説明

包接化合物の製造方法

【課題】メントールが有する揮発性、難溶解性など性質の改善に関し、食品や夏用シャンプーやボディーローションなど様々な用途に使用できるメントール含有素材を提供する。
【解決手段】シクロデキストリンの飽和水溶液にメントールを添加し、50℃〜135℃の加温と0.11Mpa〜50Mpaの加圧を同時に行なう工程を加えることにより、メントールのシクロデキストリンへの包接量が高める。これによりメントール含有素材は、メントールの揮発を防ぎ、溶解性に優れ、様々な用途に使用することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メントールが有する揮発性、難溶解性など性質の改善に関し、メントールをシクロデキストリン高濃度溶液に添加し、効率よく包接化合物を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
メントールはハッカやセイヨウハッカなどの植物に含まれる揮発性の精油成分であり、その特有の清涼感を伴うハッカ香味から、一般的に清涼剤として、食品や夏用シャンプーやボディーローションに使われる。しかしながら、メントールの性状が水に難溶であることやその昇華性のために時間経過とともにハッカ香味が持続しないことに問題があった。
【0003】
メントールの性状が水に難溶であることは、乳化剤を用いて懸濁する技術やアルコール等の有機溶媒に溶解によって溶解性を向上させる技術そしてメントールに少糖類を付加した配糖体によって水溶性を向上させる技術(引用文献1)などにより改善されている。
【0004】
ハッカ香味の持続は、l‐メントールをサイクロデキストリンによって包接して内服液に利用する技術が示されている。(引用文献2)
【特許文献1】特公昭51−105
【特許文献2】特開平10−306022
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1の技術であるメントール配糖体は、その持続力が高く、水に易溶であるも清涼感がやや少ないとの問題があった。
【0006】
引用文献2の技術である包接物は、高価なシクロデキストリンを包接ホストとして大量に使用しなければならないなどの問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)シクロデキストリン高濃度溶液にメントールを添加し、該溶液を50℃〜135℃の加温と0.11MPa〜50Mpaの加圧を行なう工程で処理することを特徴とする包接複合体。
(2)該包接複合体に含有するメントールが7.4〜15%(w/w)であること。
【発明の効果】
【0008】
シクロデキストリン高濃度溶液にメントールを添加し、50℃〜135℃の加温と0.11MPa〜50Mpaの加圧を同時に行なう工程で処理することにより、メントールのシクロデキストリンへの包接量を高める。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において包接に用いるメントールは8種類の光学異性体が存在するが、本発明におけるメントールはl−メントールが最も好ましい。
【0010】
本発明においてメントールの包接に用いるシクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、分岐シクロデキストリン、アルキルシクロデキストリン及び/またはヒドロキシアルキルシクロデキストリン、およびそれらの混合物である。上記に挙げたシクロデキストリンで、シクロデキストリン誘導体におけるアルキル基の炭素数は、通常、1〜6の範囲である。本発明において、特に好ましいシクロデキストリンは、コストの面に優れ、包接効率に優れるβ−シクロデキストリンまたはその誘導体である。
【0011】
シクロデキストリンとメントールを含有する溶液は、シクロデキストリンが高濃度状態にあるのであれば、どのような方法で調製してもよい。
【0012】
シクロデキストリンとメントールを含有する溶液を加温と加圧する方法はどのような方法であってもよいが、同時に加温と加圧を行なうことが必要である。
【0013】
本発明の包接複合体は、シクロデキストリンがメントールを包接していればどのような形態でもよいが、包接後に直ちに使用しない場合は、作業性や品質保持の面において粉末状にすることが好ましい。
【0014】
本発明の包接複合体におけるメントールは、固形分重量あたり7.4〜15%(w/w)のを含有することが好ましく、メントールの含有量は、ガスクロマトグラフ法(検出器;FID、カラム;無極性キャピラリーカラム使用。)により確認できる。
【0015】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが,本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
各種シクロデキストリンの20%(w/v)水溶液300mlにl−メントール10gを添加し、攪拌しながら30分間、加圧・加圧処理(0.2Mpa/135℃)を行なった。得られた溶液又は懸濁液をスプレードライヤーにて粉末化した。
【0017】
(比較例1)
80℃に調温した各種シクロデキストリンの20%(w/v)水溶液300mlにl−メントール10gを添加し、ホモミキサーにて30分間攪拌した後、得られた溶液又は懸濁液をスプレードライヤーにて粉末化した。
実施例1、比較例1で得られた粉末サンプルについて、メントール含量の比較を行った。メントール含量は、ガスクロマトグラフ分析法により測定した。結果を表1に示した。
【実施例2】
【0018】
HP−β−CDの40%(w/v)水溶液300mlにl−メントール11.6gを添加し、攪拌しながら30分間、加圧・加圧処理(0.2Mpa/135℃)を行なった。得られた液体を室温まで冷却した。
【0019】
(比較例2)
80℃に調温したHP−β−CDの40%(w/v)水溶液300mlにl−メントール11.6gを添加し、ホモミキサーにて30分間攪拌した。得られた液体を室温まで冷却した。
【0020】
実施例2、比較例2で得られた液体サンプルの外観を目視にて観察した。実施例2は、透明であり、比較例2は、白濁していた。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリンおよびメントールを含有する溶液を50℃〜135℃の加温および0.11MPa〜50Mpaの加圧を同時に行なう工程で処理することを特徴とする包接複合体の製造法
【請求項2】
シクロデキストリン高濃度溶液にメントールを添加することを特徴とする請求項1記載の製造法
【請求項3】
該包接複合体に含有するメントールが7.4〜15%(w/w)含有することを特徴とする請求項1〜2記載の製造法

【公開番号】特開2007−77124(P2007−77124A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270909(P2005−270909)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000231453)日本食品化工株式会社 (68)
【Fターム(参考)】