説明

包装用二軸配向ポリエステルフィルムおよびそれを用いた包装体

【課題】
突刺強度に優れた包装用二軸配向ポリエステルフィルムと、耐突刺ピンホール性に優れた包装用二軸配向ポリエステルフィルムおよびそれを用いてなる包装体を提供すること。
【解決手段】
上記課題は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面にポリエステル樹脂とメラミン化合物を用いてなる易接着層を形成してなる包装用二軸配向ポリエステルフィルムであって、該包装用二軸配向ポリエステルフィルムの面配向係数(fn)が0.167以上0.175以下、複屈折率(Δn)の絶対値が5未満、突刺強度が7N以上15N以下、フィルム厚みが7μm以上20μm以下であり、かつ該易接着層と金属層との間の剥離強度が1N/15mm以上である包装用二軸配向ポリエステルフィルムによって達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装用二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。特に、突刺強度に優れた包装用二軸配向ポリエステルフィルムとそれを用いてなる包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムの代表例であるポリエチレンテレフタレート二軸配向フィルムは、良好な機械強度、熱的特性、湿度特性、その他多くの優れた特性から、工業材料、磁気記録材料、光学材料、情報通信材料、包装材料など幅広い分野において使用されている。さらに、近年の消費者の嗜好の多様化により、特に食品包装分野においては硬いスナック菓子などが市場から要求されている。そのため、益々耐突刺ピンホール性が特に重要となる包装材料用途においては、ポリエチレンテレフタレートではその強靱さの裏返しである硬さ故に耐突刺ピンホール性が不十分であり、柔軟性に優れる脂肪族ポリアミド二軸配向フィルムが多く使用されている。
【0003】
ところが、脂肪族ポリアミドは、その化学構造から水との親和性が高いために吸水性が高く、湿度寸法安定性に劣ったり、平面性の悪化、フィルム物性の吸湿による経時変化などポリマー由来の本質的な問題があり、ガスバリア性を高めるための金属化合物の蒸着が困難であったり、吸湿により印刷や、ラミネート層との接着力が低下するという問題がある。一方、芳香族ポリアミドは芳香環を有することで吸湿性については改善されるが、溶融製膜が困難であり、溶液製膜であっても特殊で危険性の高い溶媒を使用しなければならず、生産性と経済的な点で包装材料に用いることは困難であるという問題があり、ポリエステルフィルムが使用されるようになってきた。
【0004】
一方、ポリエステルは溶融製膜可能であり、吸湿性にも乏しいことから、ポリアミドのような問題は生じないが、先に述べたように包装材料に要求される耐突刺ピンホール性に劣るという課題があり、ポリエステルフィルム単独で包装材料として使用されることは稀であり、金属による蒸着が施されたり、その他のフィルムとラミネートされたりして使用されることがほとんどである。ところが、金属蒸着層や他フィルムとの剥離強度が低いと包装材料として価値を持たないため、ポリエステルフィルムと金属蒸着層を密着させる為にポリエステルフィルムと金属蒸着層との間に易接着層を持たせたフィルムが開示されている(たとえば、特許文献1)。また、包装材としてヒートシール性を有する為に、金属蒸着層上にシーラント層が設けられることが一般的であり、このシーラント層によって耐突刺ピンホール性を向上させるフィルムが開示されている(たとえば、特許文献2)。
【0005】
さらに、ポリエステルフィルムの面配向係数(fn)や屈折率を規定し、包装体としての耐突刺ピンホール性を向上させるフィルムも開示されている(たとえば、特許文献3)。しかし、これらの文献に記載されている技術では、突刺強度や耐突刺ピンホール性に限界があり、近年の需要に対応することが出来ないでいた。
【特許文献1】特開平08−311221号公報
【特許文献2】特開2006−035646号公報
【特許文献3】特開2007−118476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は上記した従来技術の問題点を解消することにある。すなわち、突刺強度に優れた包装用二軸配向ポリエステルフィルムと、耐突刺ピンホール性に優れた包装用二軸配向ポリエステルフィルムおよびそれを用いてなる包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面にポリエステル樹脂とメラミン化合物を用いてなる易接着層を形成してなる包装用二軸配向ポリエステルフィルムであって、該包装用二軸配向ポリエステルフィルムの面配向係数(fn)が0.167以上0.175以下、複屈折率(Δn)の絶対値が5未満、突刺強度が7N以上15N以下、フィルム厚みが7μm以上20μm以下であり、かつ該易接着層と後述する金属層との間の剥離強度が1N/15mm以上である包装用二軸配向ポリエステルフィルムおよびそれを用いた包装体によって達成することができる。
【0008】
さらに好ましい様態としては、
(1)易接着層を構成するポリエステル樹脂がテレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、およびセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも3つ以上の酸成分を含むこと、
(2)易接着層を構成するポリエステル樹脂がエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、および1,4−ブタンジオールからなる群から選ばれる少なくとも2つ以上のグリコール成分を含むこと、
(3)包装用二軸配向ポリエステルフィルム中のジエチレングリコール量が包装用二軸配向ポリエステルフィルム全体に対して0.01重量%以上1.2重量%以下であること、
(4)該包装用二軸配向ポリエステルフィルムの易接着層の上に金属および/または金属酸化物からなる層が積層されている包装体、
(5)(4)の包装体の金属および/または金属酸化物からなる層の上にオレフィン系フィルムからなる層が設けられている包装体、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは他のフィルムなどとラミネートされた包装体として要求される様々な変形モードでの耐突刺ピンホール性に優れていることから、包装用資材として好適に使用することができる。さらに、金属および/または金属酸化物からなる層を有する包装体として使用される際にはポリエステルフィルムと金属および/または金属酸化物からなる層間との剥離強度にも優れているため、様々な衝撃によっても層間剥離が生じることなく、突刺強度を維持することが出来るため、本発明のフィルムを用いて包装体を製造した場合、堅いスナック菓子や重量の大きなスナック菓子などを包装した際でも、運搬時および充填時における耐突刺ピンホール性が向上するという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を設けて、包装用二軸配向ポリエステルフィルムとするが、基材となるポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレートを用いてなるポリエステル樹脂からなることが必要である。ここで、ポリエチレンテレフタレートを用いてなるポリエステル樹脂とは、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸成分であること、およびグリコール成分の95モル%以上がエチレングリコール成分からなるポリエステル樹脂を意味している。ジカルボン酸成分およびグリコール成分として5モル%以下の範囲でテレフタル酸およびエチレングリコール以外の残基成分を含有してもよく、その含有の仕方としては共重合ポリエチレンテレフタレートでもよいし、ポリエチレンテレフタレートに他のポリエステル樹脂をブレンドして使用しても良い。耐熱性、寸法安定性の観点からは共重合やブレンドを行わないポリエチレンテレフタレート樹脂そのものを用いることが好ましい。テレフタル酸以外の酸成分としては、例えば、イソフタル酸,フタル酸,ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸,アジピン酸,アゼライン酸,セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸,シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p-オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多官能酸等を用いることができる。
【0011】
また、エチレングリコール以外のグリコール成分としては,ジエチレングリコール,ブタンジオール,ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ポリアルキレングリコール等を用いることができる。
【0012】
さらに、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルを共重合してもよい。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種類以上を併用してもよく、2種類以上のポリエステルをブレンドして使用しても良い。さらに2層以上に共押出し積層フィルムとして使用しても良い。
【0013】
また、このポリエステル樹脂の中に公知の添加剤、例えば、耐熱安定剤,耐酸化安定剤,耐候安定剤,紫外線吸収剤,有機の易滑剤,顔料,染料,充填剤,帯電防止剤,核剤などを配合しても良い。
【0014】
かかる添加剤として各種粒子が用いられる場合、使用される粒子の径は特に限定されないが、通常は沈降法あるいは光散乱法により測定した数平均粒径が0.05〜8.0μm、好ましくは0.1〜4.0μmである粒子をその代表として挙げることができる。
【0015】
本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは突刺強度、耐突刺ピンホール性や配向性の観点から、ポリエチレンテレフタレートを用いてなるフィルム中のジエチレングリコール(以下、DEGと称する場合がある)量が、包装用二軸配向ポリエステルフィルム全体に対して0.01重量%以上1.2重量%以下であることが好ましい。
【0016】
ジエチレングリコールは一般にポリエステル製造の際に副生するが、ジエチレングリコール量を0.01重量%未満とすると重合工程が煩雑となり、コストアップの要因となることがある。また、ジエチレングリコール量が1.2重量%を超えるとフィルム中の非晶部位が増加し、突刺強度や耐突刺ピンホール性が低下するとともに、延伸時に配向しにくい状態となり、後述する面配向係数(fn)や複屈折率(Δn)を規定の範囲内とするためには、フィルム破れが発生しやすい製膜条件に設定する必要があり、好ましくない。ジエチレングリコール量が少ないほど突刺強度、耐突刺ピンホール性および配向性が向上するため、より好ましくは0.3重量%以上1.0重量%以下、さらに好ましくは0.35重量%以上0.9重量%以下である。
【0017】
ジエチレングリコール量を減少させるには、重合時間を短縮したり、重合触媒として使用されるアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物などの量を限定する方法、液層重合と固層重合を組み合わせる方法、アルカリ成分を含有させる方法などが挙げられる。
【0018】
本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは、突刺強度が7N以上15N以下であることが必要である。突刺強度が7N未満であると、耐ピンホール性が不足しておりスナック菓子などの内容物を充填する際や搬送時にピンホールが発生しやすくなることがある。また、突刺強度が15Nを超えるとフィルム製膜工程でフィルム破れが発生しやすくなり生産性が低下することがある。突刺強度を7N以上15N以下にするにはポリエステルフィルムの製膜時に、面積倍率を4倍以上25倍以下、好ましくは6倍以上20倍以下、および熱処理温度を150℃以上250℃以下とすることなどによって達成できる。耐ピンホール性や生産性の観点から、突刺強度は8N以上14N以下であればより好ましく、9N以上13N以下であればさらに好ましい。
【0019】
本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは、金属および/または金属酸化物からなる層との剥離強度および突刺強度、耐突刺ピンホール性の観点から、ポリエステルフィルムの少なくとも片面にポリエステル樹脂とメラミン化合物を用いてなる易接着層を有していることが必須である。かかる易接着層を設けることにより、包装体として使用される際に設けられる金属および/または金属酸化物からなる層と包装用二軸配向ポリエステルフィルムとの接着性が向上し、層間剥離を防止することができる。ところが、易接着層に、ポリエステル樹脂またはメラミン化合物いずれか一方が含有されない場合、高湿度下、特に水中における金属および/または金属酸化物からなる層との接着性が不足し層間剥離が生じやすくなる。
【0020】
また、本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは、該易接着層と後述する金属層との間の剥離強度が1N/15mm以上である必要がある。
【0021】
本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは、その易接着層上に金属および/または金属酸化物からなる層を積層し、さらにその上にオレフィン系フィルムからなる層を設けたものを包装体として好適に使用することができるところ、該易接着層と後述する金属層との間の剥離強度が1N/15mm未満であると当該包装体の耐突刺ピンホール性が著しく悪化する。これは、剥離強度が上記範囲外であると、実際に内容物を充填する、または運搬する際に、金属および/または金属酸化からなる層と包装用二軸配向ポリエステルフィルムとの層間で層間剥離が生じやすく、かかる層間剥離が発生すると、包装用二軸配向ポリエステルフィルムとオレフィン系フィルムの持つそれぞれの耐突刺ピンホール性が分割され、包装体としての耐突刺ピンホール性が著しく悪化するためである。また剥離強度を10N/15mmよりも大きくするためには、金属および/または金属酸化物からなる層を積層する際には金属および/または金属酸化物に大きなエネルギーを与えられるイオンスパッタリング蒸着法などを採用する必要があるが、生産速度が遅いためコストアップの要因となる場合がある。さらに重量のある内容物を充填する際に層間剥離が生じないようにするためには、剥離強度は1.5N/15mm以上10N/15mm以下であればより好ましく、2.0N/15mm以上10N/15mm以下であればさらに好ましい。
【0022】
本発明の易接着層を構成するポリエステル樹脂とは主鎖あるいは側鎖に、酸成分とグリコール成分からなるエステル結合を有するものであり、従来公知のポリエステル樹脂より任意に選ぶことができる。酸成分としては、接着性の点から例えばスルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、2−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,6−ジカルボン酸などに代表されるスルホン酸基を含有してなるジカルボン酸が好ましい。スルホン酸基の含有量は易接着層中の全ジカルボン酸成分を100モル%としたとき、0.5モル%以下であることが好ましい。0.5モル%を超えてスルホン酸基を含有すると高湿度下や水中での金属および/または金属酸化からなる層との接着性が低下するばかりか耐溶剤性等が低下する。スルホン酸基を含有しないカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0023】
これらの芳香族ジカルボン酸は易接着層中の全ジカルボン酸成分の30モル%以上、好ましくは35モル%以上、より好ましくは40モル%以上が良い。30モル%未満ではポリエステル共重合体の機械的強度や耐水性が低下する。脂肪族及び脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、多価カルボン酸としては、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2′,3,3′−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸などが挙げられる。
【0024】
なかでも、トリメリット酸、ピロメリット酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等が好ましく用いられる。特に、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、およびセバシン酸からなる群から選ばれる3つ以上の酸成分を含むポリエステル樹脂が、密着性、水分散性、水溶化性、耐熱性等の点から好ましく、さらに好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸およびセバシン酸の4種類の酸成分を含むポリエステル樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂に2種類以上の酸成分を用いる場合、本発明の易接着層は、上記2種類以上の酸成分が共重合されてなる1また2以上のポリエステル樹脂を用いてなる易接着層であっても良いし、1種類の酸成分からなる2以上のポリエステル樹脂を用いてなる易接着層であっても良いし、2種類以上の酸成分が共重合されてなる1以上のポリエステル樹脂と1種類の酸成分からなる1以上のポリエステル樹脂を用いてなる易接着層であっても良い。
【0025】
テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸およびセバシン酸の4種類の酸成分を含むポリエステル樹脂を用いる場合、テレフタル酸の含有量が最も多いことが好ましく、ついでトリメリット酸、イソフタル酸、セバシン酸の順で含有量が多いことが好ましい。
【0026】
テレフタル酸は10モル%以上35モル%以下であることが好ましく、イソフタル酸は1モル%以上15モル%以下、トリメリット酸は5モル%以上25モル%以下、セバシン酸は1モル%以上10モル%以下の含有量であることが好ましい。なお、上記「モル%」とは易接着層を構成するポリエステル樹脂の酸性分とグリコール成分を合計して100モル%とした場合のモル100分率を意味する。
【0027】
グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4′−チオジフェノール、ビスフェノールA,4,4′−メチレンジフェノール、4,4′−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4′ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4′−イソプロピリデンフェノール、4,4′−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどが挙げられる。
【0028】
中でもエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、および1,4−ブタンジオールからなる群から選ばれる少なくとも2つ以上のグリコール成分を含むポリエステル樹脂を用いることが密着性、水分散性、水溶化性、耐熱性等の点から好ましく、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−ブタンジオールの3つのグリコール成分を含むポリエステル樹脂を用いることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂に2種類以上のグリコール成分を用いる場合、本発明の易接着層は、上記2種類以上のグリコール成分が共重合されてなる1また2以上のポリエステル樹脂を用いてなる易接着層であっても良いし、1種類のグリコール成分からなる2以上のポリエステル樹脂を用いてなる易接着層であっても良いし、2種類以上のグリコール成分が共重合されてなる1以上のポリエステル樹脂と1種類のグリコール成分からなる1以上のポリエステル樹脂を用いてなる易接着層であっても良い。
【0029】
また、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−ブタンジオールの3つグリコール成分を含むポリエステル樹脂を用いる場合、それぞれのグリコール成分の含有量が5モル%以上25モル%以下であることが好ましい。なお、上記「モル%」とは易接着層を構成するポリエステル樹脂の酸性分とグリコール成分を合計して100モル%とした場合のモル分率を意味する。
【0030】
本発明の易接着層を形成するメラミン化合物としてはメラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物およびこれらの混合物が挙げられる。またメラミン樹脂としては単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。エーテル化に用いられる低級アルコールとしてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等を挙げることができ、特にメチルアルコールが好ましいが、特に限定するものではない。
【0031】
本発明においては、水溶性、反応性、保存性、耐湿性等の点からメチロール化メラミン誘導体を部分的にエーテル化した化合物およびその混合物が好ましく、特にメチロール基の50%〜90%をエーテル化した化合物が好ましいが、特に限定するものでない。
【0032】
本発明のメラミン系化合物は易接着層全体に対して0.01重量%以上30重量%以下、より好ましくは0.05重量%以上20重量%以下であることが好ましい。0.01重量%未満では接着性等の効果が発現しない。30重量%を超えると易接着層の延伸性に欠け、安定な易接着層を得ることが困難となる。
【0033】
本発明の易接着層を形成するポリエステル樹脂は易接着層全体に対して70重量%以上99.99重量%以下、より好ましくは80重量%以上99.95重量%以下であることが好ましい。70重量%未満では易接着層の延伸性に欠け、99.99重量%を超えると接着性等の効果が発生しない。
【0034】
本発明においてポリエステル樹脂とメラミン化合物により易接着層を構成する場合、ポリエステル樹脂とメラミン化合物は任意の比率で混合して塗布できるが、好ましくはポリエステル樹脂/メラミン化合物が重量比で99/1〜60/40が好ましく、より好ましくは99/1〜80/20、さらに好ましくは99/1〜90/10である。またこの場合、一部あるいは全部について、ポリエステル樹脂とメラミン化合物は反応してもよいし、反応しなくてもよい。
【0035】
易接着層をポリエステルフィルムに積層する方法としては、ホットメルトコート法、インラインコート法、オフラインコート法などが挙げられる。インラインコート法、オフラインコート法を用いる場合は、易接着層を構成する樹脂や化合物を、水や有機溶媒などに溶解および/または分散せしめた塗液を作成し、該塗液をポリエステルフィルムに塗布することが好ましい。
【0036】
また、オフラインコート法などにより配向完了後の二軸配向ポリエステル上に塗液を塗布して易接着層を設けてもよいが、配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を形成する塗液を塗布し、熱処理して、ポリエステルフィルムの配向結晶化を完了させると共に易接着層を形成せしめるインラインコーティング法が、易接着層を均一に形成できる点で好ましい。インラインコーティング法は公知の方法に従って行うことができるが、工程中のゴミなどの付着によるインキや蒸着膜のピンホールを防止する点、あるいは均一に薄く易接着層を形成させる点において、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルム上に易接着層を形成する塗液を塗布し、乾燥、延伸、熱処理を施しポリエステルィルムの配向結晶を完了させる方法、すなわち二軸配向ポリエステルフィルムの製造工程中で易接着層を形成させるインラインコーティング法がより好ましい。インラインコーティング法によって易接着層を形成させる場合には装置の防爆性、環境汚染などの点で有利な水溶性及び/又は水分散性の樹脂や化合物を用いるのが好ましく、上記ポリエステル樹脂やメラミン化合物も水溶性及び/又は水分散性の樹脂や化合物を用いるのが好ましい。これにより、塗剤の溶媒として水を用いることができ、好ましい。
【0037】
塗液には、水溶性有機化合物、界面活性剤などを添加してもよく、従来公知の方法によって製造されたものであれば任意に使用することができる。インラインコーティング法によって易接着層を形成した場合には金属およびまたは金属酸化からなる層との接着性、塗膜の光沢、印刷インキとの接着性とも優れている。
【0038】
本発明のポリエステルフィルムは、その少なくとも片面に易接着層が形成されるが、易接着層が形成される面のポリエステルフィルムの表面自由エネルギーは45〜60mN/mであることが好ましい。また、易接着層を設けない面についても、包装材料として他の素材との貼り合せや接着剤などのコーティング、印刷や金属化合物などの蒸着をフィルム表面に容易に施す観点から、その面のポリエステルフィルムの表面自由エネルギーは45〜60mN/mであることが好ましい。
【0039】
表面自由エネルギーをかかる好ましい範囲とする方法としては、フィルム表面に空気中、窒素ガス雰囲気中などでコロナ放電などによる表面処理を行う方法や火炎による表面処理を施す方法などを挙げることができる。
【0040】
易接着層の厚みは特に限定しないが、通常は0.001μm以上1μm以下、好ましくは0.005μm以上0.3μm以下、更に好ましくは0.01μm以上0.1μm以下、特に好ましくは0.02μm以上0.07μm以下であるのが望ましい。易接着層が厚すぎると200℃程度の熱を受けた際に蒸着膜が白化して光沢が低下する場合があり、薄すぎると金属およびまたは金属酸化からなる層と易接着層との接着性が劣る場合がある。また、フィルムを再チップ化して用いる回収性の点からも上記厚み範囲が好ましい。
【0041】
また、易接着層には本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤、例えば無機、有機の粒子、滑剤、帯電防止剤、耐候剤、耐熱剤、染料、顔料などが添加されてもよい。
【0042】
本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは、突刺強度、上述した剥離強度、寸法安定性の観点から面配向係数(fn)が0.167以上0.175以下であることが必要である。さらに、包装体とした時の耐突刺ピンホール性の観点からは0.168以上0.172以下であればより好ましい。面配向係数(fn)が0.167未満であると突刺強度が劣る。また、面配向係数(fn)が0.175を越えると、ポリエステルフィルムと他の素材を貼合せて複合化し使用する包装資材において、ポリエステルフィルム内でのへき開はく離が起こったり、フィルムが裂けやすくなるため耐突刺ピンホール性が劣る場合がある。
【0043】
本発明のフィルムは二軸配向ポリエステルフィルムであることが必要であるが、フィルムを二軸配向させるためには、例えば未延伸(未配向)フィルムを二軸に延伸することによって、達成することができる。
【0044】
本発明のポリエステルフィルムを二軸延伸する方法としては、二軸に延伸されるものであれば特に限定はしないが、公知の2軸延伸法として、たとえば、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸する方法、幅方向に延伸した後に長手方向に延伸する方法、長手方向の延伸、幅方向の延伸を複数回組み合わせて行う方法や、同時に延伸する同時二軸延伸とよばれる方法があげられる。
【0045】
本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムの面配向係数(fn)を0.167以上0.175以下の範囲とする方法としては、ポリエステルフィルムの製造時に、たとえば、逐次二軸延伸法を採用する場合には、まず、フィルム長手方向(以下、MD方向と言う場合がある。)に延伸した一軸配向フィルムの複屈折率(MD方向と幅方向(以下、TD方向と言う場合がある。)の屈折率の差に1000を乗じたもの)を70以上130以下とし、その後TD方向に延伸する方法が好ましい。ここで、一軸配向フィルムの複屈折率が70未満であると、TD方向に延伸した後のMD方向への配向が不十分であり、面配向係数(fn)が0.167以上とならない場合がある。一方、一軸配向フィルムの複屈折率が130を越えると、TD方向への延伸時にフィルム破れが発生しやすくなり、製膜安定性が大幅に低下する。
【0046】
一軸配向フィルムの複屈折率を70以上130以下とする方法は、特に限定はされないが、例えば40〜130℃に加熱したロール群でMD方向に2.3〜7倍延伸することで、所望の複屈折率(Δn)を有する一軸配向フィルムを得ることが出来る。また、一軸配向フィルムの複屈折率は、二軸配向ポリエステルフィルムの製造の際に、一旦、一軸配向フィルムを取り出し屈折率を測定することで確認することができる。また、TD方向への延伸の後、熱処理を行うことが好ましいが、240℃以上の高温で熱処理を行うと、フィルム中のポリエステル分子鎖の配向緩和が起こりやすくなり、面配向係数(fn)が低下する場合があるので、寸法安定性が悪化しない範囲で熱処理温度は低い方が良く、190〜240℃とすることがより好ましく、200〜235℃とすることが特に好ましい。
【0047】
本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは、特に突刺強度に優れた特性を有するために、複屈折率の絶対値が5未満であることが必要である。複屈折率の絶対値が5以上となるとフィルムの面内に高配向方向と低配向方向が存在してしまうために、低配向方向の強度が低くなることで、突刺強度が劣ってしまう。突刺強度の観点からは、複屈折率の絶対値は4未満であればより好ましい。また、最大複屈折率が5未満であれば、配向バランスに極めて優れているために、突刺強度に非常に優れたフィルムとなるので、特に好ましい。ここで最大複屈折率とはフィルム面内の屈折率の最大値と最小値の差に1000を乗じた数値を意味する。
【0048】
複屈折率の絶対値を5未満とする方法としては、フィルムTD方向の延伸温度と延伸倍率を適宜制御することで調整可能であるが、延伸温度が120℃を越える場合、延伸よりも熱結晶化が先に進行してしまい、所謂ネッキング延伸となり配向がTD方向に偏ったフィルムとなる場合がある。また、延伸温度が80℃未満の場合、加熱が不十分でやはり配向が幅方向に偏ったフィルムとなる場合がある。延伸倍率は好ましくは3.5〜5.5倍であるが、4.5倍以上の延伸倍率とするとフィルム破れが発生しやすくなることから、3.6〜4.4倍とすることが好ましい。また、二軸延伸後の熱処理工程において、190℃未満の熱処理温度であるとフィルムTD方向への偏った配向となる場合があるので、熱処理温度を190〜240℃とすることが好ましく、200〜235℃とすると特に好ましい。
【0049】
本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは厚み方向の屈折率が1.480以上1.495以下であることが好ましい。厚み方向の屈折率が1.480未満であると、フィルム面方向の配向が進みすぎてへき開はく離が起こりやすくなる場合があり、逆に1.495を越えると耐突刺ピンホール性に劣る場合がある。耐突刺ピンホール性とへき開抑制の観点からは1.485以上1.492以下であることがより好ましい。フィルムの厚み方向屈折率を1.480以上1.495以下とする方法としては、二軸延伸により面配向を高くしたフィルムを熱処理することで、さらに面配向を高める方法が望ましく、熱処理温度として200〜235℃とすることが特に好ましい。
【0050】
本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは突刺強度の観点、また包装体とした時の耐突刺ピンホール性の観点からフィルム厚みが7μm以上20μm以下であることが必要である。フィルム厚みが7μm未満となると充分な突刺強度が得られず、包装体として内容物を充填する際にピンホールが発生しやすくなる。一方、厚みが20μmを越えると他の素材との貼合せでカールが発生するなど取扱いが困難になったり、強度的にオーバースペックとなり、なおかつ容器リサイクル法において、負担金が増加し、廃棄物重量が増加するという点で環境の面から好ましくない。突刺強度と取扱性、経済性の観点から包装用二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは8μm以上18μm以下であればより好ましく、8μm以上16μm以下であれば特に好ましい。
【0051】
また、本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは、突刺強度に優れた特性を発現させる観点および包装体とした時の耐突刺ピンホール性に優れた特性を発現させる観点で、フィルムMD方向とTD方向の破断強度が各々260MPa以上400MPa以下であることが好ましい。ここで、破断強度とは25℃での引張試験における破断強度である。破断強度が260MPa未満であると、低強度である方向が存在することとなり、フィルムの面内方向を同時に変形させる突刺強度において、ピンホールを発生させやすくする場合がある。一方、破断強度が400MPaを越えると包装体とした場合に内容物を取り出すための、カット性が悪化してしまう場合がある。耐突刺ピンホール性とカット性を両立させる点で、MD方向及びTD方向の破断強度は各々270MPa以上350MPa以下であればより好ましく、280MPa以上330MPa以下であれば特に好ましい。包装用二軸配向ポリエステルフィルムの引張破断強度をかかる好ましい範囲とする方法としては、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの固有粘度が0.60以上0.70以下であることが好ましい。ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの固有粘度が0.60未満であると、ポリエステル樹脂の分子量が小さいために脆くなり、逆に固有粘度が0.70を越えるとフィルム面内の配向バランスを調整することが困難となる。
【0052】
以下に、本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法を具体的に説明するが、本発明は以下の製造方法に限られるものではない。まず、本発明のポリエステルフィルムで使用するポリエチレンテレフタレートを用いてなるポリエステル樹脂は、市販されているポリエチレンテレフタレート樹脂をそのまま用いることができるが、以下のように重縮合反応を経て製造し、使用してもよい。
【0053】
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール70重量部の混合物に0.09重量部の酢酸マグネシウムと0.03重量部の三酸化アンチモンとを添加して、徐々に加熱し、最終的に220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行い、ポリエチレンテレフタレートの前駆体を合成する。ついで、該前駆体に0.02重量部のリン酸85%水溶液を添加し、重縮合反応釜に移行する。重縮合反応釜で加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で重縮合反応を行い、所望の分子量であるポリエチレンテレフタレート樹脂を得ることができる。なお、粒子を添加する場合には、エチレングリコールに粒子を分散させたスラリーを所定の粒子濃度となるように重縮合反応釜に添加して、重縮合反応を行うことが好ましい。
【0054】
ポリエステル樹脂中のジエチレングリコール量を減少させるには、重合時間を短縮したり、重合触媒として使用されるアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物などの量を限定する方法、液相重合と固相重合を組み合わせる方法、アルカリ成分を含有させる方法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。例えば、水酸化カリウムを含有させDEG量を調節する場合、添加する量をテレフタル酸ジメチル100重量部に対して0.01重量部以上0.10重量部以下とすることでDEG量が0.01重量%以上1.5重量%以下のポリエチレンテレフタレート樹脂を得ることができる。
【0055】
次に本発明に係るポリエステルフィルムの製造方法について説明するが、かかる例に限定されるものではない。乾燥したポリエステル樹脂チップを押出機に供給し、該ポリエステル樹脂の融点以上の温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリエステル樹脂をスリット状の吐出口を有するTダイから溶融シートとして押し出し、冷却ロールに密着固化してキャストフィルム(未配向フィルム(未延伸フィルム))を得る。溶融シートと冷却ロールの密着性を向上させるには、通常、静電印加密着法および/または液面塗布密着法を採用することが好ましい。
【0056】
該キャストフィルムは更に二軸に延伸される。
【0057】
まず、好ましくは、ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上、例えば40〜130℃に加熱したロール群でMDに2.3〜7倍延伸し、一軸配向フィルム(一軸延伸フィルム)を得る。
【0058】
次いで、易接着層を形成するポリエステル樹脂とメラミン化合物を主成分とする水溶性及び/又は水分散性樹脂を用いてなる塗液を該一軸配向フィルムの少なくとも片面に塗布する。
次いでTD方向に好ましくは45〜130℃で3〜7倍に延伸する。なお、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を用いることができるが、その場合も最終的な延伸倍率が上記範囲に入ることが好ましい。また、前記キャストフィルムを、面積倍率が6〜30倍になるように同時二軸延伸することも可能である。ここで、面積倍率とはMD延伸倍率にTD延伸倍率を乗じたものを意味する。この場合、易接着層を形成する塗液の塗布は同時二軸延伸前に行なう(すなわち、キャストフィルムに塗布する)ことが好ましい。
【0059】
これにより本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルム(二軸延伸フィルム)が得られる。 また、かくして得られたフィルムを引き続きインラインおよび/またはオフラインで熱処理しても良い。さらに、必要に応じ熱処理を行う前または後に再度MDおよび/またはTD方向に延伸してもよい。熱処理温度は150〜250℃、好ましくは200〜240℃であり、熱処理時間は通常1秒〜5分である。この熱処理条件で熱収縮特性を調整することができる。また、熱処理後のフィルムの冷却速度も熱収縮特性に影響する。例えば、熱処理後、フィルムを急冷あるいは徐冷、あるいは中間冷却ゾーンを設けることで加熱収縮応力を調整することができる。また、特に特定の熱収縮特性を付与するために、熱処理時あるいはその後の徐冷ゾーンにおいてMD方向および/またはTD方向に弛緩してもよい。
【0060】
また、本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは易接着層の上に金属および/または金属酸化物からなる層を積層し、包装用ガスバリアフィルムとして使用することも好ましい使用態様の一つである。金属または金属酸化物としては、周期表2族であるマグネシウム、カルシウム、バリウム、4族であるチタン、ジルコニウム、13族であるアルミニウム、インジウム、14族のケイ素、ゲルマニウム、スズおよびこれらの酸化物を挙げることができる。これらの中でも、特にアルミニウム、ケイ素およびその酸化物が好ましい。また、これらの金属およびその酸化物は複数を組み合わせて金属および/または金属酸化物からなる層を形成しても良い。
【0061】
かかる金属および/または金属酸化物からなる層の積層方法としては、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、ラミネート法などを用いることができ、これに限定されるものではないが層厚みの点から真空蒸着法が好ましく用いられる。また、金属および/または金属酸化物からなる層の厚みとしては、1〜500nmが好ましく、3〜300nmであればより好ましい。生産性の点からは3〜200nmであることが特に好ましい。
【0062】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは包装体として用いるのに好適な構成として、金属および/または金属酸化物からなる層上にさらにオレフィン系フィルムを積層することが好ましい。ここで、オレフィン系フィルムとは、例えば未延伸ポリプロピレンフィルム(以下、CPPと言う場合がある。)、未延伸低密度ポリエチレンフィルム(以下、LDPEと言う場合がある。)、未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(以下、LLDPEと言う場合がある。)、未延伸高密度ポリエチレンフィルム(以下、HDPEと言う場合がある。)エチレン−酢酸ビニル共重合体未延伸フィルム(以下、EVAと言う場合がある。)などのヒートシール性を有している未延伸フィルムや、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、OPPと言う場合がある。)などを例示することができるが、特に限定するものではない。これらオレフィン系フィルムと金属および/または金属酸化物からなる層との積層方法としては、エステル系やウレタン系などの接着剤を用いたラミネート法やポリエチレンの押出ラミネート法などの方法を採用することができる。本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは優れた耐熱性を有していることから、特に押出ラミネート法によりオレフィン系フィルムと積層した後も耐突刺ピンホール性が変化しない優れた特性を有している。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価した。
【0064】
(1)複屈折率(Δn)、面配向係数(fn)
ナトリウムD線(波長589nm)を光源とし、マウント液としてヨウ化メチレンを用い、25℃にてアッベ屈折計を用いて包装用二軸配向ポリエステルフィルムのMD、TDおよび厚み方向の屈折率(各々、nMD、nTD、nZD)を求めた。求めた屈折率から下記の式により、面配向係数(fn)および複屈折率(Δn)を算出した。なお、測定は製膜時のTダイから吐出後、冷却ドラムに密着した表面側で行い、任意の3ヶ所での測定値の平均で評価した。
fn=(nMD+nTD)/2−nZD
Δn=(nMD−nTD)×1000。
【0065】
(2)フィルム厚み
300×200mmの大きさにカットした長方形状の包装用二軸配向ポリエステルフィルム10枚の質量を測定し、フィルムの比重を1.4×10−3(g/mm)として以下の式により、質量平均厚みとしてフィルム厚みを求めた。
T=W/(1.4×10−3×300×200×10)
ただし、T:フィルム厚み(mm)、W:フィルム10枚の質量(g)。
【0066】
(3)破断強度
JIS C2151(2006年)に準拠した方法で、包装用二軸配向ポリエステルフィルムを試料幅10mm、長さ15cmに切り、マイクロメーター(ソニー・プレシジョン・テクノロジー株式会社製 デジタルマイクロメータ M−30)を用いて当該包装用二軸配向ポリエステルフィルムのフィルム厚みを測定する。その後、チャック間100mmにして引張速度10mm/分でインストロンタイプの引張試験機(株式会社オリエンテック製 テンシロン RTC−1210A)にて測定した。サンプルが破断する直前のフィルムにかかっていた荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×10mm)で除した値を破断強度とした。なお、測定は25℃、65%RHにて行った。
【0067】
(4)固有粘度
ポリエステルフィルムの製膜に供したポリエステル樹脂の固有粘度は、ポリエステル樹脂または包装用二軸配向ポリエステルフィルムオルソクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。
【0068】
(5)突刺強度
JIS K1707(1997年)に準拠した方法で、包装用二軸配向ポリエステルフィルムを直径40mmのリングに、フィルムを弛みのないように張り、直径が1mm、先端Rが0.5mmの半円形のサファイア製針を使用し、円の中央を50mm/分の速度で突き刺し、針が貫通するときの荷重(N)を突刺強さとした。
【0069】
(6)ジエチレングリコール量
包装用二軸配向ポリエステルフィルム(試料)1.0gに1級モノエタノ−ルアミン2.5mlを加え、全還流下280℃で40分間加熱後、内部標準液(1,6ヘキサメチレングリコール/1級エタノール)を加える。さらに特級テレフタル酸40gと1級エタノ−ル5mlを加え測定用試料を調製する。該測定用試料を島津製ガスクロマトグラフィ−GC−9A(使用カラム:島津C−R3A)にて測定した。
【0070】
(7)易接着層と金属層との剥離強度
包装用二軸配向ポリエステルフィルムの易接着層側に連続式真空蒸着機によりアルミニウムを蒸着層厚さ25nmに蒸着し、そのアルミ蒸着ポリエステルフィルム(以下、「VM−PET」と言うことがある)と厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)(東レフィルム加工(株)製トレファン 2548)とを、ポリエチレン(PE)を樹脂温度330℃でVM−PETのアルミ蒸着層側に厚さ10μmになるように押出ラミし、これを接着剤として貼合せを行い、OPP(20μm)/PE(10μm)/VM−PETとなる積層体1を得た。次に該積層体1と厚さ20μmの未延伸ポリプロピレンフィルム1(CPP1)(東レフィルム加工(株)製トレファンNO 9160)とを、二軸配向ポリエステルフィルム側にポリエチレンを樹脂温度330℃で厚さ10μmになるように押出ラミし、これを接着剤として貼合せを行い、最終的にOPP(20μm)/PE(10μm)/VM−PET/PE(10μm)/CPP(20μm)からなる積層体2を得た。この構成体2のOPP側にポリウレタン系接着剤(東洋モートン(株)製AD503/CAT−10=20重量部/1重量部、溶媒:酢酸エチル20重量部)を用いて未延伸ポリプロピレンフィルム2(CPP2)(東レ合成フィルム(株)製T3501、50μm)を貼り合わせ、40℃で48時間放置後長さ150mm×幅15mmの短冊状に切断して、構成体2が直線状態になり、CPP2が鋭角に折り曲げられた状態になるようにCPP2と構成体2を把持し、180゜剥離試験をインストロンタイプの引張試験機(株式会社オリエンテック製 テンシロン UCT−100)を用いて、25℃50%RH雰囲気下において剥離速度300mm/分で、図1の矢印の方向に引っ張り、剥離強度の測定を行った。測定長50mmから100mmの間での強度の平均値を剥離強度とした。
【0071】
剥離強度測定終了後、目視で剥離層を確認し、下記の通り分類した。
A:OPP/PEとVM−PET/PE/CPPの間で剥離
B:ポリエステルフィルムがへき開剥離
C:アルミ蒸着層と包装用二軸配向ポリエステルフィルム(易接着層)との間で剥離
ここで、剥離箇所がAまたはBであった場合、包装用二軸配向ポリエステルフィルムの易接着層と金属層との間の剥離強度は剥離箇所AまたはBで得られた剥離強度よりも大きいことを意味する。
【0072】
(8)耐実包ピンホール強度
上記(7)の剥離強度試験にて作成した積層体2を200mm×300mmの大きさに長方形状にカットし、そのCPP面同士を重ね合わせてその3辺を150℃で2秒間熱溶着し、3辺が辺から10mm幅でシールされた袋状の実包試験用サンプルを得た。
垂直に固定された直径100mm、長さ1mのプラスチック製の筒に該実包試験用サンプルの開口部を100mm挿入し、実包試験用サンプルの底部がどこにも触れていない状態でリング状治具を用いて実包試験用サンプルを筒の下部に固定する。筒の上部から高密度ポリエチレン(密度:0.96g/cm3)からなる各辺の長さが65mm、厚さが1.1mm、各頂点のRが1mmの正三角形の落下用チップ40枚を一斉に落下させる。その後、落下用チップを取り出し、実包試験用サンプル内部に検査液(三菱ガス化学(株)製エージレスシールチェック)を吹きかけピンホール発生の有無、個数を確認する。
ここで耐実包ピンホール強度とは実包試験サンプルにおける耐突刺ピンホール性を表す数値を意味しており、この値が低いほど実包時にピンホールが発生しにくくなる。
【0073】
[ポリエステルの製造]
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
【0074】
(1)ポリエステル樹脂A
テレフタル酸ジメチル100重量部、およびエチレングリコール61重量部の混合物に、0.04重量部の酢酸マグネシウム、0.02重量部の三酸化アンチモン、0.001重量部の水酸化カリウムを添加して、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行う。ついで、該エステル交換反応生成物に、0.020重量部のリン酸85%水溶液を添加した後、重縮合反応釜に移行する。さらに、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、ジエチレングリコール量1.2重量%、固有粘度0.65であり、なおかつ酸成分の95モル%以上がテレフタル酸からなり、グリコール成分の95モル%以上がエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート樹脂Aを作製した。
【0075】
(2)粒子マスターA
上記(1)のポリエステルを製造する際、エステル交換反応後に平均粒子径2.4μmの凝集シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを添加してから重縮合反応を行い、粒子濃度2質量%の粒子マスターAを得た。
【0076】
次に本発明を実施例に基づいて説明するが必ずしもこれに限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート樹脂Aと粒子マスターAを質量比98:2で混合して使用した。
ポリエチレンテレフタレート樹脂Aと粒子マスターAの混合物を真空乾燥した後、押出機に供給して、280℃で溶融押出し、8μmカットのステンレス繊維焼結フィルター(FSS)で濾過した後、T字型口金からシート状に押出し、これを表面温度25℃の冷却ドラムに静電密着法で冷却固化せしめた。このようにして得られた未延伸(未配向)PETフィルムを、105℃に2秒間加熱した後、MD方向に115℃にて4.1倍に延伸して1軸配向フィルムとした。
この1軸配向フィルムの片面に空気中でコロナ放電処理を施し、易接着層を形成するために、以下に記載の塗液をロッドコーターにて放電処理面側に塗布した。塗布厚みはポリエステルフィルムの配向結晶完了後、つまり熱処理後において0.05μmとなるようにした。
【0078】
[塗液の組成と調合方法]
1.原料
(1)ポリエステル樹脂の水分散体
・酸成分として、
テレフタル酸:29モル%
イソフタル酸: 7モル%
トリメリット酸:10モル%
セバシン酸: 3モル%
・グリコール成分として、
エチレングリコール:14モル%
ネオペンチルグリコール:19モル%
1,4−ブタンジオール:18モル%
からなる水分散性樹脂であるポリエステル樹脂の水分散体を用いた。ここで、該水分散体の固形分濃度(ポリエステル樹脂濃度)は25重量%であり、残りの75重量%は水である。また、ポリエステル樹脂の酸価は41KOHmg/g、ガラス転移温度(Tg)は20℃である。
なお、上記「モル%」とは易接着層を構成するポリエステル樹脂の酸成分とグリコール成分を合計して100モル%とした場合のモル100分率を意味する。
(2)メラミン化合物の水分散体
・メラミン化合物として、
水分散性樹脂であるN−メチロール化メラミン化合物(ニカラックMW−12LF(三和ケミカル(株)製))の水分散体を用いた。また、該水分散体の固形分濃度(メラミン化合物濃度)は70重量%であり、残りの30重量%は水である。
【0079】
2.塗液の調合方法
上記のポリエステル樹脂の水分散体とメラミン化合物の水分散体と純水を用いて下記の方法で調合した。
(1)ポリエステル樹脂(固形分)95重量部に対し、メラミン化合物(固形分)が5重量部添加されるよう配合した。すなわち、ポリエステル樹脂の水分散体380重量部(うち固形分:95重量部、水:285部)にメラミン化合物の水分散体7.14重量部(うち固形分:5重量部、水:2.14重量部)を配合し、原液を得た。
(2)上記原液の固形分量(ポリエステル樹脂の固形分とメラミン化合物の固形分を合計した固形分量)が1.5重量%となるよう純水を配合し、これを塗液とした。
【0080】
この1軸配向フィルムを105℃で2秒間予熱し、次いで115℃に加熱しつつTD方向に3.1倍に延伸した。このフィルムを233℃の熱風中に導き入れ、2秒間MD方向、TD方向に弛緩させずに熱処理した後、170℃で幅方向にTD延伸後のフィルム幅に対して2.4%の弛緩処理を施し冷却した。最終的に室温まで冷却した後、20W・min/mの処理強度で易接着層とは反対表面にコロナ放電処理を行い、これを巻取り機に導いて巻き上げてミルロールとした。このようにして最終的に塗膜層厚み0.05μmの易接着層を設けた厚み12μmの包装用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた包装用二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す
(実施例2)
MD方向の延伸倍率を4.3倍、TD方向の延伸倍率を3.3倍として、その他の条件は実施例1と同様の条件とし、厚さ12μmの包装用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。特性を表1に示す。
【0081】
(実施例3)
MD延伸倍率を4.3倍、TD延伸倍率を2.9倍として、その他の条件は実施例1と同様の条件とし、厚さ12μmの包装用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。特性を表1に示す。
【0082】
(実施例4)
MD延伸倍率を3.9倍、TD延伸倍率を2.9倍として、その他の条件は実施例1と同様の条件とし、厚さ12μmの包装用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。特性を表1に示す。
【0083】
(実施例5)
T字型口金からシート状に押出す量を調節した以外は実施例1と同様の条件とし、厚さ7μmの包装用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。特性を表1に示す。
【0084】
(実施例6)
テレフタル酸ジメチル100重量部、およびエチレングリコール61重量部の混合物に、0.04重量部の酢酸マグネシウム、0.02重量部の三酸化アンチモン、0.004重量部の水酸化カリウムを添加して徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行う。ついで、該エステル交換反応生成物に、0.020重量部のリン酸85%水溶液を添加した後、重縮合反応釜に移行する。さらに、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、ジエチレングリコール量0.4重量%、固有粘度0.65であり、なおかつ酸成分の95モル%以上がテレフタル酸からなり、グリコール成分の95モル%以上がエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート樹脂Bを作製した。
また、上記ポリエチレンテレフタレート樹脂Bを製造する際、エステル交換反応後に平均粒子径2.4μmの凝集シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを添加してから重縮合反応を行い、粒子濃度2質量%の粒子マスターBを得た。ポリエチレンテレフタレート樹脂Bと粒子マスターBを質量比98:2で混合して使用した。その他の条件は実施例1と同様の条件とし、厚さ12μmの包装用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。特性を表1に示す。
【0085】
(実施例7)
T字型口金からシート状に押出す量を調節した以外は実施例1と同様の条件とし、厚さ20μmの包装用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。特性を表1に示す。
【0086】
(比較例1)
塗液の塗布を施さない(易接着層を設けない)以外は、実施例1と同様の条件とし、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。特性を表2に示す。
【0087】
(比較例2)
MD延伸倍率を3.6倍、TD延伸倍率を2.7倍として、その他の条件は実施例1と同様の条件で、厚さ12μmの包装用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。特性を表2に示す。
【0088】
(比較例3)
MD延伸倍率を4.5倍、TD延伸倍率を3.5倍として、その他の条件は実施例1と同様の条件で、厚さ12μmの包装用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。特性を表2に示す。
【0089】
(比較例4)
MD延伸倍率を4.5倍、TD延伸倍率を2.5倍として、その他の条件は実施例1と同様の条件で、厚さ12μmの包装用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。特性を表2に示す。
【0090】
(比較例5)
MD延伸前の加熱温度を110℃、MD延伸温度を120℃、MD延伸倍率を3.6倍として、その他の条件は実施例1と同様の条件で、厚さ12μmの包装用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。特性を表2に示す。
【0091】
(比較例6)
実施例1と同様のポリエステルを使用し、T字型口金からシート状に押し出す量を調節した以外は実施例1と同様の条件で、厚さ6μmの包装用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。特性を表2に示す。
【0092】
(比較例7)
テレフタル酸ジメチル100重量部、およびエチレングリコール61重量部の混合物に、0.04重量部の酢酸マグネシウム、0.02重量部の三酸化アンチモンを添加して、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行う。ついで、該エステル交換反応生成物に、0.020重量部のリン酸85%水溶液を添加した後、重縮合反応釜に移行する。さらに、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、ジエチレングリコール量2.0重量%、固有粘度0.65であり、なおかつ酸成分の95モル%以上がテレフタル酸からなり、グリコール成分の95モル%以上がエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート樹脂Cを作製した。
また、上記ポリエチレンテレフタレート樹脂Cを製造する際、エステル交換反応後に平均粒子径2.4μmの凝集シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを添加してから重縮合反応を行い、粒子濃度2質量%の粒子マスターCを得た。ポリエチレンテレフタレート樹脂Cと粒子マスターCを質量比98:2で混合して使用した。その他の条件は実施例1と同様の条件とし、厚さ12μmの包装用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。特性を表2に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
ただし、表中の略号は以下の通り。
Δn:複屈折率(フィルム長手方向と幅方向の屈折率の差を1000倍した数値)
MD:フィルム長手方向
TD:フィルム幅方向
剥離箇所 A:OPP/PEとVM−PET/PE/CPPの間で剥離
剥離箇所 B:ポリエステルフィルムがへき開剥離
剥離箇所 C:アルミ蒸着膜と包装用二軸配向ポリエステルフィルム間で剥離
表1、表2より、実施例の各フィルムは耐実包ピンホール強度に優れていた。一方、比較例の各フィルムはフィルム長手方向と幅方向の配向バランスが悪いがために突刺強度に劣っていたり、易接着層がないために剥離強度が低く、耐実包ピンホール強度に劣っていたり、面配向が高すぎるためにポリエステルフィルムのへき開剥離が発生し、耐実包ピンホール強度が劣っており、包装材料としては不十分な特性であった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは他のフィルムなどとラミネートされた包装体として要求される様々な変形モードでの耐突刺ピンホール性に優れていることから、包装用資材として好適に使用することができる。さらに、金属および/または金属酸化物からなる層を有する包装体として使用される際にはポリエステルフィルムと金属および/または金属酸化物からなる層間との剥離強度にも優れているため、様々な衝撃による層間剥離が生じることなく、突刺強度を維持することが出来るため、本発明を用いて包装体を製造した場合、堅いスナック菓子や重量の大きなスナック菓子などを包装した際でも、運搬時および充填時における耐突刺ピンホール性が向上するという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】剥離強度測定の概略図である。
【符号の説明】
【0098】
1:構成体2
2:ポリウレタン系接着剤
3:CPP2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面にポリエステル樹脂とメラミン化合物を用いてなる易接着層を形成してなる包装用二軸配向ポリエステルフィルムであって、該包装用二軸配向ポリエステルフィルムの面配向係数(fn)が0.167以上0.175以下、複屈折率(Δn)の絶対値が5未満、突刺強度が7N以上15N以下、フィルム厚みが7μm以上20μm以下であり、かつ該易接着層と明細書で定義する金属層との間の剥離強度が1N/15mm以上である包装用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
易接着層を構成するポリエステル樹脂がテレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、およびセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも3つ以上の酸成分を含む請求項1に記載の包装用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
易接着層を構成するポリエステル樹脂がエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、および1,4−ブタンジオールからなる群から選ばれる少なくとも2つ以上のグリコール成分を含む請求項1または2に記載の包装用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
包装用二軸配向ポリエステルフィルム中のジエチレングリコール量が包装用二軸配向ポリエステルフィルム全体に対して0.01重量%以上1.2重量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の包装用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の包装用二軸配向ポリエステルフィルムを用いてなる包装体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の包装用二軸配向ポリエステルフィルムの易接着層の上に金属および/または金属酸化物からなる層が積層されている包装体。
【請求項7】
請求項6の包装体の金属および/または金属酸化物からなる層の上にオレフィン系フィルムからなる層が設けられている包装体。

【図1】
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【公開番号】特開2009−202390(P2009−202390A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45624(P2008−45624)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】