説明

包装容器

【課題】合成樹脂製の包装容器の口元に切削孔を設けることなくその口元に空気を通すことになる部分を包装容器の成形で一体にて得られるようにし、汎用品のキャップを用いて口元の閉鎖を行なうようにしたボトル容器においても、容器内部から外部への空気の流通を可能にして、容器変形やキャップ取り外し時の内容物の吹き出しを防止する。
【解決手段】キャップが被せられる口元2の内側に、口元2の天面5から容器内方に向けて凹溝4を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装容器、特にその包装容器の口元にキャップを被せたときに容器内部を密封せずに容器内部の空気などを容器外に逃がすことができるようにした包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料などの液体物や各種薬剤などの粉体物を合成樹脂成形品であるボトルタイプの包装容器に収容し、その包装容器の口元にキャップを被せた商品形態とすることが多く行なわれている。
このようにキャップを被せ付けた商品形態とする場合、一般的にキャップで包装容器の口元を閉じているが、包装容器を置いた場所の温度変化により内部の空気圧力が変化したり、充填した内容物がガスを発生させるものであればやはり内部の気体圧力を変化させ、その影響により包装容器が変形して外観を大きく損なうことがある。
【0003】
包装容器の口元をキャップなどで覆った状態でも容器の内部から外に向けて空気が抜けるようにするために、口元に嵌め付ける中栓に、その口元の外周面と内周面とに周方向に亘って接触する突条を設けながらも、前記突条の一部分に溝を設けて、口元と中栓との間に空気が通る通路を形成するようにした技術が提案されている(特許文献1)。
【0004】
上記技術は包装容器の口元に中栓を押し付けるように被せ付けてその口元を閉じるものであるが、その他に、包装容器の口元の外周部分に外ネジを設けてキャップなどの閉鎖部材をネジ付けて閉鎖するボトルタイプの包装容器も多く流通している。
このようなキャップをネジ付けて口元を閉じる包装容器についても、上述したように内容物から発生したガスによって内部の気体圧力が高くなっている場合、そのキャップを緩める操作をすると、ガスを含む空気が内部から急激に抜け出すことがあり、内容物の液体や粉体も空気とともに吹き出され、包装容器を取り扱っている人の手元や衣服を汚す可能性がある。また、上述のように容器内部の気体圧力の変化に伴なって容器の形状が変化してしまうこともある。
【0005】
ネジ付けタイプの合成樹脂製のキャップと口元の外周面に上記外ネジを配した合成樹脂製の包装容器との組み合せとしたボトル製品では、キャップに、通常の密封性が確保できるように成形された汎用品を採用することも多く、これによってボトル製品のコストダウンが図れる。
そのため、合成樹脂製の包装容器の方で、容器内部の空気圧力の変化による変形や開栓時の内容物の吹き出しを防止することが望まれていて、従来では、図4に示すように合成樹脂製の包装容器1における口元2に、その口元2の肉厚方向に貫通する透孔aを開け、汎用品であるネジ付けタイプのキャップを口元にネジ付けた場合でも、透孔aを介して容器内部から容器外部に通じる空気の通路を確保するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04−086751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このように合成樹脂製の包装容器の口元に貫通する透孔を設ける場合、包装容器が成形された後で作業員が加工装置を利用して透孔を削り開ける後加工が必要となり、包装容器の製造コストを押し上げてしまう問題がある。
また、削りくずが容器内に入り込むと、後工程で充填される液体や粉体に混じってしまう可能性がある。そのため、削りくずを排除する目的で孔の切削後に圧搾空気を容器内に流し込んで清浄にする作業も必要になっていた。
そこで本発明は上記事情に鑑み、合成樹脂製の包装容器の口元に切削孔を設けることなく、容器内部から容器外部にかけて気体が移動できる部分を包装容器の成形で一体にて得られるようにすることを課題とし、上記汎用品のキャップを用いて口元の閉鎖を行なうようにしたボトル製品においても、容器内部と容器外部との間で空気が通るようにして、容器変形や開栓時の内容物の吹き出しを防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、キャップが被せられる口元の内側に、口元の天面から容器下方に向けて凹溝が設けられていることを特徴とする包装容器を提供して、上記課題を解消するものである。
また、本発明では、上記口元の内周面には、口元の内部に嵌め入れるキャップの嵌入部との接触面が周方向に設けられていて、上記凹溝の下端部は前記接触面の下端より下方に位置しているものである。
また、本発明では、上記凹溝の上端部の一部分が、上記口元の天面におけるキャップのコンタクトリングとの接触位置より口径方向での外方に位置しているものとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
合成樹脂製の包装容器の口元にネジ付けて閉じる汎用品のキャップは、そのキャップの内側にあるインナーリングなどの嵌入部が口元の内側に嵌め入れられるようになっていて、その嵌入部が口元の内周面に接触することで容器内部を密封するが、請求項1の発明によれば、口元の内側に凹溝が設けられているため、キャップを被せ付けても、嵌入部と口元との間において凹溝の部分で空気が流れ易くなる。よって、容器内部と容器外部との間では、この凹溝を介して空気が流れる通路が簡単に確保でき、容器の変形や開栓時の空気の吹き出しを防止できる。そして、構成が簡単であるため、包装容器の成形時に際してこの凹溝も設けることができ、包装容器、強いてはボトル製品の製造コストを引き上げない。
【0010】
請求項2の発明により、口元にキャップを被せ付ければ、キャップの嵌入部と口元との間に凹溝による空気の通路が形成され、容器内部と容器外部との間でこの凹溝を介して空気がスムーズに流れるようになる。
【0011】
ネジ付けして口元に被せ付けるキャップは、容器の内部からの収容物が口元の外周西側に漏れ出るのを口元の天面の位置で抑えるようにするために、口元の天面に当接するコンタクトリングを有していて、このコンタクトリングを有することは汎用品のキャップに限られるものではない。
そこで請求項3の発明によれば、凹溝の上端部の一部分が、上記口元の天面におけるキャップのコンタクトリングとの接触位置より口径方向での外方に位置しているので、ネジ付けるキャップにコンタクトリングが設けられていても、凹溝の部分で空気が流れ易い通路が得られ、容器の変形や開栓時の空気の吹き出しを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る包装容器の一例を示す説明図である。
【図2】一例における凹溝を断面で示す説明図である。
【図3】他の実施の例を示す説明図である。
【図4】従来の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに本発明を図1から図3に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明における合成樹脂製の包装容器1の口元2には、口元2の内周面3の一部に凹溝4を設けている。この凹溝4は、図1に示すように口元2の天面5の位置を上端部4aとして容器内方に向けて延設されている。
また、口元2の外ネジに螺合して被せ付けるキャップbの嵌入部cが接触する接触面6が、この口元2の内周面3の周方向に設けられている。キャップの嵌入部cは、例えばキャップbの高さ方向に或る程度の長さを有するインナーリングであり、前記接触面6も口元高さ方向において口元2の天面高さ位置を上端部6aとし、その上端部6aから下方に所定寸法で離れている高さ位置を接触面6の下端部6bとしている。
【0014】
口元2の内側は、口元2の天面5から口元2の基部の高さ位置まで成形型(ブロー成形である場合にはノズルが口元の天面及び内側の成形型となる)によって形成され、定められた形状を呈している。そして接触面6の上記下端部6bは、口元2の内周面3の下端部より上方の位置としている(図2参照)。
さらに、上記凹溝4も口元2の内面を成形する成形型によって形成されたものであり、凹溝4の下端部4bは前記接触面6の下端部6bより下方に位置している。
【0015】
このように、凹溝4の上端部4aが口元2の天面5に位置し、凹溝4の下端部4bが上記接触面6の下端部6bより下方に位置していることから、キャップbのインナーリング(嵌入部c)が口元2の内周面3に接しても、図2に示すように凹溝4が容器内部から口元2の天面5に達する通路が形成され、この凹溝4の部分を介して容器の内部の空気が口元2の天面5の部分に達し、その天面5の部分から口元2の外周の外ネジ部分とキャップの内ネジ部分との間を通って容器外に出ることが可能となる。
そのため、キャップを被せ付けて口元2が閉じられた包装容器1の内部の空気の圧力が仮に高まったとしても、内部の空気が上記凹溝4、口元2の天面の部分、口元2の外ネジとキャップbの内ネジとの間を徐々に通って抜け出るようになって、キャップを開くときに急激に空気が吹き出るということを簡単に防止できる。また、逆に内部の空気が外気圧より下がる傾向になり易い場合でも、口元2の外ネジとキャップbの内ネジとの間、口元2の天面5の部分、凹溝4の順に外部から空気が入り込むようになり、容器の変形を防止する。
キャップbにおいて内部にコンタクトリングdを有していて、図2に示すように口元2の天面5にそのコンタクトリングdを当接させてキャップbが口元2を閉じる場合もあるが、コンタクトリングdの天面5に対する当接は、口元2の内面を伝って上がってくる内容物(特に収容物が液体の場合)を、天面5の部分から口元2の外周面(外ネジ側)に伝わらないようにする目的のものであり、コンタクトリングd自体の天面5に対する当接度合いは、空気の流れを遮断するほどのものではない。
よって、キャップbにコンタクトリングdが設けられていたとしても、上述した容器内部からの空気の逃がしや外部からの空気の入り込みは行なえる。
【0016】
キャップbの内側にコンタクトリングdが設けられている場合、容器内から容器外へ、また、容器外から容器内へと空気が移動するものの、その空気の移動がスムーズに行なわれない場合がある。本実施の形態ではこの点についても考慮されている。本実施の形態では、コンタクトリングdを有するキャップbが口元2にネジ付けられて、そのコンタクトリングdが口元2の天面5に当接するようになる場合でも、スムーズな空気の流れが確保できるように構成されているものである。
具体的には、図2に示されているように、凹溝4の上端部4aの一部分が、天面5におけるコンタクトリングdとの接触位置7より口径方向での外方に位置している。これによって、天面5にコンタクトリングが当接したとしても、凹溝4の上端部4aの一部分は、コンタクトリングdの外方側であって、キャップbの内ネジと口元2の外ネジとの間に通じる状態となり、容器内から容器外への空気の流れや、容器外から容器内への空気の流れがスムーズになる。
【0017】
上述した凹溝4は口元2の周方向での幅が一定の縦の溝としているが、本発明ではこの例に限定されるものではない。例えば図3に示すように、口元2の高さ方向での上方に向けて徐々に幅が広がるように、上端部4aを広幅部4cとし下端部4bを狭幅部4dとして、内容物が凹溝4に入り難くするようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0018】
1…包装容器
2…口元
3…口元の内周面
4…凹溝
4a…上端部
4b…下端部
4c…広幅部
4d…狭幅部
5…口元の天面
6…接触面
6a…接触面の上端部
6b…接触面の下端部
7…コンタクトリングとの接触位置
b…キャップ
C…キャップの嵌入部
d…コンタクトリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップが被せられる口元の内側に、口元の天面から容器下方に向けて凹溝が設けられていることを特徴とする包装容器。
【請求項2】
上記口元の内周面には、口元の内部に嵌め入れるキャップの嵌入部との接触面が周方向に設けられていて、上記凹溝の下端部は前記接触面の下端より下方に位置している請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
上記凹溝の上端部の一部分が、上記口元の天面におけるキャップのコンタクトリングとの接触位置より口径方向での外方に位置している請求項1または2に記載の包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−173687(P2010−173687A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18060(P2009−18060)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】