説明

包装材料

【課題】良好な熱接着性を維持したまま、撥水性能の持続性がさらに改善された包装材料を提供する。
【解決手段】シート状基材及び熱接着層を含む積層体からなる包装材料であって、(1)シート状基材の少なくとも一方の面に熱接着層が積層されており、(2)前記熱接着層がシート状基材と接する面の反対側の面に撥水性粒子が付着しており、(3)密度の異なる2種以上の充填粒子が前記熱接着層中に含まれている、ことを特徴とする包装材料に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料に関する。より詳しくは、良好な熱接着性と優れた撥水性能を併せもつ包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より多種多様の包装材料が知られているが、その内容物も多岐にわたる。例えば、ゼリー菓子、プリン、ヨーグルト、液体洗剤、練り歯磨き、カレールー、シロップ、ワセリン、洗顔クリーム、洗顔ムース等のように、食品、飲料品、医薬品、化粧品、化学品等の幅広い分野におよぶ。また、内容物の性状も固体、半固体、液体、粘性体、ゲル状物等のように様々なものがある。これらの内容物を包装するための包装材料においては、密封性が要求されるほかに、内容物、包装形態、用途等に応じて熱接着性、遮光性、耐熱性、耐久性等が要求される。
【0003】
ところが、これらの特性を満たしている包装材料であっても、次のような問題がある。すなわち、内容物が包装材料に付着するという問題である。内容物が包装材料に付着すれば、内容物をすべて使い切ることが困難になり、それだけ無駄が生じることになる。また、内容物をすべて使い切るためには包装材料に付着した内容物を別途に回収しなければならず、手間がかかる。このため、包装材料では、上記のような密封性等のほか、内容物が包装材料に付着しにくい性質(非付着性)を備えていることが必要である。
【0004】
これに対し、接着層を介して一体化された基材層とヒートシール層とを備えた蓋材において、ヒートシール層が、付着防止効果を有するグリセリン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸アミド等を含むポリオレフィンからなり、その厚さが10μmよりも厚く、接着層と該ヒートシール層との間にポリオレフィンからなる中間層が設けられていることを特徴とする充填物付着防止蓋材が提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、特許文献1のような蓋材では、使用できるヒートシール層の種類又は厚みが制限される上、グリセリン酸エステル等の添加剤の使用量を厳格に制御しなければならない。添加剤の使用量が多すぎるとヒートシール性能を低下させる一方、添加剤の使用量を少なくすればそれだけ付着防止効果が低下する。
【0006】
一方、本発明者らは、先に、熱接着性と優れた非付着性を併せもつ蓋材を開発している(特許文献2)。この蓋材は、撥ヨーグルト性等に優れ、長距離の輸送試験に耐え、輸送試験の後においても、優れた撥ヨーグルト性を得ることができる。また、本発明者らは、熱接着層(熱可塑性樹脂)に充填粒子を添加することにより、さらに撥水性能が持続できる蓋材を提案している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−37310
【特許文献2】特許第4348401号
【特許文献3】特開2011−93315
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2等による技術によれば優れた撥水性能と熱接着性とを同時に達成することができるが、より過酷な環境下であっても優れた撥水性能が持続できるように改善する余地が残されている。
【0009】
従って、本発明は、良好な熱接着性を維持したまま、撥水性能の持続性がさらに改善された包装材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の構成を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の包装材料に係る。
1. シート状基材及び熱接着層を含む包装材料であって、
(1)シート状基材の少なくとも一方の面に熱接着層が積層されており、
(2)前記熱接着層がシート状基材と接する面の反対側の面に撥水性粒子が付着しており、
(3)密度の異なる2種以上の充填粒子が前記熱接着層中に含まれている、
ことを特徴とする包装材料。
2. 充填粒子として、1)密度1.0g/cm未満の低密度充填粒子及び2)密度1.0g/cm以上の高密度充填粒子を含む、前記項1に記載の包装材料。
3. 低密度充填粒子の密度が、高密度充填粒子の密度の60〜95%である、前記項2に記載の包装材料。
4. 低密度充填粒子の材質はポリエチレン系樹脂であり、高密度充填粒子の材質はアクリル系樹脂である、前記項2に記載の包装材料。
5. 低密度充填粒子の平均粒子径は1〜20μmであり、高密度充填粒子の平均粒子径は5〜35μmである、前記項2〜4のいずれかに記載の包装材料。
6. 低密度充填粒子の平均粒子径が、高密度充填粒子の平均粒子径よりも小さい、前記項2〜5のいずれかに記載の包装材料。
7. 前記撥水性粒子が疎水性酸化物粒子を含む、前記項1〜6のいずれかに記載の包装材料。
8. 前記項1〜7のいずれかに記載の包装材料からなる蓋材。
9. 熱接着層側の最外面に内容物が接触可能な状態で当該内容物が蓋材と容器によって包装されてなる製品のために用いられる、前記項8に記載の蓋材。
10. 熱接着時において、熱接着される領域上に存在する撥水性粒子は当該熱接着層中に埋め込まれる、前記項8又は9に記載の蓋材。
【発明の効果】
【0012】
本発明の包装材料は、互いに密度の異なる2種以上の充填粒子が熱接着層中に含まれ、その上に撥水性粒子が付着した構成が採用されているので、良好な熱接着性を維持したまま、撥水性能の持続性を改善された包装材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の包装材料の断面構造の模式図である。
【図2】本発明の包装材料を容器の蓋材として用いて作製された包装体の断面構造の模式図である。
【符号の説明】
【0014】
1 シート状基材
2 熱接着層
3 撥水性粒子
4 容器
5 内容物
6a 充填粒子
6b 充填粒子
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.包装材料
本発明の包装材料は、シート状基材及び熱接着層を含む積層体からなる包装材料であって、
(1)シート状基材の少なくとも一方の面に熱接着層が積層されており、
(2)前記熱接着層がシート状基材と接する面の反対側の面に撥水性粒子が付着しており、
(3)密度の異なる2種以上の充填粒子が前記熱接着層中に含まれている、
ことを特徴とする。
【0016】
図1に本発明の包装材料の一例の断面構造の模式図を示す。図1の包装材料では、シート状基材1の一方面に、互いに密度(比重)が異なる2種類の充填粒子6a,6bを含んだ熱接着層2が積層されており、さらにその熱接着層2のシート状基材と接着していない方の(シート状基材と反対側の)表面に撥水性粒子3が付着している。撥水性粒子3は熱接着層2に付着して固定されている。すなわち、撥水性粒子と内容物とが接触しても撥水性粒子が脱落しないように付着している。図1において、撥水性粒子3は、一次粒子が含まれていても良いが、その凝集体(二次粒子)が多く含まれていることが望ましい。特に、撥水性粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層をなしていることがより好ましい。すなわち、熱接着層2の上には、撥水性粒子により形成された三次元網目状構造からなる多孔質層が積層されていることが好ましい。
【0017】
本発明においては、熱接着層中に充填粒子を含有させることにより、熱接着層の表面(撥水性粒子が付着する面)がその断面において凹凸状になり、その凹部に撥水性粒子が入り込むことにより、非付着性を長期間維持すると考えられる。すなわち、内容物のほか、工程中の機器又は装置との接触が生じても、当該凹部に入り込んだ撥水性粒子は当該凹部に入り込んで固定された状態を維持することによって撥水性粒子の脱落を効果的に抑制ないしは防止できる結果、優れた非付着性を持続的に発揮することができる。換言すれば、良好な非付着性を比較的長期にわたり発揮することができる。
【0018】
図2には、本発明の包装材料を容器の蓋材として用いて作製された包装体の断面構造の模式図を示す。なお、図2では、撥水性粒子3及び充填粒子6a,6bの表記は省略されている。容器4に内容物5が充填され、その開口部と包装材料(積層体)の熱接着層2とが接するような状態で密封される。撥水性粒子3(又は撥水性粒子からなる多孔質層)は、最外面をなすように配置される。つまり、熱接着層2に付着している撥水性粒子が内容物5と接触可能な状態で本発明の包装材料が使用されることになる。このような場合であっても、熱接着層2は撥水性粒子によって保護され、優れた非付着性を有するので、たとえ内容物5が熱接着層2近傍に接触しても、内容物5の熱接着層2への付着が撥水性粒子3(又は撥水性粒子からなる多孔質層)によって遮られ、なおかつ、はじかれる。このため、内容物が熱接着層近傍に付着したままの状態とならずに、撥水性粒子(又は撥水性粒子からなる多孔質層)にはじかれて内容物が容器内に戻る。さらに、撥水性粒子3(又は撥水性粒子からなる多孔質層)の一部は、充填粒子6a,6bによって形成された凹部や間隙に入り込んだ状態なので、内容物の物理的な接触や輸送中の振動等による撥水性粒子3(又は撥水性粒子からなる多孔質層)の剥離・脱落を効果的に防止する結果、優れた非付着性を長期間持続的に発揮する。なお、容器4の材質としては、例えば金属、合成樹脂、ガラス、紙、それらの複合材等から適宜選択でき、その材質に応じて熱接着層の種類、成分等を適宜設定することができる。
【0019】
熱接着層
熱接着層には、公知の熱接着性材料を採用することができる。例えば、公知のシーラントフィルムのほか、ラッカータイプ接着剤、イージーピール接着剤、ホットメルト接着剤等の熱接着性接着剤により形成される層を採用することができる。本発明では、この中でも、ラッカータイプ接着剤又はホットメルト接着剤により形成される層を採用するのが好ましく、特にラッカータイプ接着剤により形成される熱接着層をより好適に採用することができる。
【0020】
公知の熱接着性接着剤の主成分としては特に限定されず、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマ−、ポリブテンポリマ−、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他の熱接着性樹脂のほか、これらのブレンド樹脂、これらを構成するモノマーの組合せを含む共重合体、変性樹脂等を用いることができる。
【0021】
熱接着層の厚みは特に限定的ではないが、生産性、コスト等の観点より0.1〜100μm程度とすることが好ましく、1〜30μm程度とすることがより好ましい。本発明の包装材料では、熱接着するに際して、熱接着される領域上に存在する撥水性粒子が熱接着層中に埋め込まれ、熱接着層が最表面となることにより熱接着を行うことができる。このため、上記厚みの範囲内において、撥水性粒子を熱接着層にできるだけ多く埋め込むことができる厚みに設定することが望ましい。
【0022】
熱接着層中における熱接着剤の含有量(固形分基準)は、例えば熱接着剤の種類、充填粒子、その他の添加剤の使用の有無等によって異なるが、通常は20〜99重量%とし、特に30〜97重量%とすることが好ましく、さらに好ましくは50〜90重量%とする。
【0023】
シート状基材
本発明では、必要に応じて、熱接着層を補強したり、他の特性(耐水分透過性、耐酸素透過性、遮光性、断熱性、耐衝撃性等)を付与する目的で、熱接着層に他の層(シート状基材と称す)を積層することもできる。この場合、通常は、図1に示すようにシート状基材/熱接着層/撥水性粒子を順次積層した3層構造とすれば良い。
【0024】
シート状基材としては、公知の材料を採用することができる。例えば、紙、合成紙、樹脂フィルム、蒸着層付き樹脂フィルム、アルミニウム箔、その他の金属箔等の単体又はこれらの複合材料・積層材料を好適に用いることができる。
【0025】
シート状基材には、公知の包装材料で採用されている各層が任意の位置に積層されていても良い。例えば、印刷層、印刷保護層(いわゆるOP層)、着色層、接着剤層、接着強化層、プライマーコート層、アンカーコート層、防滑剤層、滑剤層、防曇剤層等が挙げられる。
【0026】
シート状基材の積層方法、シート状基材と熱接着層との積層方法も限定的でなく、例えばドライラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法、ヒートラミネート法等の公知の方法を採用することができる。
【0027】
充填粒子
本発明では、密度の異なる2種以上の充填粒子を熱接着層中に含有させる。このような充填粒子を熱接着層中にそれぞれ分散させることにより、より優れた耐摩耗性等を熱接着層に付与することができるうえ、耐摩耗性を長時間持続させることができる結果、撥水効果(撥ヨーグルト性)をさらに持続させることができる。従って、本発明では、互いに密度の異なる3種、4種又はそれ以上の複数の異なる密度を有する充填粒子を併用することもできる。この場合、互いに密度の異なる2種の充填粒子が含まれる限り、第3番目以降の充填粒子は前記2種の充填粒子のいずれの密度と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0028】
充填粒子の材質としては、有機成分及び無機成分のいずれを採用しても良く、両方採用しても良い。
【0029】
無機成分としては、例えば1)アルミニウム、銅、鉄、チタン、銀、カルシウム等の金属又はこれらを含む合金又は金属間化合物、2)酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄等の酸化物、3)リン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム等の無機酸塩又は有機酸塩、4)ガラス、5)窒化アルミニウム、窒化硼素、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック等の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0030】
有機成分としては、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の有機高分子成分(又は樹脂成分)の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0031】
充填粒子の形状は限定的でなく、例えば球状、回転楕円体状、不定形状、涙滴状、扁平状、中空状、多孔質状等のいずれであっても良い。
【0032】
充填粒子の平均粒子径は、特に限定されず、例えば1〜100μm、好ましくは1〜50μmの範囲内で適宜設定することができる。但し、後記の低密度充填粒子及び高密度充填粒子を用いる場合は、後記に示す条件に従って調整すれば良い。
【0033】
充填粒子の密度は、2種以上の充填粒子のいずれも通常0.01〜10g/cmの範囲内、望ましくは0.8〜3.0g/cmの範囲内で適宜調整することができる。特に、本発明では、密度1.0g/cm未満(特に密度0.95g/cm以下)の低密度充填粒子と、密度1.0g/cm以上(特に密度1.1g/cm以上)の高密度充填粒子とが熱接着層中に含まれることが好ましい。このような密度の異なる充填粒子を採用することにより、充填粒子の分散性がいっそう良くなり、熱接着層中により均一に分散させることができる結果、撥水性粒子を比較的均一に付着させることが可能となり、耐摩耗性及び非付着性をより効果的に持続させることができる。かかる見地より、低密度充填粒子の密度は、高密度充填粒子の密度の60〜95%(特に70〜90%)とすることが好ましい。
【0034】
低密度充填粒子の材質としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂等を挙げることができる。また、高密度充填粒子の材質としては、例えばビニル樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、カーボネート樹脂、これらの架橋樹脂等を挙げることができる。
【0035】
低密度充填粒子と高密度充填粒子を用いる場合、低密度充填粒子の平均粒子径は通常1〜20μmとすることが好ましい。また、高密度充填粒子の平均粒子径は通常5〜35μmとすることが好ましい。この場合、低密度充填粒子の平均粒子径は、高密度充填粒子の平均粒子径より小さいことがより好ましい。その理由は、密度が異なる2種の充填粒子を用い、かつ、低密度充填粒子の平均粒子径を小さくした方が、充填粒子の分散性が良くなり、均一な熱接着層の形成が可能となるためと考えられる。
【0036】
低密度充填粒子の平均粒子径は、密度の異なる2種以上の低密度充填粒子を用いる場合においては、これらの混合粉末の平均粒子径とすれば良い。同様に、高密度充填粒子の平均粒子径は、密度の異なる2種以上の高密度充填粒子を用いる場合においては、これらの混合粉末の平均粒子径とすれば良い。
【0037】
なお、充填粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計によって測定すれば良いが、レーザー回折式粒度分布計による測定が困難な場合は、顕微鏡での観察、例えば走査型電子顕微鏡等で観察(あるいは写真撮影)し、粒子形状が球状の場合はその直径、非球状の場合はその最長径と最短径との平均値を直径とみなし、走査型電子顕微鏡等による観察により任意に選んだ20個分の粒子の直径の平均を平均粒子径とすれば良い。
【0038】
熱接着層中における充填粒子の含有量は、熱接着性接着剤(主成分樹脂等)又は充填粒子の種類、所望の物性等に応じて適宜変更できるが、一般的には固形分重量基準で1〜80重量%が好ましく、3〜50重量%がより好ましく、15〜35重量%が最も好ましい。
【0039】
充填粒子を含有させる方法は、特に限定されないが、一般的には熱接着層を形成するための原料(熱接着性樹脂を含む組成物)に充填粒子を配合する方法等が挙げられる。混合する方法は、乾式混合又は湿式混合のいずれであっても良い。一般的に熱接着層の主成分は1)熱可塑性樹脂又はそれを構成するモノマーもしくはオリゴマー、2)溶剤、3)必要に応じて架橋剤等からなるため、それらの混合物中に充填粒子を添加混合すれば良い。
【0040】
撥水性粒子
熱接着層に付着する撥水性粒子の一次粒子平均径は3nm〜10μm程度が好ましく、3〜100nmがより好ましく、5〜50nmが最も好ましい。
【0041】
本発明において、一次粒子平均径の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM、FE−SEM)で実施することができ、走査型電子顕微鏡の分解能が低い場合には透過型電子顕微鏡等の他の電子顕微鏡を併用して実施しても良い。具体的には、粒子形状が球状の場合はその直径、非球状の場合はその最長径と最短径との平均値を直径とみなし、走査型電子顕微鏡等による観察により任意に選んだ20個分の粒子の直径の平均を一次粒子平均径とする。
【0042】
撥水性粒子としては、疎水性を有するものであれば特に限定されず、表面処理により疎水化されたものであっても良い。例えば、親水性酸化物微粒子をシランカップリング剤等で表面処理を施し、表面状態を疎水性とした微粒子を用いることもできる。酸化物の種類も、疎水性を有するものであれば限定されない。例えばシリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ、チタニア等の少なくとも1種を用いることができる。これらは公知又は市販のものを採用することができる。例えば、シリカとしては、製品名「AEROSIL R972」、「AEROSIL R972V」、「AEROSIL R972CF」、「AEROSIL R974」、「AEROSIL RX200」、「AEROSIL RY200」(以上、日本アエロジル株式会社製)、「AEROSIL R202」、「AEROSIL R805」、「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」、(以上、エボニック デグサ社製)、「サイロホービック100」「サイロホービック200」「サイロホービック603」(以上、富士シリシア化学株式会社製)等が挙げられる。チタニアとしては、製品名「AEROXIDE TiO T805」(エボニック デグサ社製)等が例示できる。アルミナとしては、製品名「AEROXIDE Alu C」(エボニック デグサ社製)等をシランカップリング剤で処理して粒子表面を疎水性とした微粒子が例示できる。
【0043】
この中でも、本発明では、疎水性シリカ微粒子を好適に用いることができる。とりわけ、より優れた非付着性が得られるという点において、表面にトリメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子が好ましい。これに対応する市販品としては、例えば前記「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」(いずれもエボニック デグサ社製)等が挙げられる。
【0044】
熱接着層に付着させる撥水性粒子の付着量(乾燥後重量)は限定的ではないが、通常0.01〜10g/mとするのが好ましく、0.2〜1.5g/mとするのがより好ましく、0.2〜1g/mとするのが最も好ましい。上記範囲内に設定することによって、より優れた非付着性が長期にわたって得ることができる上、撥水性粒子の脱落抑制、コスト等の点でもいっそう有利となる。熱接着層に付着した撥水性粒子は、三次元網目状構造を有する多孔質層を形成していることが好ましい。この場合の多孔質層の厚みは0.1〜5μm程度が好ましく、0.2〜2.5μm程度がより好ましい。このようなポーラスな層状態で付着することにより、当該層が空気を多く含むことができ、より優れた非付着性を発揮することができる。
【0045】
また、撥水性粒子は、熱接着層の全面(シート状基材側と反対側の面の全面)に付着していても良いし、熱接着層が熱接着される領域(いわゆる接着しろ)を除いた領域に付着していても良い。本発明では、熱接着層の全面に付着している場合でも、熱接着される領域上に存在する撥水性粒子のほとんど又は全部が当該熱接着層中に埋没するので熱接着が阻害されることはない。このため、特に工業的生産上の見地より、熱接着層の全面に撥水性粒子が付着している方が望ましい。
【0046】
2.包装材料の製造方法
本発明の包装材料は、例えば、シート状基材及び熱接着層を含む包装材料を製造する方法であって、1)密度の異なる2種以上の充填粒子を含む熱接着層を形成する工程(以下「熱接着層形成工程」ともいう。)及び2)当該熱接着層表面に一次粒子平均径3nm〜10μm程度の撥水性粒子を付着させる工程(以下「付着工程」ともいう。)を含む製造方法によって好適に得ることができる。
【0047】
熱接着層形成工程では、密度の異なる2種以上の充填粒子を含む熱接着層を形成する。熱接着層の形成方法は限定的でなく、例えば密度の異なる2種類の充填粒子を予め含んだフィルム状物又はシート状物を熱接着層として用いる方法のほか、ラッカータイプ又はホットメルトの場合は熱接着層を形成するための原料に予め密度の異なる2種以上の充填粒子を含む塗工液を調製し、前記塗工液をシート状基材面に塗工・乾燥することによって熱接着層を形成する方法等が挙げられる。この場合、熱接着層中に3種又はそれ以上の異なる密度をもつ複数の充填粒子を含んでいても良いのは言うまでもない。
【0048】
付着工程では、当該熱接着層表面に一次粒子平均径3nm〜10μm程度の撥水性粒子を付着させる。付着工程を実施する方法は特に限定されない。例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコーティング、刷毛塗り、粉体静電法等の公知の方法を採用することができる。ロールコーティング等を採用する場合は、撥水性粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて熱接着層上に塗膜を形成した後に乾燥する方法により付着工程を実施することができる。この場合の溶媒は限定されず、例えばアルコール(エタノール)、シクロヘキサン、トルエン、アセトン、IPA、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチルジグリコール、ペンタメチレングリコール、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ヘキシルアルコール等の有機溶剤を適宜選択することができる。この際、微量の分散剤、着色剤、沈降防止剤、粘度調整剤等を併用することもできる。溶媒に対する撥水性粒子の分散量は通常10〜100g/L程度とすれば良い。乾燥する場合は、自然乾燥又は強制乾燥(加熱乾燥)のいずれであっても良いが、工業的には強制乾燥するのが良い。乾燥温度は、熱接着層に影響を与えない範囲であれば制限されないが、通常は150℃以下、特に80〜120℃とすることが好ましい。
【0049】
本発明の製造方法では、前記の付着工程中及び/又は付着工程後にシート状基材及び熱接着層を含む積層体を加熱することもできる。積層体を加熱することにより熱接着層に対する撥水性粒子付着力(固定力)をより高めることができる。この場合の加熱温度Tは、熱接着層の種類等に応じて適宜設定することができ、通常は用いる熱接着層の融点Tm(溶融開始温度)℃に対してTm−50≦T≦Tm+50の範囲とすることが好ましい。
【0050】
このようにして得られた積層体は、そのままで又は加工を施して包装材料として用いることができる。加工方法は、公知の包装材料の場合と同様の方法を採用することができる。例えば、エンボス加工、ハーフカット加工、ノッチ加工等を施しても差し支えない。本発明の包装材料は、蓋材をはじめ、成形容器、包み紙、トレー、チューブ、並びに袋、パウチ等の袋体にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0052】
実施例及び比較例
実施例及び比較例となる包装材料試料を下記の方法に従って作製した。
【0053】
(1)シート状基材の準備
坪量55g/mの紙(「紙」と略記する。)の一方面に表印刷を施し、当該印刷を覆うようにニトロセルロース系のOPコート(乾燥後塗布量1g/m;OPと略記)を塗布した。続いて、他方表面にポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量3.5g/m;Dと略称)を用いて、アルミニウムを蒸着した厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(AL蒸着PETと略称)の蒸着面と貼り合わせた。さらにこの貼り合せ材のポリエチレンテレフタレートフィルム上にオレフィン系のアンカーコート処理(乾燥後重量0.5g/m;ACと略記)を施してシート状基材(OP/印刷/紙/D/AL蒸着PET/AC)を用意した。
【0054】
(2)熱接着剤の準備及び塗布
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系のヒートシール剤中に固形分基準で、平均粒子径30μm、密度1.2g/cm3のアクリル樹脂ビーズ10〜20重量%及び平均粒子径12μm、密度0.91g/cm3のポリエチレン樹脂ビーズ10〜20重量%を混合分散し、熱接着剤を準備した。具体的な混合比率を表1に示す。各熱接着剤を前記シート状基材のAC面にそれぞれ塗布し、シート状基材と熱接着層の積層体を得た。目標塗布量(付着量)は乾燥後重量で3.0〜5.0g/mとした。
【0055】
なお、比較例として、樹脂ビーズを含まない積層体サンプル(表1中「ビーズ添加なし」)及び1種の樹脂ビーズのみ含む積層体(表1中、試料No.1〜3、試料No.4,8,12)も準備した。
【0056】
【表1】

【0057】
(3)撥水コート液及び塗布
エボニックデグサ社製のシリカ粒子「R812S」2重量部をエタノール98重量部中に混合分散させた。得られた撥水コート液をバーコーター(#3)を用い、前記積層体の熱接着層面に乾燥後重量で0.5g/mとなるように塗布した。その後、90℃程度の熱風を当ててエタノールを蒸発させ、包装材料試料を得た。
【0058】
試験例1<振動試験>
各包装材料試料から蓋材の形状(タブ付きの縦62mm×横67mmの矩形)に切り抜いた蓋材を用いて包装体を作製した。具体的には、フランジ付きポリスチレン製容器(フランジ幅4mm、フランジ外径60mm×65mm□、高さ約48mm、内容積約100cmになるように成形したもの)中に市販のヨーグルト(製品名「森永アロエヨーグルト」森永乳業株式会社製)85gを充填した後、フランジ上に前記蓋材をヒートシールすることによって包装体を作製した。ヒートシール条件は、温度225℃及び圧力3kgf/cmにて1.2秒間で2mm幅のリング(凹状)シールとした。
各包装体を振動試験機(アイデックス株式会社製BF−30U)を用いて1分間、20Hz、2.2mm振幅(上下方向)及び加速度約2Gの条件にて振動させた後、蓋材を手指で開封し、各蓋材に付着したヨーグルトの量(付着面積)を目視で判定した。判定基準は次の通りである。その判定結果を表2に示す。なお、表2の各判定結果は、表1における対応する箇所の試料の判定結果を示す。例えば、表1においてアクリル樹脂ビーズ15重量%及びポリエチレン樹脂ビーズ10重量%を含む試料No.6の判定結果は、表2において同じくアクリル樹脂ビーズ15重量%及びポリエチレン樹脂ビーズ10重量%の箇所に示す判定結果「◎」となる。
◎:付着無し
○:付着面積10%未満
△:付着面積10%以上〜30%未満
×:付着面積30%以上
【0059】
【表2】

【0060】
試験例2<開封強度>
前記同様の包装体を、ヨーグルトを入れずに作製した。各包装体上の蓋材のタブを開封始点からみて仰角45度の方向に100mm/分の速度で引っ張り、開封初期の最大荷重とその後のフランジ途中(ほぼ半分開封した状態)での荷重を測定した。その結果を表3に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
試験例3<封緘強度(密封性)>
前記同様の包装体を、ヨーグルトを入れずに作製した。{乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和54年4月16日厚生省令第17号)}の封緘強度試験法に準じて封緘強度試験を行った。但し、容器内に空気を流入し続け、空気漏れする時点の内圧(mmHg)を測定した。各包装体についてn=3点測定したが、いずれも測定上限値300mmHg以上であった。
【0063】
試験例4<初期ヨーグルト非付着性>
各包装材料試料の熱接着層(撥水性粒子)側を試験面とし、この面を上面として水平な平台にクリップで固定し、市販のヨーグルト(製品名「おいしいカスピ海」ソフトヨーグルト、グリコ乳業株式会社製1滴:約0.4g)を至近距離から垂らし、水平な平台を傾け、ヨーグルト液滴が転げ落ちた場合は合格、平台を90度傾けても転げ落ちずに垂れ流れた場合を不合格とした。その結果、全ての包装材料試料が合格であった。
【0064】
試験例5<接触角>
各包装材料試料の熱接着層(撥水性粒子)側を試験面とし、接触角測定装置(固液界面解析装置「Drop Master300」協和界面科学株式会社製)を用いて純水の接触角を測定した。その結果、すべての試料で150度以上を示した。
【0065】
以上のように、本発明によれば、ヒートシール可能な優れた撥水性能をもつ包装材料を提供することができ、従来品よりもその耐久性(撥水性能の持続性)が改善されることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材及び熱接着層を含む包装材料であって、
(1)シート状基材の少なくとも一方の面に熱接着層が積層されており、
(2)前記熱接着層がシート状基材と接する面の反対側の面に撥水性粒子が付着しており、
(3)密度の異なる2種以上の充填粒子が前記熱接着層中に含まれている、
ことを特徴とする包装材料。
【請求項2】
充填粒子として、1)密度1.0g/cm未満の低密度充填粒子及び2)密度1.0g/cm以上の高密度充填粒子を含む、請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
低密度充填粒子の密度が、高密度充填粒子の密度の60〜95%である、請求項2に記載の包装材料。
【請求項4】
低密度充填粒子の材質はポリエチレン系樹脂であり、高密度充填粒子の材質はアクリル系樹脂である、請求項2に記載の包装材料。
【請求項5】
低密度充填粒子の平均粒子径は1〜20μmであり、高密度充填粒子の平均粒子径は5〜35μmである、請求項2〜4のいずれかに記載の包装材料。
【請求項6】
低密度充填粒子の平均粒子径が、高密度充填粒子の平均粒子径よりも小さい、請求項2〜5のいずれかに記載の包装材料。
【請求項7】
前記撥水性粒子が疎水性酸化物粒子を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の包装材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−75715(P2013−75715A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218031(P2011−218031)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】