説明

包装用容器の蓋体、及び、これを備えた包装用容器

【課題】特に、フランジ部の外周部分の少なくとも一部が曲面によって形成された形状である蓋体、及び、これを備えた包装用容器につき、優れた視認性を確保しつつ、容器積み重ねの際の強度や容器を手に取ろうとしたときの強度が十分なものとする。
【解決手段】天板部11と、当該天板部11に連接される側壁部12と、当該側壁部12に連接されるフランジ部13とを備えた包装用容器の蓋体1において、前記フランジ部13の外周部分の少なくとも一部が曲面によって形成され、前記フランジ部13のうち、前記曲面を有する部分に、当該フランジ部13の他の部分より高さの高い蓋体フランジ頂部が形成され、前記側壁部12には、前記蓋体フランジ頂部から前記天板部11へと連続する、当該側壁部12が屈曲してなる変曲部121が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用容器の蓋体、及び、これを備えた包装用容器に関するものである。特に、合成樹脂シートにより成形される蓋体及びこれに嵌合される容器本体、及び、この蓋体と容器本体とで構成される包装用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、弁当や惣菜等は、これを特定の包装用容器に入れて運搬や販売等がなされており、そのための包装用容器も多岐にわたって製造されている。この包装用容器として、蓋体を使用したものが衛生的であることなどから、合成樹脂を使用して蓋体が形成されている。
【0003】
ところで、この包装用容器は、合成樹指シート(例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂やポリスチレンなどのスチレン系樹脂やポリプロピレンなどのオレフィン樹脂など)や、これらを延伸した延伸シートや、また、発泡した発泡シートなどを材料として、真空成形、圧空成形、両面真空成形、熱板成形などの熟成形によって製造されている。これらのシート厚をより薄くし、包装用容器をより軽量とすることが求められている。そして、複数の包装用容器を積み重ねた際の強度や包装用容器を手に取ろうとした際の強度を十分有する包装用容器が求められている。一方、蓋体としては、閉蓋状態で、蓋体を通して包装用容器に収容した食品などの収納物を良く視認でき、収容物の新鮮さやおいしさを訴求することに優れたものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−73499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような包装用容器において、例えば特許文献1には、耐圧縮性に優れ、シート厚を薄くするために、蓋体の天板部にリブが設けられ、さらに蓋体の側壁部にも複数のリブが形成されたことが開示されている。ところが、このような蓋体を備えた包装用容器では、蓋体を閉じた際に、斜め上方から収容した収容物が明確に視認できる面積は蓋体の半分程度となってしまい、このような包装用容器では、せっかくの収容物の新鮮さやおいしさを訴求できているとは言い難い。
【0006】
そして、フランジ部の外周部分の少なくとも一部が曲面によって形成された形状(例えば、平面視略半月形状、略扇形状、丸形状など)である蓋体を有する包装用容器は、デザイン化され意匠性に富んだ差別化容器として好適である反面、特に前記曲面が形成された部分での圧縮強度が低下し易いという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、特に、フランジ部の外周部分の少なくとも一部が曲面によって形成された形状である蓋体、及び、この蓋体を備えた包装用容器につき、優れた視認性を確保しつつ、積み重ねの際の強度や包装用容器を手に取ろうとした際の強度が十分なものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の発明者は、非常に薄肉の合成樹脂シートによって成形した包装用容器において、特に蓋体の天板部に視認性を低下させるような複雑なリブなどを設けることなく、優れた視認性を確保しつつ、積み重ねの際の強度や容器を手に取ろうとしたときの強度を十分なものとするにはどうしたらよいかについて種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0009】
すなわち、本発明は、天板部と、当該天板部に連接される側壁部と、当該側壁部に連接されるフランジ部とを備えた包装用容器の蓋体において、前記フランジ部の外周部分の少なくとも一部が曲面によって形成され、前記フランジ部のうち、前記曲面を有する部分に、当該フランジ部の他の部分より高さの高い蓋体フランジ頂部が形成され、前記側壁部には、前記蓋体フランジ頂部から前記天板部へと連続する、当該側壁部が屈曲してなる変曲部が形成されている。
【0010】
また、本発明は、前記蓋体と、当該蓋体が取り付けられる容器本体とを備え、前記容器本体は、底面部と、当該底面部に連接される側壁部と、当該側壁部に連接されるフランジ部とを備え、前記フランジ部は、前記蓋体におけるフランジ部に沿う形状に形成された包装用容器である。
【0011】
フランジ部の外周部分の少なくとも一部が曲面によって形成された形状(例えば、平面視略半月形状、略扇形状、丸形状など)である蓋体はデザイン化され意匠性に富んだ差別化容器として好適である反面、特に前記曲面が形成された部分での圧縮強度が低下し易いものであった。これに対し、本発明によると、蓋体フランジ頂部が形成され、かつ、側壁部に変曲部が形成されたことによって、蓋体、または、この蓋体を備えた包装用容器の圧縮強度を著しく向上できる。しかも、従来のように天板部や側壁部に多数のリブを設けることなく強度を向上できるので、収容物の視認性を犠牲にすることなく、シートの薄肉化、蓋体または包装用容器の軽量化を図ることができる。
【0012】
また、本発明の他の態様としては、前記容器本体のフランジ部は、前記蓋体フランジ頂部に沿う形状の容器本体フランジ頂部を備え、前記容器本体の側壁部には、前記容器本体フランジ頂部から前記底面部へと連続する、当該側壁部が屈曲してなる変曲部が形成されている。
【0013】
この態様によると、容器本体の側壁部にも変曲部が形成されたことにより、包装用容器全体での圧縮強度を著しく向上できる。
【0014】
また、本発明の他の態様としては、前記容器本体における前記変曲部を挟む位置であって、前記容器本体の底面部とフランジ部との間の位置に複数の脚部が設けられている。
【0015】
また、本発明の他の態様としては、前記容器本体の脚部は、内方に向いた内周壁を備え、前記内周壁は、前記包装用容器を複数、上下に積み重ねした際に、下方に位置する包装用容器における蓋体の天板部の周縁よりも外方に位置し、これにより、積み重ね状態にある複数の包装用容器同士の、水平方向への位置ズレが抑制される。
【0016】
この態様によると、複数の包装用容器同士の水平方向への位置ズレが抑制されることから、複数の包装用容器を安定して積み重ねることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蓋体の天板部に視認性を低下させるようなリブなどを設けることなく、包装用容器を手に取ろうとした際に部分的に負荷の掛かる部分の強度(ポイント圧縮強度)を著しく向上させることができる。したがって、合成樹脂シートを材料として、真空成形または圧空成形などの熱成形によって効率よく製造することができ、合成樹脂シートのシート厚をより薄くし、より軽量の包装用容器とでき、しかも、蓋体を閉じた状態であっても優れた視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る包装用容器のうち、蓋体を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る包装用容器のうち、容器本体を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る包装用容器のうち、容器本体を示す底面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る包装用容器のうち、蓋体を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る包装用容器のうち、容器本体を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る包装用容器のうち、容器本体を示す底面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る包装用容器のうち、容器本体を示す斜視図である。
【図8】圧縮強度を測定する実験を行ったもののうち、比較例とした蓋体を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1〜第3実施形態に係る包装用容器について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の位置関係の表現のうち、「上下」とは、例えば図1、図2、図4、図5、図7に示す方向で蓋体または容器本体を配置した、包装用容器の使用状態における上下方向を指し、「内外」とは、同使用状態の包装用容器における収容空間を基準とし、包装用容器の周囲へと向かう方向を外方向、それとは逆の方向を内方向と定めたものである。
【0020】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。本実施形態の包装用容器は、平面視(及び底面視)における外形形状が略半月形状(あるいは略「D」形状)である。なお、本発明の包装用容器の外形形状はこの形状に限定されるものではなく、図4〜図6に示す第2実施形態(後述)のような略扇形状や略円形など、外周部分(より詳しくは蓋体フランジ部13,23の外周部分)の少なくとも一部が曲線とされた形状であれば良い。
【0021】
[包装用容器]
本実施形態の包装用容器は、図1に示す蓋体1と、図2に示す容器本体2とから構成されている。容器本体2は、上方に開口部を有し、この開口部から収容物を収容可能とされている。蓋体1は、容器本体2に対して着脱可能とされている。そして、蓋体1を容器本体2に取り付けた際には、蓋体1と容器本体2との間に、収容物を収容する収容空間が形成される。
【0022】
この包装用容器の蓋体1及び容器本体2は、合成樹脂製シートが熱成形されて形成されている。合成樹脂製シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、もしくは、ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂などのシートや、これらを適宜延伸させた延伸シートなどが挙げられる。熱成形としては、例えば真空成形、圧空成形、両面真空成形、熱板成形などが挙げられる。そして、容器本体2としては、前記合成樹脂を発泡させた合成樹脂製シートや、これらに適宜、合成樹脂シートをラミネートした積層シートを熱成形して形成することができる。また、蓋体1としては、透明性に優れた合成樹脂製シートを用いることが好適である。
【0023】
[蓋体]
次に、蓋体1について説明する。この蓋体1は、容器本体2の開口部を覆うことのできるように形成されている。この蓋体1は、図1に示すように、天板部11と、蓋体側壁部12と、蓋体フランジ部13とから構成されている。
【0024】
天板部11は、包装用容器の使用状態にて、容器本体2に蓋体1が取り付けられた際に、容器本体2の開口部の上方に位置するように形成されている。天板部11の周縁の形状は、第一辺111が平面視にて直線状であり、前記第一辺111の両端で隣り合う第二辺112,112と、前記第一辺111に対向する第三辺113とが平面視にて円弧状である。つまり、この天板部11は、長方形の四辺のうち三辺を外方に膨出させたような形状である。なお、第一辺111と第二辺112,112との間にはコーナー部114が形成されている。
【0025】
この天板部11は透明で、全面が平面とされており、凹凸、リブ、段差などが設けられていない。このため、特に、蓋体1が容器本体2に取り付けられた際に、上方からの視認性を良好にできる。よって、消費者に対し、収容物の品質(例えば、美しさ、美味しさ、新鮮さ)等を十分に訴求できる。
【0026】
蓋体側壁部12は、前記天板部11の周縁に連接して一体に形成されている。この蓋体側壁部12は、天板部11の周縁から外方向かつ下方に延びる面(斜面)を有する。特に、前記第二辺112に連接する一方側面122と、前記第三辺113に連接する他方側面123とは、湾曲面である。
【0027】
この蓋体側壁部12は変曲部121を備える。この変曲部121は、前記一方側面122と前記他方側面123との間で、前記各面122,123が屈曲した折目状部分である。ここで、天板部11の周縁の一部を構成する前記第二辺112及び前記第三辺113の曲率は、蓋体フランジ部13の曲率よりも小さい。これにより、蓋体フランジ部13が一定曲率の円弧を描くのに対し、前記各面122,123間は屈曲する。この屈曲した部分がすなわち変曲部121である。
【0028】
この変曲部121は、蓋体側壁部12の上端から下端に至って形成される。なお、本実施形態のように、この変曲部121の上端と天板部11の周縁との間に面取部124が形成されていても良い。また、変曲部121の下端は、蓋体フランジ部13における張出部頂部131a(後述)と略連接している。つまり、この変曲部121は、張出部頂部131aから天板部11へと連続して形成されている。このように変曲部121が蓋体側壁部12に形成されたことにより、蓋体1の天板部11及び蓋体側壁部12に、視認性を低下させる要因となるリブ等の凹凸を設けずに、蓋体1に掛かる下方向の外力(圧縮荷重)に対する、蓋体1の強度を向上できる。
【0029】
また、蓋体側壁部12の下端部には、当該蓋体側壁部12の表面から外方向に突出する、略直方体状のブロッキング防止突起125が設けられている。このブロッキング防止突起125は、蓋体1が熱成形された後の工程において、複数の蓋体1…1を重ね合わせる(スタッキングする)際に、重ねられた複数の蓋体1同士が密着して離れ難くなることを防止するものである。このブロッキング防止突起125の存在により、重ねられた複数の蓋体1を個々の蓋体1に分離させることが容易となる。このブロッキング防止突起125は、合成樹脂製シートから同時に成形される複数の蓋体1ごとに、別々の位置に複数設けられている。よって、同時に成形され、その後に重ね合わされた複数の蓋体1におけるブロッキング防止突起125が同一の位置に存在しないようにできるため、蓋体1同士が密着してしまうことを有効に防止できる。
【0030】
蓋体フランジ部13は、前記蓋体側壁部12に連接して一体に形成されている。この蓋体フランジ部13は、張出部131、垂下部132、外縁部133から構成されている。張出部131は、蓋体側壁部12の下端から外方向に延びる面を有する部分である。垂下部132は、前記張出部131の周縁から略下方に延びる面を有する部分である。外縁部133は、前記垂下部132の下端から略水平外方向、もしくは、外方向下向きに傾斜して延びる部分である。本実施形態では、包装用容器の周縁の少なくとも一部が曲線とされている。これに対応して、蓋体フランジ部13の外周部分の少なくとも一部(本実施形態では垂下部132)が曲面によって形成されている。
【0031】
この蓋体フランジ部13は、張出部131のうち、低部131cよりも上面高さの高い部分である張出部頂部131aを備えている。また、張出部131は、前記張出部頂部131aを挟んだ周方向両側に、上方から見て凹面であるせり上がり斜面部131bを有している。これにより、蓋体フランジ部13の張出部131は、張出部頂部131aに向かうにつれ、上方に順次せり上がるような形状となっている。つまり、蓋体フランジ部13のうち、この張出部頂部131aを備えた部分は、当該蓋体フランジ部13の他の部分より高さが高い蓋体フランジ頂部を構成する。また、後述する垂下部132の段差132aと、前記張出部頂部131aの周縁及び前記せり上がり斜面部131bの周縁とにより、垂下部132の一部には、側面視において略三角形状(本実施形態では「富士山状」)である略三角形状面132bが形成されている。
【0032】
このように、蓋体フランジ部13が、張出部頂部131a及び略三角形状面132bを備えたことにより、包装用容器の外周部分の少なくとも一部が曲線とされていても、当該一部における蓋体フランジ部13が単に平坦に形成された場合に比べ、蓋体フランジ部13の圧縮強度を向上できる。特に、前記変曲部121の下端が張出部頂部131aと略連接していることと、略三角形状面132bの形成とにより、天板部11に圧縮荷重がかかった場合でも、この圧縮荷重が変曲部121を伝わり、張出部頂部131a及び略三角形状面132bで受け止められる。このため、前記変曲部121、張出部頂部131a、略三角形状面132bの組み合わせにより、蓋体1全体の圧縮強度を向上できる。
【0033】
なお、前記張出部頂部131a以外に、平面視にて天板部11のコーナー部114に一致する部分の蓋体フランジ部13が、張出部頂部131aと同様に、蓋体フランジ部13の他の部分よりも高く形成されていても良い。このようにコーナー部114に一致する部分の蓋体フランジ部13を高くした場合には、蓋体1の圧縮強度をいっそう向上させることができる。
【0034】
垂下部132の内面のうち一部には、内方向に突出した係合突起(図示しない)が形成されており、当該係合突起が容器本体2の外縁部233と係合することにより、容器本体2に蓋体1を取り付けた状態を保持できる。この係合は、本実施形態においては、容器本体2の外側に蓋体1が嵌合するいわゆる「外嵌合」タイプとされているが、これとは逆に、容器本体2の内側に蓋体1が嵌合するいわゆる「内嵌合」タイプとされていても良いし、「外嵌合」と「内嵌合」とを併用するものであっても良い。本実施形態では、垂下部132の上下方向略中央に段差132aが形成されている(図1に実線で示す)。この段差132aは、垂下部132の下端との距離が周方向一定に設けられている。容器本体2に蓋体1を取り付けた状態では、この段差132aと容器本体2の本体フランジ部23における外縁部233の周縁とが一致する。
【0035】
外縁部133は、垂下部132の下端から略水平外方向、もしくは、外方向下向きに突出して設けられている。この外縁部133の周縁には、極細の多数の凹凸を形成することで、指などが当たっても創傷することがないようにされている。この凹凸により、蓋体1を側面視すると、上下に波形状である部分が形成される。前記波形状である部分は、多数の山と谷の方向が各辺において幅方向に短く形成され、角部において角部と中心部とを結ぶ方向(放射方向)に平行に形成されている。また、この凹凸は、例えば、平目ローレット目や綾目ローレット目のようなローレット目によって形成され、さらには、滑りにくいようにするため、綾目ローレット目によって形成することが好ましい。
【0036】
以上、蓋体フランジ部13の外周部分の少なくとも一部が曲面によって形成された形状(例えば、平面視略半月形状、略扇形状、丸形状など)である包装用容器の蓋体1は、デザイン化されて意匠性に富み、他形状の包装容器と差別化されたものとして好適である反面、特に前記曲面が形成された部分では、例えば図8に示すように、蓋体側壁部12が湾曲面であり、かつ、蓋体フランジ部13’が単に平坦に形成されていたため、圧縮強度が低下し易いものであった。これに対し、本実施形態では、図1に示すように、張出部頂部131aが形成され、かつ、蓋体側壁部12に、張出部頂部131aから天板部11へと連続する折目状の変曲部121が形成されたことによって、補強構造が構成されて圧縮荷重を受け止めることから、圧縮強度の著しい向上を発揮できる。しかも、特許文献1の包装用容器のように蓋体の天板部や蓋体の側壁部に多数のリブを設けることなく強度を向上できるので、収容物の視認性を犠牲にすることなく、シートの薄肉化、軽量化を図ることができる。また、驚くほどポイント圧縮強度を向上させることができる。
【0037】
[容器本体]
次に、容器本体2について説明する。この容器本体2は、図2に示すように、底面部21と、本体側壁部22と、本体フランジ部23と、脚部24とから構成されている。
【0038】
底面部21の上面には収容物が載置される。この底面部21は、図示のように上面が平坦なものであっても良いし、補強リブ、または、収容物を配置する際に用いる仕切りや凹凸が設けられても良い。
【0039】
本体側壁部22は、前記底面部21に連接して形成されている。この本体側壁部22は、底面部21の周縁から外方向かつ上方向に延びる湾曲面を有する。この本体側壁部22の上端部によって開口部が形成される。図示していないが、この本体側壁部22に補強リブ(後述する変曲部221以外のもの)が設けられていても良い。この容器本体2は、本体側壁部22が湾曲面を有することで、平面視における断面積が底面部21側から上方側(開口部側)に向かうにつれ広くなるように形成されている。
【0040】
ところで、この本体側壁部22も、蓋体側壁部12と同じように変曲部221を備える。この容器本体2における変曲部221は、本体側壁部22において内方に突出しており、底面部21から上方に延びるように設けられた折目状部分である。
【0041】
この変曲部221は、本体側壁部22の上端から下端に至って形成される。また、変曲部221の上端は、本体フランジ部23における張出部頂部231a(後述)と略連接している。つまり、この変曲部221は、張出部頂部231aから底面部21へと連続して形成されている。蓋体1における変曲部121と同様、この変曲部221が本体側壁部22に形成されたことにより、容器本体2に掛かる下方向の外力(圧縮荷重)に対する、容器本体2の強度を向上できる。
【0042】
本体フランジ部23は、前記本体側壁部22に連接して形成されている。この本体フランジ部23は、張出部231、垂下部232、外縁部233から構成されている。張出部231は、本体側壁部22の上端から外方向に延びる部分である。この張出部231は、上方に凸となる湾曲面を有している。垂下部232は、前記張出部231の周縁から略下方に延びる面を有する部分である。外縁部233は、前記垂下部232の周縁から略水平外方向に延びる部分である。この外縁部233は、蓋体1における蓋体フランジ部13の垂下部132の内面に設けられた係合突起(図示しない)と係合することで、容器本体2に蓋体1を取り付けた状態を保持できる。本実施形態では、包装用容器の周縁の少なくとも一部が曲線とされている。これに対応して、本体フランジ部23の外周部分の少なくとも一部(具体的には垂下部232)が曲面によって形成されている。
【0043】
この本体フランジ部23は、前記蓋体フランジ部13と同様、張出部231のうち上面高さの高い部分である張出部頂部231aを備えている。また、張出部231は、前記張出部頂部231aを挟んだ周方向両側に、上方から見て凹面であるせり上がり斜面部231bを有している。これにより、本体フランジ部23の張出部231は、張出部頂部231aに向かうにつれ、上方に順次せり上がるような形状となっている。つまり、本体フランジ部23のうち、この張出部頂部231aを備えた部分は、当該本体フランジ部23の他の部分より高さが高い本体フランジ頂部を構成する。また、後述する外縁部233の周縁と、前記張出部頂部231aの周縁及び前記せり上がり斜面部231bの周縁とにより、外縁部233の一部には、側面視において略三角形状である略三角形状面232aが形成されている。このように、本体フランジ部23は、前記せり上がるような形状も含め、蓋体1における蓋体フランジ部13の張出部131及び垂下部132に沿う(対応する)形状とされている。
【0044】
前記蓋体フランジ部13と同様、本体フランジ部23が、張出部頂部231a及び略三角形状面232aを備えたことにより、包装用容器の周縁の少なくとも一部が曲線とされていても、本体フランジ部23が単に平坦に形成された場合に比べ、本体フランジ部23の圧縮強度を向上できる。特に、前記変曲部221の上端が張出部頂部231aと略連接していることと、略三角形状面232aの形成とにより、底面部21に圧縮荷重がかかった場合でも、この圧縮荷重が変曲部221を伝わり、張出部頂部231a及び略三角形状面232aで受け止められる。このため、前記変曲部221、張出部頂部231a、略三角形状面232aの組み合わせにより、容器本体2全体の圧縮強度を向上できる。更には、前記蓋体1とこの容器本体2とが組み合わされたことにより、より効果的に圧縮強度を向上できる。
【0045】
外縁部233は、周縁に、極細の多数の凹凸を形成することで、指などが当たっても創傷することがないようにされている。この凹凸により、容器本体2を側面視すると、上下に波形状である部分が形成される。前記波形状である部分は、多数の山と谷の方向が各辺において幅方向に短く形成され、角部において角部と中心部とを結ぶ方向(放射方向)に平行に形成されている。また、この凹凸は、例えば、平目ローレット目や綾目ローレット目のようなローレット目によって形成され、さらには、滑りにくいようにするため、綾目ローレット目によって形成することが好ましい。
【0046】
脚部24は、図2及び図3に示すように、底面部21と本体フランジ部23との間、具体的には、底面部21の周縁付近4箇所であり、変曲部221を挟む位置に設けられている。この脚部24は、図3に示すように、少なくとも接地部241と内周壁242とを備えている。接地部241は、店舗の陳列棚などに当接する当接面を有している。内周壁242は、蓋体1の天板部11と容器本体2の底面部21とを上下方向に重ねた場合、蓋体1における天板部11の周縁よりも外側に位置するように形成されている。これにより、包装用容器を複数、上下に積み重ねした際に、上方に位置する一方の包装用容器の容器本体2と、下方に位置する他方の包装用容器の蓋体1とが当接するが、この際、蓋体1の天板部11の周縁(図3に二点鎖線で示す)は、容器本体2の脚部24における内周壁242よりも内方に位置する。これにより、天板部11の周縁と内周壁242とが当接することで、上下に積み重ねた包装用容器同士の水平方向の位置ズレが有効に抑制される。
【0047】
[第2実施形態]
次に、図4〜図6に示す第2実施形態について説明する。原則的に、第1実施形態と機能が共通する部分には、図に同一符号を付し、その部分については前記と重複する説明を省略している。
【0048】
本実施形態の包装用容器は、平面視及び底面視における外形形状が略扇形状である。蓋体1につき、蓋体フランジ部13における略扇形状の先端側(略扇形状の「要(かなめ)」から最も遠い側)が円弧状に形成されている。そして、天板部11の周縁の形状は、略扇形状の「要(かなめ)」側に位置する第一辺111が平面視にて円弧状である。そして、前記第一辺111の両端で隣り合う第二辺112,112が平面視にて直線状であり、かつ、第二辺112,112同士は先端側に向かうにつれ間隔が広がっている。そして、前記第一辺111に対向する第三辺116,116は平面視にて直線状である。この第三辺116,116同士は屈曲点116aにて接続されている。
【0049】
本実施形態の蓋体側壁部12では、前記第二辺112に連接する一方側面122と、前記第三辺116,116に連接する他方側面126,126とは、平面となっている。
【0050】
本実施形態の変曲部121は、前記第三辺116,116に連接する他方側面126,126の境界において屈曲した折目状部分である。この変曲部121は、前記屈曲点116aから下方に延びている。そして、本実施形態の蓋体フランジ部13も第1実施形態と同様の張出部頂部131aを備えており、変曲部121の下端が、この張出部頂部131aと略連接している。
【0051】
本実施形態では、蓋体フランジ部13の垂下部132がフランジ変曲部132cを備える。このフランジ変曲部132cは、蓋体側壁部12が備える変曲部121と同様、垂下部132が屈曲した折目状部分である。このフランジ変曲部132cは、垂下部132の上端から下端に至って形成される。このフランジ変曲部132cの上端は、蓋体フランジ部13の張出部頂部131aと略連接している。つまり、このフランジ変曲部132cは、張出部頂部131aから垂下部132に沿って連続して形成されている。このようにフランジ変曲部132cが垂下部132に形成されたことにより、略三角形状面132bを補強できる。このため、蓋体1に掛かる下方向の外力(圧縮荷重)に対する、蓋体1の強度を更に向上できる。なお、第1実施形態及び第3実施形態のように、平面視における外形形状が略半月形状である蓋体1、または、略円形状である蓋体1における蓋体フランジ部13の垂下部132が、本実施形態のようにフランジ変曲部132cを備えたものであっても良い。
【0052】
一方、容器本体2についても、略扇形状の先端側(略扇形状の「要(かなめ)」から最も遠い側)が円弧状に形成されており、当該円弧状部分の中央にて、本体側壁部22に変曲部221が設けられている。そして、本体フランジ部23は、変曲部221に連接するように第1実施形態と同様の張出部頂部231aを備えている。また、蓋体1のフランジ変曲部132cと同様、本体フランジ部23の垂下部232はフランジ変曲部232bを備える。この容器本体2のフランジ変曲部232bは、閉蓋状態で蓋体1のフランジ変曲部132cに一致する。
【0053】
このように、蓋体1が変曲部121と張出部頂部131aを備え、容器本体2が変曲部221と張出部頂部231aとを備えたことにより、本実施形態の包装用容器も、蓋体1、容器本体2の各々において圧縮強度を向上できる。
【0054】
また、脚部24については、図5及び図6に示すように、底面部21の周縁付近5箇所であり、変曲部221を挟む位置に設けられている。第1実施形態と同様、蓋体1の天板部11の周縁(図6に二点鎖線で示す)は、容器本体2の脚部24における内周壁242よりも内方に位置するため、上下に積み重ねた包装用容器同士の水平方向の位置ズレが有効に抑制される。
【0055】
[第3実施形態]
次に、図7に示す第3実施形態について説明する。本実施形態は第1実施形態とほとんど同じであるため、相違点のみを説明する。
【0056】
本実施形態では、張出部頂部131aに対して略連接する変曲部121を2本一組としたものである。一組を構成する各変曲部121,121は、下方に向かうにつれ間隔が狭くなるように形成されている。このように張出部頂部131aの一箇所につき、変曲部121を2本とすることにより、各変曲部121,121が圧縮荷重を受け止めるため、更に圧縮強度を向上できる。特に、本実施形態では、各変曲部121,121が張出部頂部131aに集中するように形成されていることから、より効果的な圧縮強度の向上が期待できる。なお、本実施形態では変曲部121を2本形成したが、3本以上形成しても良く、数量は限定されない。
【0057】
以上、本発明の実施形態を三つ取り上げて説明したが、本発明の包装用容器は、各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。例えば、視認性を低下させない程度に、蓋体1の天板部11のコーナー部分に、積み重ねの際のズレ防止のため、容器本体2の底面部21と係止可能な凹凸や、これを延長させた形状で、蓋体側壁部12の隅部にリブを形成しても良い。
【実施例】
【0058】
最後に、本願の発明者が、第1本実施形態に係る包装用容器の蓋体1を試作し、圧縮強度を測定する実験を行ったので、これについて説明する。
【0059】
[実施例]
厚み0.23mmのOPSを熱成形して図1に示した形状の蓋体を得た。図1に示す補強構造(変曲部12及び張出部頂部131a)を設けた蓋体1における天板部11の周縁から5mmの位置(図1に矢印で示した位置P)に図示矢印方向の荷重(ポイント圧縮荷重)をかけることで、蓋体1のポイント圧縮強度を測定した。装置には、AIKOH ENGINEERING (アイコーエンジニアリング)社製の荷重測定機(MODEL 1310DS)を用い、装置が荷重を感知してから、7mm圧縮した時の荷重を測定して圧縮強度とした。測定された圧縮強度は、550gfであった。
【0060】
[比較例]
図8に示すように、変曲部12を設けず、蓋体フランジ13’を平坦に形成した蓋体1’につき、実施例と同様にして、天板部11’の周縁から5mmの位置(図8に矢印で示した位置P’)に図示矢印方向の荷重(ポイント圧縮荷重)をかけることで、蓋体1’のポイント圧縮強度を測定した。測定された圧縮強度は、500gfであった。
【0061】
以上、実施例の蓋体1は、比較例に比べて約10%、圧縮強度が向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0062】
1 蓋体
11 天板部
12 側壁部、蓋体側壁部
121 変曲部
13 フランジ部、蓋体フランジ部
2 容器本体
21 底面部
22 側壁部、本体側壁部
221 変曲部
23 フランジ部、本体フランジ部
24 脚部
242 内周壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部と、当該天板部に連接される側壁部と、当該側壁部に連接されるフランジ部とを備えた包装用容器の蓋体において、
前記フランジ部の外周部分の少なくとも一部が曲面によって形成され、
前記フランジ部のうち、前記曲面を有する部分に、当該フランジ部の他の部分より高さの高い蓋体フランジ頂部が形成され、
前記側壁部には、前記蓋体フランジ頂部から前記天板部へと連続する、当該側壁部が屈曲してなる変曲部が形成されたことを特徴とする包装用容器の蓋体。
【請求項2】
請求項1に記載の蓋体と、当該蓋体が取り付けられる容器本体とを備え、
前記容器本体は、底面部と、当該底面部に連接される側壁部と、当該側壁部に連接されるフランジ部とを備え、
前記フランジ部は、前記蓋体におけるフランジ部に沿う形状に形成されたことを特徴とする包装用容器。
【請求項3】
前記容器本体のフランジ部は、前記蓋体フランジ頂部に沿う形状の容器本体フランジ頂部を備え、
前記容器本体の側壁部には、前記容器本体フランジ頂部から前記底面部へと連続する、当該側壁部が屈曲してなる変曲部が形成されたことを特徴とする請求項2に記載の包装用容器。
【請求項4】
前記容器本体における前記変曲部を挟む位置であって、前記容器本体の底面部とフランジ部との間の位置に複数の脚部が設けられたことを特徴とする請求項2または3に記載の包装用容器。
【請求項5】
前記容器本体の脚部は、内方に向いた内周壁を備え、
前記内周壁は、前記包装用容器を複数、上下に積み重ねした際に、下方に位置する包装用容器における蓋体の天板部の周縁よりも外方に位置し、
これにより、積み重ね状態にある複数の包装用容器同士の、水平方向への位置ズレが抑制されることを特徴とする請求項4に記載の包装用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−95503(P2013−95503A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242257(P2011−242257)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000239138)株式会社エフピコ (98)
【Fターム(参考)】