説明

勾配変化量データ作成装置及びナビゲーション装置

【課題】座標に関連付けられた勾配値から勾配変化量に関するデータを自動的に作成する装置及び当該データを用いたナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】地図データ保存部から勾配変化量データを作成するための対象リンクを選択し、対象リンクの一部又は全部の勾配値を座標と関連付けて保存された勾配値保存部を参照し、当該勾配値に基づいて当該勾配変化量を演算し、当該勾配変化量の絶対値が所定閾値以上である座標にフラグを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勾配値から勾配変化量に関するデータを作成するための勾配変化量データ作成装置、及び、当該勾配変化量データを利用したナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な運転支援を目的としたナビゲーション装置が種々提案されている。
このようなナビゲーション装置として、例えば、自車両現在位置における道路の傾斜情報を算出し、所定条件を満たしたとき、ヘッドライトの角度調整が自動的になされる車載用ナビゲーションシステムが提案されている(特許文献1)。
本発明に関連する従来技術を開示する特許文献2〜6も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−175581号公報
【特許文献2】特開2009−143354号公報
【特許文献3】特開平10−181428号公報
【特許文献4】特開平11−028973号公報
【特許文献5】特開平11−028975号公報
【特許文献6】特開2009−133830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、より精度良く、勾配に関する情報を反映させた制御を可能にすべく鋭意検討を重ねてきた。その結果、下記の点に気がついた。
上記従来技術では、車輌情報としてのヘッドライト角度を調整するに際し、道路リンクを形成する始点ノード及び終点ノードの三次元座標から算出された傾斜情報を用いている。しかしながら、より的確に車輌情報を制御するためには、リンク全体の傾斜よりもむしろ、リンク上の各座標における勾配変化量に基づくことが望ましい。
【0005】
図1はそれぞれ、(A):上り坂の断面模式図、(B):(A)に示す上り坂の勾配値を示す模式グラフ、(C):(B)の勾配値を微分したときの微分値(勾配変化量)を示す模式グラフである。図1(A)に示される上り坂は、区間I〜Vの5つの区間で構成される。すなわち、区間I及びVは勾配がゼロの平坦路区間、区間IIは平坦路から傾斜路への勾配変化区間、区間IIIは一定勾配の傾斜路区間、区間IVは傾斜路から平坦路への勾配変化区間である。
【0006】
そして、ヘッドライト照射角度等の車輌情報の調整が必要とされるのは、勾配が変化する区間II、区間IVであり、区間IIIのような勾配はあるものの勾配変化のない区間での車輌情報の調整は特に要されない。すなわち、リンクにおいて勾配変化量が所定値以上変化する箇所について車輌情報を制御すれば、より実際に即した精度の良い制御が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の局面は次のように規定される。即ち、
地図データ保存部から勾配変化量データを作成するための対象リンクを選択する対象リンク選択部と、
前記対象リンクの一部又は全部の勾配値を座標と関連付けて保存する勾配値保存部と、
前記勾配値に基づいて前記勾配変化量を演算する勾配変化量演算部と、
前記勾配変化量の絶対値が所定閾値以上である座標にフラグを設定するフラグ設定部と、
を備える、ことを特徴とする勾配変化量データ作成装置。
【0008】
このように規定される第1の局面の勾配変化量データ作成装置によれば、勾配変化量データの作成対象として選択された対象リンクについて、当該対象リンクに関連付けられた勾配値に基づき勾配変化量を演算し、当該勾配変化量の絶対値が所定閾値以上である座標にフラグを設定する。このように設定されたフラグに基づけば、勾配変化に対応した車輌情報の制御が可能となる。また、勾配が変化する箇所は運転者にとって十分に注意を要する場合も多いことから、当該フラグを運転者への注意喚起等の指標とすることもできる。
【0009】
ここで、勾配変化量とは、座標Aの勾配値と座標Bの勾配値との変化を示す値をいい、勾配値間の差分や微分した値等により表すことができる。そこで、当該勾配変化量演算部は、座標と関連付けられた勾配値を微分することにより前記勾配変化量を演算することができる(第2の局面)。本発明で用いる勾配値として、出典が異なる勾配値を種々重畳的に用いることが可能である。この場合、出典毎に勾配値の計測間隔の疎密が異なることを考慮しつつ、多くの勾配データを有効に利用することが必要である。当該微分により勾配変化量を演算すれば、より精度良く、より実際に即した勾配変化量を演算することが可能となる。また、車輌情報の制御の対象となりうる勾配変化量の最大地点及び最小地点を正確に把握することができる。
【0010】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、
第1又は第2の局面に規定の勾配変化量データ作成装置において、前記フラグ設定部は、前記勾配変化量が正の値であるとき前記フラグとしての第1のフラグを設定する第1のフラグ設定部と、前記勾配変化量が負の値であるとき前記フラグとしての第2のフラグを設定する第2のフラグ設定部と、を備える。
このように規定される第3の局面の勾配変化量データ作成装置によれば、当該フラグ設定部は、勾配変化量が正の値と負の値とで異なるフラグを設定する。このように、勾配変化量の正負の別により異なるフラグが設定されれば、当該フラグに基づいて車輌情報の多様な制御が可能となる。
【0011】
ここで、より多様な制御を可能にすべく、前記第1のフラグ設定部は、前記勾配変化量がゼロ値から正の値へ変化する第1−1の座標に前記第1のフラグとしての第1−1のフラグを設定し、前記第2のフラグ設定部は、前記勾配変化量がゼロ値から負の値へ変化する第2−1の座標に前記第2のフラグとしての第2−1のフラグを設定する、こととできる(第4の局面)。
さらには、前記第1のフラグ設定部は、前記勾配変化量が正の値からゼロ値へ変化する第1−2の座標に前記第1のフラグとしての第1−2のフラグを設定し、前記第2のフラグ設定部は、前記勾配変化量が負の値からゼロ値へ変化する第2−2の座標に前記第2のフラグとしての第2−2のフラグを設定する、こととしても良い(第5の局面)。
【0012】
上記フラグに勾配変化量が関連付けられていても良い(第6の局面)。また、当該フラグに勾配値の計測間隔に関する計測ピッチ情報が関連付けられていても良い(第7の局面)。このようなデータが関連付けられたフラグに基づけば、より詳細な車輌情報の制御が可能となる。
【0013】
また、この発明の第8の局面は次のように規定される。即ち、
所定のルールに従い出発地から目的地までのルートを探索する探索部を備えるナビゲーション装置であって、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の勾配変化量データ作成装置で設定されたフラグを保存するフラグ保存部と、
自車輌の現在位置を特定する自車位置特定部と、
前記自車輌の車輌情報を検出する車輌情報検出部と、
前記自車位置特定部で特定された現在位置と、前記フラグ設定部で設定されたフラグの座標とを比較する座標比較部と、
前記車輌情報を修正する車輌情報修正部と、
前記比較の結果が所定条件を満たすとき、前記車輌情報修正部を作動させるためのトリガ信号を出力するトリガ部と、
を備える、ことを特徴とするナビゲーション装置。
【0014】
このように規定される第8の局面のナビゲーション装置によれば、本発明の勾配変化量データ作成装置で設定されたフラグを参照し、当該フラグが設定された座標と自車輌の現在位置の座標とが所定条件を満たすとき、車輌情報を修正する。従って、道路における勾配変化を反映させたナビゲーションが可能となる。
ここで、当該車輌情報としては、車輌に関する情報であれば特に限定されないが、例えば、ヘッドライトに関する情報を挙げることができる(第9の局面)。さらには、当該ヘッドライトに関する情報としては、例えば、ヘッドライトのオンオフ情報及び/又は照射角度情報を挙げることができる(第10の局面)。例えば、本発明の勾配変化量データ作成装置で設定されたフラグを用いれば、車輌が上り坂に差しかかる際にはヘッドライトの照射角度を上向きに調整し、上り坂が終わりに差しかかる際にはヘッドライトの照射角度を下向きに調整することが可能となる。
【0015】
この発明の第11の局面は次のように規定される。即ち、
第8〜第10のいずれかの局面に規定のナビゲーション装置において、前記自車輌の前方車輌を検出する前方車輌検出部、を備え、
前記検出の結果、前記前方車輌が検出されたとき前記トリガ部は前記トリガ信号を出力しない。
一般に、自車輌ヘッドライトの照射角度を上げると、対向車や先行車の安全な走行を阻害する要因となる。したがって、自車輌の前方に別の車輌を検出した場合には安全走行を優先し、車輌情報修正のためのトリガ信号を出力しないこととできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A):上り坂の断面模式図、(B):(A)に示す上り坂の勾配値を示す模式グラフ、(C):(B)の勾配値を微分したときの微分値(勾配変化量)を示す模式グラフである。
【図2】本発明の実施の形態の勾配変化量データ作成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】(A):上り坂の断面模式図、(B):(A)に示す上り坂に対応した本発明の実施の形態のフラグ設定方法を説明する模式図である。
【図4】本発明の実施の形態の勾配変化量データ作成装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態のナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図6】(A):本発明のナビゲーション情報保存部419の詳細構成を示すブロック図、(B):フラグ保存部に保存されたデータの詳細を示す。
【図7】(A):上り坂におけるヘッドライト照射角度の修正例、(B):下り坂におけるヘッドライト照射角度の修正例を示す模式図である。
【図8】本発明の他の実施の形態のナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施の形態の勾配変化量データ作成装置を説明する。
図2に、この発明の実施の形態の勾配変化量データ作成装置1の概略構成を示す。
図2に示すように、この勾配変化量データ作成装置1は、地図データ保存部2、勾配値保存部3、対象リンク選択部4、対象リンク保存部5、勾配変化量演算部6、勾配変化量保存部7、フラグ設定部8、フラグ保存部9を備えている。
【0018】
地図データ保存部2には地図情報が保存される。地図情報にはリンクやノードなど地図情報を規定するための道路要素に関する情報と地図に描画される情報等が含まれる。
勾配値保存部3には、後述する対象リンクの一部又は全部に予め設定された勾配値が座標と関連付けられて保存される。このような勾配値として、特に限定されないが、例えば、地形図や計測車に基づき得られた勾配値等を挙げることができる。
【0019】
対象リンク選択部4は、地図データ保存部2を参照し、勾配変化量データの作成対象となるリンクを対象リンクとして選択する。当該選択の方法は、特に限定されないが、例えば、当該地図データから任意に抽出された領域内に存在するリンクを自動的に選択することとできる。また別の方法として、オペレータの手動によるリンク選択を許容するよう設計されていても良い。選択される対象リンクとして、特に、幹線道路を選択することとしても良い。ナビゲーションシステムにおいて、案内ルートとして選択されるのは主に幹線道路となるためである。選択される対象リンクの数は、1に限られず、隣接する2以上のリンクを選択することとできる。対象リンク選択部4において、対象リンクとして2以上のリンクが選択された場合、後述する勾配変化量演算部6及びフラグ設定部8は、当該2以上のリンクを一体として処理することとできる。選択された当該対象リンクは、対象リンク保存部5に保存される。
【0020】
勾配変化量演算部6は、対象リンク保存部5及び勾配値保存部3を参照して、当該対象リンクを構成する各座標における勾配変化量を演算する。当該演算の方法は、座標における勾配変化量を演算することができれば特に限定されず、例えば、座標に関連付けられた勾配値を微分することにより勾配変化量を求めることができる。演算された勾配変化量は、当該座標と関連付けて勾配変化量保存部7に保存される。
【0021】
フラグ設定部8は、上記勾配変化量の絶対値が所定閾値以上である座標にフラグを設定する。当該フラグの設定は、目的に応じて適宜設定すれば良い。図3(B)を参照し、例えば、勾配変化量が正の値である座標a及び座標bに当該フラグとしての第1のフラグを設定し、勾配変化量が負の値である座標c及び座標dに当該フラグとしての第2のフラグを設定することとできる。勾配変化量の正負に対応した、車輌情報の多様な制御が可能となる。
【0022】
また、勾配変化量がゼロ値から正の値へ変化する座標aに第1のフラグとしての第1−1のフラグを設定し、勾配変化量がゼロ値から負の値へ変化する座標cに第2のフラグとしての第2−1のフラグを設定することとできる。当該座標a及び座標cはそれぞれ図3(A)に示す勾配変化区間II及びIVの始点に対応する。このように勾配変化区間の始点にフラグを設定すれば、当該始点を車輌情報制御の開始点の基準とすることができる。
【0023】
さらには、勾配変化量が正の値からゼロ値へ変化する座標bに第1のフラグとしての第1−2のフラグを設定し、勾配変化量が負の値からゼロ値へ変化する座標dに第2のフラグとしての第2−2のフラグを設定することとできる。当該座標b及び座標dはそれぞれ図3(A)に示す勾配変化区間II及びIVの終点に対応する。このように勾配変化区間の終点にフラグを設定すれば、当該終点を修正制御した車輌情報の回復点の基準とすることができる。また、区間の始点及び終点にフラグを設定した場合には、当該区間の距離に基づき、当該距離が極端に短い場合等、当該距離が所定値以下のとき、車輌情報の制御を行わないこととしても良い。
上述したフラグに、勾配変化量の値や勾配値の計測間隔に関する計測ピッチ情報が関連付けられていても良い。このように詳細な情報に合わせてフラグを設定すれば、当該フラグを参照し、より精度良く車輌情報の修正を行うことが可能となる。設定されたフラグは、当該座標と関連付けてフラグ保存部9に保存される。
【0024】
図4を用いて、図2に示す勾配変化量データ作成装置1の動作を説明する。
まず、ステップ1では、地図データ保存部2を参照し、勾配変化量データを作成する対象となるリンクを対象リンクとして選択し、対象リンク保存部5へ保存する。
ステップ3では、勾配変化量演算部6は対象リンク保存部5及び勾配値保存部3を参照し、ステップ1で選択された対象リンクを構成する各座標における勾配変化量を演算し、演算された勾配変化量を当該座標と関連付けて勾配変化量保存部7に保存する。
ステップ5では、勾配変化量保存部7に保存された勾配変化量が所定閾値以上であるとき、対応する座標にフラグを設定し、保存する。
【0025】
この発明のナビゲーション装置は、上記フラグ保存部の情報をそのまま利用して構成される。
図5は、この発明の実施の形態のナビゲーション装置21の機能ブロック図である。
このナビゲーション装置21は、制御部410、メモリ部411、入力部412、出力部413、インターフェース部414、自車位置特定部415、車輌情報検出部416、探索部418、ナビゲーション情報保存部419、座標比較部420、トリガ部421、車輌情報修正部422及び案内ルート保存部423を備えている。
【0026】
制御部410はCPU、バッファメモリその他の装置を備えたコンピュータ装置であり、ナビゲーション装置21を構成する他の要素を制御する。
メモリ部411にはコンピュータプログラムが保存され、このコンピュータプログラムはコンピュータ装置である制御部410に読み込まれて、これを機能させる。このコンピュータプログラムはDVD等の汎用的な媒体へ保存できる。
入力部412は出発地や目的地等を設定するために用いられる。入力部412としてディスプレイの表示内容と協働するタッチパネル式の入力装置を用いることができる。
【0027】
出力部413はディスプレイを含み、ナビゲーションに必要な地図情報、到達予想時間情報、その他の情報を表示する。この出力部413は音声案内装置を含むこともできる。
インターフェース部414はナビゲーション装置21を無線ネットワーク等へ連結させる。
自車位置特定部415はGPS装置やジャイロ装置を用いて利用者端末の現在の位置を特定する。
【0028】
車輌情報検出部416は自車の走行状態を表す車輌情報を検出する。車輌情報としては、例えば、ヘッドライトのオンオフ情報、ヘッドライトの照射角度情報、シート角度情報、サスペンション情報を備えることが好ましい。更には、ワイパー情報、速度情報、座標情報、プローブカーを特定するID情報、時間情報、方位情報、高度情報、前後加速度、ヨーレイト、ABSウォーニングランプ、燃料消費量、電力残存容量、舵角(ハンドルの回転角度情報)、エンジン回転数、アクセル開度、ストップランプ、シフトレバー情報等を備えていてもよい。
【0029】
探索部418は指定された出発地から目的地までの経路を探索する。車輌利用者が目的地を設定すると、ナビゲーション装置が作動して目的地までの案内ルートが探索される。当該探索に際し、フラグ保存部9を参照し、勾配変化量の絶対値が大きい座標を回避した案内ルートを決定することとしてもよい。当該探索された案内ルートは、後述する案内ルート保存部423に保存される。
【0030】
ナビゲーション情報保存部419は、地図データ保存部430及び道路情報保存部431を備える。
図6(A)を用いて、ナビゲーション情報保存部419の詳細構成を説明する。
地図データ保存部430には地図情報が保存される。地図情報にはリンク432やノード433など地図情報を規定するための道路要素に関する情報と地図に描画される情報等が含まれる。
【0031】
道路情報保存部431は、道路基本情報保存部434及びフラグ保存部9を備える。
道路基本情報保存部434は、道路や交差点など各道路要素の基本特性を規定する道路基本情報を保存する。例えば、道路(リンク)の特性を規定する基本的な道路情報として、道路種、道路幅、車線数、走行規制及びその他が挙げられる。
フラグ保存部9は、この発明の勾配変化量データ作成装置で設定されたフラグを保存する。当該フラグは、それぞれ地図データ保存部430に保存されるリンクと関連付けられている。
【0032】
図6(B)に、フラグ保存部9に保存されたデータの詳細を示す。
図6(B)に示すように、リンク1に関連付けられて設定されたフラグ1〜4について、それぞれ当該フラグが設定される座標、当該座標における勾配変化量、計測ピッチ等に関するデータが備えられている。
【0033】
図5に戻り、座標情報比較部420は、フラグ保存部9及び自車位置特定部415を参照し、フラグが設定された座標と自車の現在位置の座標とを比較する。
トリガ部421は、座標情報比較部420を参照し、上記比較結果が所定条件を満たすとき、車輌情報修正部422へトリガ信号を出力する。当該所定条件としては、自車の現在位置がフラグの設定された座標と一致したとき、あるいは、自車の現在位置がフラグの設定された座標から所定距離(例えば10m)手前に位置したとき、等とすることができる。当該トリガ信号が車輌情報修正部422内に送られると、車輌情報修正部422はフラグに基づき車輌情報を修正する。
【0034】
図7を用いて、車輌情報の一例としてヘッドライトの照射角度を挙げ、フラグに基づく当該照射角度の修正例を説明する。
図7(A)の上段に示す図は、ヘッドライトの照射角度が一定の場合のヘッドライトの照射角度と路面の照射範囲との関係を示す模式図であり、中段に示す図は、この発明の勾配変化量データ作成装置で設定されたフラグに基づき、ヘッドライトの照射角度の修正を行った場合のヘッドライトの照射角度と路面の照射範囲との関係を示す模式図である。また、下段に示す図は、上段図及び中段図に示す上り坂に対応して設定されたフラグの位置とフラグの種類を示す模式図である。
【0035】
上段図に示すとおり、上り坂の走行に際し、ヘッドライトの照射角度が一定の場合には、平坦路から傾斜路への勾配変化区間II(座標ab間)及び傾斜路から平坦路への勾配変化区間IV(座標cd間)では、区間IIIにおける道路面への照射範囲に比べ照射範囲は狭くなる。
そこで、車輌情報修正部422では、下段図に示すフラグに基づき、中段図に示すようにヘッドライトの照射角度を修正することできる。すなわち、勾配変化量がゼロ値から正の値へ変化する座標aに設定された第1−1のフラグ(F1−1)に基づき照射角度を上向きに修正し、勾配変化量がゼロ値から負の値へ変化する座標cに設定された第2−1のフラグ(F2−1)に基づき照射角度を下向きに修正する。このように修正することで、上り坂の各区間においてより広い照射範囲を確保できるため、運転者は安全に走行することが可能となる。
【0036】
当該照射角度の修正は、上向き(あるいは下向き)に予め定められた角度修正することとできる。また、当該フラグに勾配変化量の値が関連付けられている場合には、当該値に対応し予め定められた角度を修正することとしても良い。例えば、勾配変化量の絶対値が小さい場合、すなわち、緩やかな坂道である場合には、角度修正の変化を小さくすることとできる。当該角度修正は、勾配変化量の値に対応して5段階程度で行うこととしても良い。
また、車輌情報修正部422は、勾配変化量が正の値からゼロ値へ変化する座標bに設定された第1−2のフラグ(F1−2)に基づき照射角度を平坦路走行時の基準角度に回復し、勾配変化量が負の値からゼロ値へ変化する座標dに設定された第2−2のフラグ(F2−2)に基づき照射角度を基準角度に回復することとできる。当該照射角度の回復の他の例としては、一旦照射角度を修正した後、所定時間(例えば2秒)経過の後、徐々に基準角度に回復するようにしても良い。
【0037】
(B)に示す下り坂の場合も、(A)の上り坂の場合と同様にして、ヘッドライトの照射角度を修正することができる。すなわち、車輌情報修正部422は、勾配変化量がゼロ値から負の値へ変化する座標eに設定された第2−1のフラグ(F2−1)に基づき照射角度を下向きに修正し、勾配変化量がゼロ値から正の値へ変化する座標gに設定された第1−1のフラグ(F1−1)に基づき照射角度を上向きに修正することとできる。
【0038】
図5に戻り、案内ルート保存部423には、上述のように探索部418で探索された経路が保存される。当該案内ルートには、リンク等の形状を併せて保存されていることが好ましい。
また、リンク等に上記フラグに基づく注意喚起情報を関連付けておいても良い。この場合、経路探索せずに、ナビゲーション装置21の出力部413のディスプレイへ現在の地図を表示している場合においても、自車の進行先の進路において注意を払うべきリンク等をより具体的に示すことができる。これにより、勾配変化の大きい道路への進入を回避することも可能である。
【0039】
図8に、他の実施の形態のナビゲーション装置31を示す。図8において、図5と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図8に示すナビゲーション装置31は、図5に示すナビゲーション装置21において、前方車輌検出部510を更に備えている。
前方車輌検出部510は、自車輌から所定範囲内前方の車輌を検出する。当該前方の車輌として、対向車や先行車等が挙げられる。例えば、汎用的な車載カメラを用い、撮影された映像を画像処理して前方車輌の検出を行うことができる。他の例として、カメラの代わりにレーザ光照射装置を用いることもできる。この場合、レーザ光照射装置に対応して、レーザ光受光装置と受光したレーザ光を電気信号に変換する装置、及び当該電気信号を処理して前方の障害物が車輌であることを認識する装置が備えられる。
【0040】
トリガ部421は、前方車輌検出部510において前方車輌が検出されたとき、車輌情報修正部422へのトリガ信号を出力しない。
通常、自車輌ヘッドライトの照射角度を上げることにより、対向車や先行車の運転者の視界を妨げることがある。上記ナビゲーション装置31であれば、対向車や先行車の安全走行を優先した走行が可能となる。
上述してきたナビゲーション装置は、ヘッドライトの照射角度のほか、オートクルーズ機能のオンオフ、サスペンションの固さ、シートの角度等の車輌情報を制御することも可能である。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、これらのうち、2つ以上の実施の形態を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらのうち、1つの実施の形態を部分的に実施しても構わない。さらには、これらのうち、2つ以上の実施の形態を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
【0042】
以下、次の事項を開示する。
【0043】
この発明の第1Aの局面は次のように規定される。即ち、
地図データ保存部から勾配変化量データを作成するための対象リンクを選択する対象リンク選択ステップと、
前記対象リンクの一部又は全部に座標と関連付けて設定された勾配値に基づいて前記勾配変化量を演算する勾配変化量演算ステップと、
前記勾配変化量の絶対値が所定閾値以上である座標にフラグを設定するフラグ設定ステップと、
を備える、ことを特徴とする勾配変化量データ作成方法。
このように規定される第1Aの局面に規定の発明によれば、既述の第1の局面と同等の効果を奏する。
【0044】
この発明の第2Aの局面は次のように規定される。即ち、
第1Aの局面に規定の勾配変化量データ作成方法において、前記勾配変化量演算ステップは、前記勾配値を微分することにより前記勾配変化量を演算する。
このように規定される第2Aの局面に規定の発明によれば、既述の第2の局面と同等の効果を奏する。
【0045】
この発明の第3Aの局面は次のように規定される。即ち、
第1A又は第2Aの局面に規定の勾配変化量データ作成方法において、前記フラグ設定ステップは、前記勾配変化量が正の値であるとき前記フラグとしての第1のフラグを設定する第1のフラグ設定ステップと、前記勾配変化量が負の値であるとき前記フラグとしての第2のフラグを設定する第2のフラグ設定ステップと、を備える。
このように規定される第3Aの局面に規定の発明によれば、既述の第3の局面と同等の効果を奏する。
【0046】
この発明の第4Aの局面は次のように規定される。即ち、
第3Aの局面に規定の勾配変化量データ作成方法において、前記第1のフラグ設定ステップは、前記勾配変化量がゼロ値から正の値へ変化する第1−1の座標に前記第1のフラグとしての第1−1のフラグを設定し、前記第2のフラグ設定ステップは、前記勾配変化量がゼロ値から負の値へ変化する第2−1の座標に前記第2のフラグとしての第2−1のフラグを設定する。
このように規定される第4Aの局面に規定の発明によれば、既述の第4の局面と同等の効果を奏する。
【0047】
この発明の第5Aの局面は次のように規定される。即ち、
第3A又は第4Aの局面に規定の勾配変化量データ作成方法において、前記第1のフラグ設定ステップは、前記勾配変化量が正の値からゼロ値へ変化する第1−2の座標に前記第1のフラグとしての第1−2のフラグを設定し、前記第2のフラグ設定ステップは、前記勾配変化量が負の値からゼロ値へ変化する第2−2の座標に前記第2のフラグとしての第2−2のフラグを設定する。
このように規定される第5Aの局面に規定の発明によれば、既述の第5の局面と同等の効果を奏する。
【0048】
この発明の第6Aの局面は次のように規定される。即ち、
第1A〜第5Aのいずれかの局面に規定の勾配変化量データ作成方法において、前記フラグは前記勾配変化量が関連付けられて設定される。
このように規定される第6Aの局面に規定の発明によれば、既述の第6の局面と同等の効果を奏する。
【0049】
この発明の第7Aの局面は次のように規定される。即ち、
第1A〜第6Aのいずれかの局面に規定の勾配変化量データ作成方法において、前記フラグは前記勾配値の計測間隔に関する計測ピッチ情報が関連付けられて設定される。
このように規定される第7Aの局面に規定の発明によれば、既述の第7の局面と同等の効果を奏する。
【0050】
また、この発明の第8Aの局面は次のように規定される。即ち、
所定のルールに従い出発地から目的地までのルートを探索する探索部を備えるナビゲーション方法であって、
自車輌の現在位置を特定する自車位置特定ステップと、
前記自車輌の車輌情報を検出する車輌情報検出ステップと、
前記自車位置特定ステップで特定された現在位置と、第1A〜第7Aのいずれかの局面に規定の勾配変化量データ作成方法で設定されたフラグの座標とを比較する座標比較ステップと、
前記車輌情報を修正する車輌情報修正ステップと、
前記比較の結果が所定条件を満たすとき、前記車輌情報修正ステップを作動させるためのトリガ信号を出力するトリガステップと、
を備える、ことを特徴とするナビゲーション方法。
このように規定される第8Aの局面に規定の発明によれば、既述の第15の局面と同等の効果を奏する。
【0051】
この発明の第9Aの局面は次のように規定される。即ち、
第8Aの局面に規定のナビゲーション方法において、前記車輌情報はヘッドライトに関する情報である。
このように規定される第9Aの局面に規定の発明によれば、既述の第16の局面と同等の効果を奏する。
【0052】
この発明の第10Aの局面は次のように規定される。即ち、
第9Aの局面に規定のナビゲーション方法において、前記ヘッドライトに関する情報はヘッドライトのオンオフ情報及び/又は照射角度情報である。
このように規定される第10Aの局面に規定の発明によれば、既述の第17の局面と同等の効果を奏する。
【0053】
この発明の第11Aの局面は次のように規定される。即ち、
第8A〜第10Aの局面のいずれかに規定のナビゲーション方法において、前記自車輌の前方車輌を検出する前方車輌検出ステップ、を備え、
前記検出の結果、前記前方車輌が検出されたとき前記トリガステップは前記トリガ信号を出力しない。
このように規定される第11Aの局面に規定の発明によれば、既述の第18の局面と同等の効果を奏する。
【0054】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 勾配変化量データ作成装置
2 地図データ保存部
3 勾配値保存部
4 対象リンク選択部
6 勾配変化量演算部
8 フラグ設定部
21 31 ナビゲーション装置
419 ナビゲーション情報保存部
420 座標比較部
421 トリガ部
422 車輌情報修正部
510 前方車輌検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データ保存部から勾配変化量データを作成するための対象リンクを選択する対象リンク選択部と、
前記対象リンクの一部又は全部の勾配値を座標と関連付けて保存する勾配値保存部と、
前記勾配値に基づいて前記勾配変化量を演算する勾配変化量演算部と、
前記勾配変化量の絶対値が所定閾値以上である座標にフラグを設定するフラグ設定部と、
を備える、ことを特徴とする勾配変化量データ作成装置。
【請求項2】
前記勾配変化量演算部は、前記勾配値を微分することにより前記勾配変化量を演算する、ことを特徴とする請求項1に記載の勾配変化量データ作成装置。
【請求項3】
前記フラグ設定部は、前記勾配変化量が正の値であるとき前記フラグとしての第1のフラグを設定する第1のフラグ設定部と、前記勾配変化量が負の値であるとき前記フラグとしての第2のフラグを設定する第2のフラグ設定部と、
を備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の勾配変化量データ作成装置。
【請求項4】
前記第1のフラグ設定部は、前記勾配変化量がゼロ値から正の値へ変化する第1−1の座標に前記第1のフラグとしての第1−1のフラグを設定し、前記第2のフラグ設定部は、前記勾配変化量がゼロ値から負の値へ変化する第2−1の座標に前記第2のフラグとしての第2−1のフラグを設定する、ことを特徴とする請求項3に記載の勾配変化量データ作成装置。
【請求項5】
前記第1のフラグ設定部は、前記勾配変化量が正の値からゼロ値へ変化する第1−2の座標に前記第1のフラグとしての第1−2のフラグを設定し、前記第2のフラグ設定部は、前記勾配変化量が負の値からゼロ値へ変化する第2−2の座標に前記第2のフラグとしての第2−2のフラグを設定する、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の勾配変化量データ作成装置。
【請求項6】
前記フラグは前記勾配変化量が関連付けられて設定される、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の勾配変化量データ作成装置。
【請求項7】
前記フラグは前記勾配値の計測間隔に関する計測ピッチ情報が関連付けられて設定される、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の勾配変化量データ作成装置。
【請求項8】
所定のルールに従い出発地から目的地までのルートを探索する探索部を備えるナビゲーション装置であって、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の勾配変化量データ作成装置で設定されたフラグを保存するフラグ保存部と、
自車輌の現在位置を特定する自車位置特定部と、
前記自車輌の車輌情報を検出する車輌情報検出部と、
前記自車位置特定部で特定された現在位置と、前記フラグ設定部で設定されたフラグの座標とを比較する座標比較部と、
前記車輌情報を修正する車輌情報修正部と、
前記比較の結果が所定条件を満たすとき、前記車輌情報修正部を作動させるためのトリガ信号を出力するトリガ部と、
を備える、ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項9】
前記車輌情報はヘッドライトに関する情報である、ことを特徴とする請求項8に記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
前記ヘッドライトに関する情報はヘッドライトのオンオフ情報及び/又は照射角度情報である、ことを特徴とする請求項9に記載のナビゲーション装置。
【請求項11】
前記自車輌の前方車輌を検出する前方車輌検出部、を備え、
前記検出の結果、前記前方車輌が検出されたとき前記トリガ部は前記トリガ信号を出力しない、
ことを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−112827(P2012−112827A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262613(P2010−262613)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(501271479)株式会社トヨタマップマスター (56)
【Fターム(参考)】