説明

包装用容器、及び、包装用容器の蓋体

【課題】個食用に適する小さな包装用容器でも、商品表示用のラベルを確実に貼ることができ、しかも、積み重ね作業がし易く、積み重ね状態を安定に維持することを可能とする。
【解決手段】蓋体1の天板部周縁112には、一対の蓋体積み重ね突起14,14が形成され、前記蓋体積み重ね突起14は、前記天板部周縁112における、対向する二辺112a,112aの延長方向の中央部に、当該天板部周縁112から天板部中央へ向けて、高くなった後、次第に低くなる形状の傾斜部142,143を有し、前記容器本体2の底面部周縁における、四辺の延長方向の中央部には、蓋体1を取り付けた状態の包装用容器を上下方向に積み重ねした際に、前記蓋体積み重ね突起14を係止可能な、容器本体受け凹部24が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋付きの包装用容器に関し、特に合成樹脂シートにより成形される容器本体及びこれに嵌合される蓋体とで構成される包装用容器、及び、包装用容器の蓋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、惣菜やカットフルーツ、カット野菜等の食品は、これを特定の包装用容器に入れて運搬や販売等がなされており、そのための包装用容器も多岐にわたって製造されている。特に、食の個食化の進展により、個食用に適する包装用容器(例えば、1人用の小さな容器)として、小さなサイズの蓋体を使用した包装用容器が、衛生的であることなどから合成樹脂を使用して形成され使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−276804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これらの包装用容器の容器本体や蓋体は、合成樹脂シート(例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂やポリスチレンなどのスチレン系樹脂ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂などや、これらを延伸した延伸シートや、また発泡した発泡シート)などを材料として、真空成形、圧空成形、両面真空成形、熱板成形などの熟成形によって製造されている。
【0005】
そして、これらの包装用容器として、1人用の食べきりサイズである、例えば10cm角以下の小さな、平面視にて略正方形形状の包装用容器の需要が増えている。
【0006】
一方、この種の1人用の食べきりサイズである包装用容器に関して、デパートやスーパーマーケットなどの店頭において、食品を収容した状態の容器を複数、積み重ねて展示し、販売することが多い。この際、容器の積み重ね作業が容易であって、かつ、積み重ねた容器が容易に崩れたりズレたりしないことが求められる。
【0007】
このような要望を満たす包装用容器として、特開2007−276804号公報(特許文献1)には、積み上げ包装用容器が記載されている。この容器には、蓋体の天板部における四隅部に積み重ね用の突起が膨出形成されている。更に、容器本体の底面部における四隅部に、前記膨出形成された突起と係合する凹部が形成されている。この容器を複数積み重ねた際には、前記突起と凹部とが係合することにより、積み重ねた容器同士がズレることを防止できる。
【0008】
ところが、前述の積み上げ包装用容器の形状を、10cm角以下の小さなサイズで、個食用に適する包装用容器に適用すると、容器本体が小さすぎることから、結果、蓋体も小さくなるため、商品表示用のラベルをうまく貼ることができない。このラベルとは、収容した食品の名称表示、使用材料表示、バーコード表示、価格表示などを一枚に記載した接着ラベルなどが用いられるものであり、今や、店頭販売される包装用容器に貼付するために必需品となっている。ラベルがうまく貼れない理由は、前述の積み上げ包装用容器では、蓋体の天板部の四隅部に積み重ね用の突起が設けられているからである。つまり、10cm角以下の小さなサイズの容器の蓋体に、前記ラベルを貼ろうとすると、四隅部の突起にラベルが掛かることにより、その部分でラベルの浮きを生じ、ラベルが折れたり剥がれたりし易くなり、この結果、デパートやスーパーマーケットなどのレジにてラベル上のバーコードが読み取れないという問題を生じる。また、ラベルの価格表示部が折れたり剥がれたりすると、購買者に商品の説明や価格が伝わらずラベル表示の機能が阻害されてしまう。
【0009】
そこで本発明は、合成樹脂シートによって成形した、個食用に適する小さな包装用容器であっても、商品表示用のラベルを確実に貼ることができ、しかも、商品展示のための積み重ね作業がし易く、かつ容易にズレたりすることがなく積み重ね状態を安定に維持することを可能とした包装用容器、及び、包装用容器の蓋体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の発明者は、合成樹脂シートによって成形した包装用容器であって、特に、個食用に適する小さな(例えば、サイズが10cm角以下の)平面視にて略正方形形状の包装用容器であっても、商品表示用のラベルを確実に貼ることができ、しかも、商品展示のための積み重ね作業がし易く、かつ容易にズレたりすることがなく積み重ね状態を安定に維持することを可能とするにはどうしたらよいかについて種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0011】
すなわち、本発明においては、容器本体と蓋体とを備えてなる、平面視にて略正方形形状であり、上下に積み重ね可能に構成された包装用容器において、前記蓋体の天板部周縁には、上側に他の包装用容器を積み重ね固定可能な、一対の蓋体積み重ね突起が形成され、前記蓋体積み重ね突起は、前記天板部周縁における、対向する二辺の延長方向の中央部に、当該天板部周縁から天板部中央へ向けて、高くなった後、次第に低くなる形状の傾斜部を有し、前記容器本体の底面部周縁における、四辺の延長方向の中央部には、前記蓋体を取り付けた状態の、下側に位置する他の包装用容器に積み重ねした際に、前記下側に位置する他の包装用容器における蓋体積み重ね突起を係止可能な、容器本体受け凹部が形成されたことを特徴とする。
【0012】
本発明は、蓋体に蓋体積み重ね突起が形成され、容器本体に容器本体受け凹部が形成された構成とされている。このような構成とすることによって、個食用に適する小さな(例えば、サイズが10cm角以下の)平面視にて略正方形形状の容器であっても、蓋体の天板部周縁に、突起の存在しない辺が形成されるため、この突起の存在しない辺の周囲部分に、商品表示用のラベルを確実に貼ることができる。しかも、この蓋体積み重ね突起の形状を、天板部中央へ向けて次第に低くなる傾斜部を有する形状とすることによって、商品展示のための包装用容器の積み重ね作業がし易く、かつ、積み重ね後に容易にズレたりすることがなく積み重ね状態を安定に維持することができる。加えて、容器本体の底面部周縁における四辺に、蓋体積み重ね突起を係止可能な突起受け凹部が形成されているので、包装用容器を90度回転させても蓋体積み重ね突起を係止可能であり、積み重ねの際に方向性が限定されず、商品展示のための積み重ね作業がし易い。
【0013】
また、本発明においては、前記蓋体積み重ね突起の傾斜部に、少なくとも1つのリブが形成されていることが好ましい。
【0014】
このような好ましい構成とすることによって、積み重ね時に最も応力のかかりやすい蓋体積み重ね突起の傾斜部の強度を更に向上し、蓋体を取り付けた状態の包装用容器の強度向上を図ることができる。
【0015】
また、本発明においては、包装用容器の容器本体に取り付けて用いられる蓋体において、
平面視にて略正方形形状である天板部の周縁には、他の包装用容器を積み重ね固定可能な、一対の蓋体積み重ね突起が形成され、前記蓋体積み重ね突起には、周縁側傾斜部と中央側傾斜部とが設けられており、前記周縁側傾斜部は、蓋体における側壁から延設され、前記天板部の中央へ向かうにつれ高くなる斜面を有し、前記中央側傾斜部は、前記周縁側傾斜部に隣接して設けられ、前記天板部の中央へ向かうにつれ低くなる斜面を有し、前記周縁側傾斜部の斜面よりも前記中央側傾斜部の斜面の方が緩い傾斜であることを特徴とする。
【0016】
本発明は、蓋体に蓋体積み重ね突起が形成されている。このような構成とすることによって、個食用に適する小さな(例えば、サイズが10cm角以下の)平面視にて略正方形形状の容器であっても、蓋体の天板部周縁に、突起の存在しない辺が形成されるため、この突起の存在しない辺の周囲部分に、商品表示用のラベルを確実に貼ることができる。しかも、この蓋体積み重ね突起の形状を、周縁側傾斜部の斜面よりも前記中央側傾斜部の斜面の方が緩い傾斜とすることよって、商品展示のための積み重ね作業がし易く、かつ容易にズレたりすることがなく積み重ね状態を安定に維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、合成樹脂シートによって成形した、個食用に適する小さな包装用容器であっても、商品表示用のラベルを確実に貼ることができ、しかも、商品展示のための積み重ね作業がし易く、かつ容易にズレたりすることがなく積み重ね状態を安定に維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る包装用容器のうち、蓋体を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る包装用容器のうち、容器本体を示す底面図である。
【図3】(a)は図1のA−A矢視の一部拡大端面図である。(b)は図2のB−B矢視の一部拡大端面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る包装用容器の、蓋体に設けられた補強リブを示す要部の斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る包装用容器を積み重ねた状態を示す一部拡大端面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る包装用容器を積み重ねている途中の状態を示す一部拡大端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る包装用容器について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の位置関係の表現のうち、「上下」とは、下側に配置された容器本体に上方から蓋体を取り付けることができるようにした場合における上下方向を指し、「内外」とは、包装用容器の中心を基準とし、包装用容器の周囲へと向かう方向を外方向、それとは逆の方向を内方向と定めたものである。
【0020】
[包装用容器]
この包装用容器は、図1に示す蓋体1と、図2に示す容器本体2とから構成されている。ただし、図2は底面図であり、収容物を収容する際には、図示の状態とは上下逆にして使用される。容器本体2は、上方に開口部を有し、この開口部から収容物を収容可能とされている。蓋体1は、容器本体2に対して着脱可能とされている。そして、蓋体1が容器本体2に取り付けられた際には、蓋体1と容器本体2との間に、収容物を収容できる収容空間が形成される。
【0021】
この包装用容器の形状は、図示のように、平面視にて略正方形形状とされている。本実施形態においては、包装用容器を構成する蓋体1の天板部11及び容器本体2の底面部21の外形形状が、四隅に面取りがなされた(「隅切り」とも言う)正方形形状とされている。この四隅の形状については、本実施形態のような面取りの他、アールが形成されたもの(「隅丸」とも言う)であっても良い。
【0022】
この包装用容器の蓋体1及び容器本体2は、合成樹脂製シートが熱成形されて形成されている。合成樹脂製シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂などのシートや、これらを延伸した延伸シートなどが挙げられる。熱成形としては、例えば真空成形、圧空成形、両面真空成形、熱板成形などが挙げられる。そして、容器本体2としては、前記合成樹脂を発泡させた合成樹脂製シートや、これらに適宜、合成樹脂シートをラミネートした積層シートを熱成形して形成することができる。また、蓋体1としては、成形後に透明となる合成樹脂製シートを用いることが、収容物の視認性を確保できる点で好ましい。
【0023】
[蓋体]
次に、蓋体1について説明する。この蓋体1は、容器本体2に嵌合することで容器本体2の開口部を覆うことのできるように形成されている。具体的には、この蓋体1は、図1及び図3(a)に示すように、天板部11と、蓋体側壁部12と、蓋体フランジ部13とから構成されている。
【0024】
天板部11は、蓋体1が容器本体2に取り付けられた際に、容器本体2の開口部の上方に位置するように形成されている。本実施形態の天板部11は、蓋体積み重ね突起14(後述する)が形成された部分を除いた平面部111が水平方向に延びる面とされている。この天板部11は、容器本体2の開口部よりも平面視にて小さな形状(具体的には、平面視にて四隅が面取りされた正方形形状)に形成されている。
【0025】
この天板部11には、暖かい惣菜等、蒸気を発する可能性のある収容物を収容するために、蒸気抜きのスリットや小孔等が設けられ、蓋部1の内面が曇らないようにされていても良い。また、天板部11の四隅における面取りされた部分には、蓋体1に貼られたラベルが折れたり剥がれたりしない程度の高さであれば、上方に突出させた補強リブが形成されていても良い。
【0026】
蓋体側壁部12は、前記天板部11に連接して形成されている。この蓋体側壁部12は、図3(a)に示すように、天板部11の周縁112から下方に延びる面を有する。この蓋体側壁部12のうちで、平面視における略正方形形状の各辺(面取りされた部分を除いた辺、以下同じ)に沿う面には、図1に示すように、各辺につき二つずつ、補強リブ121が設けられている。この補強リブ121は、蓋体側壁部12の表面から内方向に凹んで形成された凹部であり、蓋体側壁部12の上端から下端に至って設けられている。
【0027】
この補強リブ121は、図4に示すように、当該補強リブ121の奥側にて上下方向に延びる折目121a、その折目121aを図示左右両側から挟むように形成された略三角形の平面である第1縦平面121b及び第2縦平面121cから構成されている。そしてこの補強リブ121の下端に、底部補強面121dが設けられている。そして、この補強リブ121の上端は天板部11に位置している。そのため、天板部11の周縁はこの補強リブ121によって略V字状に小さく切り欠かれたようになっている。
【0028】
このように、下方に向かうにつれ広がる形状の補強リブ121が蓋体側壁部12に形成されたことにより、蓋体1にかかる下方向の外力が下方に向かうにつれ分散する。そして、底部補強面121dで前記分散した外力が受け止められる。このことから、下方向の外力に対する、蓋体1の強度を向上できる。また、この補強リブ121は、凸部や、上下方向で幅が一定な凹部とするなど、種々の形状とすることができる。
【0029】
また、蓋体側壁部12の下端周辺には、当該蓋体側壁部12の表面から外方向に突出するブロッキング防止突起122が設けられている。このブロッキング防止突起122は、合成樹脂製シートから蓋体1が熱成形された後の工程において、複数の蓋体1…1を重ね合わせる(スタッキングする)際に、重ねられた複数の蓋体1同士の間に隙間を設けることで、これら複数の蓋体1同士が密着して離れ難くなることを防止するものである。このブロッキング防止突起122の存在により、重ねられた複数の蓋体1を個々の蓋体1に分離させることが容易となる。このブロッキング防止突起122は、合成樹脂製シートから同時に成形される複数の蓋体1ごとに、別々の位置に設けられている。よって、同時に成形され、その後に重ね合わされた複数の蓋体1におけるブロッキング防止突起122が同一の位置に存在しないようにできるため、蓋体1同士が密着してしまうことを有効に防止できる。
【0030】
本実施形態のブロッキング防止突起122は、蓋体側壁部12のうちで、平面視における略正方形形状の各辺に沿う面に設けられている。ただし、本実施形態では、ブロッキング防止突起122が、一つの面には設けられておらず、二つの面には各面毎に二つ、一つの面には一つが設けられている。なお、本発明においては、このブロッキング防止突起122の形成は必須ではなく、形成しなくても良い。また、ブロッキング防止突起122を形成する場合、蓋体1のひとつ当たりの形成数量は適宜決定して良い。
【0031】
蓋体フランジ部13は、図3(a)に示すように、前記蓋体側壁部12に連接して形成されている。この蓋体フランジ部13は、張出部131、立ち上げ部132、外縁部133から構成されている。張出部131は、蓋体側壁部12の下端から外方向に延びる水平面を有する部分である。立ち上げ部132は、前記張出部131の周縁から上方に延びる部分であり、図示では明確ではないが、上方向に向かうにつれ中央側に傾斜する逆テーパー面とされている。外縁部133は、前記立ち上げ部132の下端から水平外方向に延びる部分である。
【0032】
立ち上げ部132は、図5に示すように、容器本体2の内縁部232と係合することにより、容器本体2に蓋体1を取り付けた状態を保持できる。この係合は、本実施形態においては、容器本体2の内側に蓋体1が嵌合するいわゆる「内嵌合」タイプとされているが、これとは逆に、容器本体2の外側に蓋体1が嵌合するいわゆる「外嵌合」タイプとされていても良いし、「内嵌合」と「外嵌合」の両タイプが一つの包装用容器に混在するものであっても良い。なお、本実施形態のような「内嵌合」タイプの嵌合は、シール性に優れており、惣菜などの水分の多い収容物を収納しても容器外部への液漏れが発生しにくいメリットがある。また、「内嵌合」タイプにおける、蓋体1と容器本体2との具体的な嵌合態様は、本実施形態のものに限られず、種々の態様とすることができる。
【0033】
外縁部133は、立ち上げ部132の上端から水平方向に突出して設けられている。この外縁部133の周縁には、極細の多数の凹凸を形成することで補強するとともに、指などが当たっても、指などを切ることがないようにされている。この凹凸は、側面から拡大して見たときに波形状とされ、多数の山と谷の方向が各辺において幅方向に短く形成され、角部において角部と中心部とを結ぶ方向(放射方向)に平行に形成されている。また、この凹凸は、例えば、平目ローレット目や綾目ローレット目のようなローレット目によって形成され、更には、滑りにくいようにするため、綾目ローレット目によって形成することが好ましい。
【0034】
天板部11の周縁112には、他の包装用容器に対する積み重ね固定可能な、一対の蓋体積み重ね突起14,14が形成されている。この蓋体積み重ね突起14は、天板部11の周縁112における、(平面視にて略正方形形状の)対向する二辺112a,112aのそれぞれ延長方向の中央部に、天板部周縁112から天板部中央へ向けて形成された突起である。この蓋体積み重ね突起14は、天板部周縁の辺112aに対して直交する方向に延びるように形成されている。そして本実施形態では、この蓋体積み重ね突起14の、天板部周縁の辺112aの延長方向における幅寸法が一定とされている。前記幅寸法は、辺112aの長さ寸法に対する比率で5〜50%、または、5〜50mmのいずれかとすることが望ましい。
【0035】
この蓋体積み重ね突起14は、図3(a)に示すように、天板部11の周縁の辺112aから天板部中央へ向けて高くなった後、次第に低くなる形状の傾斜部142,143を有する。すなわち、突出高さ(天板部11の平面部111を基準とした上方への突出高さを指す)の最も高い頂部141を挟んで、天板部11の周縁側に、急に上方向に立ち上がる形状とされた周縁側傾斜部142を有し、天板部11の中央側に、緩やかに下がる形状とされた中央側傾斜部143を有している。つまり、蓋体積み重ね突起14は、略片勾配となる二つの斜面を有しており、この二つの斜面において、周縁側傾斜部142の斜面よりも中央側傾斜部143の斜面の方が緩い傾斜とされている(天板部11の周縁側から中央側に向かうにつれ、急傾斜−頂点−緩傾斜となる)。この蓋体積み重ね突起14の、天板部周縁の辺112aに対して直交する方向に沿う寸法は、中央側傾斜部143の当該寸法が、周縁側傾斜部142の当該寸法の2倍以上とされていることが好ましい。また、特に、中央側傾斜部143の上面形状は、平面状あるいは凹面状であることが、後述する容器本体受け凹部24と係合する関係(図5参照)から望ましい。そして、図1に示すように、各傾斜部142,143の、辺112aの延長方向における両端部には突起側壁144が連接して形成されている。
【0036】
このように蓋体積み重ね突起14が形成されたことにより、包装用容器が、例えば10cm角以下の、個食用に適する小さな容器であっても、天板部11の対向する二辺112a,112aの延長方向の中央部に蓋体積み重ね突起14が形成されており、他の対向する二辺112b,112bには突起が存在しないようにできる。よって、前記他の対向する二辺112b,112bを含む部分(例えば、図1に破線で表記したラベル貼付可能領域L)に対し、商品表示用のラベルを貼ることができる。この部分には、ラベルの浮きを生じる突起が存在しないため、ラベルを蓋体1に密着させ、確実に貼ることができる。
【0037】
しかも、この蓋体積み重ね突起14の形状が、傾斜部142,143を有する形状とされたことによって、後述する容器本体2の容器本体受け凹部24との係合により、商品展示のための包装用容器の積み重ね作業がし易く、かつ、積み重ねた包装用容器が容易にズレたりすることがなく、積み重ね状態を安定的に維持することができる(図5参照)。また、蓋体積み重ね突起14及び容器本体受け凹部24はある程度の幅を持って形成されているため、包装用容器の積み重ね状態をより安定的に維持できる。
【0038】
つまり、蓋体積み重ね突起14は、傾斜の緩い中央側傾斜部143を有しているため、店頭で店員などの作業者が包装用容器を積み重ねる作業を行う際、図6に示すように、上に積もうとする包装用容器の底部(容器本体2の底面部21)を下に位置する包装用容器の天板部11上で図示矢印方向に滑らせ、中央側傾斜部143上に乗り上げるように包装用容器を移動させて、中央側傾斜部143の上面と容器本体受け凹部24の凹面241とを当接させることで、図5に示すような積み重ね状態とできる。蓋体積み重ね突起14及び容器本体受け凹部24は幅寸法が一定とされているため、前記のように乗り上げるように包装用容器を移動させる際にも引っ掛かりが生じにくく、移動をスムーズにできる。また、蓋体積み重ね突起14及び容器本体受け凹部24はある程度の幅を持って形成されているため、小さな突起と凹部とを組み合わせることに比べると、積み重ね作業を行う際に、下に位置する包装用容器に上に積もうとする包装用容器を位置合わせすることが容易である。また、この中央側傾斜部143は、前記のように周縁側傾斜部142よりも緩い傾斜の斜面を有しているため、前記包装用容器の移動の支障になりにくい。このため、上に積もうとする包装用容器が下に位置する包装用容器における蓋体積み重ね突起14に引っ掛かりにくく、積み重ね作業の作業性を向上できる。
【0039】
蓋体積み重ね突起14には、少なくとも1つのリブ145が形成されていて良い。本実施形態のリブ145は、図1に示すように、天板部11の蓋体積み重ね突起14が形成された側の、対向する二辺112a,112aに直交する方向に、天板部11から蓋体積み重ね突起14の上面を通り、蓋体側壁部12の下端へと至るように設けられた、平行する二本の凹溝145aと、各凹溝145a,145aの丁度中間に設けられた凸条145bとからなっている。
【0040】
ここで、特許文献1に記載のように、蓋体が、四隅部に突起が形成された形状の場合、突起に局部的に応力が加わった際に、突起が容易に変形をきたし、へこんだままの状態となり、積み重ねた包装用容器同士のズレ防止の役目を果たさないこととなってしまうことがある。これに対し、本実施形態では、リブ145が形成されたことにより、蓋体積み重ね突起14に対し、包装用容器の積み重ね時に応力がかかっても変形を防止できる補強機能を付与できる。更には、より多段に包装用容器の積み重ねを可能とできるような強度向上を図ることができる。そして、本実施形態では、前記に加え、包装用容器の積み重ね時に、凸条145bが容器本体2の凹溝であるリブ243に係合する。そのため、凸条145b及びリブ243に直交する方向への包装用容器の位置ズレを抑制することができるという作用をも奏する。ただし、本発明においては、このリブ145の形成は必須ではなく、省略しても良い。また、リブ145を凹溝とするか、凸条とするかについて、また、凹溝と凸条との組み合わせについては任意に決定できる。
【0041】
[容器本体]
次に、容器本体2について説明する。この容器本体2は、図2(底面図)及び図3(b)に示すように、底面部21と、本体側壁部22と、本体フランジ部23とから構成されている。
【0042】
底面部21は、上面に収容物が載置される部分である。この底面部21は、平坦に形成されていても良いし、補強リブ、または、収容物のズレ止めのための凹凸が設けられていても良い。
【0043】
本体側壁部22は、前記底面部21に連接して形成されている。この本体側壁部22は、底面部21の周縁から上方向に延びる面を有する。そして、この本体側壁部22の上端部によって容器本体2の開口部が形成されている。なお、蓋体側壁部12の補強リブ121と同様、本体側壁部22にも上下方向に形成された凸部である補強リブ221が設けられている。そして、蓋体側壁部12のブロッキング防止突起122と同様、本体側壁部22にもブロッキング防止突起222が設けられている。
【0044】
容器本体2は、図3(b)に示すように、本体側壁部22が斜面を有しており、これにより、平面視における断面積が、底面部21側から上方側(開口部側)に向かうにつれ広くなるように形成されている。これにより、容器本体2同士を重ねる際には、上側の容器本体2を下側の容器本体2の内側に入れ込んで重ねることができ、コンパクトに重ねることができる。
【0045】
本体フランジ部23は、図3(b)に示すように、前記本体側壁部22よりも上方に形成されている(なお、図3(b)に示す縦断面の位置では、本体側壁部22と本体フランジ部23との間に水平段部25と面取り部26とが介在している)。この本体フランジ部23は、内縁部231、張出部232、外縁部233から構成されている。内縁部231は、上方向に延びる部分であり、図示では明確ではないが、上方向に向かうにつれ中央側に傾斜する逆テーパー面とされている。この内縁部232は、図5に示すように、同じく逆テーパー面とされた、蓋体1の立ち上げ部132と係合することで、容器本体2に蓋体1を取り付けた状態を保持できる。張出部232は、内縁部231の上端から外方向に延びる部分である。外縁部233は、前記張出部232の周縁から下方向に延びる部分である。
【0046】
外縁部233は、その周縁に、極細の多数の凹凸を形成することで補強するとともに、指などが当たっても、指などを切ることがないようにされている。この凹凸は、側面から拡大して見たときに波形状とされ、多数の山と谷の方向が各辺において幅方向に短く形成され、角部において角部と中心部とを結ぶ方向(放射方向)に平行に形成されている。また、この凹凸は、例えば、平目ローレット目や綾目ローレット目のようなローレット目によって形成され、更には、滑りにくいようにするため、綾目ローレット目によって形成することが好ましい。
【0047】
なお、本実施形態では、図3(b)に示すように、本体側壁部22と内縁部231との間に、内縁部231の下端に連接して水平段部25が形成されている。そして更に、蓋体1を容器本体2に取り付けた際における、収容物の咬み込みを防止するために、本体側壁部22と前記水平段部25との境界を一部切り欠くようにして面取り部26が形成されている。この面取り部26は、図2に示すように、(平面視にて略正方形形状の)四辺のそれぞれ延長方向の中央部に一致するように形成されている。この面取り部26により、仮に、蓋体1と容器本体2との間に収容物が介在した状態となっていても、閉蓋の際に下方に移動する蓋体1の立ち上げ部132に収容物が押され、面取り部26の上方を通過して下方に収容物を追いやることができる。そのため、蓋体1と容器本体2との間に収容物が咬み込んだままとなり、商品価値を下げてしまうことを抑制できる。
【0048】
容器本体2の底面部21の周縁211における、(平面視にて略正方形形状の)四辺のそれぞれ延長方向の中央部には容器本体受け凹部24が形成されている。この容器本体受け凹部24は、図5に示すように、容器本体2に蓋体1を取り付けた状態の包装用容器を上下方向に積み重ねする際に、蓋体1の蓋体積み重ね突起14を係止可能なものである。本実施形態では、この凹部24の、前記四辺のそれぞれ延長方向における幅寸法が一定とされている。前記幅寸法は、蓋体積み重ね突起14の幅寸法と略一致している。
【0049】
この容器本体受け凹部24は、図3(b)に示すように、底面部21と本体側壁部22とにわたって切り欠かれたような、凹んだ形状とされており、当該凹んだ形状の下面が凹面241とされている。この凹面241は、蓋体1における中央側傾斜部143の斜面と面の形状が一致している。特に、この凹面241の形状は、平面状あるいは、中央側傾斜部143と一致する凸面状であることが、蓋体積み重ね突起14と係合する関係(図5参照)から望ましい。そして、図2に示すように、この凹面241の、底面部21の周縁211における辺の延長方向における両端部には突起側壁242が連接して形成されている。
【0050】
この凹面241は、図5に示すように、蓋体1における中央側傾斜部143の上面と当接することで、下側に位置する包装用容器の蓋体1に対し、上側に位置する包装用容器の容器本体2が係止される。なお、蓋体1における周縁側傾斜部142は、容器本体受け凹部24とは当接しない。また、包装用容器が積み重ねられた際には、下側に位置する包装用容器の蓋体1における天板部11(平面部111)と、上側に位置する包装用容器の容器本体2における底面部21とが当接する。
【0051】
そして、容器本体2の突起側壁242と蓋体1の突起側壁144とが当接することにより、蓋体1の天板部11の周縁112における、対向する二辺122a,122aの延長方向への包装用容器のズレを確実に抑制できる。しかも、緩い方の傾斜である、蓋体1の中央側傾斜部143上に乗り上げるように包装用容器を移動させ、凹面241を中央側傾斜部143に当接させることができるため、包装用容器の積み重ね作業の作業性を向上できる。
【0052】
容器本体受け凹部24には、少なくとも1つのリブ243が形成されている。本実施形態のリブ243は、底面部21の周縁211における四辺に直交する方向に、底面部21から容器本体受け凹部24の凹面241を通るように設けられた、底面視にて平行する三本の凹溝である。
【0053】
このようにリブ243が形成されたことにより、容器本体受け凹部24に対し、包装用容器の積み重ね時に、この容器本体受け凹部24に応力がかかっても変形を防止できる補強機能を付与でき、更に、より多段に包装用容器の積み重ねを可能とできるような強度向上を図ることができる。ただし、本発明においては、このリブ243の形成は必須ではなく、省略しても良い。
【0054】
この容器本体受け凹部24は、容器本体2の底面部21の周縁211における、(平面視にて略正方形形状の)四辺全ての延長方向の中央部に形成されている。つまり、容器本体受け凹部24は、90度毎に4箇所形成されている。一方、前記のように、蓋体1の蓋体積み重ね突起14は、天板部11の周縁112における、対向する二辺112a,112aの延長方向の中央部に形成されている。つまり、蓋体積み重ね突起14は、180度毎に2箇所形成されている。このような関係にあるから、包装用容器を上下方向に積み重ねする際に、下側に位置する包装用容器の蓋体1と、上側に位置させる包装用容器の容器本体2とが90度ずれていても、両者を問題なく係止可能である。よって、積み重ねの際の方向性が限定されず、商品展示のための積み重ね作業がし易い。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明の包装用容器は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0056】
例えば、蓋体1と容器本体2につき、本実施形態では別々に構成し、両者が嵌合可能とされているが、これに限られず、いわゆる「フードパック」など、蓋体1と容器本体2とが連接部(ヒンジ部)を介して一体に構成されたものであっても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 蓋体
11 天板部
112 天板部周縁
112a 天板部周縁の辺
14 蓋体積み重ね突起
142 周縁側傾斜部
143 中央側傾斜部
145 リブ
2 容器本体
24 容器本体受け凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と蓋体とを備えてなる、平面視にて略正方形形状であり、上下に積み重ね可能に構成された包装用容器において、
前記蓋体の天板部周縁には、上側に他の包装用容器を積み重ね固定可能な、一対の蓋体積み重ね突起が形成され、
前記蓋体積み重ね突起は、前記天板部周縁における、対向する二辺の延長方向の中央部に、当該天板部周縁から天板部中央へ向けて、高くなった後、次第に低くなる形状の傾斜部を有し、
前記容器本体の底面部周縁における、四辺の延長方向の中央部には、前記蓋体を取り付けた状態の、下側に位置する他の包装用容器に積み重ねした際に、前記下側に位置する他の包装用容器における蓋体積み重ね突起を係止可能な、容器本体受け凹部が形成されたことを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
前記蓋体積み重ね突起の傾斜部に、少なくとも1つのリブが形成されていることを特徴とする請求項1記載の包装用容器。
【請求項3】
包装用容器の容器本体に取り付けて用いられる蓋体において、
平面視にて略正方形形状である天板部の周縁には、他の包装用容器を積み重ね固定可能な、一対の蓋体積み重ね突起が形成され、
前記蓋体積み重ね突起には、周縁側傾斜部と中央側傾斜部とが設けられており、
前記周縁側傾斜部は、蓋体における側壁から延設され、前記天板部の中央へ向かうにつれ高くなる斜面を有し、
前記中央側傾斜部は、前記周縁側傾斜部に隣接して設けられ、前記天板部の中央へ向かうにつれ低くなる斜面を有し、
前記周縁側傾斜部の斜面よりも前記中央側傾斜部の斜面の方が緩い傾斜であることを特徴とする包装用容器の蓋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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