説明

包装容器用蓋体

【課題】内部に物品を収容する容器本体に被着させる包装容器用蓋体について、容器本体の内部に収容した食品が見にくくなる不都合を抑えつつ蓋体自体を補強するための補強構造を蓋体に設けること。
【解決手段】平面視で水平方向へ広がる長方形状の天面部110と、その天面部110の各辺から下方に垂下し蓋体100に高さをもたらす側面部120と、その側面部120の下端に設けられる容器本体200への接合部130とを有し、内部に物品を収容する容器本体200に被着させる包装容器用蓋体100であって、側面部120が交わる角部150の中央に、上端から下端にわたり蓋体内部側に溝状に凹む角部凹み溝160を備えることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は販売されて持ち帰り可能な食品を収容する包装容器の蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストアやスーパーマーケット等において利用され、販売用の魚や肉、お総菜等の食品を収容する包装容器は、食品を収容する容器本体と、その容器本体に被着させる蓋体とがヒンジで繋がれた一体品として合成樹脂シートで成形されている。こうした例として、例えば、特開平10−264952号公報(特許文献1)に包装用容器の発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−264952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
包装容器のうち、食品を収容する容器本体部分は、持ち運び等の際に潰れなどの変形を防止するために、縦横に様々なリブ(凹凸)を形成することでその強度を高めている。しかしながら、蓋体部分についても容器本体と同じようにリブを形成しようとすると、その凹凸によって内部に収容された食品が見えにくく、また見栄えが悪くなるといった不都合がある。そのため、蓋体については十分な補強をすることができず、蓋体と容器本体の接合部分を嵌合構造として、その嵌合構造を蓋体の全周に設けることで容器本体と一体とした補強効果を得ていた。
しかしながら、こうした嵌合構造による蓋体の補強は、容器本体とともに外力が加わるような場合については補強効果を期待できても、蓋体の上部から加わるような容器本体には直接作用しない外力が加わるような場合に、蓋体を十分に保護することが難しかった。
【0005】
そこで本発明は、内部に収容した食品が見にくくなる不都合を抑えつつ蓋体自体を補強するための補強構造を蓋体に設けることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、内部に物品を収容する容器本体に被着させる包装容器用蓋体であって、平面視で水平方向へ広がる長方形状の天面部と、その天面部の長辺または短辺から各々下方に垂下し蓋体に高さをもたらす長手側面部または短手側面部と、その両側面部の下端に設けられる容器本体への接合部とを有し、長手側面部と短手側面部が交わる角部の中央に、上端から下端にわたり蓋体内部側に溝状に凹む角部凹み溝を備える包装容器用蓋体を提供する。
【0007】
平面視で水平方向へ広がる長方形状の天面部と、その天面部の長辺または短辺から各々下方に垂下し蓋体に高さをもたらす長手側面部または短手側面部と、その両側面部の下端に設けられる容器本体への接合部とを有する蓋体について、長手側面部と短手側面部が交わる角部の中央に、上端から下端にわたり蓋体内部側に溝状に凹む角部凹み溝を備えたため、シート材から形成される蓋体の強度を高めることができる。また、強度が高まることから、原材料となるシート材の厚みを薄くすることができ、コストダウンを実現することができる。
【0008】
また、天面部が第1天面部と第2天面部とを有し、側面部が第1側面部と第2側面部とを有する包装容器用蓋体であって、第1側面部は、第1天面部の周縁から下方に垂下して第2天面部に至る側面部であり、第2天面部は、第1側面部の下端からさらに水平方向へ広がり第2側面部に至る天面部であり、第2側面部は、第2天面部の周縁から下方に垂下して接合部へ至る側面部であり、第2天面部にも蓋体内部に向かって凹む凹み溝を設けて、この凹み溝と第1側面部に設けた凹み溝および第2側面部に設けた凹み溝を連通させた前記角部凹み溝を備える請求項1記載の包装容器用蓋体を提供する。
【0009】
側面部の一部に天面部のような水平部分(段部)を有するような形状であっても、このような水平部分を含めて側面部の上端から下端にわたり蓋体内部側に溝状に凹む角部凹み溝を設けることができ、こうした一連の角部凹み溝を設けることで蓋体を補強することができる。そして、側面部の一部に段部を有することから角部凹み溝を構成する凹み溝が凹凸を形成するので、単調な凹み溝とする場合に比較してさらなる補強効果を発揮することができる。
【0010】
角部には蓋体内部側に凹んだ弧状に形成される角部側面部を設け、この角部側面部の中央に角部凹み溝を備えることとすることができる。
蓋体内部側に凹んだ弧状に形成される角部側面部を角部に設け、その角部側面部の中央に角部凹み溝を備えたため、角部凹み溝が外力に抗するだけでなく、この角部側面部でも外力に抗するため、蓋体の補強効果をより高めることができる。
【0011】
角部凹み溝の形状は、その溝縁から蓋体内部側に凹むだけでなくその溝底も蓋体内部側に凹むものとしている。これに対して、溝縁からは蓋体内部側に凹んでいても溝底では蓋体外部側に凹ませる形状もあり得る。しかしながら、角部凹み溝の溝底を蓋体外部側に凹ませると、蓋体の変形方向と溝底の膨出方向とが一致してしまい、蓋体補強効果が弱まるおそれがある。そのため、溝底も蓋体内部側に凹む形状とすることが好ましい。
【0012】
角部にはその中央に設けた上記の角部凹み溝以外の凹部を有しないことが好ましい。
上記角部凹み溝以外の凹み溝を含む凹部や凸部等を角部に設けると、その部分から変形し易くなって補強効果が弱まるからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の包装容器用蓋体によれば、外部からの圧力を受けても変形し難い補強構造を有し、見栄えを損なわず、また包装容器の重ね置きが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】蓋体を備えた包装容器の平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】角部凹み溝の拡大平面図である。
【図4】図1の領域R1の拡大図である。
【図5】図2の領域R2を上下逆転させた拡大図である。
【図6】図4のSA−SA線断面図である。
【図7】蓋体への変形形態を備える包装容器の図1相当の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には補強構造を備える蓋体100と食品を収容する容器本体200がヒンジ300で繋がり一体品となった包装容器1の平面図を、図2にはその側面図を示す。
これらの図面で示すように、蓋体100や容器本体200、ヒンジ300は一体であるため、合成樹脂製のシート材から真空成形や圧空成形等の熱板成形の手段を利用して成形できる。蓋体100は中味の食品が見えやすいように透明で曇りにくい熱可塑性樹脂材などの合成樹脂材で形成することが好ましく、そのため、容器本体200も透明としている。
【0016】
蓋体100や容器本体200の材質には、例えば、ポリスチレンやポリスチレンを主体とする共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン、オレフィンを主体とする共重合体等のポリオレフイン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、その他の熱成形可能な各種の合成樹脂が挙げられる。
こうしたシート材は、単層構造であっても積層構造であっても良く、また発泡シートであっても良いが、後述する所定の角部凹み溝160を精密形成するために、非発泡の単層シート材が好ましい。
【0017】
包装容器1を構成する各部位をさらに詳しく説明する。
蓋体100は、食品が収容された際にその上方を覆うように平面視で水平方向に広がりを持つ天面部110と、その長方形状の天面部110の各辺から下方に垂下して蓋体100に高さをもたらす側面部120と、その側面部120の下端に設けられ、容器本体200と接合する接合部130とを有し、さらに接合部130から水平方向に鍔状に広がるフランジ部140とを有している。特に接合部130は、断面釣形状に形成されており容器本体200に設けた後述する蓋体受け部230と嵌合した状態で被着されるようになっている。また、フランジ部140の角には、蓋体100を開ける際に容器本体200から分離させ易いように、容器本体200側のフランジ部240との間に空隙を形成するプチドーム141が形成されている。
なお、側面部120は、天面部110の形状に対応させて、天面部110の長辺110a,110aから垂下する長手側面部120a,120aと、天面部110の短辺110b,110bから垂下する短手側面部120b,120bに分けられる。
【0018】
長手側面部120aと短手側面部120bが交わる部分が角部150を形成する。図1で示す形態では、蓋体内部側に凹んだ弧状に、換言すれば、プチドーム141を中心とする弧状に角部150が形成されて角部側面部151となっている。
そして、角部150(角部側面部151)の中央には、角部150の上端から下端にわたり蓋体内部側に溝状に凹む角部凹み溝160を形成している。
この角部凹み溝160の上方から見た拡大図を図3に示すが、溝を形成する入り口部分だけでなく溝底もまた蓋体内部側に凹んでいる。換言すれば、角部凹み溝160は蓋体100の外部から内部に向かって凸状に形成されている。
【0019】
角部凹み溝160の溝底部分の幅W1は、0.5mm〜3.0mmとすることが好ましい。0.5mmより狭いと成形が困難であり、3.0mmより広いと蓋部100の補強効果が低いからである。また、溝縁部分の幅W2は、1.0mm〜5.0mmとすることが好ましい。1.0mmより狭いと成形が困難であり、5.0mmより広いと溝縁部分が弱くなるからである。そして、角部凹み溝160の奥行き(深さ)Dは、1.0mm〜5.0mmとすることが好ましい。1.0mmより浅いと蓋体100の補強効果が低く、5.0mmより深いと成形が困難であり、また収容する食品に接触する可能性があるからである。
なお、角部150には、この中央に設けた角部凹み溝160以外には凹部や凸部を設けないことが好ましい。角部150に関しては中央に角部凹み溝160を一つ設けることが蓋体100の補強上効果が高く、それ以外の凹部や凸部を設けると蓋体100の補強効果が減少するおそれがあるからである。
【0020】
ところで、天面部110は、一般的には平板状であるが、部分拡大図である図5で示すように段部を設ける構成とすることができる。具体的には、平板状の第1天面部111と、その第1天面部111の周縁から一段下がりさらに水平方向へ広がる第2天面部112とを有している。
また、側面部120も、第1天面部111の周縁から下方に垂下して第2天面部112に至る第1側面部121と、第2天面部112の周縁から下方に垂下して接合部130へ至る第2側面部122とを有している。
すなわち、図4で示すように、第1天面部111と第2天面部112はともに天面部110の一部であり、第1側面部121と第2側面部122はともに側面部120の一部である。
【0021】
そして、角部凹み溝160を分断する図6の断面図で示すように、角部150には、第2天面部112にも蓋体内部に向かって凹む第2天面部凹み溝161を設けて、この凹み溝と第1側面部121に設けた第1側面部凹み溝162および第2側面部122に設けた第2側面部凹み溝163を連通させた角部凹み溝160となっている。
【0022】
本実施形態では、図1等で示すように、角部凹み溝160を略長方形状の天面部110の四隅に設けている。蓋体100を十分に補強するためにはこうした角部150の全てに角部凹み溝160を設けることが好ましいが、場合によっては、いくつかの角部160に設けることができる。
そして、本実施形態では平面視で長方形状の天面部110を有する蓋体100としたが、天面部110の平面形状は長方形状に限定されることはなく、多角形状の天面部を有するような場合にはその角部に角部凹み溝を備えることで同様の効果を発揮することができる。
【0023】
角部150には、蓋体内部側に凹む弧状の角部側面部151を形成していたが、平板状の角部側面部としたり、蓋体外部側に凹む弧状の角部側面部152とすることも可能である。図1で示す蓋体100のヒンジ300側の角部150には、蓋体外部側に凹む弧状の角部側面部152としている。但し、蓋体100を補強する観点からは、角部側面部152とするよりは、角部側面部151とする方が好ましい。
あるいはまた、角部150に角部側面部151を設けず、長手側面部120aと短手側面部120bとが線状に交差する角部とすることも好ましい形態である。
【0024】
包装容器1を構成するもう一方の部分である容器本体200は、食品を収容する底部210と、容器本体200の開口縁から底部210に至る壁部220と、その壁部220の上端に設けられ、蓋体100と接合する蓋体受け部230と、蓋体受け部230から水平方向に鍔状に広がるフランジ部240とを有している。
そして、底部210または底部210から壁部220にかけて容器本体200を補強するリブ部270が形成されている。
ヒンジ300は、蓋体100と容器本体200とを繋いでいる。
【0025】
包装容器1は、蓋体100の角部150に角部凹み溝160を設けたため、蓋体100に外側からの押圧力が加わっても変形しにくく補強されている。また、容器本体200もリブ部270を設けて補強されている。したがって、この蓋体100を備える包装容器1は、変形しにくく、重ね置きしても潰れにくいため、収容する食品の見栄えを良くし、食品を傷つけることなく鮮度を保つことができる。
【0026】
また、蓋体100が補強されるため、従来よりも肉厚の薄いシート材を原材料として用いることができる。例えば、強度を従来品と同程度としたときに、13%〜16%程度シート材厚を薄くすることができる。具体的な一例として、二軸延伸ポリスチレンシート材では、0.15μm〜0.21μm厚とすることが可能である。
【0027】
蓋体内部側に凹む弧状に角部150を形成する角部側面部151を設けたため、蓋体100に加わる外力に対して蓋体100が膨らむ方向に変形し難い。そのため、角部凹み部160の形成と相俟って蓋体100に対する補強効果をより高めることができる。
【0028】
上記の蓋体100については、次のような変形を施すことも可能である。
蓋体100への補強をより強力に行う場合には、容器本体200にリブ部270を設けているように、蓋体100の天面部110や側面部120にも凹凸を形成する種々の大きさ、形状のリブ部170を設けることができる。図7で示す包装容器2では、天面部100や側面部120にもリブ部170を設けて蓋体100を補強している。しかしながら、この場合にも角部150には角部凹み溝160以外の凹凸部分となるリブ部を設けていない。
【0029】
多量に食品を詰めたことで蓋体100が容器本体200と十分に嵌合せず、輪ゴムで蓋体100を閉めるような場合に、その輪ゴムが動かないようにするための留め具係止溝180を蓋体100の長手側面120aの中央部分に設けることができる(図7参照)。
【0030】
なお、これらの実施形態や変形例で示した例は例示であり、こうした形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨に反しない任意の変更形態を含むものである。即ち、上記実施形態で示した一部の構成を含まなかったり、別の公知の構成を含んだり、代替したりしている場合も本願発明の範囲に含まれる。
例えば、図1で示したプチドーム141を設けない態様とすることもでき、また図7で示すように、蓋体100側のフランジ部140に設ける代わりに容器本体200側のフランジ部240に設ける態様とすることもでき、こうした種々の変更形態も当然本願発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1、2 包装容器
100 蓋体
110 天面部
110a 長辺
110b 短辺
111 第1天面部
112 第2天面部
120 側面部
120a 長手側面部
120b 短手側面部
121 第1側面部
122 第2側面部
130 接合部
140 (蓋側)フランジ部
141 プチドーム
150 角部
151,152 角部側面部
160 角部凹み溝
161 第1天面部凹み溝
162 第1側面部凹み溝
163 第2側面部凹み溝
170 リブ部
180 留め具係止溝
200 容器本体
210 底部
220 壁部
230 蓋体受け部
240 (本体側)フランジ部
270 リブ部
300 ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に物品を収容する容器本体に被着させる包装容器用蓋体であって、
平面視で水平方向へ広がる長方形状の天面部と、その天面部の長辺または短辺から各々下方に垂下し蓋体に高さをもたらす長手側面部または短手側面部と、その両側面部の下端に設けられる容器本体への接合部とを有し、
長手側面部と短手側面部が交わる角部の中央に、上端から下端にわたり蓋体内部側に溝状に凹む角部凹み溝を備える包装容器用蓋体。
【請求項2】
天面部が第1天面部と第2天面部とを有し、側面部が第1側面部と第2側面部とを有する包装容器用蓋体であって、
第1側面部は、第1天面部の周縁から下方に垂下して第2天面部に至る側面部であり、
第2天面部は、第1側面部の下端からさらに水平方向へ広がり第2側面部に至る天面部であり、
第2側面部は、第2天面部の周縁から下方に垂下して接合部へ至る側面部であり、
第2天面部にも蓋体内部に向かって凹む凹み溝を設けて、この凹み溝と第1側面部に設けた凹み溝および第2側面部に設けた凹み溝を連通させた前記角部凹み溝を備える請求項1記載の包装容器用蓋体。
【請求項3】
前記角部に蓋体内部側に凹んだ弧状に形成される角部側面部を設け、この角部側面部の中央に前記角部凹み溝を備える請求項1または請求項2記載の包装容器用蓋体。
【請求項4】
前記角部凹み溝の溝底が蓋体内部側に凹んでいる請求項1〜請求項3何れか1項記載の包装容器用蓋体。
【請求項5】
前記角部にはその中央に設けた前記角部凹み溝以外の凹部を有しない請求項1〜請求項4何れか1項記載の包装容器用蓋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−39949(P2013−39949A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178482(P2011−178482)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000158943)株式会社積水技研 (35)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】