説明

包装用容器の蓋体及び包装用容器

【課題】蓋体の視認性の低下や蓋体全体の外観を損なうような複雑な形状とすることなく、優れた視認性及び十分な強度を確保できるという、相反する性能を同時に発揮できる包装用容器の蓋体及び包装用容器を提供する。
【解決手段】天面の略全体が平坦面で構成される天板部11と、天板部11に連接され、下方に向かって拡開する傾斜面を有する蓋体側壁部12と、蓋体側壁部12に連接される蓋体フランジ部13とを備えた包装用容器の蓋体において、天板部11は、略矩形の四隅が直線状に面取りされて略八角形状に構成され、この天板部11に連接される蓋体側壁部12は、少なくとも8つの傾斜面を備え、天板部11の8つの角部を基点にして、蓋体側壁部12の下端まで連続して延びる平面視略V字状の凹溝14が設けられ、凹溝14は、下方へ向けて次第にその深さが浅く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂シートにより成形される包装用容器の蓋体及び前記蓋体と容器本体とを備えた包装用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、弁当や惣菜等を特定の包装用容器に入れて運搬や販売等がなされており、そのための包装用容器も多岐にわたって製造されている。この包装用容器としては、ラップをかけて内容物を保護するトレーと、特定の蓋体を使用するようにしたパックとに大別することができるが、いずれにしても、衛生面の観点から合成樹脂を使用して成形がなされる。
【0003】
ところで、これらの包装用容器(以下、単に「容器」ともいう)や蓋体は、合成樹脂シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂やポリスチレンなどのスチレン系樹脂やポリプロピレンなどのオレフィン樹脂など)や、これらを延伸した延伸シート、或いは、発泡した発泡シートなどを材料として、真空成形、圧空成形、両面真空成形、熱板成形などの熱成形によって製造されるものであり、これらのシートのシート厚をより薄くし、容器や蓋体としてより軽量なものが求められている。一方、蓋体としては、閉蓋した状態で、蓋体を通して容器内に収容した食品などが良く視認でき、収容物の新鮮さやおいしさを十分に伝えることができるものが求められている。
【0004】
前記蓋体をより軽量にするために、蓋体の天面部に周回する凹凸形状のリブを設けたり、側壁部に複数の凹凸形状のリブを設けたりすることが行われている。例えば、特許文献1には、天面部に周回するとともに上向きに突出する突起部を設けた蓋体が記載され、さらに好ましい態様として、側壁部の四隅の他、長辺及び短辺の中央部にも内側に凹む凹形状のリブを設けた蓋体が記載されている。
【0005】
一方、特許文献2には、補強凹所がコーナー部の高さ方向の中央部分から上端である天面部まで設けられた蓋体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−73499号公報
【特許文献2】特許第2750501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1,2のいずれの蓋体も、リブや補強凹所を設けることによって、蓋体を補強しようとするものであるが、次のような問題がある。
【0008】
上記特許文献1では、蓋の天面部に周回する突起部が設けられていることが補強の前提となっている。
【0009】
一方、特許文献2に記載の蓋体について、本件発明者らは、コーナー部に設けられた補強凹所の補強効果について実験を行ったところ、該補強凹所には全く補強効果が無い、という結果が得られた。
【0010】
ここで、上記特許文献2では、段落0018に「本実施例に係る蓋体10bにおいては、その嵌合縁11から上方に突出する側壁12bによって形成される突出部15を有しており、かつこの突出部15上にも補助突出部が段階的に形成してあるから、これらに基づく複雑形状によって、その全体の剛性が確保されている。」と記載されており、かかる記載と前記実験結果からすると、結局のところ、特許文献2に記載の蓋体においては、コーナー部の高さ方向の中央部分から上端である天面部まで設けられた補強凹所だけでは、補強が不十分であり、蓋体の突出部15(天面部)上に補助突出部が段階的に形成されて始めて補強効果が得られることになる。
【0011】
このように、上記特許文献1,2では、天面部にリブや補助突出部などの補強構造を施さなければならない必要性があり、これによって複雑な形状になってしまう結果、製造効率が低下する問題がある。
【0012】
また、蓋体の天面部に前記補強構造を設けると、天面部を通して視認できる面積が狭くなってしまい、収容物の視認性を低下させ、収容物の良さを顧客に十分に伝えることができないだけでなく、蓋体全体の外観をも損なうという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、蓋体の視認性の低下や蓋体全体の外観を損なうような複雑な形状とすることなく、優れた視認性及び十分な強度を確保できるという、相反する性能を同時に発揮できる包装用容器の蓋体及び包装用容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る包装用容器の蓋体は、天面の略全体が平坦面で構成される天板部と、該天板部に連接され、下方に向かって拡開する傾斜面を有する蓋体側壁部と、該蓋体側壁部に連接される蓋体フランジ部とを備えた包装用容器の蓋体において、前記天板部は、略矩形の四隅が直線状に面取りされて略八角形状に構成され、この天板部に連接される前記蓋体側壁部は、少なくとも8つの傾斜面を備え、前記天板部の8つの角部を基点にして、前記蓋体側壁部の下端まで連続して延びる平面視略V字状の凹溝が設けられ、該凹溝は、下方へ向けて次第にその深さが浅く形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、平面視略V字状の凹溝が天板部の角部を基点に蓋体側壁部の下端まで連続して延びるので、蓋体の強度を飛躍的にアップさせることができる。また、天板部が、その天面に周回状のリブを設けることなく、該天面の略全体が平坦面で構成されるから、周回状のリブを設けることによる視認性や外観の低下を回避することができる。更に、平面視略V字状の凹溝が、天板部の8つの角部に形成されており、しかも、下方へ向けて次第にその深さが浅く形成されているので、蓋体側壁部においても、視認性や外観の低下を回避することができる。このように、天板部及び蓋体側壁部において、視認性や外観を低下させる複雑な形状とすることなく、優れた視認性および外観を確保することができる。
【0016】
また、本発明に係る包装用容器の蓋体においては、前記蓋体側壁部の上部には、前記傾斜面よりも垂直に近い角度で立ち上がる立上部が設けられており、前記蓋体側壁部は、前記立上部にて前記天板部に連接されていることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、前記立上部によって蓋体の一層の強度アップを図ることができる。
【0018】
また、本発明に係る包装用容器においては、底面部と、該底面部に連接される容器本体側壁部と、該容器本体側壁部に連接される容器本体フランジ部とを備えた容器本体、及び、前記容器本体を閉じる請求項1又は2に記載の蓋体を備え、前記容器本体に前記蓋体を閉蓋して上下方向に複数個積み重ねた状態で、前記容器本体の底面部と前記蓋体の天板部とが面接触するように構成されていることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、容器本体に蓋体を閉蓋して上下方向に複数個積み重ねた状態で、容器本体の底面部と蓋体の天板部とが面接触するので、下側の包装用容器の蓋体にかかる重量を、前記面接触で分散させることができるから、当該蓋体の変形を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の如く、本発明に係る包装用容器の蓋体及び包装用容器によれば、平面視略V字状の凹溝が、天板部の8つの角部を基点にして、蓋体側壁部の下端まで連続して延びるように設けられ、しかも、下方へ向けて次第にその深さが浅く形成されているので、蓋体を、その視認性の低下や蓋体全体の外観を損なうような複雑な形状とすることなく、優れた視認性及び十分な強度という、相反する性能を同時に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る包装用容器の斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る包装用容器の平面図を示す。
【図3】同実施形態に係る包装用容器の容器本体に蓋体を閉塞する直前の状態を示す側面図を示す。
【図4】(a)は同実施形態に係る包装用容器の容器本体に蓋体を閉塞する直前の状態を示す正面図を示し、(b)は図4(a)の容器本体に蓋体を閉塞した状態におけるA−A線拡大断面図を示す。
【図5】(a)は同実施形態に係る包装用容器の蓋体の要部を示す上から見た斜視図を示し、(b)は図5(a)のB−B線における拡大断面図を示す。
【図6】同実施形態に係る包装用容器の容器本体の平面図を示す。
【図7】本発明の他の実施形態に係る包装用容器の斜視図を示す。
【図8】比較例として挙げた包装用容器の蓋体の要部の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る包装用容器について図面を参照しながら説明する。なお、以下の位置関係の表現のうち、「上下」とは図1のように包装用容器を配置した状態における上下方向であり、「内外」とは収納物が入る収納部を基準とした方向で、包装用容器の周囲へと向かう方向を外方向、逆の方向(包装用容器の内部へ向かう方向)を内方向としたものである。「水平面」とは、包装用容器を水平方向に置いた場合の、容器本体が置かれる面を指す。
【0023】
本実施形態の包装用容器(以下、単に「容器」とも表記する)は、図1〜図4、及び図6に示すように構成され、蓋体1と、容器本体2とを備えたものである。前記蓋体1は、容器本体2の開口部2A(図6参照)を開閉自在に嵌め合わせることができるように構成され、容器本体2の内部が透視できるように透明なものに構成されている。一方、前記容器本体2は、食品等の収納物が入る空間を備えた複数(図6では4つ)の収納部21A,21B,21C,21Dを有し、上方に開口部2Aが形成されている。
【0024】
本実施形態の容器(蓋体1及び容器本体2)は、合成樹脂シートから成形される。この合成樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂やポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂など、或いは、これらを1軸又は2軸延伸した延伸シートや、発泡した発泡シートなどが使用できる。特に蓋体1は、これらの中でも透明な合成樹脂シートとすることが好ましい。
【0025】
また、前記合成樹脂シートとしては、少なくとも片面に非発泡の樹脂フィルムを積層したものであっても良く、更に、これら非発泡の樹脂フィルムに各種の印刷により模様が施されていても良い。また、リサイクルした樹脂を中間層として、その両面にバージン樹脂を積層してサンドイッチした積層シートも好適に使用できる。
【0026】
前記合成樹脂シートをオーブン等で加熱して成形可能な状態に軟化させたのち、真空圧空成形、両面真空成形やプラグアシスト成形などの熱成形によって容器を成形する。
【0027】
[蓋体]
まず先に、蓋体1から説明を行う。この蓋体1は、図1及び図2に示すように、天面(上面)の全体が平坦面で構成される天板部11と、天板部11に連接され、当該天板部11の周縁から垂下するように設けられた蓋体側壁部12と、蓋体側壁部12に連接され、蓋体側壁部12の下端から順次外方へと延びるように設けられた蓋体フランジ部13とを一体に形成したものである。そして、蓋体1には、V字状の凹溝14が形成されている。
【0028】
天板部11は、平面視において長方形の四隅が直線状に面取りされて略八角形状に形成されている。
【0029】
蓋体側壁部12は、天板部11の8つの辺から垂下する8つの壁部121〜128を備えている。これら8つの壁部121〜128は、天板部11の周縁から下方に向かって拡開する傾斜面を有している。
【0030】
また、図5(a)により3つの壁部121〜123について説明する。つまり、3つの壁部121〜123は、壁部121〜123の上端から少し下がった位置まで形成され、かつ、垂直に近い角度に形成された傾斜面を有する立上部121A〜123Aと、立上部121A〜123Aの下端から壁部121〜123の下端まで形成され、かつ、立上部121A〜123Aの傾斜面よりも垂直に対して大きな角度を有する傾斜面を有する傾斜部121B〜123Bとを備えている。そして、立上部121A〜123Aと傾斜部121B〜123Bとの境界部分には、立上部121A〜123Aと傾斜部121B〜123Bとを連結すべく、屈曲する屈曲部121C〜123Cが形成されており、かかる屈曲構造によって、蓋体側壁部12の強度を高めることができる。
【0031】
さらにまた、蓋体1の四隅付近における蓋体側壁部12の下端部には、突部129(全部で4つ)が形成されている。これらの突部129は、同一の蓋体1を多数重ね合わせた時に蓋体1,1同士が互いに重なり合って密着してしまい、その重なり合った蓋体1,1同士が引き剥がし困難とならないように、該蓋体1,1同士の密着を防止するブロッキング防止のために設けられている。
【0032】
凹溝14は、天板部11の周縁の8つの角部を基点にして、蓋体側壁部12の下端まで真っ直ぐ連続して延びる平面視略V字状の溝に形成されている。また、凹溝14は、下方に向けて次第にその深さが浅く形成されている。本実施形態では、図1、図2及び図5(a)に示すように、凹溝14の深さが、蓋体側壁部12の下端で零になっているが、下端において深さのあるように構成してもよい。
【0033】
8つの凹溝14は、全て同一であるため、図5(a)の左側の凹溝14についてのみ符号を入れて説明する。凹溝14は、その奥側で上下方向に延びる折目141、その折目141を左右両側から挟むように形成された略逆三角形状の第1側面142及び第2側面143から構成されている。
【0034】
第1側面142は、図5(a)に示すように、垂直に近い傾斜面を有する逆台形状の上側第1平面部142Aと、上側第1平面部142Aよりも垂直面に対する角度が大きな角度になっている逆三角形状の下側第1平面部142Bと、上側第1平面部142Aと下側第1平面部142Bとの境界部分に形成された屈曲部142Cとからなっている。尚、屈曲部142Cは、上下方向中央よりも上側に位置し、前記屈曲部121C,122Cと同一高さになっている。尚、図5(b)では、上側第1平面部142Aの角度をわかり易くするために垂直ラインYを図示している。尚、上側第1平面部142A及び下側第1平面部142Bの角度は、図に示される角度に限定されるものではない。前記のように上側第1平面部142Aと下側第1平面部142Bとの境界部分に屈曲部142Cが形成され、かかる屈曲構造によって、蓋体側壁部12の強度を高めることができる。
【0035】
第2側面143は、前記第1側面142と同様に、垂直に近い傾斜面を有する逆台形状の上側第2平面部143Aと、上側第2平面部143Aよりも垂直面に対する角度が大きな角度になっている逆三角形状の下側第2平面部143Bと、上側第2平面部143Aと下側第2平面部143Bとの境界部分に形成された屈曲部143Cとからなっている。尚、屈曲部143Cは、上下方向中央よりも上側に位置し、前記屈曲部122C,123Cと同一高さになっている。尚、上側第2平面部143A及び下側第2平面部143Bの角度は、図に示される角度に限定されるものではない。前記のように上側第2平面部143Aと下側第2平面部143Bとの境界部分に屈曲部143Cが形成され、かかる屈曲構造によって、蓋体側壁部12の強度を高めることができる。
【0036】
また、折目141も、第1側面142及び第2側面143と同様に、垂直に近い立上線を有する上側折り目141Aと、上側折り目141Aよりも垂直面に対する角度が大きな角度になっている傾斜線を有する下側折り目241Bと、上側折り目141Aと下側折り目141Bとの境界部分に形成された屈曲部141Cとからなっている。前記のように上側折り目141Aと下側折り目141Bとの境界部分に屈曲部141Cが形成され、かかる屈曲構造によって、蓋体側壁部12の強度を高めることができる。
【0037】
このようなV字状の凹溝14を形成することによって、従来のようにコーナー部の高さ方向の中央部分から上端である天面部11まで設けられた4つの補強凹所30(図8参照)に比べて、蓋体側壁部12における強度を飛躍的に向上させることができる。また、その凹溝14が、下方へ向けて次第にその深さが浅く形成されていることから、特に、蓋体側壁部12の上端から下端まで一定形状(例えば、平面視略コの字状)に形成される凹溝に比べて視認性が低下することがなく、収容物を蓋体1を通して良好に見ることができる。
【0038】
天板部11及び蓋体側壁部12は、前記突部129、及び、凹溝14等を除いた大部分が平面とされている。つまり、天板部11及び蓋体側壁部12の大部分に、視認性低下の要因となる凹凸あるいは段部等が存在しないため、天板部11及び蓋体側壁部12における平坦な領域を最も広くすることができるので、視認性が良好となり、特に、容器を上方から見た際に収納物がクリアーに見える。そのため、このように構成された天板部11及び蓋体側壁部12が、顧客に対して収納物の良さを十分に伝える効果を向上できる。
【0039】
蓋体側壁部12の下端周縁と蓋体フランジ部13の内側周縁との結合部分に、下方に凹む環状の周溝15が形成されている。この周溝15を形成することによって、結合部分における強度を高めることができる。
【0040】
蓋体フランジ部13は、蓋体側壁部12の下端の周溝15から外方に突出するように設けられている。図1〜図4に示すように、この蓋体フランジ部13は、縁部131、垂下部132、突出部133からなっている。
【0041】
縁部131は、蓋体1における周方向に高低差を有する斜面として構成されている。具体的には、平面視における四隅であるコーナー部131aから順に谷部131bと山部131cとが交互に設けられており、コーナー部131aと谷部131bとの間、谷部131bと山部131cとの間が勾配のある平面とされている。蓋体1における長辺側には谷部131bが2箇所、山部131cが1箇所設けられており、短辺側には谷部131bが3箇所、山部131cが2箇所設けられている。このように縁部131が周方向に高低差を有する斜面として構成されたことにより、縁部131が高低差のない平坦な面として構成されたものよりも、上下方向の圧縮荷重により蓋体フランジ部13が撓みにくく、蓋体フランジ部13の強度を向上することができる。
【0042】
図1、図2及び図5(a)に示すように、4つのコーナー部131aのうちの対角線上にある2つのコーナー部131a,131aに、外方に向かうにつれ次第に上方に突出する所定幅を有する突部16が形成され、その突部16に下方に菱型状に凹む凹部16Aが形成されており、凹部16Aを押しながら、突出部133を指で持ち上げることにより、蓋体1を容易に開けることができる。
【0043】
なお、縁部131におけるコーナー部131a、谷部131b、山部131cのそれぞれは、後述する容器本体2に設けられた頂部231におけるコーナー部231a、谷部231b、山部231cのそれぞれと略一致するように構成されている。そして、蓋体1を閉じた際に、蓋体1の縁部131における斜面と容器本体2の頂部231の斜面とが上下方向で重なり合うことにより、容器のフランジ部13,23の強度をより向上させることができる。
【0044】
垂下部132は、縁部131の周縁から下方に向かうにつれ広がるように湾曲した第1湾曲部132Aと、この第1湾曲部132Aの下端周縁から下方に向かうにつれ広がるように湾曲した第2湾曲部132Bとからなっている。このように第1湾曲部132Aと第2湾曲部132Bとで構成することによって、一つの湾曲部で構成したものに比べて、垂下部132の強度をより向上させることができる。
【0045】
また、垂下部132の下端部の周方向の一部(角部4箇所と側部中央部4箇所の合計8箇所)には、図3及び図4(a),(b)に示すように、内方に突出した係止部132aが形成されており、係止部132aの上端が後述する容器本体2の突出部233の下端に係合することによって、蓋体1が容器本体1に対して閉じた状態を保持できる。本実施形態では、容器本体2の外側に蓋体1が係合するいわゆる「外係合」タイプとされているが、これとは逆に、容器本体2の内側に蓋体1が係合するいわゆる「内係合」タイプとされていても良いし、「外係合」と「内係合」の両タイプが一つの容器に混在するものであっても良い。
【0046】
突出部133は、垂下部132の下端から水平方向に突出して設けられている。この突出部133の周縁側には、極細の多数の凹凸を形成することで補強するとともに、指などが当たっても、指などを切ることがないようにされている。この凹凸は、側面から拡大して見たときに波形状とされ、多数の山と谷の方向が各辺において幅方向に短く形成され、角部において角部と中心部とを結ぶ方向(放射方向)に平行に形成されている。また、この凹凸は、例えば、平目ローレット目や綾目ローレット目のようなローレット目によって形成され、さらには、滑りにくいようにするため、綾目ローレット目によって形成することが好ましい。
【0047】
[容器本体]
次に、容器本体2について説明する。この容器本体2は、図3、図4及び図6に示すように、収納物を収容可能な複数(図では4つの)に分割された収容部21A,21B,21C,21Dを有する外形が平面視において略長方形状の本体部22と、本体部22に連接され、当該本体部22の上端から順次外方へと延びるように設けられた容器本体フランジ部23とを一体に形成したものである。
【0048】
本体部22を構成する収容部21A,21B,21C,21Dは、図6に示すように、収容体積の大きな2つの第1収容部21A,21Bと、第1収容部21A,21Bよりも収容体積の小さな収容体積を有する第2収容部21C,21Dとからなっている。第1収容部21A,21Bは、底面部21aよりも一段高くなった第2の底面部21bを備え、2つの底面部21a,21bの周縁から上方に向かうにつれ広がるように湾曲した容器本体側壁部を構成する湾曲部21cを有している。また、第2収容部21C,21Dは、底面部21dの周縁から上方に向かうにつれ広がるように湾曲した容器本体側壁部を構成する湾曲部21eを有している。尚、底面部21aと第2の底面部21bとを同一高さにして両者が段差のない一つの平坦面で形成される構成であっても良い。
【0049】
容器本体フランジ部23は、本体部22の上端から外方に突出するように設けられている。図3、図4(a),(b)及び図6に示すように、この容器本体フランジ部23は、内側から順に頂部231、垂下部232、突出部233からなっている。
【0050】
頂部231は、本体部22の上端の開口部2Aから外方向に張り出した部分である。この頂部231は、容器本体2における周方向に高低差を有する斜面として構成されている。この斜面は、蓋体1の縁部131に対応した斜面とされており、平面視における四隅であるコーナー部231aから順に谷部231bと山部231cとが交互に設けられており、コーナー部231aと谷部231bとの間、谷部231bと山部231cとの間が勾配のある面とされている。容器本体2における長辺側には谷部231bが2箇所、山部231cが1箇所設けられており、短辺側には谷部231bが3箇所、山部231cが2箇所設けられている。このように頂部231が周方向に高低差を有する斜面として構成されたことにより、頂部231が高低差のない平坦な面として構成されたものよりも、上下方向の圧縮荷重により容器本体フランジ部23が撓みにくく、容器本体フランジ部23の強度を向上することができる。
【0051】
垂下部232は、図3及び図4(a),(b)に示すように、頂部231の周縁から下方に向かうにつれ広がるように湾曲した第1湾曲部232aと、この第1湾曲部232aの下端周縁から下方に向かうにつれ広がるように湾曲した第2湾曲部232bとからなっている。このように第1湾曲部232aと第2湾曲部232bとで構成することによって、一つの湾曲部で構成したものに比べて、垂下部232の強度をより向上させることができる。
【0052】
突出部233は、垂下部232の下端周縁から外方へと、水平方向に突出して設けられている。この突出部233の周縁側には、極細の多数の凹凸を形成することで補強するとともに、指などが当たっても、指などを切ることがないようにされている。この凹凸は、側面から拡大して見たときに波形状とされ、多数の山と谷の方向が各辺において幅方向に短く形成され、角部において角部と中心部とを結ぶ方向(放射方向)に平行に形成されている。また、この凹凸は、例えば、平目ローレット目や綾目ローレット目のようなローレット目によって形成され、さらには、滑りにくいようにするため、綾目ローレット目によって形成することが好ましい。
【0053】
特に、蓋体2については、天面が平坦面で構成された天板部11に視認性を低下させるような複雑な補助突出部や凹凸、または段部等を設けることなく、少ない補強構造で、顧客等が容器を手に取ろうとしたときに部分的に荷重のかかる部分の強度(ポイント圧縮強度)を著しく向上させることができる。
【0054】
次に、蓋体1の蓋体側壁部12における視認性および外観に関して補足する。突部129については、蓋体1における四隅のコーナー部付近にのみ設けられているため、比較的目立たないものである。また、凹溝14の最上端14aは天板部11に位置しているものの、天板部11の面積に比べて非常に小さいため、これも目立たない。そして、蓋体側壁部12は下広がりのテーパ状となっており、また凹溝14は、8つの角部を基点にして、テーパ状の蓋体側壁部12の下端まで延びる平面視略V字状に形成されているため、凹溝14の第1側面142及び第2側面143が蓋体1の内部に大きく張り出すものとならない。しかも、下方に向けて凹溝14の深さが浅く形成されており、下方側ほど内部への張り出し量が小さくなっている。これらの構成から、蓋体側壁部12においても、優れた視認性および外観を確保することができる。
【0055】
前記の構成により、蓋体1の視認性が良好となるため、収納物がクリアーに見え、収納物の新鮮さやおいしさなどを顧客に十分に伝えることができ、顧客の購買意欲を促進することが期待できるものであって、しかも、強度を向上させた容器を提供できる。
【0056】
そして、強度を著しく向上することができるので、成形に用いる合成樹脂シートのシート厚をより薄くすることが可能となるため、容器を軽量化できる。しかも、蓋体1の平坦面で構成されている天板部11における優れた視認性も損なわれないというメリットがある。
【0057】
容器本体2は、複数(4つ)の底面部21a,21d、これら底面部21a,21dに連接される容器本体側壁部21c,21e、容器本体側壁部21c,21eに連接される容器本体フランジ部23を備えている。そして、このように構成された容器本体2に蓋体1を装着した容器を上下方向に複数個積み重ねることによって、容器本体2のフラットな底面部21a,21dと蓋体1の天板部11のフラットな天面とが面接触するように構成されている。このように蓋体1の天板部11と容器本体2の底面部21a,21dとが面接触するので、下側の容器の蓋体1にかかる重量を、前記面接触で分散させることができるから、蓋体1の変形を効果的に防止することができる。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明に係る包装用容器は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0059】
例えば、本実施形態に係る容器は、蓋体1と容器本体2とをそれぞれ嵌合可能に別々に構成したが、蓋体1と容器本体2とをヒンジ部を介して一体に構成した、いわゆる「フードパック」タイプでも良い。更には、蓋体1と容器本体2とを組で用いずに、いずれかを単独で用いるものとしても良い。
【0060】
また、蓋体1及び容器本体2の平面視における形状は、本実施形態の長方形状の他、正方形であってもよい。また、蓋体1の蓋体側壁部12を構成する壁部121〜123の上部に、垂直に近い角度に形成された立上部121A〜123Aが形成され、これら立上部121A〜123Aの下端から立上部121A〜123Aよりも垂直に対して大きな角度を有する傾斜部121B〜128Bが形成されたものから構成したが、立上部を省略して蓋体1の壁部を、その上端から下端まで同一角度の傾斜面を有する傾斜部から構成して実施することもできる。
【0061】
また、容器本体フランジ部23の頂部231及び蓋体フランジ部13の縁部131については、周方向に高低差を有する斜面として構成されることは必須ではなく、高低差のない平坦な面として構成されたものであっても良い。このように、蓋体フランジ部13の縁部131を高低差のない平坦な面として構成した場合の例を図7に示す。図7において、蓋体フランジ部13の縁部131を高低差のない平坦な面にした以外は、図1と同一であるため、同一の符号を付すとともに、説明は省略する。
【実施例1】
【0062】
最後に、本願の発明者が、本実施形態に係る包装用容器を試作し、圧縮強度を測定する実験を行ったので、これについて説明する。
【0063】
[実施例]
厚み0.23mmのOPS(延伸ポリスチレンシート)を熱成形して図1に示したものと同形状の蓋体1(容器本体1と一体でないもの)を得、これを実施例とした。図1に示す要領にて、試験手段X(15mm口径の円柱のもの)が天板部11における一つのコーナー部の位置に荷重をかけることで、蓋体1の圧縮強度(ポイント圧縮強度)を測定した。測定装置には、AIKOH ENGINEERING(アイコーエンジニアリング)社製の荷重測定機(MODEL 131ODS)を用い、測定装置が荷重を感知してから、天板部11を7mm圧縮した時の荷重を測定して圧縮強度とした。測定された圧縮強度の平均値で677gfであった。
【0064】
[比較例1]
厚み0.23mmのOPS(延伸ポリスチレンシート)を熱成形して、凹溝14に代えて、蓋体1の四隅の蓋体側壁部12にそれの左右方向中央部でかつ上端から上下方向中央部まで形成された補強凹所30(特許第2750501号公報に記載されている補強凹所14)を設けた以外は、図1に示したものと同形状の蓋体(図8参照)を得、これを比較例とした。実施例と同要領で荷重を測定したところ、測定された圧縮強度の平均値で523gfであった。
【0065】
以上により、実施例の蓋体1の平均値が、680gfに対し、比較例の平均値が、520kgfとなり、実施例の蓋体1が比較例に対して約30%の圧縮強度が向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0066】
1…蓋体、2…容器本体、11…天面部、12…蓋体側壁部、13…蓋体フランジ部、14…凹溝、15…周溝、22…本体部、23…容器本体フランジ部、21A〜21D…収納部、30…補強凹所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面の略全体が平坦面で構成される天板部と、該天板部に連接され、下方に向かって拡開する傾斜面を有する蓋体側壁部と、該蓋体側壁部に連接される蓋体フランジ部とを備えた包装用容器の蓋体において、
前記天板部は、略矩形の四隅が直線状に面取りされて略八角形状に構成され、この天板部に連接される前記蓋体側壁部は、少なくとも8つの傾斜面を備え、
前記天板部の8つの角部を基点にして、前記蓋体側壁部の下端まで連続して延びる平面視略V字状の凹溝が設けられ、該凹溝は、下方へ向けて次第にその深さが浅く形成されていることを特徴とする包装用容器の蓋体。
【請求項2】
前記蓋体側壁部の上部には、前記傾斜面よりも垂直に近い角度で立ち上がる立上部が設けられており、前記蓋体側壁部は、前記立上部にて前記天板部に連接されていることを特徴とする請求項1に記載の包装用容器の蓋体。
【請求項3】
底面部と、該底面部に連接される容器本体側壁部と、該容器本体側壁部に連接される容器本体フランジ部とを備えた容器本体、及び、前記容器本体を閉じる請求項1又は2に記載の蓋体を備え、前記容器本体に前記蓋体を閉蓋して上下方向に複数個積み重ねた状態で、前記容器本体の底面部と前記蓋体の天板部とが面接触するように構成されていることを特徴とする包装用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86852(P2013−86852A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229730(P2011−229730)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000239138)株式会社エフピコ (98)
【Fターム(参考)】