説明

包装ケース

【課題】 本発明の課題は、円筒状物品の回転を防止しつつ円筒状物品を所定位置に収納することができる包装ケースを提供することである。
【解決手段】 本発明の包装ケース1は、シート材を組み立てて形成されており、円筒状物品10を収納する筒状壁4と、筒状壁4の上方開口を塞ぐ上面壁5と、筒状壁4の下方開口を塞ぎ且つ円筒状物品10が載せられる下面壁6と、を有し、筒状壁4が、平坦面の正面壁2と、正面壁2の両側辺に折り罫線を介して連設された円弧面又は多角形面の背面壁3と、を有し、上面壁5が、略台形状に形成されており、上面壁5の面内には、収納される円筒状物品10の上方外周面に近接する縁を有する穴部7が形成されており、円筒状物品10を下面壁側へ付勢する付勢片部8が、穴部7の縁の一部分から中心方向に延出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材を組み立てて形成されており、円筒状物品を所定位置に保持した状態で収納可能な包装ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製シートなどのシート材を組み立てた包装ケースは、様々な形態のものが知られている。
該包装ケースの代表的な形態は、シート材を中空直方体状に形成した箱型である。
しかしながら、上記中空直方体状の包装ケースを用いて円筒状物品を収納する場合、該円筒状物品を動かないようにするための保持部材(中子)が別途必要となる。
【0003】
また、円筒状物品を収納する包装ケースとして、図15及び図16に示すように、円弧状に湾曲した正面壁20及び背面壁30を有する筒状壁40と、前記筒状壁40の上方開口及び下方開口を塞ぐ平面視紡錘形状の上面壁50及び下面壁60と、を有し、背面壁30の面内中央部を打ち抜いて、前記筒状壁40の内部に折り曲げ可能な一対の保持片部80,80が対向して形成されている包装ケース100が知られている。かかる包装ケース100によれば、筒状壁40の内部において対向する一対の保持片部80,80の間に円筒状物品Aを挟み込むことにより、筒状壁40内の略中央部に円筒状物品Aを保持した状態でこれを収納できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記包装ケース100は、保持片部80,80を形成するために、背面壁30の面内を打ち抜いているため、この打ち抜き部分30aから円筒状物品Aの胴部が大きく覗き出る。従って、上記包装ケース100の流通時に、前記部分30aから出た物品の胴部が異物に接触し易いため、円筒状物品Aが回転するという問題点がある。
このように物品が回転すると、包装ケースの正面(陳列時に消費者に見せる面)に位置合わせしておいた物品のデザイン表示を、消費者に見せることができず、その改善が求められている。
【0005】
本発明の目的は、シート材を組み立てた包装ケースであって、円筒状物品の回転を防止しつつ円筒状物品を所定位置に収納することができる包装ケースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の包装ケースは、シート材を組み立てて形成されており、円筒状物品を収納する筒状壁と、前記筒状壁の上方開口を塞ぐ上面壁と、前記筒状壁の下方開口を塞ぎ且つ前記円筒状物品が載せられる下面壁と、を有し、前記筒状壁が、正面壁と、前記正面壁の両側辺に折り罫線を介して連設された円弧面又は多角形面の背面壁と、を有し、前記上面壁が、略台形状に形成されており、前記上面壁の面内には、収納される円筒状物品の上方外周面に近接する縁を有する穴部が形成されており、前記円筒状物品を下面壁側へ付勢する付勢片部が、前記穴部の縁の一部分から中心方向に延出されている。
【0007】
上記本発明の包装ケースは、背面壁が円弧面又は多角形面であるので、背面壁と正面壁の間の所定位置に円筒状物品が保持される。さらに、円筒状物品の上方部が上面壁の穴部から覗き出るように筒状壁内に円筒状物品を収納することにより、円筒状物品の上方外周面に穴部の縁が近接する。よって、円筒状物品が穴部によって保持されるので、収納された円筒状物品が筒状壁の幅方向に位置ズレすることを防止できる。
また、収納された円筒状物品は付勢片部によって下面壁側に付勢されるので、円筒状物品が下面壁と付勢片部の間に挟持される。よって、収納された円筒状物品が、上下方向に位置ズレすることを防止でき、さらに、これが回転することも防止できる。
【0008】
本発明の好ましい包装ケースは、前記略台形状の上面壁の上底が、前記背面壁の上辺の略中央部に連設されていると共に、前記上面壁の両斜辺と背面壁の上辺の両方側の間には、第1連結片及び第2連結片が折り罫線を介して連設されており、前記上底において前記上面壁を折り曲げ且つ前記折り罫線において前記第1連結片及び第2連結片をそれぞれ折り曲げることによって、前記上面壁が前記筒状壁の上方開口を塞いでいると共に、前記背面壁が前記第1連結片及び第2連結片によって補強されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の包装ケースは、別途の保持部材を用いなくても円筒状物品が位置ズレ及び回転し難く、円筒状物品を所定位置に収納できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の1つの実施形態に係る包装ケースを背面側から見た斜視図。
【図2】同包装ケースの背面図。
【図3】同包装ケースの上面図。
【図4】同包装ケースの下面図。
【図5】図2のV−V線で切断した縦断面図。
【図6】同包装ケースを形成するシート材の展開図。前記展開図において、折り罫線を一点鎖線で表す。
【図7】本発明の他の実施形態に係る包装ケースの上面図。
【図8】本発明の更に他の実施形態に係る包装ケースの背面図。
【図9】図8のIX−IX線で切断した断面図。
【図10】本発明の更に他の実施形態に係る包装ケースの斜視図。
【図11】図10の包装ケースの背面図。
【図12】図10の包装ケースの下面図。
【図13】図11のXIII−XIII線で切断した断面図。
【図14】図10の包装ケースを形成するシート材の展開図。前記展開図において、折り罫線を一点鎖線で表す。
【図15】従来の包装ケースの斜視図。
【図16】図15のXVI−XVI線で切断した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。なお、各部の用語の接頭語として、第1、第2などを付す場合があるが、該接頭語は、用語を区別するために付加されたものであり、各部の順序や優劣などを意味しない。また、包装ケースを構成する各壁を区別するため、正面壁、背面壁、上面壁及び下面壁と呼ぶが、正面、背面、上面及び下面は、特定の方向を意味しない。
【0012】
図1〜図5に於いて、1は、シート材を組み立てて形成された包装ケースを示す。
なお、図6は、包装ケース1を形成するシート材の展開図である。
該包装ケース1は、正面壁2及び背面壁3を有する筒状壁4と、前記筒状壁4の上方開口を塞ぐ上面壁5と、前記筒状壁4の下方開口を塞ぐ下面壁6と、を有する。
包装ケース1は、下面壁6を下にして自立させることができる。
【0013】
包装ケース1の筒状壁4の内部には、図示したように、円筒状物品10が収納される。収納された円筒状物品10は、その下面が包装ケース1の下面壁6の上に接した状態で、下面壁6上に載置されていると共に、その上方が付勢片部8によって下面壁6側に付勢されている。付勢片部8によって円筒状物品10が下方に付勢されているので、収納された円筒状物品10は、下面壁6と付勢片部8の間に挟持されている。よって、収納された円筒状物品10は、上下方向へ位置ズレし難く、且つ、筒状壁4内で回転し難い。
付勢片部8によって円筒状物品10が付勢されるため、付勢片部8と下面壁6の間隔(付勢片部8と下面壁6の間の上下長さ)は、収納される円筒状物品10の上下長さよりも短い。もっとも、この間隔が余りに短過ぎると、円筒状物品10を収納できない虞があるので、前記間隔は、適切な範囲に設計される。
【0014】
筒状壁4は、平坦状の正面壁2と円弧面又は多角形面の背面壁3とを有する筒状体であるため、円筒状物品10を筒状壁4の幅方向略中央部に収納できる。さらに、上面壁5の面内に形成された穴部7に、円筒状物品10が保持されるので、円筒状物品10が位置ズレし難い。このように筒状壁4の形状と穴部7の相互作用によって、収納された円筒状物品10は、幅方向に位置ズレを起こすことなく、筒状壁4の幅方向中央部に保持される。
【0015】
包装ケース1を形成するシート材は、特に限定されず、従来公知のシートを用いることができる。
シート材としては、例えば、合成樹脂製シート、金属蒸着層を有する合成樹脂製シート、厚紙、及びこれらの積層シートなどが挙げられる。
好ましくは、シート材としては、合成樹脂製シートを含むシートが用いられ、より好ましくは、合成樹脂製シート(2枚以上の合成樹脂製シートが積層された樹脂製シートを含む)が用いられる。合成樹脂製シートの材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系、ポリスチレン系、ポリアミド系などが挙げられる。特に、耐屈曲性(ヒンジ特性)に優れていることから、ポリプロピレン製シート、又はポリプロピレン製シートが積層された樹脂製シートが好ましい。
【0016】
また、シート材は、透明性に優れたシートを用いることが好ましい。該透明性に優れたシートとしては、全光線透過率が70%以上のシートが好ましく、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。ただし、全光線透過率は、JIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に準拠した測定法によって測定される値をいう。
【0017】
上記シート材は、無色であることが好ましいが、透明性を損なわない範囲で着色されていてもよい。
シート材の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.2mm〜1.0mm程度である。
ポリプロピレン製シートを用いる場合には、適度な剛性を有することから、シート材の厚みは、0.2mm〜0.6mmが好ましい。
【0018】
筒状壁4の内部には、円筒状物品10が収納される。円筒状物品10は、その外周面が円筒状の胴部を有する物品である。円筒状物品10は、それを水平方向(筒の軸芯方向と直交する面)で切断した外形が真円状であるもののほか、同外形が若干楕円状のものを含む。このように外形が楕円状の物品も、ケース内に収納したときに回転し得るからである。
また、円筒状物品10は、実質的に径差を有しない直胴型の円筒状物品、上下方向の何れかの部分において径差を有する円筒状物品(例えば、多段型、ロケット型又は瓢箪型の円筒状物品)などが含まれる。
このような円筒状の胴部を有する物品10としては、略円筒状容器(略円筒状には、上述のように楕円形状を含む)に入れられた化粧品、略円筒状容器に包装された菓子、スプレー缶、円筒状乾電池などが挙げられる。
【0019】
筒状壁4は、平坦面とされた正面壁2と、円弧面とされた背面壁3と、を有する筒状体である。該筒状壁4の上方は、上方開口を有し、且つ、筒状壁4の下方は、下方開口を有する。
正面壁2は、所定幅の矩形状シート片から形成されている。
正面壁2を形成する矩形状シート片の幅は、特に限定されないが、好ましくは、収納される円筒状物品10の直径に対して1.5倍〜3倍程度に形成され、より好ましくは、1.8倍〜2.2倍程度に形成される。
例えば、直径約30mmの円筒状物品10を収納する場合には、正面壁2の幅は、45mm〜90mm程度に形成される。
なお、正面壁2の上方には、ヘッダー片74が延設されている。該ヘッダー片74は、例えば、正面壁2の幅と略同じ幅であり、正面壁2の上辺から一体的に延設されている。ヘッダー片74の面内の中央部には、吊下げ孔が形成されている。
【0020】
背面壁3は、正面壁2の幅よりも幅広の矩形状シート片から形成されている。
背面壁3の両側辺は、幅方向と直交する方向に形成された第1折り罫線1a及び第2折り罫線2aを介して、正面壁2の両側辺に連設されている。両側辺が正面壁2に連設され且つ幅広の矩形状シート片から形成された背面壁3は、外側へ膨らんだ円弧面となる。
背面壁3を形成する矩形状シート片の幅は、好ましくは、収納される円筒状物品10の直径に対して2倍〜4倍程度に形成され、より好ましくは、2.2倍〜3倍程度に形成される。
【0021】
なお、図6は、上記包装ケース1を形成するシート材11の展開図である。
41は、正面壁2の一方の側辺に連設された糊代片を示す。該糊代片41を背面壁3の他側部に接着することによって、筒状壁4が形成される。
また、3a,4aは、第1折り罫線1a及び第2折り罫線2aの近傍に且つこれと平行に形成された第3折り罫線及び第4折り罫線を示す。包装ケース1内に円筒状物品10を収納しないとき、該第3折り罫線3a及び第4折り罫線4aにおいて背面壁3を折り曲げることによって背面壁3が平坦状になるため、筒状壁4を扁平状に折り畳むことができる。もっとも、該第3折り罫線3a及び第4折り罫線4aが形成されていなくても、筒状壁4の所定位置に円筒状物品10を収納できる。
第3折り罫線3a及び第4折り罫線4aが形成されている場合、包装ケース1内に円筒状物品10を収納したとき、背面壁3は、その罫線3a,4aで鈍角状に折れ曲がるので、背面壁3は、該折り罫線3a,4aにおいて鈍角部を有する円弧面となる。
なお、包装ケース1の各部に対応する符号を、図6のシート材11に付している。
【0022】
上記筒状壁4の上方開口を塞ぐため、該上方開口に、上面壁5が嵌められている。
上面壁5は、平面視略台形状に形成されている。
なお、本明細書において、平面視形状は、面に対して垂直な方向から見た形状をいう。また、本明細書において、略台形状とは、一組の対辺(対辺とは、上底と下底を意味する)が平行で且つ下底が上底よりも長い四角形状を含む。さらに、本明細書において、上底及び下底は、直線状の辺のほか、僅かに湾曲した辺を含む。
好ましくは、上面壁5は、一方の斜辺と下底との成す角及び他方の斜辺と下底との成す角(下底の両側部に形成される2つの内角)が、いずれも鋭角である台形状に形成される。より好ましくは、上面壁5は、図3に示すように、等脚台形状に形成されている。
なお、本明細書において、等脚台形状とは、一方の斜辺と下底との成す角及び他方の斜辺と下底との成す角が、同じ角度の鋭角である台形状を意味する。
前記鋭角は、好ましくは20°〜60°であり、より好ましくは25°〜50°である。
【0023】
略台形状の上面壁5は、その上底を背面壁3側に向けて配置され、且つその下底を正面壁2側に向けて配置されている。
上面壁5は、好ましくは、その上底を背面壁3の略中央部に向けて配置されている。このように上面壁5が配置されていることによって、背面壁3は、その略中央部が最も外側へ膨らんだ円弧面形状となる。従って、背面壁3の幅方向略中央部に円筒状物品10を保持することができる。
【0024】
具体的には、上面壁5の上底は、第5折り罫線5aを介して背面壁3の上辺の略中央部に連設されている。上底に沿って形成された第5折り罫線5aにおいて上面壁5を折り曲げることによって、上面壁5が筒状壁4の上方開口に嵌められ、該上方開口を塞いでいる。
また、上面壁5の一方の斜辺と背面壁3の上辺の一方側の間には、平面視略三角形状の第1連結片71が第6折り罫線6a及び第8折り罫線8aを介して連設されている。上面壁5の他方の斜辺と背面壁3の上辺の他方側の間には、同様に平面視略三角形状の第2連結片72が第7折り罫線7a及び第9折り罫線9aを介して連設されている。第1連結片71及び第2連結片72は、上面壁5の両斜辺に沿って形成された各折り罫線6a,7a及び背面壁3の上辺の両方側に沿って形成された各折り罫線8a,9aを介してそれぞれ折り曲げ可能である。
【0025】
上記第1連結片71及び第2連結片72は、上面壁5を筒状壁4の上方開口に嵌めたときに、上面壁5の両斜辺と背面壁3の上辺の両方側の間に生じる隙間を閉塞すると共に、背面壁3の内面を外側へ押圧する片である。
具体的には、上面壁5を上底において折り曲げたとき、上記第6折り罫線6a及び第7折り罫線7aにおいて第1連結片71及び第2連結片72が上面壁5の外面に対して略直角状に折れ曲がる。かかる第1連結片71及び第2連結片72が上面壁5の外面に対して略直角状に折れ曲がることによって、前記背面壁3の内面が前記第1連結片71及び第2連結片72によって外側に押し出されている。かかる第1連結片71及び第2連結片72によって背面壁3が補強され、背面壁3の形状(本実施形態では、背面壁3の円弧面)が維持される。
【0026】
一方、上面壁5の下底には、フラップ片73が第10折り罫線10aを介して連設されている。フラップ片73は、下底に沿って形成された第10折り罫線10aを介して折り曲げ可能である。
このフラップ片73の幅は、好ましくは、正面壁2の幅と略同じに形成されている。
フラップ片73は、上面壁5を筒状壁4の上方開口に嵌めたときに、第10折り罫線10aにおいて上面壁5の内面に対して約90度に折り曲げられる。折り曲げられたフラップ片73は、筒状壁4の内部であって正面壁2の内面に沿って差し込まれている。
このように上面壁5の下底においてフラップ片73が折り曲げられていることにより、上面壁5の下底の直線状が維持されるため(上面壁5の下底の剛性が高くなるため)、正面壁2の平坦面形状が維持される。
【0027】
さらに、上面壁5の面内には、収納される円筒状物品10の上方外周面に近接する縁を有する穴部7と、前記穴部7の縁の一部分から穴部7の中心方向に延出された付勢片部8と、が形成されている。
前記穴部7及び付勢片部8は、例えば、図6に示すように、上面壁5の面内に有端線からなる切り目9を形成することにより、同時に形成できる。上面壁5の面内に切り目9を形成する方式の場合、切り目9に沿って上方に抜き出される領域(有端線からなる切り目で囲われた領域)が付勢片部8となり、前記領域を抜き出した後に生じる開口部分が穴部7となる。
【0028】
具体的には、前記穴部7は、円筒状物品10の上方部が当該穴部7から上面壁5の外面よりも外側へ覗き出るように、前記上面壁5の面内に開口された部分である。円筒状物品10の上方部が穴部7から覗き出た部分を判りやすく表すため、図2において、その部分を薄墨塗りで表している。
穴部7の縁は、当該穴部7から覗き出る円筒状物品10の上方部の外周面に近接するように形成されている。なお、近接するとは、穴部7の縁の一部若しくは全部が円筒状物品10の上方外周面の近傍に位置する場合、又は、穴部7の縁の一部若しくは全部が円筒状物品10の上方外周面に当接する場合が含まれる。
【0029】
穴部7の縁に近接した状態で、円筒状物品10の上方部が穴部から覗き出る(突出する)ことにより、筒状壁4の内部に収納された円筒状物品10がその幅方向に位置ズレすることを防止できる。筒状壁4の幅方向に円筒状物品10が位置ズレすることをより確実に防止できることから、穴部7の縁形状は、平面視略円弧状であることが好ましく、特に、円筒状物品10の上方外周面の曲率と略同じ円弧状に形成されていることがより好ましい。
さらに、円筒状物品10を筒状壁4の幅方向中央部に保持できることから、前記穴部7は、上面壁5の幅方向中央部に形成されていることが好ましい。
【0030】
次に、付勢片部8は、前記穴部7から上方へ覗き出る円筒状物品10を、下面壁6側へ付勢する片である。
また、付勢片部8は、穴部7の中心方向に延出されているので、付勢片部8は穴部7から覗き出る円筒状物品10の上面側に位置する。このように付勢片部8が円筒状物品10の上面側に位置していることにより、円筒状物品10が上面壁5の外面から露出する部分(円筒状物品10の露出部分)を小さくできる。特に、付勢片部8の縁が円筒状物品10の上面の縁と略同じ円弧状又は前記上面の縁よりも大きい円弧状に形成されていることが好ましい。このように形成されていることによって、穴部7から覗き出る円筒状物品10の上面を付勢片部8によって確実に覆うことができるため、円筒状物品10の露出部分をより小さくできる。露出部分を小さくすることにより、円筒状物品10が収納された包装ケース1の流通時、異物が円筒状物品10に接触して該物品10が回転することを確実に防止できる。
【0031】
また、より大きな付勢力を有し、さらに、収納された円筒状物品10の上面と略平行に位置することから、付勢片部8は、その面が上面壁5の面と平行に延出されていることが好ましい。
なお、付勢片部8は、収納される円筒状物品10の上面全体に接していてもよいし、或いは、収納される円筒状物品10の上面の一部(上面の縁部)に接していてもよい。何れの場合でも、付勢片部8によって、収納される円筒状物品10を下方に付勢できるからである。
【0032】
上記穴部7及び付勢片部8は、例えば、平面視略半円弧線状の切り目9を形成することにより形成できる。本実施形態では、上面壁5の下底側の2つの起点(有端線からなる切り目の両端部)から上面壁5の上底側に円弧状に膨らむように、上面壁5を切り込むことによって、前記略半円弧線状の切り目9が形成されている。このように切り目9の両端部を上面壁5の下底側に位置させて切り目9を形成することによって、上面壁5を筒状壁4の上方開口に嵌め合わすときに、円筒状物品10の上方部を穴部7内に導き入れ易い。
もっとも、前記略半円弧線状の切り目9は、上記形成位置とは180度反対に、その両端部を上面壁5の上底側に位置させて形成してもよい。このように切り目9の両端部を上面壁5の上底側に位置させて切り目9を形成することによって、穴部7から覗き出る円筒状物品10の上方部が、正面壁2(ヘッダー片74)側に対面する。このため、穴部7から覗き出た円筒状物品10の露出部分が、異物と接触することが殆ど無くなる。
【0033】
次に、上記筒状壁4の下方開口を塞ぐため、該下方開口に、下面壁6が嵌められている。
下面壁6の内面の上には、円筒状物品10が載せられる。上記付勢片部8によって下方に付勢された円筒状物品10によって、下面壁6が下方に膨らまないようにするために、下面壁6は、その幅方向と直交する方向の中央部において、山型状に折れ曲げられている。断面視山型状の下面壁6は、荷重によって変形し難いため、下面壁6と付勢片部8の間において、円筒状物品10を上下方向に位置ズレさせずにこれを挟持できる。
また、筒状壁4の下方開口に嵌め入れられた下面壁6は、上述のように断面視形状が山型状であるが、下方から見たときの形状は略台形状である(図4参照)。本実施形態では、下面壁6の形状(下から見たときの形状)は、上面壁5の平面視形状と略同じ形状に形成されている。
前記略台形状の下面壁6は、その上底を背面壁3側に向けて配置され、且つその下底を正面壁2側に向けて配置されている。下面壁6は、上面壁5と同様に、好ましくは、その上底を背面壁3の略中央部に向けて配置されている。このように下面壁6が配置されていることによって、背面壁3は、その略中央部が最も外側へ膨らんだ円弧面形状となる。従って、背面壁3の幅方向略中央部に円筒状物品10を保持することができる。
【0034】
具体的には、下面壁6は、第12折り罫線12aを介して正面壁2の下辺に連設された第1片75と、第11折り罫線11aを介して前記第1片75に連設された第2片76と、第13折り罫線13aを介して背面壁5の下辺の略中央部に連設された平面視略台形状の第3片77と、から構成されている。
前記第3片77を第2片76に接着し、第11折り罫線11aにおいて第1片75と第3片77を山型状に折り曲げることにより、筒状壁4の下方開口に下面壁6が形成されている。
【0035】
次に、上記包装ケース1の組み立て及び包装ケース1に円筒状物品10を収納する手順を説明する。
図6に示すような形状に切り抜かれたシート材11を第1〜第4折り罫線1a,2a,3a,4aにおいて折り曲げながら、糊代片41を背面壁3の他側部に接着する。同時に、第12折り罫線12a及び第13折り罫線13aにおいて第1片75及び第3片77をそれぞれ内側へ折り曲げると共に、第11折り罫線11aにおいて第2片76を折り曲げながら第2片76の外面に第3片77を接着する。このようにして下方開口が下面壁6によって塞がれ且つ上方開口が開いた筒状壁4を得ることができる。
【0036】
この筒状壁4の上方開口からその内部に、円筒状物品10を筒状壁4の幅方向略中央部に位置合わせして挿入する。
次に、第5〜第9折り罫線5a,6a,7a,8a,9aにおいて上面壁5、第1連結片71及び第2連結片72を同時に内側へ折り曲げる。この際、上面壁5に形成された穴部7(切り目9で囲われた領域)に前記円筒状物品10の上面が一致するように、上面壁5を折り曲げる。
このように上面壁5を折り曲げると、図1に示すように、円筒状物品10の上面によって付勢片部8が上方に少し押し出され(円筒状物品10が付勢片部8によって下面壁6側へ付勢され)、円筒状物品10の上方部が穴部7から少し覗き出ることによって円筒状物品10の上方外周面に穴部7の縁が近接する。また、第1連結片71及び第2連結片72が、第6折り罫線6a及び第7折り罫線7aにおいて背面壁3の外面に対して略直角状に折れ曲がり、背面壁3を補強する。
そして、第10折り罫線10aにおいてフラップ片73を折り曲げて筒状壁4の内部に挿入することにより、図1に示すような、円筒状物品10が収納された包装ケース1(物品包装体)が得られる。
【0037】
上記物品包装体(円筒状物品10が収納された包装ケース1)は、例えば、包装ケース1のヘッダー片74の吊下げ孔をハンガー棒に通して吊下げ陳列することができる。吊下げ時には、包装ケース1の正面壁2が消費者に見えるように陳列することが好ましい。
また、上記物品包装体は、包装ケース1の下面壁6を下にして陳列棚に立てて陳列(自立陳列)することもできる。上記包装ケース1は、筒状壁4を構成する正面壁2が平坦面であるため、複数の物品包装体について、それぞれ正面壁2を前側に向けて並べて自立陳列できる。このように正面壁2を前側に向けて物品包装体を自立陳列することにより、消費者に整然としたイメージを与える上、包装ケース1の正面壁2側から、消費者に対して、円筒状物品10を良好に見せることができる。
【0038】
また、上記包装ケース1は、筒状壁4を構成する背面壁3が円弧面であるため、筒状壁4の内部に収納した円筒状物品10は、正面壁2と円弧面の背面壁3の略中央部との間に保持される。さらに、円筒状物品10の上方外周面に穴部の縁が近接しているので、収納された円筒状物品10が筒状壁4の幅方向に位置ズレすることを防止できる。
さらに、収納された円筒状物品10が付勢片部8と下面壁6の間に挟持されているので、円筒状物品10が、上下方向に位置ズレし難く、且つ、回転し難い。
このため、上記包装ケース1は、別途の保持部材を用いなくても、筒状壁4の所定位置(背面壁3の略中央部)に円筒状物品10を保持することができ、物品包装体の流通時に、円筒状物品10が位置ズレすることを防止できる。
さらに、上記包装ケース1は、上面壁5及び下面壁6が略台形状に形成されているので、背面壁3の円弧面形状を維持することができる。
【0039】
次に、本発明の包装ケース1の他の実施形態を示す。
以下、他の実施形態について説明するが、上記実施形態と同様の構成及び効果についてはその説明を省略し、用語及び図番を援用する場合がある(例えば、図面において、上記実施形態と同様の部材又は部分にその符号を付し、明細書において、その部材又は部分の説明を省略する)。
上記実施形態では、切り目9は、円弧線状であるが、角張った形の線状などでもよい。
また、切り目は、線状に限られず、上面壁5の面内を所定形状に打ち抜いた(例えば三日月状の打ち抜き)切り目でもよい。
図7に示すように、例えば三日月状に打ち抜いた切り目9を有する上面壁5は、上記実施形態と同様に、円筒状物品10の上方部が覗き出る穴部7と、円筒状物品10を下方に付勢する付勢片部8と、を有する。
【0040】
上記実施形態では、下面壁6は、上向き山型状に形成されているが、下面壁6は、円筒状物品10の押し下げによって、下方に膨らまないように形成されていればよい。
例えば、図8及び図9に示すように、下面壁6は、上向き傾斜状の第4片78と、前記第4片78の下方に設けられた第5片79と、から構成されていてもよい。この第5片79は、その中央部において折り畳まれており、前記第4片78を上方に付勢する作用がある。上方に付勢された上向き傾斜状の第4片78を有する下面壁6も、上記実施形態と同様に、荷重によって変形し難いため、下面壁6と付勢片部8の間において、円筒状物品10を上下方向に位置ズレさせずにこれを挟持できる。
【0041】
また、上記実施形態では、下面壁6は、正面壁2に連設された第1片75(及び第2片76)と背面壁3に連設された第3片77を接着することにより形成されているが、上記上面壁5と同様に、下面壁6が正面壁2の下辺又は背面壁3の下辺に連設され、該下面壁6が筒状壁4の下方開口に嵌め入れられる形式でもよい。
【0042】
上記実施形態では、正面壁2は平坦状な面とされているが、正面壁2は、平坦状に限られない。本発明の包装ケース1は、背面壁3が円弧面(又は多角形面)とされているので、この形状に従って円筒状物品10を筒状壁4の所定位置(例えば、筒状壁4の幅方向略中央部)に収納保持できる。
例えば、正面壁2が非平坦状に形成された包装ケース1を、図10〜図13に示す。
この包装ケース1の正面壁2は、その下方部が円弧面又は台形辺状の面とされ、この下方部から上方部に向かうに従って徐々に平坦状とされている。
なお、この包装ケース1を形成するシート材の展開図を図14に示す。
【0043】
図10〜図13に示す包装ケース1は、図1に示す包装ケース1と同様に、山型状に折り曲げられた下面壁6を有するが、この下面壁6を下方から見たときの形状は、横長の六角形状である。
かかる下面壁6は、図14に示すように、正面壁2の下辺に連設された略台形状の第1片75と、背面壁5の下辺に連設された略台形状の第3片77と、を有する。この第1片75に連設された第2片76を第3片77に接着し、第11折り罫線11aにおいて第1片75と第3片77を山型状に折り曲げることにより、側方から見たときに山型状で且つ下方から見たときに横長六角形状の下面壁6を形成できる。
上記横長六角形状の下面壁6は、その自由端の縁が正面壁2及び背面壁3の内側に強く接している。このため、下面壁6の強度が増し、筒状壁4に円筒状物品10を収納した状態で包装ケース1を運搬しても、下面壁6が抜け外れることはない。
【0044】
上記実施形態では、上面壁5に形成されたフラップ片73は、筒状壁4の内部であって正面壁2の内面に沿って差し込まれているが、例えば、図8及び図9に示すように、フラップ片73は、筒状壁4の外部であって正面壁2から突出されたヘッダー片74に沿って添えられていてもよい。
【0045】
さらに、上記実施形態では、背面壁3は、実質的に円弧面とされているが、背面壁3は、多角形面とされていてもよい。該多角形面は、上記円弧面の一部に鈍角部(鈍角部は、好ましくは120度以上180度未満)が形成された形状である。多角形面の背面壁3であっても、筒状壁4の所定位置に物品を保持することができる。
多角形面の背面壁3は、背面壁3の面内に、上下方向に延びる1本又は複数本の折り罫線を形成することによって形成できる。例えば、上面壁5の上底の両端部と下面壁6の上底の両端部を結ぶように、背面壁3の面内に上下方向に延びる折り罫線(この場合には、2本の折り罫線)を形成することにより、背面壁3が多角形面とされていてもよい。また、例えば、背面壁3の面内に、所定間隔を開けて、上下方向に延びる折り罫線を3本以上形成することにより、背面壁3が多角形面とされていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の包装ケースは、例えば、略円筒状の外周面形状を有する物品(例えば、略円筒状容器に入れられた化粧品、略円筒状容器に包装された菓子、スプレー缶など)を収納するために使用できる。
【符号の説明】
【0047】
1…包装ケース、2…正面壁、3…背面壁、4…筒状壁、5…上面壁、6…下面壁、7…穴部、8…付勢片部、9…切り目、71…第1連結片、72…第2連結片、1a〜13a…第1〜第13折り罫線、10…円筒状物品、11…シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を組み立てて形成されており、
円筒状物品を収納する筒状壁と、前記筒状壁の上方開口を塞ぐ上面壁と、前記筒状壁の下方開口を塞ぎ且つ前記円筒状物品が載せられる下面壁と、を有する包装ケースであって、
前記筒状壁が、正面壁と、前記正面壁の両側辺に折り罫線を介して連設された円弧面又は多角形面の背面壁と、を有し、
前記上面壁が、略台形状に形成されており、
前記上面壁の面内には、収納される円筒状物品の上方外周面に近接する縁を有する穴部が形成されており、前記円筒状物品を下面壁側へ付勢する付勢片部が、前記穴部の縁の一部分から中心方向に延出されていることを特徴とする包装ケース。
【請求項2】
前記略台形状の上面壁の上底が、前記背面壁の上辺の略中央部に連設されていると共に、前記上面壁の両斜辺と背面壁の上辺の両方側の間には、第1連結片及び第2連結片が折り罫線を介して連設されており、前記上底において前記上面壁を折り曲げ且つ前記折り罫線において前記第1連結片及び第2連結片をそれぞれ折り曲げることによって、前記上面壁が前記筒状壁の上方開口を塞いでいると共に、前記背面壁が前記第1連結片及び第2連結片によって補強されている請求項1に記載の包装ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−68375(P2011−68375A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219921(P2009−219921)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【出願人】(000202154)相互印刷紙器株式会社 (43)
【Fターム(参考)】