説明

包装容器

【課題】本発明の目的は、ラップフィルムを所定の長さに引き出して切断した後、フィルム端の包装容器の内部への巻き戻しをより確実に防止する包装容器を提供することである。
【解決手段】本発明に係る包装容器100は、自己密着性を有するラップフィルム1がロール状に巻回されたフィルムロール40を収容する、上面が開口した容器本体10と、本体後面板13の上端辺に回動可能に連接される蓋体20と、フィルムロールから繰り出され、本体前面板と蓋前面板22との間から引き出されたラップフィルムを切断する蓋前面板に設けられた切断手段30と、を備える包装容器において、蓋前面板には、蓋前面板の表面よりも本体前面板側に隆起した蓋エンボス部70が設けられ、本体前面板のうち、蓋エンボス部と当接する領域には、切断後のフィルムロール側のラップフィルム端を保持するフィルム保持部50が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻回されたラップフィルムを収容する包装容器に関し、特に、ラップフィルムを所定の長さに引き出して切断した後、フィルム端の包装容器の内部への巻き戻しを安定的に防止する包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ラップフィルムを収容する包装容器は、通常、円筒状の紙管にロール状に巻回されたフィルムロールを収容する容器本体と、該容器本体と一体に設けられた蓋体と、該蓋体の下端に設けられた切断手段と、から構成される。使用者は、蓋体を開けて、容器からラップフィルムを所定の長さだけを引き出した後、蓋体を閉じ、蓋前面板を一方の手の親指で押さえ付けてラップフィルムを固定しつつ、引き出されたラップフィルムを他方の手で引っ張ることで、ラップフィルムを切断する。
【0003】
ラップフィルムを切断するにあたり、使用者が一方の手の親指で蓋体の前面板を押さえ付けてラップフィルムを本体前面板と蓋前面板との間で挟持して固定した状態で行わなければ、ラップフィルムを所定の長さで切断することができない他、ラップフィルムの容器内への巻き戻りが生じるなどの不具合が発生していた。そこで、使用者が、ラップフィルムを確実に固定できるようにする手段が提案されている。
【0004】
例えば、本出願人は、蓋前面板に親指の先端部を受け入れる凹部を設けることで、使用者の包装容器の握り方を矯正することができる包装用容器を提案している(例えば、特許文献1を参照。)。また、蓋前面板に押え板を取り付けることで、親指で押さえる位置を広くして、使用者が親指の位置に神経を使う必要がない容器が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−202324号公報
【特許文献2】特開2003−160141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2に開示された技術は、切断後のフィルム端の保持が十分でなく、フィルム端の包装容器の内部への巻き戻しを防止する技術ではない。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、ラップフィルムを所定の長さに引き出して切断した後、フィルム端の包装容器の内部への巻き戻しをより確実に防止する包装容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る包装容器は、矩形の本体底面板と、該本体底面板の長辺に立設された本体前面板及び本体後面板と、前記本体底面板の短辺に立設された本体左側面板及び本体右側面板と、を有し、自己密着性を有するラップフィルムがロール状に巻回されたフィルムロールを収容する、上面が開口した容器本体と、前記本体後面板の上端辺に回動可能に連接され、前記容器本体の上面開口部を閉鎖時に、該上面開口部を覆う天面板と、該天面板に連接され、前記本体前面板の外側に重ねて配置される蓋前面板と、を有する蓋体と、前記フィルムロールから繰り出され、前記本体前面板と前記蓋前面板との間から引き出されたラップフィルムを切断する前記蓋前面板に設けられた切断手段と、を備える包装容器において、前記蓋前面板には、該蓋前面板の表面よりも前記本体前面板側に隆起した蓋エンボス部が設けられ、前記本体前面板のうち、前記蓋エンボス部と当接する領域には、切断後のフィルムロール側のラップフィルム端を保持するフィルム保持部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る包装容器では、前記フィルム保持部の最表層が、自己密着性フィルム層であることが好ましい。フィルム保持部を容易に、かつ、安定的に形成することができる。
【0010】
本発明に係る包装容器では、前記フィルム保持部は、前記容器本体側から順に配置された、粘着剤層、基材層、接着剤層及び自己密着性フィルム層の積層構造を有することが好ましい。フィルム保持部を容易に、かつ、安定的に形成することができる。
【0011】
本発明に係る包装容器では、前記蓋エンボス部の底面には、前記本体前面板とは反対側に隆起した少なくとも1個の滑り止め突起が設けられていることが好ましい。指が滑るのを防止して、例えば、水などで手が滑りやすい状態であっても、フィルム保持部にフィルム端をより確実に押さえ付けることができる。また、使用者が親指で押さえるべき位置を視覚及び触覚によって確認することができる。
【0012】
本発明に係る包装容器では、前記蓋前面板のうち、前記フィルム保持部と当接しない領域には、前記フィルムロールの軸方向と交差する方向に延びる少なくとも1本のリブ部が設けられていることが好ましい。繰り返し切断することによって徐々に生じる蓋体の変形を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ラップフィルムを所定の長さに引き出して切断した後、フィルム端の包装容器の内部への巻き戻しをより確実に防止する包装容器を提供することができる。また、蓋エンボス部に指をかけることで、蓋体の開閉を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る包装容器の一例を示す斜視図である。
【図2】フィルム保持部の一例を示す積層断面図である。
【図3】蓋エンボス部とフィルム保持部との位置関係を説明するための図であり、(a1)及び(b1)は破断面図であり、(a2)は蓋エンボス部とフィルム保持部とが全て重なっている形態の正面図、(a3)及び(b1)〜(b3)は蓋エンボス部とフィルム保持部とが一部当接する領域を有する形態の正面図である。
【図4】滑り止め突起が設けられた蓋エンボス部を説明する図であり、(a1)及び(b1)は正面図であり、(a2)及び(b2)は破断面図である。
【図5】本実施形態に係る包装容器の蓋体を閉じた状態の蓋エンボス部を通る破断面図である。
【図6】本実施形態に係る包装容器の別の例を示す斜視図である。
【図7】図6のG‐G破断面図の形態例であり、(a)はリブ部がエンボス加工によるものあり、かつ、本体前面板と反対側に隆起した形態、(b)はリブ部がエンボス加工によるものであり、かつ、本体前面板側に隆起した形態、(c)はリブ部が別部材を取り付けたものであり、かつ、本体前面板と反対側に隆起した形態、(d)はリブ部が別部材を取り付けたものであり、かつ、本体前面板側に隆起した形態である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0016】
図1は、本実施形態に係る包装容器の一例を示す斜視図である。本実施形態に係る包装容器100は、矩形の本体底面板11と、本体底面板11の長辺に立設された本体前面板12及び本体後面板13と、本体底面板11の短辺に立設された本体左側面板14及び本体右側面板15と、を有し、自己密着性を有するラップフィルム1がロール状に巻回されたフィルムロール40を収容する、上面が開口した容器本体10と、本体後面板13の上端辺に回動可能に連接され、容器本体10の上面開口部16を閉鎖時に、上面開口部16を覆う天面板21と、天面板21に連接され、本体前面板12の外側に重ねて配置される蓋前面板22と、を有する蓋体20と、フィルムロール40から繰り出され、本体前面板12と蓋前面板22との間から引き出されたラップフィルム1を切断する蓋前面板22に設けられた切断手段30と、を備える包装容器において、蓋前面板22には、蓋前面板22の表面よりも本体前面板12側に隆起した蓋エンボス部70が設けられ、本体前面板12のうち、蓋エンボス部70と当接する領域には、切断後のフィルムロール40側のラップフィルム端を保持するフィルム保持部50が設けられている。
【0017】
図1に示す包装容器100は、厚紙、プラスチックなどの板材で形成されている。板材の厚さは、特に限定されないが、一般に0.45〜0.70mmである。容器本体10は、矩形の本体底面板11の各辺に立設された本体前面板12、本体後面板13、本体左側面板14及び本体右側面板15によって形成された上面開口部16を有する横長の略直方体形状の箱である。蓋体20は、本体後面板13の上端辺に回動可能に一体に設けられ、容器本体10の上面開口部16を覆うことができるようになっている。上面開口部16を閉鎖時には、天面板21が上面開口部16を覆い、蓋前面板22が本体前面板12の外側に重ねて配置され、蓋左側面板24及び蓋右側面板25が、それぞれ本体左側面板14及び本体右側面板15の外側に重ねて配置される。本体前面板12のうち、蓋エンボス部70と当接する領域は、平坦面であり、フィルム保持部50が設けられている。
【0018】
切断手段30は、蓋前面板22の裏面(容器本体側表面)に取り付けられ、蓋前面板22の下端辺に設けられている。切断手段30の材質及び形状は特に限定されないが、厚紙、プラスチック、金属などで形成された鋸刃状の切断刃である。図1に示す包装容器100では、蓋前面板22では、その下端辺が、包装容器100の幅方向(以降、包装容器100の幅方向とは、図1のW‐W´方向である。)の中央部が最も凸となる全体が略V字形状に形成されており、切断手段30もこの形状に合わせて略V字形状に形成されている。なお、本実施形態では、図1に示すような蓋前面板22及び切断手段30が略V字形状である形態に限定されない。例えば、蓋前面板22の下端辺及び切断手段30を直線形状、略U字形状とすることができる。
【0019】
ラップフィルム1の材質は、自己密着性を有する樹脂又は樹脂組成物である。フィルムロール40は、自己密着性を有する樹脂又は樹脂組成物を単層又は積層シート状に成形してラップフィルム1を形成し、所定の長さのラップフィルム1をロール状に巻回してなる。樹脂は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂である。樹脂組成物は、熱可塑性樹脂に、可塑剤を配合したものである。可塑剤は、例えば、脂肪族多価塩基酸エステル、脂肪族多価アルコールエステル、オキシ酸エステルである。本実施形態では、ラップフィルムの材質は、ポリ塩化ビニリデンに可塑剤を配合したものがより好ましい。本実施形態では、ラップフィルムの厚さは、特に限定されないが、一般に、5〜20μmである。
【0020】
蓋エンボス部70は、使用者が親指を当てる位置である。蓋エンボス部70は、図1に示すように、包装容器100を蓋前面板12側から見ると、僅かに窪んでいるため、使用者は、親指を当てる位置を視覚で認識でき、更に、触覚で検知することができる。また、蓋エンボス部に指をかけることで、蓋体20の開閉を容易に行うことができる。
【0021】
蓋エンボス部70の形状は、特に限定されず、図1に示すように包装容器100の幅方向に沿って長辺を有する矩形とする他に、正方形、円形、親指に合わせた形状などの変形態様としてもよい。蓋エンボス部70の底面は、本体前面板12に設けたフィルム保持部50との接触面積を多くできる点で、平面であることが好ましい。
【0022】
フィルム保持部50は、ラップフィルム1を蓋エンボス部70で押さえ付けることによって、ラップフィルム1を保持できれば、特に限定されず、例えば、粘着性のあるニスを塗布することや、平滑性のあるニスを塗布することでフィルム保持部を形成することができる。また、本実施形態に係る包装容器では、フィルム保持部50の最表層が自己密着性フィルム層であることがより好ましい。フィルム保持部の最表層を自己密着性フィルム層とすることで、使用の継続に伴うチリ、ほこりなどが付着して、フィルム保持力が低下することがなく、安定的、かつ、持続的なフィルム保持力を発揮することができる。
【0023】
自己密着性フィルム層は、本実施形態に係る包装容器に収容されるラップフィルム1の材質として例示した自己密着性を有する樹脂又は樹脂組成物である。より好ましくは、包装容器に収容されるラップフィルム1と同素材とする。自己密着性フィルム層の厚さは、ラップフィルムに対する密着保持力を発揮させるという目的からは、広い範囲から選択可能であるが、ラップフィルム1自体を用いることが経済的に好ましく、一般に5〜20μmの厚さである。このようにラップフィルム1は、非常に薄肉であり、更には、可撓性に富むため、ラップフィルム1を単体で本体前面板12の表面に取り付ける作業は、極めて困難であり、波打ち、端部のめくれ上がりなどのトラブルが起こりがちである。それ故、安定なフィルム保持力を有するフィルム保持部50の形成が困難である。本出願人は、特許文献2において、自己密着性フィルムを接着剤層及び基材層を含むラベル構造とすることで、容易に、かつ、安定的にフィルム保持部を形成できることを見出した。
【0024】
図2は、フィルム保持部の一例を示す積層断面図である。本実施形態に係る包装容器では、フィルム保持部50は、容器本体側から順に配置された、粘着剤層54、基材層53、接着剤層52及び自己密着性フィルム層51の積層構造を有することが好ましい。積層構造の総厚は、40〜350μmであることが好ましい。より好ましくは、75〜105μmである。
【0025】
粘着剤層54を構成する粘着剤(感圧接着剤)は、一般にラベル形成用に用いられる粘着剤を使用できる。このような粘着剤には、主剤としてゴム系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系などの粘弾性ポリマーを用い、前記主剤にロジン系、石油樹脂などの粘着付与樹脂を配合した粘着剤が広く用いられる。粘着剤層54の厚さは、例えば、10〜100μm程度である。本実施形態は、粘着剤層54の材質及び厚さに制限されない。
【0026】
基材層53は、フィルム保持部50の剛性を支配するものである。基材層53は、一般にラベル基材として用いられる紙又はプラスチックフィルムからなり、かつ、自己密着性フィルムよりも剛性の大なるものを使用することができる。基材層53の厚さは、例えば、25〜200μm程度である。本実施形態は、基材層53の材質及び厚さに制限されない。
【0027】
接着剤層52を構成する接着剤は、例えば、アクリル樹脂系、酢酸ビニル系、エポキシ系、合成ゴム系などの主剤を酢酸エチル、アセトンなどの有機溶媒に溶解した溶剤型の接着剤、無溶剤型の接着剤又は水性エマルジョン型の接着剤である。中でも生産性に優れ、廃溶剤の処理が不要な、水系エマルジョン型の接着剤又は紫外線硬化型アクリル系樹脂を主剤とする無溶剤型の接着剤が好適に用いられる。接着剤層52の厚さは、5〜50μm程度が適当である。本実施形態は、接着剤層52の材質及び厚さに制限されない。
【0028】
さらに、基材層53の上面にフィルム保持部50であることを示す検知マークなどの印刷層56を設けることが好ましい。
【0029】
フィルム保持部50の形状は、特に限定されず、図1に示すように包装容器100の幅方向に沿って長辺を有する矩形とする他に、正方形、円形などの変形態様としてもよい。
【0030】
図3は、蓋エンボス部とフィルム保持部との位置関係を説明するための図である。フィルム保持部50は、本体前面板12のうち、蓋エンボス部70と当接する領域に設けられる。当接する領域に設けられる形態例としては、例えば、図3(a1)に示すように、蓋エンボス部70とフィルム保持部50とが包装容器100の高さ方向(以降、包装容器100の高さ方向とは、図1のH‐H´方向である。)において一致している形態、図3(b1)に示すように、蓋エンボス部70とフィルム保持部50とが包装容器100の高さ方向において上下にずれている形態である。
【0031】
図3(a1)に示した包装容器100の高さ方向が一致している形態について、更に正面視での形態例を、図3(a2)及び図3(a3)に示す。図3(a2)は、蓋エンボス部70とフィルム保持部50とが包装容器100の幅方向においても一致して、完全に重なっている状態である。図3(a3)は、フィルム保持部50が蓋エンボス部70に対して、包装容器100の幅方向において左にずれている形態である。図3(a2)のA‐A破断面図及び図3(a3)のB‐B破断面図はいずれも、図3(a1)に示すように包装容器100の高さ方向が一致している。なお、図3(a3)では、フィルム保持部50が蓋エンボス部70に対して左方向にずれている形態を示したが、フィルム保持部50が蓋エンボス部70に対して右方向にずれている形態としてもよい。
【0032】
図3(b1)に示した包装容器100の高さ方向が上下にずれている形態について、更に正面視での形態例を、図3(b2)及び図3(b3)に示す。図3(b2)は、蓋エンボス部70とフィルム保持部50とが包装容器100の幅方向において一致している形態である。図3(b3)は、フィルム保持部50が蓋エンボス部70に対して包装容器100の幅方向において左にずれている形態である。図3(b2)C‐C破断面図及び図3(b3)D‐D破断面図はいずれも、図3(b1)に示すように包装容器100の高さ方向が上下にずれている。なお、図3(b3)では、フィルム保持部50が蓋エンボス部70に対して左方向にずれている形態を示したが、フィルム保持部50が蓋エンボス部70に対して右方向にずれている形態としてもよい。また、図3(b2)及び図3(b3)では、フィルム保持部50が蓋エンボス部70に対して上にずれている形態を示したが。フィルム保持部50が蓋エンボス部70に対して下にずれている形態としてもよい。
【0033】
蓋エンボス部70とフィルム保持部50とが当接する領域は、蓋エンボス部70の底面の面積に対して、20%以上であることが好ましい。より好ましくは、50%以上であり、特に好ましくは100%である。20%未満では、フィルム端をフィルム保持部50へ効率的に密着させる効果が得られない場合がある。
【0034】
蓋エンボス部70及びフィルム保持部50を設ける位置は、図1に示すように、本体前面板12のうち、包装容器100の幅方向の中央部に設けることが好ましい。また、図1の包装容器100では、蓋エンボス部70及びフィルム保持部50を1個ずつ設けているが、複数個設けてもよい。
【0035】
図1及び図3では、蓋エンボス部70とフィルム保持部50とを同形状及び同寸法としたが、本発明の効果を損なわない限り、変形可能である。例えば、フィルム保持部50を蓋エンボス部70よりも小さくする形態、フィルム保持部50を蓋エンボス部70よりも大きくする形態、フィルム保持部50と蓋エンボス部70との形状を異なる形状にする形態である。
【0036】
図4は、滑り止め突起が設けられた蓋エンボス部を説明する図である。本実施形態に係る包装容器では、蓋エンボス部70の底面には、本体前面板12とは反対側に隆起した少なくとも1個の滑り止め突起80が設けられていることが好ましい。例えば、水などで手が滑りやすい状態であっても、指が滑るのを防止して、フィルム保持部50にフィルム端をより確実に押さえ付けることができる。また、使用者が親指で押さえるべき位置を視覚及び触覚によって更に確認しやすくなる。
【0037】
図4(a1)は、滑り止め突起80を蓋エンボス部70の底面に4列2行の8個設けた形態を示す正面図である。図4(a2)は、図4(a1)のE‐E破断面図である。図4(a2)に示すように、滑り止め突起80は、本体前面板12とは反対側に隆起しており、包装容器を正面から見ると、僅かに凸になっている。
【0038】
滑り止め突起80は、蓋エンボス部70の底面の他、蓋前面板22のうち、蓋エンボス部70の近傍に設けることができる。図4(b1)は、滑り止め突起80を、蓋エンボス部70の底面に4列2行の8個設け、更に、蓋エンボス部70の近傍にも4列2行の8個設けた形態を示す正面図である。図4(b2)は、図4(b1)のF‐F破断面図である。なお、本実施形態では、滑り止め突起80の配列及び隣接する滑り止め突起80同士の間隔は、蓋エンボス部70の形状及び面積、包装容器の意匠性などの各条件に応じて、適宜選択可能である。
【0039】
滑り止め突起80を、蓋エンボス部70のうち、フィルム保持部50と当接する領域に設けると、フィルム保持部50を視覚及び触覚によって確認しやすくなり、作業者が滑り止め突起80上に親指を当てることによって、フィルム保持部50にフィルム端をより確実に押さえ付けることができる点で好ましい。ただし、滑り止め突起80の総面積は、蓋エンボス部70とフィルム保持部50とが当接する領域の面積に対して、40%以下とすることが好ましい。より好ましくは、20%以下、特に好ましくは、15%以下である。40%を超えると、蓋エンボス部70とフィルム保持部50との接触面積が少なくなり、フィルムをフィルム保持部50に密着させる力が弱くなる場合がある。
【0040】
図4では、滑り止め突起80の形状を円形としたが、本発明の効果を損なわない限り、変形可能である。例えば、三角形、矩形である。
【0041】
包装容器100は、図1に示すように横長の直方体形状であるが、一般に平面状の板材を打ち抜いて、展開図の切り抜き及び折り罫線の形成を行う打抜工程、打抜工程で得られたブランクシートを折曲げて箱を形成する製函工程を経て形成される。したがって、蓋エンボス部70は、打抜工程と同時に、押し型を使用してプレス加工(エンボス加工)することによって形成するか、又は打抜工程前後で、エンボス加工工程を設けて形成することができる。蓋エンボス部70の深さは、0.05〜0.40mmとすることが好ましい。より好ましくは、0.10〜0.30mmである。0.05mm未満では、蓋エンボス部70を設ける効果が得られない場合がある。0.40mmを超えると、蓋前面板22と蓋エンボス部70との段差が大きすぎて、容器本体10の上面開口部16を閉鎖時に、本体前面板12又は蓋エンボス部70が変形するおそれがある。また、エンボス加工時の伸びに追従できず基材が割れたり、切れたりする場合がある。
【0042】
フィルム保持部50の形成は、打抜工程前後の平面状の板材又はブランクシートに対して行うことができる。本実施形態はフィルム保持部50の形成方法に制限されない。例えば、フィルム保持部50の最表層を粘着層とする場合には、打抜工程前後の平面状の板材又はブランクシートのうち、蓋エンボス部70と当接予定の領域に、粘着剤を塗布することでフィルム保持部50を形成することができる。また、フィルム保持部50を図2に示すような積層体をする場合には、フィルム保持部50は、粘着剤層54の基材層53を設けた面とは反対面上にセパレータ(不図示)が設けられたフィルム保持部形成用ラベル構造体からセパレータを剥離しつつ貼り付けることができる公知のラベル貼付装置を用いて、連続的に貼り付けることができる。このようにして形成することによって、フィルム保持部50を容易に、かつ、安定的に形成することができる。セパレータは、一般に基材層53よりも更に剛性が大で(すなわち腰が強く)、厚さが大なる紙又はプラスチックフィルムからなる。粘着剤層54との界面に、必要に応じてシリコーン樹脂などの離型剤を塗布することにより、剥離性を有するものが好適に用いられるが、粘着剤層54からの剥離が容易な限り、その剛性、厚さの設定は基本的には任意である。
【0043】
滑り止め突起80は、蓋エンボス部70と同様に、打抜工程と同時に又は打抜工程の前後にエンボス加工することで形成することができる。滑り止め突起80の直径は、1.0〜5.0mmとすることが好ましい。より好ましくは、1.5〜3.0mmである。滑り止め突起80の突出量は、0.05〜0.40mmとすることが好ましい。より好ましくは、0.10〜0.30mmである。0.05mm未満では、滑り止め突起80を設ける効果が得られない場合がある。0.40mmを超えると、エンボス加工時の伸びに追従できず基材が割れたり、切れたりする場合がある。
【0044】
次に、本実施形態に係る包装容器の蓋エンボス部70及びフィルム保持部50の関係について説明する。図5は、本実施形態に係る包装容器の蓋体を閉じた状態の蓋エンボス部を通る破断面図である。図5に示すように、容器本体10内のフィルムロール40から引き出されたラップフィルム1は、上面開口部16から本体前面板12と蓋前面板22との間を経て包装容器100の外部に導かれる。使用者は、まず、所望の長さのラップフィルム1を引き出して、食品、食器などの被包装物上にほぼ水平状態で広げる。そして、一方の手で包装容器100を把持し、親指を蓋エンボス部70に当てて、本体前面板12の方向に押さえ付ける。他方の手で、ラップフィルム1をβ方向へ引き、包装容器100を把持した手で容器をα方向に捻る。この動作によって、切断手段30でラップフィルム1が切断される。切断されたラップフィルム1で被包装物の包装を行う。
【0045】
本実施形態では、蓋エンボス部70が本体前面板12側に隆起し、かつ、フィルム保持部50が蓋エンボス部70と当接する領域を有するため、蓋エンボス部70を指で軽く押すと、ラップフィルム1を蓋エンボス部70とフィルム保持部50との間で挟持して固定する状態となり、ラップフィルム1を所定の長さで切断することができる。切断後には、フィルムロール40側のフィルム端はフィルム保持部50に保持されているので、安定的、かつ、より確実にフィルムの巻き戻りを防止することができる。また、使用者は、蓋エンボス部70の窪みを視覚及び触覚によって容易に確認することができ、フィルム保持部50にラップフィルム1を確実に接触させることができる。
【0046】
図6は、本実施形態に係る包装容器の別の例を示す斜視図である。本実施形態に係る包装容器101では、蓋前面板22のうち、フィルム保持部50と当接しない領域には、フィルムロール40の軸方向(X方向)と交差する方向(Y方向)に延びる少なくとも1本のリブ部90が設けられていることが好ましい。
【0047】
ラップフィルムを切断する時には、蓋前面板22は、図5の2点鎖線で示すように、ラップフィルム1を引っ張る方向(図5のβ方向)に引っ張られて変形する。切断を繰り返した結果、蓋前面板22の変形が元に戻らなくなると、ラップフィルム1を切断しにくくなる場合がある。そこで、リブ部90を設け、蓋前面板22を補強することで、変形を抑制することができる。
【0048】
リブ部90は、フィルムロール40の軸方向(X方向)と蓋前面板22上において交差する方向(Y方向)に延びる。X方向とY方向とのなす角度をθとすると、θが15〜165°であることが好ましい。より好ましくは、θが45〜135°である。特に好ましくは、θが65〜115°である。図6では、θがすべて90°である形態を示したが、リブ部90は、蓋前面板22上にてロール40の軸方向Xにおける中心を通る直線(以降、中心線という。)Cで分割される蓋前面板22の左右の各領域で、中心線Cを対称軸として線対称となるようにθを変化させることが好ましい。具体的には、例えば、中心線Cよりも左側(図6のW方向側)の領域では、いずれのリブ部についてもθを115°とし、中心線Cよりも右側(図6のW´方向側)の領域では、いずれのリブ部についてもθを65°とする形態である。
【0049】
本実施形態では、少なくとも1本のリブ部90の長さが、フィルムロール40の軸方向(X方向)と直交する方向における蓋前面板22の長さに対して50〜100%であることが好ましい。より好ましくは、70〜100%である。特に好ましくは、90〜100%である。この範囲とすることで、蓋前面板22を補強するというリブ部90を設ける効果を存分に発揮することができる。ここで、リブ部90の長さとは、リブ部90の下端sから上端tまでの直線距離をaとしたとき、asinθで表される距離である。例えば、図6に示すように、θが90°である場合には、リブ部90の長さはaである(asin90°=a)。また、θが60°である場合には、リブ部90の長さは√3a/2である(asin60°=√3a/2)。
【0050】
リブ部90を設けることで、蓋前面板22を補強することができるが、リブ部90は、蓋エンボス部70を中心とする包装容器101の幅方向(図6のW‐W´方向)に2cm拡げた領域P内に設けることが好ましい。より好ましくは、1cm拡げた領域内に設ける。さらに、リブ部90は、蓋エンボス部70の両脇のいずれかに1本設けることが好ましく、より好ましくは、蓋エンボス部70の両脇に1本ずつ設けることが好ましい。図6は、前記領域P内において、蓋エンボス部70の両脇に1本ずつリブ部90を設けた形態である。蓋エンボス部70には、応力が集中するため、その周辺の蓋前面板22は、特に変形し易いところ、蓋エンボス部70の近傍にリブ部90を設けることで、蓋前面板22の変形を抑制することができる。なお、本実施形態では、リブ部90の本数に制限されない。また、リブ部90を複数本設ける場合には、相隣り合うリブ部90同士の間隔に制限されない。
【0051】
図7は、リブ部の部分拡大破断面図であり、(a)は図6のG‐G破断面図、(b)、(c)及び(d)は変形例の破断面図である。図7(a)に示すように、図6の包装容器101では、リブ部90が本体前面板12と反対側に隆起し、包装容器101を形成する板材をエンボス加工して形成している。リブ部90は、蓋前面板22を補強することができれば、これに限定されず、図7(b)に示すように、リブ部90が本体前面板12側に隆起した形態とすることができる。また、リブ部90は、図7(a)及び図7(b)に示すように、包装容器101を形成する板材をエンボス加工して形成することが、構造を簡易にすることができる点及びコストの点でより好ましいが、蓋前面板22を補強することができれば、これに限定されない。例えば、図7(c)及び図7(d)に示すように、リブ部91を別部材とすることができる。別部材の材質は、例えば、紙、プラスチックである。また、図7(c)のように、リブ部91の断面形状を四角形とするか、図7(d)のように、リブ部91の断面形状を蒲鉾形とするか、又は他の断面形状とするかを問わない。リブ部90の他形態としては、包装容器を形成する板材を、段状に折り目(ひだ)又は波目をつけた形態である。本他形態では、リブ部90は、折り目又は波目の稜線である。リブ部90の凸部の頂点と蓋エンボス部70の底面との差は、0.10〜0.80mmとすることが好ましい。より好ましくは、0.20〜0.60mmである。0.10mm未満では、リブ部90を設ける効果が得られない場合がある。0.80mmを超えると、蓋体20の開閉に支障をきたすおそれがある。また、エンボス加工する場合には、伸びに追従できず基材が割れたり、切れたりする場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、本発明に係る包装容器は、自己密着性を有するラップフィルムを所定の長さに引き出して切断した後、フィルム端の包装容器の内部への巻き戻しを安定的に防止することが可能であるため、例えば、食品、容器などの包装容器として使用されるラップフィルム、荷崩れ防止など梱包資材として使用されるラップフィルムの包装容器として好適である。
【符号の説明】
【0053】
1 ラップフィルム
10 容器本体
11 本体底面板
12 本体前面板
13 本体後面板
14 本体左側面板
15 本体右側面板
16 上面開口部
40 フィルムロール
20 蓋体
21 天面板
22 蓋前面板
24 蓋左側面板
25 蓋右側面板
30 切断手段
50 フィルム保持部
51 自己密着性フィルム層
52 接着剤層
53 基材層
54 粘着剤層
56 印刷層
70 蓋エンボス部
80 滑り止め突起
90,91 リブ部
100,101 包装容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の本体底面板と、該本体底面板の長辺に立設された本体前面板及び本体後面板と、前記本体底面板の短辺に立設された本体左側面板及び本体右側面板と、を有し、自己密着性を有するラップフィルムがロール状に巻回されたフィルムロールを収容する、上面が開口した容器本体と、
前記本体後面板の上端辺に回動可能に連接され、前記容器本体の上面開口部を閉鎖時に、該上面開口部を覆う天面板と、該天面板に連接され、前記本体前面板の外側に重ねて配置される蓋前面板と、を有する蓋体と、
前記フィルムロールから繰り出され、前記本体前面板と前記蓋前面板との間から引き出されたラップフィルムを切断する前記蓋前面板に設けられた切断手段と、
を備える包装容器において、
前記蓋前面板には、該蓋前面板の表面よりも前記本体前面板側に隆起した蓋エンボス部が設けられ、
前記本体前面板のうち、前記蓋エンボス部と当接する領域には、切断後のフィルムロール側のラップフィルム端を保持するフィルム保持部が設けられていることを特徴とする包装容器。
【請求項2】
前記フィルム保持部の最表層が、自己密着性フィルム層であることを特徴とする請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記フィルム保持部は、前記容器本体側から順に配置された、粘着剤層、基材層、接着剤層及び自己密着性フィルム層の積層構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の包装容器。
【請求項4】
前記蓋エンボス部の底面には、前記本体前面板とは反対側に隆起した少なくとも1個の滑り止め突起が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の包装容器。
【請求項5】
前記蓋前面板のうち、前記フィルム保持部と当接しない領域には、前記フィルムロールの軸方向と交差する方向に延びる少なくとも1本のリブ部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の包装容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−81978(P2012−81978A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228986(P2010−228986)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】