包装体及びその製造方法
【課題】金属層を有する包装体に無線通信用のIC部を備えていながらも、通信状態の悪化を最小限に抑制した包装体を提供する。また、このような包装体を簡便に製造することのできる製造方法を提供する。
【解決手段】包装本体部10には、側縁開口15aを有するように略円形状に切欠かれた切除部15が形成されている。切除部15には、IC部30が取り付けられ、IC部30のIC本体32はその全域が包装本体部10の切除部15に位置している。包装本体部10の切除部15においては、金属層(側面シート)の厚み方向における電波及び磁束の通過が許容されるとともに金属層(側面シート)の面方向における電波及び磁束の透過が許容される。
【解決手段】包装本体部10には、側縁開口15aを有するように略円形状に切欠かれた切除部15が形成されている。切除部15には、IC部30が取り付けられ、IC部30のIC本体32はその全域が包装本体部10の切除部15に位置している。包装本体部10の切除部15においては、金属層(側面シート)の厚み方向における電波及び磁束の通過が許容されるとともに金属層(側面シート)の面方向における電波及び磁束の透過が許容される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層を有する多層構造物で形成された包装体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電波や磁束(磁界)などを用いた近距離の無線通信によって情報をやりとりするRFID(Radio Frequency Identification)技術が知られており、ICタグ(RFIDタグ)を包装体に取り付けることが行われている。たとえば、ICタグに製造工場や、製造日、製品ごとに付される識別番号等の製品情報を記録させておき、ICタグとタグリーダとが通信して、情報を読み出したり書き込んだりすることで、製品の物流管理、在庫管理等を行うことができる。ICタグとタグリーダとの通信方式としては、たとえば、ICタグのアンテナとタグリーダのアンテナとを磁束結合させて信号を伝達する電磁誘導方式と、ICタグのアンテナとタグリーダのアンテナとで電波をやりとりして信号を伝達する電波方式とが知られている。
【0003】
ICタグ付きの包装体としては、特許文献1に開示されているものが知られている。図11に示すように、特許文献1の包装体は、金属材料を含まない材料で形成された四角箱状の外箱51の内部にアルミニウム等の金属層を含む積層フィルムで形成された内袋52が収容されている。また、外箱51の外面には、無線ICタグ53が貼り付けられている。そして、外箱51の無線ICタグ53が貼り付けられている面と内袋52との間には、間隔保持部材54が挿入されている。間隔保持部材54は、ダンボールや発泡プラスチック等の非金属材料で形成され、その厚みが10mm以上に形成されている。この間隔保持部材54の存在によって、無線ICタグ53と内袋52の金属層とが10mm以上離間する。
【0004】
電磁誘導方式によって通信する場合、タグリーダのアンテナから発せられる磁束によって無線ICタグ53のアンテナが電磁誘導される。したがって、無線ICタグ53のアンテナの周りを取り囲むように磁束が通ることができるようになっていなければならない。特許文献1の包装体では、無線ICタグ53と内袋52とが10mm以上離間しているので、無線ICタグ53の周りを通る磁束が金属層によって遮られることが抑制され、電磁誘導方式による良好な通信が実現される。
【特許文献1】特開2006−056602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の包装体においては、無線ICタグ53が貼り付けられる外箱51が必須である。さらに、外箱51と内袋52との間には間隔保持部材54を挿入しなければならない。このような構成では、無線ICタグ53を機能させるために外箱51や間隔保持部材54が必要であり、材料コストの上昇や製造方法の煩雑化をもたらすため、包装体の製造コストの上昇は避けられない。たとえば、金属層を有する包装体にICタグを直接貼り付けることで、製造コストを低下させることはできる。しかし、この場合は、磁束が包装体の金属層によって遮断されてしまうため、ICタグを電磁誘導することができず電磁誘導方式による通信ができなくなる可能性がある。
【0006】
また、特許文献1の包装体にしても、ICタグを直接貼り付けた包装体にしても、ICタグから発せられる電波及び磁束は、金属層によって吸収されて減衰してしまう。そのため、ICタグが貼り付けられた側と金属層を挟んだ反対側には、電波及び磁界が届かない。したがって、タグリーダを用いてICタグが貼り付けられた側の反対側から通信しようとしても、その感度が著しく減少したり、あるいは通信が不可能となったりすることがある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであって、金属層を有する包装体に無線通信用のIC部を備えていながらも、通信状態の悪化を最小限に抑制した包装体を提供することを目的とする。また、このような包装体を簡便に製造することのできる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、金属層を有する多層構造物からなる包装本体部と、ICチップ及び無線通信用のアンテナ部を備えるIC部とを備えた包装体であって、前記包装本体部には、前記金属層の厚さ方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過を許容するとともに前記金属層の面方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過を許容する透過部が形成され、前記アンテナ部は少なくとも一部が前記透過部に位置していることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、包装本体部に形成された透過部は、金属層の厚さ方向及び面方向におけるIC部とICリーダとの通信を支援するため、該通信の好適化が実現されるとともに、該通信の多方向化が実現される。また、特許文献1にあるような外箱や間隔保持部材といった構成を必須としないため、それだけ包装体の構成を簡易にすることが可能になる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の包装体において、前記透過部は、前記多層構造物のうち少なくとも金属層が切除されてなることを特徴とする。この構成によれば、多層構造物のうち少なくとも金属層が切除されて透過部が形成されているため、金属層によって電波及び磁束の通過が害されることを抑制する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明の包装体において、前記包装本体部には、該包装本体部の開封時において切り取られる切取部が設けられており、前記透過部は前記切取部に形成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、包装本体部を開封して切取部を切り取ると、IC部も切取部と一緒に包装本体部から切り離されることになる。したがって、使用者がIC部の取り外しを意識しなくとも、包装本体部の開封と同時にIC部を取り外すことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明の包装体において、前記IC部は、非金属材料で形成されたシール部材と該シール部材の接着面に設けられるIC本体とを備え、前記透過部は、前記シール部材によって覆われていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、シール部材によって透過部が覆われているため、透過部を形成することによって包装本体部の強度が低下したり、見栄えが悪くなったりすることを抑制することができる。また、シール部材は非金属材料で形成されているため、電波や磁束が妨げられることを抑制し、良好な通信を維持することができる。
【0015】
上記の目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、金属層を有する多層構造物からなる包装本体部と、無線通信用のアンテナ部及びICチップを備えるIC部とを備えた包装体の製造方法であって、前記金属層の厚さ方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過が許容されるとともに前記金属層の面方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過が許容されるように前記包装本体部に前記IC部を取り付ける工程を備えることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、包装本体部にIC部を取り付ける工程を経ることによって、金属層の厚さ方向及び面方向におけるIC部とICリーダとの通信を支援する。また、包装本体部に対してIC部を取り付ける工程を経ることでIC付きの包装体を製造することができるため、包装体の製造方法としては、従来の製造方法からの大幅な変更を強いられることはない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の包装体は、金属層を有する多層構造物にIC部を備えていながらも、通信状態の悪化を最小限として良好な通信状態を確保することができる。また、本発明の包装体の製造方法によれば、このような包装体を比較的簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の包装体に関する実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。図1及び図3に示すように、本実施形態の包装体は、複数のシートからなる袋状の包装本体部10を備えるとともに、無線通信を行うIC部30を備えている。
【0019】
図2に示すように、包装本体部10は折り目が上方(図2において上側)を向くように二つ折りにされた底面シート11と底面シート11を挟み込む一対の側面シート12とで構成されている。底面シート11及び側面シート12は、可撓性を有する樹脂シートからなる基材層を有している。底面シート11及び側面シート12の基材層の一方側の面には熱溶着層が設けられているとともに他方側の面には金属層が設けられており、底面シート11及び側面シート12は、三つの層からなる多層構造物である。
【0020】
図2に示すように、二つ折りにされた状態の底面シート11は四角形状に形成されているとともにその側縁に長孔状の接着孔11aが前後を貫通するように形成されている。底面シート11は二つ折りにされた状態で、熱溶着層側の面が外側(側面シート12と向かい合う側)になるとともに金属層側の面が内側となるように配置される。一対の側面シート12は縦長四角形状に形成されており、底面シート11を両側から挟み込む際には、それぞれの側面シート12の熱溶着層側の面が向かい合うように配置される。
【0021】
図1及び図3に示すように、二つ折りされた底面シート11と一対の側面シート12とは底縁接着部21において熱溶着で接着されている。図3に示すように、底縁接着部21は、正面視すると包装本体部10の高さ方向(図3において上下方向)において円弧状に凹んだ曲線と包装本体部10(側面シート12)の側縁及び底縁によって囲まれた領域となるように形成されている。また、底縁接着部21においては、底面シート11に形成されている接着孔11aを介して一対の側面シート12同士が接着されている。
【0022】
図1及び図3に示すように、一対の側面シート12は、その側縁同士が側縁接着部22において熱溶着で接着されている。図3に示すように、側縁接着部22は、包装本体部10の高さ方向において一定の幅(図3において左右方向の幅)を保つように形成されている。また、一対の側面シート12はその上縁同士が上縁接着部23において熱溶着で接着されている。図3に示すように、上縁接着部23は、横長の長方形状となるように形成されている。
【0023】
図2及び図3に示すように、一対の側面シート12の熱溶着層側の面には、包装本体部10の開封時に開口を密閉することのできる密閉チャック13が形成されている。密閉チャック13は、上縁接着部23の下縁23aよりも下方の高さ位置において包装本体部10の幅方向に延びるように形成されている。なお、図3においては、密閉チャック13を点線で示している。
【0024】
図1及び図3に示すように、包装本体部10の両側の側縁接着部22には、それぞれ三角形状の切取口14が形成されている。切取口14は、密閉チャック13よりも上方で、かつ上縁接着部23の下縁23aよりも下方の高さ位置に形成されている。本実施形態の包装体では、この切取口14を起点として包装本体部10の幅方向に沿って開封するので、包装本体部10のうち切取口14よりも上側の部分が開封時において切り取られる切取部Cである。
【0025】
図2及び図5に示すように、上縁接着部23には多層状をなす一対の側面シート12全体が切除されてなる透過部としての切除部15が形成されている。切除部15は、側縁開口15aを有するように包装本体部10の一方の側縁(図3において右側の側縁)から包装本体部10の幅方向中央側へ向かって略円形状に切欠かれている。こうした構成によって、切除部15は、中心から包装本体部10(金属層)の厚み方向の両方向(図1においてX方向及びY方向)に開放されているとともに、中心から包装本体部10(金属層)の面方向の一方向(図1においてZ方向)に開放されている。本実施形態では、前記面方向の一方向は、包装本体部10の幅方向と同一である。なお、本実施形態では、上縁接着部23は、切取口14よりも上方に位置しており、上縁接着部23は、切取部Cに含まれる。本実施形態の切除部15は、上縁接着部23に形成されているので切取部Cに形成されているといえる。
【0026】
図4に示すように、IC部30は、非金属材料で形成されたシール部材31に円形状のIC本体32を接着してなる。シール部材31は、一対の円板部31aとそれら円板部31aを連結する連結部31bとを有し、連結部31bで二つ折りしたときに、円板部31a同士が互いに重なり合って切除部15と相似形状となるように形成されている。
【0027】
図6に示すように、円板部31aは、略円形状に形成されており、その直径R1は、切除部15の包装本体部10の高さ方向における最大幅(直径)R2よりも大きく設定されている。連結部31bは、略長方形状に形成されており、一対の円板部31aの連結方向と直交する方向の幅W1は、切除部15の側縁開口15aの包装本体部10の高さ方向における幅W2よりも大きく設定されている。なお、図6においては切除部15を点線で表している。
【0028】
図4に示すように、シール部材31の接着面には、円形状のIC本体32が設けられている。IC本体32は円状の円形シート33を備え、その直径R3は切除部15の最大幅R2よりも小さく設定されている。円形シート33の表面においてその中央には、情報を保存、演算するICチップ34が取り付けられており、このICチップ34からは無線通信用のアンテナ部35が延びている。このアンテナ部35は、円形シート33の中央のICチップ34から外方に延びるとともに、円形シート33の外周に沿って略円形状に引き回されている。
【0029】
図1に示すように、IC部30は、連結部31bで二つ折りにされ、包装本体部10の上縁接着部23を両側から挟みこんで切除部15を覆うように取り付けられている。また、IC部30のIC本体32はその全域が包装本体部10の切除部15に位置している。
【0030】
次に、上記の包装体を製造する方法、とくに包装本体部10にIC部30を取り付ける方法について説明する。本実施形態では、包装体は、袋状の包装本体部10を形成して切除部15を形成する工程と、IC部30を取り付ける工程とを経て製造される。
【0031】
包装本体部10を形成する工程では、先ず、帯状に延びる底面シート11をその長手方向に沿って二つ折りにする。そして、帯状に延びるとともに、あらかじめ所定間隔おきにその長手方向に沿って密閉チャック13が取り付けられた一対の側面シート12で二つ折り状態の底面シート11を挟み込みつつ重ね合わせる。この重ね合わせた状態でヒートシール手段によって底面シート11と一対の側面シート12とを熱溶着して底縁接着部21を形成するとともに、一対の側面シート12を熱溶着して、側縁接着部22及び上縁接着部23を形成する。そして、熱溶着された帯状の底面シート11及び側面シート12をその長手方向所定間隔おきに短手方向に沿って裁断して袋状の包装本体部10を得る。そして、包装本体部10の両側縁に切取口14を形成する。また、包装本体部10の上縁接着部23において、一対の側面シート12を打ち抜いて切除部15を形成する。
【0032】
次いで、包装本体部10にIC部30を取り付ける工程を行う。この工程では、金属層(側面シート12)の厚さ方向において金属層に対する電波及び磁束の透過が許容され、さらに、金属層(側面シート12)の面方向において金属層に対する電波及び磁束の透過が許容されるように包装本体部10にIC部30を取り付ける。具体的には、図5に示すように、円形状の切除部15の中心とIC本体32の円形シート33の中心とが一致するようにIC部30を配置する。そして、シール部材31のIC本体32が設けられている面を内側(谷側)とするようにシール部材31を二つ折りにしつつ、包装本体部10の上縁接着部23(切除部15)を挟み込むようにして取り付ける。このとき、シール部材31の円板部31aの直径R1が切除部15の最大幅R2よりも大きく設定されており、連結部31bの幅W1が切除部15の側縁開口15aの幅W2よりも大きく設定されているため、切除部15の全域がシール部材31に覆われる。また、円形シート33は、その直径R3が切除部15の最大幅R2よりも小さく設定されているので、IC本体32(アンテナ部35)はその全域が包装本体部10に接することなく切除部15に位置することになる。
【0033】
次に、上記の包装体の使用態様について記載する。
本実施形態の包装体では、IC部30と図示しないICリーダとが電磁誘導方式又は電波方式によって無線通信を行う。電磁誘導方式と電波方式とでは、IC部30のIC本体32を駆動させる方法が異なっている。
【0034】
電磁誘導方式による通信の場合、ICリーダから発せられる磁束(磁場)によってIC部30のIC本体32が駆動する。包装本体部10の切除部15においては、側面シート12が切除されることで金属層も切除されており、金属層(側面シート12)の厚み方向(図1においてX方向及びY方向)における磁束の通過が許容される。さらに、切除部15の側縁開口15aにおいては、金属層(側面シート12)の面方向のうち一方向(図1においてZ方向)の磁束の通過が許容される。したがって、IC本体32のアンテナ部35のうち切除部15の側縁開口15aの近傍では、ICリーダから発せられた磁束がIC本体32のアンテナ部35の周りを取り囲むように通過することができる。そして、ICリーダから発せられてIC部30のアンテナ部35の周りを取り囲む磁束が変化することで、電磁誘導によってアンテナ部35に電流が流れる。
【0035】
一方、電波方式による通信の場合、ICリーダから発せられる電波によってIC部30のIC本体32が駆動する。本実施形態では、包装本体部10の切除部15においては、金属層(側面シート12)の厚み方向(図1においてX方向及びY方向)における磁束の通過が許容される。したがって、側面シート12の金属層の厚み方向において、どちら側からでも(図1においてX方向からでもY方向からでも)ICリーダからの電波をIC本体32のアンテナ部35に照射することができる。ICリーダからはIC本体32のアンテナ部35の共振周波数に対応する周波数の電波が発せられるので、電波が照射されたアンテナ部35は、共振して電流が流れる。そして、本実施形態では、円形シート33の直径R3が切除部15の最大幅R2よりも小さく、それらの中心が一致するように設定されているので、アンテナ部35全体が側面シート12の金属層と接触していない。したがって、アンテナ部35の共振周波数が側面シート12の金属層に起因してずれたりすることはない。
【0036】
アンテナ部35に電流が流れると、その電流によってICチップ34が駆動されるとともにICチップ34に保存された情報がアンテナ部35から電波として発せられる。本実施形態では、IC本体32全域が切除部15に位置しているため、アンテナ部35から発せられる電波は、側面シート12の金属層によって遮られることなく、金属層の厚み方向において両方向(図1においてX方向及びY方向)に発せられる。そして、ICリーダは、包装本体部10に対してどの位置に配置されていても、アンテナ部35から発せられた電波を受信することができる。
【0037】
上記の実施形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、側面シート12が切除されることで該側面シート12の金属層が切除された切除部15が形成されている。この切除部が15は、金属層(側面シート12)の厚さ方向及び面方向におけるIC部30とICリーダとの通信を支援するため、該通信の好適化が実現されるとともに、該通信の多方向化が実現される。また、IC部30を機能させるために外箱等の構成を必須としないので、包装体の構成を簡易にすることができる。
【0038】
(2)上記実施形態では、切除部15は切取部Cに形成されている。そのため、包装本体部10を開封して切取部Cを切り取ると、切除部15に位置しているIC部30も切取部Cと一緒に包装本体部10から切り離されることになる。したがって、とくに、IC部30の取り外し作業を要することがない。また、包装本体部10が開封されていればIC部30も包装本体部10に存在しないことから、ICリーダとの通信は途絶えることになり、ICリーダによる包装体の管理も簡便になる。
【0039】
(3)上記実施形態では、シール部材31によって切除部15の全域が覆われている。そのため、切除部15を形成することによって包装本体部10の強度が低下したり、見栄えが悪くなったりすることを抑制することができる。また、シール部材31は非金属材料で形成されているため、磁束や電波が妨げられることを抑制し、良好な通信を維持することができる。
【0040】
(4)上記実施形態では、IC本体32のアンテナ部35の全域が包装本体部10に接することなく切除部15に位置している。したがって、アンテナ部35の全域において、金属層(側面シート12)の厚さ方向(図1においてX方向及びY方向)における電波及び磁束の透過が可能で、良好に通信することができる。加えて、上記実施形態では、アンテナ部35が側面シート12の金属層に接していないため、アンテナ部35の共振周波数が変化しにくい。そのため、ICリーダから発せられる電波をより感度よく受信することができ、電波方式による良好な通信が可能である。
【0041】
(5)上記実施形態では、切除部15は側縁開口15aを有し、金属層(側面シート12)の面方向のうちの一方向(図1においてZ方向)における電波及び磁束の透過が可能である。そのため、IC本体32のアンテナ部35の周りを取り囲むように磁束が透過でき、電磁誘導方式による良好な通信が可能である。
【0042】
(6)上記実施形態では、IC本体32が設けられている面を内側(谷側)とするようにシール部材31を二つ折りにしつつ包装本体部10に取り付けているため、IC本体32もシール部材31によって覆われることになる。したがって、IC本体32のICチップ34やアンテナ部35が傷ついたりして故障することが抑制される。
【0043】
(7)上記実施形態では、包装本体部10に対して、切除部15を形成し、IC部30を取り付ける工程を経ることでIC本体32付きの包装体を製造することができる。そのため、包装体の製造方法としては、従来の製造方法からの大幅な変更を強いられることはない。
【0044】
なお、上記の実施形態は以下のように変更してもよく、また、以下の各変更例を互いに組み合わせて実施することも可能である。
・ 上記実施形態では、略円形状に切除部15を形成したが、切除部15の形状はこれに限らない。たとえば、側縁開口15aを有するように四角形状及び三角形状等の多角形状の切除部15を形成してもよい。このとき、IC部30のシール部材31を一対の多角形板部とそれら多角形板部を連結する連結部とを有するように形成すれば、多角形状の切除部15の全域をシール部材31で覆うことができる。
【0045】
・ 上記実施形態では、側縁開口15aを有するように切除部15を形成した。この構成に代えて、たとえば、上縁開口を有するように切除部15を形成してもよい。このとき、金属層(側面シート12)の面方向の一方向は、包装本体部10の高さ方向と同一である。このように、前記面方向の一方向は、包装本体部10の幅方向でも高さ方向でもそれ以外のいずれの方向であってもよい。
【0046】
・ 上記実施形態では、切除部15は、金属層(側面シート12)の面方向のうち一方向に開放されているが、二方向、又は三方向以上の多方向に開放するようにしてもよい。二方向に開放するようにした場合、それら方向が一直線状をなすように互いに正反対の方向を指向するようにしてもよいし、そうでなくてもよい。
【0047】
・ 上記実施形態では、IC本体32の全域が切除部15に位置していたが、IC本体32と切除部15との関係はこれに限らない。たとえば、切除部15の最大幅(直径)R2及び連結部15aの幅W2をIC本体32の円形シート33の直径R3よりも小さく設定して、IC本体32のアンテナ部35の一部が切除部15に位置し、他部が金属層に位置するようにしてもよい。具体的には、図7(a)に示すように、包装本体部10の上縁接着部23において、側縁から包装本体部10の幅方向に延びるスリット状の切除部41aを形成してもよい。また、図7(b)に示すように、包装本体部10の上縁接着部23において、上縁から包装本体部10の高さ方向に延びるスリット状の切除部41bを形成してもよい。さらに、図7(c)に示すように、上縁から包装本体部10の高さ方向に延び、さらに幅方向に延びる逆L字スリット状の切除部41cを形成してもよい。これらスリット状の切除部41a〜41cを採用した場合、切除部41a〜41cにIC本体32のアンテナ部35の一部が位置するようにIC本体32を包装本体部10に取り付ければよい。なお、図7(a)〜(c)では、IC本体32の取り付け位置を点線で示している。
【0048】
・ 上記スリット状の切除部41a〜41cにおいて、その幅は、等幅でなくともよい。たとえば、徐々に幅が大きくなったり、小さくなったりするテーパ状に形成してもよく、あるいは、その幅を大きくしたり小さくしたりして変化を与えて切除部41a〜41cを構成してもよい。
【0049】
・ 図8(a)に示すように、包装本体部10の上角部を切り欠いて切除部42を形成し、この切除部42にIC本体32の一部がはみ出すようにIC本体32を包装本体部10に取り付けてもよい。あるいは、図8(b)に示すように、包装本体部10の側縁から外側に一部がはみ出すようにIC本体32を取り付けてもよい。なお、図8(a)及び(b)では、IC本体32の取り付け位置を点線で示している。
【0050】
・ 図9に示すように、包装本体部10の上縁接着部23を上部44a及び下部44bの二つに分断し、この上部44aと下部44bとの間の隙間を切除部43としてもよい。具体的には、図9に示すように、円板部45aとその両方向に延びる連結部45bとを有するシール部材45を形成する。そして、このシール部材45によって上部44aと下部44bとの間に所定の幅を確保するように繋ぐ。この上部44aと下部44bとの間の隙間が切除部43となる。なお、図9では、シール部材45を点線で示している。
【0051】
・ 上記実施形態では、円形状の切除部15の中心とIC本体32の円形シート33の中心とが一致するようにしたが、両者の中心がずれていてもIC本体32のアンテナ部35が側面シート12の金属層と接触しなければ、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、切除部15の中心と円形シート33の中心との位置関係に拘わらず、アンテナ部35の一部が切除部15に位置しているのであれば、アンテナ部35が側面シート12の金属層と接触していてもよい。
【0052】
以上のように、切除部15の構成及びIC本体32の取り付け位置は、包装本体部10の形状、用途、デザイン、及びIC本体32の通信方式等を勘案して自由に変更することができる。
【0053】
・ 上記実施形態では、シール部材31によって切除部15の全域を覆っていたが、全域を覆わなくてもよい。たとえば、シール部材31の円板部31aの直径R1を切除部15の最大幅R2より小さく設定してもよいし、連結部31bの幅W1を側縁開口15aの幅W2より小さく設定してもよい。ただし、上記実施形態では、IC本体32は包装本体部10と接しておらず、シール部材31を介して間接的にIC本体32が包装本体部10に取り付けられているので、シール部材31に包装本体部10と接着する部分を確保しなければいけない。
【0054】
・ 上記実施形態では、シール部材31が一対の円板部31aと連結部31bとを有していたが、シール部材31の構成はこれに限らない。たとえば、シール部材31を長楕円形状に形成したり、長方形状に形成したりして、その長手方向中央で二つ折りにするようにしてもよい。あるいは、連結部31bが形成されておらず、互いに連結されていない一対の円板部31aで切除部15を挟み込むようにしてもよい。
【0055】
・ 上記実施形態におけるIC部30のシール部材31を省略することもできる。たとえば、図7(a)〜(c)、図8(a)、(b)及び図9に示すように、IC本体32の一部が切除部に位置しているとき、IC本体32の円形シート33は包装本体部10と接した状態にある。そのため、円形シート33の一方の表面を接着面とすれば、IC本体32を包装本体部10に接着することができる。とくに、円形シート33のICチップ34及びアンテナ部35が形成されている側の面を接着面とすると、IC本体32のアンテナ部35が側面シート12の金属層に接触することになる。すると、アンテナ部35と側面シート12の金属層とが協調してアンテナとしての役割を果たすので、磁束の影響を受けやすくなる。したがって、電磁誘導方式の通信方法を採用する場合に好適である。また、円形シート33を省略することも可能で、この場合にはIC本体32がシール部材31に直接取り付けられることになる。
【0056】
・ 上記実施形態では、一対の側面シート12を切除して透過部としての切除部15を形成したが、透過部の構成はこれに限らない。たとえば、側面シート12の金属層を蒸着法で形成する場合、側面シート12の表面の一部をマスキングして金属層を蒸着し、その後マスキングを除去することによって金属層が蒸着していない非蒸着域が形成される。そして、一対の側面シート12の非蒸着域が該側面シート12の厚さ方向に重なり合うように一対の側面シート12を接着して、重なり合った非蒸着域を透過部としてもよい。また、側面シート12の基材層に金属シートを貼り合わせることで金属層を形成する場合、あらかじめ金属シートの一部を切除した後、金属シートを基材層に貼り合わせることで、金属層が切除された金属層切除部が形成される。そして、一対の側面シート12の金属層切除部が該側面シート12の厚さ方向に重なり合うように一対の側面シート12を接着して、重なり合った金属層切除部を透過部としてもよい。
【0057】
・ 上記非蒸着域及び金属層切除部を透過部とする場合、円形シート33にICチップ34及びアンテナ部35を形成する構成に代えて、側面シート12にICチップ34及びアンテナ部35を直接形成してもよい。たとえば、非蒸着域及び金属層切除部において側面シート12の基材層にICチップ34を取り付けるとともにアンテナ部35をプリントすることでIC本体32を形成することができる。この構成においてIC本体32は、金属層と同じ層に形成されることになる。
【0058】
・ 切除部15の形成位置は、切取部C(上縁接着部23)に限らない。たとえば、包装本体部10の切取部Cを切り取ったときにIC部30も切り離されるのであれば、切除部15を包装本体部10の切取線(上記実施形態では二つの切取口14を結ぶ線)上に形成してもよい。また、切除部15を形成するスペースが確保できるのであれば切除部15を底縁接着部21や側縁接着部22に形成してもよい。
【0059】
・ 上記実施形態では、切取口14を起点として包装本体部10の切取部Cを切り取ることができるようにしたが、切取部Cの切取構成はこれに限らない。たとえば、包装本体部10の幅方向に沿って紐体を取り付け、この紐体を引っ張ることで、側面シート12を高さ方向に分断するように裂いて開封するようにしてもよい。なお、この構成において、紐体は包装本体部10から切り離されることになるため、紐体も切取部Cに含まれる。
【0060】
・ 包装本体部10の開封及び密閉構成は上記実施形態のものに限らない。たとえば、繰り返し使用することがなく開封後に再び密閉する必要がなければ、密閉チャック13を省略してもよい。あるいは、密閉チャック13に代えて、内容物の流通を許容し、キャップを有する口具を包装本体部10の上縁や側縁に設けてもよい。口具を採用する構成の場合、包装本体部10を切り取って開封する必要がないため、包装本体部10に切取口14を形成する必要はない。
【0061】
・ 包装本体部10の形状は上記実施形態のものに限らない。たとえば、包装本体部10を上方ほど幅が狭まる台形状に形成してもよいし、包装本体部10の上縁を円弧状に形成するなどしてもよい。また、底面シート11を介在させることなく一対の側面シート12を接着してなる平板状で非自立型の包装本体部10としてもよい。
【0062】
・ 包装本体部10は、袋状に限らず、たとえば、図10に示すように、四角箱状の包装本体部46であってもよい。この場合、包装本体部46の側面のうち、一側面からその一側面と向かい合う側面にまで至るスリット状の切除部47を形成し、前記一側面に形成された切除部47上にIC本体32を取り付ければよい。この場合、切除部47によって、IC本体32が取り付けられている側面の厚み方向(図10においてA方向及びB方向)の磁束及び電波の透過が許容される。また、IC本体32が取り付けられている側面の面方向のうち一方向(図10においてC方向)の磁束及び電波の透過が許容される。
【0063】
・ 上記実施形態のIC部30の通信形態は、電磁誘導方式及び電波方式に限らない。たとえば、IC部30に電源を内蔵し、ICリーダからの磁束や電波の照射なしに自ら電波を発することのできるいわゆるアクティブタイプのIC部30を採用してもよい。
【0064】
・ IC本体32の構成は上記実施形態のものに限らない。たとえば、円形シート33は、円形に限らず三角形や四角形等の多角形状であってもよい。また、円形シート33上に設けられるICチップ34を円形シート33の縁部に設けてもよいし、アンテナ部35を四角形状に引き回してもよい。
【0065】
次に、上記の実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
・ 前記包装本体部は、複数の前記多層構造物を互いに接着部で接着することで袋状に形成されており、前記透過部は前記接着部に形成されていることを特徴とする包装体。
【0066】
・ 金属層を有する多層構造物からなる包装本体部と、ICチップ及び無線通信用のアンテナ部を備えるIC部とを備えた包装体であって、前記包装本体部には、前記金属層の厚さ方向において該金属層が切除されているとともに前記金属層の面方向の少なくとも一方向において該金属層が切除されてなる切除部が形成され、前記アンテナ部は少なくとも一部が前記切除部に位置していることを特徴とする包装体。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施形態における包装体の斜視図。
【図2】実施形態における包装本体部の分解斜視図。
【図3】実施形態における包装体の正面図。
【図4】実施形態におけるIC部の平面図。
【図5】実施形態におけるIC本体の取り付け時の模式斜視図。
【図6】実施形態における包装体の部分拡大図。
【図7】(a)、(b)及び(c)は、変更例における包装本体部の部分正面図。
【図8】(a)及び(b)は、変更例における包装本体部の部分正面図。
【図9】変更例における包装本体部の部分正面図。
【図10】変更例における包装体の斜視図。
【図11】従来の包装体の断面図。
【符号の説明】
【0068】
10…包装本体部、11…多層構造物としての底面シート、12…多層構造物としての側面シート、15…透過部としての切除部、30…IC部、31…シール部材、32…IC本体、33…円形シート、34…ICチップ、35…アンテナ部、C…切取部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層を有する多層構造物で形成された包装体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電波や磁束(磁界)などを用いた近距離の無線通信によって情報をやりとりするRFID(Radio Frequency Identification)技術が知られており、ICタグ(RFIDタグ)を包装体に取り付けることが行われている。たとえば、ICタグに製造工場や、製造日、製品ごとに付される識別番号等の製品情報を記録させておき、ICタグとタグリーダとが通信して、情報を読み出したり書き込んだりすることで、製品の物流管理、在庫管理等を行うことができる。ICタグとタグリーダとの通信方式としては、たとえば、ICタグのアンテナとタグリーダのアンテナとを磁束結合させて信号を伝達する電磁誘導方式と、ICタグのアンテナとタグリーダのアンテナとで電波をやりとりして信号を伝達する電波方式とが知られている。
【0003】
ICタグ付きの包装体としては、特許文献1に開示されているものが知られている。図11に示すように、特許文献1の包装体は、金属材料を含まない材料で形成された四角箱状の外箱51の内部にアルミニウム等の金属層を含む積層フィルムで形成された内袋52が収容されている。また、外箱51の外面には、無線ICタグ53が貼り付けられている。そして、外箱51の無線ICタグ53が貼り付けられている面と内袋52との間には、間隔保持部材54が挿入されている。間隔保持部材54は、ダンボールや発泡プラスチック等の非金属材料で形成され、その厚みが10mm以上に形成されている。この間隔保持部材54の存在によって、無線ICタグ53と内袋52の金属層とが10mm以上離間する。
【0004】
電磁誘導方式によって通信する場合、タグリーダのアンテナから発せられる磁束によって無線ICタグ53のアンテナが電磁誘導される。したがって、無線ICタグ53のアンテナの周りを取り囲むように磁束が通ることができるようになっていなければならない。特許文献1の包装体では、無線ICタグ53と内袋52とが10mm以上離間しているので、無線ICタグ53の周りを通る磁束が金属層によって遮られることが抑制され、電磁誘導方式による良好な通信が実現される。
【特許文献1】特開2006−056602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の包装体においては、無線ICタグ53が貼り付けられる外箱51が必須である。さらに、外箱51と内袋52との間には間隔保持部材54を挿入しなければならない。このような構成では、無線ICタグ53を機能させるために外箱51や間隔保持部材54が必要であり、材料コストの上昇や製造方法の煩雑化をもたらすため、包装体の製造コストの上昇は避けられない。たとえば、金属層を有する包装体にICタグを直接貼り付けることで、製造コストを低下させることはできる。しかし、この場合は、磁束が包装体の金属層によって遮断されてしまうため、ICタグを電磁誘導することができず電磁誘導方式による通信ができなくなる可能性がある。
【0006】
また、特許文献1の包装体にしても、ICタグを直接貼り付けた包装体にしても、ICタグから発せられる電波及び磁束は、金属層によって吸収されて減衰してしまう。そのため、ICタグが貼り付けられた側と金属層を挟んだ反対側には、電波及び磁界が届かない。したがって、タグリーダを用いてICタグが貼り付けられた側の反対側から通信しようとしても、その感度が著しく減少したり、あるいは通信が不可能となったりすることがある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであって、金属層を有する包装体に無線通信用のIC部を備えていながらも、通信状態の悪化を最小限に抑制した包装体を提供することを目的とする。また、このような包装体を簡便に製造することのできる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、金属層を有する多層構造物からなる包装本体部と、ICチップ及び無線通信用のアンテナ部を備えるIC部とを備えた包装体であって、前記包装本体部には、前記金属層の厚さ方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過を許容するとともに前記金属層の面方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過を許容する透過部が形成され、前記アンテナ部は少なくとも一部が前記透過部に位置していることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、包装本体部に形成された透過部は、金属層の厚さ方向及び面方向におけるIC部とICリーダとの通信を支援するため、該通信の好適化が実現されるとともに、該通信の多方向化が実現される。また、特許文献1にあるような外箱や間隔保持部材といった構成を必須としないため、それだけ包装体の構成を簡易にすることが可能になる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の包装体において、前記透過部は、前記多層構造物のうち少なくとも金属層が切除されてなることを特徴とする。この構成によれば、多層構造物のうち少なくとも金属層が切除されて透過部が形成されているため、金属層によって電波及び磁束の通過が害されることを抑制する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明の包装体において、前記包装本体部には、該包装本体部の開封時において切り取られる切取部が設けられており、前記透過部は前記切取部に形成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、包装本体部を開封して切取部を切り取ると、IC部も切取部と一緒に包装本体部から切り離されることになる。したがって、使用者がIC部の取り外しを意識しなくとも、包装本体部の開封と同時にIC部を取り外すことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明の包装体において、前記IC部は、非金属材料で形成されたシール部材と該シール部材の接着面に設けられるIC本体とを備え、前記透過部は、前記シール部材によって覆われていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、シール部材によって透過部が覆われているため、透過部を形成することによって包装本体部の強度が低下したり、見栄えが悪くなったりすることを抑制することができる。また、シール部材は非金属材料で形成されているため、電波や磁束が妨げられることを抑制し、良好な通信を維持することができる。
【0015】
上記の目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、金属層を有する多層構造物からなる包装本体部と、無線通信用のアンテナ部及びICチップを備えるIC部とを備えた包装体の製造方法であって、前記金属層の厚さ方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過が許容されるとともに前記金属層の面方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過が許容されるように前記包装本体部に前記IC部を取り付ける工程を備えることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、包装本体部にIC部を取り付ける工程を経ることによって、金属層の厚さ方向及び面方向におけるIC部とICリーダとの通信を支援する。また、包装本体部に対してIC部を取り付ける工程を経ることでIC付きの包装体を製造することができるため、包装体の製造方法としては、従来の製造方法からの大幅な変更を強いられることはない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の包装体は、金属層を有する多層構造物にIC部を備えていながらも、通信状態の悪化を最小限として良好な通信状態を確保することができる。また、本発明の包装体の製造方法によれば、このような包装体を比較的簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の包装体に関する実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。図1及び図3に示すように、本実施形態の包装体は、複数のシートからなる袋状の包装本体部10を備えるとともに、無線通信を行うIC部30を備えている。
【0019】
図2に示すように、包装本体部10は折り目が上方(図2において上側)を向くように二つ折りにされた底面シート11と底面シート11を挟み込む一対の側面シート12とで構成されている。底面シート11及び側面シート12は、可撓性を有する樹脂シートからなる基材層を有している。底面シート11及び側面シート12の基材層の一方側の面には熱溶着層が設けられているとともに他方側の面には金属層が設けられており、底面シート11及び側面シート12は、三つの層からなる多層構造物である。
【0020】
図2に示すように、二つ折りにされた状態の底面シート11は四角形状に形成されているとともにその側縁に長孔状の接着孔11aが前後を貫通するように形成されている。底面シート11は二つ折りにされた状態で、熱溶着層側の面が外側(側面シート12と向かい合う側)になるとともに金属層側の面が内側となるように配置される。一対の側面シート12は縦長四角形状に形成されており、底面シート11を両側から挟み込む際には、それぞれの側面シート12の熱溶着層側の面が向かい合うように配置される。
【0021】
図1及び図3に示すように、二つ折りされた底面シート11と一対の側面シート12とは底縁接着部21において熱溶着で接着されている。図3に示すように、底縁接着部21は、正面視すると包装本体部10の高さ方向(図3において上下方向)において円弧状に凹んだ曲線と包装本体部10(側面シート12)の側縁及び底縁によって囲まれた領域となるように形成されている。また、底縁接着部21においては、底面シート11に形成されている接着孔11aを介して一対の側面シート12同士が接着されている。
【0022】
図1及び図3に示すように、一対の側面シート12は、その側縁同士が側縁接着部22において熱溶着で接着されている。図3に示すように、側縁接着部22は、包装本体部10の高さ方向において一定の幅(図3において左右方向の幅)を保つように形成されている。また、一対の側面シート12はその上縁同士が上縁接着部23において熱溶着で接着されている。図3に示すように、上縁接着部23は、横長の長方形状となるように形成されている。
【0023】
図2及び図3に示すように、一対の側面シート12の熱溶着層側の面には、包装本体部10の開封時に開口を密閉することのできる密閉チャック13が形成されている。密閉チャック13は、上縁接着部23の下縁23aよりも下方の高さ位置において包装本体部10の幅方向に延びるように形成されている。なお、図3においては、密閉チャック13を点線で示している。
【0024】
図1及び図3に示すように、包装本体部10の両側の側縁接着部22には、それぞれ三角形状の切取口14が形成されている。切取口14は、密閉チャック13よりも上方で、かつ上縁接着部23の下縁23aよりも下方の高さ位置に形成されている。本実施形態の包装体では、この切取口14を起点として包装本体部10の幅方向に沿って開封するので、包装本体部10のうち切取口14よりも上側の部分が開封時において切り取られる切取部Cである。
【0025】
図2及び図5に示すように、上縁接着部23には多層状をなす一対の側面シート12全体が切除されてなる透過部としての切除部15が形成されている。切除部15は、側縁開口15aを有するように包装本体部10の一方の側縁(図3において右側の側縁)から包装本体部10の幅方向中央側へ向かって略円形状に切欠かれている。こうした構成によって、切除部15は、中心から包装本体部10(金属層)の厚み方向の両方向(図1においてX方向及びY方向)に開放されているとともに、中心から包装本体部10(金属層)の面方向の一方向(図1においてZ方向)に開放されている。本実施形態では、前記面方向の一方向は、包装本体部10の幅方向と同一である。なお、本実施形態では、上縁接着部23は、切取口14よりも上方に位置しており、上縁接着部23は、切取部Cに含まれる。本実施形態の切除部15は、上縁接着部23に形成されているので切取部Cに形成されているといえる。
【0026】
図4に示すように、IC部30は、非金属材料で形成されたシール部材31に円形状のIC本体32を接着してなる。シール部材31は、一対の円板部31aとそれら円板部31aを連結する連結部31bとを有し、連結部31bで二つ折りしたときに、円板部31a同士が互いに重なり合って切除部15と相似形状となるように形成されている。
【0027】
図6に示すように、円板部31aは、略円形状に形成されており、その直径R1は、切除部15の包装本体部10の高さ方向における最大幅(直径)R2よりも大きく設定されている。連結部31bは、略長方形状に形成されており、一対の円板部31aの連結方向と直交する方向の幅W1は、切除部15の側縁開口15aの包装本体部10の高さ方向における幅W2よりも大きく設定されている。なお、図6においては切除部15を点線で表している。
【0028】
図4に示すように、シール部材31の接着面には、円形状のIC本体32が設けられている。IC本体32は円状の円形シート33を備え、その直径R3は切除部15の最大幅R2よりも小さく設定されている。円形シート33の表面においてその中央には、情報を保存、演算するICチップ34が取り付けられており、このICチップ34からは無線通信用のアンテナ部35が延びている。このアンテナ部35は、円形シート33の中央のICチップ34から外方に延びるとともに、円形シート33の外周に沿って略円形状に引き回されている。
【0029】
図1に示すように、IC部30は、連結部31bで二つ折りにされ、包装本体部10の上縁接着部23を両側から挟みこんで切除部15を覆うように取り付けられている。また、IC部30のIC本体32はその全域が包装本体部10の切除部15に位置している。
【0030】
次に、上記の包装体を製造する方法、とくに包装本体部10にIC部30を取り付ける方法について説明する。本実施形態では、包装体は、袋状の包装本体部10を形成して切除部15を形成する工程と、IC部30を取り付ける工程とを経て製造される。
【0031】
包装本体部10を形成する工程では、先ず、帯状に延びる底面シート11をその長手方向に沿って二つ折りにする。そして、帯状に延びるとともに、あらかじめ所定間隔おきにその長手方向に沿って密閉チャック13が取り付けられた一対の側面シート12で二つ折り状態の底面シート11を挟み込みつつ重ね合わせる。この重ね合わせた状態でヒートシール手段によって底面シート11と一対の側面シート12とを熱溶着して底縁接着部21を形成するとともに、一対の側面シート12を熱溶着して、側縁接着部22及び上縁接着部23を形成する。そして、熱溶着された帯状の底面シート11及び側面シート12をその長手方向所定間隔おきに短手方向に沿って裁断して袋状の包装本体部10を得る。そして、包装本体部10の両側縁に切取口14を形成する。また、包装本体部10の上縁接着部23において、一対の側面シート12を打ち抜いて切除部15を形成する。
【0032】
次いで、包装本体部10にIC部30を取り付ける工程を行う。この工程では、金属層(側面シート12)の厚さ方向において金属層に対する電波及び磁束の透過が許容され、さらに、金属層(側面シート12)の面方向において金属層に対する電波及び磁束の透過が許容されるように包装本体部10にIC部30を取り付ける。具体的には、図5に示すように、円形状の切除部15の中心とIC本体32の円形シート33の中心とが一致するようにIC部30を配置する。そして、シール部材31のIC本体32が設けられている面を内側(谷側)とするようにシール部材31を二つ折りにしつつ、包装本体部10の上縁接着部23(切除部15)を挟み込むようにして取り付ける。このとき、シール部材31の円板部31aの直径R1が切除部15の最大幅R2よりも大きく設定されており、連結部31bの幅W1が切除部15の側縁開口15aの幅W2よりも大きく設定されているため、切除部15の全域がシール部材31に覆われる。また、円形シート33は、その直径R3が切除部15の最大幅R2よりも小さく設定されているので、IC本体32(アンテナ部35)はその全域が包装本体部10に接することなく切除部15に位置することになる。
【0033】
次に、上記の包装体の使用態様について記載する。
本実施形態の包装体では、IC部30と図示しないICリーダとが電磁誘導方式又は電波方式によって無線通信を行う。電磁誘導方式と電波方式とでは、IC部30のIC本体32を駆動させる方法が異なっている。
【0034】
電磁誘導方式による通信の場合、ICリーダから発せられる磁束(磁場)によってIC部30のIC本体32が駆動する。包装本体部10の切除部15においては、側面シート12が切除されることで金属層も切除されており、金属層(側面シート12)の厚み方向(図1においてX方向及びY方向)における磁束の通過が許容される。さらに、切除部15の側縁開口15aにおいては、金属層(側面シート12)の面方向のうち一方向(図1においてZ方向)の磁束の通過が許容される。したがって、IC本体32のアンテナ部35のうち切除部15の側縁開口15aの近傍では、ICリーダから発せられた磁束がIC本体32のアンテナ部35の周りを取り囲むように通過することができる。そして、ICリーダから発せられてIC部30のアンテナ部35の周りを取り囲む磁束が変化することで、電磁誘導によってアンテナ部35に電流が流れる。
【0035】
一方、電波方式による通信の場合、ICリーダから発せられる電波によってIC部30のIC本体32が駆動する。本実施形態では、包装本体部10の切除部15においては、金属層(側面シート12)の厚み方向(図1においてX方向及びY方向)における磁束の通過が許容される。したがって、側面シート12の金属層の厚み方向において、どちら側からでも(図1においてX方向からでもY方向からでも)ICリーダからの電波をIC本体32のアンテナ部35に照射することができる。ICリーダからはIC本体32のアンテナ部35の共振周波数に対応する周波数の電波が発せられるので、電波が照射されたアンテナ部35は、共振して電流が流れる。そして、本実施形態では、円形シート33の直径R3が切除部15の最大幅R2よりも小さく、それらの中心が一致するように設定されているので、アンテナ部35全体が側面シート12の金属層と接触していない。したがって、アンテナ部35の共振周波数が側面シート12の金属層に起因してずれたりすることはない。
【0036】
アンテナ部35に電流が流れると、その電流によってICチップ34が駆動されるとともにICチップ34に保存された情報がアンテナ部35から電波として発せられる。本実施形態では、IC本体32全域が切除部15に位置しているため、アンテナ部35から発せられる電波は、側面シート12の金属層によって遮られることなく、金属層の厚み方向において両方向(図1においてX方向及びY方向)に発せられる。そして、ICリーダは、包装本体部10に対してどの位置に配置されていても、アンテナ部35から発せられた電波を受信することができる。
【0037】
上記の実施形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、側面シート12が切除されることで該側面シート12の金属層が切除された切除部15が形成されている。この切除部が15は、金属層(側面シート12)の厚さ方向及び面方向におけるIC部30とICリーダとの通信を支援するため、該通信の好適化が実現されるとともに、該通信の多方向化が実現される。また、IC部30を機能させるために外箱等の構成を必須としないので、包装体の構成を簡易にすることができる。
【0038】
(2)上記実施形態では、切除部15は切取部Cに形成されている。そのため、包装本体部10を開封して切取部Cを切り取ると、切除部15に位置しているIC部30も切取部Cと一緒に包装本体部10から切り離されることになる。したがって、とくに、IC部30の取り外し作業を要することがない。また、包装本体部10が開封されていればIC部30も包装本体部10に存在しないことから、ICリーダとの通信は途絶えることになり、ICリーダによる包装体の管理も簡便になる。
【0039】
(3)上記実施形態では、シール部材31によって切除部15の全域が覆われている。そのため、切除部15を形成することによって包装本体部10の強度が低下したり、見栄えが悪くなったりすることを抑制することができる。また、シール部材31は非金属材料で形成されているため、磁束や電波が妨げられることを抑制し、良好な通信を維持することができる。
【0040】
(4)上記実施形態では、IC本体32のアンテナ部35の全域が包装本体部10に接することなく切除部15に位置している。したがって、アンテナ部35の全域において、金属層(側面シート12)の厚さ方向(図1においてX方向及びY方向)における電波及び磁束の透過が可能で、良好に通信することができる。加えて、上記実施形態では、アンテナ部35が側面シート12の金属層に接していないため、アンテナ部35の共振周波数が変化しにくい。そのため、ICリーダから発せられる電波をより感度よく受信することができ、電波方式による良好な通信が可能である。
【0041】
(5)上記実施形態では、切除部15は側縁開口15aを有し、金属層(側面シート12)の面方向のうちの一方向(図1においてZ方向)における電波及び磁束の透過が可能である。そのため、IC本体32のアンテナ部35の周りを取り囲むように磁束が透過でき、電磁誘導方式による良好な通信が可能である。
【0042】
(6)上記実施形態では、IC本体32が設けられている面を内側(谷側)とするようにシール部材31を二つ折りにしつつ包装本体部10に取り付けているため、IC本体32もシール部材31によって覆われることになる。したがって、IC本体32のICチップ34やアンテナ部35が傷ついたりして故障することが抑制される。
【0043】
(7)上記実施形態では、包装本体部10に対して、切除部15を形成し、IC部30を取り付ける工程を経ることでIC本体32付きの包装体を製造することができる。そのため、包装体の製造方法としては、従来の製造方法からの大幅な変更を強いられることはない。
【0044】
なお、上記の実施形態は以下のように変更してもよく、また、以下の各変更例を互いに組み合わせて実施することも可能である。
・ 上記実施形態では、略円形状に切除部15を形成したが、切除部15の形状はこれに限らない。たとえば、側縁開口15aを有するように四角形状及び三角形状等の多角形状の切除部15を形成してもよい。このとき、IC部30のシール部材31を一対の多角形板部とそれら多角形板部を連結する連結部とを有するように形成すれば、多角形状の切除部15の全域をシール部材31で覆うことができる。
【0045】
・ 上記実施形態では、側縁開口15aを有するように切除部15を形成した。この構成に代えて、たとえば、上縁開口を有するように切除部15を形成してもよい。このとき、金属層(側面シート12)の面方向の一方向は、包装本体部10の高さ方向と同一である。このように、前記面方向の一方向は、包装本体部10の幅方向でも高さ方向でもそれ以外のいずれの方向であってもよい。
【0046】
・ 上記実施形態では、切除部15は、金属層(側面シート12)の面方向のうち一方向に開放されているが、二方向、又は三方向以上の多方向に開放するようにしてもよい。二方向に開放するようにした場合、それら方向が一直線状をなすように互いに正反対の方向を指向するようにしてもよいし、そうでなくてもよい。
【0047】
・ 上記実施形態では、IC本体32の全域が切除部15に位置していたが、IC本体32と切除部15との関係はこれに限らない。たとえば、切除部15の最大幅(直径)R2及び連結部15aの幅W2をIC本体32の円形シート33の直径R3よりも小さく設定して、IC本体32のアンテナ部35の一部が切除部15に位置し、他部が金属層に位置するようにしてもよい。具体的には、図7(a)に示すように、包装本体部10の上縁接着部23において、側縁から包装本体部10の幅方向に延びるスリット状の切除部41aを形成してもよい。また、図7(b)に示すように、包装本体部10の上縁接着部23において、上縁から包装本体部10の高さ方向に延びるスリット状の切除部41bを形成してもよい。さらに、図7(c)に示すように、上縁から包装本体部10の高さ方向に延び、さらに幅方向に延びる逆L字スリット状の切除部41cを形成してもよい。これらスリット状の切除部41a〜41cを採用した場合、切除部41a〜41cにIC本体32のアンテナ部35の一部が位置するようにIC本体32を包装本体部10に取り付ければよい。なお、図7(a)〜(c)では、IC本体32の取り付け位置を点線で示している。
【0048】
・ 上記スリット状の切除部41a〜41cにおいて、その幅は、等幅でなくともよい。たとえば、徐々に幅が大きくなったり、小さくなったりするテーパ状に形成してもよく、あるいは、その幅を大きくしたり小さくしたりして変化を与えて切除部41a〜41cを構成してもよい。
【0049】
・ 図8(a)に示すように、包装本体部10の上角部を切り欠いて切除部42を形成し、この切除部42にIC本体32の一部がはみ出すようにIC本体32を包装本体部10に取り付けてもよい。あるいは、図8(b)に示すように、包装本体部10の側縁から外側に一部がはみ出すようにIC本体32を取り付けてもよい。なお、図8(a)及び(b)では、IC本体32の取り付け位置を点線で示している。
【0050】
・ 図9に示すように、包装本体部10の上縁接着部23を上部44a及び下部44bの二つに分断し、この上部44aと下部44bとの間の隙間を切除部43としてもよい。具体的には、図9に示すように、円板部45aとその両方向に延びる連結部45bとを有するシール部材45を形成する。そして、このシール部材45によって上部44aと下部44bとの間に所定の幅を確保するように繋ぐ。この上部44aと下部44bとの間の隙間が切除部43となる。なお、図9では、シール部材45を点線で示している。
【0051】
・ 上記実施形態では、円形状の切除部15の中心とIC本体32の円形シート33の中心とが一致するようにしたが、両者の中心がずれていてもIC本体32のアンテナ部35が側面シート12の金属層と接触しなければ、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、切除部15の中心と円形シート33の中心との位置関係に拘わらず、アンテナ部35の一部が切除部15に位置しているのであれば、アンテナ部35が側面シート12の金属層と接触していてもよい。
【0052】
以上のように、切除部15の構成及びIC本体32の取り付け位置は、包装本体部10の形状、用途、デザイン、及びIC本体32の通信方式等を勘案して自由に変更することができる。
【0053】
・ 上記実施形態では、シール部材31によって切除部15の全域を覆っていたが、全域を覆わなくてもよい。たとえば、シール部材31の円板部31aの直径R1を切除部15の最大幅R2より小さく設定してもよいし、連結部31bの幅W1を側縁開口15aの幅W2より小さく設定してもよい。ただし、上記実施形態では、IC本体32は包装本体部10と接しておらず、シール部材31を介して間接的にIC本体32が包装本体部10に取り付けられているので、シール部材31に包装本体部10と接着する部分を確保しなければいけない。
【0054】
・ 上記実施形態では、シール部材31が一対の円板部31aと連結部31bとを有していたが、シール部材31の構成はこれに限らない。たとえば、シール部材31を長楕円形状に形成したり、長方形状に形成したりして、その長手方向中央で二つ折りにするようにしてもよい。あるいは、連結部31bが形成されておらず、互いに連結されていない一対の円板部31aで切除部15を挟み込むようにしてもよい。
【0055】
・ 上記実施形態におけるIC部30のシール部材31を省略することもできる。たとえば、図7(a)〜(c)、図8(a)、(b)及び図9に示すように、IC本体32の一部が切除部に位置しているとき、IC本体32の円形シート33は包装本体部10と接した状態にある。そのため、円形シート33の一方の表面を接着面とすれば、IC本体32を包装本体部10に接着することができる。とくに、円形シート33のICチップ34及びアンテナ部35が形成されている側の面を接着面とすると、IC本体32のアンテナ部35が側面シート12の金属層に接触することになる。すると、アンテナ部35と側面シート12の金属層とが協調してアンテナとしての役割を果たすので、磁束の影響を受けやすくなる。したがって、電磁誘導方式の通信方法を採用する場合に好適である。また、円形シート33を省略することも可能で、この場合にはIC本体32がシール部材31に直接取り付けられることになる。
【0056】
・ 上記実施形態では、一対の側面シート12を切除して透過部としての切除部15を形成したが、透過部の構成はこれに限らない。たとえば、側面シート12の金属層を蒸着法で形成する場合、側面シート12の表面の一部をマスキングして金属層を蒸着し、その後マスキングを除去することによって金属層が蒸着していない非蒸着域が形成される。そして、一対の側面シート12の非蒸着域が該側面シート12の厚さ方向に重なり合うように一対の側面シート12を接着して、重なり合った非蒸着域を透過部としてもよい。また、側面シート12の基材層に金属シートを貼り合わせることで金属層を形成する場合、あらかじめ金属シートの一部を切除した後、金属シートを基材層に貼り合わせることで、金属層が切除された金属層切除部が形成される。そして、一対の側面シート12の金属層切除部が該側面シート12の厚さ方向に重なり合うように一対の側面シート12を接着して、重なり合った金属層切除部を透過部としてもよい。
【0057】
・ 上記非蒸着域及び金属層切除部を透過部とする場合、円形シート33にICチップ34及びアンテナ部35を形成する構成に代えて、側面シート12にICチップ34及びアンテナ部35を直接形成してもよい。たとえば、非蒸着域及び金属層切除部において側面シート12の基材層にICチップ34を取り付けるとともにアンテナ部35をプリントすることでIC本体32を形成することができる。この構成においてIC本体32は、金属層と同じ層に形成されることになる。
【0058】
・ 切除部15の形成位置は、切取部C(上縁接着部23)に限らない。たとえば、包装本体部10の切取部Cを切り取ったときにIC部30も切り離されるのであれば、切除部15を包装本体部10の切取線(上記実施形態では二つの切取口14を結ぶ線)上に形成してもよい。また、切除部15を形成するスペースが確保できるのであれば切除部15を底縁接着部21や側縁接着部22に形成してもよい。
【0059】
・ 上記実施形態では、切取口14を起点として包装本体部10の切取部Cを切り取ることができるようにしたが、切取部Cの切取構成はこれに限らない。たとえば、包装本体部10の幅方向に沿って紐体を取り付け、この紐体を引っ張ることで、側面シート12を高さ方向に分断するように裂いて開封するようにしてもよい。なお、この構成において、紐体は包装本体部10から切り離されることになるため、紐体も切取部Cに含まれる。
【0060】
・ 包装本体部10の開封及び密閉構成は上記実施形態のものに限らない。たとえば、繰り返し使用することがなく開封後に再び密閉する必要がなければ、密閉チャック13を省略してもよい。あるいは、密閉チャック13に代えて、内容物の流通を許容し、キャップを有する口具を包装本体部10の上縁や側縁に設けてもよい。口具を採用する構成の場合、包装本体部10を切り取って開封する必要がないため、包装本体部10に切取口14を形成する必要はない。
【0061】
・ 包装本体部10の形状は上記実施形態のものに限らない。たとえば、包装本体部10を上方ほど幅が狭まる台形状に形成してもよいし、包装本体部10の上縁を円弧状に形成するなどしてもよい。また、底面シート11を介在させることなく一対の側面シート12を接着してなる平板状で非自立型の包装本体部10としてもよい。
【0062】
・ 包装本体部10は、袋状に限らず、たとえば、図10に示すように、四角箱状の包装本体部46であってもよい。この場合、包装本体部46の側面のうち、一側面からその一側面と向かい合う側面にまで至るスリット状の切除部47を形成し、前記一側面に形成された切除部47上にIC本体32を取り付ければよい。この場合、切除部47によって、IC本体32が取り付けられている側面の厚み方向(図10においてA方向及びB方向)の磁束及び電波の透過が許容される。また、IC本体32が取り付けられている側面の面方向のうち一方向(図10においてC方向)の磁束及び電波の透過が許容される。
【0063】
・ 上記実施形態のIC部30の通信形態は、電磁誘導方式及び電波方式に限らない。たとえば、IC部30に電源を内蔵し、ICリーダからの磁束や電波の照射なしに自ら電波を発することのできるいわゆるアクティブタイプのIC部30を採用してもよい。
【0064】
・ IC本体32の構成は上記実施形態のものに限らない。たとえば、円形シート33は、円形に限らず三角形や四角形等の多角形状であってもよい。また、円形シート33上に設けられるICチップ34を円形シート33の縁部に設けてもよいし、アンテナ部35を四角形状に引き回してもよい。
【0065】
次に、上記の実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
・ 前記包装本体部は、複数の前記多層構造物を互いに接着部で接着することで袋状に形成されており、前記透過部は前記接着部に形成されていることを特徴とする包装体。
【0066】
・ 金属層を有する多層構造物からなる包装本体部と、ICチップ及び無線通信用のアンテナ部を備えるIC部とを備えた包装体であって、前記包装本体部には、前記金属層の厚さ方向において該金属層が切除されているとともに前記金属層の面方向の少なくとも一方向において該金属層が切除されてなる切除部が形成され、前記アンテナ部は少なくとも一部が前記切除部に位置していることを特徴とする包装体。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施形態における包装体の斜視図。
【図2】実施形態における包装本体部の分解斜視図。
【図3】実施形態における包装体の正面図。
【図4】実施形態におけるIC部の平面図。
【図5】実施形態におけるIC本体の取り付け時の模式斜視図。
【図6】実施形態における包装体の部分拡大図。
【図7】(a)、(b)及び(c)は、変更例における包装本体部の部分正面図。
【図8】(a)及び(b)は、変更例における包装本体部の部分正面図。
【図9】変更例における包装本体部の部分正面図。
【図10】変更例における包装体の斜視図。
【図11】従来の包装体の断面図。
【符号の説明】
【0068】
10…包装本体部、11…多層構造物としての底面シート、12…多層構造物としての側面シート、15…透過部としての切除部、30…IC部、31…シール部材、32…IC本体、33…円形シート、34…ICチップ、35…アンテナ部、C…切取部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層を有する多層構造物からなる包装本体部と、ICチップ及び無線通信用のアンテナ部を備えるIC部とを備えた包装体であって、
前記包装本体部には、前記金属層の厚さ方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過を許容するとともに前記金属層の面方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過を許容する透過部が形成され、前記アンテナ部は少なくとも一部が前記透過部に位置していることを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記透過部は、前記多層構造物のうち少なくとも金属層が切除されてなることを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記包装本体部には、該包装本体部の開封時において切り取られる切取部が設けられており、前記透過部は前記切取部に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
前記IC部は、非金属材料で形成されたシール部材と該シール部材の接着面に設けられるIC本体とを備え、前記透過部は、前記シール部材によって覆われていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項5】
金属層を有する多層構造物からなる包装本体部と、無線通信用のアンテナ部及びICチップを備えるIC部とを備えた包装体の製造方法であって、
前記金属層の厚さ方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過が許容されるとともに前記金属層の面方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過が許容されるように前記包装本体部に前記IC部を取り付ける工程を備えることを特徴とする包装体の製造方法。
【請求項1】
金属層を有する多層構造物からなる包装本体部と、ICチップ及び無線通信用のアンテナ部を備えるIC部とを備えた包装体であって、
前記包装本体部には、前記金属層の厚さ方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過を許容するとともに前記金属層の面方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過を許容する透過部が形成され、前記アンテナ部は少なくとも一部が前記透過部に位置していることを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記透過部は、前記多層構造物のうち少なくとも金属層が切除されてなることを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記包装本体部には、該包装本体部の開封時において切り取られる切取部が設けられており、前記透過部は前記切取部に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
前記IC部は、非金属材料で形成されたシール部材と該シール部材の接着面に設けられるIC本体とを備え、前記透過部は、前記シール部材によって覆われていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項5】
金属層を有する多層構造物からなる包装本体部と、無線通信用のアンテナ部及びICチップを備えるIC部とを備えた包装体の製造方法であって、
前記金属層の厚さ方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過が許容されるとともに前記金属層の面方向において該金属層に対する電波及び磁束の透過が許容されるように前記包装本体部に前記IC部を取り付ける工程を備えることを特徴とする包装体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−269637(P2009−269637A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119880(P2008−119880)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(391003794)押尾産業株式会社 (32)
【出願人】(503346108)株式会社ファイン・ラベル (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(391003794)押尾産業株式会社 (32)
【出願人】(503346108)株式会社ファイン・ラベル (3)
【Fターム(参考)】
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