説明

包装容器見本表示装置

【課題】 客先で完全なシュミレーションを行うことのできる包装容器見本表示装置を提供可能とする。
【解決手段】 複数の棒体4を上下に移動させることにより立体形状を表示するピンマトリックス部3と、各棒体を電気的手段により上下に駆動する駆動部10、25と、立体形状データに基づき駆動部を制御する制御部20と、周壁と仕切り壁からなる食品包装容器の立体形状をピンマトリックス部において表示するための立体形状データからなる装置において、表示した立体形状を変更する手段を設けるとともに、変更後の立体形状データを記憶する手段21を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食品包装容器の立体見本を表示するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場で大量生産した調理済みの食品を食器に収容し、これを冷蔵や冷凍状態で流通し、店舗で販売する業態が生活にかかせない食品の一分野として普及している(例えば、特許文献1、非特許文献1)。具体的にはコンビエンスストアやスーパーマーケットの店頭で販売される弁当や惣菜類であり、これらにおいては調理済みの食品が周壁と仕切り壁からなる樹脂製の包装用容器に収容されて流通に供されている(特許文献2)。
【0003】
これらは、飲食店で一品づつ調製される料理品と異なり、転々流通したり店頭販売することが可能な「商品」で、食品工場で計数管理のもとに大量生産されるものなので、収容される食品の種類はもとより、その分量においても厳密な均一性が求められる。
【0004】
そのため、既成の包装用容器に合わせて収容される食品の種類や量を決定するのでなく、収容される食品の種類や量に合わせて包装用容器の寸法や形状が決定されることとなる。
【0005】
そこで、包装用容器の製造業者は顧客である食品業者のニーズに応じた包装用容器の試作見本を客先に持ち込んで商談や広告の用に供することが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3544363号公報
【特許文献2】特開2003- 128071号公報
【非特許文献1】インターネットホームページ「とれたてキッチン」http://www.ampm.jp/menu/toretatekitchen/newmenu.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この種の包装用容器は周壁と仕切り壁からなり、内部に仕切り壁と周壁に囲まれた空間や仕切り壁同士に囲まれた空間を有することから空間の寸法や形状において決定しなくてはならない要素が多数有り、製造業者は客先のニーズに応じてアバウトな寸法や形状の試作見本は用意できても、最終的な寸法や形状は客先で実際に食品を収容してシュミレーションしてみなければ決定できなかった。
【0008】
そのため、製造業者は寸法や形状を違えた包装用容器の試作見本を製作して客先に持ち込まなければならず、試作コストが嵩むことはもちろん、多数の試作見本を客先に持ち込む手間も大変であった。また、完全なシュミレーションを行うには膨大な種類の試作見本を用意しなくてはならないが、これは非現実的であるので、勢い用意できる試作見本の種類には限りがあり、完全なシュミレーションを行えないという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は以上の従来技術の問題点に鑑みて創作されたものであり、客先で完全なシュミレーションを行うことのできる包装容器見本表示装置を提供することを目的とする。
【0010】
すなわち、この発明の包装容器見本表示装置は複数の棒体を上下に移動させることにより立体形状を表示するピンマトリックス部と、各棒体を電気的手段により上下に駆動する駆動部と、立体形状データに基づき駆動部を制御する制御部と、周壁と仕切り壁からなる食品包装容器の立体形状をピンマトリックス部において表示するための立体形状データからなる装置において、表示した立体形状を変更する手段を設けるとともに、変更後の立体形状データを記憶する手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2記載の包装容器見本表示装置は制御部への数値データの入力により表示した立体形状を変更可能とするとともに、変更前の数値データと入力した数値データをもとに変更後の立体形状データを生成し、これを記憶することを特徴とする。
【0012】
また、請求項3記載の包装容器見本表示装置は外力により棒体を直接移動させることにより立体形状を変更可能とするとともに、移動された棒体の移動量をセンサにより数値データとして採取し、変更前の数値データと採取した数値データをもとに変更後の立体形状データを生成し、これを記憶することを特徴とする。
【0013】
また、請求項4記載の包装容器見本表示装置はピンマトリックス部により表示されている食品包装容器の立体形状中の仕切り壁と周壁に囲まれた空間、または仕切り壁同士に囲まれた空間の容積を算出して表示する手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明の包装容器見本表示装置は次の特有の効果を奏する。
(1) 複数の棒体を上下に移動させることにより立体形状を表示するピンマトリックス部により食品包装容器の立体形状を表示するので、立体形状をピンマトリックス部において表示するための立体形状データを複数種用意することにより複数種の包装容器見本を表示できるので、従来技術のように寸法や形状を違えた包装用容器の試作見本を製作しなくて済む。そのため、試作見本の製作コストがかからず、客先に多数の試作見本を客先に持ち込む手間が不要となる。
【0015】
(2) 表示した立体形状を変更する手段を設けるとともに、変更後の立体形状データを記憶する手段を設けているので、客先で実際に食品を用いて収容力の試験を行いながら、最適な寸法や形状を完全にシュミレーションすることが可能となり、その結果得られた立体形状データを持ち帰ることができる。
【0016】
(3) 請求項3記載の包装容器見本表示装置によれば、外力により棒体を直接移動させることにより立体形状を変更可能とするとともに、移動された棒体の移動量をセンサにより数値データとして採取し、変更前の数値データと採取した数値データをもとに変更後の立体形状データを生成し、これを記憶することができるので、数値入力によらず指先で立体形状を変更することが可能となり、直感的なシュミレーションが可能となる。
【0017】
(4) 請求項4記載の包装容器見本表示装置によれば、ピンマトリックス部により表示されている食品包装容器の立体形状中の仕切り壁と周壁に囲まれた空間、または仕切り壁同士に囲まれた空間の容積を算出して表示するので、表示した立体形状を変化させながらその際の各空間の容積を把握することができ、形状の変化に伴いどのぐらいの量の食品を収容できるかを正確に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の包装容器見本表示装置の斜視図。
【図2】同上、食品包装容器の立体形状を表示した状態を示す要部の斜視図。
【図3】同上、食品包装容器の立体形状を変更した状態を示す要部の斜視図。
【図4】同上、棒体およびアクチュエータ箇所の要部の斜視図。
【図5】同上、電気回路を示すブロック図。
【図6】この発明の包装容器見本表示装置により立体形状が表示される食品包装容器の斜視図。
【図7】この発明の包装容器見本表示装置により立体形状が表示される食品包装容器の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の包装容器見本表示装置(以下、「表示装置」と称する。)を添付図面に基づいて説明する。図1は表示装置1の外観を示す斜視図である。この表示装置1は上面を開放した筐体2の上部に複数の棒体4を上下に移動させることにより立体形状を表示するピンマトリックス部3を有する。各棒体4は電気的手段により上下に駆動されるもので、図4に示すようにここではアクチュエータ10に棒体4に連続するシャフト5を内挿することにより、アクチュエータにより棒体を上下させる。
【0020】
棒体4はここでは断面矩形のものを採用しているが、断面円形やその他の形状のものであってもよい。アクチュエータ10は内挿したシャフト5を上下させる機能を有するもので、ステッピングモータによるナットの回転によりそれに螺合した螺子溝付きのシャフトを上下動させるものや、電磁石で得られる動力を利用するものの他、圧電型、超音波型、形状記憶合金型、高分子伸縮型などが想定できる。
【0021】
図5はこの発明の表示装置の電気回路を示すブロック図である。図中符号20は駆動ドライバー25を介して各棒体4のアクチュエータ10を駆動する制御装置である。この制御装置はキーボードやタッチパネルからなる入力部23から入力される包装容器見本の各部の寸法の数値データに基づき、各アクチュエータ10を駆動してピンマトリックス部3において寸法通りの包装容器見本の立体形状Kを表示する(図2参照)。
【0022】
この場合、入力された数値データを名称を付して記憶部21に蓄積することにより、次回からは名称を呼び出すことにより瞬時に立体形状Kを表示することが可能となる。また、数値データを外部記憶媒体24に記録することにより、客先に予め表示装置を設置している場合には外部記憶媒体を持っていくだけで商談の対象となる包装容器見本の立体形状を表示することが可能となる。
【0023】
図中符号22はディスプレィからなる表示部である。この発明においては前記の数値入力の際の操作画面としてディスプレィ22を機能させる他、表示された立体形状に関し、仕切り壁と周壁に囲まれた空間、または仕切り壁同士に囲まれた空間の容積を算出してディスプレィに表示する。また、ピンマトリックス部3において表示された立体表示に基づいた寸法、形状の実際の包装容器の姿をディスプレィ上で再現してもよい。また、特に図示しないが、表示結果のハードコピーを出力する印刷装置を設けてもよい。
【0024】
この発明においては、ピンマトリックス部3において表示した包装容器見本の立体形状Kを変更する手段を設けるとともに、変更後の立体形状データを記憶する手段を設けたことを特徴とする。例えば、図6に示すような周壁Y1、仕切りY2、仕切りY3からなる包装容器Yを客先に提案する場合、図2に示すように表示装置1のピンマトリックス部3において、周壁K1、仕切りK2、仕切りK3からなる立体形状Kを表示して、実際に食品を用いて収容力の試験を行う。そして、各部の寸法や形状を変化させることによりシュミレーションを行い、最終的に周壁K1と仕切りK3の間隔S1、S2の比率を図3に示すような比率に変更することが最適と判断した場合、その立体形状データを持ち帰ることにより周壁Y1と仕切りY3の間隔S1、S2の比率を変更した図7に示すような包装容器Yの設計データに反映させることができる。
【0025】
前記の表示した包装容器見本の立体形状の変更は制御部20への数値データの入力により行なうほか、外力により棒体4を直接移動させることにより行なってもよい。後者においては、具体的には指先で棒体4を摘んで上下させるわけだが、この場合は移動された棒体の移動量を位置検出部26のセンサにより数値データとして採取し、変更前の数値データと採取した数値データをもとに変更後の立体形状データを生成し、これを記憶することとなる。
【符号の説明】
【0026】
K 立体形状
1 包装容器見本表示装置
3 ピンマトリックス部
4 棒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の棒体を上下に移動させることにより立体形状を表示するピンマトリックス部と、各棒体を電気的手段により上下に駆動する駆動部と、立体形状データに基づき駆動部を制御する制御部と、周壁と仕切り壁からなる食品包装容器の立体形状をピンマトリックス部において表示するための立体形状データからなる装置において、表示した立体形状を変更する手段を設けるとともに、変更後の立体形状データを記憶する手段を設けたことを特徴とする包装容器見本表示装置。
【請求項2】
制御部への数値データの入力により表示した立体形状を変更可能とするとともに、変更前の数値データと入力した数値データをもとに変更後の立体形状データを生成し、これを記憶する請求項1記載の包装容器見本表示装置。
【請求項3】
外力により棒体を直接移動させることにより立体形状を変更可能とするとともに、移動された棒体の移動量をセンサにより数値データとして採取し、変更前の数値データと採取した数値データをもとに変更後の立体形状データを生成し、これを記憶する請求項1記載の包装容器見本表示装置。
【請求項4】
ピンマトリックス部により表示されている食品包装容器の立体形状中の仕切り壁と周壁に囲まれた空間、または仕切り壁同士に囲まれた空間の容積を算出して表示する手段を設けた請求項1から3のいずれかに記載の包装容器見本表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−58342(P2012−58342A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199277(P2010−199277)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(595155439)伊藤忠プラスチックス株式会社 (10)