説明

包紙

【課題】被包装物が付着し難く、なおかつ、過マンガン酸カリウム消費量(溶出試験)の規格に適合する包紙を提供する。
【解決手段】紙1、前記紙のおもて面に積層されたポリオレフィン層2及び前記ポリオレフィン層上に積層されたシリコーン層3を含む包紙であって、前記ポリオレフィン層がポリオレフィンの水性分散液を用いて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な包紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の包紙(剥離紙ともいう)は、例えば紙/水溶性樹脂/シリコーンという構成が一般的に採用されている(特許文献1)。ところが、この構成は、昭和34年厚生省告示第370号(最終改訂:平成18年3月31日 厚生労働省告示第201号)に規定される過マンガン酸カリウム消費量(溶出試験)の規格に適合していない。この規格の試験法は、試料から水に移行する有機物質を過マンガン酸カリウムによって酸化し、その量を過マンガン酸カリウム消費量として測定する試験法である。食品、薬品等の用途では、上記規格に適合させるのが好ましく、この規格に適合しない場合は有機物質が食品、医薬品等に混入するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−306797号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが調査・研究を重ねたところ、上記構成の包紙が過マンガン酸カリウム消費量の規格に適合しない原因としては、包紙中の水溶性樹脂(一般的にはポリビニルアルコール:PVA)に由来していることが確認されている。このため、水溶性樹脂を使用しなければ前記規格に適合すると予想されるものの、水溶性樹脂を使用しない場合は被包装物が包紙に付着するという別の問題が生じる。
【0005】
従って、本発明の主な目的は、被包装物が付着し難く、なおかつ、過マンガン酸カリウム消費量(溶出試験)の規格に適合する包紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の層構成を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の包紙に係る。
1. 1)紙、2)前記紙のおもて面に積層されたポリオレフィン層及び3)前記ポリオレフィン層上に積層されたシリコーン層を含む包紙であって、前記ポリオレフィン層がポリオレフィンの水性分散液を用いて形成されていることを特徴とする包紙。
2. ポリオレフィンがアイオノマー系、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂系及びポリエチレン系の少なくとも1種である、前記項1に記載の包紙。
3. 紙の裏面にアルミニウム箔がさらに積層されている、前記項1又は2に記載の包紙。
4. 包紙における過マンガン酸カリウム消費量が10μg/mL以下である、前記項1〜3のいずれかに記載の包紙。
5.ポリオレフィンの水性分散液が、界面活性剤及び有機溶剤を実質的に含まないものである、前記項1〜4のいずれかに記載の包紙。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好な剥離性を有するがゆえに、被包装物(内容物)が付着し難いという特性を有しつつ、過マンガン酸カリウム消費量(溶出試験)の規格にも適合する包紙を提供することができる。特に、剥離性については、初期の剥離性が優れていることはもちろん、長期間保管後あるいは気温(温度)、湿度が高い環境下であっても良好な剥離性を維持することができる。また、過マンガン酸カリウム消費量(溶出試験)の規格にも適合するので、より高い安全性を発揮することができる。
【0009】
このような特徴をもつ本発明の包紙は、例えば食品、医薬品又は化学品の包紙として好適に用いることができる。特に、食品としては、チューイングガム、ソフトキャンディ等の菓子類の包装用としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の包紙の層構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の包紙の層構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の包紙は、1)紙、2)前記紙のおもて面に積層されたポリオレフィン層及び3)前記ポリオレフィン層上に積層されたシリコーン層を含む包紙であって、前記ポリオレフィン層がポリオレフィンの水性分散液を用いて形成されていることを特徴とする。
【0012】
図1には、本発明の包紙の基本層構成を示す。紙1のおもて面にポリオレフィン層2が積層されている。さらに、前記ポリオレフィン層上にシリコーン層3が積層されている。本発明の包紙においては、特に前記ポリオレフィン層2がポリオレフィンの水性分散液を用いて形成されていることが特徴である。図1の包紙の使用に際しては、シリコーン層3側が内側となり、紙1側が外側となる。すなわち、シリコーン層3上に食品、医薬品等の被包装物(内容物)を載せ、それを包み込めば良い。包む方法(包装方法)自体は公知の方法を採用することができる。
【0013】
また、本発明の包紙は、上記の基本層構成のほか、他の層が積層されていても良い。例えば、図2に示すように、紙1の裏面にアルミニウム箔4を積層しても良い。この場合、紙1とアルミニウム箔4とは接着剤層(図示せず)を介して積層することができる。以下、本発明の包紙の層構成等について説明する。
【0014】

本発明の包紙に用いる紙は、公知又は市販の包装材料で使用される紙(又は紙類)を用いることができる。例えば、上質紙、グラシン紙、クラフト紙、純白ロール紙、模造紙、洋紙、和紙、各種コート紙等を用いることができる。紙の坪量は強度、柔軟性、コスト等の点で10〜50g/m程度とすることが好ましい。
【0015】
また、用いる紙の厚みは限定的ではないが、通常は10〜100μm程度、特に15〜60μmとすれば良い。
【0016】
ポリオレフィン層
ポリオレフィン層を構成するポリオレフィンとしては、例えばアイオノマー系、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリエチレン系(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、低分子量ポリエチレン(重量平均分子量:数千)、直鎖線状低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン系等の少なくとも1種を好適に用いることができる。アイオノマーとしては、変性したアイオノマーも含めて公知又は市販のものが使用でき、例えばポリオレフィン系アイオノマー、フッ素系アイオノマー、ポリスチレン系アイオノマー、ポリエステル系アイオノマー、(メタ)アクリル系アイオノマー等を用いることができる。これらの中でもポリオレフィン系アイオノマーが好ましい。ポリオレフィン系アイオノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン系炭化水素と不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸等)との共重合体金属塩等が挙げられる。このようなアイオノマーも市販品を使用することができ、例えばメタクリル酸を酸性モノマーとする「ハイミラン」(三井・デュポンポリケミカル社製、商品名)等を例示することができる。本発明では、ポリオレフィンの塗膜を形成し易く、紙に対する目止め効果に優れるという見地より、アイオノマー系、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂系及びポリエチレン系の少なくとも1種をより好適に用いることができる。
【0017】
ポリオレフィン層の厚みは制限されないが、一般的には0.3〜5μm程度、特に0.5〜3μmとすれば良い。
【0018】
本発明の包紙において、ポリオレフィン層は特にポリオレフィンの水性分散液を用いて形成されている。すなわち、上記のようなポリオレフィンを水中に分散させた水性分散液を用いる。水性分散液の濃度(ポリオレフィンの固形分濃度)は特に制限されず、用いるポリオレフィンの種類等に応じて適宜設定することができるが、通常は50〜600g/L程度、特に150〜450g/Lとすることが好ましい。また、水性分散液には、ポリオレフィンのほか、必要に応じて界面活性剤、着色剤、沈降防止剤等を適宜配合することもできるが、特に環境保護、作業性(作業環境)、食品の安全性等の見地より、界面活性剤及び有機溶剤を含有しない水性分散液が好ましい。このような界面活性剤及び有機溶剤を含まないポリオレフィン水性分散液としては、市販品も使用できる。このような市販品としては、例えば商品名「ケミパール(登録商標)」(三井化学製)シリーズを好適に用いることができる。
【0019】
ポリオレフィン層の形成方法は特に限定されず、例えば前記水性分散液の塗膜を形成し、これを乾燥することによってポリオレフィン層をコート膜として形成することができる。塗膜の形成方法は公知の方法に従えば良く、例えばダイコ−ト、ディップコ−ト、ナイフコ−ト、リバ−スロ−ルコ−ト、スプレイコ−ト、グラビアコート、ロールコート、ドクターコート、バーコート等の各種の塗布方法、印刷方法等を適宜採用することができる。塗布後の乾燥温度は、特に制限されるものではないが、一般的には80〜120℃程度とすることが好ましい。本発明の包紙では、このようなコート膜の採用により、紙及びシリコーンとの適度な接着力、内容物剥離性、低過マンガン酸カリウム消費量等を効果的に実現することができる。塗膜の形成に際しては、ポリオレフィン水性分散液の塗布量を乾燥後重量で0.3〜3g/m程度、特に0.5〜2g/mとすることが好ましい。この範囲内に設定することによって、紙に対する目止め効果が得られるとともに、内容物の非付着性(剥離性)をより効果的に発揮することができる。また、低重量である(厚みが薄い)ので、機械的切断適性、折込み適性(折目保持性)等の包装適性もよりいっそう満足できる。
【0020】
シリコーン層
シリコーン層の形成には、通常の剥離紙等で使用されるシリコーンを用いることができる。例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリアルキルアルケニルシロキサン、ポリアルキル水素シロキサン等の少なくとも1種を好適に用いることができる。これらは市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば東レ・ダウコーニング株式会社製シリコーン「SRX345」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製シリコーン「TPR6722」、信越化学工業株式会社製「X−52−195」等を挙げることができる。
【0021】
シリコーン層の厚みは適宜調節することができるが、通常は0.01〜5μm程度、特に0.1〜3μmとすれば良い。
【0022】
シリコーン層の形成方法は限定的でなく、シリコーン又はその溶液の塗膜を紙上に形成し、乾燥・硬化させれば良い。塗膜の形成方法は、前記ポリオレフィン層の場合で挙げた塗布方法、印刷方法等と同様の方法を採用することができる。シリコーンの溶液を採用する場合は、トルエン等の有機溶媒にシリコーンを溶解し、その溶液を用いてコーティングすれば良い。シリコーンの塗布量は乾燥後重量で0.01〜3g/m、特に0.1〜1.5g/mとすることが好ましい。かかる塗布量に設定することによって、より優れた剥離性等を発揮することができる。塗膜の形成後は、一般的には加熱乾燥により硬化させれば良い。この場合の乾燥温度は通常100℃以上が好ましく、さらに好ましくは140〜170℃である。例えば、前記温度範囲に調整した熱風を塗膜に吹き付けることにより効果的に乾燥・硬化させることができる。
【0023】
その他の層
本発明の包紙では、前記のような基本層構成のほかに、必要に応じてアルミニウム箔、接着剤層等を積層することができる。例えば、紙の裏面(ポリオレフィン層が積層されていない面)にアルミニウム箔を積層することができる。
【0024】
本発明の包紙にアルミニウム箔を用いる場合は、公知のアルミニウム箔(アルミニウム合金箔も含む)を使用することができる。特に、JIS等で規定される1N30、1070、8021、8079等の材質のアルミニウム箔を好適に使用することができる。また、その調質は、硬質箔、半硬質箔又は軟質箔のいずれでも使用できるが、接着性又は柔軟性の点で軟質箔を用いることが好ましい。アルミニウム箔の厚みは特に制限されるものではないが、バリアー性、強度、柔軟性等が適度に得られる点で5〜25μm程度とすることが好ましい。なお、アルミニウム箔には公知の包装材料で採用されているようなエンボス加工、プライマー処理、アンカーコート処理、印刷、オーバーコート処理等を施しても良い。
【0025】
また、本発明の包紙では層間の接合に接着剤層が介在していても良い。例えば、紙にアルミニウム箔を積層させる場合は、接着剤を用いることが好ましい。接着剤としては、公知の包装材料で使用される接着剤であれば特に制限はなく、例えば水ガラス、ポリエチレン系、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロ−ス系等のラミネ−ト用接着剤を適宜用いることができる。接着剤の塗布量は限定的ではないが、所望の接着強度、柔軟性等が適度に得られるという点で乾燥後塗布量が0.5〜5g/m程度とすることが好ましい。
【0026】
過マンガン酸カリウム消費量
本発明の包紙における過マンガン酸カリウム消費量は、10μg/mL以下である。このような低い消費量を有することから、より高い安全性を発揮することができる。このため、高度な安全性が要求される食品又は医薬品の包紙として好適に用いることができる。過マンガン酸カリウム消費量の測定方法は、後記の試験例3の方法によって実施することができる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0028】
実施例1
厚み6.5μmのアルミニウム箔(1N30軟質箔)の一方面と紙(大王製紙株式会社製、商品名「バーガーラップ」、坪量21g/m)の一方面とを水ガラス(乾燥後塗布量3g/m)を用いてウエットラミネート法により貼り合わせた。紙の他方面にアイオノマー水性ディスパージョン(三井化学株式会社製、商品名「ケミパールS300」、乾燥後塗布量1g/m)をコーティングした後、100℃で乾燥した。さらにポリオレフィン系水性ディスパージョンのコーティング面上にシリコーン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「TPR6722/CM670」、乾燥後塗布量0.5g/m)をコーティングした後、150℃で乾燥し、実施例1の包紙を作製した。
【0029】
実施例2
アイオノマー水性ディスパージョンを、アクリル変性アイオノマー水性ディスパージョン(三井化学株式会社製、商品名「ケミパールSA100」、乾燥後塗布量1g/m)に替えた以外は、実施例1と同様にして実施例2の包紙を作製した。
【0030】
実施例3
アイオノマー水性ディスパージョンを、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂水性ディスパージョン(三井化学株式会社製、商品名「ケミパールV300」、乾燥後塗布量1g/m)に替えた以外は、実施例1と同様にして実施例3の包紙を作製した。
【0031】
実施例4
アイオノマー水性ディスパージョンを、低密度ポリエチレン水性ディスパージョン(三井化学株式会社製、商品名「ケミパールM200」(ポリエチレンの密度:0.92g/cm)、乾燥後塗布量1g/m)に替えた以外は、実施例1と同様にして実施例4の包紙を作製した。
【0032】
実施例5
アイオノマー水性ディスパージョンを、低分子量ポリエチレン水性ディスパージョン(三井化学株式会社製、商品名「ケミパールW300」、乾燥後塗布量1g/m)に替えた以外は、実施例1と同様にして実施例5の包紙を作製した。
【0033】
比較例1
厚み6.5μmのアルミニウム箔(1N30軟質箔)の一方面と紙(大王製紙株式会社製、商品名「バーガーラップ」、坪量21g/m)の一方面とを水ガラス(乾燥後塗布量3g/m)を用いてウエットラミネート法により貼り合わせ、比較例1の包紙を作製した。(コート剤なし)
【0034】
比較例2
ポリオレフィン系水性ディスパージョンに替えて、市販のPVA(ポリビニルアルコール)コート液(大成化薬株式会社製、商品名「マルタイトTX−320」、乾燥後塗布量1g/m)とした以外は、実施例1と同様にして比較例2の包紙を作製した。
【0035】
比較例3
ポリオレフィン系水性ディスパージョンに替えて、市販のPVA(ポリビニルアルコール)コート液(大成化薬株式会社製、商品名「NL−05水溶液」、乾燥後塗布量1g/m)とした以外は、実施例1と同様にして比較例3の包紙を作製した。
【0036】
比較例4
厚み6.5μmのアルミニウム箔(1N30軟質箔)の一方面と紙(大王製紙株式会社製、商品名「バーガーラップ」、坪量21g/m)の一方面とを水ガラス(乾燥後塗布量3g/m)を用いてウエットラミネート法により貼り合わせた。紙の他方面にシリコーン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「TPR6722/CM670」、乾燥後塗布量0.5g/m)をコーティングした後、150℃で乾燥し、比較例4の包紙を作製した。
【0037】
試験例1<剥離性試験>
実施例1〜5及び比較例1〜4で作製した包紙(縦50mm×横72mm)に、江崎グリコ株式会社製「ウォータリングキスミントガム(ライチ&レモン、マスカット&マスカット)」を、包紙のアルミニウム箔が外面側になるように直に包み、上方から1kPaの圧力をかけた状態で、温度40℃・湿度90%RHの雰囲気下で3日間保存した後、手指で包紙と当該ガムの離型性を調べた(n=3)。その結果を表1に示す。評価方法は、ガムが包紙に付着/粘着することなく、容易にガムを取り出せた場合は「○」とし、ガムが包紙に付着/粘着し、包紙の一部が破けた場合は「×」と評価した。
【0038】
試験例2<付着強度試験>
試験体Xの作製:A4判のアルミニウム製の平板の上に、A4判程度の普通紙を載せてセロハンテープで端部を固定し、長手方向の中央で半分にカットしたソフトキャンディ(森永製菓株式会社製「ハイチュウ(グレープ))」のカット面を上(天方向)にして普通紙の上に6列×8行(=48個)並べた。さらにソフトキャンディのカット面上列方向に実施例1〜5及び比較例1〜4で作製した包紙(幅25mm×長さ300mm)を、包紙のアルミニウム箔が上(天方向)になるように載せ、包紙がたるまないように端部をセロハンテープで固定した。ここまで準備した試験体をXとする。
【0039】
試験補助体Yの作製:別に用意したA4判のアルミニウム製の平板の上に、A4判程度のグラシンシリコン紙の剥離面を上(天方向)にして載せ、端部をセロハンテープで固定した。ここで準備した試験補助体をYとする。
【0040】
付着強度試験体Zの作製:前記で準備した試験体Xの上(アルミニウム箔の上)に、前記で準備した試験補助体Yの剥離面を下(地方向)になるよう試験補助体Yを天地逆さにして載せ、さらに上(天方向)から錘(500gの分銅×4個)をA4判アルミニウム板の四隅付近に載せた。
【0041】
この状態の付着強度試験体ZをA3版程度のポリエチレン製のチャック付き袋内に挿入した後、チャックを閉じて密閉した。この状態で温度40℃の恒温槽内で24時間保持した後、付着強度試験体Zを袋から取り出し、錘を取外した後、室温で5時間程度放置した。
【0042】
その後、試験補助体Yも取り外し、さらに試験体X中のソフトキャンディ1列分とその上の包紙のセットを1列毎に分離し、ソフトキャンディと包紙の付着強度について引張試験機を用いて90°剥離方向で測定した(引張速度100mm/分、N=3の平均値)。その結果を表1に示す。なお、付着強度は1.5N/25mm幅以下で問題のないレベルであり、「剥離不能」とは、ソフトキャンディ又は包紙が破壊ないし破断したため、測定できなかったことを示す。
【0043】
【表1】

【0044】
試験例3<過マンガン酸カリウム消費量の測定>
過マンガン酸カリウム消費量の測定は、「食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の第3のDの2合成樹脂製の器具又は容器包装(区分:使用温度100℃以下)」に準拠して、実施例1〜5及び比較例2〜4で作製した各包紙について次に示す試験方法により測定を行った。なお、比較例1は、溶出面が紙のため、この測定は実施していない。その結果を表2に示す。
【0045】
包紙の片面面積が50cmになるよう切り出し、アルミニウム箔面側を予め60℃に予熱しておいた金属製の治具に密着固定させ、続いて、予め60℃に予熱しておいた水100ml中に浸漬し、30分保持することにより、溶出を行い、各試験溶液を得る。
【0046】
三角フラスコに水100ml、濃硫酸1容量に対して2容量の水で希釈した硫酸水溶液5ml及び0.002mol/l過マンガン酸カリウム溶液5mlを入れ、5分間煮沸した後、液を捨て水で洗う。この三角フラスコに試験溶液100mlを採り、前記と同じ硫酸水溶液5mlを加え、更に0.002mol/l過マンガン酸カリウム溶液10mlを加え、加熱して5分間煮沸する。次いで、加熱を止め、直ちに0.005mol/lシュウ酸ナトリウム溶液10mlを加えて脱色した後、0.002mol/l過マンガン酸カリウム溶液で微紅色が消えずに残るまで滴定する。
【0047】
別に同様な方法で空実験を行い、次式により過マンガン酸カリウム消費量(Kと略称)を求める。

K(μg/ml)=((a−b)×0.316×f×1000)/100

a:本試験の0.002mol/l過マンガン酸カリウム溶液の滴定量(ml)
b:空試験の0.002mol/l過マンガン酸カリウム溶液の滴定量(ml)
f:0.002mol/l過マンガン酸カリウム溶液のファクター
【0048】
【表2】

【0049】
実施例1〜5及び比較例4は、昭和34年厚生省公示第370号の合成樹脂一般規格(10μg/ml以下)に適合していることがわかる。
【0050】
以上の結果から、本発明の実施例1〜5は、剥離性、付着強度、過マンガン酸カリウム消費量の全てが問題のない良好な結果を示し、包紙に適していることがわかる。これに対し、比較例1の包紙は、剥離性及び付着強度の点で問題があり、包紙に適していない。比較例2及び比較例3は、過マンガン酸カリウム消費量の点で問題があり、菓子等の食品の包紙には向いていない。比較例4の包紙は、初期の剥離性や過マンガン酸カリウム消費量の点では問題ないが、長期間保存後又は気温(温度)が高い環境下では剥離性が持続しないことを示しており、これもまた菓子類等の食品の包紙としては不向きである。
【0051】
このように、本発明の包紙は、初期の剥離性はもとより、長期間保管後あるいは気温(温度)が高い環境下であっても剥離性を維持し、併せて、過マンガン酸カリウム消費量が少なく人体に悪影響を及ぼす有機物の溶出が少ないという特長を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)紙、2)前記紙のおもて面に積層されたポリオレフィン層及び3)前記ポリオレフィン層上に積層されたシリコーン層を含む包紙であって、前記ポリオレフィン層がポリオレフィンの水性分散液を用いて形成されていることを特徴とする包紙。
【請求項2】
ポリオレフィンがアイオノマー系、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂系及びポリエチレン系の少なくとも1種である、請求項1に記載の包紙。
【請求項3】
紙の裏面にアルミニウム箔がさらに積層されている、請求項1又は2に記載の包紙。
【請求項4】
包紙における過マンガン酸カリウム消費量が10μg/mL以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の包紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−106790(P2012−106790A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70653(P2011−70653)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】