説明

包装材、及び包装材群

【課題】医療製剤の包装材において、患者の利便性を向上させる。
【解決手段】医薬用の固形製剤または粉末製剤を収容するための凹状の収容部8が設けられた収容部材4と、前記収容部8の開口部7を封止する板状部材6とを有する包装材2であって、前記板状部材6が、前記開口部7を横断する方向に沿った第1の切込溝を有し、前記収容部材8が、前記第1の切込溝12に対向して設けられた第2の切込溝14を有し、さらに、前記収容部8が、前記板状部材6が前記第1の切込溝12で前記収容部材4側の反対側に折り曲げられたときに前記第2の切込溝14で第1、第2の部分に分離することで、容易に包装材2を開封することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤の包装材等に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤やカプセル剤といった医薬製剤の包装材として、ブリスターパックが知られている(たとえば特許文献1)。ブリスターパックは、凹陥させて収容部が形成されたプラスチック製のカバーと、収容部の開口部周辺のフランジ状の部位に接着され、収容部の開口部を封止するアルミニウム製のシール材からなる。錠剤等を包装するときは、収容部に錠剤等を収容した状態でシール材が接着され、収容部が密封される。錠剤等を取り出すときは、ピール方式とプレススルー方式の2種類の方法で包装材が開封される。ピール方式は、シール材の一端を指先でつまんでシール材をカバーから剥がす方式である。また、プレススルー方式は、カバーの上から指先で錠剤等を押圧して押圧力を錠剤等に伝え、錠剤等を介して押圧力によりシール材を破る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ピール方式は、指先の細かい操作を必要とするので、高齢の患者や神経疾患を患っている患者にとって、困難が伴う。また、プレススルー方式は、ピール方式ほどではないにしろ、やはり指先の細かい操作を必要とするので困難を伴う。
【0005】
また、プレススルー方式は、ほかにも種々の問題を有する。たとえば、押圧力が大きすぎると、シール材を破った錠剤等が飛び出してしまうおそれがある。また、嚥下を容易にするために強度を低下させた口腔内崩壊錠の場合、押圧することで破壊されるおそれがある。また、錠剤等により破られたシール材が離散すると、これを患者が誤飲するおそれがある。また、シール材はある程度の押圧力で破れる程度の強度に設計されているところ、鞄などに包装材を入れて持ち運ぶ際、他の収納物との接触によりシール材が破れ、錠剤等が外部にこぼれ落ちたり、保管状態が悪化したりするおそれがある。このように、従来の包装材においては、患者の利便性と安全性とを向上させる余地がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、患者の利便性と安全性とを向上させる医薬製剤の包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面によれば、医薬用の固形製剤または粉末製剤を収容するための凹状の収容部が設けられた収容部材と、前記収容部の開口部を封止する板状部材とを有する包装材であって、前記板状部材が、前記開口部を横断する方向に沿った第1の切込溝を有し、前記収容部材が、前記第1の切込溝に対向して設けられた第2の切込溝を有し、さらに、前記収容部が、前記板状部材が前記第1の切込溝で前記収容部材側の反対側に折り曲げられたときに前記第2の切込溝で第1、第2の部分に分離することを特徴とする包装材が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記側面によれば、患者の利便性と安全性とを向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】包装材の構成例を示す図である。
【図2】包装材の構成例を示す図である。
【図3】板状部材6の上部平面図である。
【図4】収容部材4の上部平面図である。
【図5】包装材2が開封された状態の斜視図である。
【図6】一例における包装材2の側面図である。
【図7】異なる態様の包装材2の、模式的な斜視図である。
【図8】本実施形態の第1の変形例を示す図である。
【図9】本実施形態の第2の変形例を示す図である。
【図10】包装材の第1、第2の実施例を示す図である。
【図11】包装材の第3、第4の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0011】
図1、図2は、本実施形態における包装材の構成例を示す図である。図1は開封前の包装材の斜視図である。また、図2(A)は開封前の包装材の模式的な上部平面図であり、図2(B)は同側面図である。また、図2(C)は、図2(A)におけるA−A´での断面図である。以下の説明では、包装材を側面方向からみたときの上下方向は図面の上下方向に対応する。
【0012】
この包装材2は、収容部材4と板状部材6とを有する。収容部材4は、医薬用の固形製剤または粉末製剤を収容するための凹状の収容部8を有する。固形製剤は、たとえば、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、坐剤その他を含む。また、粉末製剤は、たとえば、顆粒剤、散剤その他を含む。以下の説明では、医薬製剤10が固形製剤である場合を例とする。医薬製剤10は、たとえば略楕円体形状を有するが、これに限らず略矩形形状、略円筒形状など、種々の形状が可能である。収容部材4は、たとえば、硬質プラスチック製のシート状の部材を凹陥させることで収容部8が形成された、ブリスタ部材である。硬質プラスチックは、たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチロール、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリルなどである。収容部材4は、透明または半透明であることが好ましい。また、収容部材4の材質は、高い防湿性を有するとともに、高い気体不透過性を有することが、医薬製剤10の保管状態を良好に保つ上で好ましい。さらに、収容部8の成型方法は型押し、吸引等、公知の方法が可能である。なお、ここでは、一例として、収容部8の開口部7周辺部に、開口部7から外側に延在するフランジ部9が形成された態様が示される。収容部8の形状は、種々の形状が可能である。ここでは、収容部8は、たとえば医薬製剤10の形状と略相似形状を有する。
【0013】
板状部材6は、収容部8の開口部7を封止する。板状部材6は、たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチロール、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリルなどの硬質プラスチックや、ブリスターパックの裏張りシートとして用いられるシート材(たとえば、アルミ箔とフィルムの積層シート)などで形成される。板状部材6は、開口部7周辺部、たとえばフランジ部9の下部面に、接着剤、熱圧着などの手段で固定される。これにより、収容部8内の医薬製剤10が密閉される。板状部材6の材質は、高い防湿性を有するとともに、高い気体不透過性を有することが、医薬製剤10の保管状態を良好に保つ上で好ましい。なお、ここでは、フランジ部9の外縁と板状部材6の外縁とが一致する例が示されるが、収容部材4のサイズは、フランジ部9の外縁が板状部材6の外縁の内側に収まるようなサイズであってもよい。
【0014】
板状部材6は、開口部7を横断する方向Bに沿った切込溝12を有する。切込溝12は、たとえば板状部材6の上部面に設けられる。切込溝12の配置例は、図3(A)、(B)に示される。図3(A)、(B)は、収容部材4を取り除いた状態での、板状部材6の上部平面図を示す。たとえば図3(A)に示されるように、切込溝12は、方向Bに沿って板状部材6全体を横断するように設けられる。また別の例では、図3(B)に示されるように、切込溝12は、板状部材6の方向Bに沿った一部に、たとえば、間欠的に設けられる。さらに別の例では、切込溝12は、たとえば板状部材6の下部面、または上部面と下部面の両方に設けられる。いずれの場合も、切込溝12は、たとえば板状部材6の方向Bにおける全体、またはその一部に設けられる。
【0015】
切込溝12の断面形状の例は、図3(C)〜(E)に示される。まず、断面の形状は、たとえば図3(C)に示されるようなくさび型、図3(D)に示されるような矩形形状、図3(E)に示されるような半円形状、またはその他の種々の形状が可能である。切込溝12を設けることにより、板状部材6における当該部位の剛性が他の部位より低下する。よって、板状部材6の側面図を図3(F)に示すと、板状部材6は、端部6aを下方(つまり収容部材4側と反対側)に矢印6bで示すように回動させることにより、切込溝12で折れ曲がる。ここにおいて、切込溝12の深さは、たとえば、板状部材6が折り曲げ可能であり、かつ容易に破断しない程度である。あるいは、板状部材6が切込溝12で破断して分離する程度であってもよい。
【0016】
さらに、板状部材6が切込溝12で折れ曲がるような構成例の一つでは、板状部材6が剛性が異なる複数の材質の層で構成され、複数の層のうち一部の層にのみ切込溝12が設けられる。板状部材6の断面構造の例は、図3(G)〜(I)に示される。たとえば、図3(G)に示されるように、板状部材6は、上下2層により構成される。たとえば、板状部材6は、上部側がある程度の剛性を有する層61により、下部側がある程度の弾性または可撓性を有する層62により構成される。そして、切込溝12が層61に設けられる。そして、板状部材6は、層62が撓むことで、全体として切込溝12で分離されることなく下方に折れ曲がる。別の例では、板状部材6は、たとえば図3(H)に示されるように、図3(G)の構成を上下反転させた構成が可能である。さらに別の例では、板状部材6は、図3(I)に示されるように、3層で構成される。ここでは、上部と下部がある程度の剛性を有する層61により、中間部がある程度の弾性または可撓性を有する層62により構成される。そして、上部と下部の層61に切込溝12が設けられる。板状部材6は、中間部の層62が撓むことにより、全体として切込溝12で分離されることなく下方に折れ曲がる。
【0017】
収容部材4は、図1、図2(A)〜(C)に示されるように、板状部材6の切込溝12に対向して設けられた切込溝14を有する。切込溝14は、たとえば図2(A)に示されるように、収容部8とフランジ部9とを含む収容部材6を方向Bに沿って横断するように設けられる。切込溝14の配置や形状の例は、図4(A)〜(C)に示される。図4(A)〜(C)は、収容部材4の上部平面図を示す。たとえば、図4(A)に示されるように、切込溝14は、収容部材4のうちフランジ部9を除く収容部8を方向Bに沿って横断するように設けられる。また、たとえば、切込溝14は、収容部材4の上部平面から見て直線上ではなく、図4(B)で例示されるように曲線上、あるいは図4(C)で例示されるようにジグザグ線上に設けることが可能である。
【0018】
また、切込溝14の断面形状は、たとえば図4(D)に示されるくさび型、図4(E)に示される矩形形状、図4(F)に示される半円形状、またはその他種々の形状が可能である。
【0019】
図1、図2(A)〜(C)において、切込溝14を設けることにより、収容部材4における当該部位の剛性が他の部位より低下する。よって、収容部8は、板状部材4が切込溝12で収容部材4側の反対側(つまり下方側)に折り曲げられたときに、切込溝14で2つの部分に分離する。このときの状況は、図5に示される。
【0020】
図5(A)は、板状部材6が下方に折れ曲がるときの、図2(A)のA−A´における包装材2の断面図を示す。また、図5(B)は、包装材2の斜視図を示す。板状部材6が切込溝12で折れ曲がるとき、収容部材4の切込溝14に張力が作用する。そして、この張力により切込溝14が破断し、収容部8が切込溝14で部分8a、8bに分離する。切込溝14の深さは、板状部材6が折り曲げられたときに破断されるが、たとえば鞄などに包装材2を入れて持ち運ぶ際に、他の収容物との接触では破断しない程度であることが好ましい。
【0021】
また、一例では、板状部材6は、収容部材4を形成する素材より高い剛性を有する素材で形成される。そうすることで、板状部材6の折り曲げられる方の端部6a側が平面を維持したまま折れ曲がることが可能になり、収容部材4の切込溝14に効率的に張力を作用させることができる。よって、より確実に、収容部材4を切込溝14で破断させることができる。また、たとえば鞄などに包装材2を入れて持ち運ぶ際に、板状部材6がある程度の剛性を有することにより、他の収納物との接触によって板状部材6が破れる蓋然性を低減できる。
【0022】
本実施形態によれば、たとえば、患者は、板状部材6の両端を把持し、一方の端部6aを下方に回動させるように力を加える。これにより、板状部材6が、切込溝12で折れ曲がる。これにともない、収容部材4の切込溝14が破断して、収容部8が2つの部分、収容部8a、収容部8bに分離する。このようにして包装材2が開封される。これにより、いわゆるプレススルー式やピール式といった開封方法との比較において、包装材2は、指先の細かい操作を必要とせず、より容易に開封される。このようにして開封された包装材2をたとえば傾けることにより、医薬製剤10を収容部8から容易に取り出すことができる。よって、たとえばプレススルー方式のように医薬製剤10が押圧力により飛び出したり、破壊されたりといった事態を回避できる。また、プレススルー方式のように医薬製剤10によりアルミニウム製のシートを破るわけではないので、破れたシートが離散し、患者がこれを誤飲するという事態を防止できる。
【0023】
図5(A)において、好ましい一例では、切込溝12、14は、収容部8における中心から、図面上で左側に寄った位置に設けられる。これにより、切込溝14により分離される収容部8aと収容部8bは異なる容積を有する。そして、収容部8aは医薬製剤10の収容に必要な容積以上の容積を有し、収容部8bは医薬製剤10の収容に必要な容積より小さい容積を有する。このようにすることで、収容部8aに医薬製剤10を収容した状態で収容部8を分離できる。言い換えると、医薬製剤10が収容部8a、8bにまたがった状態で収容部8が分離されることを回避できる。よって、第一に、収容部8を分離するときの反動により医薬製剤10が収容部8から飛び出すことを防止できる。このことは、医薬製剤10が固形製剤の場合、粉末製剤の場合ともに有効である。また、第二に、医薬製剤10が口腔内崩壊錠のように強度が低い場合であっても、医薬製剤10が収容部8a、8bにまたがった状態で収容部8が分離され、収容部8a、8bそれぞれの分離方向に沿って医薬製剤10に対し外力が作用し、これにより医薬製剤10が破壊されるという事態を回避できる。好ましい例では、収容部8aは、医薬製剤10を収容するために必要最小限の容積を有する。たとえば、医薬製剤10が固形製剤の場合、医薬製剤10の表面から収容部8の内壁までの距離が0.5mm〜2.0mm程度であることが好ましい。そうすることで、包装材2を持ち運ぶ際に医薬製剤10が収容部8内で揺れ動き、収容部8の内壁に衝突して破壊される蓋然性を低減させることができる。
【0024】
別の好ましい例が、図6(A)、(B)に示される。図6(A)、(B)は、包装材2の側面を示す。図6(A)に示される例では、切込溝12、14は、収容部8における左端部8l近傍に設けられる。そして、収容部8aが医薬製剤10の収容に必要最小限の容積を有する。その一方、収容部8bは極めて小さい容積を有する(または容積を有さない)。すなわち、収容部材4の収容部8bに対応する部分が、収容部8aに対する蓋部のように機能し、医薬製剤10が収容部8a、8bにまたがった状態で収容部8が分離されることがさらに回避されやすくなる。あるいは、医薬製剤10が収容部8a、8bにまたがったとしても、その程度を、医薬製剤10が飛び出したり、医薬製剤10に外力が作用したりしない程度に留めることができる。なお、収容部8aに対する蓋部のように機能することは、医薬製剤10が固形製剤の場合、粉末製剤の場合ともに有効である。
【0025】
また、図6(B)に示される例では、収容部材4において、収容部8における切込溝14の左側の部分に傾斜が設けられる。傾斜は、切込溝14の左側から板状部材6と接する部分にかけて設けられる。ここでは、医薬製剤10は一定の高さTを有する固形製剤である。好ましくは、医薬製剤10は、たとえば略矩形形状である。この場合において、収容部8aが医薬製剤10の収容に必要最低限の容積を有し、かつ、収容部8aが医薬製剤10と略相似形状を有する。ここにおいて、収容部8bに斜面を設けたことで、収容部8bが極めて小さい容積を有する。それとともに、収容部8bの高さT´が医薬製剤10の高さTより小さくなる。これにより、医薬製剤10が傾斜面に阻まれて、収容部8bの方向に一定距離以上移動することが防止される。このことにより、医薬製剤10が収容部8a、8bにまたがった状態で収容部8が分離されることがさらに回避されやすくなる。あるいは、医薬製剤10が収容部8a、8bにまたがったとしても、その程度を、医薬製剤10が飛び出したり、医薬製剤10に外力が作用したりしない程度に留めることができる。
【0026】
上記の説明では、図2(A)〜(C)で示されたとおり、収容部材4が開口部7の外側に延在するフランジ部9を有し、フランジ部9の下部面にて板状部材6が収容部材4に固定される場合を例示した。しかしながら、本実施形態は、フランジ部9の有無や態様により限定されない。
【0027】
図7(A)〜(C)は、フランジ部9の態様が異なる包装材2の、模式的な断面図を示す。たとえば図7(A)、(B)に示されるように、フランジ部9´が、開口部7の内側に屈曲した形態であってもよい。図7(A)の例では、板状部材6が収容部8の外縁より外側に延在する領域6dを有する。あるいは、図7(B)の例では、板状部材6が収容部8の外縁と同等のサイズに構成される。あるいは、たとえば図7(C)に示されるように、収容部材4がフランジ部を有さず、板状部材4が開口部7の周縁部71に固定されてもよい。図7(B)、(C)の場合における包装材2の斜視図が、図7(D)に示される。図7(D)に示されるように、図7(B)、(C)の場合、包装材2は全体として矩形形状となる。この場合、使用者(患者)は、収容部材4と板状部材6とを同時に指で把持して板状部材6を切込溝12で折り曲げることで、収容部材4を切込溝14で破断させ、収容部8を分離させる。これにより、包装材2が開封される。
【0028】
[第1の変形例]
図8は、本実施形態の第1の変形例を示す。図8(A)は、図2(A)に示す包装材2のA−A´における断面図である。第1の変形例では、包装材2は、2つに分離される収容部8のうち収容部8b側の内壁に、収容部8a、8bが結合した状態で医薬製剤10が収容部8a側から8b側内に移動することを防ぐための突起部21を有する。好ましくは、突起部21は、切込溝14に近接して設けられる。あるいは、包装材2は、収容部8b側における板状部材6の上部面に、収容部8a、8bが結合した状態で医薬製剤10が収容部8a側から8b側内に移動することを防ぐための突起部22を有する。好ましくは、突起部22は、切込溝12に近接して設けられる。あるいは、包装材2は、突起部21、22を同時に備えてもよい。
【0029】
突起部21、22の配置例は、図8(B)、(C)に示される。図8(B)、(C)は、包装材2の模式的な上部平面図を示す。たとえば図8(B)に示されるように、突起部21及び/または22は、収容部8の横断方向Bの全体に設けられる。あるいは、たとえば図8(C)に示されるように、突起部21及び/または22は、収容部8の横断方向Bの一部に(たとえば間欠的に)設けられる。
【0030】
突起部21、22の高さの例は、図8(D)に示される。図8(D)は、突起部21、22付近の収容部材4及び板状部材6の拡大された断面図を示す。医薬製剤10が固形製剤の場合、突起部21及び/または22の高さは、たとえば、突起部21下部から板状部材6上部面までの距離d1、突起部22上部から収容部8内壁までの距離d2、または突起部21下部と突起部22上部との距離d3が、固形製剤10の高さhより小さくなるように設けられる。そうすることで、収容部8内で固形製剤10が収容部8a側から8b側に移動することを防止できる。また、医薬製剤10が粉末製剤の場合には、粉末製剤が収容部8a側から8b側に移動することことを、突起部21、22の高さに応じた程度で防止できる。このことにより、突起部21、22を設けない場合との比較において、より確実に、医薬製剤10が収容部8a、8bにまたがった状態で収容部8が分離されることを回避できる。
【0031】
また、収容部8の収容部8b側に突起部21及び/または22を設けることで、収容部8aにおいて、収容部8bが分離したことにより生じる開口面8cでは、医薬製剤10が固形製剤の場合に、これが通過可能な面積が確保される。よって、包装材2の開封後は、たとえば包装材2を傾けるだけで、収容されている医薬製剤10を容易に取り出すことができる。
【0032】
[第2の変形例]
図9は、本実施形態の第2の変形例を示す図である。図9(A)は、図2(A)に示される包装材2の、A−A´に沿った断面図を示す。また、図9(B)は、図9(A)における収容部材4の、切込溝14付近の部位Dの拡大図を示す。第2の変形例では、収容部材4は、切込溝14の両側に、分離した後の収容部8a、8bを閉じ合わせた状態で、互いに係合する係合部対25、26を有する。係合部対25、26は、たとえば、収容部8a側の外壁(または内壁)と、収容部8bの内壁(または外壁)とに設けられる突起部対である。あるいは、たとえば、片方を突起部、他方をこれに嵌合可能な凹部としてもよい。
【0033】
係合部対25、26の配置例は、図9(D)、(E)に示される。図9(D)、(E)は、収容部材4の上部平面図を示す。たとえば図9(D)に示されるように、係合部対25、26は、収容部8の横断方向Bの全体に設けられる。また、たとえば図9(E)に示されるように、係合部対25、26は、収容部8の横断方向Bの一部に、たとえば間欠的に設けられる。
【0034】
また、収容部材4は、たとえば、ある程度の弾性または可撓性を有する素材で形成される。具体的には、プラスチックで形成される。これにより、収容部8a、8bを閉じ合わせたときに、図9(C)に示すように、収容部材4の収容部8a側の端部4aと収容部8b側の端部4bのうち、一方(たとえば端部4b)を撓ませてその一部を他方(たとえば端部4a)の下側に挿入でき、係合部対25、26が互いに係合される。あるいは、係合部対25、26が可撓性を有するようにすれば、係合を容易にすることができる。
【0035】
さらに好適な例では、図9(B)で示されるように、切込溝14が鉛直方向Pに対しある程度の角度αをもって設けられる。これにより、分離後の端部4a、4bの断面が傾斜を有する。よって、たとえば図9(C)のように、端部4bを端部4a側の下側に挿入することが容易になる。このようにして、収容部8a、8bが互いに係合される。なお、第2の変形例では、板状部材6は、切込溝12で破断することなく折れ曲がるように構成されても、切込溝12で破断するように構成されてもよい。ただし、切込溝12で破断することなく折れ曲がるように構成されることは、収容部8a、8bを閉じ合わせて互いに係合させるときに、端部4a、4bの位置決めを容易にする上で好ましい。
【0036】
このようにして、包装材2は、開封後であっても、一時的に封止することができる。このことは、たとえば、収容される医薬製剤10を複数回に分けて服用する場合に有効である。たとえば、複数個の固形製剤が収容されており、複数回に分けて1個ずつ服用する場合である。または、たとえば、大人用の固形製剤を小児に服用させるために、収容部材4の上から指先などで押圧することで予め固形製剤に設けられた切込溝で固形製剤を分割し、分割された部分ずつ服用する場合である。このような場合であっても、開封後の包装材2を一時的に封止することができるので、医薬製剤10を紛失することなく良好な保管状態に保つことができる。特に、プレススルー方式やピール方式との比較において、医薬剤の保管状態を向上させることができる。
【0037】
次に、包装材2の実施例を説明する。なお、上述した本実施形態の各変形例、及び次に述べる各実施例は、それぞれ単独で、あるいは複数の可能な組合せにより実施可能である。
【実施例】
【0038】
実施例では、包装材2が、板状部材6の面方向に複数個連結した包装材群を構成する。連結の態様は種々可能である。
【0039】
図10は、包装材2の第1、第2の実施例を示す図である。第1の実施例では、たとえば図10(A)に示されるように、複数個(たとえば、3個)の包装材2a、b、及びcの板状部材6が、切込溝12に沿った方向に連結し、包装材群200を構成する。具体的には、この包装材群200は、1枚の長手形状の板状部材6に、複数の収容部8が形成された収容部材4、または、それぞれ収容部8が形成された複数の収容部材4を固定することで構成される。この場合、隣接する包装材2a〜cでは、板状部材6の折り曲げ用の端部6a、b、及びcが互いに離間して設けられる。また、板状部材6に設けられる切込溝12は、連結して設けてもよいし、包装材2a〜cごとに分離させて設けてもよい。また、収容部材4に設けられる切込溝14は、連結して設けてもよいし、包装材2ごとに分離させて設けてもよい。このようにすることで、板状部材6の折り曲げ用端部6a〜cを1包装ずつ、切込溝12で折り曲げることができる。そして、収容部8が切込溝14で分離して、包装材2a〜cが1つずつ開封される。
【0040】
包装材2a〜cが開封されるときの状態は、図10(B)に示される。図10(B)は、図10(A)における包装材群200を左方向(矢印L)から観察した状態を示す。図10(B)に示されるように、たとえば包装材2b、cの折り曲げ用端部6b、cはそのままで、包装材2aの折り曲げ用端部6aを下方に折り曲げる(矢印G)ことで、包装材2b、cを開封することなく包装材2aを開封し、医薬製剤10を取り出すことができる(矢印H)。包装材2b、cについても同様に、他の包装材を開封することなく、1つずつ包装材を開封し、それぞれの医薬製剤10を取り出すことができる。
【0041】
第2の実施例では、たとえば図10(C)に示されるように、複数個の包装材2が、板状部材6の切込溝12に対し直角方向に連結されて包装材群200を構成する。この場合、図10(D)に示されるように、開封済みの包装材2の全体が、これに隣接する未開封の包装材2の折り曲げ用端部6aとして機能する。このようにすることで、板状部材6を切込溝12で折り曲げて収容部8を切込溝14で分離させ、包装材2を1つずつ開封して、医薬製剤10を取り出すことができる。上記の第1、第2の実施例において、複数の包装材2はそれぞれ分離せずに連結したまま用いられる。そうすることで、たとえば1回の服用量ごとに包装材が切り離されて用いられ、それにより包装材ごと患者が誤飲するといった事態を回避することができる。
【0042】
一方で、包装材群200が嵩張らずに取り扱い易くして利便性を向上させるために、包装材2、2a、2b、2cがそれぞれ分離可能に包装材群200を構成してもよい。たとえば、図10(C)の例では、板状部材6を切込溝12で折り曲げたときに、板状部材6が切込溝12で分離するようにしてもよい。
【0043】
図11は、包装材2の第3、第4の実施例を示す図である。上記の第1、第2の実施例では、複数個の包装材2が、1次元状の配列で連結された例を示した。第3、第4の実施例では、さらに、複数個の包装材2は、2次元配列で連結される。
【0044】
第3の実施例が、図11(A)に示される。図11(A)には、三角形状に連結された3個の包装材2からなる、包装材群200が示される。この場合、三角形の板状部材6に、3つの収容部8が形成された1つの収容部材6、または、1つまたは複数の収容部8が形成された複数の収容部材6が固定されることで、包装材群200が構成される。この例では、包装材群200の中心で分割された、四角形の形状を有する3つの収容部8が設けられる。そして、板状部材6の切込溝12及び収容部材4の切込溝14は、三角形の各頂点付近に設けられる。この包装材群200では、個々の包装材2は、それぞれの三角形の頂点部分が折り曲げ用端部6aとして折り曲げられることで、収容部8が分離され、医薬製剤10が取り出される。
【0045】
また、第4の実施例が、図11(B)に示される。図11(B)には、四角形状に連結された4個の包装材2からなる、包装材群200が示される。この場合、四角形の板状部材6に、4つの収容部8が形成された1つの収容部材6、または、1つまたは複数の収容部8が形成された複数の収容部材6が固定されることで、包装材群200が構成される。この例では、包装材群200の中心で分割された、四角形の形状を有する4つの収容部8が設けられる。そして、板状部材6の切込溝12及び収容部材4の切込溝14は、四角形の各頂点付近に設けられる。この包装材群200では、個々の包装材2は、それぞれの四角形の頂点部分が折り曲げ用端部6aとして折り曲げられることで、収容部8が分離され、医薬製剤10が取り出される。
【0046】
図11(A)、(B)に示される第3、第4の実施例において、複数の包装材2はそれぞれ分離せずに連結したまま用いられる。そうすることで、たとえば1回の服用量ごとに包装材が切り離されて用いられ、それにより包装材ごと患者が誤飲するといった事態を回避することができる。また、収容部8の第1の部分が医薬製剤10を収容するための容積以上の容積を有し、第2の部分が医薬製剤10を収容するための容積より小さい容積を有する。よって、医薬製剤10が第1の部分と第2の部分にまたがった状態で収容部8が分離されることを回避できる。また、収容部8の第2の部分が分離したことにより生じる第1の部分における開口面は、医薬製剤10が通過可能な面積を有する。よって、上述した実施形態に対応する効果を奏することができる。
【0047】
以上説明した実施形態によれば、使用者の利便性と安全性を向上させる包装材が提供される。
【符号の説明】
【0048】
2:包装材、4:収容部材、6:板状部材、7:開口部、8:収容部、
12、14:切込溝、21、22:突起部、25、26:係合部、200:包装材群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬用の固形製剤または粉末製剤を収容するための凹状の収容部が設けられた収容部材と、前記収容部の開口部を封止する板状部材とを有する包装材であって、
前記板状部材は、前記開口部を横断する方向に沿った第1の切込溝を有し、
前記収容部材は、前記第1の切込溝に対向して設けられた第2の切込溝を有し、
前記収容部は、前記板状部材が前記第1の切込溝で前記収容部材側の反対側に折り曲げられたときに前記第2の切込溝で第1、第2の部分に分離することを特徴とする包装材。
【請求項2】
請求項1において、
前記収容部の第1の部分は、前記固形製剤または粉末製剤を収容するための容積以上の容積を有し、
前記収容部の第2の部分は、前記固形製剤または粉末製剤を収容するための容積より小さい容積を有することを特徴とする包装材。
【請求項3】
請求項2において、
前記収容部の第2の部分側の、前記収容部の内壁及び前記板状部材の表面の両方またはいずれか一方に、前記収容部の第1、第2の部分が結合した状態で前記固形製剤または粉末製剤が前記収容部の第1の部分側から前記収容部の第2の部分側内に移動することを防ぐための突起部を有することを特徴とする包装材。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記収容部の第2の部分が分離したことにより生じる前記収容部の第1の部分における開口面は、前記固形製剤が通過可能な面積を有することを特徴とする包装材。
【請求項5】
請求項1において、
前記収容部材は、前記第2の切込溝の両側に、分離した後の前記収容部の前記第1、第2の部分を閉じ合わせた状態で互いに係合する係合部対を有することを特徴とする包装材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記収容部材は、弾性または可撓性を有する第1の素材で形成され、
前記板状部材は、前記第1の素材より高い剛性を有する第2の素材で形成されることを特徴とする包装材。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記固形製剤は、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、坐剤その他を含み、前記粉末製剤は、顆粒剤、散剤その他を含むことを特徴とする包装材。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の包装材が前記板状部材の面方向に複数個連結された包装材群。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−116514(P2012−116514A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267082(P2010−267082)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【Fターム(参考)】