説明

包装機用フォーマー

【課題】筒部とセーラー部との稜線部を安定して接合することが可能であり、稜線部を高い精度で形成し且つそれを長期に亘って維持することができる包装機用フォーマーを提供する。
【解決手段】筒部2と、筒部2の上端から斜め下方に肩状に延びるセーラー部3とを備え、筒部2の上端外側に切欠21を形成し、筒部2の上端内側の上端面22とセーラー部3の上面33とが面一となるように、切欠21にセーラー部3の内端を係合し、筒部2の上端とセーラー部3の内端とを周状に接合する包装機用フォーマー1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を包装する包装機に用いられる包装機用フォーマーに関する。
【背景技術】
【0002】
物品を包装する包装機に用いられる部材として、包装袋となるフィルムを筒状に成形するフォーマーが知られている。
【0003】
このフォーマーは、例えば特許文献1、2に開示されているように、筒部と、筒部の上端から斜め下方に肩状に延びるセーラー部とから構成されるものであり、包装機ではフォーマーの筒部内に案内筒が配置される。そして、送られてきたフィルムをセーラー部の曲面に沿わせて送り、セーラー部と筒部との稜線部から筒部と案内筒との間にフィルムを鋭角に折り込ませ、フィルムを筒状にする。
【0004】
その後、筒状に丸められたフィルムには、両縁を接着するように縦方向にシールが施されると共に、包装袋の底部を形成するように横方向にシールが施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−315313号公報
【特許文献2】特開平8−324505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、包装機用のフォーマーでは、フィルムを正確に筒状に丸めるために、筒部とセーラー部との稜線部に高い精度が要求されるため、鋳造で形成されることもあるが、鋳造でフォーマーを形成すると製造費が非常に高くなる。また、鋳造では、その性質上、所定の板厚以下にすることは不可能であり、フォーマーの軽量化を妨げることとなる。
【0007】
そこで、板厚の制限がなく、フォーマーの軽量化が図れる曲げ加工で形成した別体の筒部とセーラー部とを溶接等で接合して形成することが望まれるが、上述の如く、筒部とセーラー部との稜線部には高い精度が要求され、且つそれを維持する必要があるため、接合状態を安定化することが求められる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、筒部とセーラー部との稜線部を安定して接合することが可能であり、稜線部を高い精度で形成し且つそれを長期に亘って維持することができる包装機用フォーマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の包装機用フォーマーは、筒部と、前記筒部の上端から斜め下方に肩状に延びるセーラー部とを備え、前記筒部の上端外側に切欠を形成し、前記筒部の上端内側の上端面と前記セーラー部の上面とが面一となるように、前記切欠に前記セーラー部の内端を係合し、前記筒部の上端と前記セーラー部の内端とを周状に接合することを特徴とする。
この構成によれば、筒部とセーラー部との稜線部を係合状態で安定して接合することが可能であり、稜線部を高い精度で形成し且つそれを長期に亘って維持することができる。
【0010】
発明の包装機用フォーマーは、筒部と、前記筒部の上端から斜め下方に肩状に延びるセーラー部とを備え、前記セーラー部の内端下側に切欠を形成し、前記セーラー部の内端上側の内端面と前記筒部の内面とが面一となるように、前記切欠に前記筒部の上端を係合し、前記筒部の上端と前記セーラー部の内端とを周状に接合することを特徴とする。
この構成によれば、筒部とセーラー部との稜線部を係合状態で安定して接合することが可能であり、稜線部を高い精度で形成し且つそれを長期に亘って維持することができる。
【0011】
本発明の包装機用フォーマーは、前記筒部と前記セーラー部との接合部分の複数箇所に、前記筒部と前記セーラー部とが凹凸で嵌合される嵌合部を設けることを特徴とする。
この構成によれば、筒部とセーラー部との位置決めが容易になると共に、セーラー部筒部とセーラー部とが筒部の周方向に回動することを嵌合部で防止し、筒部とセーラー部との接合状態を一層安定化することができる。
【0012】
本発明の包装機用フォーマーは、前記セーラー部が段階的な曲率で曲げ加工して形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、セーラー部を形成する際の加工工程の簡素化を図ることができると共に、スプリングバックを確実に防止してセーラー部の形状の安定化を図ることができる。また、多種多様なフィルムを筒状にすることが可能となる。
【0013】
本発明の包装機用フォーマーは、前記筒部の近接若しくは当接する両側端部の近傍に、前記筒部の長手方向に延びる長孔が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、筒部の両側端部の剛性を小さくし、筒部の真円度の精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の包装機用フォーマーは、筒部とセーラー部との稜線部を係合状態で安定して接合することが可能であり、稜線部を高い精度で形成し且つそれを長期に亘って維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による実施形態の包装機用フォーマーの斜視図。
【図2】本発明による実施形態の包装機用フォーマーの正面図。
【図3】図1の包装機用フォーマーのA−A線断面図。
【図4】図1の筒部とセーラー部との稜線部X部に対する部分拡大説明図。
【図5】本発明による実施形態の包装機用フォーマーの部分拡大平面図。
【図6】(a)は図2の包装機用フォーマーのB−B線断面図、(b)は図2の包装機用フォーマーの曲率半径R1で曲げ加工された状態を示すB−B線断面図、(c)は図2の包装機用フォーマーの曲率半径R2で曲げ加工された状態を示すB−B線断面図、(d)は図2の包装機用フォーマーの曲率半径R3で曲げ加工された状態を示すB−B線断面図。
【図7】図2の包装機用フォーマーにおける筒部のC−C線断面図。
【図8】本発明による変形例の包装機用フォーマーにおける図1のA−A線断面に相当する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態の包装機用フォーマー〕
本発明による実施形態の包装機用フォーマーについて説明する。図1〜図7は実施形態の包装機用フォーマー及びその各部を示す図である。
【0017】
本実施形態における包装機用フォーマー1は、図1〜図7に示すように、略円筒状の筒部2と、筒部2の上端から斜め下方に肩状に延び、曲面状になっているセーラー部3と、筒部2の外周に設けられ、筒部2の外周とセーラー部3の肩状に下がった背面側の下端31とに溶接或いはビス止め等により固着されるプレート4とを備える。
【0018】
筒部2には、図3に示すように、その上端外側に切欠21が形成され、切欠21は筒部2に沿って周状に形成されている。切欠21には、セーラー部3の内端32が係合され、筒部2の上端内側の上端面22とセーラー部3の上面33とが面一となるように係合されている。筒部2の上端とセーラー部3の内端とは、筒部2の斜めに開口する上端に沿って周状に接合され、本例では切欠21とセーラー部3の内端32との当接部分でレーザー溶接等の溶接が施されて接合されている。
【0019】
筒部2とセーラー部3との稜線部である接合部分の複数箇所には、図4に示すように、筒部2とセーラー部3とが凹凸で嵌合される嵌合部が設けられる。本例の嵌合部は、筒部2の上端に形成される平面視半円弧状の凹部23と、セーラー部3の内端で筒部2の上端に向かって外方に突出する平面視略半円弧状の凸部34とで構成され、凹部23と凸部34とが嵌合する。凹部23と凸部34から構成される嵌合部は離間して筒部2に沿って1〜4箇所など複数箇所に形成され、嵌合する。図5に示すように、本例では嵌合部が離間して3箇所形成される。尚、嵌合部の形成については、図4に示す本例とは異なり、筒部2に凸部を形成し、セーラー部3に凹部を形成してもよい。
【0020】
セーラー部3は、段階的な曲率で曲げ加工して形成されており、図6(a)〜(d)に示す断面箇所では、R1、R2、R3の段階的な曲率半径で曲げ加工が施されて形成される。ここで、図6(b)〜(d)に示すセーラー部3に係る曲げ加工は、一度に実施しても、曲率半径毎に順次曲げ加工を実施してもよい。また、本例では、曲率半径の大きさは曲率半径R3>曲率半径R2>曲率半径R1である。尚、曲率半径R1、R2、R3の大きさは自由に設定することが可能である。
【0021】
また、筒部2は、板材を筒状に曲げて両側端部を近接或いは当接するようにして形成されており、プレート4の貫通穴内に挿入して固定される。筒部2の両側端部24・24の近傍には、図2、7に示すように、筒部2の長手方向に延びる長孔25・25がそれぞれ形成される。
【0022】
本実施形態の包装機用フォーマー1は、切欠21へのセーラー部3の内端32の係合により、筒部2とセーラー部3との稜線部を係合状態で安定して接合することが可能であり、稜線部を高い精度で形成し且つそれを長期に亘って維持することができる。
【0023】
筒部2とセーラー部3とにそれぞれ凹部23と凸部34とからなる嵌合部が複数箇所形成されることにより、筒部2にセーラー部3を係合する際、両者の位置決めが容易となる。嵌合部が3箇所形成されることにより、両者の位置決めがより確実、且つ容易となる。また、筒部2とセーラー部3とが筒部2の周方向に回動することを凹部23と凸部34で防止し、筒部2とセーラー部3との接合状態を一層安定化することができる。
【0024】
セーラー部3を段階的な曲率で曲げ加工して形成することにより、成形後のセーラー部3の形状の安定化を図ることができる。即ち、セーラー部3を段階的な曲率で曲げ加工して形成することにより、異なる曲率半径の境目において塑性変形が生じることによって、スプリングバックを抑制してセーラー部3の形状の安定化を図ることが可能となる。さらに、セーラー部3を段階的な曲率で曲げ加工すると、曲げ加工に係る曲率半径は、1個の曲率で曲げ加工された場合と比較して、曲率半径を小さくすることができるため、スプリングバックを小さくすることが可能となり、曲げ加工精度を向上させる。また、段階的な曲率半径の金型を自由に組み合わせることにより、多種多様なフィルムに適応した種々のセーラー部3を製造することが可能となる。換言すれば、フィルムの種類毎に金型を製造する必要がなくなり、金型の汎用化を図ることができ、包装機用フォーマーの製造コストを低減することが可能となる。
【0025】
筒部2の長手方向に延びる長孔25により、筒部2の両側端部24・24の剛性を小さくし、図7中の二点鎖線に示す両側端部24・24の筒部2外方へのハネを抑制することによって、筒部2の真円度の精度を向上することができる。換言すると、筒部2の曲げ加工により生じる反力が筒部2の長孔25によって逃がされるため、筒部2の両側端部24・24におけるスプリングバックを防止し、筒部2の真円度精度が向上する。
【0026】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含み、下記の変形例等も包含する。
【0027】
例えば上記実施形態では、筒部2の上端外側に切欠21を形成し、筒部2の上端内側の上端面22とセーラー部3の上面33とが面一となるように、切欠21にセーラー部3の内端を係合して接合する構成としたが、図8に示すように、セーラー部3の内端下側に切欠35を形成し、セーラー部3の内端上側の内端面36と筒部3の内面26とが面一となるように、切欠35に筒部3の上端を係合し、筒部2の上端とセーラー部3の内端とを周状にレーザー溶接等で接合する構成とすることも可能である。
【0028】
また、図8の変形例の包装機用フォーマー1aにおいても、筒部2とセーラー部3との接合部分の複数箇所に、筒部2に凹部若しくは凸部、セーラー部3に凹部若しくは凸部を形成して、筒部2とセーラー部3とが凹凸で嵌合される嵌合部を設ける構成としてもよい。また、セーラー部3を段階的な曲率で曲げ加工して形成する構成、或いは筒部2の近接若しくは当接する両側端部24・24の近傍に、筒部2の長手方向に延びる長孔25を形成する構成、或いはこれらを適宜に組み合わせる構成とすることも可能である。
【0029】
また、筒部2とセーラー部3とに形成する凹凸部は、平面視略半円弧状とする以外に、平面視三角形状等とすることも可能である。
【0030】
また、筒部2は、側端部24・24が相互に当接する略円筒形、或いは側端部24・24が相互に近接する略円筒形とする以外に、適宜の筒形状とすることが可能であり、例えばセーラー部3と係合する筒部2の上端を四角筒形、六角筒形等の多角筒形とし、筒部2の下端に向かうにつれて徐片させた略円筒形とすることも可能である。この場合、筒部2の上端に沿って周状にセーラー部3と接合する必要はなく、筒部2の上端の角部のみセーラー部3と接合すればよい。尚、筒部2を徐変させることなく、四角筒形、六角筒形等の多角筒形とすることも可能である。
【0031】
また、上記実施形態の筒部2の上端、又はセーラー部3の内端の全周に切欠を形成する構成に代えて、筒部2の上端、又はセーラー部3の内端の一部に切欠を形成する構成、例えば凹凸で嵌合させる嵌合部を設ける構成も本明細書開示の発明に包含される。この筒部2の上端、又はセーラー部3の内端の一部に切欠を形成する構成に、セーラー部3を段階的な曲率で曲げ加工して形成させ、又は筒部2の両側端部24・24の近傍に、筒部2の長手方向に延びる長孔25を形成させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、物品を包装する包装機に用いられる包装機用フォーマーとして利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1、1a…包装機用フォーマー 2…筒部 21…切欠 22…上端面 23…凸部 24…側端部 25…長孔 26…内面 3…セーラー部 31…下端 32…内端 33…上面 34…凹部 35…切欠 36…内端面 4…プレート R1、R2、R3…セーラー部の曲げ加工の際の曲率半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部と、
前記筒部の上端から斜め下方に肩状に延びるセーラー部とを備え、
前記筒部の上端外側に切欠を形成し、
前記筒部の上端内側の上端面と前記セーラー部の上面とが面一となるように、前記切欠に前記セーラー部の内端を係合し、
前記筒部の上端と前記セーラー部の内端とを周状に接合することを特徴とする包装機用フォーマー。
【請求項2】
筒部と、
前記筒部の上端から斜め下方に肩状に延びるセーラー部とを備え、
前記セーラー部の内端下側に切欠を形成し、
前記セーラー部の内端上側の内端面と前記筒部の内面とが面一となるように、前記切欠に前記筒部の上端を係合し、
前記筒部の上端と前記セーラー部の内端とを周状に接合することを特徴とする包装機用フォーマー。
【請求項3】
前記筒部と前記セーラー部との接合部分の複数箇所に、前記筒部と前記セーラー部とが凹凸で嵌合される嵌合部を設けることを特徴とする請求項1又は2記載の包装機用フォーマー。
【請求項4】
前記セーラー部が段階的な曲率で曲げ加工して形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の包装機用フォーマー。
【請求項5】
前記筒部の近接若しくは当接する両側端部の近傍に、前記筒部の長手方向に延びる長孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の包装機用フォーマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−86874(P2012−86874A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235100(P2010−235100)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000175766)三恵技研工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】