説明

包装用フィルム

【課題】生分解性並びにストレッチ包装に適した熱融着性及び延伸性を有するようにする。
【解決手段】中間層は、脂肪族系単量体成分が30〜80モル%であり結晶融点が100℃以上の脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂、並びに(1)式の脂肪族又は脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、(2)式の脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%、及び(3)式の脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%からなり結晶融点が100℃以上の脂肪族ポリエステル共重合樹脂を主成分とする。中間層の両側の各表面層は、中間層の脂肪族ポリエステル共重合樹脂と同様の脂肪族ポリエステル共重合樹脂であって結晶融点が90℃以下のものを主成分とする。
(1)−O−R1 −O−(R1 は2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基)
(2)−OC−R2 −CO−(R2 は直接結合又は2価の脂肪族炭化水素基)
(3)−O−R3 −CO−(R3 は2価の脂肪族炭化水素基)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
野菜、肉、加工食品等は、樹脂製のトレイに収容(載置)された状態で透明なフィルムでくるまれ(その際、そのフィルムは引き伸ばされる)、トレイの下面においてそのフィルムの端部同士が重ね合わされ、当該重ね合わせ部分を下にして熱板上を通過させられることによって、当該重ね合わせ部分が熱融着されて包装されることが多い。
このようにフィルムを引き伸ばしつつ当該フィルムで包装することをストレッチ包装ということとする。
【0003】
そして、現在市販されているストレッチ包装用フィルムとしては、軟質系の塩化ビニール樹脂が主体である。
しかしながら、かかる包装用フィルムについては、焼却時に有毒ガスが発生する等の環境問題が指摘されており、生分解性樹脂をべースとした包装用フィルムの開発が行われてきている。
【0004】
生分解性樹脂のなかでもポリ乳酸は透明性に優れ、石油資源に依存しない植物を原料とすること等から好ましいとされている。
そして、特許文献1には、ポリ乳酸を用いたフィルムとして、乳酸を主成分とする共重合体と、脂肪族ジカルボン酸及び鎖状分子ジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルの可塑剤とからなる混合組成物からなるフィルムが開示されている。
しかしながら、このフィルムでは、塑性的な伸びやすさ(以下、「延伸性」又は「引き伸ばし性」ということとする)が不足しており、ストレッチ包装には適さない。すなわち、被包装物が収容されたトレイをくるむようにして当該フィルムを引き伸ばそうとする際に、トレイが変形したり、フィルムが破れたりする問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、結晶融点が110℃〜230℃の芳香族系単量体からなる成分を含む脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂を主体する層と、結晶融点が100℃以上の脂肪族ポリエステル系樹脂を主体とする層を積層したフィルムが開示されている。
しかしながら、このフィルムであっても、引き伸ばして包装するにはフィルムの延伸性が不足している。
また、フィルムの各層の融点が高いとともに、それらが近接した値を有する場合があるため、熱板をそれに見合った高温にする必要があるとともに、軽い被包装物(フィルムに対する熱負荷は小さい)の場合を基準に熱板を高温にすると、重い被包装物(フィルムに対する熱負荷は大きい)の場合にフィルム全体が溶けてしまうという不具合がある場合がある。そして、その際は、被包装物の重量に応じて熱板の温度を調整する必要があり、効率的な包装工程を実施するには不向きであった。
【0006】
すなわち、生分解性を有する樹脂フィルムにおいては、その延伸性と熱融着性とのいずれもが不十分であった。
【特許文献1】特開平8−245866号公報
【特許文献2】特開2002−178473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、生分解性を有し、ストレッチ包装に適した熱融着性を有するフィルムを提供することを第1の課題とする。さらに、ストレッチ包装用に適した延伸性を有するフィルムを提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、第1の発明は、脂肪族系単量体成分が30〜80モル%であり結晶融点が100℃以上の脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂を主成分とする中間層と、前記中間層のおもて面の側及び裏面の側の双方に形成され、下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位及び下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位からなり結晶融点が90℃以下の脂肪族ポリエステル共重合樹脂を主成分とする表面層とを有する包装用フィルムである。
【0009】
第2の発明は、脂肪族系単量体成分が30〜80モル%であり結晶融点が100℃以上の脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂を主成分とする中間層と、前記中間層のおもて面の側及び裏面の側の双方に形成され、下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%、及び下記(3)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%からなり結晶融点が90℃以下の脂肪族ポリエステル共重合樹脂を主成分とする表面層とを有する包装用フィルムである。
【0010】
第3の発明は、脂肪族系単量体成分が30〜80モル%であり結晶融点が100℃以上の脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂、並びに下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%、及び下記(3)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%からなり結晶融点が100℃以上の脂肪族ポリエステル共重合樹脂を主成分とする中間層と、前記中間層のおもて面の側及び裏面の側の双方に形成され、下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位及び下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位からなり結晶融点が90℃以下の脂肪族ポリエステル共重合樹脂を主成分とする表面層とを有する包装用フィルムである。
【0011】
第4の発明は、脂肪族系単量体成分が30〜80モル%であり結晶融点が100℃以上の脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂、並びに下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%、及び下記(3)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%からなり結晶融点が100℃以上の脂肪族ポリエステル共重合樹脂を主成分とする中間層と、前記中間層のおもて面の側及び裏面の側の双方に形成され、下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%、及び下記(3)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%からなり結晶融点が90℃以下の脂肪族ポリエステル共重合樹脂を主成分とする表面層とを有する包装用フィルムである。
【0012】
(1)−O−R1 −O− (R1 は2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化 水素基)
(2)−OC−R2 −CO−(R2 は直接結合又は2価の脂肪族炭化水素基)
(3)−O−R3 −CO− (R3 は2価の脂肪族炭化水素基)
【0013】
第5の発明は、第1〜第4のいずれかの発明の包装用フィルムであって、前記中間層は、脂肪族アルコール系脂肪酸エステル及びポリアルキルエーテルポリオールからなる群から選択される1種又は2種以上である化合物を当該中間層の総量に対して3〜20質量%含有し、前記各表面層は、脂肪族アルコール系脂肪酸エステルを当該表面層の総量に対して1〜5質量%含有する、包装用フィルムである。
【0014】
第6の発明は、第1〜第5のいずれかの発明の包装用フィルムであって、引張弾性率が60〜120Mpaである、包装用フィルムである。
第7の発明は、第1〜第6のいずれかの発明の包装用フィルムであって、前記中間層の厚みが3〜15μmであり、前記各表面層の厚みが2〜15μmである、包装用フィルムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、生分解性を有するとともに、ストレッチ包装に適した熱融着特性(又は、さらにはストレッチ包装に適した延伸性)を有する包装用フィルムが得られる。
特に、引張弾性率が60〜120Mpaであると、ストレッチ包装に適した延伸性が得られ、包装時のフィルムの引き伸ばしに伴うトレイの変形やフィルムの破損を防止できる。
また、中間層の厚みが3〜15μmであり、各表面層の厚みが2〜15μmであると、ストレッチ包装がしやすいとともに、強度も所定以上のものが確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のストレッチ包装用フィルムは、中間層と、そのおもて面及び裏面の双方に形成された表面層とからなる3層構造である。
【0017】
[中間層]
中間層は、結晶融点が100℃以上の脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂を主成分とする場合と、いずれも結晶融点が100℃以上の脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂及び脂肪族ポリエステル共重合樹脂を主成分とする場合がある。また、脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂を有さず、結晶融点が100℃以上の脂肪族ポリエステル共重合樹脂を主成分とする場合も、同様の効果が得られる。
【0018】
その脂肪族ポリエステル共重合樹脂は、下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール、下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸、及び下記(3)式で表される脂肪族オキシカルボン酸からなる。
(1)−O−R1 −O− (R1 は2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化 水素基)
(2)−OC−R2 −CO−(R2 は直接結合又は2価の脂肪族炭化水素基)
(3)−O−R3 −CO− (R3 は2価の脂肪族炭化水素基)
【0019】
脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂の脂肪族成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ピメリン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の中から1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、アジピン酸、コハク酸を用いる。
芳香族成分としては、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の中から用いることができる。好ましくは、テレフタル酸を用いる。
一方、アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等のなかから1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールを用いる。
【0020】
脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂の酸成分としては、脂肪族酸成分が30〜80モル%であることが好ましい。換言すれば、芳香族酸成分が20〜70モル%であることが好ましい。
脂肪族酸成分が30モル%未満であると、得られるフィルムが硬くなり、また、生分解性が低下するからであり、一方、80モル%を超えると、結晶融点が低下するからである。より好ましくは、脂肪族酸成分が30〜60モル%である。
脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂の酸成分とアルコール成分は、原則的には等量であるが末端の反応を利用するときは、いずれかが過剰であってもよい。
また、本共重合樹脂においては、その共重合形態は限定されずランダム状、ブロック状、スター状等のいずれであってもよく、これらの共重合形態を組み合わせたものであってもよい。
さらに、多官能性グリコールとカルボン酸とを同時に備える化合物、イソシアネート化合物、カーボネート系化合物を用いて分岐や分子量の増大を図ることもできる。
加えて、共重合体の分岐部分や末端をアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンでアイオノマー化することもできる。
【0021】
脂肪族ポリエステル共重合樹脂については、次のとおりである。
脂肪族オキシカルボン酸としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸又はこれらの混合物が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合は、D体、L体、ラセミ体のいずれでもよい。
脂肪族又は脂環式ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、又はこれらの混合物が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸又はこれらの無水物、及びそれらの低級アルコールエステルが好ましく、特には、コハク酸、無水コハク酸、又はこれらの混合物が好ましい。
【0022】
脂肪族又は脂環式ジオールの使用量は、脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、1〜20モル%過剰に用いられる。
脂肪族オキシカルボン酸の量は、脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体100モルに対し、好ましくは0.5〜60モル、より好ましくは、1.0〜40モルである。
【0023】
脂肪族ポリエステル共重合樹脂の組成比は、(1)式の脂肪族又は脂環式ジオール単位と(2)式の脂肪族ジカルボン酸単位のモル比が、実質的に等しいことが必要である。
脂肪族又は脂環式ジオール単位及び脂肪族ジカルボン酸単位は、各々35〜49.99モル%、好ましくは35〜49.75モル%、より好ましくは45〜49.5モル%である。
また、(3)式の脂肪族オキシカルボン酸単位は0.02〜30%、好ましくは0.5〜25モル%、より好ましくは1.0〜20モル%、さらに好ましくは1.0〜10モル%である。
脂肪族オキシカルボン酸が30モル%を超えると結晶性が失われて延伸性が高くなりすぎて好ましくない。
【0024】
数平均分子量としては、2万〜20万、好ましくは3万〜15万である。また、本発明の効果を損なわない限り、本発明に使用する脂肪族ポリエステル共重合樹脂に多価カルボン酸又はその無水物成分を共重合したものでもよい。
【0025】
中間層で用いる脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂,脂肪族ポリエステル共重合樹脂の結晶融点は、100℃以上が必要であり、好ましくは100〜160℃である。
100℃未満であるとトレイ底のフィルム同士の熱接着性が劣るからであり、160℃を超えるとフィルム成形が困難になるからである。
なお、結晶融点は、DSCにおけるピークより求めることができる。
【0026】
中間層を構成する樹脂組成物は、脂肪族アルコール系脂肪酸エステル及びポリアルキルエーテルポリオールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有している。
この化合物は、延伸性を付与するほか、フィルム同士の粘着性、フィルムと接触する物体との滑り性等を付与することができる他、透明性、防曇性も付与できる。
【0027】
脂肪族アルコール系脂肪酸エステルとしては、炭素数が1〜12の脂肪族アルコールと炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステルをあげることができる。
脂肪族アルコール系脂肪酸エステルとしては、グリセリンジ又はトリオレエート、グリセリンモノ又はジベヘエート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレエート、ソルビタンラウレート、ソルビタンオレエート、ソルビタントリオレエート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンオレエート、ポリグリセリンオレエート、モノグリセリンオレエート、デカグリセリンラウレート、デカグリセリンオレエート、テトラグリセリンオレエート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンポリリシノレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシノレート、プロピレングリコールモノオレエート、プロピレングリコールラウレート、ポリエチレングリコールオレエート、ポリエチレングリコールソルビタンオレエート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等である。
ポリアルキルエーテルポリオールとしては、分子量2万以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等である。
数平均分子量は好ましくは400〜20,000であり、さらに好ましくは1,000〜10,000である。
【0028】
上述の化合物は、中間層の全体に対して、3〜20質量%含有することが好ましい。3質量%未満であるとストレッチ包装用フィルムとしての延伸性が不足し、20質量%を超えるとフィルムの強度が低下してしまうからである。
より好ましくは、3.5〜15質量%である。
【0029】
[表面層]
各表面層は、結晶融点が90℃以下の脂肪族ポリエステル共重合樹脂を主成分とする。
その脂肪族ポリエステル共重合樹脂は、中間層における脂肪族ポリエステル共重合樹脂の場合における(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール、同じく(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸、及び同じく(3)式で表される脂肪族オキシカルボン酸からなる場合(Aの場合ということとする)と、そのうちの(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール及び(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸からなる場合(Bの場合ということとする)がある。
【0030】
その脂肪族ポリエステル共重合樹脂については、中間層における脂肪族ポリエステル共重合樹脂と同様に、次のとおりである。
脂肪族オキシカルボン酸としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸又はこれらの混合物が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合は、D体、L体、ラセミ体のいずれでもよい。
脂肪族又は脂環式ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、又はこれらの混合物が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸又はこれらの無水物、及びそれらの低級アルコールエステルが好ましく、特には、コハク酸、無水コハク酸、又はこれらの混合物が好ましい。
【0031】
A及びBのいずれの場合においても、脂肪族又は脂環式ジオールの使用量は、脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、1〜20モル%過剰に用いられる。
Aの場合において、脂肪族オキシカルボン酸の量は、脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体100モルに対し、0.5〜60モル、より好ましくは、1.0〜40モルである。
【0032】
A及びBのいずれの場合においても、脂肪族ポリエステル共重合樹脂の組成比は、(1)式の脂肪族又は脂環式ジオール単位と(2)式の脂肪族ジカルボン酸単位のモル比が、実質的に等しいことが必要である。
Aの場合、脂肪族又は脂環式ジオール単位及び脂肪族ジカルボン酸単位は、各々35〜49.99モル%、好ましくは35〜49.75モル%、より好ましくは45〜49.5モル%である。
また、Aの場合、(3)式の脂肪族オキシカルボン酸単位は0.02〜30%、好ましくは0.5〜25モル%、より好ましくは1.0〜20モル%、さらに好ましくは1.0〜10モル%である。
脂肪族オキシカルボン酸が30モル%を超えると結晶性が失われて延伸性が高くなりすぎて好ましくない。
【0033】
各表面層における脂肪族ポリエステル共重合樹脂に関するその他については、中間層における脂肪族ポリエステル共重合樹脂の場合と同様である。
【0034】
各表面層を構成する樹脂組成物は、脂肪族アルコール系脂肪酸エステルの群から選択された1種又は2種以上の化合物を含有している。
脂肪族アルコール系脂肪酸エステルの含有量は、各表面層の全体に対して、1〜5質量%含有することが好ましい。
1質量%未満では、ストレッチ包装用フィルムとして必要な防曇性、フィルム同士の粘着性、接触する物体との滑り性等が不足し、5質量%を超えるとフィルム表面が過度にベタツクからである。
より好ましくは1.5質量〜4.0質量%である。
【0035】
各表面層における化合物の脂肪族アルコール系脂肪酸エステルに関する具体例については、中間層における化合物の脂肪族アルコール系脂肪酸エステルの場合と同様である。
【0036】
[中間層及び表面層]
本発明の中間層及び表面層の各樹脂には、本発明の効果が損なわれない範囲で他の生分解性樹脂を含有させてもよい。
具体的には、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペートなどが挙げられる。
また、公知の添加剤である酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、プロッキング防止剤等は適宜添加することができる。
【0037】
また、本発明の包装用フィルムの厚みは、次のとおりである。
中間層の厚みは3〜15μmである。3μm未満であると強度が低下するからであり、15μmを超えるとフィルム全体の厚みが厚くなりすぎるからである。好ましくは、5〜12μmである。
また、各表面層の厚みは、2〜15μmである。2μm未満であるとトレイ底面のフィルム同士の重ね合わせ部分において充分な熱融着強度が得られないからであり、15μmを超えるとフィルム全体の厚みが厚くなりすぎるからである。好ましくは、3〜7μmである。
【0038】
本発明の包装用フィルム全体の引張弾性率は60〜120Mpaであることが好ましい。
60Mpa未満であるとフィルムが延伸性が高くなり過ぎて自動包装機でのフィルム搬送が不安定となるからであり、120Mpaを超えるとフィルムの延伸性が低くなりすぎてストレッチ包装に適さないからである。
なお、引張弾性率はJIS K−7127に準拠して測定する。
【0039】
上述した本発明のフィルムは、公知の成形方法で製造することができる。
例えば、中間層を構成する樹脂組成物及び各表面層を構成する樹脂組成物を複数の押出機を用いて、空冷インフレーション成形、水冷インフレーション成形チューブラーニ軸延伸成形、Tダイキャスト成形による共押出法等、公知の方法で成膜することができる。
フィルムの縦方向と横方向の機械的強度バランスが良好なフィルム成膜のためには、インフレーション成形による共押出法でブロー比が2〜10倍であることが好ましい。
【0040】
以下に本発明の内容を更に詳細に実施例で示す。
本発明は、以下の具体的開示の範囲内に限定されないことはいうまでもない。
[評価方法]
評価方法は下記のとおりである。
(1)結晶融点;DSC法によって測定した。
(2)ガラス転移温度;DSC法によって測定した。
(3)引張伸び;JIS−Z1702に準拠して、得られたフィルムをオートグラフ引張試験機にて測定した。
(4)引張弾性率;JIS−K7127に準拠して、得られたフィルムをオートグラフ引張試験機にて測定した。
(5)包装適性評価;発泡ポリスチレン製のトレイ上に、肉を各々100g、500g載せたものをストレッチ自動包装機〔(株)イシダ製「Wmini−MarkII」(商品名)〕にて包装を行い、包装機の金属ロール、搬送ベルトとの滑り性、フィルムを引き伸ばした時のフィルム破れ、トレイの変形有無、熱板表面温度120℃でのトレイ底部のフィルム同士の熱融着性を観察した。
【0041】
〈実施例1〉
中間層用樹脂組成物については、脂肪族酸成分としてアジピン酸60モル%、芳香族酸成分としてテレフタル酸40%からなる酸成分50モル%と、1,4−ブタンジオール50モル%を共重合した結晶融点110℃、比重1.26の脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂[BASF社製エコフレックス]95質量%、数平均分子量3300のポリエチレングリコール[三洋化成社製PEG−4000S]5質量%からなる樹脂組成物を使用し、それらを口径50mm、L/D26の押出機を用いて160℃で混練した。
【0042】
各表面層用樹脂組成物については、乳酸2モル%、コハク酸34モル%、アジピン酸15モル%、1,4−ブタンジオール49モル%を共重合した結晶融点が74℃、比重1.24の脂肪族ポリエステル共重合樹脂97質量%、に対し、ポリグリセリンオレエート[理研ビタミン社製リケマールO71]3質量%からなる樹脂組成物を使用し、それら口径50mm、L/D25の押出機を用いて150℃で混練した。
【0043】
上述の両者を一台の環状ダイに供給して、厚さ8μmの中間層の両面に厚さ3μmの各表面層が積層されるようにして、ダイ温度170℃、ブロー比5倍でインフレーション成形して、全体の厚さ14μm(3μm/8μm/3μm)の三層構造の包装用フィルムを製造した。
【0044】
この包装用フィルムは、ストレッチ自動包装機で引き伸ばして包装するとき、包装機の金属ロール、ウレタンゴム製のフィルム搬送ベルトとの滑りも良好で円滑に連続作業が出来て、フィルムを引き伸ばして包装してもトレイを変形させることなく適度な延伸性がある。また、トレイ底部のフィルム同士の熱接着性も熱板表面温度120℃で包装物重量100gの軽いものもしっかりと接着し、一方、500gの重いものもフィルムが溶けることもなく実用上好適であった。
この包装用フィルムの物性、包装適性は、表1に示されるとおりである。
【0045】
〈実施例2〉
中間層用樹脂組成物として、実施例1で用いた脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂70質量%、乳酸3モル%、コハク酸44.5モル%、1,4−ブタンジオール48.5モル%、アジピン酸4モル%を共重合した結晶融点が101℃、比重1.26の脂肪族ポリエステル共重合樹脂30質量%からなる混合樹脂95質量%に対し、数平均分子量3300のポリエチレングリコール5質量%からなる樹脂組成物を使用した。その他については、実施例1と同様である。
その積層フィルムの物性、包装適性は、表1に示されるとおりである。
【0046】
〈参考例〉
中間層用樹脂組成物については、乳酸5モル%、コハク酸47.5モル%、1,4−ブタンジオール47.5モル%を共重合した結晶融点が103℃、比重1.26の脂肪族ポリエステル共重合樹脂90質量%に対し、数平均分子量3300のポリエチレングリコール10質量%からなる樹脂組成物を使用し、それらを口径50mm、L/D26の押出機を用いて160℃で混練した。
各表面層樹脂組成物については、実施例1の場合と同一である。
【0047】
そして、実施例1の場合と同様にして、厚さ6μmの中間層の両面に厚さ4μmの各表面層が積層されるようにして、全体の厚さ14μm(4μm/6μm/4μm)の三層構造の包装用フィルムを製造した。
この包装用フィルムの物性、包装適性は、表1に示されるとおりである。
【0048】
〈比較例1〉
実施例1で用いた表面層用樹脂[BASF社製エコフレックス]を口径50mm、L/D25の押出機を用いて160℃で混練し、単層の環状ダイに供給し、ダイ温度170℃、ブロー比3倍でインフレーション成形して、厚さ14μmのフィルムを製造した。
このフィルムの物性、包装適性は、表1に示されるとおりである。
【0049】
〈比較例2〉
実施例1で用いた内外表面層用樹脂97質量%と、ポリグリセリンオレエート[理研ビタミン社製リケマールO71]3質量%からなる樹脂組成物を口径50mm、L/D25の押出機を用いて150℃で混練し、単層の環状ダイに供給し、ダイ温度160℃、ブロー比3倍でインフレーション成形して、厚さ14μmのフィルムを製造した。
このフィルムの物性、包装適性は、表1に示されるとおりである。
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族系単量体成分が30〜80モル%であり結晶融点が100℃以上の脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂を主成分とする中間層と、
前記中間層のおもて面の側及び裏面の側の双方に形成され、
下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位及び
下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位
からなり結晶融点が90℃以下の脂肪族ポリエステル共重合樹脂を主成分とする表面層と
を有する包装用フィルム。
(1)−O−R1 −O− (R1 は2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化 水素基)
(2)−OC−R2 −CO−(R2 は直接結合又は2価の脂肪族炭化水素基)
【請求項2】
脂肪族系単量体成分が30〜80モル%であり結晶融点が100℃以上の脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂を主成分とする中間層と、
前記中間層のおもて面の側及び裏面の側の双方に形成され、
下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、
下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%、及び
下記(3)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%
からなり結晶融点が90℃以下の脂肪族ポリエステル共重合樹脂を主成分とする表面層と
を有する包装用フィルム。
(1)−O−R1 −O− (R1 は2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化 水素基)
(2)−OC−R2 −CO−(R2 は直接結合又は2価の脂肪族炭化水素基)
(3)−O−R3 −CO− (R3 は2価の脂肪族炭化水素基)
【請求項3】
脂肪族系単量体成分が30〜80モル%であり結晶融点が100℃以上の脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂、並びに、
下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、
下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%、及び
下記(3)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%
からなり結晶融点が100℃以上の脂肪族ポリエステル共重合樹脂
を主成分とする中間層と、
前記中間層のおもて面の側及び裏面の側の双方に形成され、
下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位及び
下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位
からなり結晶融点が90℃以下の脂肪族ポリエステル共重合樹脂を主成分とする表面層と
を有する包装用フィルム。
(1)−O−R1 −O− (R1 は2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化 水素基)
(2)−OC−R2 −CO−(R2 は直接結合又は2価の脂肪族炭化水素基)
(3)−O−R3 −CO− (R3 は2価の脂肪族炭化水素基)
【請求項4】
脂肪族系単量体成分が30〜80モル%であり結晶融点が100℃以上の脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂、並びに、
下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、
下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%、及び
下記(3)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%
からなり結晶融点が100℃以上の脂肪族ポリエステル共重合樹脂
を主成分とする中間層と、
前記中間層のおもて面の側及び裏面の側の双方に形成され、
下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、
下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%、及び
下記(3)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%
からなり結晶融点が90℃以下の脂肪族ポリエステル共重合樹脂を主成分とする表面層と
を有する包装用フィルム。
(1)−O−R1 −O− (R1 は2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化 水素基)
(2)−OC−R2 −CO−(R2 は直接結合又は2価の脂肪族炭化水素基)
(3)−O−R3 −CO− (R3 は2価の脂肪族炭化水素基)
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の包装用フィルムであって、
前記中間層は、脂肪族アルコール系脂肪酸エステル及びポリアルキルエーテルポリオールからなる群から選択される1種又は2種以上である化合物を当該中間層の総量に対して3〜20質量%含有し、
前記各表面層は、脂肪族アルコール系脂肪酸エステルを当該表面層の総量に対して1〜5質量%含有する、
包装用フィルム。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の包装用フィルムであって、
引張弾性率が60〜120Mpaである、包装用フィルム。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の包装用フィルムであって、
前記中間層の厚みが3〜15μmであり、
前記各表面層の厚みが2〜15μmである、
包装用フィルム。


【公開番号】特開2006−224551(P2006−224551A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43044(P2005−43044)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(592110808)株式会社吉良紙工 (11)
【Fターム(参考)】