説明

包装用多層フィルム

【構成】本発明の多層フィルムは、外層、1または2以上の中間層、および内層からなり、(A)特定のMFR、密度およびMw/Mnを有するエチレン・α-オレフィンランタ゛ム共重合体、(C)特定のMFRと密度を有するエチレン・α-オレフィンランタ゛ム共重合体、(D)特定の密度を有する高圧法ホ゜リエチレン、および必要に応じて(B)特定のMFR、密度およびMw/Mnを有するエチレン・α-オレフィンランタ゛ム共重合体からなる樹脂組成物で形成され、中間層は、(E)特定のMFRと密度を有する1-フ゛テン系(共)重合体、および必要に応じて(F)特定のMFRとフ゜ロヒ゜レン含量を有するエチレン・フ゜ロヒ゜レン・1-フ゛テンランタ゛ム共重合体からなる樹脂または樹脂組成物で形成されている。
【効果】上記フィルムは、自動包装機によるカット性、機械強度特性、透明性および低温ヒートシール性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、包装用多層フィルムに関し、さらに詳しくは、特に自動包装機による物品の包装適性に優れ、かつ、低温ヒートシール性に優れた包装用多層フィルムに関する。
【0002】
【発明の技術的背景】近年、食品等の物品をフィルムで包装することが盛んに行なわれており、使用されるフィルムの種類も内容物によって多種類に亘っている。その中でも、ポリエチレン系のフィルムは、強度や透明性に優れ、また廃棄する際の問題点も少ないことから益々重要な位置を占めてきている。また、フィルムも単層だけでなく複層構造のフィルムも多種類使用され、益々機能が高められている。実際の包装作業では、多くの場合自動包装機が採用され、作業効率を高める工夫がなされている。
【0003】しかしながら、包装用途の高度化に伴い、フィルムそれ自体の性能をさらに高め、かつ包装時の作業効率をさらに一層高めることが強く求められている。特に自動包装機を使用した場合において、フィルムのカット性の良さおよび高いヒートシール強度は、ユーザーからの最も多い要望点である。
【0004】したがって、自動包装機によるカット性に優れ、しかも、機械強度特性、透明性およびヒートシール性、特に低温ヒートシール性に優れた包装用多層フィルムの出現が望まれている。
【0005】
【発明の目的】本発明は、自動包装機によるカット性に優れ、しかも、機械強度特性、透明性および低温ヒートシール性に優れた包装用多層フィルムを提供することを目的としている。
【0006】
【発明の概要】本発明に係る包装用多層フィルムは、外層、1または2以上の中間層、および内層の少なくとも3層からなる多層フィルムであって、外層および内層は、それぞれ独立して、(A)溶融指数(MFR)が0.1〜10g/10分であり、密度が0.880〜0.925g/cm3 であり、平均分子量分布(Mw/Mn)が2以上3未満である、エチレンと炭素原子数4〜10のα- オレフィンとのランダム共重合体;40〜90重量%と、(B)溶融指数(MFR)が0.1〜5g/10分であり、密度が0.900〜0.925g/cm3 であり、平均分子量分布(Mw/Mn)が3〜6である、エチレンと炭素原子数4〜10のα- オレフィンとのランダム共重合体;0〜40重量%と、(C)溶融指数(MFR)が0.1〜20g/10分であり、密度が0.850〜0.900g/cm3 である、エチレンと炭素原子数3〜10のα- オレフィンとのランダム共重合体;5〜30重量%と、(D)密度が0.915〜0.930g/cm3 である高圧法ポリエチレン;5〜20重量%とからなる樹脂組成物で形成されており、中間層は、(E)溶融指数(MFR)が0.1〜5g/10分であり、密度が0.890〜0.925g/cm3 である1-ブテン系(共)重合体;40〜100重量%と、(F)溶融指数(MFR)が0.1〜100g/10分であり、プロピレン含量が50〜98モル%であるエチレン・プロピレン・1-ブテンランダム共重合体;0〜60重量%とからなる樹脂または樹脂組成物で形成されていることを特徴としている。
【0007】特に、縦方向と横方向のエルメンドルフ引裂強度の比[横方向/縦方向]が9.1以下である包装用多層フィルムが、自動包装機によるカット性に優れている。
【0008】
【発明の具体的な説明】以下、本発明に係る包装用多層フィルムについて具体的に説明する。本発明に係る包装用多層フィルムは、外層、1または2以上の中間層および内層の少なくとも3層構造のフィルムで構成されている。外層および内層に使用する樹脂組成と中間層を構成する樹脂組成とは異なっている。
【0009】各層を構成する樹脂ないし樹脂組成物、およびフィルムの構成について説明する。
外層および内層外層および内層は、それぞれ独立して、[I]エチレンと炭素原子数4〜10のα- オレフィンとからなるランダム共重合体(A)、[II]成分(A)および(B)とは異なるエチレンと炭素原子数3〜10のα-オレフィンとからなるランダム共重合体(C)、[III] 高圧法ポリエチレン(D)、および必要に応じて、[IV]成分(A)および(C)とは異なるエチレンと炭素原子数4〜10のα-オレフィンとからなるランダム共重合体(B)を所定の割合で混合した樹脂組成物から構成されている。外層と内層との樹脂組成は、同一であってもよく、また互いに異なっていてもよい。
【0010】[ランダム共重合体(A)]本発明で用いられるランダム共重合体(A)は、エチレンと炭素原子数4〜10のα- オレフィンとからなるエチレン・α- オレフィンランダム共重合体である。
【0011】エチレンとランダム共重合される炭素原子数4〜10のα- オレフィンとしては、具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1- ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどが挙げられる。本発明においては、これらのα- オレフィンは、単独で用いてもよく、また混合物として用いてもよい。これらのα- オレフィンの中でも、特に炭素原子数6〜8のα- オレフィンが好ましい。
【0012】ランダム共重合体(A)中のα- オレフィン含量は、通常0.5〜15モル%、好ましくは1.0〜10モル%、さらに好ましくは3〜7モル%である。本発明で用いられるランダム共重合体(A)は、溶融指数(MFR)が0.1〜10g/10分、好ましくは0.5〜8g/10分、さらに好ましくは1.0〜6.0g/10分であり、密度が0.880〜0.925g/cm3 、好ましくは0.880〜0.915g/cm3 、さらに好ましくは0.880〜0.910g/cm3 であり、平均分子量分布(Mw/Mn)が2以上3未満、好ましくは2〜2.5である。
【0013】上記溶融指数(MFR)は、ASTM D-1238に準拠して、測定温度190℃、荷重2160gの条件下で測定された値であり、密度は、ASTM D-1505に準拠して測定された値であり、平均分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによってo- ジクロロベンゼン溶媒を用い、135℃で測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表わされる値である。
【0014】ランダム共重合体のα- オレフィン含量、溶融指数、密度および分子量分布が各々上記のような範囲にあるランダム共重合体を用いると、透明性、ヒートシール強度特性等に優れるとともに、押出加工性に優れ、またベタツキおよびブロッキングが生じにくい樹脂組成物を得ることができる。ランダム共重合体(A)のみでは自動包装機によるカット性が悪いが、このランダム共重合体(A)に、次に述べるランダム共重合体(C)、高圧法ポリエチレン(D)、および必要に応じてランダム共重合体(B)を配合することによって自動包装機によるカット性を向上させることができる。
【0015】また、本発明で用いられるランダム共重合体(A)の示差走査熱量計(DSC)により測定される融点は、60〜130℃、好ましくは75〜120℃、さらに好ましくは80〜120℃であることが、低温でのヒートシール性を高める上で望ましい。この融点は、昇温速度10℃/分で測定されるランダム共重合体(A)の吸熱曲線において、1個ないし複数個の鋭いピークのうち、極大ピーク値として求められる。
【0016】上記のようなエチレンと炭素原子数4〜10のα- オレフィンとのランダム共重合体(A)は、遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物と、必要に応じて有機アルミニウム化合物および/または有機ホウ素化合物とからなる、いわゆるメタロセン触媒を用いて製造することができる。
【0017】このような製造方法の一例を挙げると、ビス(n-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドとアルミノオキサンとの存在下で、エチレンと炭素原子数4〜10のα- オレフィンとを、気相またはスラリー状態で重合させることによって上記のようなランダム共重合体(A)を得ることができる。
【0018】上記のようにして得られたランダム重合体(A)は、直鎖状の分子構造を有し、狭い分子量分布と組成分布を有することが特徴である。本発明においては、ランダム共重合体(A)は、ランダム共重合体(A)、ランダム共重合体(B)、ランダム共重合体(C)および高圧法ポリエチレンの合計量100重量%に対して、40〜90重量%、好ましくは45〜80重量%、さらに好ましくは50〜80重量%の割合で用いられる。
【0019】[ランダム共重合体(B)]本発明で必要に応じて用いられるランダム共重合体(B)は、エチレンと炭素原子数4〜10、好ましくは6〜8のα- オレフィンとからなるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体である。
【0020】エチレンとランダム共重合される炭素原子数4〜10のα- オレフィンとしては、具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1- ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどが挙げられる。本発明においては、これらのα- オレフィンは、単独で用いてもよく、また混合物として用いてもよい。これらの中でも、炭素原子数6〜8のα- オレフィン、特に4-メチル-1- ペンテンが好ましい。
【0021】本発明で用いられるランダム共重合体(B)は、溶融指数(MFR)が0.1〜5g/10分、好ましくは0.5〜4g/10分、さらに好ましくは0.5〜3g/10分であり、密度が0.900〜0.925g/cm3 、好ましくは0.905〜0.920g/cm3 、さらに好ましくは0.905〜0.918g/cm3 であり、平均分子量分布(Mw/Mn)が3〜6、好ましくは3〜5である。
【0022】ここにおける溶融指数、密度および平均分子量分布は、上述したランダム共重合体(A)と同様の方法で測定された値である。溶融指数、密度および平均分子量分布が上記のような範囲にあるランダム共重合体を得るためには、ランダム共重合体中のα- オレフィン含量を1〜8モル%、好ましくは2〜7モル%にすることが必要である。
【0023】上記のようなエチレンと炭素原子数4〜10のα- オレフィンとのランダム共重合体(B)は、通常のチーグラー触媒を用いて製造することができ、特にマグネシウム化合物に担持されたチタン系固体触媒と有機アルミニウム化合物との組み合わせからなる高活性触媒によって得ることができる。
【0024】このような重合方法で製造されたランダム共重合体(B)は、直鎖状の分子構造を有してはいるが、上述したランダム共重合体(A)と比べて、広い分子量分布と広い組成分布とを有している。したがって、樹脂組成物中に占めるランダム共重合体(B)の配合量を、ランダム共重合体(A)の配合量よりも少なくすることによって、フィルムの透明性を増すことができる。
【0025】本発明においては、ランダム共重合体(B)は、ランダム共重合体(A)、ランダム共重合体(B)、ランダム共重合体(C)および高圧法ポリエチレン(D)の合計量100重量%に対して、0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%の割合で用いられる。
【0026】[ランダム共重合体(C)]本発明で用いられるランダム共重合体(A)は、エチレンと炭素原子数3〜10のα- オレフィンとからなるエチレン・α- オレフィンランダム共重合体である。
【0027】エチレンとランダム共重合される炭素原子数3〜10のα- オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1- ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどが挙げられる。本発明においては、これらのα- オレフィンは、単独で用いてもよく、また混合物として用いてもよい。これらのα- オレフィンの中でも、炭素原子数3〜5のα- オレフィン、特に1-ブテンが好ましい。
【0028】本発明で用いられるランダム共重合体(C)は、溶融指数(MFR)が0.1〜20g/10分、好ましくは0.3〜10g/10分、さらに好ましくは0.5〜7g/10分であり、密度が0.850〜0.900g/cm3 、好ましくは0.860〜0.890g/cm3 、さらに好ましくは0.865〜0.890g/cm3 である。
【0029】ここにおける溶融指数、密度および平均分子量分布は、上述したランダム共重合体(A)と同様の方法で測定された値である。溶融指数、密度および平均分子量分布が上記のような範囲にあるランダム共重合体を得るためには、ランダム共重合体中のα- オレフィン含量を5〜25モル%、好ましくは7〜20モル%にすることが必要である。
【0030】本発明で用いられるランダム共重合体(C)は、X線回折法で測定された結晶化度が低く、40%以下、好ましくは30以下%、さらに20%以下であることが望ましい。結晶化度が上記のような範囲にあるランダム共重合体(C)を用いると、優れた低温ヒートシール性を得ることができる。
【0031】上記のようなエチレンと炭素原子数3〜10のα- オレフィンとのランダム共重合体(C)は、通常のチーグラーナッタ触媒を用いて製造することができる。たとえば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とを組み合わせた触媒系の下で、エチレンと炭素原子数3〜10のα- オレフィンとを共重合することにより、ランダム共重合体(C)を得ることができる。
【0032】本発明においては、ランダム共重合体(C)は、ランダム共重合体(A)、ランダム共重合体(B)、ランダム共重合体(C)および高圧法ポリエチレン(D)の合計量100重量%に対して、5〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%の割合で用いられる。
【0033】[高圧法ポリエチレン(D)]本発明で用いられる高圧法ポリエチレン(D)は、密度が0.915〜0.930g/cm3 、好ましくは0.918〜0.924g/cm3 の範囲にある。
【0034】本発明で用いられる高圧法ポリエチレンとしては、具体的には、エチレン単独重合体、またはエチレンと20重量%以下の量の酢酸ビニル、アクリル酸エステル等のビニルモノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0035】本発明で用いられる高圧法ポリエチレン(D)の溶融指数(MFR)が、0.1〜10g/10分、好ましくは0.3〜5g/10分である場合に、優れた成形性、特にインフレーション成形におけるバブルの安定性を示す。
【0036】本発明においては、高圧法ポリエチレン(D)は、ランダム共重合体(A)、ランダム共重合体(B)、ランダム共重合体(C)および高圧法ポリエチレン(D)の合計量100重量%に対して、5〜20重量%、好ましくは5〜10重量%、さらに好ましくは7〜10重量%の割合で用いられる。
【0037】[外層および内層を形成する樹脂組成物]本発明に係る包装用多層フィルムの外層および内層は、上述したランダム共重合体(A)、ランダム共重合体(C)、高圧法ポリエチレン(D)および必要に応じてランダム共重合体(B)から、上述したような配合割合で構成されている。
【0038】外層を形成する樹脂組成物と内層を形成する樹脂組成物は、上述した配合割合の範囲内であれば、包装目的に応じて各々独立してその樹脂組成を任意に変えることができる。
【0039】本発明において、上記の成分(A)〜(D)の各成分の割合が上述した配合割合の範囲内である場合に、包装用多層フィルムとして必要な優れた透明性、高いヒートシール強度、および自動包装機による優れたカット性が得られる。また、このような多層フィルムで実際に物品を包装した後、仮に指で内方向に押し込んでも容易に元の形状に復元することができる。
【0040】本発明においては、外層および内層を構成する樹脂組成物中に、上記成分(A)、(B)、(C)および(D)に加えて、各種の安定剤、配合剤、充填剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。特に、内容物の見栄えを良くするために防曇剤、帯電防止剤等を添加したり、また内容物を保護するために紫外線防止剤等を添加することができ、酸化防止剤、滑剤を添加することもできる。
【0041】防曇剤としては、N-アシルアミノ酸またはその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等の陰イオン界面活性剤、脂肪族アミン塩、カルボキシベタイン、イミダゾリニウムベタイン、アミノカルボン酸塩等の両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、およびフッソ系の界面活性剤などが挙げられる。
【0042】これらの中でも、非イオン系の界面活性剤が好ましい。好ましく用いられる防曇剤としては、たとえばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル類が挙げられる。
【0043】防曇剤は、ランダム共重合体(A)、ランダム共重合体(B)、ランダム共重合体(C)および高圧法ポリエチレン(D)の合計量100重量部に対して、通常0.1〜1.5重量部の割合で用いられる。防曇剤を上記のような割合で用いると、その優れた防曇効果を発揮する。
【0044】中間層中間層は、1-ブテン系(共)重合体(E)、および必要に応じて、エチレン・プロピレン・1-ブテンランダム共重合体(F)からなる樹脂または樹脂組成物から構成されている。
【0045】[1-ブテン系(共)重合体(E)]本発明で好ましく用いられる1-ブテン系(共)重合体(E)は、1-ブテン単独重合体、または1-ブテン75〜85モル%とプロピレン15〜25モル%とからなる1-ブテン・プロピレン共重合体である。
【0046】本発明で用いられる1-ブテン系(共)重合体(E)は、溶融指数(MFR)が0.1〜5g/10分、好ましくは0.5〜2g/10分であり、密度が0.890〜0.925g/cm3 、好ましくは0.895〜0.920g/cm3 である。この溶融指数は、上述したランダム共重合体(A)と同様の方法で測定した値である。
【0047】上記のような1-ブテン系(共)重合体(E)は、通常のチーグラーナッタ触媒を用いて製造することができる。本発明においては、1-ブテン系(共)重合体(E)は、1-ブテン系(共)重合体(E)およびエチレン・プロピレン・1-ブテンランダム共重合体(F)の合計量100重量%に対して、40〜100重量%、好ましくは50〜90重量%、さらに好ましくは55〜95重量%の割合で用いられる。
【0048】[エチレン・プロピレン・1-ブテンランダム共重合体(F)]本発明で必要に応じて用いられるエチレン・プロピレン・1-ブテンランダム共重合体(F)は、プロピレン含量が50〜98モル%、好ましくは70〜97モル%であることが望ましい。
【0049】本発明で用いられるエチレン・プロピレン・1-ブテンランダム共重合体(F)は、溶融指数(MFR)が0.1〜100g/10分、好ましくは1〜30g/10分であり、密度が0.890〜0.910g/cm3 である。
【0050】ここにおける溶融指数(MFR)は、ASTM D-1238に準拠して、測定温度230℃、荷重2160gの条件下で測定された値であり、密度は、ASTM D-1505に準拠して測定された値である。
【0051】上記のようなエチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体(F)は、通常のチーグラーナッタ触媒を用いて製造することができる。本発明においては、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体(F)は、1-ブテン系(共)重合体(E)およびエチレン・プロピレン・1-ブテンランダム共重合体(F)の合計量100重量%に対して、0〜60重量%、好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは5〜45重量%の割合で用いられる。
【0052】本発明において、上記の成分(E)および(F)の各成分の割合が上述した配合割合の範囲に入る場合に、自動包装機によるカット性に優れた多層フィルムが得られる。
【0053】本発明においては、上述した外層および内層を構成する樹脂組成物と同様に、中間層を構成する樹脂または樹脂組成物中に、上記成分(E)および(F)に加えて、各種の安定剤、配合剤、充填剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。特に、内容物の見栄えを良くするために防曇剤、帯電防止剤等を添加したり、また内容物を保護するために紫外線防止剤等を添加することができ、酸化防止剤、滑剤を添加することもできる。
【0054】防曇剤については、上述した通りである。中間層は、上述した1-ブテン系(共)重合体(E)およびエチレン・プロピレン・1-ブテンランダム共重合体(F)が上記範囲内の量で配合された一層ないし二層以上から構成されていてもよい。
【0055】包装用多層フィルム本発明に係る包装用多層フィルムは、通常10〜20μmの厚さに成形され、その中間層は1〜5μm、外層および内層は各々2〜8μmの厚さに調整される。なお、用途によっては、内層および/または外層のさらに外側に別の樹脂層を形成することも可能である。
【0056】このような多層フィルムは、各々の層を構成する各成分を各種のブレンダーを用いて混合した後、通常の成形法、すなわち押出機に複数のダイリップを備えたインフレーションフィルム成形機、あるいはTダイ成形機等へ供給して製造される。
【0057】上記のようにして得られた多層フィルムは、縦方向と横方向のエルメンドルフ引裂強度の比[横方向/縦方向]が9.1以下である場合に、優れた包装フィルムとして使用することができる。特にフィルムを自動包装機に適用した場合、フィルムの横方向に走るナイフによってカットされることから、カット性の良しあしは縦方向と横方向のエルメンドルフ引裂強度の比によって評価することができる。このエルメンドルフ引裂強度の比が9.1以下であれば、自動包装機によるカット性は良好であると判断できる。
【0058】本発明に係る包装用多層フィルムは、このエルメンドルフ引裂強度の比[横方向/縦方向]が9.1以下で、自動包装機によるカットが容易であり、しかも、ハイスピードでの連続包装作業が可能である。
【0059】なお、エルメンドルフ引裂強度は、JIS Z-1702に準拠した方法て測定する。また、本発明に係る包装用多層フィルムは、透明性に優れ、ヘイズ値が通常2.0%以下である。
【0060】さらに、本発明に係る包装用多層フィルムは、実施例において後述する指押し復元性に優れ、初期復元率が70%以上であり、残留歪が5.5mm以下である。
【0061】さらにまた、本発明に係る包装用多層フィルムは、低温シール性に優れ、90℃でヒートシールしたフィルムのシール強度が100kg/cm2 以上である。
【0062】
【発明の効果】本発明によれば、自動包装機によるカット性に優れ、しかも、機械強度特性、透明性および低温ヒートシール性に優れた包装用多層フィルムを提供することができる。
【0063】また、本発明に係る包装用多層フィルムは、包装後に、たとえば指で内容物側へ押し込んでもその後のフィルムの復元性がよく、後述する初期復元率が70%以上を示し、このフィルムで包装された製品を展示しても見栄えをフィルムにより損なうことはない。
【0064】さらにまた、本発明に係る包装用多層フィルムは、上述したように、自動包装機にかけたとき、優れたカット性を示すことから、包装効率が高い。したがって、上記のような効果を有する、本発明に係る包装用多層フィルムは、食料品、日用品等の包装に適している。たとえば、食品を入れたトレーを自動包装機に連続して供給し、本発明に係る多層フィルムで包装した場合には、上記のような優れた効果が得られる。
【0065】以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
【実施例1〜5】まず、次の7種類の樹脂を準備した。
(A)成分(A−1)メタロセン触媒を用いて調製したエチレン・1-ヘキセンランダム共重合体エチレン/1-ヘキセン(モル比):94.9/5.1MFR : 4.0g/10分密 度 : 0.905g/cm3Mw/Mn : 2.1(B)成分(B−1)エチレン・1-ブテン・4-メチル-1- ペンテンランダム共重合体エチレン/1-ブテン/4-メチル-1- ペンテン(モル比):94.8/4.0/1.2MFR : 2.0g/10分密 度 : 0.905g/cm3Mw/Mn : 3.5(C)成分(C−1)エチレン・1-ブテンランダム共重合体エチレン/1-ブテン(モル比):88/12MFR : 0.5g/10分密 度 : 0.885g/cm3結晶化度 : 8%(C−2)エチレン・1-ブテンランダム共重合体エチレン/1-ブテン(モル比):82/18MFR : 0.5g/10分密 度 : 0.865g/cm3結晶化度 : 0%(D)成分(D−1)高圧法で製造したエチレン単独重合体MFR : 0.6g/10分密 度 : 0.922g/cm3(E)成分(E−1)1-ブテン・プロピレンランダム共重合体1-ブテン/プロピレン(モル比):78/22MFR : 1.0g/10分密 度 : 0.900g/cm3(F)成分(F−1)エチレン・プロピレン・1-ブテンランダム共重合体エチレン/プロピレン/1-ブテン(モル比):3.2/95.3/1.5MFR : 7.0g/10分密 度 : 0.910g/cm3次に、上記の樹脂を用いて、第1表に記載した組成の樹脂組成物を調製し、5種類の3層構造のインフレーションフィルムを製造した。フィルム全体の厚さは15μm、内層と中間層と外層との厚み比は、2:1:2とした。
【0067】上記のようにして得られたフィルムのヘイズ、エルメンドルフ引裂強度、指押し復元性およびヒートシール強度を下記の方法に従って測定した。結果を第1表に示す。
(1)ヘイズ:ASTM D-1003に準拠した方法で測定した。
(2)エルメンドルフ引裂強度:JIS Z-1702に準拠した方法で縦方向および横方向の強度を測定した。
(3)指押し復元性:図1に示すように、フィルムの固定が可能な内径100mmの筒状装置1にフィルム2を展張し、そのフィルム2中心部に先端が半球状になった棒状の治具(R=1/2インチ)3を速度100mm/分で押し当て、20mmの距離だけ変形させた。この操作を10回繰り返した。
【0068】最初の応力−歪曲線より初期復元率を求め、10回目の応力−歪曲線より残留歪量を求め、復元性の評価値とした。この応力−歪曲線の例を図2に示す。
(4)ヒートシール強度(低温ヒートシール性の指標):JIS Z-1707に準拠した方法に従い、90℃にてヒートシールを行ない、その剥離強度を測定し、ヒートシール強度とした。
【0069】
【比較例1〜3】前記の各樹脂を用い、第1表に示す組成の樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の方法で単層インフレーションフィルムおよび2種類の3層構造のインフレーションフィルムを製造した。得られたフィルムの物性を実施例1と同様にして測定した。その結果を第1表に示す。
【0070】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係るフィルムの指押し復元性を評価するために行なった実験方法の模式図である。
【図2】指押し復元性を評価するために行なった実験における応力−歪曲線の一例を示す図である。
【符号の説明】
・・・・・ フィルムの固定が可能な筒状装置
・・・・・ フィルム
・・・・・ 棒状の治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】外層、1または2以上の中間層、および内層の少なくとも3層からなる多層フィルムであって、外層および内層は、それぞれ独立して、(A)溶融指数(MFR)が0.1〜10g/10分であり、密度が0.880〜0.925g/cm3 であり、平均分子量分布(Mw/Mn)が2以上3未満である、エチレンと炭素原子数4〜10のα- オレフィンとのランダム共重合体;40〜90重量%と、(B)溶融指数(MFR)が0.1〜5g/10分であり、密度が0.900〜0.925g/cm3 であり、平均分子量分布(Mw/Mn)が3〜6である、エチレンと炭素原子数4〜10のα- オレフィンとのランダム共重合体;0〜40重量%と、(C)溶融指数(MFR)が0.1〜20g/10分であり、密度が0.850〜0.900g/cm3 である、エチレンと炭素原子数3〜10のα- オレフィンとのランダム共重合体;5〜30重量%と、(D)密度が0.915〜0.930g/cm3 である高圧法ポリエチレン;5〜20重量%とからなる樹脂組成物で形成されており、中間層は、(E)溶融指数(MFR)が0.1〜5g/10分であり、密度が0.890〜0.925g/cm3 である1-ブテン系(共)重合体;40〜100重量%と、(F)溶融指数(MFR)が0.1〜100g/10分であり、プロピレン含量が50〜98モル%であるエチレン・プロピレン・1-ブテンランダム共重合体;0〜60重量%とからなる樹脂または樹脂組成物で形成されていることを特徴とする包装用多層フィルム。
【請求項2】縦方向と横方向のエルメンドルフ引裂強度の比[横方向/縦方向]が、9.1以下であることを特徴とする請求項1に記載の包装用多層フィルム。

【図1】
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【図2】
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