説明

包装用積層体、これを用いた包装袋、およびこれを用いた包装体

【課題】本発明は、消炎・鎮痛パップ剤などの貼付剤用包装材料として好適に使用できるように、表面筆記性、腰(剛性)、遮光性、バリア性を具備するとともに環境対応に優れた包装用積層体、これを用いた包装袋、およびこれを用いた包装体を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも紙層(1)と、金属蒸着薄膜層(2)と、水溶性高分子と(a)1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア性被膜層(3)を順次積層し、さらに熱融着可能な樹脂層(4)を設けたことを特徴とする包装用積層体、これを用いた包装袋、およびこれを用いた包装体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面筆記性、腰(剛性)、遮光性、バリア性を具備する包装用積層体、これを用いた包装袋、およびこれを用いた包装体に関するものであり、特に貼付剤用包装材料として好適に使用できる包装用積層体、これを用いた包装袋、およびこれを用いた包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に医薬品の包装に用いられる包装材料は、内容物の有効成分の変質を抑制し、効能を維持するために、該包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他該内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これら気体(ガス)を遮断するガスバリア性を備えることが求められている。
【0003】
例えば、高分子樹脂基材上に無機化合物からなる蒸着層を設け、該無機蒸着層上に水溶性高分子と(a)1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア性被膜を形成して高バリア性を得るガスバリア性積層フィルムおよびこの積層フィルムを用いた包装材料(例えば、特許文献1参照)が提案されている。しかしながらこの提案においては、酸化アルミニウム蒸着膜の例示はあるが、金属アルミニウム蒸着膜上への形成については触れていない。また本特許は高分子樹脂フィルムに関するものであり、紙については触れていない。
【0004】
次に、紙にアルミニウムなどの金属蒸着層を設け、バリア性を付与する技術に関しては、良好な防湿性と酸素バリア性を有する紙包装材(例えば、特許文献2参照)が提案されている。しかしながらこの提案においては、金属蒸着層に水溶性高分子と(a)1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア性被膜を形成することには触れていない。
【0005】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特許第2790054号公報
【特許文献2】特開2002−321307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、消炎・鎮痛パップ剤などの貼付剤用包装材料としては、表面筆記性、腰(剛性)、遮光性、バリア性を考慮し、従来は、例えば「紙/低密度ポリエチレン(LDPE)/アルミ箔/低密度ポリエチレン(LDPE)」からなる包装袋が用いられている。しかしながら、近年アルミニウム箔を積層した積層体からなる包装材料は、さまざまな問題が指摘されている。例えば、使用後の廃棄処分において焼却処理を行うと、そのアルミニウム箔が残査として残ってしまう問題や、焼却炉を傷めてしまう恐れがある問題など、いわゆる廃棄処分にともなう問題が発生している。また、資源再利用の要請から、包装材料を使用後に回収し、材料別に分別し再利用することが要望されているが、上記のようなアルミニウム箔を使用した包装材料では、紙基材、アルミニウム箔、樹脂フィルムなどの各材料をそれぞれに分別回収することが著しく困難であり、再利用を図ることは実質的には不可能である。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、特に消炎・鎮痛パップ剤などの貼付剤用包装材料として好適に使用できるように、表面筆記性、腰(剛性)、遮光性、バリア性を具備するとともに環境対応に優れた包装用積層体、これを用いた包装袋、およびこれを用いた包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも紙層(1)と、金属蒸着薄膜層(2)と、水溶性高分子と(a)1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア性被膜層(3)を順次積層し、さらに熱融着可能な樹脂層(4)を設けたことを特徴とする包装用積層体である。
【0009】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の包装用積層体において、前記金属蒸着薄膜層(2)がアルミニウムからなることを特徴とする包装用積層体である。
【0010】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の包装用積層体において、前記紙層(1)を形成する紙が坪量30〜300g/m2であることを特徴とする包装用積層体である。
【0011】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の包装用積層体を用いたことを特徴とする包装袋である。
【0012】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項4記載の包装袋において、開封口シール部(10)にポリチャック(11a)または粘着テープ(11b)からなる再密封手段(11)を具備した包装袋である。
【0013】
本発明の請求項6に係る発明は、有効成分としてケトプロフェン、フルルビブロフェン、インドメタシン、フェルビナクのいずれか1種以上含有する貼付剤(12)を請求項4又は5記載の包装袋で密封したことを特徴とする包装体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る包装用積層体は、少なくとも紙層と、金属蒸着薄膜層と、水溶性高分子と(a)1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア性被膜層を順次積層し、さらに熱融着可能な樹脂層を設けることにより、表面筆記性、腰(剛性)、遮光性、バリア性、環境対応性を具備するものである。また該包装用積層体を用いた包装袋は、開封口シール部にポリチャックまたは粘着テープからなる再密封手段を具備することにより、医薬品などの内容物を劣化させることなく長期保存を可能とするものである。さらに該包装袋を用いて貼付剤を密封した包装体は、該貼付剤の有効成分の変質を抑制し、効能を維持することができ、使用後の廃棄処理も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明に係る包装用積層体(A)の層構成の1実施例を示す側断面図であり、図2は本発明に係る包装袋(B)の開封口シール部(10)に再密封手段(11)を設けた状態の1実施例を示す平面図であり、図3は本発明に係る包装袋(B)の開封口シール部
(10)に再密封手段(11)を設けた状態のその他の実施例を示す平面図であり、図4は本発明に係る包装体(C)の1実施例を示す平面図である。
【0017】
本発明に係る包装用積層体(A)は、図1に示すように、少なくとも紙層(1)と、金属蒸着薄膜層(2)と、水溶性高分子と(a)1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア性被膜層(3)を順次積層し、さらに熱融着可能な樹脂層(4)を設けたことを特徴とする包装用積層体(A)である。
【0018】
前記紙層(1)を形成する紙は、木材などの植物原料を化学的または機械的に処理してセルロースを取り出した状態のパルプで製造した晒クラフト紙、純白ロール紙、上質紙、アート紙、コート紙などを使用することができる。その際の坪量30〜300g/m2であることが好ましい。坪量がこれより小さいと十分な腰(剛性)および包装袋(B)として必要な強度が得られない。また、これより大きいと包装袋(B)としての取り扱い性に劣る。
【0019】
前記金属蒸着薄膜層(2)を形成する金属は、アルミニウム、ニッケル、クロムなど蒸着に使用することができる金属ならば、特に制約されないが、コスト面などを考慮するとアルミニウムが好ましい。
【0020】
このような金属蒸着薄膜層(2)を形成する方法は、真空蒸着法、スパッタリング法などを使用することができるが、生産性などを考慮すると、真空蒸着法が好ましい。
【0021】
前記真空蒸着法は、被蒸着体の形態から、3つの方式があり、1)バッチ方式:成形品の蒸着方式、2)巻き取り式半連続方式:ロール状の紙やプラスチックフィルム(以下、ウェブと表現する)が対象で真空系の中で巻き出し・蒸着・巻き取り後、大気系に再度戻し、蒸着製品を取り出す方式、3)巻き取り式完全連続方式:ロール状のウェブが対象でアンワインダー(巻き出し装置)とリワインダー(巻き取り装置)を大気系に配置し、蒸着ドラムや蒸発源を真空系に配置してロール状のウェブに蒸発物質を蒸着する方式であって、一般的にair−to−air方式と呼ばれる完全連続方式で生産性が高い特徴がある方式である。
【0022】
ロール状のウェブに蒸発物質を蒸着する場合は、特に巻き取り式半連続方式が普及しており、その巻き取り式真空蒸着装置の構成要素と作業工程の概略、更に真空蒸着装置の内部構造について記述する。先ず、構成要素は、ロール状のウェブ、蒸発源、蒸発物質、蒸着ドラム、真空系統、アンワインダー(巻き出し装置)、リワインダー(巻き取り装置)、ガイドロール等である。
【0023】
次に作業工程の概略について記述すると、先ず前準備として真空蒸着装置の扉を開け、ロール状のウェブをアンワインダー(巻き出し装置)にセットし、アンワインダーと蒸着ドラム間に配置されているガイドロールを介して、前記ウェブを蒸着ドラムまで走行させ、更にリワインダー(巻き取り装置)との間に配置されているガイドロールを介して、リワインダー(巻き取り装置)に巻き取り、前記ウェブへの蒸発物質の蒸着準備が終了する。次に、真空蒸着装置の扉を閉じて、真空ポンプにより、真空蒸着装置内の真空吸引定圧室と隔壁により分割された真空蒸着室を所定の真空環境にして、アンワインダーから前記ウェブを繰り出し、ガイドロールを介して走行させた前記ウェブに、蒸着ドラムの下部に配置されている蒸発源から蒸発物質を加熱蒸発させて前記ウェブに蒸着させる。前記蒸着ドラムは冷却されているので前記ウェブに蒸発物質を再結晶化させて固着させ、更にリワインダー側のガイドロールを介して蒸着された前記ウェブはリワインダーに巻き取られる

【0024】
真空蒸着装置の内部構造は、真空吸引定圧室と真空蒸着室に隔壁で分割されており、真空吸引定圧室はアンワインダー、ガイドロール、張力制御装置、速度制御装置、位置制御装置、蒸着ドラムの一部、リワインダー等が配置されている。真空蒸着室は蒸着ドラムの一部と蒸発源とその加熱装置等が配置されており、真空蒸着装置本体の周辺に付属して配置されている真空ポンプにより、例えば、真空吸引定圧室は真空度が1×100MPa程度、隔壁を介して設けた真空蒸着室は1×10-2MPa(SI単位)程度にセットされる。2つに室が隔壁で分割されているので、真空吸引定圧室で前記ウェブから発生したガスなどの不純物(ダスト)は、真空蒸着室での蒸着時に悪い影響を与えることは少ない。また、逆に真空蒸着室に配置されている蒸発源からの放射熱は、真空吸引定圧室への影響は少ないので前記ウェブへの熱の影響は少ない。
【0025】
また、前記真空蒸着法も、加熱方法により、1)間接抵抗法、2)直接抵抗加熱法(ワイヤフィード法)、3)高周波誘導加熱法、4)電子ビーム法(Electoron Beam、略してEB法)の4つの方法があるが、蒸発物質がアルミニウム以外の高融点金属、絶縁性金属酸化物などにも使用可能なエネルギー変換効率の良い電子ビーム法が最適である。巻き取り式電子ビーム真空蒸着法は、蒸発物質に直接、電子ビームを照射し、蒸発物質表面上をスキャンすることで、蒸発物質表面を加熱する方法で、電子ビームがあたった部分でエネルギーを変換し、蒸発物質を蒸発させる方法である。
【0026】
該金属蒸着薄膜層(2)の厚みは、蒸着紙の最終用途によって、適宜選択されるが、20〜200nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が20nm未満では均一な膜が設けられないので、十分なガスバリア性、遮光性が得られず、膜厚が200nmを越えると、柔軟性がなくなり、折り曲げ、引張りなどの外的要因により、蒸着膜に亀裂や剥離が発生しやすくなるので好ましくない。
【0027】
尚、前記紙層(1)の蒸着面側に目止め層(図示せず)を設けると、該紙層(1)面が平滑になり、前記金属蒸着薄膜層(2)の形成適性が向上する。該目止め層を形成する目止め剤(アンカーコート剤)としては、アミノアルキッドなどの熱硬化型の樹脂やアクリル系樹脂が使用される。
【0028】
前記ガスバリア性被膜層(3)は、水溶性高分子と(a)1種以上の金属などのアルコキシドまたは/およびその加水分解物または(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤からなる。
【0029】
すなわち、水溶性高分子と塩化錫を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、或いはこれに金属などのアルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行なったものを混合した溶液を該金属蒸着薄膜層(2)上に塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア性被膜層(3)を設けると、該金属蒸着薄膜層(2)に生じるピンホール、クラック、粒界などの欠陥或いは微細孔を充填、補強することで、緻密構造が形成されるため、ガスバリア性がより一層向上して被包装体であるハップ剤の有効成分の揮散が防止できる。また可撓性も向上して変形に耐えられるようになる。
【0030】
次に、コーティング剤に含まれる各成分について以下に詳細に説明する。前記水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びアルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。特に、ポリビニルアルコール(PVA)は、ガスバリア性が優れているので好ましく、ここでいうポリビニルアルコール(PVA)は、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるものである。
【0031】
前記ポリビニルアルコール(PVA)としては、例えば酢酸基が数十%残存している、所謂部分鹸化ポリビニルアルコール(PVA)から酢酸基が数%しか残存していない完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA)などを含み、特に限定されるものではない。
【0032】
前記アルコキシドは、金属などのアルコキシドである。一般式、M(OR)n(式中、M:Si、Zr、Ti、Alなどの金属元素、R:CH3、C25などのアルキル基、n:金属元素の酸化数)で表される化合物で、例えば、アルコキシシラン化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタニウムアルコキシド化合物、アルミニウムアルコキシド化合物、その他などを使用することができる。
【0033】
具体的には、テトラメトキシシラン[Si(O−CH34]、テトラエトキシシラン[Si(O−C254]、テトライソプロポキシシラン[Si(O−iso−C374]、テトラブトキシシラン[Si(O−C494]、ジメチルジメトキシシラン[(H3C)2Si(O−CH32]、トリメトキシメチルシラン[H3CSi(O−CH33]、ジメチルジエトキシシラン[(H3C)2Si(O−C252]などのアルコキシシラン化合物、テトラメトキシジルコニウム[Zr(O−CH34]、テトラエトキシジルコニウム[Zr(O−C254]、テトライソプロポキシジルコニウム[Zr(O−iso−C374]、テトラブトキシジルコニウム[Zr(O−C494]などのジルコニウムアルコキシド化合物、テトラメトキシチタニウム[Ti(O−CH34]、テトラエトキシチタニウム[Ti(O−C254]、テトライソプロポキシチタニウム[Ti(O−iso−C374]、テトラブトキシチタニウム[Ti(O−C494]などのチタニウムアルコキシド化合物、トリメトキシアルミニウム[Al(O−CH33]、トリエトキシアルミニウム[Al(O−C253]、トリイソプロポキシアルミニウム[Al(O−iso−C373]、トリブトキシアルミニウム[Al(O−C493]などのアルミニウムアルコキシド化合物などを挙げることができる。中でも、加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定なテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムなどが好ましい。
【0034】
前記塩化錫は、塩化第一錫、塩化第二錫、或いはそれらの混合物であり、またこれら塩化錫の無水物及び水和物なども使用できる。
【0035】
前述した各成分を単独またはいくつかを組み合わせてコーティング剤に加えることができ、さらに該コーティング剤のガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を、必要に応じて加えることができる。
【0036】
例えば、該コーティング剤に加えられるイソシアネート化合物としては、その分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有するものであり、例えばトリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートなどのモノマー類と、これらの重合体、誘導体が挙げられる。
【0037】
該コーティング剤を金属蒸着薄膜層(2)上に形成する方法は、グラビアロールコーティング方式、リバースロールコーティング方式、エアナイフコーティング方式などの公知の方法で塗布した後、加熱、乾燥して形成される。その際の該ガスバリア性被膜層(3)の厚みは、乾燥後の厚さが、0.01〜50μmの範囲内にあることが好ましい。厚さが、0.01μm以下では、十分なガスバリア性が得られず、50μm以上の場合は、塗膜にクラックが入り易く、ガスバリア性に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0038】
次に、前記熱融着可能な樹脂層(4)としては、特に制限はないが、例えば、ポリオレ
フィン系樹脂である低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、環状ポリオレフィンなどを使用することができる。さらにポリエステル系シーラント材やエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)系シーラント材を使用するとメントールなどの貼付剤中の浸透性成分のシーラント材への吸着を防止することが可能である。また、該樹脂層(4)の厚みは、強度、加工性を考慮すると、15〜200μmの範囲内であることが好ましく、30〜60μmの範囲内がより好ましい。
【0039】
該樹脂層(4)を該ガスバリア性被膜層(3)上に形成する方法は、例えば、エクストルージョンラミネーション方法、ドライラミネーション方法、ノンソルベントドライラミネーション方法、ホットメルトラミネーション方法などの公知の方法を使用することができる。
【0040】
前記エクストルージョンラミネーション方法は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を加熱し、シリンダーと呼ばれる筒の中で溶解し、スクリューで圧力をかけて押し出し、該シリンダーの先端部にあるTダイスと呼ばれる細いスリットからカーテン状に溶解した樹脂が押し出されフィルム状となってラミネーションされる方法である。
【0041】
前記ドライラミネーション方法は、被ラミネーション体上に接着剤を塗布するコーティング部、乾燥装置、ニップローラー部の3つのセクションと、巻き出し、巻き取り、及びテンションコントロールシステムから構成されている。該コーティング部は、一般的にグラビアロールコーティング方式、又はリバースロールコーティング方式を採用している。
【0042】
前記ラミネーション用接着剤は、ポリウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリアクリル系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他などのラミネート用接着剤などを使用することができる。該接着剤には、溶剤型接着剤、或いは無溶剤型接着剤が使用されるが、無溶剤型接着剤を使用する場合は、乾燥装置は不要であり、ノンソルベントドライラミネーション方法と呼んでいる。
【0043】
前記ホットメルトラミネーション方法は、加熱溶融したエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などのホットメルト接着剤を被ラミネーション体上に塗工し、直ちに、他のフィルムをラミネートする方法である。
【0044】
本発明の包装用積層体(A)は、他に印刷層(図示せず)を紙層(1)上に設けることができる。該印刷層を形成する印刷インキとしては、インキに色彩を与える顔料や染料などからなる色材と該色材を微細な粒子に分散・保持しつつ、被印刷体に固着させる樹脂と該樹脂を安定して溶解し、該顔料や染料などの分散性、インキの流動性を保持し、かつ印刷の版からインキの適正量を転移できる溶剤とから構成されるビヒクル、更に色材の分散性、発色性向上や沈殿防止、流動性の改良を目的に界面活性剤などからなる助剤から形成されているが、特に色材は、耐候性の良い顔料が好ましい。
【0045】
該印刷層を設ける印刷方式は、例えば、グラビア印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式など公知の印刷方式を使用できるが、鉄製の円筒(シリンダー)表面上に銅メッキを施して下地を形成し、該銅メッキ面上に剥離層を設け、更に銅メッキをして、その表面を鏡面状に研磨した銅面に彫刻方式や腐食方式により、凹部(セル)を作成し、該セル内の印刷インキを該紙層(1)に転移させ、調子物でもカラフルに印刷ができ、且つ訴求効果も高いグラビア印刷方式が好ましい。
【0046】
前述した包装用積層体(A)は、ヒートシールなどのシール方式で熱融着により製袋さ
れ、本発明に係る包装袋(B)が得られる。該包装袋(B)は、図2及び図3に示すように、開封口シール部(10)にポリチャック(11a)または粘着テープ(11b)からなる再密封手段(11)を具備した包装袋(B)である。
【0047】
これらの包装袋(B)に有効成分としてケトプロフェン、フルルビブロフェン、インドメタシン、フェルビナクのいずれか1種以上含有する貼付剤(12)が充填、包装され、図4に示すように、本発明に係る包装体(C)が得られる。
【0048】
以上のように、本発明に係る包装用積層体(A)は、少なくとも紙層(1)と、金属蒸着薄膜層(2)と、水溶性高分子と(a)1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア性被膜層(3)を順次積層し、さらに熱融着可能な樹脂層(4)を設けることにより、表面筆記性、腰(剛性)、遮光性、バリア性、環境対応性を具備するものである。また該包装用積層体(A)を用いた包装袋(B)は、開封口シール部(10)にポリチャック(11a)または粘着テープ(11b)からなる再密封手段(11)を具備することにより、医薬品などの内容物を劣化させることなく長期保存を可能とするものである。さらに該包装袋(B)を用いて貼付剤(12)を密封した包装体(C)は、該貼付剤(12)の有効成分の変質を抑制し、効能を維持することができ、使用後の廃棄処理も容易である。
【0049】
以下に、本発明に係わる包装用積層体、これを用いた包装袋、およびこれを用いた包装体について、具体的に実施例を挙げて、さらに詳細に説明をする。
【実施例1】
【0050】
本発明に係る包装用積層体(A)は、図1に示すように、最外層の紙層(1)には、坪量84.9g/m2の晒しクラフト紙を使用し、該紙層(1)上に目止め層(図示せず)として、アクリル系樹脂を施した。該目止め層上に電子ビーム法(電子線加熱方式)の真空蒸着装置によって、金属アルミニウムを蒸着し、厚み40nm程度の金属蒸着薄膜層(2)を積層した。次に、テトラエトキシシラン10.4gに0.1N−塩酸を89.6g加え、30分間撹拌し、加水分解させた固形分3.0重量%(SiO2換算)の加水分解溶液とポリビニルアルコール(PVA)の3.0重量%の水/イソプロピルアルコール(90/10)溶液を配合比(重量%)60/40で混合した組成からなるコーティング剤をグラビアロールコーティング方法により塗布し、乾燥機で120℃、1分間乾燥させ、膜厚約0.3μmのガスバリア性被膜層(3)を積層した。引き続き、該ガスバリア性被膜層(3)上にポリウレタン系接着剤(三井武田ケミカル株式会社製A525/A52)を3.5g/m2(固形分)塗布し、接着剤層(図示せず)を設け、該接着剤層を介して、シール面となる最内層の樹脂層(4)には、厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(L−LDPE)(出光ユニテック株式会社製LX−711C)を使用し、ドライラミネーション方法により、積層して、包装用積層体(A)を得た。
【0051】
次に、前記巻取状の包装用積層体(A)原反を、スリッターを使用して所定の幅にスリットした該包装用積層体(A)をヒートシール方式で最終製品形態が4方シール型製袋品になるように両サイドと底部を製袋して、同時に、図2に示すように、開封口シール部(10)にポリチャック(11a)を取り付けて再密封可能な包装袋(B)を得た。
【0052】
該包装袋(B)に有効成分としてケトプロフェンを含有するシート状の貼付剤(12)を充填、包装し、図4に示すように、貼付剤(12)入りの包装体(C)を得た。
【0053】
このようにして得られた本発明に係わる包装用積層体(A)は、文字などを筆記する表面が紙面であるので表面筆記性が良く、厚みのある紙を使用しているので腰(剛性)があ
り、金属蒸着薄膜層(2)とガスバリア性被膜層(3)により、遮光性、酸素バリア性などにも優れていた。また該包装用積層体(A)を用いた包装袋(B)は、開封口シール部(10)にポリチャック(11a)からなる再密封手段(11)を具備しているので、内容物を劣化させることなく長期保存が可能となった。さらに該包装袋(B)を用いた貼付剤(12)入りの包装体(C)は、該貼付剤(12)の有効成分であるケトプロフェンの揮散、変質が抑制され、効能を維持することができた。また使用後の廃棄処理も容易であった。
【実施例2】
【0054】
本発明に係る包装用積層体(A)は、図1に示すように、最外層の紙層(1)には、坪量104.7g/m2の純白ロール紙を使用し、該紙層(1)上に目止め層(図示せず)として、アクリル系樹脂を施した。該目止め層上に電子ビーム法(電子線加熱方式)の真空蒸着装置によって、金属アルミニウムを蒸着し、厚み50nm程度の金属蒸着薄膜層(2)を積層した。次に、テトラエトキシシラン10.4gに0.1N−塩酸を89.6g加え、30分間撹拌し、加水分解させた固形分3.0重量%(SiO2換算)の加水分解溶液と塩化第一錫(無水物)の3.0重量%の水/エタノール溶液(水:エタノール重量比で50:50)とポリビニルアルコール(PVA)の3.0重量%の水/イソプロピルアルコール(水/イソプロピルアルコール重量比で90/10)溶液を配合比(重量%)40/30/30で混合した組成からなるコーティング剤をグラビアロールコーティング方法により塗布し、乾燥機で120℃、1分間乾燥させ、膜厚約0.3μmのガスバリア性被膜層(3)を積層した。引き続き、該ガスバリア性被膜層(3)上にポリウレタン系接着剤(三井武田ケミカル株式会社製A525/A52)を3.5g/m2(固形分)塗布し、接着剤層(図示せず)を設け、該接着剤層を介して、シール面となる最内層の樹脂層(4)には、厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(L−LDPE)(出光ユニテック株式会社製LX−711C)を使用し、ドライラミネーション方法により、積層して、包装用積層体(A)を得た。
【0055】
次に、前記巻取状の包装用積層体(A)原反を、スリッターを使用して所定の幅にスリットした該包装用積層体(A)をヒートシール方式で最終製品形態が4方シール型製袋品になるように両サイドと底部を製袋して、同時に、図2に示すように、開封口シール部(10)に粘着テープ(11b)を取り付けて再密封可能な包装袋(B)を得た。
【0056】
該包装袋(B)に有効成分としてケトプロフェン及びフルルビブロフェンを含有するシート状の貼付剤(12)を充填、包装し、図4に示すように、貼付剤(12)入りの包装体(C)を得た。
【0057】
このようにして得られた本発明に係わる包装用積層体(A)は、文字などを筆記する表面が紙面であるので表面筆記性が良く、厚みのある紙を使用しているので腰(剛性)があり、金属蒸着薄膜層(2)とガスバリア性被膜層(3)により、遮光性、酸素バリア性などにも優れていた。また該包装用積層体(A)を用いた包装袋(B)は、開封口シール部(10)に粘着テープ(11b)からなる再密封手段(11)を具備しているので、内容物を劣化させることなく長期保存が可能となった。さらに該包装袋(B)を用いた貼付剤(12)入りの包装体(C)は、該貼付剤(12)の有効成分であるケトプロフェン及びフルルビブロフェンの揮散、変質が抑制され、効能を維持することができた。また使用後の廃棄処理も容易であった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る包装用積層体の層構成の1実施例を示す側断面図である。
【図2】本発明に係る包装袋の開封口シール部に再密封手段を設けた状態の1実施例を示す平面図である。
【図3】本発明に係る包装袋の開封口シール部に再密封手段を設けた状態のその他の実施例を示す平面図である。
【図4】本発明に係る包装体の1実施例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0059】
1・・・紙層
2・・・金属蒸着薄膜層
3・・・ガスバリア性被膜層
4・・・樹脂層
10・・・開封口シール部
11・・・再密封手段 11a・・・ポリチャック 11b・・・粘着テープ
12・・・貼付剤
A・・・包装用積層体
B・・・包装袋
C・・・包装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも紙層と、金属蒸着薄膜層と、水溶性高分子と(a)1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア性被膜層を順次積層し、さらに熱融着可能な樹脂層を設けたことを特徴とする包装用積層体。
【請求項2】
前記金属蒸着薄膜層がアルミニウムからなることを特徴とする請求項1記載の包装用積層体。
【請求項3】
前記紙層を形成する紙が坪量30〜300g/m2であることを特徴とする請求項1又は2記載の包装用積層体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の包装用積層体を用いたことを特徴とする包装袋。
【請求項5】
開封口シール部にポリチャックまたは粘着テープからなる再密封手段を具備した請求項4記載の包装袋。
【請求項6】
有効成分としてケトプロフェン、フルルビブロフェン、インドメタシン、フェルビナクのいずれか1種以上含有する貼付剤を請求項4又は5記載の包装袋で密封したことを特徴とする包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−142597(P2006−142597A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334217(P2004−334217)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】