説明

包装容器用の切断刃及び包装容器

【課題】包装物への歯の刺し込みを、切断刃のV字の頂点から行う場合と、切断刃のV字の端部から行う場合とにおいて、それぞれ切断性が良好であって耐久性に十分優れた切断刃及び該切断刃を備える包装容器を提供することにある。
【解決手段】V字状の切断刃20の中央エリア30は、複数の大歯31と、大歯31の歯高H1よりも低い歯高H2からなる複数の中歯32とを具備する。また、切断刃20の端部エリア50は、複数の第1端歯51と、第1端歯51の歯高よりも低い歯高からなる複数の第2端歯52とを有し、各第1端歯51の歯先が、それぞれ大歯31の歯先を通る第1直線L1上に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器用の切断刃及び包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ラップフィルム用の包装容器は、ロール状に巻かれたラップフィルムを収容する厚紙製の容器本体と、容器本体に一体形成された蓋体と、蓋体に取り付けられてラップフィルムを切断する鋸歯状の切断刃とを備えている。
【0003】
包装容器用の切断刃には、ラップフィルムの切断性の向上を図るため、ロールの軸方向に延びる直線形状に代えて、切断刃の中央エリアを端部エリアよりも容器の底辺へ近づけたV字形状が提案されている。V字状をなす切断刃は、V字の頂点からラップフィルムの切断を開始するため、ラップフィルムの切断を確実に、かつ、容易に実施できる。また、こうした包装容器用の切断刃には、切断性や耐久性を向上させる観点から、従来から、金属製が利用されてきたが、近年では、環境への影響や使用者に対する安全性への配慮から、紙製や樹脂製等、非金属製が検討されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
一方、非金属製の切断刃は、金属製の切断刃に比べて良好な切断性を得難く、特に、伸縮性に富むポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等からなるラップフィルムの切断時に、より大きな力を必要とすることから、切断性の向上を強く望まれている。そこで、こうした包装容器の切断刃においては、従来から、上記の要求に応えるため、各種の形状が提案されている。
【0005】
特許文献2及び特許文献3は、それぞれ直線状の切断刃を用い、該切断刃の両端部エリアに、それぞれ歯先が外側に向いた歯を形成し、これによりラップフィルムへの歯の刺し込みを容易にする。特許文献4及び特許文献5は、それぞれV字状の切断刃を用い、V字の中央エリアに相対的に大きな歯を形成し、これにより切断初期におけるラップフィルムへの歯の刺し込みを容易にする。また、特許文献6は、逆V字状の切断刃を用い、切断刃の両端部エリアに、それぞれ歯先が内側に向いた歯を形成し、これによりラップフィルムへの歯の刺し込みを容易にする。
【0006】
ラップフィルムの切断方法は、上記切断刃の形状に応じて異なる。例えば、V字状の切断刃を用いる場合には、ロール状のラップフィルムの先端(以下単に、「ロールの先端」と言う。)を包装容器から引き出し、所望量だけ引き出したラップフィルムの中央部を、切断刃の中央エリアに押し当てる。そして、中央エリアの各歯をラップフィルムの中央部へ刺し込み、包装容器を捻ることによって、ラップフィルムを切断する。
【0007】
一方、直線状又は逆V字状の切断刃を用いる場合には、ロールの先端を包装容器から引き出し、所望量だけ引き出したラップフィルムの一端部を、切断刃の一端部に押し当てる。そして、一方の端部エリアの各歯をラップフィルムの一端部へ刺し込み、その後、ラップフィルムを引き上げることによって、切断刃の一方の端部エリアから他方の端部エリアへ向かってラップフィルムを切り開く。
【特許文献1】特許第3573605号公報
【特許文献2】実開平6−20224号公報
【特許文献3】実開平11−151号公報
【特許文献4】登録実用新案第2547868号公報
【特許文献5】特開平5−178344号公報
【特許文献6】特開平8−40433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、各種形状の切断刃を検討する中で、直線状の切断刃では、V字状の切断刃に比べて、ラップフィルムを食い込ませた後のラップフィルムの切り開きを円滑に進め難く、ラップフィルムの切断性を十分に得難いことが分かった。
【0009】
また、V字状の切断刃が包装容器に採用される場合であっても、切断刃の形状がV字状であるか否かに関し、使用者が逐一確認するとは限らず、さらにはV字状に適した切断方法を選択するとは限らない。本発明者らの実験によれば、V字状の切断刃を備えた包装容器を用いて、切断刃の一方の端部エリアからラップフィルムを切断しようとする場合、ラップフィルムの切断性が十分ではないことが分かった。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、包装物への歯の刺し込みを、切断刃のV字の頂点から行う場合と、切断刃のV字の端部から行う場合とにおいて、それぞれ切断性が良好であって耐久性に優れた切断刃及び該切断刃を備える包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の包装容器用の切断刃は、ロール状包装物を収容する包装容器に取り付けられて前記ロール状包装物を切断する非金属製のV字状の切断刃であって、当該切断刃は、
(a)中央エリアと、V字の両端を含む一対の端部エリアと、前記中央エリアと前記一対の端部エリアとに挟まれる一対の中間エリアとに区分され、
(b)前記中央エリアは、複数の第1歯と、前記第1歯の歯高よりも低い歯高からなる複数の第2歯とを有し、
(c)一つの前記第1歯が前記V字の頂点に形成されると共に、他の第1歯がそれぞれ前記頂点の第1歯を中心にして所定の間隔で形成され、かつ、前記各第2歯がそれぞれ前記第1歯の間に形成され、
(d)前記各第1歯の歯先を結ぶ第1直線と、前記各第2歯の歯先を結ぶ第2直線と、前記各第1歯の歯元と前記各第2歯の歯元とを結ぶ歯元直線とが互いに平行であり、かつ、前記第2直線が前記第1直線と前記歯元直線との間に形成され、
(e)前記各中間エリアは、それぞれ複数の中間歯を有し、前記各中間歯の歯先がそれぞれ前記第2直線上又は前記第2直線と前記歯元直線との間に形成され、
(f)前記各端部エリアは、それぞれ複数の第1端歯を有し、前記各第1端歯がそれぞれ前記第1直線上に形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明の包装容器用の切断刃は、中央エリアから包装物を切断する場合、最初に、中央エリアの各歯を包装物へ刺し込み、次いで、中間エリアの各歯と端部エリアの各歯とを包装物へ刺し込む。本包装容器用の切断刃は、切断初期に刺し込む歯が第1歯のみであることから、切断初期に必要とする力を小さくできる。また、本包装容器用の切断刃は、先行する第1歯の刺し込み及び切り開きが包装物を脆弱化させることから、後続する歯の刺し込み及び切り開きを、それぞれ円滑に実行でき、切断時のフィーリングを向上できる。なお、中央エリアによる刺し込み段階は、第1歯による刺し込み段階と、第2歯による刺し込み段階とに分割される。第1歯だけで刺し込み段階を実行する場合には、第1歯間の谷部(歯元)が切り開きの大きな抵抗になるため、包装物の切断に大きな力を要してしまう。本包装容器用の切断刃は、第2歯による刺し込み段階を経る分だけ、包装物の切り開きを一層円滑にできる。
【0013】
また、本発明の包装容器用の切断刃は、一方の端部エリアから包装物を切断する場合、最初に、該端部エリアの各歯を包装物へ刺し込み、次いで、一方の中間エリアの各歯と、
中央エリアの各歯と、他方の中間エリアの各歯と、他方の端部エリアの各歯とを順に包装物へ刺し込む。本包装容器用の切断刃は、切断初期に刺し込む歯が第1端歯のみであることから、切断初期に必要する力を小さくできる。また、本包装容器用の切断刃は、先行する第1端歯の刺し込み及び切り開きが包装物を脆弱化させることから、後続する歯の刺し込み及び切り開きを、それぞれ円滑に実行でき、切断時のフィーリングを向上できる。
【0014】
しかも、本包装容器用の切断刃は、切断時のフィーリングを向上させるために、大きいサイズの第1歯と第1端歯とを用いることから、第1歯と第1端歯の数量の分だけ、切断刃の耐久性を向上できる。
【0015】
したがって、本包装容器用の切断刃によれば、包装物への歯の刺し込みを、切断刃のV字の頂点から行う場合と、切断刃のV字の端部から行う場合とにおいて、それぞれ切断性が良好であって耐久性に十分優れた切断刃を提供できる。
【0016】
この包装容器用の切断刃は、前記各第1端歯の歯先がそれぞれ前記第1直線上に形成される構成であっても良い。この包装容器用の切断刃によれば、切断刃の全体にわたり、歯の耐久性の均一化を図ることができる。
【0017】
この包装容器用の切断刃は、前記各第1端歯の斜辺の少なくとも1つが内側へ凹んだ円弧状に形成される構成が好ましい。この包装容器用の切断刃によれば、歯先角度を鋭角にして、かつ、歯元幅を広げることが可能となる。これにより、同じ長さのエリア内で歯の本数を削減できることから、包装物への歯の刺し込みに必要とされる力が抑えられる。また、歯元のサイズが大きくなることから、歯の耐久性を向上できる。
【0018】
この包装容器用の切断刃は、前記各第1端歯の歯先がそれぞれ前記包装容器の長手方向の外側へ向いている構成が好ましい。この包装容器用の切断刃によれば、一方の端部エリアから包装物を切断する場合、すなわち、包装物を引き上げて切断する場合、第1端歯の歯先へ向かって、包装物の主面が変位する。したがって、この包装容器用の切断刃は、端部エリアにおいて、第1端歯の包装物への刺し込みを、より円滑に実行できる。
【0019】
この包装容器用の切断刃は、前記各端部エリアがそれぞれ前記第1端歯の間に第2端歯をさらに有し、前記第2端歯の歯高が前記第1端歯の歯高よりも低いこと構成が好ましい。この包装容器用の切断刃によれば、一方の端部エリアから包装物を切断する場合、すなわち、包装物を引き上げて切断する場合、端部エリアによる刺し込み段階が、第1端歯による刺し込み段階と、第2端歯による刺し込み段階とに分割される。第1端歯だけで刺し込み段階を実行する場合には、第1端歯間の谷部(歯元)が切り開きの大きな抵抗になるため、包装物の切断に大きな力を要してしまう。この包装容器用の切断刃は、第2端歯による刺し込み段階を経る分だけ、包装物の切り開きを一層円滑にできる。
【0020】
この包装容器用の切断刃は、前記中央エリアが、前記中間エリアの近傍に第3歯を有し、前記第3歯の歯元が前記歯元直線上に形成され、前記第3歯の歯先が前記第2直線と前記歯元直線との間に形成される構成が好ましい。この包装容器用の切断刃によれば、中央エリアの刺し込みと、中間エリアの刺し込みとが、第3歯の刺し込みを介して円滑に移行する。したがって、この包装容器用の切断刃は、包装物の切り開きを一層円滑にできる。
【0021】
本発明の包装容器は、ロール状包装物を収容して前記ロール状包装物を切断する切断刃を具備する包装容器であって、前記切断刃が、上記の切断刃であることを特徴とする。本発明の包装容器は、包装物への歯の刺し込みを、切断刃のV字の頂点から行う場合と、切断刃のV字の端部から行う場合とにおいて、それぞれ良好な切断性と高い耐久性とを実現できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、包装物への歯の刺し込みを、切断刃のV字の頂点から行う場合と、切断刃のV字の端部から行う場合とにおいて、それぞれ切断性が良好であって耐久性に十分優れた切断刃及び該切断刃を備える包装容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第一実施形態)
以下、本発明を具体化した第一実施形態の包装容器を図面に従って説明する。図1は包装容器10を示す斜視図である。包装容器10は、円筒状の紙管11にロール状に巻き付けられたラップフィルム12を収納するための容器本体13と、容器本体13に一体形成された蓋体14とによって構成されている。包装容器10は、1枚の厚紙、好ましくはコートボール紙によって形成されている。
【0024】
容器本体13は、上方を開放した箱体状に形成され、容器本体13の上部からラップフィルム12を引き出し可能にする。蓋体14は、容器本体13の後面壁の頂縁13aから容器本体13の開口の全体を覆うように形成され、容器本体13の上部を開閉可能にする。蓋体14の前面壁の先端縁14aは、V字状に形成され、該前面壁の裏面には、先端縁14aに沿ったV字状の切断刃20が取り付けられている。包装容器10は、蓋体14が閉じた状態で略直方体形状を呈し、蓋体14が開いた状態でラップフィルム12を取り出し可能にする。なお、本実施形態におけるラップフィルム12は、ポリ塩化ビニリデンからなる。
【0025】
ラップフィルム12を中央から切断する場合には、一方の手でラップフィルム12の先端部を把持し、他方の手で包装容器10を握ると共に、他方の手の親指を蓋体14の前面壁の中央部に押し当て、包装容器10を前側、すなわち矢印Aの方向に捻る。これによって、切断刃20の中央エリアの各歯がラップフィルム12へ刺し込まれ、包装容器10を更に捻ることによって、ラップフィルム12が切り開かれて切断される。
【0026】
また、ラップフィルム12を端(例えば図1の右端)から切断する場合には、一方の手でラップフィルム12の右側先端部を把持し、他方の手で包装容器10を握ると共に、該他方の手で蓋体14を容器本体13へ固定し、ラップフィルム12を右端から上方へ引き上げる。これによって、切断刃20の端部エリアの各歯がラップフィルム12へ刺し込まれ、ラップフィルム12を更に引き上げることによって、ラップフィルム12が切り開かれて切断される。
【0027】
図2は、蓋体14の前面壁の先端部を示す断面図である。図2において、蓋体14の前面壁の裏面14bには、シーラント材15と、接着層16と、切断刃20とが裏面14bから順に積層されている。切断刃20は、ポリウレタン系の接着剤からなる接着層16によって、エチレンメタクリル酸共重合体を主成分とするシーラント材15に接着され、シーラント材15と蓋体14の裏面14bとが超音波接着法で接着されることによって、蓋体14の裏面14bに取り付けられる。シーラント材15を介して蓋体14に取り付けられた切断刃20は、十分な接着力の下で蓋体14に固定され、蓋体14から容易に剥離しない。
【0028】
次に、本実施形態に関わる切断刃20について以下に詳細に説明する。図3は切断刃20の全体を示す平面図である。図3において、切断刃20は、V字の頂点(以下単に、頂点と言う。)を通る中心線CLを中心にして左右方向(包装容器10の長手方向)に対称に形成され、歯の形状に基づいて、頂点を含む中央エリア30と、中央エリア30の左右両側に設けられた一対の中間エリア40と、V字の両端を含む一対の端部エリア50とに
区分されている。
【0029】
V字の中心角θは、例えば172.5°に形成されている。また、切断刃20の左右方向の幅が304mmの場合、中央エリア30の幅Wcは例えば36.6mmであり、各中間エリア40の幅Wmはそれぞれ116.5mmであり、各端部エリア50の幅Weはそれぞれ17.2mmである。切断刃20の左右方向の幅が222mmの場合、中央エリア30の幅Wcは例えば36.6mmであり、各中間エリア40の幅Wmはそれぞれ75.5mmであり、各端部エリア50の幅Weはそれぞれ17.2mmである。
【0030】
切断刃20は、樹脂製であり、本実施形態では、各種の樹脂材料を用いることができる。その例としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET系樹脂)、塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリグリコール酸系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。その中でも、熱可塑性であり加工が容易で、実用上十分な硬度ならびに強度を有するPET系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリグリコール酸系樹脂が好ましい。特に環境に配慮すべく、生分解性樹脂が採用されている。生分解性樹脂としては、代表的なものとしてポリ乳酸、ポリグリコール酸等が挙げられる。その中でも、本発明においては、特許文献1に開示されたポリ乳酸系の樹脂組成物を2軸延伸したものが好適に用いられる。更に具体的には、切断刃20は、ポリ乳酸系の樹脂組成物を2軸延伸して得たシートを用い、該シートにプレス加工やレーザ切削等を施して各種の歯を成形することにより得られる。なお、樹脂以外の成分としては、特許文献1に開示される無機充填剤、さらには熱安定剤、光安定剤、防水材、離型剤、顔料、染料等を含む構成であっても良い。
【0031】
図4は切断刃20の中央エリア30及び中間エリア40を拡大した図であり、図5は切断刃20の中央エリア30及び端部エリア50を拡大した図である。なお、切断刃20が中心線CLを中心にして左右対称であることから、以下においては、説明の便宜上、図3における左側について説明する。
【0032】
図4において、中央エリア30の左側には、3本の大歯31と、4本の中歯32と、1本の小歯33とが形成されている。各大歯31の歯元と、各中歯32の歯元と、各小歯33の歯元とは、それぞれ一つの直線(以下単に、基準線LBと言う。)上に形成されている。本実施形態では、基準線LBと各歯の頂点との間の最短距離を、歯高と言う。なお、本実施形態では、これら大歯31と中歯32とが、それぞれ第1歯と第2歯とを構成する。
【0033】
大歯31の歯高H1は、中歯32の歯高H2よりも大きく形成されている。1本の大歯31は、V字の頂点に形成され、他の2本の大歯31は、それぞれ頂点から端部へ向かって一定の間隔を置いて形成されている。各大歯31の歯先は、一つの直線(以下単に、第1直線L1と言う。)上に形成されている。第1直線L1は、基準線LBと実質的に平行である。
【0034】
中歯32の歯高H2は、小歯33の歯高H3よりも大きく形成されている。4本の中歯32は、それぞれ頂点近傍から端部へ向かって一定の間隔を置いて形成されている。頂点近傍の2本の中歯32は、それぞれ大歯31の間に形成されている。各中歯32の歯先は、それぞれ一つの直線(以下単に、第2直線L2と言う。)上に形成されている。第2直線L2は、基準線LBと実質的に平行であり、かつ、基準線LBと第1直線L1との間に位置する。
【0035】
小歯33の歯高H3は、中歯32の歯高H2よりも小さく形成されている。小歯33は
、中央エリア30の左端に形成された2本の中歯32の間に形成されている。小歯33は、ラップフィルム12への歯の刺し込みやラップフィルム12の切り開きを、中央エリア30から中間エリア40へ円滑に移行させるための歯である。
【0036】
切断刃20の中間エリア40には、複数の第1中間歯41が形成され、隣接する第1中間歯41の間には、それぞれ第2中間歯42が形成されている。各第1中間歯41の歯元と、各第2中間歯42の歯元とは、それぞれ基準線LB上に形成されている。
【0037】
各第1中間歯41の歯先は、それぞれ一つの直線(以下単に、第1中間線Lm1と言う。)上に形成されている。第1中間線Lm1は、第2直線L2の延長線上に形成され、各第1中間歯41の歯高は、それぞれ中歯32の歯高H2と同じ大きさで形成されている。
【0038】
なお、本実施形態における各第1中間歯41の歯高は、中歯32の歯高H2と同じ大きさであるが、これに限らず、各第1中間歯41の歯高は、歯高H2より小さくても良い。また、本実施形態の第1中間線Lm1は、第2直線L2の延長線上に形成されているが、これに限らず、第1中間線Lm1は、基準線LBと実質的に平行であって、基準線LBと第2直線L2との間に形成されても良い。
【0039】
各第2中間歯42の歯先は、それぞれ一つの直線(以下単に、第2中間線Lm2と言う。)上に形成されている。第2中間線Lm2は、小歯33の歯先を通る位置に形成され、各第2中間歯42の歯高は、それぞれ小歯33の歯高H3と同じ大きさで形成されている。
【0040】
なお、本実施形態における各第2中間歯42の歯高は、小歯33の歯高H3と同じ大きさであるが、これに限らず、各第2中間歯42の歯高は、歯高H3よりも小さい歯高であっても良い。また、本実施形態の第2中間線Lm2は、小歯33の歯先を通る位置に形成されているが、これに限らず、第2中間線Lm2は、基準線LBと実質的に平行であって、小歯33の本体を通る位置に形成されても良い。
【0041】
図5において、切断刃20の端部エリア50には、複数の第1端歯51と、複数の第2端歯52とが形成されている。端部エリア50には、例えば5つの第1端歯51が形成され、隣接する第1端歯51の間には、それぞれ第2端歯52が形成されている。各第1端歯51の歯元と、各第2端歯52の歯元とは、それぞれ基準線LB上に形成されている。なお、図5においては、中央エリア30と端部エリア50との間の関係を説明する便宜上、第1端歯51及び第2端歯52の数量を削減して示す。
【0042】
各第1端歯51の歯先は、それぞれ一つの直線(以下単に、第1端線Le1と言う。)上に形成されている。第1端線Le1は、第1直線L1の延長線上に形成され、各第1端歯51の歯高は、大歯31の歯高H1と同じ大きさで形成されている。
【0043】
なお、本実施形態における各第1端歯51の歯高は、それぞれ大歯31の歯高H1と同じ大きさであるが、これに限らず、各第1端歯51の歯高は、大歯31の歯高H1より大きくても良い。また、本実施形態の第1端線Le1は、第1直線L1の延長線上に形成されているが、これに限らず、第1端線Le1は、基準線LBと実質的に平行であって、大歯31から離間する位置に形成されても良い。すなわち、本発明の切断刃20においては、第1端歯51が第1直線L1上に(第1直線L1の延長線と重なるように)形成されていれば良い。
【0044】
各第2端歯52の歯先は、それぞれ一つの直線(以下単に、第2端線Le2と言う。)上に形成されている。第2端線Le2は、第2直線L2の延長線上に形成され、各第2端
歯52の歯高は、中歯32の歯高H2と同じ大きさで形成されている。
【0045】
なお、本実施形態における各第2端歯52の歯高は、それぞれ中歯32の歯高H2と同じ大きさであるが、これに限らず、各第2端歯52の歯高は、大歯31の歯高H1よりも小さければ良い。また、本実施形態の第2端線Le2は、第2直線L2の延長線上に形成されているが、これに限らず、第2端線Le2は、基準線LBと実質的に平行であって、基準線LBと第1端線Le1との間に形成されていれば良い。
(第1の切断方法)
次に、本実施形態の包装容器10を用いてラップフィルム12を切断する場合について以下に説明する。まず、中央エリア30からラップフィルム12へ歯を刺し込むことによって、ラップフィルム12を切断する方法について説明する。
【0046】
図1に示すように、一方の手で包装容器10を握り、他方の手でラップフィルム12の先端部を把持し、所定量のラップフィルムを容器本体13から引き出す。そして、包装容器10を握っている手の親指を蓋体14の前面壁の中央部に押当て、包装容器10を前側へ、すなわち矢印Aの方向へ捻ることによって、ラップフィルム12の切断を開始する。
【0047】
ラップフィルム12の切断を開始すると、V字の頂点に形成された大歯31が、最初にラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。続いて、他の2つの大歯31が、V字の頂点に近いものから順に、ラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。ラップフィルム12は、各大歯31が深く刺し込まれることによって切り開かれる。
【0048】
ラップフィルム12へ各大歯31を刺し込むための力は、一度に刺し込む歯の本数が多くなるほど大きくなり、一度に刺し込む歯の本数が少なくなるほど小さくなる。本実施形態の包装容器10においては、包装容器10を矢印Aの方向へ捻るに連れて、ラップフィルム12と接触する大歯31の位置が、V字の頂点からV字の端へ順に変位する。そのため、包装容器10は、一度に刺し込む大歯31の本数を最小にすることから、刺し込みに必要な力を小さくできる。よって、包装容器10は、ラップフィルム12の切断初期において、使用者への抵抗感を軽減でき、良好なフィーリングを実現できる。しかも、歯元の幅が広い大歯31は、歯元の幅が狭い歯よりも、機械的に高い耐久性を有する。そのため、中央エリア30においては、大歯31の本数の分だけ、その耐久性を向上できる。
【0049】
包装容器10を矢印Aの方向へ更に捻ると、4つの中歯32が、それぞれV字の頂点に近いものから順に、ラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。次いで、小歯33が、ラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。ここで、仮に中歯32が無いと仮定すると、大歯31の歯元の幅が広いため、大歯31の間(谷間)がラップフィルム12の切り開きに対して大きな抵抗となり、ラップフィルム12の切り開きに大きな力を要してしまう。
【0050】
本実施形態の包装容器10においては、中歯32が大歯31の間に形成され、小歯33が中歯32の間に形成されることから、歯元における抵抗を大幅に軽減でき、中央エリア30によるラップフィルム12への刺し込みとラップフィルム12の切り開きとを円滑に実行できる。しかも、先行する大歯31の刺し込みによってラップフィルム12が脆弱化していることから、中歯32及び小歯33の刺し込みに必要とされる力は、大歯31の刺し込みに必要とされる力に比べて、小さいもので足りる。したがって、包装容器10は、使用者へ抵抗感を与えることなく、大歯31による切断と、中歯32による切断と、小歯33による切断とを円滑に実行できる。
【0051】
包装容器10を矢印Aの方向へ更に捻ると、各第1中間歯41が、それぞれラップフィ
ルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれ、次いで、各第2中間歯42が、それぞれラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。これによって、ラップフィルム12の切り開きが、包装容器10の長手方向に沿って進行する。この際、中央エリア30の左側(中間エリア40の側)に、第1中間歯41と同じ歯高H3からなる小歯33が形成されるため、中央エリア30と中間エリア40との間では、ラップフィルム12の切断が円滑に移行する。また、先行する中央エリア30の切り開きによって、ラップフィルム12に十分な大きさの初期の刺し込み部が形成されるため、以降においては、ラップフィルム12を切断するために特に大きな力を必要としない。
【0052】
包装容器10を矢印Aの方向へ更に捻ると、各第1端歯51が、それぞれラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれ、次いで、各第2端歯52が、それぞれラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。これによって、ラップフィルム12の切り開きが、包装容器10の長手方向の両端にまで円滑に進行する。したがって、包装容器10は、中央エリア30、各中間エリア40及び各端部エリア50によって、ラップフィルム12の切り開きを円滑に拡張でき、ラップフィルム12を円滑に切断できる。
(第2の切断方法)
次に、一方の端部エリア50からラップフィルム12へ歯を刺し込むことによって、ラップフィルム12を切断する方法について説明する。
【0053】
図6に示すように、一方の手で包装容器10を握り、他方の手でラップフィルム12の一端を把持し、所定量のラップフィルムを容器本体13から引き出す。そして、包装容器10を握っている手で蓋体14の前面壁を固定しながら、ラップフィルム12を上方へ、すなわち矢印Bの方向へ引き上げることによって、ラップフィルム12の一端(図7の右端)から切断を開始する。
【0054】
ラップフィルム12の切断を開始すると、V字の右端に形成された第1端歯51が、最初にラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。続いて、右側の端部エリア50に形成された他の第1端歯51が、それぞれ右端から順にラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。ラップフィルム12は、各第1端歯51が深く刺し込まれることによって順に切り開かれる。
【0055】
ラップフィルム12へ各第1端歯51を刺し込むための力は、一度に刺し込む歯の本数が多くなるほど大きくなり、一度に刺し込む歯の本数が少なくなるほど小さくなる。本実施形態の包装容器10においては、ラップフィルム12を矢印Bの方向へ引き上げるに連れて、ラップフィルム12と接触する第1端歯51の位置が、右端から中央へ向かって順に変位する。そのため、包装容器10は、一度に刺し込む第1端歯51の本数を最小にすることから、刺し込みに必要な力を小さくできる。よって、包装容器10は、ラップフィルム12の切断初期において、使用者への抵抗感を軽減でき、良好なフィーリングを実現できる。しかも、歯元の幅が広い第1端歯51は、歯元の幅が狭い歯よりも、機械的に高い耐久性を有する。そのため、端部エリア50においては、第1端歯51の本数の分だけ、その耐久性を向上できる。
【0056】
ラップフィルム12を矢印Bの方向へ更に引き上げると、第2端歯52が、それぞれ右端から順に、ラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。ここで、仮に第2端歯52が無いと仮定すると、第1端歯51の歯元幅が広いため、第1端歯51の歯元(谷間)がラップフィルム12の切り開きに対して大きな抵抗となり、ラップフィルム12の切り開きに大きな力を要してしまう。
【0057】
本実施形態の包装容器10においては、第2端歯52が第1端歯51の間に形成される
ことから、歯元における抵抗を大幅に軽減でき、右端の端部エリア50によるラップフィルム12への刺し込みとラップフィルム12の切り開きとを円滑に実行できる。しかも、先行する第1端歯51の刺し込みによってラップフィルム12が脆弱化していることから、第2端歯52の刺し込みに必要とされる力は、第1端歯51の刺し込みに必要とされる力に比べて、小さいもので足りる。したがって、包装容器10は、第1端歯51による切断と、第2端歯52による切断とを、使用者へ抵抗感を与えることなく、円滑に実行できる。
【0058】
ラップフィルム12を矢印Bの方向へ更に引き上げると、右側の中間エリア40における各第1中間歯41が、それぞれラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれ、次いで、各第2中間歯42が、それぞれラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。これによって、ラップフィルム12の切り開きが、包装容器10の長手方向の右端から左端へ向かって進行する。この際、第2端歯52の歯高と第1中間歯41の歯高とが同じであるため、端部エリア50と中間エリア40との間では、ラップフィルム12の切断が円滑に移行する。また、この際、先行する右側の端部エリア50の切り開きによって、ラップフィルム12に十分な大きさの初期刺し込み部が形成されるため、以降においては、ラップフィルム12を切断するために特に大きな力を必要としない。
【0059】
ラップフィルム12を矢印Bの方向へ更に引き上げると、各大歯31が、それぞれラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれ、次いで、各中歯32及び小歯33が、それぞれラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。これによって、ラップフィルム12の切り開きが、包装容器10の長手方向の中央にまで円滑に進行する。
【0060】
ラップフィルム12を矢印Bの方向へ更に引き上げると、左側の中間エリア40における各第1中間歯41が、それぞれラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれ、次いで、各第2中間歯42が、それぞれラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。これによって、ラップフィルム12の切り開きが、包装容器10の長手方向に沿って更に進行する。この際、中央エリア30の左側(中間エリア40の側)に、第1中間歯41と同じ歯高H3からなる小歯33が形成されるため、中央エリア30と左側の中間エリア40との間では、ラップフィルム12の切断が円滑に移行する。
【0061】
ラップフィルム12を矢印Bの方向へ更に引き上げると、左側の端部エリア50における第1端歯51が、ラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。続いて、左側の端部エリア50における他の第1端歯51が、それぞれ右側から順にラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。そして、左側の端部エリア50における第2端歯52及び小歯33が、それぞれ右端から順に、ラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。これによって、ラップフィルム12の切り開きが、包装容器10の長手方向の左端にまで円滑に進行する。
【0062】
なお、大歯31あるいは第1端歯51の歯高のみが過度に大きくなると、歯の機械的強度が損なわれることから、歯の耐久性を低下させる虞があり、また、使用者の安全性を損なう虞がある。また、大歯31あるいは第1端歯51の歯間のピッチのみが過度に大きくなると、歯間の谷部にラップフィルム12が引っ掛り、ラップフィルム12の切断に支障を来たしてしまう。反対に、大歯31あるいは第1端歯51の歯間のピッチのみが過度に小さくなると、歯の本数の増加を招くことから、ラップフィルム12への刺し込みに大きな力を必要としてしまう。そこで、切断性、耐久性、安全性を十分に確保する観点から、各歯の歯高及び歯間のピッチは、以下の構成が好ましい。
【0063】
大歯31の歯高は、好ましくは1.0mm〜4.0mm、より好ましくは1.2mm〜3.5mm、さらに好ましくは1.5mm〜3.0mmとするのが良い。大歯31の歯間のピッチは、好ましくは3.0mm〜9.0mm、より好ましくは4.0mm〜7.0mm、さらに好ましくは4.5mm〜6.0mmとするのが良い。
【0064】
中歯32の歯高は、好ましくは1.0mm〜3.0mm、より好ましくは1.2mm〜2.5mmとするのが良い。小歯33の歯高は、好ましくは0.5mm〜2.5mm、より好ましくは0.6mm〜2.0mmとするのが良い。
【0065】
第1中間歯41の歯高は、好ましくは0.3mm〜2.5mm、より好ましくは0.5mm〜2.0mmとするのが良い。第1中間歯41の歯間のピッチは、好ましくは1.0mm〜3.5mm、より好ましくは1.2mm〜3.0mmとするのが良い。
【0066】
第2中間歯42の歯高は、好ましくは0.3mm〜1.5mm、より好ましくは0.5mm〜1.2mmとするのが良い。
第1端歯51の歯高は、好ましくは1.0mm〜4.0mm、より好ましくは1.2mm〜3.5mm、さらに好ましくは1.5mm〜3.0mmとするのが良い。第1端歯51の歯間のピッチは、好ましくは3.0mm〜9.0mm、より好ましくは4.0mm〜7.0mm、さらに好ましくは4.5mm〜6.0mmとするのが良い。
【0067】
第2端歯52の歯高は、好ましくは1.0mm〜3.0mm、より好ましくは1.2mm〜2.5mmとするのが良い。
上記第一実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0068】
(1)第一実施形態の各端部エリア50は、それぞれ基準線LB上に歯元を有する複数の第1端歯51を有し、各第1端歯51がそれぞれ第1直線L1上に形成される。したがって、切断刃20は、中央エリア30からラップフィルム12を切断する場合、切断初期に刺し込む歯が大歯31のみであることから、切断初期に必要とする力を小さくできる。また、切断刃20は、一方の端部エリア50からラップフィルム12を切断する場合、切断初期に刺し込む歯が第1端歯51のみであることから、切断初期に必要する力を小さくできる。この結果、切断刃20によれば、ラップフィルム12への歯の刺し込みを、切断刃20のV字の頂点から行う場合と、切断刃20のV字の端部から行う場合とにおいて、それぞれ切断時のフィーリングを向上できることから、良好な切断性を得られる。
【0069】
(2)また、比較的大きいサイズの大歯31及び第1端歯51を用いて切断時のフィーリングの向上させることから、切断刃20は、大歯31と第1端歯51の数量の分だけ、歯の耐久性を向上できる。
【0070】
(3)しかも、各第1端歯51の歯先がそれぞれ第1直線L1上に形成されることから、切断刃20は、その全体にわたり、歯の耐久性の均一化を図ることができる。
(4)第一実施形態の各端部エリア50は、それぞれ第1端歯51の間に第2端歯52をさらに有し、第2端歯52の歯高が第1端歯51の歯高よりも低い。したがって、切断刃20は、第2端歯52による刺し込み段階を経る分だけ、ラップフィルム12の切り開きを一層円滑にできる。
【0071】
(5)第一実施形態の中央エリア30は、中間エリアの近傍に小歯33を有し、小歯33の歯元が基準線LB上に形成され、小歯33の歯先が第2直線L2上又は第2直線L2と基準線LBとの間に形成される。したがって、中央エリア30の刺し込みと、中間エリア40の刺し込みとが、小歯33の刺し込みを介して円滑に移行する。この結果、切断刃
20は、ラップフィルム12の切り開きを一層円滑にできる。
【0072】
(第二実施形態)
以下、本発明を具体化した第二実施形態の包装容器を図面に従って説明する。第二実施形態は、第一実施形態の第1端歯51の形状を変更したものである。そのため、以下においては、その変更点について詳しく説明する。図7は第二実施形態の切断刃20の中央エリア30及び端部エリア50を拡大した図である。
【0073】
図7において、各第1端歯51は、それぞれ斜辺51aが歯の内側へ凹んだ円弧状を呈し、末広がり形状ないしは銀杏の葉の形状を呈する。本実施形態では、斜辺を構成する各円弧の歯の頂点部での接線同士がなす角度を、歯先角度と言う。各第1端歯51の歯先角度αは、ラップフィルム12への刺し込みに適した角度であり、ラップフィルム12がポリ塩化ビニリデンからなる場合には、30°≦α≦90°が好ましく、さらには40°≦α≦70°がより好ましい。歯先角度αが90°よりも大きくなると、ラップフィルム12への刺し込みに多大な力が必要となり、歯先角度αが30°よりも小さくなると、歯自体の耐久性が損なわれてしまう。
【0074】
上記第二実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(6)第二実施形態の第1端歯51は、それぞれ歯元の幅を広くできることから、歯先角度αを鋭角に保持しながら、自身の耐久性を向上できる。また、同じ長さの端部エリア50を形成する場合においては、歯元幅を拡張できることから、第1端歯51の本数を削減でき、ひいては刺し込みに要する力を、より軽減できる。
【0075】
(第三実施形態)
以下、本発明を具体化した第三実施形態の包装容器を図面に従って説明する。第三実施形態は、第一実施形態の第1端歯51の形状を変更したものである。そのため、以下においては、その変更点について詳しく説明する。図8は第三実施形態の切断刃20の中央エリア30及び端部エリア50を拡大した図である。
【0076】
図8において、各第1端歯51は、それぞれ切断刃20の端に近い斜辺が直線をなし、切断刃20の中央に近い斜辺が内側へ凹んだ円弧状を呈する。本実施形態では、各第1端歯51の歯元間の中点から歯先へ延びる直線を、歯先線とし、歯先線の延びる方向を、歯先の向きと言う。また、本実施形態では、歯の頂点部において、直線をなす斜辺と、円弧状をなす斜辺の接線とがなす角度を、歯先角度と言う。第1端歯51における歯先線K5は、他の歯の歯先線、例えば大歯31の歯先線K3に比べて、中心線CLから離れる方向へ延びる。すなわち、第1端歯51の歯先の方向は、大歯31に比べて、外側へ向いている。
【0077】
第1端歯51の歯先角度βは、ラップフィルム12への刺し込みに適した角度で形成されている。ラップフィルム12がポリ塩化ビニリデンからなる場合には、βは、歯先角度20°〜60°の範囲が好ましく、20°〜40°がより好ましい。歯先角度βが60°よりも大きくなる場合には、ラップフィルム12へ刺し込むために多大な力が必要となり、20°よりも小さい場合には、第1端歯51の耐久性が損なわれる。
【0078】
なお、本実施形態の第1端歯51においては、中心線CLと平行であって該第1端歯51の外側(図8の左側)の歯元を通る直線と、該第1端歯51の外側(図7の左側)の斜辺との成す角度γが2°〜20°である構成が好ましい。これによって、第1端歯51は、ラップフィルム12への刺し込みに用いられる場合と、ラップフィルム12の切り開きに用いられる場合との双方で切断性を向上できる。
【0079】
第2の切断方法を用いてラップフィルム12の切断を開始すると、V字の右端に形成された第1端歯51が、最初にラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。続いて、右側の端部エリア50に形成された他の第1端歯51が、それぞれ右端から順にラップフィルム12に接触してラップフィルム12へ刺し込まれる。ラップフィルム12は、各第1端歯51が深く刺し込まれることによって順に切り開かれる。
【0080】
この際、矢印Bの方向にラップフィルム12を引き上げると、右側の端部エリア50における第1端歯51の歯先が右側へ向いていることから、ラップフィルム12の主面(図7における上面)が第1端歯51の歯先へ引き上げられる。
【0081】
上記第三実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(7)第三実施形態の第1端歯51は、歯先の方向が包装容器10の長手方向の外側に向いている。そのため、ラップフィルム12を引き上げて切断する場合には、第1端歯51の歯先に向けて、ラップフィルム12の主面が引き上げられる。したがって、切断刃20は、第1端歯51のラップフィルム12への刺し込みを、より円滑に実行できる。
【0082】
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態では、第1端線Le1が第1直線L1と同一の直線上に形成される。これに限らず、図9に示すように、第1端線Le1は、第1直線L1(大歯31の歯先)から離間しても良い。すなわち、切断刃20の各第1端歯51は、それぞれ第1直線L1の延長線と重なる形状であれば良い。
【0083】
・上記実施形態では、端部エリア50が第1端歯51と第2端歯52とを具備する。これに限らず、図10に示すように、端部エリア50が第1端歯51のみを具備する構成であっても良い。すなわち、切断刃20の端部エリア50は、第1端歯51を具備する構成であれば良い。
【0084】
・上記実施形態では、中間エリア40が第1中間歯41と第2中間歯42とを具備する。これに限らず、中間エリア40が第1端歯51のみ、あるいは第2中間歯42のみを具備する構成であっても良い。すなわち、切断刃20の中間エリア40は、第1中間歯41を具備する構成であれば良い。
【0085】
・上記第二実施形態では、第1端歯51の斜辺51aが内側へ凹んだ円弧状に形成される。これに限らず、第2端歯52や大歯31等、他の歯の斜辺が内側へ凹んだ円弧状に形成されても良い。この構成によれば、切断刃20の略全体にわたり、歯先角度αを鋭角に保持しながら、各歯の耐久性を向上でき、また、刺し込みに要する力を軽減できる。
【0086】
・上記第三実施形態では、第1端歯51の歯先の方向が外側に向けて形成されるが、これに加えて、第2端歯52の歯先の方向も外側に向けて形成されても良い。
・上記第三実施形態では、第1端歯51の斜辺が内側へ凹んだ円弧状に形成されるが、これに限らず、第1端歯51の斜辺が直線であっても良い。
【0087】
・上記実施形態では、ロール状被包装物を、ラップフィルム12に具体化した。これに限らず、ロール状被包装物は、アルミフォイルや紙であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明が適用された包装容器の形態を示す斜視図。
【図2】本発明が適用された包装容器の形態を示す要部断面図。
【図3】本発明の第一実施形態における切断刃を示す図。
【図4】本発明の第一実施形態における切断刃の中央エリアと中間エリアを示す図。
【図5】本発明の第一実施形態における切断刃の中央エリアと端部エリアを示す図。
【図6】本発明が適用された包装容器の形態を示す斜視図。
【図7】本発明の第二実施形態における切断刃の中央エリアと端部エリアを示す図。
【図8】本発明の第三実施形態における切断刃の中央エリアと端部エリアを示す図。
【図9】変更例における切断刃の中央エリアと端部エリアを示す図。
【図10】変更例における切断刃の中央エリアと端部エリアを示す図。
【符号の説明】
【0089】
L1…第1直線、L2…第2直線、LB…歯元直線としての基準線、Lm1…第1中間線、Lm2…第2中間線、Le1…第1端線、Le2…第2端線、10…包装容器、12…包装物としてのラップフィルム、14…蓋体、20…切断刃、30…中央エリア、31…第1歯としての大歯、32…第2歯としての中歯、40…中間エリア、41…中間歯を構成する第1中間歯、42…中間歯を構成する第2中間歯、50…端部エリア、51…第1端歯、51a…斜辺、52…第2端歯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状包装物を収容する包装容器に取り付けられて前記ロール状包装物を切断する非金属製のV字状の切断刃であって、
中央エリアと、V字の両端を含む一対の端部エリアと、前記中央エリアと前記一対の端部エリアとに挟まれる一対の中間エリアとに区分され、
前記中央エリアは、
複数の第1歯と、前記第1歯の歯高よりも低い歯高からなる複数の第2歯とを有し、
一つの前記第1歯が前記V字の頂点に形成されると共に、他の第1歯がそれぞれ前記頂点の第1歯を中心にして所定の間隔で形成され、かつ、前記各第2歯がそれぞれ前記第1歯の間に形成され、
前記各第1歯の歯先を結ぶ第1直線と、前記各第2歯の歯先を結ぶ第2直線と、前記各第1歯の歯元と前記各第2歯の歯元とを結ぶ歯元直線とが互いに平行であり、かつ、前記第2直線が前記第1直線と前記歯元直線との間に形成され、
前記各中間エリアは、
それぞれ複数の中間歯を有し、前記各中間歯の歯先がそれぞれ前記第2直線上又は前記第2直線と前記歯元直線との間に形成され、
前記各端部エリアは、
それぞれ複数の第1端歯を有し、前記各第1端歯がそれぞれ前記第1直線上に形成されること、
を特徴とする包装容器用の切断刃。
【請求項2】
請求項1に記載の包装容器用の切断刃であって、
前記各第1端歯の歯先がそれぞれ前記第1直線上に形成されること、
を特徴とする包装容器用の切断刃。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の包装容器用の切断刃であって、
前記各第1端歯の斜辺の少なくとも1つが内側へ凹んだ円弧状に形成されること、
を特徴とする包装容器用の切断刃。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の包装容器用の切断刃であって、
前記各第1端歯の歯先がそれぞれ前記包装容器の長手方向の外側へ向いていること、
を特徴とする包装容器用の切断刃。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の包装容器用の切断刃であって、
前記各端部エリアは、
それぞれ前記第1端歯の間に第2端歯をさらに有し、前記第2端歯の歯高が前記第1端歯の歯高よりも低いこと、
を特徴とする包装容器用の切断刃。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の包装容器用の切断刃であって、
前記中央エリアは、
前記中間エリアの近傍に第3歯を有し、前記第3歯の歯元が前記歯元直線上に形成され、前記第3歯の歯先が前記第2直線と前記歯元直線との間に形成されること、
を特徴とする包装容器用の切断刃。
【請求項7】
ロール状包装物を収容して前記ロール状包装物を切断する切断刃を具備する包装容器であって、
前記切断刃は、請求項1〜6のいずれか1つに記載の切断刃であることを特徴とする包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−132405(P2009−132405A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309300(P2007−309300)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】