説明

包丁差し

【課題】従来の抜け防止策を施した包丁差しは、次のような問題があった。包丁を挿入後に包丁の顎上と挿入口とをずらすものは包丁の挿入が容易でも抜き取りが困難であったり、柄の部分にカバーを設置したものはカバーの出し入れに手間がかかったり、また挿入口の一部を覆ってロックするものは構造が複雑であったりした。
【解決手段】箱状本体の上面には、半円形の挿入部が形成されており、該挿入部には円周方向に固定挿入口が開口している。また挿入部の内部には半円形のロック部材が回動自在に設置されており、該ロック部材には固定挿入口と一致するところに固定挿入口と同一形状の移動挿入口が開口している。そして挿入部とロック部材には、包丁を収納後、ロック部材が回動しないロック機構が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクや調理台等の厨房家具の裏扉に取り付けるのに適した包丁差しに関する。
【背景技術】
【0002】
先ずはじめに、以降の包丁差しの説明に必要な包丁の各部の名称について簡単に説明をしておく。包丁は、一般に木製または樹脂の部分と金属の部分からなり、包丁を持つ木製または樹脂の部分が「柄」、金属の部分が「刀身」、刀身の刃の付いた部分が「刃先」、包丁の背の部分が「峰」、包丁の刀身を柄に入れる首の部分が「柄元」、刃先の柄元に近い部分が「顎」、刃先の先端部分が「切っ先」と称されている。顎から柄元までの部分、つまり切っ先の反対部分についての一般名称はないが、ここでは「顎上」と称し、また刀身の刃先から峰までの巾を「刀身巾」と称する。
【0003】
台所では包丁が必須のものであり、如何なる料理の時にも必ず包丁を使用する。そこで台所では包丁を取り出しやすいように、厨房家具であるシンクや調理台等の扉の裏に包丁差しを取り付けていた。かつての包丁差しは、水平となった面に包丁の刀身を通過させるが、柄の部分を通過させない挿入口が多数穿設されていただけのものであった。このかつての包丁差しは、包丁を取り出すときに包丁の柄の部分を持って上方に持ち上げるだけで簡単に取り出せるという簡易性のあるものであったため、長年にわたって用いられていた。しかしながら、このように包丁を簡単に取り出せることは、包丁の危険性を知らない幼児でも包丁を簡単に取り出せるものであり、幼児が包丁を取り出して怪我をするという危険性があった。そこで幼児が簡単に包丁を取り出せないような包丁差しが多数提案されるようになってきた。
【0004】
従来の抜け防止策を施した包丁差しは、差し込んだ包丁を回転させたり移動させたりして包丁の顎上を包丁挿入口からずらせることにより抜けにくくしたもの(特許文献1〜3)、包丁差しの挿入口上部の柄が位置する部分に移動可能なカバーを設置したもの(特許文献4、5)、包丁差しの挿入口の一部を塞いで包丁の抜け防止を図ったもの(特許文献6〜8)、等であった。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 実開平2−112236号公報
【特許文献2】 特開2006−255429号公報
【特許文献3】 特開2007−222476号公報
【特許文献4】 実開平5−48847号公報
【特許文献5】 特開2004−8675号公報
【特許文献6】 実開昭52−75548号公報
【特許文献7】 特開平10−192174号公報
【特許文献8】 特開平10−229947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで従来提案されてきた包丁差しは、下記のような問題があった。
【0008】
従来の顎上を挿入口からずらして包丁の抜けを防止する包丁差しは、包丁を包丁差しに差し込むときは、上方から見える挿入口に刀身を挿入するため、挿入が容易であるが、包丁差しから包丁を抜き取るときには、挿入口の裏側が見えないため、包丁の顎上を挿入口に合わせることが困難となるものであった。つまり、この包丁差しは、急いで包丁を取り出すときに慌てていると、顎上と挿入口がなかなか一致せず取り出しにくいものとなっていた。しかもこの包丁差しは、包丁を取り出すときに、顎上が挿入口の裏面に当たるため、長い間使っているうちに挿入口裏面近傍が欠けたり、ヒビ割れしたりすることがあった。さらに、この包丁差しは、幼児が包丁をいじっているうちに、顎上と挿入口が一致してしまうことがあり、包丁が抜け出てしまう虞のあるものでもあった。
【0009】
また従来の挿入口の上方に突出した柄の部分をカバーで覆う包丁差しは、包丁を取り出すときに一旦カバーを完全に外し、その後、使用した包丁を包丁差しに差し込んだときに、再度カバーを取り付けなければならないため、このカバー取り付けに手間のかかるものであった。この柄の部分をカバーで覆う包丁差しは、カバーが簡単にずれてしまうため、幼児がカバーに触っているうちに、カバーがずれて柄の部分が出てしまい、幼児が包丁を抜き取ることのできるものであった。
【0010】
そして包丁差しの挿入口の一部を塞いで包丁の抜け防止を図ったものは、挿入口の一部を塞ぐ部材をロックするため、幼児は簡単にロック機構を外せないという安全性の面では優れたものである。しかしながら従来の挿入口の一部を塞ぐ包丁差し、例えば特許文献6では、包丁を包丁差しに挿入後、本体の枠と抜け防止金具とを鍵で施錠しなければならないため、この施錠操作が面倒となり、施錠をしなくなってしまうことがあった。また特許文献7の包丁差しは、挿入口の一部を覆う係止部材が凹設部となっており、該係止部材をスライドさせる機構が複雑であるため、包丁差しの作製費用が高価となるものであった。さらに特許文献8の包丁差しはピニオンが形成された抜け止め部材とラックが係合していて、ラックを移動させることにより抜け止め部材が回動して挿入口の一部を塞ぐものであり、構造が大変に複雑になっているため、包丁差しの作製にやはり多大な手間がかかるばかりでなく、非常に高価となっていた。
【0011】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、ロック機構を有する包丁差しは幼児がいじっても、包丁が簡単に抜けないことから、ロック機構を簡単な構造にすれば安全性、経済性、生産性に優れた包丁差しとなることに着目して本発明を完成させた。
【0013】
本発明は、内部が空洞である箱状本体の上面に略半円形となった挿入部が形成されており、該挿入部には包丁の刀身を挿入できる固定挿入口が挿入部上側の円周に沿って挿入部の略頂上から挿入部の一方の下端まで開口しているとともに、挿入部にはガイド溝が挿入部上側の円周に沿って挿入部の略頂上から挿入部の他方の下端まで開口しており、また挿入部の裏側には係止部が形成されていて、さらにまた挿入部の内部には挿入部の内径よりも僅かに小径となった回動面を有するロック部材が回動自在に取り付けられており、該回動面にはロック部材の開放位置において前記固定挿入口と同一形状となる移動挿入口が開口していて、しかも回動面にはガイド溝内を移動する作動突起が形成されており、さらに回動面にはロック部材の閉位置において挿入部の係止部と係止できるストッパーが形成されていることを特徴とする包丁差しである。
【0014】
本発明でロック部材の開放位置とは、ロック部材を一方に回動させて挿入部の固定挿入口とロック部材の移動挿入口で形成される開口を最大に開けた位置であり、この状態で包丁の刀身を包丁差しに差し込むものである。また本発明でロック部材の閉位置とは、ロック部材を開放位置とは逆方向に回動させて挿入部の固定挿入口とロック部材の移動挿入口で形成される開口を最小とした位置であり、この状態にすると幼児が包丁差しに収納した包丁を取り出すことができない。つまり係止部とストッパーの係止は、ロック部材の回動を阻止するものであるが、開放位置においても係止部とストッパーを係止させるようにすると、固定挿入口と移動挿入口で形成される大きな開口を安定した状態にでき、包丁を包丁差しに挿入するときに必ず開口が全開していて、包丁を容易に収納できる。
【0015】
上記特徴を有する本発明の包丁差しの作用は次の通りである。先ず、作動突起を開放位置にして、挿入部の固定挿入口とロック部材の移動挿入口を一致させ、この挿入口の開口を最大にしておく。そしてこの挿入口から包丁の刀身を挿入後、ロック部材を回動させて閉位置にし、固定挿入口と移動挿入口で形成される挿入口を小さくする。すると包丁の顎上が固定挿入口の下部に引っ掛かって抜けなくなる。この状態になったときにロック部材は自動的にロック状態となり、幼児には簡単に包丁を取り出せなくなる。そして該ロック状態を解除するときは、作動突起を押しながら下方に下げて開放位置にするものである。
【0016】
また本発明の包丁差しから包丁を取り出すときには、作動突起を開放位置にすると固定挿入口と移動挿入口で形成される開口を大きくなるため、包丁の柄を持って上方に持ち上げ、横方に引くだけで包丁が簡単に取り出せるようになる。
【0017】
【発明の効果】
【0018】
上述したように本発明の包丁差しは、簡単な操作で包丁の抜けを防止するロックが完全に行えるばかりでなく、構造が簡単であるため作製が容易であるという従来の包丁差しに比べて安全性、経済性、生産性に優れたものである。
【0019】
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本発明包丁差しの分解斜視図
【図2】 本発明包丁差しの斜視図
【図3】 本発明包丁差しを裏側からみた斜視図
【図4】 包丁の挿入状態を説明する本発明包丁差しの斜視図
【図5】 図4の中央断面図
【図6】 図5のX部の拡大図
【図7】 図5のY部の拡大図
【図8】 本発明包丁差しの正面図
【図9】 同平面図
【図10】 同右側面図
【図11】 図10のA−A線断面図
【図12】 図10のB−B線の断面図
【図13】 ロック部材の正面図
【図14】 同左側面図
【図15】 同平面図
【図16】 同底面図
【図17】 図13の中央断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。ところで本発明の包丁差しは、包丁の挿入口が斜め横方に開口しており、句丁を斜め横方から挿入口に差し込むようになっている。つまり挿入口は利き腕方向、例えば右利きの人用には右方が開口している。本発明の実施例では、右利きの人用の包丁差しで説明し、図面で見た通り右と左で表現する。
【0022】
本発明の包丁差し1は、本体2とロック部材3から構成されている。本体2は内部が空洞となった箱状であり、本体2の上面4には、断面が略半円形状に突出した挿入部5が形成されている。挿入部5は、図8で明らかなように半円形の左側下端が平らな上面4から始まり、挿入部5の他端が半円形の途中までとなっていて、その先は半円形と接する直線状の傾斜面6となっている。傾斜面6は上面4の面位置よりも下方まで延びており、下部7が屈曲していて、下部7から上方に上がった面が柄載置面8となっている。そして柄載置面8は、上面4と連続している。
【0023】
実施例では、箱状本体の上面4を少し一方に傾斜させてあるが、これは上面に複数の挿入部が形成されている場合に使いやすくなるからである。即ち、該傾斜は包丁を右利きの人が使用するときには、図8に示すように右方が下がる傾斜にしておくと、右側にある挿入部の位置が下がるため、左側の挿入部に右方から包丁を挿入する場合、右側にある挿入部が挿入の邪魔とならなくなる。しかしながら、包丁挿入時に右側の挿入部が邪魔とならない場合は上面を傾斜させなくともよい。
【0024】
一つの挿入部5には、長手方向に平行して二箇所に固定挿入口9、9が開けられている。固定挿入口9、9は、挿入部5の半円形の円周に沿って挿入部の略頂上から傾斜面6の下部7まで開口している。該固定挿入口は、一般に家庭で使用する包丁のうち、刀身の厚さが最も厚い出刃包丁や刀身巾が広い和包丁でも容易に挿入できる幅と長さとなっている。実施例では、上面に挿入部を二箇所、一つの挿入部に固定挿入口を二箇所形成してあり、この包丁差しは計四本の包丁を収納できるものである。つまり本発明の包丁差しは、挿入部と挿入口を多数形成することにより、さらに多くの包丁を収納できるようになる。
【0025】
挿入部5の中央には、ガイド溝10が開けられている。該ガイド溝は、挿入部の半円形の円周に沿って前述固定挿入口とは反対方向、即ち挿入部5の頂上よりも少し右側となるところから挿入部の左側下端まで開口している。
【0026】
図11、12に示すように、挿入部5の裏面でガイド溝10の両側となるところには、挿入部5よりも厚さが厚くなった肉厚帯の係止部11が形成されている。この係止部11は、挿入部5の左下端から挿入部5の略頂上まで形成されている。
【0027】
本体2の表板12と裏板13には、挿入部5、5の側面の中心となるところに軸穴14、14が穿設されている。この挿入部の中心とは、挿入部内側の半円形の円の中心である。また、本体2の表板12と裏板13には複数のスリット15・・・が貫通して刻設されている。該スリットは、包丁差しに濡れた包丁を収納しても、スリットから風が流入して包丁の乾きを早くし、また包丁から蒸発する水分を外部に流出させて内部にカビを発生させないものである。
【0028】
表板12の両側適宜個所、実施例では二箇所に、上部が小径で下部がそれよりも大径となった瓢箪形のネジ穴16、16が穿設されている。また裏板13には、表板12のネジ穴16、16と同一個所に同一形状のネジ穴17、17が穿設されている。このように本体の表板と裏板の同一個所に同一形状のネジ穴を穿設しておけば、包丁差しを厨房家具の扉に取り付ける場合、表裏を逆にすることができるため、右利きの人用に取り付けられていたものを簡単に左利きの人用に取付状態を変えることができる。つまり、はじめに右利き用に適した取り付け状態、例えば実施例のように挿入口が右側に開口した状態で取り付けてあったものを、左利きの人用に簡単に変えられる。このときネジを緩めて包丁差しを少し上方に持ち上げて手前に引けば、包丁差しは簡単に厨房家具から外れるので包丁差しの表裏を変えて、ネジ穴の大径部分にネジの頭部を挿入し包丁差しを下げることにより、ネジがネジ穴の小径部分に位置する。そこで表側のネジ穴からドライバーを挿入してネジを締め付ければ、左利きに適した状態で包丁差しが厨房家具に取り付けられる
【0029】
また本体2の下部には、底板18が着脱自在に設置されている。該底板は複数の係止片19・・・を本体2の表板12と裏板13に形成された係止溝20・・・に嵌合することにより着脱が簡単にできるものである。このように底板を着脱自在に設置しておくと、食材が包丁に付着したまま収納され、それが落下したり飛び散ったりして該食材が包丁差しの内部を汚した場合でも、底板を外すことにより汚れた内部を容易に掃除ができるようになる。
【0030】
ロック部材3は、樹脂で形成されており、略半円形の外側が回動面21となっている。ロック部材3の半径は挿入部5の内側の半径よりも僅かに小さくなっており、またその巾も挿入部5の内側の巾よりも僅かに小さくなっている。従って、ロック部材3を本体2の挿入部3の内部に取り付けてロック部材3を回動させたとき、ロック部材3の回動面21や外側は本体2の挿入部5の裏側にほとんど接しないか、或いは接してもロック部材の回動の邪魔とならない状態で回動するようになっている。ロック部材3の両側には回動面21の中央から帯状の支持片22、22が垂れ下がった状態で一体形成されており、該支持片は、弾性を有しているものである。支持片22、22には、ロック部材3の円の中心となるところに軸部23が突出した状態で形成されている。該軸部が前述表板12と裏板13の軸穴14、14に嵌合してロック部材3が回動できるようになっている。
【0031】
ロック部材3の回動面21には、ロック部材3を本体2に取り付け後、ロック部材3を最左方に回動位置させた状態において、挿入部5の固定挿入口9、9と一致するところに移動挿入口24、24が開けられている。そして移動挿入口24、24の両側には円形の隔壁25・・・が形成されている。該隔壁は円形でなく半円形でもよいが、半円形よりも円形の方が面積が広くなるため、円形の隔壁は包丁を挿入するときに刀身を円滑にガイドすることができる。
【0032】
回動面21の略頂上から移動挿入口24とは反対側端部、即ち実施例では左下端までが舌状部26となっている。舌状部26の表側は回動面21の表側よりも少し小さな半径となっており、舌状部26の裏側も回動面21の裏側の半径よりも少し小さな半径となっている。即ち、舌状部26は回動面21から少し凹んだ状態となっているものである。図14〜16に示すように舌状部26の下部の略2/3のところには、回動面21との間に切り込み27、27がなされている。従って、この切り込みにより、樹脂で形成されている舌状部26は、下部が弾性を有することになり、舌状部が内方に押されても、元に復帰するようになっている。
【0033】
舌状部26の左下方で下端よりも少し上方となるところには、作動突起28が挿入部5よりも突出して形成されている。該作動突起は、舌状部26の弾性に抗して舌状部26を指で内方に押しながら移動させるものであるため、表面には滑り防止の凹凸が施されている。また舌状部26には、作動突起28よりも下方となるところに、突状のストッパー29が形成されている。該ストッパーの高さは、前述本体2の係止部11の厚さと略同一となっている。従って、ストッパー29が係止部11の上端部と下端部を越えたところに位置すると、挿入部5の係止部11と係止する。これがロック状態である。このロック状態は、幼児が包丁差しから包丁を容易に取り出させないために、ロック部材の閉位置においては必須であるが、ロック部材の開放位置においてもロック状態にしてもよい。
【0034】
次に上記構造の包丁差しの組み立てと、その作動状態について説明する。
【0035】
先ず、本体2の底板18を外し、ロック部材3を本体2の下部から挿入部5の内部に挿入する。このとき軸部23が形成された支持片22は、ロック部材5の回動面21から一体形成されて弾性を有しているため、軸部は軸穴に達するまで本体2の表板12と裏板13の内側に接して押されているが、軸部23が本体2の軸穴14に達すると、支持片22の弾性で軸部23が軸穴14に嵌合する。その後、ロック部材5は落下することなく安定した状態で回動するようになる。
【0036】
ロック部材3を本体2の所定の位置に取り付けると、作動突起28は、ガイド溝10から突出し、ガイド溝内を移動できるようになる。作動突起28を移動させると、ロック部材3は軸部23を中心にして回動する。この回動時、作動突起28がガイド溝10の上端、或いは下端に達するまでは、舌状部26に形成されたストッパー29はガイド溝の裏面両側に形成された肉厚帯の係止部11に押された状態となっている。
【0037】
そして作動突起28がガイド溝10の最下端に達すると、図5のY部の拡大図である図7のようにストッパー29は肉厚の係止部11の下部から外れ、弾性により係止部11の下端に係止する。この状態は、本体2の固定挿入口9と移動挿入口24が完全に一致して両者が大きな開口となり、ロック部材は例えロック部材が自重や何らかの衝撃で右方に回動しようとしても、ストッパーが係止部の下端に係止しているため、絶対に回動しないというロック状態となる。このロック状態を解くには、舌状部26の弾性に抗して作動突起28を押して舌状部を内方に押し、ストッパー29を係止部11から離すことにより行う。そして作動突起28を押したまま上方に移動させる。
【0038】
作動突起28をガイド溝10の最上端まで移動させると、図5のX部の拡大図である図6のようにストッパー29は肉厚の係止部11の上部から外れ、弾性により係止部11の上端に係止する。この状態は、本体2の固定挿入口9と移動挿入口24との一致が部分的となり、両者で形成される開口が最小となる。そしてロック部材3は例えロック部材が自重や何らかの衝撃で左方に回動しようとしても、ストッパーが係止部の上端に係止しているため、絶対に回動しないロック状態となる。
【0039】
続いて上記のように作動する本発明の包丁差しに包丁を収納する場合について説明する。先ず、作動突起28をガイド溝10の最下端にして、挿入部5の固定挿入口9とロック部材3の移動挿入口24で形成される開口を最大にしておく。その後、図4、5の右側のように調理で使い終わった包丁を最大に開いた開口に対して、斜め右方から挿入する。このときロック部材3の移動挿入口24の両側には隔壁25、25があるため、挿入される包丁の刀身はこれらの隔壁に導かれて、円滑に本体2内に入る。そして包丁の刀身が本体2内に入ると、包丁の柄の部分が固定挿入口9に当たって挿入が止まるので、そのまま包丁の自重で柄を柄載置面8まで下げる。このとき包丁は、柄が斜めとなった柄載置面8に沿って置かれた状態となる。
【0040】
その後、ガイド溝10の左最下端にあった作動突起28を押して係止部11の最下端とストッパー29とのロック状態を解き、作動突起28をガイド溝10に沿って上方に移動させる。すると図4、5の左側のように、係止部11に沿って移動したストッパー29が係止部11の上端部と係止し、ロック部材3の回動がロックされる。この状態では、固定挿入口9と移動挿入口24で形成される開口が最小となって包丁を抜けなくさせる。
【0041】
そして包丁を収納してロック状態にした包丁差しから包丁を取り出すときには、ガイド溝10の最上部に位置している作動突起28を押して、係止部11の上端とストッパー29のロック状態を解き、作動突起28をガイド溝10に沿って左下端まで移動させる。すると挿入部5の固定挿入口9とロック部材3の移動挿入口24が一致して開口が最大になるので、包丁を少し持ち上げながら右横方に引くことにより、包丁は容易に取り出せる。
【0042】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の実施例では、ロック部材の回動をロックする機構として、ガイド溝の両側に形成した肉厚帯の係止部と、係止部に係止する突状のストッパーを用いたが、包丁を包丁差しに収納後、ロック部材を簡単に回動できないようにするロック機構であれば如何なる形状のものでも採用できる。例えば、係止部として挿入部の裏面に穴を穿設し、そしてストッパーとして該穴に嵌合可能な柱状突起を形成してもよい。また実施例では、ストッパーを弾性のある舌状部に形成したが、ストッパー自体にバネを設置して係止部との係止や解除を行うようにしてもよい。
【0044】
【符号の説明】
【0045】
1 包丁差し
2 本体
3 ロック部材
4 本体の上面
5 挿入部
9 固定挿入口
10 ガイド溝
11 係止部
12 表板
13 裏板
14 軸穴
18 底板
21 回動面
22 支持片
23 軸部
24 移動挿入口
26 舌状部
28 作動突起
29 ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が空洞である箱状本体の上面に略半円形となった挿入部が形成されており、該挿入部には包丁の刀身を挿入できる固定挿入口が挿入部上側の円周に沿って挿入部の略頂上から挿入部の一方の下端まで開口しているとともに、挿入部にはガイド溝が挿入部上側の円周に沿って挿入部の略頂上から挿入部の他方の下端まで開口しており、また挿入部の裏側には係止部が形成されていて、さらにまた挿入部の内部には挿入部の内径よりも僅かに小径となった回動面を有するロック部材が回動自在に取り付けられており、該回動面にはロック部材の開放位置において前記固定挿入口と同一形状となる移動挿入口が開口していて、しかも回動面にはガイド溝内を移動する作動突起が形成されており、さらに回動面にはロック部材の閉位置において挿入部の係止部と係止できるストッパーが形成されていることを特徴とする包丁差し。
【請求項2】
前記挿入部の裏側に形成された係止部は、挿入部の略頂上から突出部の下端まで肉厚にした肉厚帯であることを特徴とする請求項1記載の包丁差し。
【請求項3】
前記ストッパーは、係止部と係止できる突状物であることを特徴とする請求項1記載の包丁差し。
【請求項4】
前記回動面には、弾性を有する舌状部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の包丁差し。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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