包括固定化担体の減容方法、包括固定化担体、水質浄化方法及び包括固定化担体の製造装置
【課題】担体内に保持した微生物の活性を低下させることなく、均一な担体形状を維持しながら担体を効果的に減容する。
【解決手段】微生物を固定化材料の内部に包括固定した包括固定化担体の減容方法であって、包括固定化担体の表面温度が10〜40℃となるように送風乾燥することにより減容する工程を備える。
【解決手段】微生物を固定化材料の内部に包括固定した包括固定化担体の減容方法であって、包括固定化担体の表面温度が10〜40℃となるように送風乾燥することにより減容する工程を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括固定化担体の減容方法、包括固定化担体、水質浄化方法及び包括固定化担体の製造装置に係り、特に、観賞魚等の飼育水の水質を浄化する含水ゲルの微生物包括固定化担体を減容する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
廃水処理に用いられる活性汚泥に含まれる硝化細菌は、一般の細菌に比べて増殖速度が遅く、特に冬場の低水温時期には細菌数が少なくなるため、硝化活性が著しく低下する。この現象は、硝化細菌と同様の性質を有する微生物にもみられるものである。このため、硝化細菌を含む活性汚泥をスポンジやプラスチック等の付着材の表面に付着させて硝化細菌を高濃度化し、廃水の硝化性能を改善している(参考文献:微生物固定化法による水処理 担体固定化法・包括固定化法・生物活性炭法(株)エヌ・ティー・エス 2000年発行)。しかしながら、微生物が付着材から剥離したり、目的の微生物である硝化細菌と異なる微生物が担体に付着したりし、硝化細菌を十分に高濃度化することができなかった。
【0003】
このため、硝化細菌等の有用微生物を固定化材料内に包括固定する包括固定化担体が提案されている。この包括固定化担体を処理槽に充填して硝化細菌を高濃度にすることで、硝化活性を向上させて高速で廃水を処理している(例えば、特許文献1)。この包括固定化担体は、活性汚泥を高分子化合物等の固定化材料と混合して原料液を調製し、この原料液を重合開始剤で重合してゲル化することにより製造している。製造した包括固定化担体は、若干の水とともに袋やケースに詰めて保管及び運搬し、廃水処理設備のある場所において袋やケースから取り出し、処理槽に投入して使用している。
【0004】
ところで、包括固定化担体の表面には、固定化材料の未重合物質が付着していることがある。このため、担体を乾燥させると担体表面の未重合物質がべたつき、担体同士が接着して団子状の塊となり易い。このような団子状の塊が生じると、処理槽内において廃水と接触させても塊が崩れにくく、本来の性能を発揮できないこととなる。このため、包括固定化担体を保管や運搬する場合、ケースや袋に包括固定化担体と水を投入して直接的に担体同士が接触しないようにしている。
【0005】
このように、包括固定化担体を、袋やケース内の水に浸漬して保管及び運搬すると、容量や重量が増すことから、保管や運搬の手間やコストがかかることが問題であった。このため、袋やケースに水を入れなくても塊を生じることなく、保管及び運搬できる方法が望まれている。また、包括固定化担体の含水率は、通常80〜95%程度と高く、脱水させることにより包括固定化担体のサイズをより小さくする(減容する)ことが求められている。
【0006】
これに対して、例えば、本願出願人は、包括固定化担体を加熱した温水中に投入し、包括固定化担体の含水ゲルを収縮させることで担体を減容する方法を提案している(特許文献2)。
【特許文献1】特許第3422229号
【特許文献2】特開2004−298701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2では、例えば、担体を加熱した温水に浸漬することにより担体の含水ゲルを熱収縮させるため、担体の減容量は含水ゲルの収縮分のみであり、大幅な減容効果は得られなかった。
【0008】
また、担体を比較的高温で加熱すると、急速な乾燥により担体形状が崩れやすいだけでなく、担体内に保持させた微生物が熱によるダメージを受け易く、微生物の活性を低下させる虞があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、担体内に保持した微生物の活性を低下させることなく、均一な担体形状を維持しながら担体を効果的に減容できる包括固定化担体の減容方法、包括固定化担体、水質浄化方法及び包括固定化担体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、微生物を固定化材料の内部に包括固定した包括固定化担体の減容方法であって、前記包括固定化担体の表面温度が10〜40℃となるように送風乾燥することにより減容する工程を備えたことを特徴とする包括固定化担体の減容方法を提供する。
【0011】
請求項1によれば、包括固定化担体を10〜40℃で送風乾燥するので、担体内に保持した微生物に熱によるダメージを与えることなく、包括固定化担体全体を均一に且つ緩やかに乾燥する(含水率を低下させる)ことができる。これにより、担体内に保持した微生物の活性を低下させることなく、均一な担体形状を維持しながら担体を減容できる。すなわち、担体の表面温度が10℃未満となるように送風乾燥すると、低温になりすぎることで微生物の活性が低下し、40℃を超えるように送風乾燥すると、熱によるダメージを受けて微生物の活性が低下するため、いずれも好ましくない。したがって、担体表面の温度が10〜40℃、好ましくは20〜30℃となるように送風乾燥する必要がある。微生物としては、特に限定はしないが、廃水処理で主に用いられる中温細菌が挙げられ、中でも、熱によるダメージを受け易い微生物、例えば、アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌、有機物分解菌、脱窒細菌等が挙げられる。
【0012】
また、乾燥時間は12〜24時間が好ましい。なお、湿度を低くして送風乾燥することで乾燥時間を短縮することもできる。
【0013】
請求項2は請求項1において、前記包括固定化担体の含水率が1〜5%となるまで送風乾燥することを特徴とする。
【0014】
請求項2によれば、包括固定化担体の含水率が1〜5%となるまで送風乾燥するので、担体内の微生物を生存させるために必要な水分を確保しつつ、担体の表面を未重合物質によるベタツキが発生しない程度まで乾燥することができる。また、含水率を1〜5%まで送風乾燥させることで、送風乾燥前の含水時の体積の約1/10まで大幅に減容できる。
【0015】
なお、含水率は、105℃で6時間乾燥させたときの担体重量を含水率0%とし、これに対する担体重量の比から求めることができる。例えば、含水率0%のときの担体重量が30mgであり、含水時の担体重量が33mgである場合、このときの担体の含水率は((33−30)mg/33mg)×100=9%となる。
【0016】
請求項3は請求項1又は2において、前記送風乾燥する前の包括固定化担体の比表面積は1200〜6000m2/m3であることを特徴とする。
【0017】
比表面積が小さすぎると、乾燥風との接触面積が少ないため乾燥させにくく、担体の表面の未重合物質によるべたつきを生じ易くなる。一方、比表面積が大きすぎると、乾燥風との接触面積が多く、急激に乾燥されることで担体の形状が崩れ易くなる。請求項3によれば、包括固定化担体の比表面積を1200〜6000m2/m3とするので、上記のような不具合を生じることなく、担体の形状を維持しながら、短時間で乾燥することができる。
【0018】
請求項4は請求項1〜3の何れか1項において、前記固定化材料は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとよりなるポリマのアクリレート又はジアクリレート誘導体であるとともに、前記アクリレート又はジアクリレート誘導体の分子量が1000〜10000であることを特徴とする。
【0019】
アクリルアミド等の低分子材料では含水ゲル中の水分が送風乾燥により抜け易く、分子量が10000より大きいと乾燥され難く上記含水率に調整することが困難となる。請求項4によれば、固定化材料は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとよりなるポリマのアクリレート又はジアクリレート誘導体であるとともに、前記アクリレート又はジアクリレート誘導体の分子量が1000〜10000であるものを使用するので、乾燥により担体の形状が崩れるのを抑制し、且つ適正な含水率の範囲に調整し易くすることができる。
【0020】
請求項5は請求項1〜4の何れか1項において、前記微生物は、前記送風乾燥する前の包括固定化担体において105cells/mL以上含まれることを特徴とする。
【0021】
請求項5によれば、105cells/mL以上と多めに微生物を固定化するので、含水率が低下したことにより活性が若干低下し易くなった場合でも、廃水の処理効率が著しく低下するのを抑制できる。
【0022】
本発明の請求項6は前記目的を達成するために、微生物を固定化材料の内部に包括固定した包括固定化担体であって、請求項1〜5の何れか1項に記載の包括固定化担体の減容方法により減容されたことを特徴とする包括固定化担体を提供する。
【0023】
請求項6によれば、微生物活性の低下がなく、均一な形状を有する減容担体を得ることができる。
【0024】
本発明の請求項7は前記目的を達成するために、請求項6の包括固定化担体を水中に浸漬して膨潤させた後、水質浄化に使用することを特徴とする水質浄化方法を提供する。
【0025】
請求項7によれば、減容させた包括固定化担体を水中に浸漬することにより、乾燥前の含水ゲルの状態に戻すことができ、例えば、観賞魚等の飼育水や河川・湖沼水、工業廃水等の水質浄化に利用することができる。
【0026】
本発明の請求項8は前記目的を達成するために、微生物を固定化材料の内部に包括固定した包括固定化担体の製造装置であって、前記微生物と固定化材料の混合物を調製する調製部と、前記調製した混合物を重合させることで成形する成形部と、前記成形体を所定の大きさに切断することで包括固定化担体とする切断部と、前記包括固定化担体に対して所定温度で送風乾燥するための送風乾燥部と、を備えたことを特徴とする包括固定化担体の製造装置を提供する。
【0027】
請求項9は請求項8において、前記送風乾燥部は、前記包括固定化担体の表面温度を測定する測定手段と、前記測定手段の結果に基づいて、前記送風温度を調節する温度調節手段と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
請求項9によれば、測定手段の測定結果に基づいて、送風温度を調節する温度調節手段を備えるので、担体表面の温度が所定の範囲となるように、送風温度を正確に制御できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、担体内に保持した微生物の活性を低下させることなく、均一な担体形状を維持しながら担体を効果的に減容できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図面に従って、本発明に係る包括固定化担体の減容方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0031】
図1は、本発明が適用される担体の製造工程から使用工程までの流れについて説明するブロック図である。
【0032】
図1に示すように、製造工程12において製造した包括固定化担体を、減容工程14において減容し、保管・運搬工程16において使用する場所まで運搬した後、戻し工程18において、包括固定化担体を水に浸漬して元のサイズに戻して、生物処理工程19において水質浄化に使用する。
【0033】
製造工程12では、図2に示すように、先ず、活性汚泥等の微生物と固定化材料を混合してよく攪拌し、原料溶液を調製する。そして、過硫酸カリウム等の重合開始剤を原料溶液に添加し、重合させる。このとき、重合温度は15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。重合時間は1〜60分が好ましく、1.5〜60分がより好ましい。その後、重合させてゲル化した担体を、例えば、約3mm角の角型形状に切断することで、包括固定化担体を得ることができる。
【0034】
包括固定化担体(以下、単に「担体」ともいう)のサイズは、後述する減容工程14において担体表面に均一に送風できるように、比表面積が1200〜6000m2/m3となるように設定されることが好ましい。また、送風乾燥により担体の含水率が低下するため、担体内の微生物の活性が低下しても高効率な処理ができるように、高濃度の微生物を固定化することが好ましく、例えば、105cells/mL以上とすることができる。
【0035】
微生物としては、活性汚泥に限定されるものではなく、純粋培養した微生物を使用してもよい。微生物の種類としては、例えばBOD成分酸化細菌、ダイオキシン分解菌、ビスフェノールA分解菌、アオコ分解菌、硝化細菌、脱窒細菌,嫌気性アンモニア酸化細菌等が挙げられる。特に、本発明は、熱によるダメージを受け易い微生物に対して好適であり、例えば、アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌、有機物分解菌、脱窒細菌等が挙げられる。
【0036】
固定化材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール系、ポリビニルアルコール系のポリマ等が使用され、具体的には、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの含有比が7:3であり、末端基がジアクリレートである分子量1000〜10000のプレポリマを使用できる。このほか、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールメタアクリレート等を使用することもできる。
【0037】
成形方法としては、特に限定されるものではなく、ブロック成形法、シート成形法、チューブ成形法、滴下造粒法等を採用することができる。
【0038】
減容工程14では、製造工程12において製造した担体を、所定温度で送風乾燥することによって減容する。
【0039】
このとき、担体内の微生物が熱により失活しない温度で乾燥させることが重要である。すなわち、送風温度が10℃未満になると、低温になりすぎて微生物の活性が低下し、40℃を超えると熱によるダメージを受けて微生物の活性が低下し、いずれも好ましくない。このため、担体の表面温度が10〜40℃、好ましくは20〜30℃となるように送風温度を設定する。
【0040】
また、乾燥速度が大きすぎると担体の形状が崩れ易いため、緩やかに乾燥する(乾燥速度を小さくする)ことも重要である。乾燥時間は、特に限定しないが、例えば12〜24時間とすることが好ましい。なお、乾燥時間を短縮する観点で、除湿した乾燥風を包括固定化担体に供給することもできる。
【0041】
減容工程14では、担体内の微生物を生存させるために必要な水分を確保しながらも、担体の表面を未重合物質によるベタツキが発生しない程度まで乾燥する必要がある。すなわち、含水率が1%未満であると微生物にとって必要な水分が不足し、微生物の活性が低下しやすく、含水率が5%を超えると乾燥後の担体表面がベタついて塊となり、水中に浸漬しても塊が崩壊せず微生物の活性が低下する。したがって、担体の含水率が1〜5%となるまで送風乾燥することが好ましく、3〜5%となるまで送風乾燥することがより好ましい。
【0042】
なお、含水率は、105℃で6時間乾燥させたときの担体重量を含水率0%とし、これに対する担体重量の比から求めることができる。
【0043】
保管・運搬工程16では、減容工程14において減容及び乾燥させた担体を、そのまま袋やケース等の収納容器に詰め込み、運搬する。そして、運搬した担体を収納容器から取り出し、廃水処理設備の生物処理槽に投入することで、戻し工程18を行う。
【0044】
戻し工程18では、担体を水に所定時間浸漬することによって、担体を減容前の形状(体積)に戻す。担体を水に浸漬する時間は、担体の乾燥状態や使用されている材料によって異なるが、約12〜24時間とすることが好ましい。また、生物処理槽とは別の水槽に水を貯留しておき、この水に担体を浸漬して戻し工程を行うようにしてもよい。戻し工程18の後、生物処理槽に原水を投入することにより、生物処理工程19を行うことができる。
【0045】
このように、保管・運搬工程においては、従来はケース内に水を投入し、担体を水に浸漬して保管していたため、嵩容積及び重量がともに大きくなりハンドリングが良好でなかった。また、保管温度が高い場合には、収納容器内の水が腐敗し易く悪臭を放つこともあった。この悪臭は、水中へ担体から有機物の溶出や付着有機物が溶出し、微生物が繁殖して腐敗することによるものであった。
【0046】
本発明によれば、減容工程14において、担体内に保持した微生物の活性を低下させることなく、均一な担体形状を維持しながら担体を乾燥させて減容することができる。このため、袋やケースに水を入れる必要はなく、担体を乾燥状態で且つコンパクトに保管及び運搬することができる。これにより、保管及び運搬時のハンドリングを大幅に向上できるとともに、悪臭も防止することができる。
【0047】
次に、本発明に係る包括固定化担体の減容方法を実施するための装置構成について説明する。
【0048】
図3は、本発明に係る担体の製造装置20の構成を示す概略図である。担体の製造装置20は、主に、原料調製部22、成形部24、切断部26、及び送風乾燥部28より構成されている。
【0049】
原料調製部22は、主に、原料が貯留された原料槽32と、固定化材料溶液や重合開始剤等の薬品が貯留された薬品槽34、36と、原料と薬品を混合する攪拌・押出装置38と、を備えている。また、ポンプ40、42、44は、原料槽32の原料、薬品槽34の薬品、薬品槽36の薬品を、攪拌・押出装置38に導入する駆動手段として、それぞれ設けられている。これにより、包括固定化担体を製造する原料となる混合液を、攪拌・押出装置38において混合し、成型枠46へ押し出すことができる。
【0050】
成形部24は、主に、混合液を重合して成形体48を製造する成型枠46と、成型枠46を搬送する移動ステージ50と、を備えている。また、成型枠46には温度調節手段52が設けられており、重合温度を調節できるように構成されている。
【0051】
切断部26は、主に、成形体48を固定する固定ステージ54と、該固定ステージ54内の一端側に設けられ、搬送機構56により可動する押出板58と、を備えている。また、固定ステージ54の他端側には、格子状切断刃60A及び回転状切断刃60Bが設けられている。これにより、固定ステージ54内にセットされた成形体48は、搬送機構56により所定の速度で押し出されながら格子状切断刃60Aにより格子状に切断された後、回転状切断刃60Bにより約3mm角の立方体状に切断される。切断された担体62は、更に下流側に設けられた送風乾燥部28に導入される。
【0052】
図4は、図3の送風乾燥部28の構成の一例を詳細に説明する説明図である。
【0053】
送風乾燥部28は、担体62を収納するパレット64と、該パレット64の下部に設けられ、パレット64の底面から乾燥風を供給する送風手段66と、を備えている。
【0054】
パレット64には、底面に乾燥風を取り込むための複数の孔64Aが形成されている。また、パレット64には攪拌機68が設けられており、パレット64内の担体を攪拌できるようになっている。
【0055】
また、パレット64内には、担体62の表面温度を測定するための温度計70(温度測定手段)が設けられている。送風手段66には、温度計70での測定結果に基づいて、一定の送風温度に調節するための温調器72(温度調節手段)が設けられている。なお、図4に示すように、必要に応じて送風温度を測定する温度計71も備えてもよい。
【0056】
これにより、パレット64内の担体62の表面温度をセンシングしながら、担体の温度が所定の範囲(10〜40℃)となるように送風乾燥することができる。なお、送風温度と担体の表面温度がほぼ同じである場合は、送風温度をセンシングしながら同様の制御を行ってもよい。
【0057】
このように、送風手段66から所定温度に設定された乾燥風がパレット64の底面の孔64Aから上向流となって供給される。さらに、担体62を攪拌機68により攪拌しながら乾燥風を供給することにより、処理する担体量が多くなったときでもデットスペースを少なくし、均一に送風乾燥することができる。
【0058】
以上のようにして減容させた担体62を、例えば、図5に示すような廃水処理装置80に適用できる。図5は、本発明の方法で減容させた担体の適用例を示す模式図である。なお、同図では、生物処理槽82(曝気槽)内に硝化細菌を固定化した担体62を投入し、硝化反応を行う例を示している。
【0059】
生物処理槽82には、原水を導入する導入配管84と、処理水を排出する排出配管86とが設けられるとともに、生物処理槽82内には、担体62が流出するのを抑制するためのスクリーン88、及び生物処理槽82内にエアを供給する散気管90が設けられている。
【0060】
これにより、減容した担体62は、生物処理槽82内でほぼ減容前の形状に戻るとともに、減容させる前と同等の硝化活性を有する。すなわち、担体62は、10〜40℃で送風乾燥されているため、微生物の活性を減容前後で同等レベルに維持することができ、特に、熱によるダメージを受け易い亜硝酸酸化細菌の活性が著しく低下するのを抑制できる。これにより、原水中に亜硝酸イオンが分解されずに蓄積されるのを抑制できる。
【0061】
なお、担体の製造装置20(送風乾燥部28も含む)の構成は、上記実施形態に限られることはない。
【0062】
以上、本発明に係る包括固定化担体の減容方法の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0063】
たとえば、上記各実施形態では、本発明の方法で減容させた担体を廃水処理工程に適用する例を示したが、これに限定されず、観賞魚用水槽やその浄化用装置に投入して水質浄化に適用することもできる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明に係る実施例を説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。(1)担体の表面温度(送風温度)と硝化活性、(2)担体含水率と硝化活性、(3)担体の比表面積と乾燥速度、(4)固定化材料の分子量と乾燥速度、(5)微生物濃度と硝化活性、(6)本発明と従来品の廃水処理性能、の関係について検討した。この結果を図6〜図11に示す。
【0065】
なお、各実施例では、表1の担体組成を有する担体を使用した。また、(5)の検討以外では、担体内に固定する微生物濃度は、アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌ともに105cells/ml以上となるようにした。担体の減容は、図4の送風乾燥部28により送風乾燥することにより行った。
【0066】
【表1】
【0067】
(1)担体の表面温度(送風温度)と硝化活性
ポリエチレングリコールジメタアクリレートを主原料とし、担体を3mm角状に成形した。送風温度は、担体の表面温度が5〜45℃となるように設定し、24時間乾燥させ、乾燥させた担体を水に24時間浸漬して含水させた。そして、含水させた担体を用いて、NH4−N40mg/Lの原水をHRT3時間、担体添加率10%の条件で20日間連続運転し、硝化活性を測定した。
【0068】
硝化活性は、下記式を用いて、処理水中のNO3−N(硝酸性窒素)生成量による硝化速度から求めた。
【0069】
硝化率(%)={(処理水NO3−N)/(原水NH4−N)}×100
各担体の硝化活性は、担体62の表面温度が25℃となるように送風温度を設定し、送風乾燥したときの硝化活性を100とした相対値で示した。この結果を図6に示す。
【0070】
担体の表面温度が10℃未満となるように送風温度を設定すると、処理水中にアンモニアが残存しており、硝化活性は低かった。一方、担体の表面温度が40℃よりも高くなるように送風温度を設定すると、処理水中にNO2−N(亜硝酸性窒素)が残存し、NO3−N(硝酸性窒素)まで反応が進行せず硝化活性が低いことがわかった。
【0071】
これは、以下のような理由によると考えられる。担体の表面温度が10℃未満となるように送風温度を設定すると、低温になり過ぎることでアンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌ともに活性が低下し、原水中のアンモニウムイオンが減少しにくくなる。一方、担体の表面温度が40℃を超えるように送風温度を設定すると、特に熱によるダメージを受け易い亜硝酸酸化細菌の活性が著しく低下し、アンモニウムイオンは硝酸イオンまで転換できず、亜硝酸イオンの状態で残存するためであると推察される。この亜硝酸イオンは、水中に蓄積されると、例えば、観賞魚用の飼育水を浄化する場合などは、観賞魚にとって毒性が強くなるため好ましくない。
【0072】
このように、担体中の微生物は送風温度による影響を受けやすく、担体の表面温度が10〜40℃となるように送風温度を設定する必要があることがわかった。
【0073】
(2)担体の含水率と硝化活性
3mm角状に成形した担体62を、担体の表面温度が25℃となるように送風温度を設定し、送風乾燥させた。このとき、乾燥時間を変えることにより異なる含水率の担体を用意し、それぞれの担体について含水率を測定した。含水率の測定方法としては、前述したように、105℃で6時間乾燥させたときの担体の重量を含水率0%とし、この重量に対する担体の重量の比から求めた。そして、各担体を水に24時間浸漬して含水させた後、NH4−N40mg/Lの原水をHRT3時間、担体添加率10%の条件で20日間連続運転し、そのときの硝化活性を測定した。この結果を図7に示す。
【0074】
各条件の硝化活性は、乾燥後の含水率が5%である担体の硝化活性を100とした相対値として示した。担体の含水率が1%未満であると、急激に硝化活性が低下し、乾燥時にアンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌(これらは、硝化細菌ともいう)がダメージを受けたことが推察される。一方、担体の含水率が5%を越えると、乾燥後の担体表面がベタついて塊となり、水中に浸漬しても塊が崩壊せず硝化活性が低下した。
【0075】
したがって、乾燥後の適切な含水率は1〜5%であることがわかった。また、このときの担体サイズは乾燥前の約1/10であり、減容効果が高いことを確認した。
【0076】
(3)担体の比表面積と乾燥速度
本発明では、担体を送風乾燥することにより減容するため、担体の比表面積によって乾燥速度が異なる。そこで、担体の比表面積と乾燥速度について検討した。
【0077】
含水時の包括固定化担体の形状を0.5〜8mm角の範囲で変えることで、比表面積(担体サイズ)の異なる担体を用意した。そして、それぞれの担体について、担体の表面温度が25℃となる送風温度に設定し、24時間送風乾燥させたときの含水率を測定した。この結果を図8に示す。
【0078】
担体の比表面積が大きくなるほど乾燥しやすくなるが、その反面、乾燥速度が大きいため担体形状が崩れやすくなった。また、比表面積が小さすぎると、乾燥風との接触面積が少ないため乾燥させにくく、担体表面が未重合物質によりベタツキを生じ易くなることがわかった。
【0079】
したがって、前述した含水率の範囲(1〜5%)とするには、乾燥前(含水時)の包括固定化担体の比表面積を1200〜6000m2/m3とするのが好ましいことがわかった。
【0080】
(4)固定化材料のモノマー分子量と含水率
ポリエチレングリコールジメタクリレート(固定化材料)の分子量の異なる包括固定化担体を製造した。次いで、各担体について、担体の表面温度が25℃となる送風温度に設定し、24時間送風乾燥させた後の含水率を測定した。この結果を図9に示す。
【0081】
モノマーの分子量が高いほど乾燥後の含水率は高くなり、モノマー分子量が低いほど乾燥後の含水率は低くなることがわかった。これにより、分子量が高いものほど乾燥しにくく、低いものほど乾燥し易いことがわかった。
【0082】
したがって、前述した含水率の範囲(1〜5%)とするには、固定化材料の分子量を1000〜10000とするのが好ましいことがわかった。
【0083】
(5)担体中の微生物濃度と微生物の活性
担体中の微生物濃度(アンモニア酸化細菌濃度)を変化させて、硝化活性に及ぼす影響について検討した。微生物濃度の異なる担体を用意し、それぞれ担体の表面温度が25℃となるように送風温度を設定し、24時間送風乾燥させた後、担体を水に24時間浸漬して含水させた。この含水させた担体を用いてNH4−N40mg/Lの原水をHRT3時間、担体添加率10%の条件で20日間連続運転し、このときの硝化活性を測定した。この結果を図10に示す。
【0084】
各条件における担体の硝化活性は、微生物濃度を106cells/mlとしたときを100とし、これに対する相対値として表した。図10に示すように、担体中の微生物濃度が105cells/ml未満であると硝化活性は低下するが、105cells/ml以上では、106cells/mlのときと同等の硝化活性が得られた。
【0085】
したがって、担体中の微生物濃度は105cells/ml以上が好ましいことがわかった。
【0086】
(6)本発明と従来品の廃水処理性能
本発明の減容方法により送風乾燥した担体(実施例)と、従来の方法により熱乾燥した担体(比較例)、及び従来の乾燥前(含水時)の担体(参考例)の3種類の担体を用意した。実施例の担体は、担体の表面温度が25℃となるように送風温度を設定し、24時間送風乾燥させた。また、比較例の担体は、105℃、2時間で熱乾燥させた。なお、実施例、比較例については、いずれも乾燥後の含水率が2%となるようにした。そして、NH4−N40mg/Lの原水をHRT3時間、担体添加率10%の条件で曝気して連続運転したときの水質の経日変化を測定した。この結果を図11に示す。
【0087】
本発明を適用した実施例の担体は、従来の含水時の担体(参考例)とほぼ同様の傾向を示し、処理水中のNH4−Nが1mg/L以下となるまで18日間を要した。これに対して、熱乾燥させた比較例の担体は、30日後においてもNH4−Nが15mg/Lが残存することがわかった。これは、比較例の担体は、微生物が熱によるダメージを受けて失活したためであると考えられる。
【0088】
以上より、本発明の減容方法により減容した担体は、担体内に保持した微生物が減容によるダメージを受けることがなく、高い活性を維持できることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明が適用される担体の製造工程から生物処理工程までの流れについて説明するブロック図である。
【図2】包括固定化担体の製造方法を説明する説明図である。
【図3】本発明に係る担体の製造装置の概略構成を示す図である。
【図4】図3の送風乾燥部の構成を詳細に説明する説明図である。
【図5】本発明の方法で減容させた担体の適用例を示す模式図である。
【図6】本実施例における結果を示すグラフ図である。
【図7】本実施例における結果を示すグラフ図である。
【図8】本実施例における結果を示すグラフ図である。
【図9】本実施例における結果を示すグラフ図である。
【図10】本実施例における結果を示すグラフ図である。
【図11】本実施例における結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0090】
12…製造工程、14…減容工程、16…保管・運搬工程、18…戻し工程、19…生物処理工程、20…担体の製造装置、22…原料調製部、24…成形部、26…切断部、28…送風乾燥部、62…担体、64…パレット、66…送風手段、64A…孔、68…攪拌機、70…温度計、72…温調器、80…廃水処理装置、82…生物処理槽
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括固定化担体の減容方法、包括固定化担体、水質浄化方法及び包括固定化担体の製造装置に係り、特に、観賞魚等の飼育水の水質を浄化する含水ゲルの微生物包括固定化担体を減容する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
廃水処理に用いられる活性汚泥に含まれる硝化細菌は、一般の細菌に比べて増殖速度が遅く、特に冬場の低水温時期には細菌数が少なくなるため、硝化活性が著しく低下する。この現象は、硝化細菌と同様の性質を有する微生物にもみられるものである。このため、硝化細菌を含む活性汚泥をスポンジやプラスチック等の付着材の表面に付着させて硝化細菌を高濃度化し、廃水の硝化性能を改善している(参考文献:微生物固定化法による水処理 担体固定化法・包括固定化法・生物活性炭法(株)エヌ・ティー・エス 2000年発行)。しかしながら、微生物が付着材から剥離したり、目的の微生物である硝化細菌と異なる微生物が担体に付着したりし、硝化細菌を十分に高濃度化することができなかった。
【0003】
このため、硝化細菌等の有用微生物を固定化材料内に包括固定する包括固定化担体が提案されている。この包括固定化担体を処理槽に充填して硝化細菌を高濃度にすることで、硝化活性を向上させて高速で廃水を処理している(例えば、特許文献1)。この包括固定化担体は、活性汚泥を高分子化合物等の固定化材料と混合して原料液を調製し、この原料液を重合開始剤で重合してゲル化することにより製造している。製造した包括固定化担体は、若干の水とともに袋やケースに詰めて保管及び運搬し、廃水処理設備のある場所において袋やケースから取り出し、処理槽に投入して使用している。
【0004】
ところで、包括固定化担体の表面には、固定化材料の未重合物質が付着していることがある。このため、担体を乾燥させると担体表面の未重合物質がべたつき、担体同士が接着して団子状の塊となり易い。このような団子状の塊が生じると、処理槽内において廃水と接触させても塊が崩れにくく、本来の性能を発揮できないこととなる。このため、包括固定化担体を保管や運搬する場合、ケースや袋に包括固定化担体と水を投入して直接的に担体同士が接触しないようにしている。
【0005】
このように、包括固定化担体を、袋やケース内の水に浸漬して保管及び運搬すると、容量や重量が増すことから、保管や運搬の手間やコストがかかることが問題であった。このため、袋やケースに水を入れなくても塊を生じることなく、保管及び運搬できる方法が望まれている。また、包括固定化担体の含水率は、通常80〜95%程度と高く、脱水させることにより包括固定化担体のサイズをより小さくする(減容する)ことが求められている。
【0006】
これに対して、例えば、本願出願人は、包括固定化担体を加熱した温水中に投入し、包括固定化担体の含水ゲルを収縮させることで担体を減容する方法を提案している(特許文献2)。
【特許文献1】特許第3422229号
【特許文献2】特開2004−298701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2では、例えば、担体を加熱した温水に浸漬することにより担体の含水ゲルを熱収縮させるため、担体の減容量は含水ゲルの収縮分のみであり、大幅な減容効果は得られなかった。
【0008】
また、担体を比較的高温で加熱すると、急速な乾燥により担体形状が崩れやすいだけでなく、担体内に保持させた微生物が熱によるダメージを受け易く、微生物の活性を低下させる虞があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、担体内に保持した微生物の活性を低下させることなく、均一な担体形状を維持しながら担体を効果的に減容できる包括固定化担体の減容方法、包括固定化担体、水質浄化方法及び包括固定化担体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、微生物を固定化材料の内部に包括固定した包括固定化担体の減容方法であって、前記包括固定化担体の表面温度が10〜40℃となるように送風乾燥することにより減容する工程を備えたことを特徴とする包括固定化担体の減容方法を提供する。
【0011】
請求項1によれば、包括固定化担体を10〜40℃で送風乾燥するので、担体内に保持した微生物に熱によるダメージを与えることなく、包括固定化担体全体を均一に且つ緩やかに乾燥する(含水率を低下させる)ことができる。これにより、担体内に保持した微生物の活性を低下させることなく、均一な担体形状を維持しながら担体を減容できる。すなわち、担体の表面温度が10℃未満となるように送風乾燥すると、低温になりすぎることで微生物の活性が低下し、40℃を超えるように送風乾燥すると、熱によるダメージを受けて微生物の活性が低下するため、いずれも好ましくない。したがって、担体表面の温度が10〜40℃、好ましくは20〜30℃となるように送風乾燥する必要がある。微生物としては、特に限定はしないが、廃水処理で主に用いられる中温細菌が挙げられ、中でも、熱によるダメージを受け易い微生物、例えば、アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌、有機物分解菌、脱窒細菌等が挙げられる。
【0012】
また、乾燥時間は12〜24時間が好ましい。なお、湿度を低くして送風乾燥することで乾燥時間を短縮することもできる。
【0013】
請求項2は請求項1において、前記包括固定化担体の含水率が1〜5%となるまで送風乾燥することを特徴とする。
【0014】
請求項2によれば、包括固定化担体の含水率が1〜5%となるまで送風乾燥するので、担体内の微生物を生存させるために必要な水分を確保しつつ、担体の表面を未重合物質によるベタツキが発生しない程度まで乾燥することができる。また、含水率を1〜5%まで送風乾燥させることで、送風乾燥前の含水時の体積の約1/10まで大幅に減容できる。
【0015】
なお、含水率は、105℃で6時間乾燥させたときの担体重量を含水率0%とし、これに対する担体重量の比から求めることができる。例えば、含水率0%のときの担体重量が30mgであり、含水時の担体重量が33mgである場合、このときの担体の含水率は((33−30)mg/33mg)×100=9%となる。
【0016】
請求項3は請求項1又は2において、前記送風乾燥する前の包括固定化担体の比表面積は1200〜6000m2/m3であることを特徴とする。
【0017】
比表面積が小さすぎると、乾燥風との接触面積が少ないため乾燥させにくく、担体の表面の未重合物質によるべたつきを生じ易くなる。一方、比表面積が大きすぎると、乾燥風との接触面積が多く、急激に乾燥されることで担体の形状が崩れ易くなる。請求項3によれば、包括固定化担体の比表面積を1200〜6000m2/m3とするので、上記のような不具合を生じることなく、担体の形状を維持しながら、短時間で乾燥することができる。
【0018】
請求項4は請求項1〜3の何れか1項において、前記固定化材料は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとよりなるポリマのアクリレート又はジアクリレート誘導体であるとともに、前記アクリレート又はジアクリレート誘導体の分子量が1000〜10000であることを特徴とする。
【0019】
アクリルアミド等の低分子材料では含水ゲル中の水分が送風乾燥により抜け易く、分子量が10000より大きいと乾燥され難く上記含水率に調整することが困難となる。請求項4によれば、固定化材料は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとよりなるポリマのアクリレート又はジアクリレート誘導体であるとともに、前記アクリレート又はジアクリレート誘導体の分子量が1000〜10000であるものを使用するので、乾燥により担体の形状が崩れるのを抑制し、且つ適正な含水率の範囲に調整し易くすることができる。
【0020】
請求項5は請求項1〜4の何れか1項において、前記微生物は、前記送風乾燥する前の包括固定化担体において105cells/mL以上含まれることを特徴とする。
【0021】
請求項5によれば、105cells/mL以上と多めに微生物を固定化するので、含水率が低下したことにより活性が若干低下し易くなった場合でも、廃水の処理効率が著しく低下するのを抑制できる。
【0022】
本発明の請求項6は前記目的を達成するために、微生物を固定化材料の内部に包括固定した包括固定化担体であって、請求項1〜5の何れか1項に記載の包括固定化担体の減容方法により減容されたことを特徴とする包括固定化担体を提供する。
【0023】
請求項6によれば、微生物活性の低下がなく、均一な形状を有する減容担体を得ることができる。
【0024】
本発明の請求項7は前記目的を達成するために、請求項6の包括固定化担体を水中に浸漬して膨潤させた後、水質浄化に使用することを特徴とする水質浄化方法を提供する。
【0025】
請求項7によれば、減容させた包括固定化担体を水中に浸漬することにより、乾燥前の含水ゲルの状態に戻すことができ、例えば、観賞魚等の飼育水や河川・湖沼水、工業廃水等の水質浄化に利用することができる。
【0026】
本発明の請求項8は前記目的を達成するために、微生物を固定化材料の内部に包括固定した包括固定化担体の製造装置であって、前記微生物と固定化材料の混合物を調製する調製部と、前記調製した混合物を重合させることで成形する成形部と、前記成形体を所定の大きさに切断することで包括固定化担体とする切断部と、前記包括固定化担体に対して所定温度で送風乾燥するための送風乾燥部と、を備えたことを特徴とする包括固定化担体の製造装置を提供する。
【0027】
請求項9は請求項8において、前記送風乾燥部は、前記包括固定化担体の表面温度を測定する測定手段と、前記測定手段の結果に基づいて、前記送風温度を調節する温度調節手段と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
請求項9によれば、測定手段の測定結果に基づいて、送風温度を調節する温度調節手段を備えるので、担体表面の温度が所定の範囲となるように、送風温度を正確に制御できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、担体内に保持した微生物の活性を低下させることなく、均一な担体形状を維持しながら担体を効果的に減容できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図面に従って、本発明に係る包括固定化担体の減容方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0031】
図1は、本発明が適用される担体の製造工程から使用工程までの流れについて説明するブロック図である。
【0032】
図1に示すように、製造工程12において製造した包括固定化担体を、減容工程14において減容し、保管・運搬工程16において使用する場所まで運搬した後、戻し工程18において、包括固定化担体を水に浸漬して元のサイズに戻して、生物処理工程19において水質浄化に使用する。
【0033】
製造工程12では、図2に示すように、先ず、活性汚泥等の微生物と固定化材料を混合してよく攪拌し、原料溶液を調製する。そして、過硫酸カリウム等の重合開始剤を原料溶液に添加し、重合させる。このとき、重合温度は15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。重合時間は1〜60分が好ましく、1.5〜60分がより好ましい。その後、重合させてゲル化した担体を、例えば、約3mm角の角型形状に切断することで、包括固定化担体を得ることができる。
【0034】
包括固定化担体(以下、単に「担体」ともいう)のサイズは、後述する減容工程14において担体表面に均一に送風できるように、比表面積が1200〜6000m2/m3となるように設定されることが好ましい。また、送風乾燥により担体の含水率が低下するため、担体内の微生物の活性が低下しても高効率な処理ができるように、高濃度の微生物を固定化することが好ましく、例えば、105cells/mL以上とすることができる。
【0035】
微生物としては、活性汚泥に限定されるものではなく、純粋培養した微生物を使用してもよい。微生物の種類としては、例えばBOD成分酸化細菌、ダイオキシン分解菌、ビスフェノールA分解菌、アオコ分解菌、硝化細菌、脱窒細菌,嫌気性アンモニア酸化細菌等が挙げられる。特に、本発明は、熱によるダメージを受け易い微生物に対して好適であり、例えば、アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌、有機物分解菌、脱窒細菌等が挙げられる。
【0036】
固定化材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール系、ポリビニルアルコール系のポリマ等が使用され、具体的には、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの含有比が7:3であり、末端基がジアクリレートである分子量1000〜10000のプレポリマを使用できる。このほか、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールメタアクリレート等を使用することもできる。
【0037】
成形方法としては、特に限定されるものではなく、ブロック成形法、シート成形法、チューブ成形法、滴下造粒法等を採用することができる。
【0038】
減容工程14では、製造工程12において製造した担体を、所定温度で送風乾燥することによって減容する。
【0039】
このとき、担体内の微生物が熱により失活しない温度で乾燥させることが重要である。すなわち、送風温度が10℃未満になると、低温になりすぎて微生物の活性が低下し、40℃を超えると熱によるダメージを受けて微生物の活性が低下し、いずれも好ましくない。このため、担体の表面温度が10〜40℃、好ましくは20〜30℃となるように送風温度を設定する。
【0040】
また、乾燥速度が大きすぎると担体の形状が崩れ易いため、緩やかに乾燥する(乾燥速度を小さくする)ことも重要である。乾燥時間は、特に限定しないが、例えば12〜24時間とすることが好ましい。なお、乾燥時間を短縮する観点で、除湿した乾燥風を包括固定化担体に供給することもできる。
【0041】
減容工程14では、担体内の微生物を生存させるために必要な水分を確保しながらも、担体の表面を未重合物質によるベタツキが発生しない程度まで乾燥する必要がある。すなわち、含水率が1%未満であると微生物にとって必要な水分が不足し、微生物の活性が低下しやすく、含水率が5%を超えると乾燥後の担体表面がベタついて塊となり、水中に浸漬しても塊が崩壊せず微生物の活性が低下する。したがって、担体の含水率が1〜5%となるまで送風乾燥することが好ましく、3〜5%となるまで送風乾燥することがより好ましい。
【0042】
なお、含水率は、105℃で6時間乾燥させたときの担体重量を含水率0%とし、これに対する担体重量の比から求めることができる。
【0043】
保管・運搬工程16では、減容工程14において減容及び乾燥させた担体を、そのまま袋やケース等の収納容器に詰め込み、運搬する。そして、運搬した担体を収納容器から取り出し、廃水処理設備の生物処理槽に投入することで、戻し工程18を行う。
【0044】
戻し工程18では、担体を水に所定時間浸漬することによって、担体を減容前の形状(体積)に戻す。担体を水に浸漬する時間は、担体の乾燥状態や使用されている材料によって異なるが、約12〜24時間とすることが好ましい。また、生物処理槽とは別の水槽に水を貯留しておき、この水に担体を浸漬して戻し工程を行うようにしてもよい。戻し工程18の後、生物処理槽に原水を投入することにより、生物処理工程19を行うことができる。
【0045】
このように、保管・運搬工程においては、従来はケース内に水を投入し、担体を水に浸漬して保管していたため、嵩容積及び重量がともに大きくなりハンドリングが良好でなかった。また、保管温度が高い場合には、収納容器内の水が腐敗し易く悪臭を放つこともあった。この悪臭は、水中へ担体から有機物の溶出や付着有機物が溶出し、微生物が繁殖して腐敗することによるものであった。
【0046】
本発明によれば、減容工程14において、担体内に保持した微生物の活性を低下させることなく、均一な担体形状を維持しながら担体を乾燥させて減容することができる。このため、袋やケースに水を入れる必要はなく、担体を乾燥状態で且つコンパクトに保管及び運搬することができる。これにより、保管及び運搬時のハンドリングを大幅に向上できるとともに、悪臭も防止することができる。
【0047】
次に、本発明に係る包括固定化担体の減容方法を実施するための装置構成について説明する。
【0048】
図3は、本発明に係る担体の製造装置20の構成を示す概略図である。担体の製造装置20は、主に、原料調製部22、成形部24、切断部26、及び送風乾燥部28より構成されている。
【0049】
原料調製部22は、主に、原料が貯留された原料槽32と、固定化材料溶液や重合開始剤等の薬品が貯留された薬品槽34、36と、原料と薬品を混合する攪拌・押出装置38と、を備えている。また、ポンプ40、42、44は、原料槽32の原料、薬品槽34の薬品、薬品槽36の薬品を、攪拌・押出装置38に導入する駆動手段として、それぞれ設けられている。これにより、包括固定化担体を製造する原料となる混合液を、攪拌・押出装置38において混合し、成型枠46へ押し出すことができる。
【0050】
成形部24は、主に、混合液を重合して成形体48を製造する成型枠46と、成型枠46を搬送する移動ステージ50と、を備えている。また、成型枠46には温度調節手段52が設けられており、重合温度を調節できるように構成されている。
【0051】
切断部26は、主に、成形体48を固定する固定ステージ54と、該固定ステージ54内の一端側に設けられ、搬送機構56により可動する押出板58と、を備えている。また、固定ステージ54の他端側には、格子状切断刃60A及び回転状切断刃60Bが設けられている。これにより、固定ステージ54内にセットされた成形体48は、搬送機構56により所定の速度で押し出されながら格子状切断刃60Aにより格子状に切断された後、回転状切断刃60Bにより約3mm角の立方体状に切断される。切断された担体62は、更に下流側に設けられた送風乾燥部28に導入される。
【0052】
図4は、図3の送風乾燥部28の構成の一例を詳細に説明する説明図である。
【0053】
送風乾燥部28は、担体62を収納するパレット64と、該パレット64の下部に設けられ、パレット64の底面から乾燥風を供給する送風手段66と、を備えている。
【0054】
パレット64には、底面に乾燥風を取り込むための複数の孔64Aが形成されている。また、パレット64には攪拌機68が設けられており、パレット64内の担体を攪拌できるようになっている。
【0055】
また、パレット64内には、担体62の表面温度を測定するための温度計70(温度測定手段)が設けられている。送風手段66には、温度計70での測定結果に基づいて、一定の送風温度に調節するための温調器72(温度調節手段)が設けられている。なお、図4に示すように、必要に応じて送風温度を測定する温度計71も備えてもよい。
【0056】
これにより、パレット64内の担体62の表面温度をセンシングしながら、担体の温度が所定の範囲(10〜40℃)となるように送風乾燥することができる。なお、送風温度と担体の表面温度がほぼ同じである場合は、送風温度をセンシングしながら同様の制御を行ってもよい。
【0057】
このように、送風手段66から所定温度に設定された乾燥風がパレット64の底面の孔64Aから上向流となって供給される。さらに、担体62を攪拌機68により攪拌しながら乾燥風を供給することにより、処理する担体量が多くなったときでもデットスペースを少なくし、均一に送風乾燥することができる。
【0058】
以上のようにして減容させた担体62を、例えば、図5に示すような廃水処理装置80に適用できる。図5は、本発明の方法で減容させた担体の適用例を示す模式図である。なお、同図では、生物処理槽82(曝気槽)内に硝化細菌を固定化した担体62を投入し、硝化反応を行う例を示している。
【0059】
生物処理槽82には、原水を導入する導入配管84と、処理水を排出する排出配管86とが設けられるとともに、生物処理槽82内には、担体62が流出するのを抑制するためのスクリーン88、及び生物処理槽82内にエアを供給する散気管90が設けられている。
【0060】
これにより、減容した担体62は、生物処理槽82内でほぼ減容前の形状に戻るとともに、減容させる前と同等の硝化活性を有する。すなわち、担体62は、10〜40℃で送風乾燥されているため、微生物の活性を減容前後で同等レベルに維持することができ、特に、熱によるダメージを受け易い亜硝酸酸化細菌の活性が著しく低下するのを抑制できる。これにより、原水中に亜硝酸イオンが分解されずに蓄積されるのを抑制できる。
【0061】
なお、担体の製造装置20(送風乾燥部28も含む)の構成は、上記実施形態に限られることはない。
【0062】
以上、本発明に係る包括固定化担体の減容方法の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0063】
たとえば、上記各実施形態では、本発明の方法で減容させた担体を廃水処理工程に適用する例を示したが、これに限定されず、観賞魚用水槽やその浄化用装置に投入して水質浄化に適用することもできる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明に係る実施例を説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。(1)担体の表面温度(送風温度)と硝化活性、(2)担体含水率と硝化活性、(3)担体の比表面積と乾燥速度、(4)固定化材料の分子量と乾燥速度、(5)微生物濃度と硝化活性、(6)本発明と従来品の廃水処理性能、の関係について検討した。この結果を図6〜図11に示す。
【0065】
なお、各実施例では、表1の担体組成を有する担体を使用した。また、(5)の検討以外では、担体内に固定する微生物濃度は、アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌ともに105cells/ml以上となるようにした。担体の減容は、図4の送風乾燥部28により送風乾燥することにより行った。
【0066】
【表1】
【0067】
(1)担体の表面温度(送風温度)と硝化活性
ポリエチレングリコールジメタアクリレートを主原料とし、担体を3mm角状に成形した。送風温度は、担体の表面温度が5〜45℃となるように設定し、24時間乾燥させ、乾燥させた担体を水に24時間浸漬して含水させた。そして、含水させた担体を用いて、NH4−N40mg/Lの原水をHRT3時間、担体添加率10%の条件で20日間連続運転し、硝化活性を測定した。
【0068】
硝化活性は、下記式を用いて、処理水中のNO3−N(硝酸性窒素)生成量による硝化速度から求めた。
【0069】
硝化率(%)={(処理水NO3−N)/(原水NH4−N)}×100
各担体の硝化活性は、担体62の表面温度が25℃となるように送風温度を設定し、送風乾燥したときの硝化活性を100とした相対値で示した。この結果を図6に示す。
【0070】
担体の表面温度が10℃未満となるように送風温度を設定すると、処理水中にアンモニアが残存しており、硝化活性は低かった。一方、担体の表面温度が40℃よりも高くなるように送風温度を設定すると、処理水中にNO2−N(亜硝酸性窒素)が残存し、NO3−N(硝酸性窒素)まで反応が進行せず硝化活性が低いことがわかった。
【0071】
これは、以下のような理由によると考えられる。担体の表面温度が10℃未満となるように送風温度を設定すると、低温になり過ぎることでアンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌ともに活性が低下し、原水中のアンモニウムイオンが減少しにくくなる。一方、担体の表面温度が40℃を超えるように送風温度を設定すると、特に熱によるダメージを受け易い亜硝酸酸化細菌の活性が著しく低下し、アンモニウムイオンは硝酸イオンまで転換できず、亜硝酸イオンの状態で残存するためであると推察される。この亜硝酸イオンは、水中に蓄積されると、例えば、観賞魚用の飼育水を浄化する場合などは、観賞魚にとって毒性が強くなるため好ましくない。
【0072】
このように、担体中の微生物は送風温度による影響を受けやすく、担体の表面温度が10〜40℃となるように送風温度を設定する必要があることがわかった。
【0073】
(2)担体の含水率と硝化活性
3mm角状に成形した担体62を、担体の表面温度が25℃となるように送風温度を設定し、送風乾燥させた。このとき、乾燥時間を変えることにより異なる含水率の担体を用意し、それぞれの担体について含水率を測定した。含水率の測定方法としては、前述したように、105℃で6時間乾燥させたときの担体の重量を含水率0%とし、この重量に対する担体の重量の比から求めた。そして、各担体を水に24時間浸漬して含水させた後、NH4−N40mg/Lの原水をHRT3時間、担体添加率10%の条件で20日間連続運転し、そのときの硝化活性を測定した。この結果を図7に示す。
【0074】
各条件の硝化活性は、乾燥後の含水率が5%である担体の硝化活性を100とした相対値として示した。担体の含水率が1%未満であると、急激に硝化活性が低下し、乾燥時にアンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌(これらは、硝化細菌ともいう)がダメージを受けたことが推察される。一方、担体の含水率が5%を越えると、乾燥後の担体表面がベタついて塊となり、水中に浸漬しても塊が崩壊せず硝化活性が低下した。
【0075】
したがって、乾燥後の適切な含水率は1〜5%であることがわかった。また、このときの担体サイズは乾燥前の約1/10であり、減容効果が高いことを確認した。
【0076】
(3)担体の比表面積と乾燥速度
本発明では、担体を送風乾燥することにより減容するため、担体の比表面積によって乾燥速度が異なる。そこで、担体の比表面積と乾燥速度について検討した。
【0077】
含水時の包括固定化担体の形状を0.5〜8mm角の範囲で変えることで、比表面積(担体サイズ)の異なる担体を用意した。そして、それぞれの担体について、担体の表面温度が25℃となる送風温度に設定し、24時間送風乾燥させたときの含水率を測定した。この結果を図8に示す。
【0078】
担体の比表面積が大きくなるほど乾燥しやすくなるが、その反面、乾燥速度が大きいため担体形状が崩れやすくなった。また、比表面積が小さすぎると、乾燥風との接触面積が少ないため乾燥させにくく、担体表面が未重合物質によりベタツキを生じ易くなることがわかった。
【0079】
したがって、前述した含水率の範囲(1〜5%)とするには、乾燥前(含水時)の包括固定化担体の比表面積を1200〜6000m2/m3とするのが好ましいことがわかった。
【0080】
(4)固定化材料のモノマー分子量と含水率
ポリエチレングリコールジメタクリレート(固定化材料)の分子量の異なる包括固定化担体を製造した。次いで、各担体について、担体の表面温度が25℃となる送風温度に設定し、24時間送風乾燥させた後の含水率を測定した。この結果を図9に示す。
【0081】
モノマーの分子量が高いほど乾燥後の含水率は高くなり、モノマー分子量が低いほど乾燥後の含水率は低くなることがわかった。これにより、分子量が高いものほど乾燥しにくく、低いものほど乾燥し易いことがわかった。
【0082】
したがって、前述した含水率の範囲(1〜5%)とするには、固定化材料の分子量を1000〜10000とするのが好ましいことがわかった。
【0083】
(5)担体中の微生物濃度と微生物の活性
担体中の微生物濃度(アンモニア酸化細菌濃度)を変化させて、硝化活性に及ぼす影響について検討した。微生物濃度の異なる担体を用意し、それぞれ担体の表面温度が25℃となるように送風温度を設定し、24時間送風乾燥させた後、担体を水に24時間浸漬して含水させた。この含水させた担体を用いてNH4−N40mg/Lの原水をHRT3時間、担体添加率10%の条件で20日間連続運転し、このときの硝化活性を測定した。この結果を図10に示す。
【0084】
各条件における担体の硝化活性は、微生物濃度を106cells/mlとしたときを100とし、これに対する相対値として表した。図10に示すように、担体中の微生物濃度が105cells/ml未満であると硝化活性は低下するが、105cells/ml以上では、106cells/mlのときと同等の硝化活性が得られた。
【0085】
したがって、担体中の微生物濃度は105cells/ml以上が好ましいことがわかった。
【0086】
(6)本発明と従来品の廃水処理性能
本発明の減容方法により送風乾燥した担体(実施例)と、従来の方法により熱乾燥した担体(比較例)、及び従来の乾燥前(含水時)の担体(参考例)の3種類の担体を用意した。実施例の担体は、担体の表面温度が25℃となるように送風温度を設定し、24時間送風乾燥させた。また、比較例の担体は、105℃、2時間で熱乾燥させた。なお、実施例、比較例については、いずれも乾燥後の含水率が2%となるようにした。そして、NH4−N40mg/Lの原水をHRT3時間、担体添加率10%の条件で曝気して連続運転したときの水質の経日変化を測定した。この結果を図11に示す。
【0087】
本発明を適用した実施例の担体は、従来の含水時の担体(参考例)とほぼ同様の傾向を示し、処理水中のNH4−Nが1mg/L以下となるまで18日間を要した。これに対して、熱乾燥させた比較例の担体は、30日後においてもNH4−Nが15mg/Lが残存することがわかった。これは、比較例の担体は、微生物が熱によるダメージを受けて失活したためであると考えられる。
【0088】
以上より、本発明の減容方法により減容した担体は、担体内に保持した微生物が減容によるダメージを受けることがなく、高い活性を維持できることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明が適用される担体の製造工程から生物処理工程までの流れについて説明するブロック図である。
【図2】包括固定化担体の製造方法を説明する説明図である。
【図3】本発明に係る担体の製造装置の概略構成を示す図である。
【図4】図3の送風乾燥部の構成を詳細に説明する説明図である。
【図5】本発明の方法で減容させた担体の適用例を示す模式図である。
【図6】本実施例における結果を示すグラフ図である。
【図7】本実施例における結果を示すグラフ図である。
【図8】本実施例における結果を示すグラフ図である。
【図9】本実施例における結果を示すグラフ図である。
【図10】本実施例における結果を示すグラフ図である。
【図11】本実施例における結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0090】
12…製造工程、14…減容工程、16…保管・運搬工程、18…戻し工程、19…生物処理工程、20…担体の製造装置、22…原料調製部、24…成形部、26…切断部、28…送風乾燥部、62…担体、64…パレット、66…送風手段、64A…孔、68…攪拌機、70…温度計、72…温調器、80…廃水処理装置、82…生物処理槽
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を固定化材料の内部に包括固定した包括固定化担体の減容方法であって、
前記包括固定化担体の表面温度が10〜40℃となるように送風乾燥することにより減容する工程を備えたことを特徴とする包括固定化担体の減容方法。
【請求項2】
前記包括固定化担体の含水率が1〜5%となるまで送風乾燥することを特徴とする請求項1に記載の包括固定化担体の減容方法。
【請求項3】
前記送風乾燥する前の包括固定化担体の比表面積は1200〜6000m2/m3であることを特徴とする請求項1又は2に記載の包括固定化担体の減容方法。
【請求項4】
前記固定化材料は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとよりなるポリマのアクリレート又はジアクリレート誘導体であるとともに、前記アクリレート又はジアクリレート誘導体の分子量が1000〜10000であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の包括固定化担体の減容方法。
【請求項5】
前記微生物は、前記送風乾燥する前の包括固定化担体において105cells/mL以上含まれることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の包括固定化担体の減容方法。
【請求項6】
微生物を固定化材料の内部に包括固定した包括固定化担体であって、請求項1〜5の何れか1項に記載の包括固定化担体の減容方法により減容されたことを特徴とする包括固定化担体。
【請求項7】
請求項6の包括固定化担体を水中に浸漬して膨潤させた後、水質浄化に使用することを特徴とする水質浄化方法。
【請求項8】
微生物を固定化材料の内部に包括固定した包括固定化担体の製造装置であって、
前記微生物と固定化材料の混合物を調製する調製部と、
前記調製した混合物を重合させることで成形する成形部と、
前記成形体を所定の大きさに切断することで包括固定化担体とする切断部と、
前記包括固定化担体に対して所定温度で送風乾燥するための送風乾燥部と、
を備えたことを特徴とする包括固定化担体の製造装置。
【請求項9】
前記送風乾燥部は、
前記包括固定化担体の表面温度を測定する測定手段と、
前記測定手段の結果に基づいて、前記送風温度を調節する温度調節手段と、
を備えたことを特徴とする請求項8に記載の包括固定化担体の製造装置。
【請求項1】
微生物を固定化材料の内部に包括固定した包括固定化担体の減容方法であって、
前記包括固定化担体の表面温度が10〜40℃となるように送風乾燥することにより減容する工程を備えたことを特徴とする包括固定化担体の減容方法。
【請求項2】
前記包括固定化担体の含水率が1〜5%となるまで送風乾燥することを特徴とする請求項1に記載の包括固定化担体の減容方法。
【請求項3】
前記送風乾燥する前の包括固定化担体の比表面積は1200〜6000m2/m3であることを特徴とする請求項1又は2に記載の包括固定化担体の減容方法。
【請求項4】
前記固定化材料は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとよりなるポリマのアクリレート又はジアクリレート誘導体であるとともに、前記アクリレート又はジアクリレート誘導体の分子量が1000〜10000であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の包括固定化担体の減容方法。
【請求項5】
前記微生物は、前記送風乾燥する前の包括固定化担体において105cells/mL以上含まれることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の包括固定化担体の減容方法。
【請求項6】
微生物を固定化材料の内部に包括固定した包括固定化担体であって、請求項1〜5の何れか1項に記載の包括固定化担体の減容方法により減容されたことを特徴とする包括固定化担体。
【請求項7】
請求項6の包括固定化担体を水中に浸漬して膨潤させた後、水質浄化に使用することを特徴とする水質浄化方法。
【請求項8】
微生物を固定化材料の内部に包括固定した包括固定化担体の製造装置であって、
前記微生物と固定化材料の混合物を調製する調製部と、
前記調製した混合物を重合させることで成形する成形部と、
前記成形体を所定の大きさに切断することで包括固定化担体とする切断部と、
前記包括固定化担体に対して所定温度で送風乾燥するための送風乾燥部と、
を備えたことを特徴とする包括固定化担体の製造装置。
【請求項9】
前記送風乾燥部は、
前記包括固定化担体の表面温度を測定する測定手段と、
前記測定手段の結果に基づいて、前記送風温度を調節する温度調節手段と、
を備えたことを特徴とする請求項8に記載の包括固定化担体の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−271809(P2008−271809A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117390(P2007−117390)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
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