説明

包装用キャリアテープ及びその巻取リール

【課題】キャリアテープのエンボス内に収納された電子部品へのトップテープの貼り付きを防止して、実装率の低下を抑制する。
【解決手段】包装用キャリアテープ10は、電子部品14を収納するためのエンボス16が長さ方向に所定間隔で形成されたキャリアテープ本体12と、その上面に貼り合わせられるトップテープ30により構成される。包装用キャリアテープ10は、リールのコアに巻き取られ、コア両端の一対のフランジにより、巻崩れが防止される。エンボス16の底部20の最大幅は、該エンボス16の間口の幅よりも広く、かつ、エンボス16の側面18間の幅よりも大きく設定されている。また、前記底部20がエンボス16の側面18から突出した突出部22の形状を、前記エンボス16の深さ方向における断面がR形状となるようにし、更に、底部20を底面側から見たときの角部24をR形状となるように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を包装するための包装用キャリアテープ及びその巻取リールに関し、更に具体的には、トップテープを剥がした際の電子部品の貼り付き防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、電子部品の包装は、例えば、キャリアテープ本体へ電子部品を入れてトップテープを貼ったものをリールへ巻いている。図4(A)には、リール120の全体が示されており、図4(B)には、前記(A)の一部拡大図が示されている。図4(C-1)は、前記図(B)を更に拡大した状態を図示しており、同図に示すように、包装用キャリアテープ100は、電子部品104を収納するためのエンボス(ないしポケット)106が長さ方向に所定間隔で多数形成されたキャリアテープ本体102と、その上に貼り付けられるトップテープ110により構成されている。前記包装用キャリアテープ100は、図4(A)に示すリール120のコア122に巻き取られ、前記コア122の両端のフランジ124A,124Bにより巻崩れが防止されている。前記包装用キャリアテープ100は、必要に応じた長さを引き出して使用する。
【0003】
しかしながら、図4(C-1)に示す例では、前記エンボス106の底面108が平坦でなく、また、前記エンボス106の間口寸法W4に比べ狭いことから、包装用キャリアテープ100をリール120へ巻く際の締め付け力が強すぎると、図4(C-2)に示すように、エンボス106の底面108が、下側の包装用キャリアテープ100のトップテープ110を押し下げる。すると、該トップテープ110と電子部品104が接触し、トップテープ110を剥がした際(実装時)に、電子部品104がトップテープ110に貼り付いて実装率が低下するという不都合がある。この問題に対しては、現在は、包装用キャリアテープ100をリール120へ巻く際の締め付け力を最適化することで品質を確保している。
【0004】
このようなトップテープと電子部品の貼り付きを抑制するための技術としては、例えば、下記特許文献1に示す技術がある。当該特許文献1の小型物品収納用キャリアテープ及び収納装置には、キャリアテープに形成された物品収納用ポケットの間に、少なくとも一部の深さがポケットと同じかそれよりも深く形成されたエンボス穴であって、物品が収納されることのないダミーポケットを配置することが開示されている。そして、キャリアテープを巻き取ったときに、隣接する内側と外側でポケットの位置が重なったとしても、前記ダミーポケットが両キャリアテープ間の距離を維持するように作用することで、外側のキャリアテープのポケット底部が内側のキャリアテープの開口部に入り込みにくくなり、ネスティング(外側のポケットの底部が内側のポケットの開口部に入り込む現象)を防止する構成となっている。
【0005】
また、下記特許文献2には、可撓性を有するテープ状物体の長手方向に、一定間隔で配置された電子部品収容用エンボス部を有する電子部品用キャリアテープにおいて、該エンボス部を形成する側壁部に、エンボス部外側方向に突出したリブ部を少なくとも1つ有し、かつ側壁部のリブ部分の断面形状において、エンボス底部の外側寸法(X)が、エンボス部上部の開口部寸法(Y)よりも大きい電子部品用キャリアテープが開示されている。当該技術によれば、前記リブを設けることにより、リールに巻き取った後にエンボス部同士の入り込む現象が発生しにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−312726号公報
【特許文献2】特開2002−46770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、以上のような背景技術には、次のような不都合がある。まず、前記特許文献1に記載の技術は、電子部品の収納に必要がない部分に加工が必要になるという不都合がある。また、前記特許文献2に記載の技術では、エンボス部の上下位置が揃っているときは問題が生じないが、位置ずれが生じたときには、角部が入り込んでしまう。例えば、エンボスの底面(一部又は全体)の寸法を開口部の寸法よりも大きくしても、リールに巻き取ったときに、上下のテープが斜めにずれると、上側のエンボスの底面の角部の一つが、隣接するエンボス(下側のエンボス)の内部に入り込むことがある。特に、エンボスに微小部品を収納する場合、エンボス間の距離がエンボスの寸法よりも大きくなる場合があるため、キャリアテープが撓みやすくなり、底面の角部の1つが隣接するエンボスの内部に入り込みやすい。この状態を図示すると、図2(B)に示すようになる。図2(B)に示す収納用キャリアテープ130では、リール120に巻き取ったときに、電子部品104を収納するエンボス106の底面108の角部132が、下側(ないし内側)のエンボス106に押込まれる。押込まれた角部132は、トップテープ110を押圧し、押圧されたトップテープ110にエンボス106内の電子部品104が貼り付くという問題が発生する。
【0008】
本発明は、以上のような点に着目したもので、キャリアテープのエンボス(ポケット)内に収納された電子部品へのトップテープの貼り付きを防止して、実装率の低下を抑制することができる収納用キャリアテープ及びその巻取リールを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の包装用キャリアテープは、電子部品を収納可能なエンボスが、キャリアテープ本体の長さ方向に所定間隔で形成されており、前記キャリアテープ本体の上面にトップテープが貼り合わせられる包装用キャリアテープであって、前記エンボスの底部の最大寸法が、前記エンボスの開口部の寸法及びエンボスの外側面間の寸法よりも大きく、かつ、前記底部の周囲の前記外側面から突出した部分の前記エンボスの深さ方向における断面がR形状となっており、更に、前記エンボスを底面側からみたときに、前記底部の角部がR形状になっていることを特徴とする。
【0010】
本発明の包装用キャリアテープの巻取リールは、キャリアテープを巻き取るコアと、該コアの両端に設けられた一対のフランジとを備えており、請求項1記載の包装用キャリアテープが巻き取られたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子部品を収納可能なエンボスが、キャリアテープ本体に、長さ方向に所定間隔で形成されており、前記キャリアテープ本体の上面にトップテープが貼り合わせられる包装用キャリアテープにおいて、前記エンボスの底部の最大寸法が、前記エンボスの開口部及び外側面間の寸法よりも大きく、かつ、前記底部の周囲であって前記側面から突出した部分の前記エンボスの深さ方向における断面がR形状となっており、更に、前記エンボスを底面側からみたときに前記底部の角部がR形状になっている。このため包装用キャリアテープをリールに巻き取られた状態で上下で隣接するエンボス内への嵌り込みを防止できる。また、リールに巻き取られた包装用キャリアテープが上下で位置ずれしている場合であっても、エンボス底部の角部をR形状とし、かつ、前記底部の周縁の縦方向断面をR形状としたので、キャリアテープ底部がトップテープを押し下げてトップテープと電子部品が接触する現象を回避し、トップテープが電子部品に押し付けられる圧力が軽減されるため、剥がした際(実装時)に、電子部品がトップテープに貼り付くことなく、実装率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1を示す図であり、(A)は包装用キャリアテープを示す外観斜視図,(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,(C)は前記(A)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。
【図2】包装用キャリアテープをリールに巻き取った状態を示す断面図であり、(A)は実施例1を示す図,(B)比較例の背景技術を示す図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す図である。
【図4】背景技術を示す図であり、(A)はリールを示す図,(B)は前記(A)の一部を拡大して示す図,(C-1)は前記(B)を更に拡大した図であって、テープの巻きが良好な状態を示す図,(C-2)は前記(B)を更に拡大した図であって、テープの巻きが不良な状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
最初に、図1及び図2を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例を示す図であり、(A)は包装用キャリアテープを示す外観斜視図,(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,(C)は前記(A)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。図2は、包装用キャリアテープをリールに巻き取った状態を示す断面図であり、(A)は本実施例を示す図,(B)は比較例の背景技術を示す図である。図1(A)〜(C)に示すように、本実施例の包装用キャリアテープ10は、電子部品14を収納するためのエンボス(ないしポケット)16が長さ方向に所定間隔で多数形成されたキャリアテープ本体12と、該キャリアテープ12の上面に貼り合わせられるトップテープ30により構成されている。前記包装用キャリアテープ10は、上述した背景技術のように、図4(A)に示すようなリール120のコア122に巻き取られ、該コア122の両端の一対のフランジ124A,124Bにより、巻崩れが防止されている。前記包装用キャリアテープ10は、必要に応じた長さを引き出して使用する。
【0015】
本実施例では、前記エンボス16の底部20の最大の底幅X1が、キャリアテープ本体12のエンボス16の間口(ないし開口部)の幅X2よりも広く、かつ、エンボス16の外側面18間の幅X3よりも大きく設定されており、底面が平坦に形成されている。従って、包装用キャリアテープ10をリール120に巻き取った状態で、上下のエンボス16の位置が重なったときに、上側のエンボス16の底部20が、下側のエンボス16の間口に入り込むことがない。更に、本実施例では、前記底部20がエンボス16の外側面18から突出した突出部22の形状を、前記エンボス16の深さ方向に沿った面での断面(縦方向断面)がR形状となっており、更に、底部20を底面側から見たときの角部24がR形状となるように形成されている。
【0016】
すなわち、角がとれて底部裏面の幅X5が、前記最大の底幅X1よりも短くなるため、リール120に巻き取り後のエンボス16の配置が、図2(A)のようになった場合であっても、上側のエンボス16の底部角部24が、下側のエンボス16内に押し込まれる距離を低減できる。また、突出部22と角部24のR形状により、トップテープ30が電子部品14に押し付けられる圧力が、上述した背景技術で示した場合(図2(B)参照)と比べて軽減されるため、電子部品14のトップテープ30への貼り付きを軽減する。このため、トップテープ30を剥がした際(実装時)に、電子部品14がトップテープ30に貼り付くという実装率低下を抑制することができる。このような底部20の形成は、エンボス16の間口の形成と同時に一回のプレスで行うようにしてもよいし、間口形成とは別のプレス工程によって形成してもよい。なお、図1(B)には、図1(A)を包装用キャリアテープ10の長さ方向に沿った断面を示したが、図1(C)に示すように、図1(A)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面における形状及び寸法関係も、基本的には前記図1(B)と同様である。
【0017】
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)電子部品14を収納可能なエンボス16が、キャリアテープ本体12に、長さ方向に所定間隔で多数形成されており、前記キャリアテープ本体12の上面にトップテープ30が貼り合わせられる包装用キャリアテープ10において、前記エンボス16の底部の最大の底幅X1を、前記エンボス16の間口の幅X2及び外側面18間の幅X3よりも大きくした。このため、包装用キャリアテープ10がリール120に巻き取られた状態において、上下で隣接するエンボス同士の嵌り込みを防止できる。
(2)前記底部20の周囲であって前記外側面18から突出した突出部22の前記エンボスの深さ方向における断面をR形状とし、更に、前記エンボス16を底面側からみたときの前記底部20の角部24の形状をR形状とした。このため、包装用キャリアテープ10をリール120に巻いた状態において、キャリアテープ底部20が、隣接する下側のトップテープ30を押し下げる距離と圧力が軽減され、トップテープ30を剥がした際(実装時)に、電子部品14がトップテープ30に貼り付くことなく、実装率の低下を抑制することができる。
【0018】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、同様の効果を奏する範囲内で適宜変更可能である。例えば、前記底部20の底面形状及び突出部22のR形状の曲率は、トップテープ30の押込み距離及び圧力を軽減する範囲内で適宜変更可能である。
(2)前記実施例では、底部20の形成を、エンボス16の間口形成と同時のプレスにより行うこととしたが、これも一例であり、間口形成とは別のプレスによって形成してもよい。
(3)前記実施例では、包装用キャリアテープ10をリール120に巻き取ることとしたが、これも一例であり、リール120への巻き取りは必要に応じて行うようにすればよい。
【0019】
(4)前記底部20の最大底幅X1,エンボス16の間口の幅X2,エンボス16の外側面18間の幅X3も、同様の効果を奏する範囲内で適宜変更してよい。例えば、前記実施例1では、エンボス16の底部20の全周が外側面18から突出し、2組の対向する突出部22における最大寸法をいずれも同じ底幅X1とした。これに対し、図3(A)に示す包装用キャリアテープ10Aでは、エンボス16の対向する外側面18A,18C側にのみ突出部22を設けることで、底面側から見たときに、キャリアテープ本体12の長さ方向の底幅X1のみを、外側面18間の底幅X3よりも大きくなる構成としているが、前記実施例1と同様の効果が得られる。あるいは、図3(B)に示す包装用キャリアテープ10Bのように、エンボス16の対向する外側面18B,18D側にのみ突出部22を設け、キャリアテープ本体12の長さ方向と直交する方向における底幅X1のみを、外側面18間の底幅X3よりも大きくなる構成としてもよい。いずれの場合も、角部24は底面側から見た時にR形状となっている。更に、エンボス16の平面形状そのものを長方形にして、その底部の全周に突出部22を設けて、R形状の角部24を形成してもよい。
(5)前記実施例では、エンボス16へ収納するものとして電子部品14を例に挙げて説明したが、他の被包装体を包装するために本発明を適用することを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば、キャリアテープ本体に、長さ方向に所定間隔で多数のエンボスが形成されており、該エンボスの底部の最大寸法が、前記エンボスの開口部及び外側面間の寸法よりも大きく、かつ、前記底部の周囲であって前記外側面から突出した部分の前記エンボスの深さ方向における断面がR形状となっており、更に、前記エンボスを底面側からみたときに前記底面の角部をR形状にすることとした。このため、前記キャリアテープ本体の上面にトップテープを貼り合わせた包装用キャリアテープをリールに巻き取ったときに、上下で隣接するエンボス同士の嵌り込みを防止でき、かつ、位置ずれが起きたときでも、上側のエンボスの底部が、下側のエンボス上のトップテープを押し下げてエンボス内に収納された電子部品に貼り付くことがないため、電子部品収納用のキャリアテープの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0021】
10,10A,10B:包装用キャリアテープ
12:キャリアテープ本体
14:電子部品
16:エンボス
18,18A〜18D:外側面
20:底部
22:突出部
24:角部
30:トップテープ
100:包装用キャリアテープ
102:キャリアテープ本体
104:電子部品
106:エンボス
108:底面
110:トップテープ
120:リール
122:コア
124A,124B:フランジ
130:包装用キャリアテープ
132:角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収納可能なエンボスが、キャリアテープ本体の長さ方向に所定間隔で形成されており、前記キャリアテープ本体の上面にトップテープが貼り合わせられる包装用キャリアテープであって、
前記エンボスの底部の最大寸法が、前記エンボスの開口部の寸法及びエンボスの外側面間の寸法よりも大きく、かつ、
前記底部の周囲の前記外側面から突出した部分の前記エンボスの深さ方向における断面がR形状となっており、更に、
前記エンボスを底面側からみたときに、前記底部の角部がR形状になっていることを特徴とする包装用キャリアテープ。
【請求項2】
キャリアテープを巻き取るコアと、該コアの両端に設けられた一対のフランジとを備えており、請求項1記載の包装用キャリアテープが巻き取られたことを特徴とする包装用キャリアテープの巻取リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−236610(P2012−236610A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105244(P2011−105244)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】