらに改善を加えたものである。例えば、一実施形態では、マイクロチャネルは、濃縮された分子がトラップされる領域を、本発明の方法に従って酵素でコーティングする。本形態によると、プロテアーゼなどの酵素が、濃縮されたタンパク質と接触して、それらを消化する。本形態によると、本発明はプロテオーム解析用の方法を提供する。例えば、ポリペプチドの複数の細胞を含む試料が、マイクロチャネル内で濃縮され、実質的に精製された複数のポリペプチドを得る。ポリペプチドは、マイクロチャネル内に固定化したプロテアーゼに対して、実質的にポリペプチドを消化するのに十分な状態下で露出させるため、消化産物または消化ペプチドを生成する。消化産物は、別の実施形態では、下流側の分離モジュールに送られて分離され、別の実施形態では、分離された消化産物は、そこからペプチド解析モジュールに送られる。リペプチドの配列を生成できるよう、消化産物のアミノ酸配列を決定しアセンブリングできる。ペプチド解析モジュールに送る前に、ペプチドは、インターフェイスモジュールに送られるようにすることもでき、分離、濃縮、及び/または集束のうちの1つまたは複数の追加のステップを順に実行しても良い。
【0122】
他の実施形態では、プロテアーゼには、以下のものが含まれる。但しこの限りではない:ペプチダーゼ、例えば、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、及びエンドペプチダーゼ(例として、トリプシン、キモトリプシン、サーモリシン、エンドプロテアーゼLysC、エンドプロテアーゼGluC、エンドプロテアーゼArgC、エンドプロテアーゼAspN)。アミノペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼは、翻訳後修飾を特徴付けること及びそのイベントを処理することに有用である。プロテアーゼの合成物を用いることもできる。一実施形態では、プロテアーゼ及び/またはその他の酵素は、吸着または共有結合手法を利用して、マイクロチャネルの表面に固定化される。幾つかの実施形態では、共有結合による固定化の実施例には、プロテアーゼを、グルタルアルデヒド、イソチオシアネート、及び臭化シアンなどの配位子を有する表面に直接共有結合させることを含む。ほかの実施形態では、プロテアーゼは結合パートナーを用いて結合し得る。その結合パートナーは、特にプロテアーゼに反応する、若しくはそれ自身がプロテアーゼと結合(例えば共有結合)するような分子と結合するまたは反応するようなものである。結合させるためのペアには、シトスタチン/パパイン、バルフォスファナーテ/カルボキシペプチダーゼA、ビオチン/ストレプトアビジン、リボフラビン/リボフラビン結合タンパク質、抗原/抗体結合のペア、またはその組み合わせが含まれる。
【0123】
一実施形態では、所定細胞から得られたポリペプチドを濃縮するステップは、消化産物を生成し、タンパク質配列を決定するために消化産物を解析する。そのステップは、所定試料に対して同時にかつ/または繰り返し実行され、ポリペプチドが得られた細胞のプロテオーム写像を提供する。複数の異なる細胞のプロテオーム写像は、これら細胞内で異なった形で表されるポリペプチドを同定するために比較される。他の実施形態では、細胞は様々な処置を受けさせられ、様々な状態にさせられ、または様々な供給源から抽出され、それによって生成されたプロテオーム写像が、細胞の状態によって異なったタンパク質発現を映し出すことができる。当該濃縮装置及びアッセイが、本発明の方法で構成されていることは言うまでもない。
【0124】
幾つかの実施形態では、本発明の装置/方法は、生体試料からの所望する物質を濃縮するのに使用できる。幾つかの実施形態では、生体試料は流体で良い。一実施形態では、当該流体には以下の体液を包含しても良い:幾つかの実施形態では血液、尿、漿液、リンパ、唾液、肛門及び膣分泌物、汗及び精液である。または別の実施形態では、例えば肝臓、ひ臓、骨髄、肺、筋肉、神経系組織など前述の固形組織内のホモジェネート。また、例えば哺乳動物、げっ歯動物、バクテリアなどの実際のすべての有機体から採取することができる。幾つかの実施形態では、溶液または緩衝媒体には、例えば空気中、農作物、水または土壌から得られる、本発明の方法に順守できる環境試料を含んでもよい。別の実施形態では、当該試料は生物戦薬剤試料でもよい;研究試料、例えば、糖タンパク質、バイオ毒素、浄化タンパク質などを含んでもよい。他の実施形態では、当該流体を希釈してもよい。
【0125】
一実施形態では、本発明は、実在のスクリーンに適合可能な、少なくとも10,000もの濃縮装置まで拡大可能な配列アーキテクチャを提供する。
【0126】
一実施形態では、濃縮効率は、標識タンパク質または標識ポリペプチドを利用して測定可能で、既知の割合で標識タンパク質または標識ポリペプチド濃縮装置に導入し、以下のように例証しているように、濃縮した標識タンパク質または標識ポリペプチドを検出する。信号強度を暗騒音で経時的に測定できる。
【0127】
一実施形態では、本発明の濃縮装置は物理化学的パラメーターを管理下に置くことができる。その(測定の)中に温度、pH、塩濃度、あるいはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0128】
一実施形態では、発明は、発明の装置を利用することや、ここに記述しているような過程で用意することを含んだ液体内の対象種の濃縮方法を提供する。
【0129】
一実施形態では、発明は対象種含有の液体を本発明の装置へ適用することなどを含む、液体中の対象種の濃縮方法を提供する。
【0130】
一実施形態では、方法は
●イオン選択性膜の近位にあるチャネル内の或る領域でイオン枯渇が生じ、かつチャネル内に空間電荷層が形成され、それにより前述の対象種にエネルギー障壁を提供するように、チャネル内に電場を誘起させるステップと、
●チャネル内で液体の流れを誘発するステップとをさらに含む。
【0131】
一実施形態では、流れとは電気浸透流であり、または別の実施形態では、流れは圧力駆動である。
【0132】
一実施形態では、ステップは周期的に行なわれる。
【0133】
一実施形態では、前述の装置に電圧を印加して、前述のチャネル中の電場を誘起するが、一実施形態では、50mVから1500Vまでの電圧の出力である。一実施形態では、電圧源はチャネルの反対側にも同じ電圧を印加する。または別の実施形態では、電圧源は、陰極側と比べてより大きな電圧を陽極側に印加する。
【0134】
一実施形態では、前述のチャネルの陽極側により大きな電圧を印加する前に、空間電荷層をチャネル内で生成する。
【0135】
発明の本特徴によると、また別の実施形態装置では、分離システム、検出システム、解析システム、あるいはそれらの組合せに結合されている。
【0136】
一実施形態では、液体が溶液である。別の実施形態では、その液体は、懸濁液であり、それは、別の実施形態では、臓器ホモジネート、細胞抽出物または血液試料である。別の実施形態では、対象種にはタンパク質、ポリペプチド、核酸、ウィルス粒子あるいはそれらを組み合わせたものを含有する。一実施形態では、対象種は、細胞内にみられる又は細胞から排出されるタンパク質、核酸、ウィルスまたはウィルス粒子であり、別の実施形態では、タンパク質の量の10%にも満たない極少量の、細胞のタンパク質抽出物から抽出されるものである。
【0137】
一実施形態では、本発明の方法及び本発明の装置は、比較的大きな検体量(〜1μLまたはそれ以上)から分子の収集をすることができ、それらを少量(1pL〜1nL)に濃縮することができる。その濃縮された試料は、他の実施形態では、検体容量の少ないマイクロ流体生体分子選別/検出システム全体の検出感度を犠牲にすることなく、マイクロ流体システムによって、効率的に選別、分離または検出を行うことができる。
【0138】
一実施形態では、本発明の方法及び濃縮装置は、分子の信号強度を著しく増大させた後に検出を行えるようにし、別の実施形態では、マイナーなタンパク質またはペプチドなどの微量濃度の分子の検出能を犠牲にすることなく、試料から、より活動的な分子選別及び/またはタンパク質などの存在量の多い分子の除去を行えるようにする。
【0139】
別の実施形態では、本発明の濃縮のための装置及び方法は、複数のラベル付けを行わない検出法(例えばUV吸着)に使用することも可能である。それらは従来のマイクロ流体チャネルの経路長が短く、内部体積が少ないために使用不可能であった。したがって、別の実施形態では、本発明の濃縮のための装置及び方法は、濃縮及び分子選別を組み合わせたものであり、バイオマーカ検出、環境解析、及び化学物質?生物製剤検出のための統合マイクロシステムに理想的なプラットフォームを提供できる。
【0140】
一実施形態では、その方法は、対象種を装置から放出するステップをさらに含む。一実施形態では、その方法には、対象種にキャピラリー電気泳動を受けさせるステップがさらに含まれる。
【0141】
キャピラリー電気泳動は、試料の構成要素を分離させるため、分子の電気泳動特性及び/または小さなキャピラリー管内の試料の電気浸透流を活用する手法である。一般的には、100μm以下の内径の溶融石英キャピラリーが、電解液を含む緩衝溶液で満たされる。キャピラリーの各端部には、電解液を含む緩衝溶液を貯留する流体用容器が個別に配置される。電位差が緩衝液の容器の一方に与えられ、第2の電位差がもう一方の緩衝液の容器に与えられる。陽性及び陰性荷電種は、緩衝液の容器に与えられた2つの電位差によって形成された電場の影響により、キャピラリー内を互いに反対方向に移動する。流体の各構成要素の電気浸透流及び電気泳動移動度は、流体の各構成要素に対して全体的な移動量を測るものである。電気浸透流がもたらす流体の流れの形状は、分離チャネルの壁に沿って摩擦抵抗で変形するためフラットな形状をしている。測定された移動度は、電気浸透流及び電気泳動の移動度を合計したものであり、測定された速度は、電気浸透流及び電気泳動の速度を合計したものである。
【0142】
本発明の一実施形態では、キャピラリー電気泳動システムは、装置に取り付けられるマイクロマシンであり、本明細書に記載された濃縮装置の一部、または分離したものである。装置に取り付けられるキャピラリー電気泳動システムをマイクロマシニングする方法は、当分野で公知であり、例えば、特許文献4、特許文献5、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、及び非特許文献11に記載されている。
【0143】
一実施形態では、キャピラリー電気泳動による分離は、MALDI?MS及び/またはESI?MS/MSに基づくタンパク質解析の両者に使用し得る試料を提供する(例えば、非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14を参照)。
【0144】
他の実施形態では、本発明の濃縮器と相互作用する下流側の分離装置には、以下のものに限定するわけではないが、逆相カラム、イオン交換カラム、及び親和性カラムなどの高性能小型液体クロマトグラフィーカラムを含む。
【0145】
濃縮装置の下流側に接続される様々なシステム、装置などの正確な構成は本発明の一部でありその構造は、所望の用途に適したものとなるように様々に変化し得ることを理解されたい。一実施形態では、濃縮装置の下流側に配置された、濃縮されたペプチドを分離するためのモジュールは、分離媒体及びその端部の間に電場が与えられるキャピラリーを含むものである。キャピラリーシステム内の分離媒体の移動、及び被検試料(例えば、ペプチド及び/または部分的に消化されたポリペプチドを含む試料バンド)の分離媒体への注入は、ポンプ及びバルブを利用して実行され、あるいは別の実施形態では、キャピラリーの様々な位置に与えられる電場によって実行できる。
【0146】
別の実施形態では、その方法は、対象種が液体中に検出下限より低い濃度で存在するとき、前記対象種を検出するように用いられる。
【0147】
以下(図6及び図10)に例示しているように、少量のタンパク質での濃縮及び分析は、本発明の装置/方法によって容易に遂行される。10倍の少量のタンパク質の濃縮は4分足らずで達成され、本発明の濃縮法/装置を使用しない同様の分析と比較して約1000倍もの分析感度の増強が実現した。
【0148】
他の実施形態では、本発明の方法は、現存する発明から逸脱せずに、さまざまな形で応用が可能である。
【0149】
例として、本発明の濃縮及びポンプ機能を、高機能性ロボットタイプの測定システムに本発明の装置を直接適合させ、対象種の濃縮及び/または液体をポンピングするような統合的機能を発揮させることができる。
【0150】
本発明を実行するための様々なモードは、特許請求の範囲に記載の本発明の対象を明確に主張する請求項の範囲内に含まれるものである。
【0151】

【0152】
材料及び方法
【0153】
装置の作成
【0154】
マイクロチャネルまたはナノ・チャネルを含むマイクロ流体装置用の作成技術は記述されている技術と同様であった。マイクロチャネルを含むPDMS装置を作成した。
【0155】
全フッ素置換されたナフィオン樹脂溶液(15〜20%の水含有の低脂肪族アルコール5wt%)は、標準ガラス基板上に薄い平面的ナフィオン膜をパターン形成するために使用された。膜は、基板の上のPDMSチャネルとのプラズマ結合により硬化し、チャネルに内蔵した。
【0156】
ガラス基板上のプロトン交換樹脂の沈着及びパターニングは、以下のように遂行が可能である。
【0157】
所望形状を備えたマイクロ流体のチャネルを使用する。用途によっては、その形と同様にチャネル形状(長さ、深さ、幅)を変更することができる(1本の直線、複数本の線、曲線など)。この祭、ナフィオン樹脂の0.5〜1uLを、幅100um、厚さ20umのマイクロ流体のチャネルによって陰圧をかけ流した。膜厚は、使用した陰圧の機能で変更できる。マイクロチャネルによって完全に樹脂を洗い流した後、その親水性表面が樹脂を保持するので、薄膜がガラス基板の表面に残った。3分間弱の90℃で、熱版上で樹脂を硬化させた。
【0158】
プロトン交換樹脂の沈着及びパターニング法の別手段として、マイクロ・ナノ・スタンピング技術を用いる。マイクロサイズまたはナノサイズの有益な特性のあるPDMSツールを、所望形状及びパターンで組み立てる。スタンプは基板の露出面に液状樹脂を転送する。膜の厚さは、樹脂粘度の機能及び/またはPDMSスタンプの疎水性によって変更することができる。
【0159】
プロトン交換樹脂の沈着及びパターニング法の別手段として、インクジェットプリンティング技術を用いる。プロトン交換樹脂を基板の露出面に分注し、CADモデルを利用して、任意の膜パターン及び形状でその上にプリントする。パターン形状化した後、3分間で90℃で、熱版上で樹脂を硬化させる。
【0160】
プロトン交換樹脂の沈着及びパターニング法の別手段として、ガラスかシリコン、または別のポリマー(例えばPDMS)基板上で直接プロトン交換樹脂をパターン形成するためのUVリソグラフィーまたは電子ビームリソグラフィーの技術を用いる。
【0161】
上記の方法のすべて、形成される膜の最終厚さが100〜500nmの間になるように配慮する。
【0162】
いったん樹脂が沈殿し、膜が基板上で形成したら、チャネルを含むマイクロ流体装置及び基板が標準プラズマ結合プロトコルに従ってプラズマ結合を起こす。
【0163】
チャネルと同じくらい高いアスペクト比を持つ高アスペクト比膜を作成するため、2つの高分子電解質溶液もマイクロチャネル(例えばPEO/PAA、LPEI/PAA)に流しても良い。
【0164】
それに応じて当該装置の多くのパターン配列の準備ができる。
【0165】
ナフィオン・パターニングする前に、以下の様な場合にはガラス基板の表面処理を行った:まず、Sylgard Prime Coat溶液を、ガラス基板上でパターン形成した。本パターニング(パターン形成)によって、シリコーンの様々な基板への付着及び結合を増強させ、付着面への有効成分の浸透を促した。基板上でプライムコート層を沈殿させた後、ナフィオン樹脂を、前述のようにさまざまなパターンニング法を用いてパターン形成した。このように粘着強度が増強し、PBS 1Xなどの高イオン強度の基板ですらタンパク質試料の濃度で処理することができた。
【0166】
生体分子及び試薬準備
【0167】
使用される生体分子及び染料は以下のものが含まれる:B-フィコエリトリン、rGFP(BD bioscience, Palo Alto, CA)、FITC−BSA(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、FITC−オバルブミン(Molecular Probes, Eugene, OR)、FITC−BSA(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、FITCダイ(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、Mito Orange(Molecular Probes, Eugene, OR)、及びlambda-DNA(500μg/ml)。DNA分子は、使用説明書に従って、YOYO?1挿入ダイ(Molecular Probles, Eugene, OR)でラベル付けした。
【0168】
光学的検出の設定
【0169】
全ての実験は、蛍光励起光源が取り付けられた倒立顕微鏡(IX?71)で実施した。熱電冷却式のCCDカメラ(Cooke Co., Auburn Hill, MI)を、蛍光画像検出用に使用した。画像の配列は、IPLab3.6(Scanalytics, Fairfax, VA)によって解析した。自家製の電圧分割器を、異なる電位を容器に分配するために使用した。備え付けの100Wの水銀ランプを光源として使用した。
【0170】
チャネルを40nM、4nM及び4μMのB−フィコエリトリン溶液で満たし、蛍光強度を測定した。カメラのシャッタを周期的な露光(〜1秒)時のみ開くようにし、収集された分子の光退色を最小限にした。
【0171】
表面パターン化ナフィオン膜を接合し、PBS 1X媒体内で免疫測定器と連結し実行する:
【0172】
マイクロ流体の予備濃縮装置を表面免疫測定(図14を参照)と連結し、備濃縮装置を使用して免疫測定の結合率の増加を調べた。これらの機能を内蔵した予備濃縮免疫測定法装置で、前述のように最初にガラス基板上にプライム・コートでパターン形成し、次にナフィオン樹脂でパターン形成した。一実施形態では、ガラス基板にはあらかじめ電子ビームで沈殿化したAuドットを含んでいる。次に、Auドットの表面を、抗hcGなどの抗体で機能的にした。表面機能化については、標準チオールの化学的性質を利用した(図15)。ストレプトアビジン及びビオチン化した表面の間の結合を測定するため、ストレプトアビジン分子を、PBS 1X内にあるビオチン化したAu表面上で濃縮し、Au表面上での結合の増加率を調べた。(図16)最終的に、hcGタンパク質を、PBS1X緩衝液内にある表面を機能的にした数Auドット上で濃縮し、hcGの抗hcGへの結合率の増加を実証した(図17を参照)。
【0173】
例1
【0174】
平面的な動電学的な濃縮装置の作成
【0175】
固体イオン選択性膜をマイクロ流体の装置内に内蔵することは難しく、完全な結果が得られないので、それに代わる作成技術が必要とされた。
【0176】
この全フッ素置換されたナフィオン樹脂溶液(15〜20%の水含有の低脂肪族アルコール5wt%)は、標準ガラス基板上に薄い平面的ナフィオン膜を作るためにパターン形成した。膜は、マイクロチャネルを含むPDMSチャネルとのプラズマ結合により、硬化し、チャネルに付着した。
【0177】
複数の方法で、基材表面上の樹脂のパターン形成が可能である。
【0178】
あるパターニング方法では、幅100μm、厚さ20μmの標準形状のマイクロ流体チャネルを含むチップを利用し、陰圧がかかった状態でチャネルの0.5〜1μLのナフィオン樹脂を洗い流す。用途によっては、その形と同様にチャネル形状(長さ、深さ、幅)を変更することができる(1本の直線、複数本の直線、曲線など)。膜厚は、使用した陰圧の機能で変更できる。マイクロチャネルによって完全に樹脂を洗い流した後、その親水性表面が樹脂を保持するので、薄膜がガラス基板の表面に残った。約3分間で90℃で、熱版上で樹脂を硬化させた。
【0179】
別のパターニング法として、マイクロ−またはナノ・スタンピング技術を用いる。マイクロサイズまたはナノサイズの有益な特性のあるPDMSツールを、所望形状及びパターンで集める。スタンプは例えばガラス基板など、所望の基板の表面に液状樹脂を移す。膜の最終的な厚さは、樹脂の粘着性機能や、PDMSスタンプの疎水性によって決まるスタンピング技術は、パターン形成の実施形態では、基板の広い表面にパターン形成するのに有用である(図1)。本方法によって構築した装置の実施形態が図2または3に表示されている。
【0180】
別のパターニング法として、インクジェットプリンティング法を用いる。低粘性樹脂をガラスなどの基板に転送するのは、インクジェットプリンティング方法などのオン・デマンドの技術で遂行できる。樹脂の調合で、ガラス基板のいかなる場所にも所望の膜パターン及び形状に正確に沈殿させることができる。パターン形成化した後、樹脂を硬化させる。
【0181】
別のパターニング方法として、ガラスかシリコン、または別のポリマー(例えばPDMS)基板上で直接プロトン交換樹脂をパターン形成するためのUVリソグラフィーまたは電子ビームリソグラフィーの技術を用いる。
【0182】
ガラス基板上でできた膜の最終膜厚は、平均100〜500nmの間である。
【0183】
上に列挙された方法によって、約数ナノメートルから数マイクロメーターまでの範囲の膜厚の調整が可能になる。
【0184】
膜を含む基板が硬化されると、マイクロ流体チャンバーを含む装置を標準的な方法でプラズマ結合させる。
【0185】
例2
【0186】
発明装置の実施形態が示す界面動電濃縮
【0187】
図4は、本発明装置の実施形態の操作について概略的に示している。本実施形態によると、また一実施形態では、装置の操作は、トラッピング・モードで効果を発揮し、試料(圧力駆動流による)を注入し、それから適応したVdiff=200Vの電位差でナフィオン膜越しにトラップする。
【0188】
予備濃縮されると、試料のpH値とトラップされた分子のpI値とを適合させるのに、緩衝液をオートサンプラーで注入できる。一度pH値が分子のpI値に達すると、分子は中性になり界面動電トラップから解放される。
【0189】
それから濃縮された試料に分注して良い。この様な目的で電圧配置が変更されるが、高電圧シーケンサーを用いて遂行できる。ミドルチャネル内の電圧を例えば1kVにまで増強し、MALDIプレートにチャネルから液滴を生成する。
【0190】
チャネル内の緩衝液のイオン強度を保持するために(そうしなければ分注された試料の塩濃度が高くなる)、空乏領域を分注モードで管理を強化する。したがって、ミドルチャネルの先端から放たれている分子に分注する間、主なサイドチャネルを通過させ、同じ電位差(Vdiff=200V(1000V〜800V))を継続的に保つ。試料に分注する前に無駄を省くため、オリフィス付近に配置している空気ジェットを使用してもよい。MALDIプレートがX−Yテーブルに取り付けられる場合は、プレート上の追加試料の採取を引き続き行うことができる。
【0191】
図5は、予備濃縮装置の操作手順の実施形態を示している。本実施形態によると、「捕獲」あるいはトラッピング・モードで操作されている時の装置は、試料チャネルの両サイドが、50Vで一定に保たれている。バッファー・チャネルは接地されている。
【0192】
この電圧配置では、荷電粒子は、ナフィオン膜ブリッジ周辺でトラッピングされる。装置が、解放または分注モードで操作されている場合、試料チャネルの片方の先端の電圧を25Vに減らし、2つの先端間の電位差を25Vにする。この電位差は、粒子の流れを促進する。挿入部に見られるように、生物学的マーカーは装置内ですぐに濃縮された。
【0193】
少量の化合物での効果的な濃縮について、図6で示されている。β−フィコエリトリン予備濃縮(蛍光強度のシステム内で)を界面動電トラッピングが行われている時に実行することにした。化合物は20分間で10倍以上、また5分間で10倍に濃縮された。
【0194】
例3
【0195】
濃縮された物質のアッセイ(分析)
【0196】
濃縮物質の分析は、本発明の装置及び方法の1つの具体化した実施例である。図7は、例えば少量のエンザイム、または基材などの物質を使用した分析を概略的に示している。本様相では、本発明を具体化した装置のミドルチャネルを、エンザイム/基質混合物及びサイドチャネルを含んだ緩衝液で満たす。エンザイム/基質混合物の濃縮については、電位差を界面動電流と組み合わせてミドルチャネル及びサイドチャネルの間で利用する。エンザイムと基材をトラッピングすることによって、それらの物質反応を促し、その濃縮によって、反応感度を高め、分析に適した環境作りに役立ち、エンザイム、基板、あるいはその両方の使用量が少なくて済む。
【0197】
図8はマイクロチャネル内の化合物のトラッピング及び分析の実施形態について表わす。ここでのアッセイは酵素分析である。パネルAは、濃縮ゾーンでの酵素基質生成物の界面動電トラッピングを表わしている(ゾーン2)。ゾーン1は、トリプシン及びBODIPY及びFLカゼインの合成剤が含まれており、濃縮ゾーンの外側に位置する。ゾーン2では、予備濃縮でエンザイム及び基板を隣接させている。グラフでみられる蛍光強度の増加は、エンザイム−基質の反応度が高いことを表わしている。ゾーン3は枯渇ゾーンを表わしている。そこにはマイクロチャネル側に酵素/基板が吸着することで生じる暗騒音である。
【0198】
図9では、酵素の処理に関するアッセイで、濃縮モードで操作されなかった装置で形成された、生成物の蛍光シグナル強度を示している。そこでは、トリプシン(エンザイム)濃度が1μg/mlから1ng/mlまでの範囲内である。基材増加率として使用する50mg/mlのBODIPY FLカゼインを測定した。最大10ナノグラム/mlの検出制限で、約1時間の反応時間の後、反応曲線は、経過的に双曲線を示した。
【0199】
図10は、装置が濃縮モードで作動している状態での、図9のアッセイの生成物形成の蛍光シグナル強度を示している。予備濃縮で増強したトリプシン触媒反応エンザイム及び50ug/ml BODIPY FLカゼイン用の10ピコグラム/mlから1ナノグラム/mlまでの範囲のトリプシン濃縮(図9の中で使用されるものより低い濃縮)が使用された。検出限界はこの場合およそ10ピコグラム/mlで、濃縮モードで操作しなかった装置で得られたものと比べ、分析感度約1000倍の増強を示した。1ナノグラム/mlの濃度の基材に対する反応時間はおよそ10分であった。それは予備濃縮なしより6倍の速さである。
【0200】
例4
【0201】
高アスペクト比イオン選択性膜含有装置
【0202】
より高い枯渇力を生みだすことができるかどうかを判断し、それによって、圧力駆動流でより早く濃縮できるように、マイクロチャネル内に高アスペクト比イオン選択性膜を包含している装置を構築した。その膜のアスペクト比はチャネルと同じ高さである。発明の本実施形態では、2つの高分子電解質はチャネルへ流れ、そしてそれらの静電的相互作用/水素結合相互作用で液界の膜構造作成に至った。当該高分子電解質コンビネーションは、PEO(ポリ(エチレンオキシド))/PAA(ポリ(アクリル酸))及びLPEI(線形のポリエチレンイミン)/PAA(PAA)である。また、高アスペクト比膜は図11に示される装置のマイクロチャネル内部で構築された。
【0203】
例5
【0204】
高処理能力適応の並列自由配列の構成
【0205】
装置は、ここに記述されているように、例えば使い捨てが可能な程、安価な材料で、簡易に制作してもよい。さらに、本発明の装置の製作は、合成イオン選択性膜を含むマイクロ流体装置及びナノ流体装置の並列配列に向いている(図12)。所望の溶質を濃縮するための当該使い捨ての平面アレイによって、様々な診断・分析的な用途に、例えば機能性の優れたスクリーンなど多数の配列の応用を見つけることができる(図13)。例えば、当該配列は質量分析法を統合するのに柔軟性がある。本発明の幾つかの実施形態では、当該技術は、試料調製、濃縮及び分析用統合マイクロ流体チップの構成に向いている。
【0206】
例6
【0207】
選択透過性接合部の代替製作技術
【0208】
上記にあるようにナフィオン樹脂をパターン成形することにより試料とサイド・バッファー・チャネルの間の平面的イオン選択性接合部を制作する代わりに、マイクロチャネル間のイオン選択性膜を作成する代替的方法を開発した。この製作技術を使用して、高アスペクト比イオン選択性膜を高濃度の試料予備濃縮で作成した。図18では、キャピラリー力を利用した充填法を示している。
【0209】
最初に、ナフィオン樹脂はサイド・バッファー・チャネルに転送され、チャネル間のファンネル型接合部を液体のナフィオン樹脂(図18a)で満たした。その接合部は、通常幅10〜50um、高さ20〜50umであった。最初に、ナフィオン樹脂はサイド・バッファー・チャネルに転送され、チャネル間のファンネル型接合部を液体のナフィオン樹脂(図18a)で充填し、表面張力によって試料チャネルへ流れないようにした。次に、チャネル(図18b)をきれいにするため、バッファー・チャネルの別の先端上に陰圧を加えてナフィオン樹脂を除去した。バッファー・チャネルからの余分なナフィオン樹脂を除去した後、水やアルコールなどのナフィオン樹脂の主成分が完全に蒸発すると、接合部でトラッピングしたナフィオン樹脂はチャネル間でイオン選択性膜を形成した(図18c)。装置全体が熱版上で最大950℃にまで加熱され、30分後には使用できるよう準備が整った(図18d)。ナフィオン膜と装置の間の粘着強度を高めるために、上記にあるように装置の表面をまずプライムコート(Prime Coat)で処理し、次にチャネルをナフィオン樹脂で満たした。一実施形態では、この充填法は表面電荷を持つ浮遊状態のコロイド粒子にも、液状で利用可能なあらゆるイオン選択性樹脂にも、またその組み合わせにも適用できる。
【0210】
追加された請求項で述べられるような発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに、形式と詳細の様々な変更を行っても良いということは、当業者であれば理解できるであろうことは言うまでもない。当業者であれば、ここに記載されている発明の具体的な実施例に匹敵する数少ない日常的な実験で、理解し、または究明することができるであろう。均等物は特許項の範囲の記載に基づいて判断する。
【0211】
特許項の中の「或る」、「前述の」などの冠詞は、文脈1つもしくは1つ以上をいう意味を表し、それとは反対に表示しない場合は、違った意味合いになる。「または」または「及び/または(かつ/または)」を含む特許項または記述文があり、グループメンバーの1つ、2つ以上、または全てが特定の製品またはその工程に関する何かに表れていたり、引用されていたりしている場合や、また反対に文脈から明白でない場合も、グループで納得しているものとみなす。発明には、グループの中にいる誰か特定の1つが特定の製品またはその工程に関する何かに表示されていたり、引用されていたりしているような実施形態が含まれる。発明は、またグループメンバーの2つ以上または全員が特定の製品またはその工程に関する何かに表現されていたり、引用されていたりしているような実施形態も含む。さらに、発明は様々な実施形態の中で、あらゆる変化、組み合わせ、配置でもって表現するが、その中で1つ以上の制約、要素、条項、記述用語など、列挙されてている請求項から同じ根底で従属している別の請求項に導入される。但し矛盾や不一致が生じる恐れのあることを当業者に示していない、明らかにされていない場合を除く。例えば、マーカッシュ・グループ・フォーマット、または同様のものに、要素を示す場合には、要素のサブグループもすべて表示され、またそのグループから要素を取り除くことができる。
【0212】
発明、もしくは発明の特徴が、特定の要素、特性などを含むとみなされる場合には、発明や発明の特徴の実施形態は前述の要素、特性から構成され、もしくは基本的にそれらからなるとする。簡潔に言うと、本実施形態には、いずれの場合もここに特に明確には説明されていないということである。
【0213】
ある請求項は便宜上従属形式で表示されるが、本出願人は、従属形式を独立形式に修正する権利を留保する。その独立形式には、前述の請求が従属するほかの独立請求やほかの請求の要素や制約を含まれ、また、独立形式で修正する前に、修正する請求をたとえどのような形式で表記しても(修正してもしなくても)従属請求をあらゆる点で同等にみなすべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮装置であって、
対象種を包含する液体を流すことができる平面アレイ状の複数のチャネルを含む流体チップと、
少なくともその表面の一部が前記チャネルと結合するように前記流体チップに接続されている少なくとも1つの硬質基板と、
前記基板の前記表面の少なくとも一部に接着され、前記複数のチャネルを結合するイオン選択性膜、または
前記複数のチャネルのうちの1つの表面の一部と結合するイオン選択性膜と、
前記チャネル内に電場を誘発するシステムと、
前記チャネル内に界面動電流または圧力駆動流を誘起するシステムとを含むことを特徴とする濃縮装置。
【請求項2】
前記チャネル内に電場を誘発するための前記手段が、電圧源であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電圧源によって印加される前記電圧が、50mVから1500Vまでの間であることを特徴とする請求項3の装置。
【請求項4】
前記電圧源が、前記マイクロチャネルの陽極側及び陰極側に等しい電圧を印加することを特徴とする請求項3の装置。
【請求項5】
前記電圧源が、陰極側と比べてより大きな電圧を前記チャネルの陽極側に印加することを特徴とする請求項3の装置。
【請求項6】
前記チャネルの幅が、0.1〜500μmの間であることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項7】
前記チャネルの幅が、10〜200μmの間であることを特徴とする請求項6の装置。
【請求項8】
前記チャネルの深さが、0.5〜200μmの間であることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項9】
前記チャネルの深さが、5〜50μmの間であることを特徴とする請求項8の装置。
【請求項10】
前記硬質基体が、パイレックス(登録商標)ガラス、シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、石英、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、炭酸プロピレン(PC)またはアクリルを含むことを特徴とする請求項1の装置。
【請求項11】
前記流体チップが、ポリジメチルシロキサンを含むことを特徴とする請求項1の装置。
【請求項12】
前記イオン選択性膜が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロスルホン酸、ポリホスファゼン、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリ・ジルコニア・ポリエチレンイミンーポリーアクリル酸・ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(アクリル酸)、あるいは非フッ素化炭化水素ポリマーまたは、ポリマー無機複合物を含むことを特徴とする請求項1の装置。
【請求項13】
前記イオン選択性膜の幅が、50〜1000μmの間であることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項14】
前記イオン選択性膜の幅が、100〜500μmの間にあることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項15】
前記イオン選択性膜の深さが、100〜500μmの間にあることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項16】
前記マイクロチャネルの表面に、該表面への前記対象種の吸着を減少させるかまたは促進する機能を持たせたことを特徴とする請求項1の装置。
【請求項17】
前記マイクロチャネルの前記表面に、装置の操作効率を高めるかまたは下げる機能を持たせたことを特徴とする請求項1の装置。
【請求項18】
前記チャネル内の電場を誘起させるための前記システムが、少なくとも1対の電極と、電源とを含むことを特徴とする請求項1の装置。
【請求項19】
前記装置が、分離システム、検出システム、解析システム、あるいはそれらの組合せに結合されていることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項20】
前記装置が、質量分析計に結合されていることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項21】
液体内にある対象種を濃縮する方法であって、前記対象種を包含する液体を請求項1の装置に適用するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
前記イオン選択性膜の近位にある前記チャネル内の或る領域でイオン枯渇が生じ、かつ前記チャネル内に空間電荷層が形成され、それにより前記対象種にエネルギー障壁を提供するように、前記チャネル内に電場を誘起させるステップと、
前記チャネル内で液体の流れを誘発するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項21の方法。
【請求項23】
前記流れが、電気浸透流であることを特徴とする請求項22の方法。
【請求項24】
前記流れが、圧力駆動であることを特徴とする請求項22の方法。
【請求項25】
前記ステップが、周期的に行なわれることを特徴とする請求項22の方法。
【請求項26】
前記チャネル内に電場を誘発する前記ステップが、前記装置に電圧を印加することによって達成されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記電圧が、50mVから1500Vまでの間であることを特徴とする請求項26の方法。
【請求項28】
前記チャネルの陽極及び陰極側に等しい電圧が印加されることを特徴とする請求項26の装置。
【請求項29】
陰極側と比べてより大きな電圧が前記チャネルの前記陽極側に印加されることを特徴とする請求項26の方法。
【請求項30】
前記チャネルの陽極側により大きな電圧を印加する前に、前記チャネル内に空間電荷層が生成されることを特徴とする請求項29の方法。
【請求項31】
前記液体が、器官ホモジェネート、細胞抽出液、または血液試料を含むことを特徴とする請求項22の方法。
【請求項32】
前記対象種が、タンパク質、ポリペプチド、核酸、ウィルス粒子、あるいはそれらの組合せを含むことを特徴とする請求項22の方法。
【請求項33】
前記装置が、分離システム、検出システム、解析システムあるいはそれらの組合せに結合されていることを特徴とする請求項22の方法。
【請求項34】
濃縮装置の準備方法であって、
上記濃縮装置が、
対象種を包含する液体を流すことができる平面アレイ状の複数のチャネルを含む流体チップと、
少なくともその表面の一部が前記チャネルと結合するように前記流体チップに接続されている少なくとも1つの硬質基板と、
前記基板の前記表面の少なくとも一部に接着され、前記複数のチャネルを結合するイオン選択性膜とを含み、
上記方法が、
陰圧下で液状ポリマーを基板に適用するステップであって、該ステップにおいて、前記基板が、複数のチャネルを含む流体チップに、前記複数のチャネルが前記基板の表面の少なくとも一部と結合するように接続され、それにより前記ポリマーが、前記基板の表面上に前記ポリマーの層を形成するのに十分な時間にわたって適用されるような、該ステップと、
前記液状ポリマー層が前記基板の表面上に膜構造を形成するような状態を提供するステップと、
前記膜構造を含む前記基板の表面の少なくとも一部と結合する複数のチャネルを含む前記流体チップに、前記基板を装着するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
前記流体チップは、10〜200μmの間の幅を持つチャネルを含むことを特徴とする請求項34の方法。
【請求項36】
前記流体チップは、5〜50μmの間の深さを持つチャネルを含むことを特徴とする請求項34の方法。
【請求項37】
前記膜構造の幅が、50〜1000μmの間にあることを特徴とする請求項34の方法。
【請求項38】
前記膜構造の深さが、100〜500nmの間にあることを特徴とする請求項34の方法。
【請求項39】
前記膜構造の深さが、1〜50μmの間にあることを特徴とする請求項34の方法。
【請求項40】
前記硬質基体が、パイレックス(登録商標)、シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、石英、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、炭酸プロピレン(PC)、またはアクリルを含むことを特徴とする請求項34の方法。
【請求項41】
前記流体チップが、ポリジメチルシロキサンを含むことを特徴とする請求項34の方法。
【請求項42】
前記液状ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリホスファゼン、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリ・ジルコニア、ポリエチレンイミン−ポリ(アクリル酸)あるいはポリ(エチレンオキシド)−ポリ(アクリル酸)を含むことを特徴とする請求項34の方法。
【請求項43】
前記液状ポリマー層が前記基板の表面上に膜構造を形成するような状態を提供する前記ステップが、前記基板を加熱することによって達成されることを特徴とする請求項34の方法。
【請求項44】
前記流体チップに前記基板を装着する前記ステップが、プラズマ結合によることを特徴とする請求項34の方法。
【請求項45】
濃縮装置の準備方法であって、
上記濃縮装置が、
対象種を包含する液体を流すことができる平面アレイ状の複数のチャネルを含む流体チップと、
少なくともその表面の一部が前記チャネルと結合するように前記流体チップに接続されている少なくとも1つの硬質基板と、
前記基板の前記表面の少なくとも一部に接着され、前記複数のチャネルを結合するイオン選択性膜とを含み、
上記方法が、
液状ポリマーを、該ポリマーが前記基板の表面上に前記ポリマーの層を形成するのに十分な時間にわたって適用されるように、所望の形状、パターン、もしくはそれらの組合せで、硬質基板上にスタンピングするステップと、
前記液状ポリマー層が前記基板の表面上に膜構造を形成するような状態を提供するステップと、
前記膜構造を含む前記基板の表面の少なくとも一部と結合する複数のチャネルを含む前記流体チップに、前記基板を装着するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項46】
前記膜構造の厚さが、前記液状ポリマーの粘性を高めることによって強化され得ることを特徴とする請求項45の方法。
【請求項47】
前記膜構造の厚さが、前記スタンピングのために疎水性スタンパーを使用することによって強化され得ることを特徴とする請求項45の方法。
【請求項48】
前記スタンピングが、ポリジメチルシロキサンを含むスタンパーで達成されることを特徴とする請求項45の方法。
【請求項49】
前記流体チップが、10〜200μmの間の幅を持つチャネルを含むことを特徴とする請求項45の方法。
【請求項50】
前記流体チップが、5〜50μmの間の深さを持つチャネルを含むことを特徴とする請求項45の方法。
【請求項51】
前記膜構造の幅が、50〜1000μmの間にあることを特徴とする請求項45の方法。
【請求項52】
前記膜構造の深さが、100〜500μmの間にあることを特徴とする請求項45の方法。
【請求項53】
前記膜構造の深さが、1〜50μmの間にあることを特徴とする請求項45の方法。
【請求項54】
前記硬質基体が、パイレックス(登録商標)、シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、石英、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、炭酸プロピレン(PC)またはアクリルを含むことを特徴とする請求項51の方法。
【請求項55】
前記流体チップが、ポリジメチルシロキサンを含むことを特徴とする請求項45の方法。
【請求項56】
前記液状ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリホスファゼン、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリ・ジルコニア、ポリエチレンイミン−ポリ(アクリル酸)あるいはポリ(エチレンオキシド)−ポリ(アクリル酸)を含むことを特徴とする請求項45の方法。
【請求項57】
前記液状ポリマー層が前記基板の表面上で膜質構造を形成するような状態を提供する前記ステップが、前記基板を加熱することによって達成されることを特徴とする請求項45の方法。
【請求項58】
前記流体チップに前記基板を装着する前記ステップが、プラズマ結合によることを特徴とする請求項45の方法。
【請求項59】
前記スタンピング法の代わりにインクジェット法を使って、前記基板に前記ポリマーが導入されることを特徴とする請求項45の方法。
【請求項60】
濃縮装置の準備方法であって、
上記濃縮装置が、
対象種を包含する液体を流すことができる平面アレイ状の複数のチャネルを含む流体チップと、
少なくともその表面の一部が前記チャネルと結合するように前記流体チップに接続されている少なくとも1つの硬質基板と、
前記複数のチャネルのうちの1つの表面の一部と結合する高アスペクト比のイオン選択性膜とを含み、
上記方法が、
液状ポリマーを、該ポリマーが前記基板の表面上に前記ポリマーの層を形成するのに十分な時間にわたって適用されるように、前記複数のチャネルのうちの1つの少なくとも一部に適用するステップと、
前記液状ポリマー層が膜構造を形成するような状態を提供するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項61】
前記液状ポリマーが、該液状ポリマーと一緒に、あるいはそれより前に浸透させられるような、ミクロビーズまたは高分子電解質、またはそれらの組合せを含むことを特徴とする請求項60の方法。
【請求項62】
前記液状ポリマーが、イオン選択性樹脂であることを特徴とする請求項60の方法。
【請求項63】
前記液状ポリマーが、液体ナフィオンであることを特徴とする請求項60の方法。
【請求項64】
前記状態を提供する前記ステップが、先ず前記硬質基板の溝内にナフィオン樹脂を導入することによりナフィオン膜を形成するステップを含むことを特徴とする請求項60の方法。
【請求項65】
前記溝が、前記所望の膜寸法で形成されることを特徴とする請求項64の方法。
【請求項66】
前記状態を提供する前記ステップが、前記液状ポリマーのキャピラリー力ベースの充填を含むことを特徴とする請求項64の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2010−540940(P2010−540940A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527203(P2010−527203)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/077954
【国際公開番号】WO2009/042921
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】