説明

包装容器用の切断刃及び包装容器

【課題】本発明の目的は、バリがない状態でも優れた切断性を有し、かつ、使用者に対する安全性が高い包装容器用の切断刃を提供することである。
【解決手段】本発明に係る包装容器用の切断刃30は、包装物1を巻回したロール5を収容する包装容器100に取り付けて、ロールの軸方向Xに沿って略V字状に配列する複数の歯を備え、ロールから引き出された包装物を切断する包装容器用の切断刃において、略V字の頂点Tを含む先端部区画Waと先端部区画の両端に連接する一対の中間部区画Wbとを有し、先端部区画に配列する歯が、先端部区画の中心に位置する中心歯31と、大歯32と、大歯の歯高よりも小さい歯高の小歯34と、を有し、中間部区画に配列する歯35の歯先35aが、略V字状の仮想線La1上にあり、先端部区画に配列する歯の歯先31a,32a,34aが、仮想線La1の延長線上La2又は延長線よりも各歯の歯底側にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラップフィルム、アルミニウム箔などの包装物を収容する包装容器用の切断刃に関する。
【背景技術】
【0002】
ラップフィルム、アルミニウム箔などの包装物を収容する包装容器は、通常、包装物を円筒状の紙管に巻回したロールを収容する容器本体と、該容器本体と一体に設けられた蓋体と、該蓋体の下端に設けられ、ロールの軸方向に沿って蓋体の略全幅にわたって配列する複数の歯を備える切断刃と、から構成される。使用者は、蓋体を開けて、容器から包装物を所定の長さだけを引き出した後、蓋体を閉じ、蓋前面板を一方の手の親指で押さえ付けて包装物を固定しつつ、引き出された包装物を他方の手で引っ張ることで、包装物を切断する。このような包装容器用の切断刃には、より小さな力で包装物を切断できることが望まれている。
【0003】
本出願人は、切断刃のロールの軸方向における中心部を包装容器の底辺に最も近づけたV字状とし、V字の頂点に位置する歯の歯先が最初に包装物へ接触して包装物を軸方向の中央から両端側に向かって切断することで、包装物を切断するのに必要な力を小さくできる包装容器を提案している(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
従来、切断刃の材質として、切断性及び耐久性に優れる点で、金属製が利用されている。本出願人は、金属製の切断刃を作製時に打抜き加工によって生じる端部の突起(バリ)が、包装物の切断性を左右していることを見出し、バリの高さを所定の範囲に制御して切断性を高めた包装用容器を提案した(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
さらに、包装容器用の切断刃には、使用者に対する安全性を有することが望まれている。本出願人は、使用者に対する安全性の配慮から、金属製の切断刃に代えて、紙、プラスチックなどからなる非金属製の切断刃を提案している(例えば、特許文献3を参照。)。非金属製の切断刃は、バリが発生しないため、金属製の切断刃と比べて良好な切断性を得にくい。そこで、特許文献3に記載の切断刃は、V字状の頂点部近傍の領域及び両端部近傍の領域に、他の領域よりも歯高の高い複数の第一歯を配列し、該複数の第一歯を他の歯よりも先行して包装物へ刺し込むことで、切断初期に必要とする力を小さくできるものである。また、非金属性の切断刃において、切断刃を形成する歯の少なくとも上端面に、樹脂を介して砥粒を固着し、該塗粒が、バリと同様の役割を果たし、包装物を破断して優れた切断性を付与する技術が開示されている(例えば、特許文献4を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−45349号公報
【特許文献2】特開2002−362547号公報
【特許文献3】特開2009−132405号公報
【特許文献4】特開平7−309335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3では、使用者に対する安全性の配慮から、切断刃が非金属製であることに限定して形状を設計しているが、耐久性、切断性及びコストの面で、金属製の切断刃の需要があるのが実情である。そこで、材質に関わらず、たとえ金属製であっても、安全性が高い形状を有し、かつ、小さな力で包装物を切断できる切断刃が求められている。
【0008】
包装物への歯の突き刺しは、同時に突き刺す歯の本数が少ないほど、小さな力で行うことができる。しかし、特許文献1をはじめとするV字の頂点から包装物を切断する切断刃では、V字の頂点に位置する歯に対して包装物が引き出される方向に包装物の裂け目が形成されて、ロールの軸方向と平行な方向に包装物を切断することができない場合がある。
【0009】
特許文献2をはじめとするバリの高さを制御して切断性を向上させる方法では、金型の磨耗又はダレなどによって、包装物の切断に適したバリの発生を管理することが難しいという問題があった。
【0010】
特許文献4をはじめとする砥粒を設けた切断刃では、砥粒の配置を制御するのが困難であり、望ましい切断性を得られない場合がある。また、構造及び製造過程が複雑となるという問題がある。さらに、砥粒が脱落するおそれがある。以上のように、従来の包装容器用の切断刃は、安全性と切断性とを十分に兼ね備えるには至っていない。
【0011】
本発明は、前記問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、バリがない状態でも優れた切断性を有し、かつ、使用者に対する安全性が高い包装容器用の切断刃を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る包装容器用の切断刃は、包装物を巻回したロールを収容する包装容器に取り付けて、前記ロールの軸方向に沿って略V字状に配列する複数の歯を備え、前記ロールから引き出された包装物を切断する包装容器用の切断刃において、前記略V字の頂点を含む先端部区画と該先端部区画の両端に連接する一対の中央部区画とを有し、前記先端部区画に配列する歯が、該先端部区画の中心に位置する中心歯と、大歯と、該大歯の歯高よりも小さい歯高の小歯と、を有し、前記中央部区画に配列する歯の歯先が、略V字状の仮想線上にあり、前記先端部区画に配列する歯の歯先が、前記仮想線の延長線上又は該延長線よりも各歯の歯底側にあることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る包装容器用の切断刃では、前記中心歯の歯底の深さが、前記中央部区画に配列する歯の歯底を結ぶ基準線の延長線よりも深いことが好ましい。中心歯を挟む両隣の歯の歯先角度がより鋭角になり、切断初期における包装物の切断をより小さい力で行うことができる。
【0014】
本発明に係る包装容器用の切断刃では、前記中心歯の歯先と該中心歯に隣接する歯の歯先との間隔が、他の隣接しあう歯同士の歯先の間隔よりも大きいことが好ましい。中心歯を挟む両隣の歯の歯底をより広くとることができ、中心歯を挟む両隣の歯の物理的強度を高めることができる。
【0015】
本発明に係る包装容器用の切断刃では、前記先端部区画の幅が、10〜60mmであることが好ましい。先端部区画において包装物を十分に脆弱化し、容易に切断可能とすることができるため、続く中央部区画での包装物の刺し込み及び引裂きを小さな力で円滑に行うことができる。
【0016】
本発明に係る包装容器用の切断刃は、金属からなる形態を包含する。バリの管理を行うことなく、切断性に優れた切断刃を得ることができる。
【0017】
本発明に係る包装容器用の切断刃では、前記中心歯の両脇が、前記大歯であり、前記中心歯の歯先が、前記中心歯を挟む前記大歯の歯先を結ぶ中央大歯歯先線よりも歯底側にあることが好ましい。中心歯を挟む2本の大歯が先行して包装物へ刺し込まれるため、切断初期に必要とする力をより小さくすることができる。また、包装物が引き出される方向に包装物の裂け目が形成されるのを抑制することができる。
【0018】
本発明に係る包装容器は、本発明に係る包装容器用の切断刃を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、バリがない状態でも優れた切断性を有し、かつ、使用者に対する安全性が高い包装容器用の切断刃を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る包装容器の一例を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る包装容器用の切断刃の先端部区画及び中央部区画の第一形態を示す部分拡大正面図である。
【図3】図2の点線で囲んだ部分の部分拡大正面図である。
【図4】本実施形態に係る包装容器用の切断刃の先端部区画及び中央部区画の第二形態を示す部分拡大正面図である。
【図5】本実施形態に係る包装容器用の切断刃の先端部区画及び中央部区画の第三形態を示す概略図であり、(a)はV字状の切断刃の部分拡大正面図、(b)は(a)の破線で囲んだ部分の部分拡大正面図である。
【図6】本実施形態に係る包装容器用の切断刃の先端部区画及び中央部区画の第四形態を示す部分拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0022】
図1は、本実施形態に係る包装容器の一例を示す斜視図である。図2は、本発明に係る包装容器用の切断刃の先端部区画及び中央部区画の第一形態を示す部分拡大正面図である。本実施形態に係る包装容器用の切断刃30は、包装物1を巻回したロール5を収容する包装容器100に取り付けて、ロール5の軸方向Xに沿って略V字状に配列する複数の歯31,32,34,35を備え、ロール5から引き出された包装物1を切断する包装容器用の切断刃において、略V字の頂点Tを含む先端部区画Waと先端部区画Waの両端に連接する一対の中央部区画Wbとを有し、先端部区画Waに配列する歯31,32,34が、先端部区画Waの中心に位置する中心歯31と、大歯32と、大歯32の歯高よりも小さい歯高の小歯34と、を有し、中央部区画Wbに配列する歯35の歯先35aが、略V字状の仮想線La1上にあり、先端部区画Waに配列する歯31,32,34の歯先31a,32a,34aが、仮想線La1の延長線La2上又は延長線La2よりも各歯31,32,34の歯底35b側にある。
【0023】
図1において、包装容器100は、矩形の本体底面板11の長辺に立設する本体前面板12及び本体後面板13並びに矩形の本体底面板11の短辺に立設する本体左側面板14及び本体右側面板15を有し、包装物1がロール状に巻回されたロール5を収容する、上面が開口した容器本体10と、本体後面板13の上端辺に回動可能に連接され、容器本体10の上面開口部を閉鎖時に、上面開口部を覆う天面板21、天面板21に連接し、本体前面板12の外側に重ねて配置する蓋前面板22、本体左側面板14の外側に重ねて配置する蓋左側面板24及び本体右側面板15の外側に重ねて配置する蓋右側面板25を有する蓋体20と、を備える。
【0024】
包装容器100は、厚紙、プラスチックなどの板材で形成されている。板材の厚さは、特に限定されないが、一般に0.45〜0.70mmである。
【0025】
包装物1は、例えば、ラップフィルム、アルミニウム箔、加熱調理用の紙シートである。ラップフィルムは、例えば、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエステルフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルムである。加熱調理用の紙シートは、紙基材の片面又は両面にシリコン樹脂加工又はフッ素樹脂加工を施したシートである。包装物1の厚さは、特に限定されないが、ラップフィルムの場合には、一般に、5〜20μmである。
【0026】
切断刃30は、包装物1を切断するための略V字状の切断辺30aを有する。切断辺30aの先端部は、複数の歯31,32,34,35が配列して鋸歯状に形成されている。切断刃30は、ロール5の軸方向Xに沿って、複数の歯31,32,34,35が配列し、かつ、複数の歯31,32,34,35が蓋前面板22の下端辺22aから突出するように蓋前面板22の裏面(容器本体10側の表面)に固定されている。
【0027】
切断刃30は、配列する歯の形状の基づいて、略V字の頂点Tを含む先端部区画Waと、先端部区画Waの両端に連接する一対の中央部区画Wbと、略V字の両端を含む一対の両端部区画Wcと、に区分されている。切断刃30は、蓋前面板22上にてロール5の軸方向Xにおける中心を通る直線(以降、中心線という)Cを対称軸とする線対称に形成することが好ましい。
【0028】
中央部区画Wbは、複数の歯35を有する。中央部区画Wbに配列する歯35の形状及び配列順は、特に限定されない。例えば、図2に示すようなすべて同形状とする形態、先端部区画Waのように、歯高の異なる「大歯」と「小歯」とを配列する形態、隣接する歯同士の間隔を変化させる形態、歯先の方向が軸方向の中央に向く歯を配列する形態、歯先の方向が軸方向の両端側に向く歯を配列する形態がある。本明細書において「歯先」とは、各歯の先端部(頂点)をいい、「歯底」とは、頂点(歯先)の両脇に延びる一対の斜辺が形成する谷部をいう。また、歯高とは、中央部区画Wbに配列する歯の歯底を結ぶ基準線Lb1又は基準線Lb1の延長線Lb2と各歯の歯先との間の最短距離をいう。
【0029】
仮想線La1は、中央部区画Wbに配列する歯35の歯先35aを結んで得られる線である。仮想線La1は、中央部区画Wbに配列する歯35が歯高の異なる歯を有する場合には、最も高い歯高を有する歯の歯先を結ぶ線である。基準線Lb1は、中央部区画Wbに配列する歯35の歯底35bを結んで得られる線である。仮想線La1及び基準線Lb1は、図2に示すような直線である形態に限定されず、曲線である形態を包含する。仮想線La1及び基準線Lb1が曲線である場合には、それぞれの延長線La2,Lb2は、同一の曲率を保持して延長した線をいう。仮想線La1と蓋前面板22の下端辺22aとは、等距離になるように形成することが好ましい。これによって、切断刃30の物理的強度及び耐久性を向上できる。さらに、安全性を高めることができる。また、仮想線La1と基準線Lb1との間隔が、等距離であることが好ましい。これによって、切断刃の全体にわたって、複数の歯31,32,34,35の耐久性を均一化することができる。
【0030】
両端部区画Wcは、切断刃30の両端に位置する区画であり、複数の歯を有する。図1では、両端部区画Wcは、中央部区画Wbと境界を設けず、中央部区画Wbと歯の配列を同じくしている。そのため、中央部区画WbをV字の両端まで延長して形成していることと同じとなる。本実施形態は、この形態に限定されず、例えば、包装物1を両端部からでも切断できるように、歯先を両端側に向けた形態、両端部区画Wcにおける蓋前面板22の下端辺22aを本体前面板12の底辺12aと平行にし、両端部区画Wcに設けた複数の歯も本体前面板12の底辺12aと平行に配列した形態とすることができる。
【0031】
先端部区画Waは、略V字の頂点Tを含む区画であり、先端部区画Waの中心に位置する中心歯31と、大歯32と、大歯32の歯高よりも小さい歯高の小歯34と、を有する。図2では、1本の中心歯31と、4本の大歯32と、大歯32の歯高よりも小さい歯高の4本の小歯34と、が配列している。大歯32と小歯34とは、中心歯31を挟んで左右対称に配列していることが好ましい。略V字は、一対の中央部区画Wbから延びる一対の仮想線La1及びその延長線La2が描く形状をいい、中央部分が他の部分よりも本体前面板12の底辺12a側に突出する形状である。略V字の頂点Tは、先端部区画Waにおいて、一対の仮想線La1の延長線La2が交差する部分を示し、本体前面板12の底辺12aに最も近い部分である。略V字の頂点Tは、中心線C上にあることが好ましい。
【0032】
本実施形態に係る包装容器用の切断刃30では、先端部区画Waの幅Aが、10〜60mmであることが好ましい。より好ましくは、20〜40mmの区画である。この範囲にすることで、包装物1を十分に脆弱化し、容易に切断可能とすることができるため、続く中央部区画Wbでの包装物1の刺し込み及び引裂きを小さな力で円滑に行うことができる。また、先端部区画Waは、中心歯31の歯先31aを軸方向Xにおける中心とすることが特に好ましい。
【0033】
先端部区画Waに配列する歯31,32,34の歯先31a,32a,34aは、仮想線La1の延長線La2上又は延長線La2よりも各歯31,32,34の歯底側にある。具体的には、図2に示すごとく、大歯32の歯先32aが仮想線La1の延長線La2上にあり、中心歯31及び小歯34の歯先31a,34aが延長線La2よりも各歯31,34の歯底側にある形態、又は、中心歯31、大歯32及び小歯34の歯先31a,32a,34aが延長線La2よりも各歯31,32,34の歯底側にある形態である。これによって、すべての歯31,32,34歯の歯先31a,32a,34aが、仮想線La1の延長線La2から突出していないため、使用者に対する安全性を確保することができる。
【0034】
図3は、図2の点線で囲んだ部分の部分拡大正面図である。図3に示すように、本実施形態に係る包装容器用の切断刃30では、中心歯31の両脇が、大歯32であり、中心歯31の歯先31aが、中心歯31の両脇に位置する大歯32(以降、その他の大歯32を区別して、中央大歯33という。)の歯先33aを結ぶ中央大歯歯先線Lcよりも歯底側にあることが好ましい。より好ましくは、中心歯31の歯先31aが、中央大歯歯先線Lcと小歯34の歯先34aを結ぶ小歯歯先線Ldとの間にあることが好ましい。特に好ましくは、中心歯31の歯先31aが、小歯歯先線Ld上にあることが好ましい。
【0035】
包装物1へ各歯の歯先を刺し込むための力は、一度に刺し込む歯の本数が多くなるほど大きくなり、少なくなるほど小さくなる。したがって、中心歯31の両脇を中央大歯33とし、中心歯31の歯先31aが、中央大歯33の歯先33aを結ぶ中央大歯歯先線Lcよりも歯底側にすることで、切断初期には、2本の中央大歯33が最先に包装物1へ刺し込まれるため、切断初期に必要とする力をより小さくすることができる。さらに、中央歯31の歯先31aだけを他の歯の歯先よりも突出させる構成では、中心歯31に対して包装物1が引き出される方向(図1のβ方向)に延びる不本意な方向への包装物1の裂け目が形成されて、ロールの軸方向(図1のX方向)と平行な方向に包装物1を切断することができない場合があるところ、本実施形態に係る包装容器用の切断刃30では、2本の中央大歯33の歯先33aが中心歯31の歯先31aよりも先行して包装物1に接触するため、包装物1に作用する力が分散して、前述の不本意な方向への裂け目が形成されるのを抑制し、ロールの軸方向(図1のX方向)と平行な方向に包装物1を切断することができる。
【0036】
本実施形態では、図2及び図3に示すように、大歯32と小歯34とは交互に配列することが好ましい。このように配列することで、一度に刺し込まれる大歯32の歯先32aの数を少なくすることができ、より小さな力で切断を行うことができる。
【0037】
小歯34の歯高h2と大歯32の歯高h1との比率(h2/h1)が、2/10〜8/10であることが好ましい。より好ましくは、4/10〜6/10である。小歯34の歯高h2と大歯32の歯高h1との比率(h2/h1)が2/10未満では、大歯32の歯底近くまで包装物1を刺し込んでから小歯34の歯先34aが包装物1に接触することとなり、包装物1の切り開きに大きな力を要する場合がある。また、小歯34の歯高h2と大歯32の歯高h1との比率(h2/h1)が8/10を超えると、大歯32が包装物1に十分に刺し込まれる前に小歯34の歯先34aが包装物1に接触することとなり、包装物1の切断時に使用者が受ける抵抗力が大きくなる場合がある。
【0038】
切断刃を構成する複数の歯31,32,33,34,35は、いずれも歯先31a,32a,33a,34a,35aを頂点とし、頂点と、頂点から両脇の歯底に向かって延びる一対の斜辺とで略三角形状を成している。一対の斜辺は、直線状又は歯の内側へ凹んだ円弧状である。図3において、一対の斜辺又は一対の斜辺の接線がなす角度θ1,θ2,θ3,θ4(不図示),θ5(不図示)を、歯先角度という。中心歯31の歯先角度θ1及び小歯34の歯先角度θ3は、30°〜120°であることが好ましい。より好ましくは、45°〜80°である。中心歯31の歯先角度θ1及び小歯34の歯先角度θ3が30°未満では、中心歯31及び小歯34の物理的強度が不足して、耐久性に劣る場合がある。中心歯31の歯先角度θ1及び小歯34の歯先角度θ3が120°を超えると、包装物1への突き刺しに大きな力が必要となる場合がある。
【0039】
中央大歯33の歯先角度θ2及び大歯32の歯先角度θ4(不図示)は、30°〜90°とすることが好ましい。より好ましくは、45°〜70°である。中央大歯33の歯先角度θ2及び大歯32の歯先角度θ4(不図示)が30°未満では、中央大歯33及び大歯32の物理的強度が不足して、耐久性に劣る場合がある。また、安全性が劣る場合がある。中央大歯33の歯先角度θ2及び大歯32の歯先角度θ4(不図示)が90°を超えると、包装物1への突き刺しに大きな力が必要となる場合がある。
【0040】
図3には図示していないが、中央部区画Wbに配列する歯35の歯先角度θ5(不図示)は、30°〜90°であることが好ましい。より好ましくは、45°〜70°である。中央部区画Wbに配列する歯35の歯先角度θ5が30°未満では、歯35の物理的強度が不足して、耐久性に劣る場合がある。また、安全性が劣る場合がある。中央部区画Wbに配列する歯35の歯先角度θ5が90°を超えると、包装物1の切り開きに大きな力が必要となる場合がある。
【0041】
次に、図1及び図2を用いて、包装物1を切断する場合について説明する。
【0042】
図1を用いて切断時の動作について説明する。使用者は、まず、蓋体20を開けて、ロール5から包装物1を所定の長さだけ引き出した後、蓋体20を閉じる。一方の手で、包装容器100を把持し、把持した手の親指を蓋前面板22に当てて、本体前面板12の方向へ押し付ける。他方の手で引き出した包装物1をβ方向に引きつつ、包装容器100を把持した手で包装容器100をα方向に捻る。この動作によって、包装物1の切断を開始する。この切断方法においては、包装物1がV字の頂点TからV字の両端部に向けて順に切り開かれる。
【0043】
図2を用いて包装物1の切断について更に詳しく説明する。切断動作を開始すると、2本の中央大歯33の歯先33aが包装物1に接触して、包装物1を突き刺す。続いて、中心歯31の歯先31aが包装物1に接触して、包装物1を突き刺すことによって、包装物1を切断する。先端部区画Waでは、包装容器100を図1のα方向へ捻るにつれて、大歯32による包装物1の突き刺しと小歯34による包装物1の突き刺し及び切断とを順に行いながら、V字の頂点TからV字の両端へ向かって包装物1を切り開いていく。大歯32の歯底まで包装物1を刺し込む前に、小歯34が包装物1を切断するため、包装物1の引裂き伝播が円滑に行われ、使用者へ抵抗感を与えることなく、包装物1を容易に切断することができる。
【0044】
包装容器100を図1のα方向へ更に捻ると、中央部区画Wbに配列する各歯35が逐次接触して、包装物1を切り開き、包装物1の切断が両端部区画Wcの包装物1の両端部まで円滑に進行して、切断が終了する。包装物1は、先端部区画Waでの切断で十分に脆弱化しているため、中央部区画Wb及び両端部区画Wcでは、引裂き伝播によって小さな力で包装物1を切断することができる。
【0045】
切断刃30の材質は、特に限定されないが、例えば、金属、紙、バルカナイズド紙、樹脂含浸紙、樹脂である。本実施形態に係る包装容器用の切断刃30は、金属からなる形態を包含する。本実施形態に係る包装容器用の切断刃30は、前述のとおり、切断刃30を形成する歯31,32,33,34,35の配列によって、良好な切断性と安全性とを両立しているため、金属製である形態において、バリの管理が不要となる。また、金属以外のバリが発生しない材質で形成した場合においても、優れた切断性を実現できる。
【0046】
図4は、本実施形態に係る包装容器用の切断刃の先端部区画及び中央部区画の第二形態を示す部分拡大正面図である。本実施形態に係る包装容器用の切断刃40では、中心歯41の歯底の深さが、基準線Lb1の延長線Lb2よりも深いことが好ましい。これによって、中心歯41の歯先角度θ1及び中央大歯43の歯先角度θ2が一層鋭角になり、包装物1への刺し込みが容易となる。また、中央大歯43の歯先43aから歯底までの長さが長くなり、包装物1の切断を効率的に行うことができる。したがって、切断初期における包装物1の刺し込みを容易に行い、かつ、切断を効率的に行うことができ、形成された傷をきっかけとして引裂きが伝播することで、包装物1をより小さい力で切断することができる。
【0047】
図5は、本実施形態に係る包装容器用の切断刃の先端部区画及び中央部区画の第三形態を示す概略図であり、(a)はV字状の切断刃の部分拡大正面図、(b)は(a)の破線で囲んだ部分の部分拡大正面図である。本実施形態に係る包装容器用の切断刃50では、中心歯51の歯先51aと中心歯51に隣接する歯53の歯先53aとの間隔W1が、他の隣接しあう歯同士の歯先の間隔W2,W3,W4よりも大きいことが好ましい。中央大歯53の歯を広くとることとなるため、中央大歯53の物理的強度を高めることができ、切断刃50の耐久性を向上することができる。また、中央大歯53の歯先53aから歯底に向かって延びる斜辺の長さが長くなり、包装物1の切断を効率的に行うことができる。
【0048】
他の隣接しあう歯同士の歯先の間隔W2,W3,W4は、中央大歯53と中央大歯53に隣接する小歯54との間隔W2、先端部区画Waに配列する大歯52の歯先52aと小歯54の歯先54aとの間隔W3及び中央部区画Wbに配列する、隣り合う歯55同士の歯先55aの間隔W4である。先端部区画Waに配列する歯51,52,53,54の歯先51a,52a,53a,54aの間隔W1,W2,W3が、中央部区画Wbに配列する歯55の歯先55aの間隔W4よりも大きいことが好ましい。これによって、先端部区画Waに配列する歯数を少なくすることができ、切断初期に要する力をより小さくすることができる。また、先端部区画Waに配列する歯の物理的強度を高めることができ、切断刃50の耐久性を向上することができる。
【0049】
図6は、本実施形態に係る包装容器用の切断刃の先端部区画及び中央部区画の第四形態を示す部分拡大正面図である。本実施形態に係る包装用の切断刃60では、中心歯61の歯底の深さを、基準線Lb1の延長線Lb2よりも深くし、かつ、中心歯61の歯先61aと中央大歯63の歯先63aとの間隔を、他の隣接しあう歯同士の歯先の間隔よりも大きくすることが好ましい。これによって、中央大歯63の歯先63aから歯底までの長さを保持し、包装物1の切断を効率的に行いながら、中央大歯63の耐久性を向上することができる。
【0050】
本実施形態に係る包装容器は、本実施形態に係る包装容器用の切断刃を備える。本実施形態に係る包装容器用の切断刃は、切断刃を形成する歯の配列によって、バリがない状態でも良好な切断性を有し、かつ、歯先が大きく突出した部分がなく、使用者に対する安全性に配慮した形状であるため、使用者は、本実施形態に係る包装容器を用いて、包装物の切断を小さな力で容易に、かつ、安全に行うことができる。
【0051】
第一形態から第四形態では、先端部区画Waに配列する歯を大歯32,42,52,62と小歯34,44,54,64とを、「大歯」、「小歯」、「大歯」・・のように交互に配置したが(図2及び図4〜図6を参照)、本発明はこの配列に制限されない。変形例としては、例えば、「大歯」、「小歯」、「小歯」、「大歯」・・のように、隣接する大歯の間に2本の小歯を配列する形態である。また、大歯32,42,52,62と小歯34,44,54,64との中間の歯高を有する「中歯」を「大歯」と「小歯」との間に配置する形態である。
【0052】
第一形態から第四形態では、切断刃30,40,50,60が、中心線Cを対称軸とする線対称に形成されている形態を示したが、これに限定されず、中心線Cから左右非対称に形成することができる。
【0053】
図1の包装容器100では、切断刃30が中心線C上に略V字の頂点Tを有するV字状に配列する複数の歯を備える形態を示したが、これに限定されず、略V字の頂点Tを中心線Cに対して、右又は左にずらして複数の歯を配列することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、本発明に係る包装容器用の切断刃は、バリがない状態でも良好な切断性を有し、かつ、他の歯の歯先と比較して大きく歯先が突出した部分がないため、使用者に対する安全性に配慮した形状であるため、例えば、食品などの包装容器として使用されるラップフィルム、アルミニウム箔、紙シート又は荷崩れ防止など梱包資材として使用されるラップフィルムの包装容器として好適である。
【符号の説明】
【0055】
1 包装物
5 ロール
10 容器本体
11 本体底面板
12 本体前面板
12a 本体前面板の底辺
13 本体後面板
14 本体左側面板
15 本体右側面板
20 蓋体
21 天面板
22 蓋前面板
22a 蓋前面板の下端辺
24 蓋左側面板
25 蓋右側面板
30,40,50,60 切断刃
30a 切断辺
31,41,51,61 中心歯
31a,41a,51a,61a 中心歯の歯先
32,42,52,62 大歯
32a,42a,52a,62a 大歯の歯先
33,43,53,63 中央大歯
33a,43a,53a,63a 中央大歯の歯先
34,44,54,64 小歯
34a,44a,54a,64a 小歯の歯先
35,45,55,65 中央部区画に配列する歯
35a,45a,55a,65a 中央部区画に配列する歯の歯先
35b 中央部区画に配列する歯の歯底
100 包装容器
T 略V字の頂点
Wa 先端部区画
Wb 中央部区画
Wc 両端部区画
C 中心線
La1 仮想線
La2 仮想線の延長線
Lb1 基準線
Lb2 基準線の延長線
Lc 中央大歯歯先線
Ld 小歯歯先線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装物を巻回したロールを収容する包装容器に取り付けて、前記ロールの軸方向に沿って略V字状に配列する複数の歯を備え、前記ロールから引き出された包装物を切断する包装容器用の切断刃において、
前記略V字の頂点を含む先端部区画と該先端部区画の両端に連接する一対の中央部区画とを有し、
前記先端部区画に配列する歯が、該先端部区画の中心に位置する中心歯と、大歯と、該大歯の歯高よりも小さい歯高の小歯と、を有し、
前記中央部区画に配列する歯の歯先が、略V字状の仮想線上にあり、
前記先端部区画に配列する歯の歯先が、前記仮想線の延長線上又は該延長線よりも各歯の歯底側にあることを特徴とする包装容器用の切断刃。
【請求項2】
前記中心歯の歯底の深さが、前記中央部区画に配列する歯の歯底を結ぶ基準線の延長線よりも深いことを特徴とする請求項1に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項3】
前記中心歯の歯先と該中心歯に隣接する歯の歯先との間隔が、他の隣接しあう歯同士の歯先の間隔よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項4】
前記先端部区画の幅が、10〜60mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の包装容器用の切断刃。
【請求項5】
金属からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の包装容器用の切断刃。
【請求項6】
前記中心歯の両脇が、前記大歯であり、
前記中心歯の歯先が、前記中心歯を挟む前記大歯の歯先を結ぶ中央大歯歯先線よりも歯底側にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の包装容器用の切断刃。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の切断刃を備えることを特徴とする包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−82003(P2012−82003A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231921(P2010−231921)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】