説明

包装容器

【課題】輸送時におけるイチゴ等の内容物の損傷を防止する。
【解決手段】箱状の容器本体1と、容器本体1内に装填され、且つ、イチゴ5,5…等の内容物を載置収納するための収納凹部4が複数形成されたトレー2と、容器本体1に開閉可能に設けられた箱状の透明カバー6とから成る包装容器8であって、該透明カバー6の下面開口部に伸縮性フィルムシート7が内容物に弾性的に接触するように張設され、伸縮性フィルムシート7による弾性的な接触圧(弾接力)により、イチゴ5,5…等の内容物の動きを抑止できるように構成した。又、透明パック1の底面には、トレー2の位置ずれを規制すべく突起部3,3を設け、イチゴ5,5…等の内容物の動きを拘束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装容器に関するものであり、特に、損傷を受け易い果物等の内容物を収納するのに好適な包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、損傷を受け易い果物等の内容物、例えば、イチゴを産地から市場等に輸送する場合には、縦振動におけるイチゴに対する衝撃を緩和するために、図5に示すように、合成樹脂製のトレー11にウレタンシート12を敷いて、該ウレタンシート12上に複数のイチゴ13,13…を相互に支え合うようにして、イチゴ13,13…を詰め合わせる。そして、塵埃の混入を防止する目的、並びに、イチゴ13,13…の産地を表示する目的で、薄いセロハンフィルム(図示せず)により覆ってしている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2006−89062
【特許文献2】特開2005−015046
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術は、輸送時の縦振動や衝撃によりイチゴの動きを抑止することができない。このため、隣接するイチゴ同士が接触して、イチゴの表面に擦り傷が発生し易い。又、トレーにウレタンシートを敷いているものの、効果的な衝撃緩衝作用が得難く、トレー自体の強度によりイチゴに当たり傷が生じ易い。
【0004】
更に、外装ケース内にトレーをセットした後に、これを車両等によって輸送しているとき、外装ケースに対してトレー自体が動き易い。この場合、外装ケースの蓋部天面にイチゴが当たって該イチゴに損傷する。
【0005】
また、トレーを外装ケースに対して宙に浮かすような包装方法もあるが、トラック等による輸送においては、縦振動の外に、トラック等の車両の停止、発進又は急ブレーキの繰り返しにより大きな横振動が作用する。このため、前記包装方法は、イチゴの損傷を有効に防止する対策とはなっていない。又、前記包装方法は、輸送中にトランポリン現象を招いて、縦振動及び横振動ともに振動の幅が増加する傾向にあり、イチゴが傷付きやすい状態にある。
【0006】
以上の如く、従来の包装容器においては、輸送時に包装容器に振動や衝撃が作用してイチゴ等の内容物が損傷し、これに起因して内容物の鮮度劣化が早期に進行し、内容物の商品価値を低下させるという問題があった。
【0007】
そこで、輸送時における果物等の内容物の損傷を防止するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、箱状の容器本体と、該容器本体内に装填され、且つ、果物等の内容物を載置収納する収納凹部が複数形成されたトレーと、前記容器本体を施蓋する箱状のカバーとから成る包装容器であって、該カバーの下面開口部に伸縮性フィルムシートを前記内容物に弾接するように張設し、該伸縮性フィルムシートによる弾接力により前記内容物の動きを抑止できるように構成したことを特徴とする包装容器を提供する。
【0009】
この構成によれば、先ず、容器本体内にトレーを装填し、該トレーの収納凹部に果物等の内容物を載置収納した後、前記容器本体をカバーで施蓋すると、該カバーの下面開口部に張設した伸縮性フィルムシートがトレー上のイチゴ等の内容物に弾性的に接触する。そのため、伸縮性フィルムシートによる弾性的な接触圧(弾接力)により内容物が保持拘束される。依って、輸送時に包装容器に振動(縦振動及び横振動を含む)や衝撃が生じても、緩衝作用を発揮しつつ内容物の動きが抑止されるので、内容物同士が接触する恐れがない。
【0010】
請求項2記載の発明は、上記容器本体の底面又は内側面に上記トレーの位置ずれを規制する突起部を設けたことを特徴とする請求項1記載の包装容器を提供する。
【0011】
この構成によれば、容器本体の底面に設けた突起部により、トレーの位置が固定されて該トレーの位置ずれが規制される。依って、輸送時に振動や衝撃が生じた際でも、トレー上の内容物に対する拘束力が更にアップする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明は、包装容器の輸送時、容器本体に振動や衝撃が作用しても、伸縮性フィルムシートによる弾性的な保持力により、緩衝作用を発揮しつつイチゴ等の内容物の動きを抑止できるので、内容物同士の接触による擦り傷を防止することができる。斯くして、擦り傷による内容物の鮮度劣化の進行が遅くなるので、内容物の新鮮な商品価値を長く保持することができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、振動や衝撃によるトレー上の内容物に対する拘束力が更にアップするので、内容物同士の接触による擦り傷を一層確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、輸送時における内容物の損傷を防止するという目的を達成するために、箱状の容器本体と、該容器本体内に装填され、且つ、果物等の内容物を載置収納する収納凹部が複数形成されたトレーと、前記容器本体を施蓋する箱状のカバーとから成る包装容器であって、該カバーの下面開口部に伸縮性フィルムシートを前記内容物に弾接するように張設し、該伸縮性フィルムシートによる弾接力により前記内容物の動きを抑止できるように構成したことにより実現した。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図4に従って説明する。尚、本実施例は、包装容器に収納される内容物としてイチゴを例に挙げて説明するが、振動や衝撃等により損傷を受け易い内容物であれば、イチゴ以外の果物、野菜又は生鮮食品(鶏卵を含む)等に適用することができる。
【0016】
図1は本実施例に係る包装容器の斜視図、図2は図1のA−A線断面図である。両図において、1は透明な硬質の合成樹脂から成る容器本体(以下。「透明パック」という。)であり、該透明パック1の平面視形状は方形に形成されている。図3に示すように、透明パック1は上面開口部を有し、該透明パック1の上面周縁部にはフランジ部1Aが周設されている。更に、透明パック1内には方形のトレー2が装填され、該トレー2は発泡材等の合成樹脂又は紙素材によりモールド成形されている。
【0017】
前記透明パック1の深さは、トレー2の高さよりも所定寸法だけ大に設定されている。又、透明パック1の内側周縁部には、図1及び図3に示すように、台形状、コ字状若しくは円弧状の凹み部1B,1B…が連続的に形成されている。依って、透明パック1にトレー2を装填するとき、或いは、透明パック1からトレー2を取り出す際に、凹み部1B,1B…に指頭を挿入することにより、トレー2の装填又は取り出し作業を容易に実行できる。
【0018】
又、透明パック1の底面には、図2及び図3に示すように、レール状若しくはリブ状に形成された単数又は複数本の突起部(突条部)3が所定間隔を有して設けられている。図示の実施例で突起部3の個数は2本とされ、該突起部3,3は透明パック1の縦方向(長手方向)と平行に延伸している。図2に示すように、突起部3,3はトレー2裏面の凹部を係合支持することにより、トレー2に対して位置固定部として機能する。
【0019】
従って、トレー2は裏面の凹部を突起部3に係合させて透明パック1内にセットすることで、透明パック1底面の所定位置にトレー2が自動的に固定される。このため、パック1に振動や衝撃が作用しても、該透明パック1の横方向にトレー2が動くことが抑止される。
【0020】
図4に示すように、トレー2には複数の収納凹部4,4…が設けられ、該収納凹部4,4…の内面はイチゴ5,5…の外面形状に倣う略カップ状に湾曲形成されている。本実施例では、収納凹部4,4…は3行4列とする合計12個配設されている。又、トレー2は、イチゴ5,5…の種類若しくはサイズに応じて、最適なものに容易に取り替えることができる。
【0021】
図3に示すように、上記透明パック1の一側部には、折曲げ部9を介して透明カバー6が開閉可能に設けられている。該透明カバー6は透明な硬質の合成樹脂から成り、下面開口部を有する箱状に形成されている。而して、透明カバー6を折曲げ部9に沿って透明パック1側に折り曲げて閉じると、図2に示すように、イチゴ5,5…の上側は透明カバー6により施蓋される。
【0022】
図2及び図3に示すように、透明カバー6の下面周縁部にはフランジ部6Aが周設され、該透明カバー6の下面開口部には、所要の適度な弾性及び引っ張り強度を有する伸縮性フィルムシート7が張設されている。伸縮性フィルムシート7の材料としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の材料を採択できる。
【0023】
そのため、箱状の透明カバー6と伸縮性フィルムシート7との間には閉鎖空間部Sが形成され、該閉鎖空間部Sは伸縮性フィルムシート7に対してクッション作用を発生させる。尚、図2では説明の都合上、該伸縮性フィルムシート7の厚さを拡大して図示している。
【0024】
而して、イチゴ5,5…の上側を透明カバー6で施蓋すると、伸縮性フィルムシート7はイチゴ5,5…の上側表面に弾性的に接触する。そのため、伸縮性フィルムシート7による弾性的な接触圧により、イチゴ5,5…は必要最小限の力で拘束されるため、振動や衝撃などを受けても動かないように保持される。
【0025】
次に、上記包装容器8にイチゴ5,5…を詰める作業手順の1例を説明する。先ず、透明パック1内にトレー2を装填してセットする。この場合、トレー2の裏面側凹部を透明パック1の突起部3,3は係合させて装填することにより、透明パック1底面における所定のセット位置にトレー2が自動的に装填固定される。
【0026】
ついで、トレー2の収納凹部4,4…にイチゴ5,5…を載置収納する。然る後、透明カバー6を折曲げ部9に沿って透明パック1側に折り曲げて蓋装し、透明パック1のフランジ部1Aと透明カバー6のフランジ部6Aとをステープル等で綴着する。これにより、図2に示すように、イチゴ5,5…の上側が透明カバー6で施蓋され、イチゴ5,5…の上側表面に伸縮性フィルムシート7が弾性的に接触する。
【0027】
叙上の如く本発明によると、透明カバー6の下面開口部に伸縮性フィルムシート7を張設し、該透明カバー6の閉鎖時に伸縮性フィルムシート7がトレー2上のイチゴ5,5…に弾性的に接触するため、この弾性的な接触圧によりイチゴ5,5…が安定して保持拘束される。依って、輸送時に包装容器8に振動や衝撃が生じても、クッション作用を発揮しつつイチゴ5,5…の動きが抑止されるので、イチゴ5,5…同士が接触する恐れがない。
【0028】
斯くして、イチゴ5,5…同士の接触による該イチゴ5,5…の擦り傷を防止できるので、擦り傷によるイチゴ5,5…の鮮度劣化が効率良く阻止され、該イチゴ5,5…の商品価値を長く保持することができる。
【0029】
又、透明パック1の底面に突起部3を設け、該透明パック1内のトレー2の位置ずれを規制できるようにしたので、透明パック1に振動や衝撃が作用した場合、伸縮性フィルムシート7による弾性的な保持拘束力に加えて、突起部3による位置固定力によってもイチゴ5,5…の動きを拘束できる。
【0030】
そのため、より柔らかいイチゴ5,5…であっても該イチゴ5,5…の損傷を一層確実に防止でき、以て、輸送時におけるイチゴ5,5…の品質の保持・安定性がアップする。更に、本発明の包装容器8を使用して包装ケースに包装する時に、包装容器8の積み重ねが可能になるので、包装ケースとしては一般的な段ボールを使用することが可能になり汎用性が向上する。
【0031】
更に又、本発明の包装容器8は、イチゴ5,5…の詰め作業と同様に、透明パック1へのトレー2の装填作業を迅速に行うことができ、緩衝シートを載置する必要がなく、従って、従来のトレータイプの組み立て作業と比べると、作業工程が減少して生産効率が向上する。
【0032】
上記実施例では、包装容器の内容物の具体例としてイチゴを挙げたが、一般に、本発明の包装容器は、産地直送の果物などの生鮮食品用収納容器として使用した場合、1種類のフルテクター(容器)で、果物などの産地若しくは玉数の違いに関わらず、種類や規格の異なる全てのトレーにも対応可能になる。又、トレーは内容物の種類若しくはサイズに応じて、最適なトレーに容易に取り替えることができる。
【0033】
本発明の伸縮性フィルムシートは、様々なサイズ若しくは種類の内容物を弾性的に押圧して、該内容物を固定的に保持できる。特に、伸縮性フィルムシートと透明カバーの天面との間に閉鎖空間を設けたことにより、伸縮性フィルムシートから内容物に作用する保持拘束力が常に必要最小限に自動調整される。その結果、輸送中に大きな振動や衝撃が作用しても、内容物の鮮度劣化をより効果的に抑制することができる。
【0034】
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例を示し、包装容器を上方から見た斜視図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】一実施例に係る包装容器の透明カバーを開放したとき状態を説明する斜視図。
【図4】一実施例に係るトレーを示す平面図。
【図5】従来例に係る包装容器を示す斜視図。
【符号の説明】
【0036】
1 透明パック(容器本体)
2 トレー
3 突起部
4 収納凹部
5 イチゴ(内容物)
6 透明カバー
7 伸縮性フィルムシート
8 包装容器
9 折曲げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の容器本体と、該容器本体内に装填され、且つ、果物等の内容物を載置収納する収納凹部が複数形成されたトレーと、前記容器本体を施蓋する箱状のカバーとから成る包装容器であって、該カバーの下面開口部に伸縮性フィルムシートを前記内容物に弾接するように張設し、該伸縮性フィルムシートによる弾接力により前記内容物の動きを抑止できるように構成したことを特徴とする包装容器。
【請求項2】
上記容器本体の底面又は内側面に上記トレーの位置ずれを規制する突起部を設けたことを特徴とする請求項1記載の包装容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−168083(P2010−168083A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13658(P2009−13658)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)農林水産省「平成20年度新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(506100990)日本トーカンパッケージ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】