説明

包装用の着色ポリマー系の使用

・ポリマー系が、電磁放射線を反射する(ブラッグ反射)
・機械的応力によって発生される伸びの際に前記反射の波長が、変わりうるものであり、かつ
・コーティングされた担体が、全体として低い弾性を有するので、機械的応力を取り除く際にブラッグ反射の波長が、出発状態に比較して変化している
ことを特徴とする、ポリマー系でコーティングされた担体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー系でコーティングされた担体に関するものであって、
・前記ポリマー系は、電磁放射線を反射する(ブラッグ反射)
・機械的応力によって発生される伸びの際に前記反射の波長は、変化しうるものであり、かつ
・コーティングされた担体は、全体として低い弾性を有するので、機械的応力を取り除く際にブラッグ反射の波長は、出発状態に比較して変化している
ことによって特徴付けられている。
【0002】
水性ポリマー分散液は、安価で容易に製造可能な有機材料である。独国特許出願公開(DE-A)第197 17 879号明細書及び独国特許出願公開(DE-A)第198 20 302号明細書からは、特殊なポリマー分散液が、ポリマー粒子及びマトリックスからなるポリマー系の製造に適しており、かつこれらのポリマー系が、ブラッグ反射を示すことが知られていた。これらのポリマー分散液もしくはそれらの使用の実施態様は、独国特許出願公開(DE-A)第103 21 083号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第103 21 079号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第103 21 084号明細書又はこの出願の提出の日にまだ発行されていない整理番号10 2005 023 804.1、10 2005 023 806.8、10 2005 023 802.5及び10 2005 023 807.6を有する独国特許出願にも見出される。
【0003】
光学的表示素子(ディスプレイ)を製造するためのそのようなポリマー系の使用は、独国特許出願公開(DE-A)第102 29 732号明細書に記載されている。表示素子において、色の変化はマトリックス中に分散されたポリマー粒子間の間隔を変更することによってもたらされる。間隔変更の原因は例えば、機械力又は電場の作用でありうる。
【0004】
本発明の課題は、前記ポリマー系のさらなる使用であった。
【0005】
それに応じて、冒頭に定義されたコーティングされた担体が見出された。包装用の前記担体の使用も見出された。
【0006】
前記ポリマー系は、ポリマー粒子及び変形可能な材料(マトリックス)を含んでなる系であり、その際にポリマー粒子はマトリックス中で、定義された空間格子構造に従って分布している。
【0007】
ポリマー粒子について
定義された空間格子構造を形成するために、離散した(diskreten)ポリマー粒子はできるだけ同じ大きさであるべきである。ポリマー粒子の均一性の尺度は、式
P.I.=(D90−D10)/D50
に従って計算されるいわゆる多分散指数であり、ここで、D90、D10及びD50は粒子直径を表し、これらについては次のことが当てはまる:
D90:全ての粒子の全質量の90質量%が、D90以下の粒子直径を有する
D50:全ての粒子の全質量の50質量%が、D50以下の粒子直径を有する
D10:全ての粒子の全質量の10質量%が、D10以下の粒子直径を有する。
【0008】
多分散指数のさらなる説明は、例えば、独国特許出願公開(DE-A)第197 17 879号明細書(特に図面の1頁)に見出される。
【0009】
粒度分布は、本来知られた方法で、例えば、分析用超遠心機(W. Maechtle, Makromolekulare Chemie 185 (1984) p.1025 - 1039)を用いて決定されることができ、かつこれからD10、D50及びD90値が導かれ、かつ多分散指数が決定されることができる。
【0010】
前記ポリマー粒子は好ましくは0.05〜5mm程度の範囲内のD50値を有する。前記ポリマー粒子は、1つの粒子タイプ又は異なるD50値を有する複数の粒子タイプであってよく、その際に各々粒子タイプは、好ましくは0.6未満、特に好ましくは0.4未満及び極めて特に好ましくは0.3未満及び殊に0.15未満の多分散指数を有する。
【0011】
特に、前記ポリマー粒子は目下、唯一の粒子タイプからなる。D50値は、好ましくは0.05〜2μmであり、特に好ましくは100〜400nmである。しかしながら50〜1100nmの波長も考慮に値する。
【0012】
D50値に関して異なる、例えば2又は3つの、好ましくは2つの粒子タイプからなるポリマー粒子も、各々粒子タイプについて多分散指数に関して前記の条件が満たされている場合には、共通の格子構造を形成する(結晶化する)ことができる。例えば、0.3〜1.1μmのD50値を有する粒子タイプ及び0.1〜0.3μmのD50値を有する粒子タイプの混合物が適している。
【0013】
前記ポリマー粒子は好ましくは、30℃を上回る、特に好ましくは50℃を上回る及び極めて特に好ましくは70℃を上回る、殊に90℃を上回るガラス転移温度を有するポリマーからなる。
【0014】
ガラス転移温度は、常法、例えば示差熱分析法又は示差走査熱量測定法(例えばASTM 3418/82参照、いわゆる"中間点温度(midpoint temperature)")に従って決定されることができる。
【0015】
前記ポリマーは、好ましくは少なくとも40質量%、より好ましくは少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%がいわゆる主モノマーからなる。
【0016】
主モノマーは、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリラート、炭素原子20個までを有するカルボン酸のビニルエステル、炭素原子20個までを有するビニル芳香族化合物、エチレン系不飽和ニトリル、ビニルハロゲン化物、炭素原子1〜10個を有するアルコールのビニルエーテル、炭素原子2〜8個及び二重結合1個又は2個を有する脂肪族炭化水素又はこれらのモノマーの混合物から選択されている。
【0017】
例えば、C1〜C10−アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルを挙げることができる。
【0018】
特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合物も適している。
【0019】
炭素原子1〜20個を有するカルボン酸のビニルエステルは、例えばラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル(Versaticsaeurevinylester)及び酢酸ビニルである。
【0020】
ビニル芳香族化合物として、ビニルトルエン、α−及びp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン及び好ましくはスチレンが考慮に値する。ニトリルの例は、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルである。
【0021】
ビニルハロゲン化物は、塩素、フッ素又は臭素で置換されたエチレン系不飽和化合物、好ましくは塩化ビニル及び塩化ビニリデンである。
【0022】
ビニルエーテルとして、例えばビニルメチルエーテル又はビニルイソブチルエーテルを挙げることができる。炭素原子1〜4個を有するアルコールのビニルエーテルが好ましい。
【0023】
炭素原子2〜8個及びオレフィン系二重結合1個又は2個を有する炭化水素として、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレン、二重結合1個を有する炭化水素として例えばエチレン又はプロピレンを挙げることができる。
【0024】
主モノマーとして、C1〜C20−アルキルアクリラート及びC1〜C20−アルキルメタクリラート、特にC1〜C8−アルキルアクリラート及びC1〜C8−アルキルメタクリラート及びビニル芳香族化合物、特にスチレン及びそれらの混合物、特にまたアルキル(メタ)アクリラート及びビニル芳香族化合物の混合物が好ましい。
【0025】
アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸オクチル及びアクリル酸2−エチルヘキシル、スチレン並びにこれらのモノマーの混合物が極めて特に好ましい。
【0026】
前記ポリマー粒子は、好ましくは化学的に架橋される。そのためには、重合可能な基少なくとも2つを有するモノマー、例えばジビニルベンゼン又はアリルメタクリラートが併用されることができる(内部架橋)。しかしまた架橋剤が添加されることもできる(外部架橋)。
【0027】
マトリックスについて
マトリックスとポリマーとの間には、屈折率の差が存在するべきである。
【0028】
好ましくは、この差は少なくとも0.01、特に好ましくは少なくとも0.1であるべきである。
【0029】
その際に、マトリックスだけでなくポリマーも、より高い屈折率を有していてよい。差が存在することが決定的である。
【0030】
マトリックスは変形可能な材料からなる。変形可能性は、マトリックスが、外力の適用の際に(例えば機械的に、電磁気に)、離散したポリマー粒子の空間変位を可能にすることであると理解される。
【0031】
故に、好ましくは、マトリックスは、20℃未満、特に好ましくは10℃未満、極めて特に好ましくは0℃未満(1barで)の融点又はガラス転移温度を有する有機材料、もしくは有機化合物からなる。
【0032】
20℃を上回る融点又はガラス転移温度(Tg)を有する有機化合物も考慮に値するが、しかしながら、この場合に、融点又はTgを上回る、ポリマー粒子の間隔が変わることになる時間の加熱が必要である(下記参照)。
【0033】
液体、例えば水又はより高粘稠な液体、例えばグリセリン又はグリコールが考慮に値する。
【0034】
高分子化合物、例えば重縮合物、重付加物又はラジカル重合により得ることができるポリマーが好ましい。
【0035】
例えば、ポリエステル、ポリアミド、ホルムアルデヒド樹脂、例えばメラミン−ホルムアルデヒド縮合物、尿素−ホルムアルデヒド縮合物又はフェノール−ホルムアルデヒド縮合物、ポリエポキシド、ポリウレタン、又はまた前記の主モノマーを含有する前記のポリマー、例えばポリアクリラート、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエンコポリマーを挙げることができる。
【0036】
製造について
製造方法は、独国特許出願公開(DE-A)第197 17 879号明細書及び独国特許出願公開(DE-A)第198 20 302号明細書に記載されている。
【0037】
離散したポリマー粒子の製造
前記ポリマー粒子、もしくはポリマーの製造は、好ましい一実施態様において、乳化重合により行われ、故にエマルションポリマーである。
【0038】
乳化重合が特に好ましい、それというのも、こうして、均一な球形を有するポリマー粒子を得ることができるからである。
【0039】
しかしながら、前記製造は、例えば、溶液重合及び引き続き水中への分散によっても行われることができる。
【0040】
乳化重合の際に、イオン性乳化剤及び/又は非イオン性乳化剤及び/又は保護コロイドもしくは安定剤が、界面活性化合物として使用される。
【0041】
適した保護コロイドの詳細な説明は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961, p. 411-420に見出される。乳化剤として、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤並びに非イオン性乳化剤が考慮に値する。好ましくは、界面活性物質として、分子量が保護コロイドと対比して通常2000g/mol未満である乳化剤が使用される。
【0042】
この界面活性物質は、重合されうるモノマーを基準として、通常、0.1〜10質量%の量で使用される。
【0043】
乳化重合用の水溶性開始剤は、例えばペルオキシ二硫酸のアンモニウム塩及びアルカリ金属塩、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム、過酸化水素又は有機過酸化物、例えばt−ブチルヒドロペルオキシドである。
【0044】
適しているのは、いわゆる還元−酸化(レドックス)開始剤系でもある。
【0045】
レドックス開始剤系は、たいてい無機の還元剤少なくとも1つと、無機又は有機の酸化剤とからなる。
【0046】
酸化成分は、例えば、既に前記で挙げられた乳化重合用の開始剤である。
【0047】
還元成分は、例えば、亜硫酸のアルカリ金属塩、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸のアルカリ金属塩、例えば二亜硫酸ナトリウム、脂肪族のアルデヒド及びケトンの重亜硫酸塩付加化合物、例えばアセトン重亜硫酸塩又は還元剤、例えばヒドロキシメタンスルフィン酸及びそれらの塩、又はアスコルビン酸である。レドックス開始剤系は、金属成分が複数の原子価状態において生じうる可溶性金属化合物の併用下に使用されることができる。
【0048】
常用のレドックス開始剤系は、例えばアスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキシ二硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/ヒドロキシメタンスルフィン酸Naである。個々の成分、例えば還元成分は、混合物、例えばヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩及び二亜硫酸ナトリウムの混合物であってもよい。
【0049】
開始剤の量は、重合すべきモノマーを基準として、一般的に0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。異なる複数の開始剤も乳化重合の際に使用されることができる。
【0050】
乳化重合は、通例、30〜130℃、好ましくは50〜90℃で行われる。重合媒体は、水のみから、並びに水及びそれと混和性の液体、例えばメタノールの混合物からなっていてよい。好ましくは水のみが使用される。乳化重合は、バッチプロセスとして並びに段階的様式又は勾配様式を含めたフィード法の形で、実施されることができる。重合バッチの一部が装入され、重合温度に加熱され、部分重合され、引き続いて重合バッチの残りが、通常、複数の空間的に別個のフィードを経て、これらのうち1つ又はそれ以上がモノマーを純粋な形又は乳化された形で含有し、連続的に段階的に又は濃度勾配を重ねながら、重合を維持しながら重合帯域に供給されることによるフィード法が好ましい。重合の際に、例えば、粒度のより良好な調節のために、ポリマーシードが装入されることもできる。
【0051】
開始剤が水性ラジカル乳化重合の過程で重合容器に添加される方法は、標準的な当業者に知られている。これは、完全に重合容器中へ装入されることができ、並びにその消費に応じて、水性ラジカル乳化重合の過程で連続的に又は段階的に使用されることができる。詳細には、これは、開始剤系の化学的性質並びに重合温度に依存する。好ましくは、一部が装入され、かつ残りが消費に応じて重合帯域へ供給される。
【0052】
均一な粒度分布、すなわち小さい多分散指数は、当業者に知られた措置によって、例えば界面活性化合物(乳化剤又は保護コロイド)の量の変更及び/又は相応する撹拌機速度によって、得ることができる。
【0053】
残存モノマーの除去のためには、通常、実際の乳化重合の終了後にも、すなわち少なくとも95%のモノマーの転化後に、開始剤が添加される。
【0054】
個々の成分はフィード法の場合に、反応器に、上から、側部で又は反応器底部を経て下から、添加されることができる。
【0055】
乳化重合の場合に、通例、15〜75質量%、好ましくは40〜75質量%の固体含量を有するポリマーの水性分散液が得られる。
【0056】
ポリマー粒子/マトリックス(層)混合物の製造
マトリックスとしての水又は溶剤
乳化重合の際に、ポリマー粒子の水性分散液が直接得られる。この水は単純に、ポリマー粒子の格子構造が、その際に観察されうる色彩効果に関して確認可能に調節されるまで、除去されることができる。
【0057】
他の溶剤が望ましい場合には、水は、単純な方法でこれらの溶剤に対して交換されることができる。
【0058】
マトリックスとしての高分子化合物
乳化重合の際に得られた離散したポリマー粒子の水性分散液は、格子構造の調節に必要とされる量の高分子化合物と混合され、引き続いてこの水が除去されることができる。高分子化合物のしばしば高い粘度に基づいて、ポリマー粒子を、まず最初に高分子化合物の構成成分と混合し、ついでポリマー粒子の分散が行われた後に、これらの構成成分を、例えば縮合、付加物形成によって高分子化合物に変換することは有利でありうる。
【0059】
しかし、熱可塑性ポリマーをマトリックスとして使用することも可能である。ポリマー粒子及び熱可塑性プラスチックは、混合され、かつ熱及びせん断力によって、例えば押出機中で、強制的に結晶化させられる。溶融物特性を調節するために、ポリマーは押し出されることができ、そのうえ商業的に常用の加工助剤と混合されることができる。
【0060】
離散したポリマー粒子としてのエマルションポリマー及びマトリックスとしてのエマルションポリマー
エマルションポリマーは離散したポリマー粒子として、及びエマルションポリマーはマトリックスとして、好ましい。
【0061】
相応するエマルションポリマーは単純に混合されることができ、引き続き水が除去されることができる。マトリックス用のエマルションポリマーが20℃未満のガラス転移温度を有する場合には(上記参照)、ポリマー粒子は室温で膜形成し、かつ連続したマトリックスを形成し、より高いTgでは、Tgを上回る温度への加熱が必要である。
【0062】
双方のエマルションポリマーを一工程においてコア/シェルポリマーとして製造することは特に単純であり、かつ有利である。そのためには、乳化重合は2段階で実施される。まず最初に、モノマーが重合され、これらがコア(=その後の離散したポリマー粒子)を形成し、ついで第2段階においてコアの存在でモノマーが重合され、これらがシェル(=その後のマトリックス)を形成する。
【0063】
その後の水の除去の際に、ガラス転移温度が20℃未満である軟質シェルは膜形成し、かつ残っている(硬質)コアは、離散したポリマー粒子としてマトリックス中に分布している。
【0064】
故に、ポリマー粒子は、特に好ましくはコア/シェルポリマーのコアであり、マトリックスは、シェルの膜形成によって形成される。
【0065】
乳化重合により得ることができるコア/シェルポリマーは、本発明の範囲内で特に好ましい。
【0066】
コア/シェル−エマルションポリマーに関して特に適した実施態様は、独国特許出願公開(DE-A)第197 17 879号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第198 20 302号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第103 21 083号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第103 21 079号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第103 21 084号明細書又はこの出願の提出の日にまだ発行されていない整理番号10 2005 023 804.1、10 2005 023 806.8、10 2005 023 802.5及び10 2005 023 807.6を有する独国特許出願に見出される。
【0067】
コア対シェルの質量比は、好ましくは0.05対1〜20対1、特に好ましくは0.1対1〜1対1である。
【0068】
前記高分子化合物は架橋されることもできるので、これらは弾性を有する。架橋が望ましい場合には、好ましくは膜形成の際に又は膜形成後に、例えば架橋剤の熱的に又は光化学的に開始される架橋反応によって架橋が行われ、この架橋剤は添加されるか又は既にポリマーに結合されていてよい。
【0069】
マトリックスの架橋は、離散したポリマー粒子に作用する復元力を生じさせる。外力の作用なしに、ポリマー粒子はその後に所定の出発位置を再び占める。
【0070】
ポリマー粒子及びマトリックスを含んでなるポリマー系の構成について
このポリマー系は、光学的効果、すなわち観察されうる反射を、ポリマー粒子上で散乱された光の干渉によって引き起こす。
【0071】
反射の波長はその際に、ポリマー粒子の間隔に応じて、全電磁スペクトル内でありうる。好ましくは前記波長は、UV領域内、IR領域内及び特に可視光の領域内である。
【0072】
観察されうる反射の波長はその際に、知られたブラッグの方程式に従い、格子面間隔、ここでは、マトリックス中の空間格子構造中に配置されたポリマー粒子間の間隔に依存する。
【0073】
ポリマー粒子間の所望の間隔を有する所望の空間格子構造に調節されるために、特にマトリックスの質量割合は相応して選択されることができる。前記の製造方法の場合に、有機化合物、例えば高分子化合物は、相応する量で使用されるべきである。
【0074】
マトリックスの質量割合は特に、電磁放射線を所望の範囲内で反射するポリマー粒子の空間格子構造が生じるように定められる。
【0075】
ポリマー粒子間(その都度粒子の中点まで)の間隔は、色彩効果、すなわち可視光の領域内の反射が望ましい場合には、好適には50〜1 100nm、好ましくは100〜400nmである。
【0076】
コーティングされた担体について
前記担体は、任意の材料からなっていてよい。例えば、紙又はプラスチックフィルムからなる担体が考慮に値し、特に、前記担体は、個々の層が異なる材料からなる多層ラミネートであってもよい。
【0077】
前記担体上へ施与されたポリマー層の厚さは任意でありうるが、しかし十分な強度と共に良好な効果を達成するためには、一般的に1μm〜150μmの厚さで十分であるが、しかしまた数mmまで、例えば5mmまで又はそれ以上の厚さに達していてよい。
【0078】
本質的であるのは、コーティングされた担体が全体として、機械的応力を取り除く際にブラッグ反射の波長が出発状態に比較して変化したままであるように低い弾性を有することである。
【0079】
このことは、例えば、復元力が僅かに過ぎないようにマトリックス材料が選択されることによって達成されることができる。このことは、例えば、コア/シェル粒子のシェルの重合の際に調節剤を併用するによって達成されることができ、その調節剤量はモノマー100質量部あたり、好ましくは10質量部未満、特に好ましくは2質量部未満である。特にこのことは、架橋性モノマー又はその他の架橋剤が、マトリックス中もしくはコア/シェル粒子のシェル中で僅かにのみ併用されるか又は併用されないことによっても達成されることができる。
【0080】
このことは、担体が、ポリマー系よりもより僅かな弾性を有することによって達成されることもできる;もちろん、コーティングされたポリマー系は、担持材料への付着の際に、担持材料自体と同じ場合にのみ出発状態へ戻されることができる。
【0081】
例えば、ブラッグ反射が可視の波長範囲内である場合には、色は、機械的応力を取り除いた後に当初の色に比較して変化している。
【0082】
そのように設計されたセキュリティ機能(Sicherheitsmerkmal)、例えばラベルは、クロージャ(Verschluss)として包装上に施与され、本発明によるポリマー系によって調節されることができる特定の色によって特徴付けられる。このセキュリティ機能が例えば包装を開けることにより伸びる場合には、ラベルの色の不可逆的な変化が起こる。それにより、包装が開いたかどうかを、単純な方法で調べることができる。
【0083】
ブラッグ反射の波長が可視領域内にある場合には、出発状態に比較して色の変化が確認されることができる。
【0084】
不可視領域、例えばIR領域内又はUV領域内の波長の場合に、波長の変化は、適した検出器によって容易に確認されることができる。
【0085】
コーティングされた担体は、例えばラベル、ステッカー、粘着テープ、接着フィルムとして適しており、かつ任意の基体に接着されることができる。
【0086】
特に、コーティングされた担体は、包装として又は包装中で使用されることができる。これらは、ラベル、ステッカー、粘着テープ又は接着フィルムとして、任意の基体に適した位置で接着されることができ;しかしまた前記包装自体が、コーティングされた担体から完全にか又は部分的になっていてもよい。
【0087】
ブラッグ反射の波長の不可逆的な変化は最終的に、包装に取り付けられた標識、例えば商標、シンボルマーク(Logos)、製品説明等のコピー又は除去から保護する。
【0088】
包装を開ける際又は包装成分を除去する際に、当該位置で伸びが生じる。コーティングされた担体が、相応して取り付けられているか又は包装中へ一体化されている場合には、コーティングされた担体も伸びる。
【0089】
コーティングされた担体は、偽造防止マーキングとしても使用されることができる。そのようなマーキングは、例えば、銀行券、小切手、クレジットカード、IDカード、郵便切手、宝くじ券、切符、入場券、医薬包装、その他の包装、ソフトウェア、電子製品、商標、シンボルマークの標示、全ての種類の物体に取り付けられることができる。
【0090】
ブラッグ反射の波長は、もはや又は少なくとももはや完全に可逆的でないので、ブラッグ反射の波長は永久的に変わる。色の変化の単純な確認によって又は適した検出器(波長がIR領域内又はUV領域内である場合)の利用によって、包装が既に一度開けられたかどうか又は標識が除去されたかどうか又はマーキングを改変しようと試したかどうかが確認されることができる。
【0091】
実施例
ポリマーの製造
次の実施例は本発明を説明する。例において使用される乳化剤は、次の組成を有する:
乳化剤1:エチレンオキシド単位約25mol/molを有するエトキシル化され、かつ硫酸化されたノニルフェノール類のナトリウム塩の30質量%溶液。
乳化剤2:C12/C14−パラフィンスルホン酸のナトリウム塩の40質量%溶液。
乳化剤3:線状ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの15質量%溶液。
【0092】
粒度分布を、分析用超遠心機を用いて又はキャピラリー式粒度分布測定装置(kapillarhydrodynamischen Fraktionierungsmethode)(Matec Applied Sciences社製CHDF 1100 Particle Size Analyzer)を用いて測定し、得られた値からP.I.値を、ここに示される式
P.I.=(D90−D10)/D50
に従って計算した。溶液は、他に記載されていない限り、水溶液である。
【0093】
実施例において使用される記載pphmは、全モノマー100質量部を基準とした質量部を意味する。
【0094】
モノマーに使用される省略形は、次の意味を有する:AS=アクリル酸、n−BA=アクリル酸n−ブチル、DVB=ジビニルベンゼン、EA=アクリル酸エチル、MAS=メタクリル酸、MAMol=N−メチロールメタクリルアミド、NaPS=過硫酸ナトリウム。
【0095】
例1:エマルションポリマーの製造
アンカー撹拌機、温度計、ガス導入管、滴下漏斗及び還流冷却器を備えたガラス反応器中に、水500ml中のポリスチレンシード(粒度:30nm)0.9g(0.20pphm)の分散液を装入し、撹拌しながら加熱浴中で加熱し、その際に同時に空気を窒素の導入によって排除する。加熱浴が85℃の予め調節された温度に及び反応器内容物が80℃の温度に達した際に、窒素導入を中断し、水501.3ml中のスチレン445.5g(99.0質量%)、ジビニルベンゼン4.5g(1.0質量%)及び乳化剤1 14.5g(1.0pphm)の乳濁液及び過硫酸ナトリウム(0.3pphm)の2.5質量%水溶液54.0gを同時に3時間かけて滴加する。溶液を完全に供給した後に、重合を85℃でさらに7時間続け、引き続き室温に冷却する。
【0096】
分散液は次の性質を有する:
固体含量:29.6質量%
粒度:255nm
凝塊割合:<1g
pH値:2.3
多分散指数:0.13
屈折率:1.59。
【0097】
この例を数回繰り返し、その際にシード粒子の濃度を変えた。次の第1表は、得られた試験結果の概要を与える。
【0098】
第1表
【表1】

【0099】
例2:コア/シェル構成を有するエマルションポリマーの製造
アンカー撹拌機、温度計、ガス導入管、滴下漏斗及び還流冷却器を備えたガラス反応器中に、例1Aにおいて得られたコア粒子の分散液300gを装入し、撹拌しながら加熱浴中で加熱し、その際に同時に空気を窒素の導入によって排除する。
【0100】
加熱浴が85℃の予め調節された温度に及び反応器内容物が80℃の温度に達した際に、窒素導入を中断し、
a)アクリル酸n−ブチル85.1g(98.5質量%)、アクリル酸0.86(1.0質量%)、t−ドデシルメルカプタン0.43g(0.5質量%)、乳化剤1の31質量%溶液2.86g(0.97pphm)及び水12.4gの混合物並びに
b)過硫酸ナトリウム(0.5pphm)の2.5質量%水溶液17.3g
を同時に1.5時間かけて滴加する。
【0101】
溶液を完全に供給した後に、重合を85℃でさらに3時間続ける。その後、得られたコア/シェル粒子の分散液を室温に冷却する。
【0102】
分散液は次の性質を有する:
固体含量:40.6質量%
粒度:307nm
多分散指数(PI):0.16
コア:シェルの質量比:1:1(計算値)
シェルポリマーの屈折率:1.44。
【0103】
この例をさらに2回繰り返し、その際にコア粒子の濃度及びコア/シェルの質量比を変えた。次の第2表は、得られた試験結果の概要を与える。
【0104】
第2表
【表2】

nBA、t−ドデシルメルカプタン及びASの質量%は、シェルを基準としている。
【0105】
反射層の製造
例3A
例2Aに従って得られた分散液15gを、シリコーンゴム皿中で室温で乾燥させる。ゴム様弾性の輝く効果のある色の(leuchtend effektfarbige)層が得られる。照明角度及び視角で変わり、輝く色を有する透明なフィルムが得られ、その際に色強度がより強く目に見えるようになればなるほど、バックグラウンドはより暗くなる。この層が伸びる際に、その色は、伸び比と共に不可逆的に、赤褐色から緑を経て紫ないし紫外へ変わる。
【0106】
例3B及び3C
例3Aと同じように行われるが、例2Aの分散液の代わりに、2Bもしくは2Cの分散液が使用される点で相違する。照明角度及び視角で変わり、輝く色を有する透明なフィルムが得られ、その際に色強度がより強く目に見えるようになればなるほど、バックグラウンドはより暗くなる。こうして得られた層が伸びる際に、その色は不可逆的に、例3Bにおける赤から、もしくは例3Cにおける赤褐色から、緑を経て紫ないし紫外へ変わる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー系でコーティングされた担体であって、
・前記ポリマー系が、電磁放射線を反射する(ブラッグ反射)
・機械的応力によって発生される伸びの際に前記反射の波長が、変化しうるものであり、かつ
・コーティングされた担体が、全体として低い弾性を有するので、機械的応力を取り除く際にブラッグ反射の波長が、出発状態に比較して変化している
ことを特徴とする、ポリマー系でコーティングされた担体。
【請求項2】
ポリマー系が、ポリマー粒子及び変形可能な材料(マトリックス)からなる系であり、その際にポリマー粒子はマトリックス中で、定義された空間格子構造に従って分布している、請求項1記載のコーティングされた担体。
【請求項3】
ポリマー粒子が、0.05〜5μmの範囲内の平均粒子直径を有する1つ又はそれ以上の粒子タイプであり、その際に各々粒子タイプが、式
P.I.=(D90−D10)/D50
に従って計算される0.6未満の多分散指数(PI)を有し、ここで、D90、D10及びD50は粒子直径を表し、これらについては次のことが当てはまる:
D90:全ての粒子の全質量の90質量%が、D90以下の粒子直径を有する
D50:全ての粒子の全質量の50質量%が、D50以下の粒子直径を有する
D10:全ての粒子の全質量の10質量%が、D10以下の粒子直径を有する、
請求項1又は2記載のコーティングされた担体。
【請求項4】
離散したポリマー粒子が、30℃を上回るガラス転移温度を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のコーティングされた担体。
【請求項5】
ポリマー粒子及びマトリックスは屈折率が相違する、請求項1から4までのいずれか1項記載のコーティングされた担体。
【請求項6】
マトリックスも高分子化合物からなる、請求項1から5までのいずれか1項記載のコーティングされた担体。
【請求項7】
ポリマー粒子が、コア/シェルポリマーのコアであり、かつマトリックスが、シェルの膜形成によって形成される、請求項1から6までのいずれか1項記載のコーティングされた担体。
【請求項8】
ポリマー粒子間の間隔が50〜1 100nmであるので、紫外線ないし近赤外線の領域内の電磁放射線が反射される、請求項1から7までのいずれか1項記載のコーティングされた担体。
【請求項9】
ポリマー粒子間の間隔が100〜400nmであるので、可視光の領域内の電磁放射線が反射される、請求項1から7までのいずれか1項記載のコーティングされた担体。
【請求項10】
層の厚さが1μm〜150μmである、請求項1から9までのいずれか1項記載のコーティングされた担体。
【請求項11】
担体が、紙、厚紙、プラスチックフィルム又は金属箔から選択されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のコーティングされた担体。
【請求項12】
ラベル、ステッカー、粘着テープ、接着フィルムとしての、請求項1から11までのいずれか1項記載のコーティングされた担体の使用。
【請求項13】
包装として又は包装中での、請求項1から11までのいずれか1項記載のコーティングされた担体の使用。
【請求項14】
包装に取り付けられた商標、シンボルマーク、製品説明、バーコード等のような標識のコピー又は除去からの保護としての、請求項1から11までのいずれか1項記載のコーティングされた担体の使用。
【請求項15】
包装が既に使用されたどうか又は開けられたどうかを制御するための、請求項1から11までのいずれか1項記載のコーティングされた担体の使用。
【請求項16】
偽造防止マーキングとしての、請求項1から11までのいずれか1項記載のコーティングされた担体の使用。
【請求項17】
銀行券、小切手、クレジットカード、IDカード、郵便切手、宝くじ券、切符、入場券、医薬包装、その他の包装、ソフトウェア、電子製品、商標、シンボルマークの標示、全ての種類の物体上の偽造防止マーキングとしての、請求項1から11までのいずれか1項記載のコーティングされた担体の使用。

【公表番号】特表2009−527610(P2009−527610A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555757(P2008−555757)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051462
【国際公開番号】WO2007/096291
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】