説明

包装容器入り茄子の浅漬け

【課題】 茄子の漬物の漬かり度合を利用者が手を汚すことなく選択でき、従来品のように漬かり過ぎで慌てて食べる必要のない包装容器入り茄子の浅漬けを提供する。
【解決手段】 漬床2aと茄子1が隔離する手段として茄子を袋状シート材3aで内包した内包装体3が漬床を充填した外容器5a内に装填され、漬床に手を触れずに該隔離状態を解除して両者を混合させる手段として内包装体の一側縁部3bが外容器の外側に裸出する。袋状シート材と茄子の表皮は密着するが、該シート材を折り返し2層(符号4)とする方法等により袋状シート材のみを容易に外容器から排出可能とした。なお利用者は食する時を見計らって袋状シート材を引き抜き漬込みを開始させる。このため流通時漬込み前の茄子の鮮度保持と、前記隔離状態の解除後の漬込み時間を短縮するため、少・多糖類の水溶液や寒天7及び乳酸菌などを茄子と同封する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は漬物である包装容器入り茄子の浅漬けに係り、さらに詳しくは、複層とした包装容器内で漬床と茄子とが隔離され、且つ茄子の鮮度が保持された状態で流通させ、後に利用者が食する時を見計らって、手を汚さず、容易に、前記隔離状態を解除して漬け込みを開始でき、その後は短時間で好みの漬かり度合いの浅漬けが食べられる新規製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
茄子の浅漬けとは、漬床や漬液に茄子を短時間漬けた漬物である。その漬け込み時間は茄子の種類、果実のカットの有無、下処理工程(塩粒による手揉みや塩分による下漬け)の有無や程度、また漬床や漬液の種類や特に塩分濃度などに左右され、数時間のものから2〜3日に及ぶものもあり、一概に規定はできない。しかし一般的には素材自身の味や香り、またサクサクとした食感を併せ楽しめる程度に漬け味の果実への浸透度は控え目なことが浅漬けの好まれて食される第1の理由である。
【0003】
上記のうち、特に果実のカットの有無は、漬け込み時間を大きく左右する。仮に袋詰めを前提に最小限の漬床や漬液のみ使うことなどを条件とすれば、ヘタを取らずカットもしていない丸のままの茄子の場合、糠床による浅漬けでは2〜3日を要するのに対して、少しでもカットした茄子の場合は半日〜1日で漬けあがる。また糠床に替えて液漬けとした場合、丸のままの茄子では1〜2日を要するが、カットした茄子の場合は数時間か、あるいは塩分濃度の高い漬液の場合は30分程度で漬けあがる場合もある。しかし一般的には、カットしたものは丸のままの浅漬けより茄子本来のサクサクとした食感が失われているケースが多く、また好みは分かれるものの、糠など漬床による本格的な浅漬けに比べると、液漬けの場合にはどうしても塩味が茄子本来の味や香りの前面に出てしまう、という意見が多い。
【0004】
袋詰めされた茄子の浅漬け製品は既に広く市場に流通している。一般的には塩分による下漬け工程の済んだ茄子を、より低塩濃度の漬床又は漬液に漬けなおして一緒にパック詰めしたものである。なおスーパーなどで見かける量販品は、丸のままの果実のものより、カットして液漬けされたものが圧倒的に多い。これらは主に下漬けの強弱の程度によって、パックされる漬床又は漬液の量や塩分濃度は調整されるが、僅かでも袋の中に塩分の含まれる限りにおいては時間の経過とともに漬かりが深くなる。またこれらは何れの場合も、一つの製品において漬かり度合は所与のものであり、消費者が漬かり度合を設定したりコントロールすることは出来ない。
【0005】
袋詰めされた茄子の漬物製品の製造方法は下記特許文献1に見られるが、これは主に下漬けされた茄子をその後流通過程において袋の中でいかに色落ちしないようにするかの提案であって、味や食感の面での漬かり度合については考慮されていない。また下記特許文献2では、工場では下漬けを行わず、包装容器に野菜と調味液を封入して流通過程で漬け込みを行う漬物製品の製造方法が提案されている。しかしこの方法は、流通過程における時間の経過による漬かり方のばらつきが大きいものと推察される。
【0006】
漬物の包装容器の面から見れば、下記特許文献3において、主に漬物を想定して食品と味材を容器内で区画材等を介して別々に収容し、販売時もしくは食する直前に両者を混合させるべく構成とした容器が提案されている。しかしその内容は味材が液体に限られ練状体である糠床等は含まれず、また区画されて未だ漬物には至っていない食品の鮮度保持を如何にするかなどについても考慮されておらず、概して具体的なものではない。また下記特許文献4では、漬床に直接触れることなく漬け込める漬物用床袋が提案されている。その内容は、食品と味材を袋内で別々に収容するものだが、両者を区画する材は不織布であり且つその不織布は外袋に側縁部で固着されているのが条件のため、漬り度合は次第に進行し、また利用者が漬かり度合を調節することは難しい。
【0007】
なお下記特許文献5と6は、おにぎりの包装に関するものである。これらは海苔の湿気るのを防ぐ目的で海苔と米飯の間にシートを介し、食べる際に該シートを外すものである。本包装容器入り茄子の浅漬けの発明においても漬床や漬液と茄子との間に袋状のシート材を介し、該シート材を外すこと等により漬け込みを開始する方法をとっている。しかしこれらの目的や効果はまったく別のものであり、産業上の利用分野も異なる。そして包装容器入りおにぎりの分野においては考慮されていない、内包する茄子の鮮度保持や、前記シート材をはずした後の茄子の漬け込み時間の短縮なども、本発明に固有のものである。
【0008】
また下記特許文献7は二糖類であるトレハロースによる塩分を通じた味と旨味の増強効果に関するものである。本包装容器入り茄子の浅漬けの発明においても、流通時における漬込み前の茄子の鮮度保持、同じく変色の防止、及び茄子と接した状態で封入する溶液(水分子)そのものの安定化、などの目的のために糖類を茄子と同封する。そして糖類の併せ持つ適度な甘味との対比による塩味や旨味の増強効果が、結果として前記シート材をはずした後の茄子の漬け込み時間の短縮に寄与する(本発明では糖類などと同様の目的のため、さらに乳酸菌を加えて茄子と同封する場合がある)。したがって本発明に使用する糖類はトレハロースに限定されず、また糖類などの封入は単に食味面だけでなく茄子の鮮度保持などを含めた複合的な効果を得るためであり、さらに本発明における包装容器面での工夫と結合して、その利用者に新しく大きな利便を与えようとするものである。
【特許文献1】特開2002−199841
【特許文献2】特開2002−306061
【特許文献3】特開平8−217091
【特許文献4】特開2000−152747
【特許文献5】特開昭63−307064
【特許文献6】実開平6−52487
【特許文献7】特開平10−66540
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
茄子の一種に「水茄子」(ミズナス)と呼ばれるものがあり、大阪府南部の泉州地方の特産品である(水茄子は呼称で、品種名は別に「みず茄」「紫水」など様々なものがある)。他の一般的な茄子に比べて皮や肉質とも柔かく、みずみずしく、代表的な食べ方は糠床による浅漬けである。特にヘタを取らずカットもしていない丸のまま漬けあがった浅漬けを、食べる直前にヘタをカットして、手で縦に裂いて食べる方法が地元では古来圧倒的に広く指示されている。包丁を使わないことに理論的根拠は無いが、確かに手で裂いた場合の白い果肉面の凹凸は、水茄子が元々持ったみずみずしさとも相まって、独特な食感をかもし出している。
【0010】
公表されたデータは無いものの、水茄子の浅漬け製品は冷蔵の宅配便の普及とも相まって特に贈答品を中心に市場が拡大しつつある。それは水茄子をカットしていない丸の果実のまま糠床とともに袋詰めし、これを宅配便にて当日出荷した場合、発送日の翌日もしくは翌々日に客先に到着すれば、到着日を含めて2〜3日が浅漬けとして最良の漬かり度合となることによる。水茄子の浅漬け製品の賞味期限は大抵の業者が漬け込み日から数えて7日目程度に設定しているが、実際には4日目を過ぎるあたりから漬かり過ぎで辛くなり、その場合には茄子を切り刻んで水洗いし、塩抜きした後に食べる方法を推奨しているのが実情である(図10を参照)。いずれにせよ浅漬けとして最良の味を楽しめるのは実質的に2日間程度に過ぎない。なおこの袋詰めの糠床による水茄子の浅漬け製品は、関西を中心にスーパーや百貨店でも店頭販売されつつある。
【0011】
この水茄子は、従来は丸の果実のまま糠床とともに袋詰めした浅漬け製品が主流であったが、最近は果実をカットした後に液漬けして袋詰めした製品も普及しつつある。その製造方法は、前記の水茄子以外の一般的な茄子の袋詰め漬物製品と同様に、塩分による下漬け工程を経た茄子をカットした後に、より低塩濃度の漬液もしくは調味液に漬けなおして一緒にパック詰めしたものである。その賞味期限は製造後1〜2週間の何れかの日に設定される場合が多く、これは水茄子以外の一般的な茄子の袋詰め液漬け製品と同様である。これら製品は例外なく時間の経過とともに漬かりが深くなり、浅漬けと銘打ったことに矛盾を感じる製品も見受けられる。
【0012】
また水茄子であるかどうかを問わず、浅漬けの状態を少しでも長く維持しようとする手段として、例えば、先に工場で浅漬けの程度まで漬け込みを済ませ、漬床や漬液を取り除いた状態で容器に封入して販売する方法や、あるいは漬床や漬液を同封して流通させる場合には、漬床や漬液の食塩濃度をかなり低く設定しておく方法などがある。しかしこれらは何れの場合においても食品の状態を安定させる目的での添加物の使用可能性を高め、また浅漬け本来の特色である素材の食感はほぼ例外なく失われてしまっている。
【0013】
糠床をはじめとする漬床を家庭で準備し、自身で茄子などを漬けて食べる場合には漬かり度合を調節できる。しかし手が汚れる、周りに臭いが漂う、漬床の管理が必要である、ことなどからどうしても敬遠されつつある。また、液体や粉末を水に溶いて使ういわゆる浅漬けの素が市販されており、家庭において簡単に液漬けの漬物を楽しむことが出来るようになっている。しかしこれらは例外なく主成分が塩で、塩分による浸透圧を利用してカットされた茄子などに急速に味付けを行っており、昔ながらの浅漬けの食感を十分に楽しめない。また贈答用として、生の水茄子に浅漬けの素を添えて送るのはあまり好まれないであろう。
【0014】
本発明は、かかる問題に鑑みなされたものであり、茄子の漬物の漬かり度合を利用者が直接手を汚すことなく選択でき、従来品のように漬かり過ぎで慌てて食べる必要がなく、また特に素材の食感を併せ楽しむ茄子の浅漬け製品としての最良の賞味期限を生産者側も無理なく設定できる包装容器入り茄子の浅漬けを提供することを課題とする。
【0015】
なお前記の水茄子以外にも、新潟県長岡市周辺で栽培される「黒十全」(別名は梨茄子)や、山形県で栽培される「薄皮丸茄子」など浅漬けに適するとされる茄子が存在し、水茄子同様に袋詰めの浅漬け製品として販売されている。また複数の種苗会社から生食にも向く茄子の品種開発が報告されており、茄子の浅漬けとしての食べ方は今後も普及が予想される。適するか適さないかの違いはあるものの、すべての茄子は種類を問わず漬物とすることは可能であり、よって本発明は水茄子に限定されず、すべての種類の茄子を対象とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の発明による茄子の浅漬けは、漬床や漬液と茄子を封入した包装容器入り茄子の漬物製品において、漬床や漬液と茄子とが混合することなく隔離する手段として、茄子を内包した内包装体と、該内包装体を装填する漬床や漬液を充填した外容器を備え、次に漬床や漬液に直接手を触れることなく該隔離状態を解除して漬床や漬液と茄子を外容器内で混合させる手段として、前記内包装体の一側縁部が漬床や漬液あるいは外容器の外側に裸出するか、もしくは内包装体の開封部分に連なる線状体の端部が漬床や漬液あるいは外容器の外側に裸出し、さらに内包装体の中には単糖類、少糖類、多糖類、多糖類の加水分解物及び糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の糖類を適量含有する水溶液を茄子とともに封入したことを特徴とする。
【0017】
本発明の包装容器入り茄子の浅漬けの主たる特徴は、まず漬床や漬液と茄子を非混合の、したがって茄子を塩分による漬込みは行わない鮮度を保った状態で流通させ、後にこれを入手した利用者が賞味期限内の自由な日に、食する時間を見計らって、糠床などで手を汚すことなく漬床等と茄子を混合させることにより初めて本漬け込みを開始させる点にある。そのため該利用者は、茄子の浅漬けとしての漬かり度合を手軽にかつ自在に選択できることとなる。
【0018】
即ち上記構成により、茄子の浅漬けの利用者は、外容器の外側から同方向に裸出した内包装体をなす内包装材の一側縁部を掴み、該内包装材のみを外容器の外側へ引き抜くか、あるいは、内包装体の開封部分に連なる線状体の外容器の外側に裸出した端部を掴み、該線状体を引っぱることで外容器の中で内包装体を開封し、手を汚すことなく漬床又は漬液と茄子を混合して本漬け込みを開始させることができる。
【0019】
また流通時漬込み前の茄子の鮮度保持、変色の防止、茄子と接した状態で封入する溶液(水分子)そのものの安定化などとともに、前記隔離状態の解除後の漬込み時間の短縮のために、内包装体の中には単糖類、少糖類、多糖類、多糖類の加水分解物及び糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の糖類を適量含有する水溶液を茄子とともに封入する構成となる。
【0020】
請求項2記載の発明による茄子の浅漬けは、上記構成に加えて、前記内包装体は袋状シート材をもってなし、該袋状シート材を茄子の一端から被せることにより茄子側包装面と、これを茄子のもう一方の端を覆うと共に折り返して漬床や漬液側包装面との2層として、漬床や漬液側包装面は茄子と直接接触せず、茄子側包装面は茄子との接触が離れる方向にめくられながら漬床や漬液側包装面に連続して引き出されるため、内包装体のうち袋状シート材のみを茄子との接触による抵抗を受けずに外容器より排出可能としたことを特徴とする。
【0021】
茄子とシート材が接触した場合は、摩擦による抵抗でシート材が滑らなくなる。この点、茄子は数ある野菜や果物の中でも特に樹脂性シート材との相性が最も悪い。さらに浅漬けに適した水茄子のよう特に皮が薄く柔かい種類の茄子では、癒着しているが如くシート材はまったく滑らなくなる。これに対処すべく、摩擦を低減するために粉体類を介することは、内包装体の中に多少とも水分が存する本発明の場合には向かない。また油脂やワックス類であっても、茄子に余分な味や香りが移ったり、後の作業性が悪くなることで使用できない。いずれにしても、如何なる物質を水茄子と樹脂性のシート材の間に介しても、十分な滑りは得られない。上記構成による発明によれば、浅漬けの利用者は力を込める必要が無く、また手も汚さず、容易に内包装体のうち袋状シート材のみを外容器より排出させることができる。
【0022】
請求項3記載の発明による茄子の浅漬けは、上記で用いる袋状シート材が、底から10cm位までの範囲で前記茄子側包装面となる部分に、前記の糖類を含有する水溶液が透過する無数の穴を開けたものであることを特徴とする。
【0023】
上記構成により、袋状シート材を折り返して2層とした場合に、内包装体の中に封入する少・多糖類などの水溶液を茄子に触れさせることができる。また袋状シート材を引き抜く際に、この水溶液は前記の穴を通って外容器内の糠床等に混入するが、その分糠床等が活性化され、味もよくなり、好都合である。一方で、内包装体の中に細長い寒天などの固形物を封入した場合には、袋状シート材を引き抜く際に前記の穴から固形物はおおむね流出せず、寒天等は袋状シート材とともに外容器から排出される。
【0024】
請求項4記載の発明による茄子の浅漬けは、請求項1の構成において、前記内包装体の中には茄子に替えて漬床や漬液を充填して内包し、該内包装体とともに茄子を装填する外容器を備え、さらに外容器の中には単糖類、少糖類、多糖類、多糖類の加水分解物及び糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の糖類を適量含有する水溶液を茄子とともに封入したことを特徴とする。
【0025】
請求項1〜3では茄子を内包した内包装体と、該内包装体を装填する漬床や漬液を充填した外容器を備えたのに対して、請求項4ではこれとは逆に漬床や漬液を充填した内包装体と、該内包装体とともに茄子を装填する外容器を備える構成となる。
【0026】
請求項5記載の発明による茄子の浅漬けは、漬床や漬液と茄子とが混合されない段階おいて、前記の茄子を内包した内包装体の中か(請求項1〜3に対応)、あるいは内包装体に漬床や漬液が充填されている場合はこれを装填した外容器内に(請求項1及び4に対応)、いずれの場合においても漬床や漬液と隔離された茄子を内包しその茄子と接する部分に封入する前記水溶液が、トレハロース、オリゴ糖類、デキストリン、キトサン、アガロース例えば寒天から選択される1種以上の適量を含んだ水溶液であることを特徴とする。
【0027】
本発明に用いる茄子は、一般的な漬物のように下処理工程における塩分による下漬けを原則行わず、また外容器内に装填された後も漬床や漬液と茄子との隔離状態を解除するまでは茄子の本格的な漬込みは行われず、少なくとも従来の袋入り漬物よりはそれぞれの包装体の中の茄子が生鮮品に近い状態で流通する。このため茄子の乾燥や酸化による劣化が内包装体の中などで早まらないよう鮮度保持をはかる必要がある。上記構成はこのような課題に対応したものである。
【0028】
次に利用者が前記のそれぞれの隔離状態を解除することで本漬け込みを開始させたとしても、それから食べられるまでの時間が長すぎては商品価値が下がる。特に外容器が小さな袋などの場合、内包装体と外容器の間などに封入される糠床等の容量が限られることや、冷蔵庫内では発酵食品たる糠床の活性が低く、浅漬けの場合であっても従来製品と同様に2日以上を要する場合がある。この課題に対しては、上記で用いたトレハロースなど糖類の併せ持つ適度な甘味との対比による塩味/旨味の増強効果、糖類の水溶液が混入することによる糠床等の活性化などが、結果として前記袋状シート材を引き抜いた後などの茄子の漬け込み時間の短縮に寄与する。
【0029】
請求項6記載の発明による茄子の浅漬けは、前記の茄子に接して封入する水溶液に糖類とともに乳酸菌の適量を加えたものであることを特徴とする。
【0030】
糖類などと同様の目的、すなわち、流通時漬込み前の水茄子の鮮度保持や、前記隔離状態を解除して漬込みを開始した後に浅漬けとして仕上がるまでの時間短縮などのために、乳酸菌の適量を茄子に接して封入する構成とするものである。
【0031】
請求項7記載の発明による茄子の浅漬けは、茄子はヘタを取らずカットもしていない丸のままの果実であって、塩分による手揉みや下漬けなどの前処理は行わず、漬床や漬液の塩分濃度は2〜14%で、前記隔離状態を解除して漬床や漬液と茄子を混合させた時を基点に、浅漬けとして最適な味になるまでの漬け込み所要時間が5〜12℃の冷蔵庫内放置下で30分以上6時間以内であること、のように構成される。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、他の一般的な茄子に比べて皮が薄く乾燥に弱いなど取り扱いが難しい水茄子を用いて、水茄子はヘタを取らずカットも一切していない丸のままの果実であって、塩分を用いた下漬けは原則行わず、本発明による製造後少なくとも3週間を経過する日までの間であれば、この間何時でも内包装体のうち袋状シート材のみを外容器の外側に引き抜くなどの方法により漬床等と茄子の隔離状態を解除して両者を混合させ、冷蔵庫内で30分〜6時間放置して漬け込みを行えば、最適な味、香り、そしてサクサクとした食感なども十分持ち併せた水茄子の浅漬けを例外なく食することができる。なおシート材を引き抜く際などに、手は汚れず、ほとんど力は必要なく、誰でも容易に漬け込みを開始できる。
【0033】
この結果、製造者も製造後3週間のうちで余裕をもって賞味期限を設定できる。従来の袋入り水茄子の浅漬け製品が、実際に浅漬けとして最良の味を楽しめるのが2〜3日に限られるにもかかわらず、これまでほとんどの製品において賞味期限が1週間、あるいは時にそれ以上に設定されているといった問題点が本発明により解消できる。(図10を参照)
【0034】
また丸のままの果実であって、塩分を用いた下漬けを原則行わない場合、漬床等と茄子とが混合されない段階おいて、内包装体の中に除菌洗浄後の茄子のみ封入した場合の茄子の鮮度保持期間がおおよそ2週間であるのに対し(この場合、2週間を超えて3週間を経過するまでの間に、10サンプルあたり1〜2例の割合で、茄子の果実に褐変の始まるのが確認された。なお後掲の表1はカットした茄子での観察であるので、これには該当しない)、トレハロース、オリゴ糖類、デキストリン、キトサン、アガロース例えば寒天などの群から選択される1種以上の適量を含んだ水溶液、あるいはこれに乳酸菌を加えた水溶液を茄子を取り囲み接するよう封入した場合には、少なくとも3週間は例外なく鮮度の維持されることが確認された。
【0035】
トレハロース、デキストリン、キトサン及び乳酸菌は、すでに幾通りかの袋入り漬物製品に利用されている。トレハロースの保湿効果、デキストリンの抗酸化作用、キトサンの抗菌性や茄子の変色防止効果、乳酸菌の腐敗物質に対する抗菌性などは公知のものである。またオリゴ糖類、寒天なども主に保湿効果を目的に使用する。茄子の鮮度保持にこれら各々のいかなる効能が直接働きかけているかについては今後の解明が必要だが、少なくとも茄子の表面に皮膜を作って酸化や過乾燥と変色などを防止していることや、溶液(水分子)そのものの安定化などが寄与していることは間違いない。
【0036】
上記のうち寒天はペクチンやマンナンなど他の植物性繊維を用いてもよい。またこの寒天の役割は、不織布などの吸水体によっても代替させることができる。寒天は内包装体の中の茄子を上から覆うように封入する。これは丸のままの茄子の場合には、ヘタの茎をカットした部分からの水分蒸散が最も多いので、これを防ぐためである。不織布などの吸水体を用いた場合には、吸水体は茄子のこの部分を上から覆うとともに、その裾部分がトレハロース等の水溶液に浸るように配置される。なお請求項1〜3の構成によって、この不織布は寒天と同様に、漬込み開始時には袋状シート材とともに外容器から排出される。
【0037】
従来の袋入り水茄子の浅漬け製品のうち、糠漬けであって、水茄子はカットされていない丸のままの場合には、糠床の量が限られことや、冷蔵庫内では発酵食品たる糠床の活性が低いことなどの理由から、適度な漬け具合となるのに少なくとも2日間を要した(前述の通り、一方で4日目過ぎあたりからは漬かり過ぎてしまう)。本発明によれば、内包装体等の中に主に前記の少・多糖類などを茄子と接する様に封入することで、塩分による下漬け処理を原則経ていないにもかかわらず、前記袋状シート材を引き抜く方法等により漬床や漬液と水茄子を混合させた後の漬け込み時間が30分〜6時間で済むことが例外なく確認できた。なお、その際の漬床等の塩分濃度は2〜14%から選択される一定の濃度で、次第に濃くするなどの操作は一切行わない。
【0038】
上記のうち、冷蔵庫の温度は5〜12℃がよく、より好ましくは8〜10℃である。もともと高温地域の作物である茄子は10℃位での保存が適し、5℃未満では急速に鮮度が落ちる。また8℃未満では糠床の活性が低く漬かりにくい。一方10℃を大きく越えると冷蔵庫内の他の生鮮保存品に影響が及ぶ可能性がある。したがって一般的に8〜10℃位の設定であることの多い野菜室での保管・漬け込みが好適である。
【0039】
上記のうち、漬け込み時間は30分〜6時間だが、糠床の場合には、より好ましくは2〜4時間漬けたものが最も美味である。液漬けの場合には、より好ましくは1〜3時間漬けたものが最も美味である。このように本発明品が短時間で美味しく漬け上がるのは、前記袋状シート材を引き抜いた後等において、茄子の表皮から糠床や漬液が浸透圧の働きにより滲みこむ際に、トレハロースやデキストリンなどの糖類の持つ適度な甘味との対比による塩味や旨味の増強効果が働いているためと考えられる。また糖類の水溶液が混入することによる糠床等の活性化が、結果として漬け込み時間の短縮に寄与する(糠床は適度に柔らかい方が漬物が漬かり易く、また糠床に生息する乳酸菌は糖類により活性化する)。
【0040】
内包装体の中に糖類とともに乳酸菌を加える場合には、この乳酸菌は糠床等と混合する以前においてはトレハロース等の糖類を養分として生息できる。また前記袋状シート材を引き抜き糠床等と混合した後は、前記乳酸菌は糠床に元から生息する乳酸菌と合わさることでより活性化されることになる。そしてこの活性化された乳酸菌の働きにより、茄子の漬かりがより早くなり、またより奥深い味に仕上がることが確認できた。
【0041】
上記のうち、糠床などの塩分濃度は2〜14%から選択されるが、より好ましくは2〜8%である。2%未満では糠床が痛む(漬液の場合はこの限りでない)。8%を超えると糠床の中に初めから含まれる乳酸菌の生息数の減少はもとより、内包装体などの中に封入されて前記袋状シート材を引き抜いた後に混合する乳酸菌の生息増加数も抑制され、漬かりや食味に良くない影響を与える場合がある。
【0042】
また前記内包装体などの中に茄子を取り囲み接するよう封入した糖類の水溶液は、例えば糖類がトレハロースの場合には3〜15%の濃度が適当で、茄子の鮮度保持上からより好ましくは7〜15%で、さらに茄子の食味上からの観点を加えると7〜13%の濃度がより好ましい。13%を超えるとやや、15%を超えると強く、トレハロースの本来持つ甘味が水茄子に移りすぎてしまう。一方3%未満では鮮度保持の効果が認められなかった。
【0043】
以下、本発明を構成する事項について実験で説明する。
【0044】
[実験1]
<トレハロース水溶液の濃度が水茄子(カットあり)の状態に及ぼす影響>表1は、塩分による下漬けを行っていない新鮮なままの状態の水茄子を試品として準備し、これを透明の袋に濃度別のトレハロース水溶液とともに封入して冷蔵庫内保管し、3週の間目視観察を行った結果である。対照として、トレハロースを含めない飲用水とともに封入したものとも比較を行った。なお、本発明では原則として水茄子はヘタを取らずカットも一切行わない丸のままの新鮮な果実を用いるが、当検証では観察し易いように水茄子の丸い方を縦横に約4分の1カットし、果実の中の状態が袋の外から目視できるようにした。
【0045】
トレハロース水溶液の濃度が水茄子(カットあり)の状態に及ぼす影響(目視)
【表1】

(注)
1.Aは茄子と同封するトレハロース水溶液の濃度である。
2.表中の記号の意味。
◎果肉に変色がなく、溶液にも濁りがほとんどない。
○果肉に変色はないが、溶液に若干の濁りが認められる。
△果肉に若干の変色(褐変)が始まり、溶液にも濁りが目立ち始める。
×果肉に目立った変色(同前)があり、溶液に浮遊物が認められる。
3.Bの食味影響とは、当検証とは別に、各濃度のトレハロース溶液を用いて後掲第1実施例の「包装容器入り水茄子の糠床による浅漬け」を製作し(トレハロース水溶液は内包装体の中にカットしない丸のままの水茄子とともに封入)期間経過後にこの溶液に浸された水茄子を、外容器内の糠床と混合させて漬け込んだものを食味比較した結果である。トレハロースの主に甘味が米糠と混じると、独特の風味を醸し出す効果がある。
【0046】
実験1の結果は開始3日目から現れ始めた。トレハロースを含めない飲用水の方は果実のいわゆるアクが浮遊し始め、日が経つにつれて濁りは濃くなった。これに対してトレハロース水溶液の場合は6日目あたりから僅かながらのアクが浮遊し始めるものの、水溶液の濁りは3週間を通してはるかに飲用水の場合より薄かった。特に15%までは濃度が高いほどアクによる濁りは少なかった。これに対して3%未満の濃度では、飲用水の場合とあまり濁りに差がなかった。
【0047】
なお上記検証では水茄子の一部をカットして目視ができるようにしたため、トレハロース等を含有した場合でも段階的にアクが生じたが、カットを一切行わない丸のままの果実の場合には、トレハロースの濃度が7〜15%水溶液の中において、少なくとも3週間は例外なく完全に茄子の鮮度が保持されるのが確認される。これは上記実験の結果からも、トレハロースの含有による効果と判明した。
【0048】
前記トレハロースに替えてデキストリン類を用いてもよい。あるいはトレハロースとデキストリンを併用して、出来上がり濃度で3〜15%(より好ましくは7〜13%)の水溶液としてもよい。またこれらにキトサンの適量(1〜3%未満)を併用することも有効である。オリゴ糖類や、その他の多糖類、多糖類の加水分解物及び糖アルコール等を含有する溶液も、少なくとも茄子の表皮をコーティングして鮮度保持効果のあることが考えられる。またこれら糖類と乳酸菌との併用も好適である。乳酸菌は一部が漬物用の乳酸菌として市販されているものもあり、余分な雑菌発生に対する抑止効果は公知であるが、さらに当発明においては糖類や糠床等に元から生息する乳酸菌と混合して、漬込み時間の短縮や食味の向上効果が確認できる。
【0049】
[実験2]
<「糠床」漬けの経過時間別の食味比較>表2は糖類としてトレハロースを用いた濃度別の水溶液を準備し、個別容器に該水溶液とともに水茄子(丸のままでカットせず、塩分による下漬けを行わず、数度の洗浄を経た新鮮な果実)を封入し、2週間後に水茄子をトレハロース水溶液とともに塩分濃度の異なる糠床に漬込み、経過時間毎の食味比較を行った結果である。
【0050】
「糠床」漬けの経過時間別の食味比較
【表2】

(注)
1.Aは糠床の塩分濃度で、Bは該糠床に漬込むより以前に水茄子を2週間浸したトレハロース水溶液の濃度である。
2.Cは糠床と水茄子の隔離手段を解除して本漬込みを開始した後の経過時間である。
3.各経過時間後に水茄子の食味比較を行ったが、1度食した検体を再度漬込むことは行わない。経過時間毎に新たな丸のままの検体で食味比較を行った。
4.対照として、トレハロース水溶液に浸していない生の水茄子も塩分濃度毎の糠床に各時間漬込み、食味の対照比較を行った結果である。
5.表中の「薄い」=主に塩味や旨味が浅漬けと言えるまでしみ込んでいない。
「甘い」=トレハロースの甘味が塩味に勝っており、美味しくない。
「良好」=塩味や旨味が浅漬けと呼べるに程よくしみ込んでいる。
「辛い」=塩味が旨味に勝る、あるいは塩辛い複雑な味である。
6.食味比較は基本的に5名で、うち1名が準備を行い、検体の塩分や糖類の濃度などは各名に伏した条件下で行った。
【0051】
前記の通り、当実験結果においても糠床の塩分濃度は2〜8%、トレハロース水溶液の濃度は7〜13%が好適で、漬け込み時間は30分〜6時間だが、糠床の場合には2〜4時間漬込むことがより好ましいことが判明した。またトレハロース水溶液に一定期間浸すことによって、その間の生の水茄子の鮮度保持だけでなく、糠床に漬込んだ後の浅漬けとしての仕上がりにトレハロースなどの糖類が寄与していることが判明した。なお対照としたトレハロース濃度0%の水茄子は、塩分濃度10%の糠床に6時間漬込んだ場合であっても食味は「薄い」の範囲内であった。こうしたトレハロースの効果は、前述の通り、糖類の持つ適度な甘味との対比による塩味や旨味の増強効果が働いているためと考えられる。また糖類の水溶液が混入することによる糠床等の活性化が、結果として漬け込み時間の短縮に寄与する(糠床は適度に柔らかい方が漬物が漬かり易く、また糠床に生息する乳酸菌は糖類により活性化する)。
【0052】
[実験3]
<乳酸菌の添加による漬かり/旨味の変化>表3は実験2の方法に準じて、但し、トレハロース水溶液の濃度は7%のみとし、この水溶液に乳酸菌スターターを0.1%添加し、対照として該乳酸菌スターターを添加しないものを準備し、2週間後にそれぞれを糠床に漬込み、両者間でその後の食味等にどのような変化の差が表れるかを確かめた結果である。
【0053】
乳酸菌の添加による漬かり/旨味の変化
【表3】

(注)
1.Aは糠床の塩分濃度である。
2.BはAの糠床に漬込むより以前に水茄子を2週間浸したトレハロース水溶液で当実験では濃度を7%に固定。これに乳酸菌を0.1%添加したものである。
3.Cは糠床と水茄子の隔離手段を解除して本漬込みを開始した後の経過時間である。
4.各経過時間後に水茄子の食味比較を行ったが、1度食した検体を再度漬込むことは行わない。経過時間毎に新たな丸のままの検体で食味比較を行った。
5.対照として、Bのトレハロース7%水溶液に乳酸菌を添加していないものを用意し、これに2週間浸してその後同じ条件で漬込んだ茄子と食味比較を行った。
6.Dの「食味」とは、上記注5の乳酸菌を添加していない場合の味で、おおむね表2の各該当区分の結果に一致する。(ただし表2の実験とは別に行っている)
7.乳酸菌を添加した溶液Bで処理したものがDの食味に比べてどう変化したかの結果をEとFに記載した。
E「漬り」…乳酸菌を用いた方が漬かりの味が「深い」かどうか。ここでの「深い」とは「濃い」「早い」などを含む概念である。
F「旨味」…乳酸菌を用いた方が美味しい=「良化」かどうか。なお当実験では、乳酸菌を用いて味の「悪化」する例は無かった。
8.食味比較は基本的に5名で、うち1名が準備を行い、検体の塩分濃度や乳酸菌の添加の有無などは各名に伏した条件下で行った。
9.用いた乳酸菌は茨城県工業技術センターの開発したラクトバチルス・サケHS1(FERM P−17617)である。
【0054】
表3の通り、糠床の塩分濃度が4〜8%の範囲においては、乳酸菌を添加した溶液に浸しておいた水茄子の方が、その後に糠床への漬かりがより深く、また旨味も良好であることが判明した。塩分濃度が2%の糠床でも、時間の経過とともに乳酸菌を加えた方が味が良くなる。逆に、塩分濃度が10%の場合には、時間が経過しても差は認められない。こうしたことから、水茄子と同封する水溶液の糖類の元で乳酸菌が生息し、水茄子と糠床の隔離状態が解除され本漬込みが開始された後は、乳酸菌が漬込み時間の短縮や旨味の増強にも役立っていることが判明した。
【0055】
上記の結果は、糖類の水溶液に添加する乳酸菌が、後に糠床に元から生息する乳酸菌と合わさることでより活性化されるためである。活性化された乳酸菌の働きが、茄子の漬かりに相乗効果をもたらす。なお前記の通り、糠床の塩分濃度は2〜14%から選択されるが、より好ましくは2〜8%である。2%未満では糠床が痛む(漬液の場合はこの限りでない)。8%を超えると糠床の中に初めから含まれる乳酸菌の生息数の減少はもとより、茄子の漬込み後にこれと混合する糖類溶液中の乳酸菌の生息増加数も抑制され、漬かりや食味に良くない影響を与える場合がある。
【0056】
茄子と同封する乳酸菌は発酵過程で膨張しないホモ発酵型で、比較的低温の条件下で強いもの(前記の通り本発明品は5〜12℃、より好ましくは8〜10℃の冷蔵庫内で保管される)、さらに一定範囲での酸に強いものが好適であり(極度に酸生成能の強い種は、Phが低くなり過ぎ、後発酵をおこし、食味が悪くなる)、実験3ではこれに適合するものとしてラクトバチルス・サケHS1(FERM P−17617)を使用した。
【0057】
ホモ発酵型ではこの他、ラクトバチルス属の中の他のホモ発酵型乳酸菌、エンテロコッカス・フェカリスや同フェシウムなどのエンテロコッカス属乳酸菌、ペディオコッカス・ペントサセウスなどのペディオコッカス属乳酸菌等があげられる。一般的に酸に強い性質を有するホモ発酵型の有胞子型乳酸菌の群も本漬込み後の時間短縮には有効だが、茄子の鮮度保持の観点からは酸性に傾き過ぎるので、使用する場合の量は少なめに調整される。
【0058】
ヘテロ発酵型は炭酸ガスを作り膨張するため包装容器入りの本発明には基本的に向かず、又エタノールを副生するため食味の悪くなる場合がある。しかしヘテロ発酵型にも各々の特徴があり、あえて使用する場合にはごく少量を単独で用いるか、あるいはごく少量をホモ発酵菌と併用するなどして使用される。この場合の乳酸菌として、例えばラクトバチルス・ブレビス・サブスビーシス・コアギュランス(通称ラブレ菌)や、ビフィドバクテリウム属(通称ビフィズス菌)でもビフィドバクテリウム・ロンガムなどが挙げられる。
【0059】
[実験4]
<「漬液」漬けの経過時間別の食味比較>表4は実験2の方法に準じて、糖類としてトレハロースとデキストリンを用いた濃度別の水溶液を準備し、個別容器に該水溶液とともに水茄子(丸のままでカットせず、塩分による下漬けを行わず、数度の洗浄を経た新鮮な果実)を封入し、2週間後に水茄子をそのトレハロース等の水溶液とともに塩分濃度の異なる「漬液」に漬込み、経過時間毎の食味比較を行った結果である。
【0060】
「漬液」漬けの経過時間別の食味比較
【表4】

(注)
1.Aは漬液の塩分濃度で、Bは該漬液に漬込むより以前に水茄子を2週間浸したトレハロースにデキストリンを加えた水溶液の濃度である。
2.Cは漬液と水茄子の隔離手段を解除して本漬込みを開始した後の経過時間である。
3.各経過時間後に水茄子の食味比較を行ったが、1度食した検体を再度漬込むことは行わない。経過時間毎に丸のままの検体で食味比較を行っている。
4.対照として、トレハロース等の水溶液に浸していない新たな水茄子を塩分濃度毎の漬液に各時間漬込み、食味の対照比較を行った結果である。
5.表中の「薄い」=主に塩味や旨味が浅漬けと言えるまでしみ込んでいない。
「甘い」=トレハロースの甘味が塩味に勝っており、美味しくない。
「良好」=塩味や旨味が浅漬けと呼べるに程よくしみ込んでいる。
「辛い」=塩味が旨味に勝る、あるいは塩辛い複雑な味である。
6.食味比較は基本的に5名で、うち1名が準備を行い、検体の塩分や糖類の濃度などは各名に伏した条件下で行った。
【0061】
前記の通り、当実験結果においても漬液の塩分濃度は2〜8%、トレハロースなどの水溶液の濃度は7〜13%が好適で、漬け込み時間は30分〜6時間だが、液漬けの場合には1〜3時間漬込むことがより好ましいことが判明した。またトレハロース等の水溶液に一定期間浸すことによって、その間の生の水茄子の鮮度保持だけでなく、漬液に漬込んだ後の浅漬けとしての仕上がりにトレハロースなどの糖類が寄与していることが判明した。なお対照としたトレハロース等の水溶液に浸していない水茄子の場合は、例えば塩分濃度6%の漬液に漬込んだ場合においても、4時間までは「薄い」、5時間経過ではじめて「良好」の範囲に達する。こうしたトレハロースやデキストリンなど糖類の効果は、前述の通り、糖類の持つ適度な甘味との対比による塩味や旨味の増強効果が働いているためと考えられる。
【0062】
糠床とは異なり、漬液の場合にはその中にもともと乳酸菌は生息せず又これを含まない。にもかかわらず、漬液の塩分濃度は2〜14%から選択されるが、より好ましくは2〜8%であるとしたのは、茄子と漬液の隔離状態を解除して本漬込みを開始した後に、漬液と混合するトレハロース等の糖類溶液中の乳酸菌の生息増加数が塩分濃度8%超の環境下では抑制され、漬かりや食味に良くない影響を与える場合があるからである。なお液漬けの場合であっても、漬液の塩分濃度を低くして(例えば前記実験3で用いた乳酸菌の場合は8%以下)これに乳酸菌を含めておくことは可能で、その場合には実験3と同様に、漬込み後に双方の乳酸菌が合わさることで活性化し、茄子の漬かりに相乗効果をもたらす。なお、2%未満の塩分濃度では糠床が痛むが、漬液の場合はこの限りでない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下、本発明を「包装容器入り水茄子の浅漬け」による具体例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0064】
図1〜図7に示すのは本発明の「第1実施例」で、ヘタを取らずカットもしていない丸の果実のままの「包装容器入り水茄子の糠床による浅漬け」であって、請求項4以外のすべての請求項に対応する。ちなみに図7は、当発明による製品が流通した後に、利用者のもとで水茄子と糠床が混合されて漬け込みが開始された際の透視図だが、この段階において従来の一般的な袋入り水茄子の浅漬け製品と同じ様態になっている。
【0065】
図1は同浅漬け製品を側面から見た透視図である。第1実施例における糠床2aと水茄子1の隔離手段としての内包装体3は袋状シート材3aをもってなし、請求項2記載の発明にあるよう該袋状シート材3aは2層に折り返されて(符号4)水茄子を包んだ内包装体3となり、この内包装体が糠床2aの充填された外容器5aに装填され、ただし内包装体の一側縁部3bは外容器の外側に裸出した構造を持つものである。
【0066】
まず使用する水茄子1は、本発明のいずれの実施例においても、出来るだけ新鮮で色艶が良く、キズの無いものを準備し、第1次の洗浄を行う(オゾン水もしくは電解次亜水の使用が好ましい)。洗浄された水茄子は、内包装する前にミョウバンによるナス紺(茄子の果皮に含まれる天然の色素で、「ナスニン」(アントシアニン系色素)というポリフェノールの一種)の定着作業を行う。ただし、一般の水茄子の漬物の場合に行われるこの下処理段階での塩揉みあるいは塩漬け(荒漬け)は、第1実施例においては一切行わない。
【0067】
前記のナス紺の定着作業は、本発明以外の一般的な水茄子の漬物では、粒塩にミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)を適量加えたものを漬け塩として、この漬け塩で茄子を揉むか、あるいは濃い塩分濃度のミョウバンを加えた水溶液に茄子を下漬けする。対して本実施例ではこの際に塩分を一切用いずミョウバンのみで処理し、ナス紺をむら無く定着させる。またこのミョウバンには古来より漬物の分野において殺菌効果や水の浄化作用があるとされており、こうした面からも好都合である。ただし、余分なミョウバンが表皮に残ると味にやや苦味が残るので、ミョウバンの使用量は水茄子の重量比で0.2〜0.4%程度にとどめ、約30分間ほど馴染ませた後に清潔な水で洗い流し、水分を取っておく(なお、ここでの第2次洗浄も、前記の第1次と同様にオゾン水もしくは電解次亜水の使用が好ましい)。
【0068】
次に上記の水茄子1を内包装する。図2(a)は前記の内包装体3をなす袋状シート材3aの側面図で、図2(b)はこれで水茄子を内包装する際の透視図である。袋状シート材3aの素材は厚さ0.01〜0.02mm程度のポリエチレン製の袋がよく、外形は短手方向たる横長が120mmあれば適当な大きさの水茄子はほぼ過不足なく挿入できる。長手方向たる縦の長さは、請求項2の構成のように折り返し(符号4)をつける場合には650〜700mmのものが必要である。なお折り返して水茄子を封入する場合には、請求項3の通り、該袋状シート材の底3cから10cm程度の範囲にまんべんなく複数の穴6を開けておく。後にこの穴6を開けた箇所が、袋状シート材3aの水茄子側包装面3dとして水茄子に接する部分になる。そして内包装体3に封入するトレハロースなど糖類や寒天7(図1を参照)及び乳酸菌などの機能を水茄子の果皮に伝えるための穴となる。因みにこの穴の大きさは直径3〜7ミリメートルが好適である。
【0069】
本発明の第1実施例では、内包装体3は袋状シート材3aをもってなし、該袋状シート材を水茄子1の一端(ヘタの方)から被せることにより水茄子側包装面3dと、これを水茄子のもう一方の端(お尻の丸い方)を覆うと共に折り返して(符号4)糠床側包装面3eとの2層として、糠床側包装面3eは水茄子と直接接触せず、水茄子側包装面3dは水茄子との接触が離れる方向にめくられながら糠床側包装面3eに連続して引き出されるため、内包装体のうち袋状シート材のみを水茄子との接触による抵抗を受けずに外容器5aより排出可能としたことを特徴の1つとする。これは茄子の中でも特に皮の薄い水茄子の場合、あらゆる樹脂性シート材と癒着しているが如く張り付きシート材が全く滑らなくなることへの対策である。上記構成により、浅漬けの利用者は袋状シート材のみを外容器より排出させる際に、力を込める必要がなくなる。なお製造時は、前記の縦長のポリエチレン製袋3aを水茄子のヘタの方から被せ、水茄子の丸いお尻の方を覆うとともに折り返す(符号4)。この折り返した部分4は、図3のごとく左(a)右(b)と下端(c)から三つ折にして、水茄子に沿わして収めておく。
【0070】
次に上記の袋状シート材3aに収められた水茄子の内包装体3を、軽く洗浄(第3次)した後に、糠床となる外容器5aに装填する。図4はその装填の様子であり、側面から見た透視図である。第1実施例では外容器5aとして、ポリエチレン製の規格袋で、厚さ0.03mm×横130mm×縦250mmのものを用いた。これに糠床2aを適宜充填しながら(2aa)、その途中で前記水茄子の内包装体3を装填する。上記袋状シート材3aの折り返して三つ折にした部分(符号4)は、糠床の弾力によって封じられ、糠床2aはこの部分から内包装体の中には混入しない。また逆に、後の工程にて内包装体の中に水分を封入した場合でも、極端な力が外容器5aの外側から加わらない限り、この内包装体の中の水分は糠床2aの側に混入しない。そしてこの段階では、水茄子を内包装した袋状シート材3aのうち糠床側包装面3eが壁となって、この袋状シート材3aを外部に引き出さない限り、水茄子1と糠床2aは混合していない。
【0071】
第1実施例では、糠床2aと水茄子1との隔離状態を解除するまでは、水茄子はあくまでカットされていない丸のままの生鮮品である。その鮮度保持などのために、前記のミョウバン処理だけでは不十分であり、内包装体3の中にはトレハロース、オリゴ糖類、デキストリン、キトサンなどの水溶液や寒天(符号7)、あるいはこれに乳酸菌を加えたものが、茄子を取り囲み接するよう封入される。当実施例での封入場所は、水茄子側包装面3dと糠床側包装面3eとの間、すなわち袋状シート材3aの2層となった間のポケット部分8aで、水茄子側包装面のみ多数の穴6が開いた部分である。
【0072】
上記のうち寒天7は、水茄子1の乾燥を防ぐ目的で、ヘタの茎を切った部分(本実施例では袋状シート材3aのうち、底の部分3cから水茄子側包装面3dにかけての穴6の開いた部分が覆いかぶさっている)を覆うがごとく、軽く一掴みを袋状シート材3aの上開口部8bから入れる。寒天はいわゆる昔ながらの「ところ天突き」で細長く押し出し成型したものを使う。これは細長い方が水茄子に沿って覆えるのと、後に袋状シート材を抜き出す際に該袋状シート材の底10cm位の部分に開けた穴6から寒天が糠床内2aに余分にこぼれ出るのを防ぐためである。なお前述の通り、この寒天の役割は不織布などの吸水体によって代替させることができる。
【0073】
寒天7を入れた後に、外容器5aの上端部分5bを袋状シート材3aと共に掴みながら、針金入りテープ材9などで巻いて巾着状にシールする。図5はその第1実施例の外観側面図である。なお実際の販売時には、温度変化に対する緩衝材として外容器の胴回りに薄手の段ボール紙か発砲スチロール製のシートを巻き、さらにチャック付の透明袋に入れた構成とする(図は省略)。このチャック付透明袋の開口部最端は安全面からも熱シールしておく。
【0074】
こうして水茄子1と糠床2aが袋状シート材3aを介して非混合の状態で封入された製品10が流通する。これを受けた利用者は、製造日後少なくとも3週間を経過する日までの間であれば、この間何時でも袋状シート材3aを糠床たる外容器5aの外側に引き抜くことで糠床と水茄子を混合させ、本発明のうち糠床の場合の最適な待ち時間である2〜4時間を冷蔵庫内で外容器ごと漬け込むだけで、素材の食感を残した美味しい水茄子の浅漬けを食することができる。なお、当実施例の構成によれば、個々の製品重量は500〜600g程度となり、これは従来製品である一重の袋入り水茄子漬(500gから+−30g位の製品が多い)と大差なく、例えば従来通り詰め合わせ贈答品向けとして問題なく、また冷蔵庫内でも数個据え置きできる大きさである。
【0075】
図6は袋状シート材3aが外容器5aの外側へ抜き出される際の透視図である。利用者が袋状シート材3aを糠床たる外容器5aの外側へ引き出す際は、当例では前述の針金入りテープ材9を一旦緩めて行う。まず製品10を台上に立てて置き、利用者は一方の手の人差し指と親指で小円を作り、これを外容器5aの上開口部周縁に軽く添えて、もう一方の手で袋状シート材の上端3bを掴みこれを引き抜けばよい(符号13)。その際、袋状シート材3aの中に封入された細長い寒天7は、袋状シート材の底部分3cに溜まって、袋状シート材と同時に外容器の外側へ排出される。これに対して糖類や乳酸菌などの水溶液は、袋状シート材の底10cm位の部分に開けていた穴6から糠床内2aにこぼれ出るが、前述の通りこの水溶液が糠床等と混合して水茄子の漬かるのを早める。
【0076】
上記の袋状シート材3aを引き抜く作業をより容易にするため、紙もしくは樹脂製シートをドーナッツ状に加工した補助リング11(穴の周囲に弁状にするための切れ込みを入れると好適である)を作成し、これを外容器の上開口部5b周縁にセットしておき、利用者は前記のように指で小円を作る替わりに該補助リング11に手を添えてもらうようにすれば(符号12)、特に初めての利用者にとって便利である。
【0077】
図7は、袋状シート材3aが排出された後に、水茄子1が糠床2aと混合して漬かっている状態の透視図である。ちなみにこの段階で、従来の一般的な袋入り水茄子の浅漬け製品と同じ様態になっている。
【0078】
第1実施例では、前記内包装体3の中に(株)林原製のトレハロースの水溶液を大さじ2杯の約30ml封入した。同水溶液の濃度は3〜15%が適当で、より好ましくは7〜13%であると考えられる。15%を超えるとトレハロースの本来持つ甘味が水茄子に強く移りすぎてしまう。一方3%未満では効果が認められなかった。
【0079】
表5は、本発明の第1実施例における、食品としての微生物検査の結果である。また表6は、比較サンプルとして購入した市販の袋入り水茄子の浅漬けの同検査結果である。表6の市販品の方は、開封後に茄子から漬液を洗い落とさずに食べる仕様であり、検出された菌類は経口される可能性が高い。対して、表5における本発明品のこの場合の検体は、後に外容器に充填された糠床と混合される以前の状態のものであり、実際には食べる前の数時間において糠床と混合されることから、一般生菌は糠床の塩分や乳酸菌による善玉発酵にさらされることになる。さらに表5における本発明品では、食べる直前にこうした糠床なども全て水茄子から洗い落とされる仕様のものである。なお表5のうち、トレハロースに加えてキトサンの微量を添加した検体Bの14日目の一般生菌数の減少からも、キトサンの抗菌効果が認められる。キトサンは水に不溶なので、当該溶液に添加する際には食酢(りんご酢など)にて溶解しておくと好適である。
【0080】
本発明品の微生物検査の結果
(第1実施例:茄子は丸のままのものを、外容器内の糠床とは隔離された状態で、内包装体の中に脚注に記載の溶液とともに封入されたものである)
【表5】

(注)
1.検体Aの茄子は、トレハロースの7%水溶液とともに封入されたものである。
2.検体Bの茄子は、トレハロースの7%、キトサン1.5%の水溶液とともに封入されたものである。
【0081】
比較参考品の微生物検査の結果
(サンプルとして購入した市販の袋入り水茄子の浅漬けで、茄子はヘタを取り、8等分位にカットしたものを味液(乳酸菌は含まれていない)に漬けたものである)
【表6】

(注)
1.検体Cの商品上の食品表示
(漬液の原料)
食塩、アミノ酸、酸味料、ビタミンC
(調査した塩分濃度は2.4%であった)
2.検体Cの消費期限は、購入日(=検査日、=上表の保存日数の1日目)から数えて9日目に設定されていた。
【0082】
上記微生物検査の条件(本発明品と無作為に購入した市販品との比較)
使用培地 3M社製の微生物検査用プレート
生菌数測定用、E.coli及び大腸菌群測定用
培養条件 培養温度 摂氏36度 培養時間 48時間
検体 茄子の表皮と表皮近くの果肉を、漬液を取り除かずにホモジナイズ
したもの。
製品の保存条件 冷蔵庫内(野菜室) 摂氏6.0〜10.0度
一旦開封した製品は廃棄し、次の検査・検体には用いない。
【実施例2】
【0083】
本発明の「第2実施例」は、ヘタを取らずカットもしていない丸の果実のままの、「包装容器入り水茄子の漬液による浅漬け」であり、請求項1及び請求項5〜7に対応する。なお図8は、同浅漬け製品の斜視概略図で、(a)は製品流通時の、(b)は袋状シート材3aを開封している際の、いずれも透視図である。
【0084】
第1実施例の漬床が、練り状の糠床であったのに対して、第2実施例は液体による液漬けである点が大きく異なる。流通過程における水茄子1は、内包装体3の中で塩分を含まないかあるいは極低塩濃度の鮮度保持用の溶液8aとともに封じられ、利用者が漬液2bと水茄子の隔離手段を解除した後に外容器5aの中で本格的な液漬けを行うことで、袋入りの液漬け製品でありながら素材の食感をも併せて提供しようとするものである。
【0085】
第2実施例の漬液2bと水茄子1の隔離手段としての袋状シート材3aは、カットテープ14などの開封手段の付いた袋を用いる。この内包装体3が漬液2bの入った外容器5aの中に装填され、ただし、内包装体の開封用カットテープ14のタブ15(摘み片)より延長された線状体16aの端部16bが外容器5aの外側に裸出された構造を持つ。利用者が線状体の端部16bを持ってこれを外部に引き抜くことで、漬液2bと水茄子1の隔離状態が解除され本格的な漬け込みが開始される。
【0086】
第2実施例で使用される水茄子1も、前例と同様にミョウバンによるナス紺の定着、及びこうした作業の前後で数度の洗浄が行われる(オゾン水もしくは電解次亜水の使用が好ましい)。ただし前例同様に、一般の水茄子の漬物の場合に行われる下処理段階での塩揉みや塩漬け(荒漬け)は、当例においても原則行わない。
【0087】
内包装体3は、袋に装着されたカットテープ14などにより開封される。この内包装体を構成する袋状シート材3aは外容器5aの中で開封するだけでなく、外容器の外側へ排出される方が望ましい。本実施例向けの袋状シート材3aとして、カットして開封する範囲を広げた特注品を準備すれば、カットテープに引き続いて袋状シート材も外容器5aの外側へより容易に排出できる構造がとりうる。例えば、袋状シート材3aの両面を長手方向に表裏一体となって引き続いて開封できるものなどが考えられる(図は省略)。しかし袋の片面を長手方向に端から端まで開封できるようになったカットテープ付き透明袋(図8で表示のもの)は、既製のものが販売されており、これを利用した方がコスト面からも好適である。第2実施例では透明あるいは透明に近い漬け液2bを用いているので、袋状シート材が上記の片面開封のものであっても、ほとんど手を汚すことなくこれを外容器の外側へ取り出すことは可能である。利用者が引き抜くための線状体16aはポリエチレンやポリプロピレン製テープを用い、これと袋に付属のカットテープ14のタブ15(摘み片)は、市販のハンディタイプのホットシーラーで容易に溶着できる。なおカットテープ14はティアテープであってもよく、またカットテープの幅に制限はなく、幅広のカットフィルム状のものであってもよい。なお、袋状シート材の上開口部3bは水茄子と鮮度保持用の溶液を入れた後に溶着される。
【0088】
上記方法により延長された線状体16a、すなわちカットテープの延長端部16bは外容器5aの外側に裸出される。外容器は開口部5bがチャック17付きで、底がマチ付きでスタンドタイプの透明袋が用いられる。外容器に漬液が充填され、この中に水茄子1などが封入された内包装体3が装填され、外容器の開口部5bはチャックで封じられた後にさらにその開口端部が熱シール18される。その際にカットテープの延長端部16bも外容器の開口部に挟まれた状態でシールされる。あるいはカットテープの延長端部16bの数cmが、封じられたチャック17と熱シール部18の僅かな間に収められればなお好適である。いずれの場合であっても、こうした状態で外容器内の漬液2bはまったくこぼれ出ない。
【0089】
第2実施例では、内包装体3の中にトレハロース、オリゴ糖類、デキストリン、キトサンから選択される1種以上の適量か、これに乳酸菌を含む水溶液が茄子を取り囲み接するよう封入される。また第1実施例と同様に内包装体の中には原則として塩分は一切含めないが、第2実施例ではこの溶液を出来上がり濃度で2%未満に塩分調整したものであってもよい。なおこの塩分の全て、もしくは半分程度を、食塩の代替機能を有するグルコン酸カリウム、あるいはグルコン酸ナトリウムで置き換えても食味上から好適である。
【0090】
第2実施例では、外容器5aの中には、塩分濃度が2〜14%の本格的な漬液2bが調合されて封入される。できればわずかに乳酸発酵された漬液であることが、浅漬けの風味上からも望ましく、この場合には乳酸菌を生息させるために前記の塩分濃度は2〜8%に調整される(ここでの乳酸菌とは、上記内包装体の中に糖類とともに封入する乳酸菌とは別のものである)。
【0091】
こうして水茄子1と漬液2bが袋状シート材3aを介して非混合の状態で封入された製品19が流通する。これを受けた利用者は、製造日後少なくとも3週間を経過する日までの間であれば、この間何時でも袋状シート材3aの開封手段であるカットテープ14の延長端部16bを持って、これを外容器5aの外側に引き抜くことで水茄子と漬液の隔離状態を解除(符号20)して両者を混合させ、少なくとも30分間、より好ましくは1〜3時間冷蔵庫内で外容器ごと漬け込むだけで、素材の食感を残した美味しい水茄子の浅漬けを食することができる。なおカットテープを引き抜いた後に、袋状シート材3aを外容器の外側へ排出させない場合は、外容器の開口部5bをチャック17で再封した後に、外容器ごと手で軽く揉むだけでも、水茄子と漬液は十分混合し、漬かり方に支障は及ばない。
【実施例3】
【0092】
本発明の「第3実施例」は、ヘタを取らずカットもしていない丸の果実のままの「包装容器入り水茄子のごく軟らかな糠床による浅漬け」であり、請求項1及び請求項4〜7に対応する。なお図9は、同浅漬け製品の斜視概略図で、(a)は製品の流通時、(b)は袋状シート材3aを開封している際の、いずれも透視図である。
【0093】
第3実施例は、前記2つの実施例の間に位置づけられるものである。第1実施例が糠床による浅漬け、第2実施例が液漬けであったのに対し、この第3実施例では糠床と漬液の中間の、ごく柔らかい糠床の中で本漬け込みが行われる。このためカットテープ14などの開封手段の付いた袋状シート材3aの中には水茄子に代わって糠床2aが封入さる。流通過程における水茄子1は外容器5aの中でごく低塩濃度の鮮度保持用の溶液8aに浸され、利用者が食べる時間を見計らって袋状シート材3aのカットテープ等を引き抜くことで、水茄子の浸された溶液8aと糠床2aが混合して溶解し(8a+2a)、漬け込みが開始される。なお、第1実施例でも使用した一般的な糠床は「耳たぶ」位の硬さが良いとされるが、第3実施例でのごく軟らかい糠床(8a+2a)とは、例えてコーヒー向けの練乳位の硬さである。
【0094】
第3実施例で使用する水茄子1も、前2例と同様にミョウバンによるナス紺の定着作業、及びこうした作業の前後で数度の洗浄が行われる(オゾン水もしくは電解次亜水の使用が好ましい)。そして一般の水茄子の漬物の場合に行われる下処理段階での塩揉みや塩漬け(荒漬け)は、前2例同様に本例でも原則として行わない。
【0095】
なお、外容器内に茄子とともに封入する糖類の溶液を例えば2%未満に塩分調整したものを用いる場合には、前記下処理段階において、該下処理直後の茄子の表皮直下の果肉(果汁)にしみ込んだ塩分濃度が2%未満である範囲においてごく軽めの塩分処理を行ってもよい。これを行う理由は、第3実施例の場合には、糠床と漬液の中間のごく軟らかな糠床による浅漬けであり、糠漬けの第1実施例、液漬けの第2実施例に比べてやや利用者が漬かり具合を計るのが難しいためである。すなわち、前記の糠床と茄子の隔離状態を解除して本漬け込みを開始する以前において、第3実施例ではトレハロースなどと塩分で浅漬けの旨味を引き出しておくためである。
【0096】
第3実施例でも外容器5aは開口部5bがチャック17付きで、底がマチ付きでスタンドタイプの透明袋が用いられる。また糠床2aを充填する袋状シート材3aの種類やカットテープ14等の開封手段の装着方法も第2実施例の場合と同様である。ただし第3実施例に限っては、袋状シート材3aは外容器5bの中で開封されるだけで、むしろ外容器の外側には排出されない構造の方がよい。利用者が外からカットテープを引き抜くことで袋状シート材を開封(符号20)した後、外容器のチャック17を再封し、外容器ごと手で軽く揉み解せば、袋状シート材の中の糠床2aはこれを取り囲む外容器内の低塩濃度の溶液8aに浸透圧の働きも加わって自然と溶解していき(8a+2a)、漬かり方に支障は及ばない。この状態で冷蔵庫内で漬け込むので、残った糠床の付いた袋状シート材3aは外側に排出されない方が周囲を汚さなく又匂わない。
【0097】
第3実施例では、前2例のように内包装体ではなく、外容器5aの中にトレハロース、オリゴ糖類、デキストリン、キトサンから選択される1種以上の適量か、これに乳酸菌を含む水溶液が茄子を取り囲み接するよう封入される。なおこの溶液8aは、出来上がり濃度で例えば2%未満に塩分調整したものを用いる。また第2実施例と同様にこの塩分の全て、もしくは半分程度を、食塩の代替機能を有するグルコン酸カリウム、あるいはグルコン酸ナトリウムで置き換えても食味上から好適である。
【0098】
上記の外容器5aの中に封入される溶液中のオリゴ糖類とは、イソマルトオリゴ糖やラフィノースなどが挙げられる。また同溶液中にはソルビトールなどの糖アルコールの適量を添加してもよい。
【0099】
また第3実施例では内包装体である袋状シート材3aの中に糠床2aが封入されるが、その塩分濃度は糠床2aが溶液8aに概ね溶解した段階(8a+2a)で2〜14%になるよう調整される。なお糠床2aが本来もつ乳酸発酵を生かすことが浅漬けの風味上からも望ましく、この場合には乳酸菌を生息させるために前記の塩分濃度は2〜8%になるよう調整される。
【0100】
こうして水茄子1と糠床2aが袋状シート材3aを介して非混合の状態で封入された製品21が流通する。これを受けた利用者は、製造日後少なくとも3週間を経過する日までの間であれば、この間何時でも袋状シート材の開封手段であるカットテープを外容器5aの外側から引っぱることで水茄子と糠床の隔離状態を解除して両者を混合させ、少なくとも30分間、より好ましくは1〜3時間冷蔵庫内で外容器ごと漬け込むだけで、素材の食感を残した美味しい水茄子の浅漬けを食することができる。
【0101】
なお図10の、包装容器入り水茄子の浅漬け製品(従来品と本発明品はいずれも糠床漬けの場合)の経時における食味変化の概略比較については、当明細書の「発明が解決しようとする課題」や「発明の効果」の項で記述した通りである。なお本発明によれば、内包装体などの中に封入される水茄子の確認された鮮度保持期間は概ね3週間だが、製品としての賞味期限は余裕をみて製造後14日目位に設定するのも選択肢の1つである。
【0102】
図11は本発明の茄子の浅漬けの製造方法を示す工程図で、特に第1実施例の「包装容器入り水茄子の糠床による浅漬け」に係るものである。しかし水茄子への下処理や、数度の洗浄、水茄子の鮮度保持等のために少・多糖類や乳酸菌などを添加すること、また消費者が容易に本漬け込みを開始できるようにするため複層の包装をとる点など、基本的な工程は各実施例間で大差はなく、代表してこの模式図に表される通りである。
【0103】
すなわち本発明品を製造する場合、選果(S=ステップ10)された水茄子はまず第1次洗浄(S11)された後に、ミョウバン等によるナス紺の定着作業(S12)が行われる。次に余分なミョウバンを落とす目的からも第2次洗浄(S13)をし、水気を取った後に内包装の工程(S14)に入る。同工程は各実施例のところで記載した通りだが、第1ならびに第2実施例では水茄子を内包装するのに対して、第3実施例では内包装体の中に糠床が充填される点が異なる。ただしいずれの実施例の場合でも、内包装体が外容器の中に装填される前には、内包装体に対する流水による第3次の洗浄(S15)を行わなければならない。
【0104】
洗浄された内包装体は次に外容器に装填(S=ステップ17)されるが、この作業と外容器への糠床や漬液の充填(S16)は、状況に応じて相前後する場合がありうる。そしてこの段階で製品としての計量を行い、糠床等の過不足を調整する(S18)。次に内包装体の中に、糖類や乳酸菌などの水溶液を充填する。寒天や不織布を封入する場合には茄子のヘタの部分を覆うように行う(S19)。そしてこの後に、第1実施例の場合には内包装体と外容器を同時に封止し(S20)、第2及び第3実施例の場合には外容器を封止(熱シール)する。なお実際の販売時には、温度変化に対する緩衝材として外容器の胴回りに薄手の段ボール紙か発砲スチロール製のシート(同製の袋であってもよい)を巻いた構成とする。なお第1実施例においては、これをさらにチャック付の透明袋に入れ、その開口部最端は安全面からも熱シール(S21)しておく。そして最終点検(S22)された後に製品が得られる。
【0105】
本発明の茄子の浅漬け及びその製造方法は、上記の各実施例に示す他、以下に説明するように種々の態様に構成することができる。
【0106】
本発明において、漬床や漬液と茄子との隔離状態を解除した後の漬け込み時間の短縮は、その際に糠床等と混じり合う糖類や乳酸菌の水溶液の働きにより、十分に目的を達せられる。しかしその所要時間をより短くするために、製造工程の冒頭(第1次洗浄の前)において、茄子の表皮に目視できない程に微細な無数の孔を開けておく方法がある。その手段として、馬毛などの細く柔かい天然毛を用いたブラシを用い、実施例で用いた水茄子の表皮をまんべんなくごく軽く叩く。なお使用するブラシは適時に新たに煮沸消毒されたものに取り替えられ、処理される水茄子毎にも弱アルコールの噴霧にて消毒することが好ましい。合繊毛のブラシでも可能だがは毛先が太く角ばっているものは本作業には向かない。またより簡便な方法として、極細目の製菓用のグラニュー糖を用いて、清潔な食品用手袋をはめた手で軽く手揉みすることも有効である。
【0107】
上記のように茄子の表皮にごく微細な孔をつけても、本発明では水茄子と接する糖類や乳酸菌の溶液の働きにより、前記内包装体の中で水茄子の鮮度は必要期間保持される。なおこうした方法は、本発明以外の一般的な水茄子の浅漬け製品には向かない。理由は、表皮にごく微細な孔が開くことで早く漬かり過ぎてしまい、賞味期限が極端に短くなってしまうからである。対して利用者が食する時間を見計らって漬け込みを開始する本発明をもってはじめて、表皮のごく微細な孔の存在が好都合となる。
【0108】
外容器5aは、各実施例においてポリエチレン製の規格袋や開閉自由なチャク付きの透明袋を使用したが、密封後の内部が外部の空気と遮断され、充填された漬床や漬液がこぼれ出ず、中から内包装体3を構成する袋状シート材3a等を引き出す際に、袋状シート材が引っ掛かったりして邪魔にならない構造を採りえるものであれば、外容器5aの材質や形は問わない。
【0109】
本発明の各実施例において、袋状シート材3aはすべて樹脂製の袋を用いたが、これを透湿性の素材である例えば不織布製の袋状シート材に替えて構成することもできる。その場合には流通過程でも一部漬け込みが進行し、後にその不織布製の袋状シート材が排出される時をもって本格的な漬け込みが開始されることになる。
【0110】
本発明における茄子は、各実施例において何れもヘタを取らずカットもしていない丸のままの果実を用いたが、これをヘタを取りカットした果実を用いる場合も一部例外としてありうる。ただし少しでもカットした果実の場合は、別途に酸化防止のためにビタミンCなどの使用が考慮される。
【0111】
上記のヘタを取りカットした製品の一例として、従来品の様に1つの果実を数個に完全に分断するのではなく、消費者が最終的には手で裂いて食べるのを手助けする程度に僅かなカットに止めた製品が考えられる。すなわち、ヘタをカットした跡の丸い断面に、ナイフで4〜8等分に1〜2cmの長さの切れ込みを入れるにとどめたものである。これは水茄子の食べ方として、ヘタを取った跡から縦方向に手で裂いたものが素朴で好まれるといった風習(実際に舌触りが良くなる)をも考慮したためである。
【0112】
なお上記のヘタをカットするなどした直後にアガロース例えば寒天や、ペクチン、マンナンなどの植物性繊維をもってカット面をコーティングし、この部分からの茄子の水分の蒸散を防ぐのも鮮度保持に有効である。
【0113】
第1実施例や第2実施例の場合における茄子を内包した内包装体3の中には、少・多糖類などとともに、主に香り付けを目的としてハーブや柿の葉などの乾燥させて刻んだものを封入しても好適である。
【0114】
漬床は米糠を用いた糠床2aに替えて、酒粕、麹、みりん粕、味噌、ワサビ、及び練り辛子などを主体とした漬床、あるいはこれらの混合物による漬床であってもよい。この場合における前記隔離状態の解除後の所要漬込み時間は、本発明とは別に考慮される。
【0115】
漬液2bは、いわゆる塩分を主成分の1つとした漬液に替えて、酢類、ワイン、及び麹菌や乳酸菌による発酵液、などを主体とした漬液であってもよい。この場合における前記隔離状態の解除後の所要漬込み時間も、本発明とは別に考慮される。
【0116】
本発明において、各実施例では1つの外容器に対して1つの茄子を使用したが、1つの外容器に複数の茄子を用いる場合もありうる。例えば、親指大の通称小茄子の浅漬けの場合には、数個を一まとめにして処理される。これを第1実施例に例えれば、袋状シート材3aの中に数個の小茄子を該袋状シート材を折り返しつつ内包し、糖類や乳酸菌の溶液が注入され、この内包装体3を外容器5aの中に糠床とともに封入する構造となる。小茄子の場合であっても、袋状シート材3aは折り返して2層に処理した方が格段にこれを小茄子群から引き離し易くなる。
【0117】
また小茄子ではなく普通の大きさの茄子の場合であっても、複数の茄子を用いて応用は可能である。例えば樹脂性の食品密閉容器に糠を充填して糠床とし、その中に第1実施例で用いた袋状シート材3aの折り返して2層とした茄子の内包装体3を複数個装填するなどの方法が考えられる。この場合には不織布製などの落し蓋を糠床に被せ、袋状シート材の引っ張る部分をこの落し蓋の上部に乗せておけば、糠床に手を触れることなく漬け込みを開始できる。勿論当例のような場合も、内包装体の中には糖類や植物性乳酸菌などが封入される。
【0118】
本発明の第3実施例のような場合には、糠床の詰められた内包装体を、外容器の外側から串のようなものを用いて突いて破り、糠床と外容器内の茄子及びその他溶液を混ぜ合わすことは可能である。開けた穴が小さくても、糠床は塩分濃度の差による浸透圧の働きにより外容器内の溶液と次第に混ざる。本発明における漬床や漬液に直接手を触れることなく茄子と漬床等の隔離状態を解除する手段とは、例えばこの串のような道具を事前に準備して製品に付属されるを含む概念である。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の茄子の浅漬け及びその製造方法は、水茄子をはじめとして浅漬けに適した全国の茄子の漬物に利用が可能である。本発明によれば、本発明によるいずれの製品も製造後少なくとも3週間を経過する日までの間であれば、この間何時でも簡単な操作を手を汚さず行うことにより美味しい浅漬けを手軽に楽しむことができる。賞味期限は、前記の通り余裕をみて3週間より1週短い2週間とした場合でも、例えば従来の袋詰め水茄子の浅漬け製品の賞味期限が大抵1週間(実際には1週間の後半は漬かり過ぎで辛くなり、そのままでは食べられない)であることに比べると、大きな効果である。特に複数の袋詰め茄子の浅漬け製品を、箱に詰めて贈答品としてやり取りする場合には、従来のように利用者のもとに到着後2〜3日のうちに食べきらなくてはならないといった問題点が当発明品では解消される。水茄子をはじめに、浅漬けに適した茄子は各地の特産品であることが多い。冷蔵の宅配便の普及とも相まって、その浅漬け製品を箱詰めの贈答品としてやり取りする機会は今後も増加が予測される。本発明による製品は、これを贈られた側だけでなく、贈り手や、そして製造者や販売者の各々にも大変喜ばれると考えられる。
【0120】
なお本発明の浅漬け及びその製造方法は、ナス科の作物のほか、キュウリや様々な種類のウリなどウリ科の作物のうち特に皮の薄い品種において有効に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の第1実施例である「包装容器入り水茄子の糠床による浅漬け」の側面図であり、水茄子を内包した内包装体が糠床となる外容器の中に装填された様子の要部透視図でもある。
【図2】(a)は内包装体をなす袋状シート材の側面図で、(b)は該袋状シート材を水茄子のヘタの方から被せ、水茄子を覆うとともに折り返して2層とすることを説明するための概略透視図である。
【図3】上記図2(b)の袋状シート材の折り返した部分を左右と下端から三つ折にして処理する方法を説明するための経過図(a)(b)及び(c)である。
【図4】上記の内包装体を外容器の中に糠床を適宜充填しながら装填し、さらに内包装体の上開口部から水茄子を覆うように寒天等を投入する様子を説明するための透視図である。
【図5】本発明の第1実施例の製品流通時における外観側面図である。(なお実際には食品表示の記載されたシートが巻かれ、さらにチャック付き透明袋に入れて開口部端を熱シールされたものが流通する)
【図6】上記製品が流通して期間経過後に、利用者によって前記袋状シート材が外容器の外側へ抜き出される様子を説明するための透視図である。
【図7】上記図6の後に、水茄子と糠床が混合して漬け込みが開始された様子を説明するための透視図である。
【図8】本発明の第2実施例である「包装容器入り水茄子の漬液による浅漬け」の斜視図で、(a)は製品の流通時、(b)は内包装体のカットテープを外側から引くことでこれを開封し、内部の水茄子を外容器内の漬液と混合させる様子を説明するための透視図である。
【図9】本発明の第3実施例である「包装容器入り水茄子のごく柔らかな糠床による浅漬け」の斜視図で、(a)は製品の流通時、(b)は内包装体のカットテープを外側から引くことでこれを開封し、該内包装体の中に充填された糠床を外容器内の水茄子等と混合させる様子を説明するための透視図である。
【図10】包装容器入り水茄子の浅漬け製品(糠床漬け)の、経時の食味変化を、従来品と本発明品とで概略比較した表である。
【図11】本発明の包装容器入り茄子の浅漬けの製造方法を示す工程図で、主に第1実施例の「包装容器入り水茄子の糠床による浅漬け」に係るものである。
【符号の説明】
【0122】
1 水茄子
2a 糠床
2b 漬液
3 内包装体
3a 袋状シート材
3b 袋状シート材の上端部
3c 袋状シート材の底部
3d 袋状シート材の水茄子側包装面
3e 袋状シート材の糠床側包装面
4 袋状シート材(3a)の折り返し部
5a 外容器
6 袋状シート材(3a)に開けた穴
7 寒天
11 補助リング
14 カットテープ
17 チャック
18 熱シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漬床や漬液と茄子を封入した包装容器入り茄子の漬物製品において、漬床や漬液と茄子とが混合することなく隔離する手段として、茄子を内包した内包装体と、該内包装体を装填する漬床や漬液を充填した外容器を備え、次に漬床や漬液に直接手を触れることなく該隔離状態を解除して漬床や漬液と茄子を外容器内で混合させる手段として、前記内包装体の一側縁部が漬床や漬液あるいは外容器の外側に裸出するか、もしくは内包装体の開封部分に連なる線状体の端部が漬床や漬液あるいは外容器の外側に裸出し、さらに内包装体の中には単糖類、少糖類、多糖類、多糖類の加水分解物及び糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の糖類を適量含有する水溶液を茄子とともに封入したことを特徴とする包装容器入り茄子の浅漬け。
【請求項2】
前記内包装体は袋状シート材をもってなし、該袋状シート材を茄子の一端から被せることにより茄子側包装面と、これを茄子のもう一方の端を覆うと共に折り返して漬床や漬液側包装面との2層として、漬床や漬液側包装面は茄子と直接接触せず、茄子側包装面は茄子との接触が離れる方向にめくられながら漬床や漬液側包装面に連続して引き出されるため、内包装体のうち袋状シート材のみを茄子との接触による抵抗を受けずに外容器より排出可能としたことを特徴とする請求項1記載の包装容器入り茄子の浅漬け。
【請求項3】
上記で用いる袋状シート材は、底から10cm位までの範囲で前記茄子側包装面となる部分に、前記の糖類を含有する水溶液が透過する無数の穴を開けたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の包装容器入り茄子の浅漬け。
【請求項4】
前記内包装体の中には茄子に替えて漬床や漬液を充填して内包し、該内包装体とともに茄子を装填する外容器を備え、さらに外容器の中には単糖類、少糖類、多糖類、多糖類の加水分解物及び糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の糖類を適量含有する水溶液を茄子とともに封入したことを特徴とする請求項1記載の包装容器入り茄子の浅漬け。
【請求項5】
漬床や漬液と茄子とが混合されない段階おいて、前記の茄子を内包した内包装体の中か、あるいは内包装体に漬床や漬液が充填されている場合はこれを装填した外容器内に、いずれの場合においても漬床や漬液と隔離された茄子を内包しその茄子と接する部分に封入する前記水溶液が、トレハロース、オリゴ糖類、デキストリン、キトサン、アガロース例えば寒天から選択される1種以上の適量を含んだ水溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の包装容器入り茄子の浅漬け。
【請求項6】
前記の水溶液に糖類とともに乳酸菌の適量を加えたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の包装容器入り茄子の浅漬け。
【請求項7】
茄子はヘタを取らずカットもしていない丸のままの果実であって、塩分による手揉みや下漬けなどの前処理は行わず、漬床や漬液の塩分濃度は2〜14%で、前記隔離状態を解除して漬床や漬液と茄子を混合させた時を基点に、浅漬けとして最適な味になるまでの漬け込み所要時間が5〜12℃の冷蔵庫内放置下で30分以上6時間以内であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の包装容器入り茄子の浅漬け。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−225753(P2009−225753A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77745(P2008−77745)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(506116256)
【Fターム(参考)】