説明

包装用積層体のための障壁層とそのような障壁層を備える包装用積層体

本発明は、障壁層と、障壁層を備える包装用積層体と障壁層を製造する方法に関する。障壁層は、セルロースベースの加水分解物から製造される。障壁層は、リグニンとオリゴ糖類または多糖類を含む。リグニンとオリゴ糖類または多糖類は、マトリクス中で互いに、かつ少なくとも1つの共存成分と少なくとも部分的に共有結合されている。共存成分は、1次結合と2次結合のうちの少なくとも1つの結合によってリグニンとオリゴ糖類または多糖類に結合されている。さらに、本発明は、包装用積層体で作られた包装物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用積層体のための障壁層、障壁層を備える包装用積層体、包装用積層体を含む包装物(パッケージ)、および包装用積層体のための障壁層の製造方法に関する。本障壁層は、高湿度でさえ良好なガス障壁特性を示す。
【背景技術】
【0002】
包装物(package)の重要な機能は、内容物を保護することである。したがって、一般的に包装物を形成する包装用積層体は、ガスを透過しない障壁層を備える。ガスを透過しない障壁層の重要な用途は、食品を酸素から保護したい食品工業である。酸素が透過すると食品のある成分が酸化し、品質と味が劣化し、最悪の場合には、食品を処分しなければならなくなる。食品の保護は、ガスを透過しないか、またはガス透過に対して抵抗する障壁層によって達成されるかもしれない。食品が窒素などの保護環境中に包まれている場合には、包装物からのガスが漏れるのを防ぐこともまた想定されるかもしれない。包装物の材料は、取り扱いを容易にするように、さらに、好ましくは、コストが高くならないように、可撓性であり機械的に耐久性があることが好ましい。
【0003】
今日の環境面を配慮する社会では、再生可能でない材料を用いずに、代わりに再生可能な材料に切り替えたいという要望がある。したがって、汎用の障壁層を、例えば、金属箔または石油ベースのポリマーなどの再生可能でないポリマーから作られたプラスチックの汎用の障壁層を、より環境に優しい代替の障壁層に交換したいという要望がある。
【0004】
包装物は、例えば、折りたたんでシールすることによって包装用積層体にしてもよい。この場合には、ジョイント部分が形成され、包装用積層体の内部は、外部環境及び包装物の内容物のうちの少なくとも1つにさらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願第WO2008/103123号
【特許文献1】国際特許出願第PCT/EP2008/066148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
包装物とその障壁層は、例えば、あらゆる温度と湿度の環境中で機能しなければならないので、障壁層が高湿度に対応できることもまた重要である。再生可能な原料で作られている既存材料は、高湿度において、好ましくないガス透過性が増加するので、特に、酸素透過性が増加するので、包装物としてよく機能するためには、包装物の材料は、酸素透過性が増加することにも対応できなければならない。
【0007】
冷たい包装物をより暖かい環境に置くと、例えば、包装物を冷蔵庫から取り出して常温の環境に置くと、包装物の外部に結露を形成するかもしれない。その時、結露がジョイント部を通って障壁層に浸透して、障壁層を破損するという危険性がある。したがって、再生可能な障壁層は、一般に、親水性であり、湿度に敏感であるので、障壁層のガスの保護機能を維持するために、高湿度にさらされるときでさえよく機能することが好ましい。また、例えば、電気を使用せずに冷蔵するために、氷水中に貯蔵される包装物の例もある。この場合には、包装物は水中に置かれるので、ジョイント部分の周囲は、水にさらされる。
【0008】
グレンダール他の国際特許出願第WO2008/103123号は、可塑剤、セルロース、オリゴマーまたはポリマーから成るグループから選択された少なくとも1つの成分と、ヘミセルロースとを含む高分子膜または高分子被覆物を記載している。高分子膜または高分子被覆物は、液体と湿気のうちの少なくとも1つに対する抵抗性を増加し、高分子膜または高分子被覆物を形成する前か、高分子膜または高分子被覆物を形成中に、前記少なくとも1つの成分とヘミセルロースとのうちの少なくとも1つと混ざるか、反応するか、または、混ざって反応する、添加剤及び反応剤のうちの少なくとも1つをさらに含んでいる。
【0009】
しかしながら、国際特許出願第WO2008/103123号による高分子膜または高分子被覆を形成するためには、ヘミセルロースがバイオマス中に一般的に存在するときでさえ、バイオマスは、通常、ヘミセルロースを分離するための処理を通過し、ヘミセルロースは、その後で使用される。国際特許出願第WO2008/103123号の5頁、4行目には、例として、水と水溶性アルカリの抽出によってキシランを分離することが記載されている。そのような分離工程は、時間と費用がかかる。
【0010】
ダールマンらの国際特許出願第PCT/EP2008/066148号には、木材の水熱処理によって得られる木材の加水分解物を利用する方法が記載されている。この方法は、木材を準備する工程と、木材を水熱処理する工程とを含んでおり、木材の加水分解物と木材の残渣が形成される。木材の加水分解物は、乾燥物の主成分としてオリゴ糖類と多糖類とを含む。この方法は、さらに、木材の加水分解物を低分子部分と高分子部分とに分離する工程を含む。実施例は、高分子部分で作られた膜と被覆とを開示している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記説明した欠点のうちの少なくともいくつかは、本発明の障壁層と包装用積層体によって減らすことができる。本発明の1つの態様によると、改良された特性を有する包装用積層体と包装用積層体の障壁層とを提供する。
【0012】
包装用積層体は、障壁層を備えており、障壁層は、セルロースベースの加水分解物(cellulose-based hydrolysate)で作られている。障壁層は、リグニンと、オリゴ糖類または多糖類(oligo-andpolysaccharides)とを含み、前記リグニンと、前記オリゴ糖類または多糖類とは、マトリクス中で互いに少なくとも部分的に共有結合し、前記リグニンと、前記オリゴ糖類または多糖類とは、少なくとも1つの共存成分(co-component)と、少なくとも部分的に共有結合している。マトリクスは、好ましくは、水に不溶性である。共存成分は、1次結合と2次結合のうちの少なくとも1つによって、前記リグニンと、前記オリゴ糖類または多糖類と、に結合している。
【0013】
セルロースベースの加水分解物を使用することによって、再生可能な原料から作られる障壁層を作ることができる。本発明の障壁層は、高湿度で、特に、%RHで表示される高い相対湿度中でさえよく機能する。
【0014】
本障壁層は、リグニンと、オリゴ糖類または多糖類と、を含むので、国際特許出願第WO2008/103123号に記載されたヘミセルロースの分離工程のような余分な工程を全く必要としないので、時間とコストを節約することができるかもしれない。
【0015】
本障壁層は、ASTM(米国材料試験協会)のD3985−95に規定された方法に基づいて、1気圧、すなわち、大気圧で、かつ80%RHの湿度で、かつ50μm未満の障壁層の厚さにおいて測定された、50cm3/m2/24hr未満の酸素透過度を示し、好ましくは、45cm3/m2/24hr未満の酸素透過度を示し、最も好ましくは、40cm3/m2/24hr未満の酸素透過度を示す。
【0016】
本発明の障壁層では、適切な障壁特性は、膜または被覆物の薄い層によって達成される。
【0017】
セルロースベースの加水分解物は、例えば、木ベースの加水分解物であり得る。適切な木ベースのセルロースベースの加水分解物(wood-based cellulose-based hydrolysate)は、木材の加水分解物である。木材の加水分解物は、汎用のパルプ工業プロセスから得られるので、再生可能であるのと同様に、この原料は入手しやすい。
【0018】
本発明の実施例では、パルプ化工程などの木材の精錬プロセスからの処理廃水または廃水から分離された加水分解物を利用する。上記説明したように、先行技術技術の障壁層の基礎を形成する高純度のヘミセルロースを得るための余分の分離工程を必要としない。加水分解物は、例えば、製紙工程で使用されるセルロース成分から分離されるが、まだかなりの量の天然のリグニン−炭水化物複合体を含んでおり、酸素などのガスがマトリクスを通過して拡散するのを妨ぐのに貢献する共有結合を含んでいる。
【0019】
実施例では、得られる木材の加水分解物は、異なる部分に、例えば、高分子部分と低分子部分とに分離されるかもしれない。そのような高分子部分の例は、木材の加水分解物である。木材の加水分解物は、80重量%未満のオリゴ糖類及び多糖類と、1〜20重量%のリグニンと、0.01〜5重量%のセルロースベースの残渣と、を含むかもしれない。残渣は、灰分及びモノマーであるかもしれない。そのような木材の加水分解物の高分子部分は、高分子部分自身がセルロースベースの加水分解物を構成し、上記説明されたような障壁層を製造するのに十分な基礎(basis)となる。あるいはまた、得られる木材の加水分解物は、高分子の糖類と低分子の糖類の両方を含んでいるので、そのままで、すなわち、分別なしに使用されるかもしれない。
【0020】
セルロースベースの加水分解物の構成分子間の相互作用ネットワークの適切なバランスを得るために、及び適切なバランスを高めるために、1つまたはそれ以上の共存成分(co-component)が加えられる。これらの共存成分の性質は、共存成分が再生可能なものであり、かつ、木材の加水分解物と共存成分との間で1次結合及び2次結合のうちの少なくとも1つの結合が意図的に形成されるような官能基を生成するように、慎重に選ばれる。1次結合及び2次結合は、障壁層に所望の性質を与える。共存成分は、通常は、オリゴマーまたはポリマーである。適切な共存成分は、多糖類であり、例えば、キトサン、微細に繊維化されたセルロース(micro-fibrillated cellulose)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)のうちの少なくとも1つである。共存成分は、有機的カップリング反応によってオリゴ糖類または多糖類と結合するかもしれない。
【0021】
障壁層は、さらに可塑剤を含むかもしれない。可塑剤は、所望の機械的性質、例えば、所望の弾性及び柔軟性を障壁層に与える機会を与える。可塑剤は、通常は、低分子またはオリゴマーであり、オリゴマーの脂質やポリオールなどである。
【0022】
包装用積層体は、酸素に対して特に敏感である製品のための包装物用の容器として作られる。包装用積層体は、基層と、基層の1つの側に第1外側層と、基層の他の側に第2外側層と、基層と第1外側層との間にガス障壁として機能するように適合されている障壁層と、を含む。障壁層は、リグニンと、オリゴ糖類または多糖類とを含み、前記オリゴ糖類または多糖類は、マトリクス中で互いに少なくとも部分的に共有結合されており、障壁層は、さらに、少なくとも1つの共存成分を含む。マトリックスは、好ましくは、本質的に水に不溶性である。共存成分は、1次結合と2次結合のうちの少なくとも1つの結合によって、リグニンと、オリゴ糖類または多糖類と、に結合されている。
【0023】
基層は、包装物に機械的安定性を与える。基層は、紙か、または段ボール層を含むかもしれない。それにより、全て再生可能な原料で作られた包装物を作ることができる。
【0024】
外側層は、好ましくは、液体が浸透しない。外側層は、液体が浸透しない層を提供するポリオレフィンを含むかもしれない。
【0025】
本発明の一態様では、包装用積層体は、酸素に感受性の製品、特に、酸素に感受性の食品用の包装物を作るために利用される。包装物は、上記の包装用積層体のシート形状かまたはウェブ形状の半加工品(blank)を折って熱シールすることによって製造される。
【0026】
本発明の一態様では、障壁層の製造方法を提供する。障壁層の製造方法は、リグニンと、オリゴ糖類または多糖類と、を含むセルロースベースの加水分解物を準備する工程を有し、前記リグニンと、前記オリゴ糖類または多糖類とは、マトリクス中で互いに少なくとも部分的に共有結合しており、マトリックスは、好ましくは、本質的に水に不溶性である。本製造方法は、さらに、少なくとも1つの共存成分を加える工程と、前記少なくとも1つの共存成分を、リグニンと、オリゴ糖類または多糖類と、に1次結合及び2次結合のうちの少なくとも1つの結合によって、結合させる工程とを有する。
【0027】
上記の障壁層の製造方法によると、国際特許出願第WO2008/103123号に記載されたヘミセルロース分離工程のような余分な工程を全く必要としないので、時間とコストが節約されるかもしれない。
【0028】
1つの実施例では、セルロースベースの加水分解物を、異なる部分に、例えば、高分子部分と低分子部分とに分離するための追加の工程があるかもしれない。しかしながら本発明のこの態様の方法では、分別工程なしでも適切に機能するので、分別工程はかならずしも必要ではない。
【0029】
共存成分は、好ましくは、障壁層が、かなり高湿度で実質的に低い酸素透過度を示すように選択される。本障壁層は、例えば、80%RHの湿度で、かつ1気圧で、かつ障壁層が50μm未満の厚さにおいて、ASTM(米国材料試験協会)のD3985−95に規定された方法に基づいて測定された、50cm3/m2/24hr未満の酸素透過度を示すように、好ましくは、45cm3/m2/24hr未満の酸素透過度を示すように、最も好ましくは、40cm3/m2/24hr未満の酸素透過度を示すように選択される。
【0030】
本障壁層の製造方法は、リグニンと、オリゴ糖類または多糖類の量と、準備されたセルロースベースの加水分解物中のリグニンと、オリゴ糖類または多糖類との官能基の量と種類と、のうちの少なくとも1つを評価し、その評価に基づいて適切な共存成分を選択する追加の工程を更に含むかもしれない。評価は、定量分析または定性分析によってなされるかもしれない。
【0031】
本法の実施例において、1次結合及び2次結合のうちの少なくとも1つの結合は、有機カップリング反応によって得られるかもしれない。
【0032】
さらに、障壁層の機械的性質に影響を及ぼすことができるように、可塑剤が追加の工程で加えられるかもしれない。
【0033】
本明細書における用語「層」は、膜または被覆物などの本質的に連続する物質の層を指すものとする。
【0034】
本発明は、添付の図を参照してさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の障壁層を備える包装用積層体の断面図である。
【図2】本発明の障壁層を純粋な各成分と比較した場合の熱重量変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、図1を部分的に参照して、本発明の障壁層、包装用積層体及び障壁層の製造方法をより詳細にする。包装用積層体10は、折り曲げられかつ熱シールされて包むために使用されるかもしれない。包装用積層体10は、充填され得た製品と直接接触するように作られている、液体が浸透しない第1層11と、包装物の周囲空気と直接接触するように作られている、液体が浸透しない第2層12とを有する。また、包装用積層体は、本発明の少なくとも1つの障壁層13と、該障壁層13と外側のまたは液体が浸透しない第2層12との間に配置されている少なくとも1つの基層14と、を含む。
【0037】
基層14は、通常は、紙または段ボールから作られる。液体が浸透しない第1層11、第2層12の適切な材料は、ポリ乳酸、ペクチンまたは同等物の膜などの生分解性の材料であるかもしれない。あるいはまた、これらの適切な材料は、LDPE(Low Density Polyethylene)、低密度ポリエチレンなどのポリオレフィンであるかもしれない。
【0038】
オプションとして、包装用積層体は、追加層、及び別の注文により構成される層のうちの少なくとも1つを含むかもしれない。
【0039】
障壁層13は、包装物の壁を両方向から通過するガスの浸透を防ぐために使用されるかもしれない。一例として、保護環境中に保存されている感受性の製品を記載する。この保護的環境では、包装物内へのガス浸透と、包装物からのガスの移動とを防ぐために好ましい窒素などが、包装物内のガス相中に存在する。ある製品に対して、芳香性を保持することは、好ましい。この種類の包装用積層体の適切な製品の例は、食品であるが、製薬品か、または、酸化と腐食を防ぐために詰めて保存されている、洗浄された金属部品などの感受性の電機部品または機械部品であるかもしれない。
【0040】
食品に対して、特に、酸素を避けることは、しばしば好ましいことである。酸素の透過が、食品の品質と味とを破壊する酸化を引き起こし、食品の劣化の原因となるからである。食品は、袋中の薄切り小片(chips)などの固体形態と、液体形態の両方であるかもしれない。本発明の障壁層と包装用積層体の応用における、大きくかつ重要な分野は、ミルク、ジュース、シロップ、温ワイン、ワイン、ビール、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、油などの、酸素に感受性の液体の食品を包むすることである。
【0041】
本発明の包装用積層体10は、完全に再生可能な原料で作られるかもしれない。提案された障壁層13により、例えば、金属箔や、あるいは再生可能でないポリマーベースのプラスチックの障壁層を使用することを避けることができる。さらに、障壁層13は、純粋の多糖類の溶液か、または多糖類の混合物から作られる汎用の再生可能な障壁物質に対して利点がある。発明者は、セルロースベースの加水分解物と、好ましくは、例示のパルプ化工程で作られる木材の加水分解物を利用する重要性をはっきり認識している。なぜなら、これらの加水分解物は、特に、障壁層13を形成するときの重要な部分となると考えられている、リグニンと重要な残留物とを含んでいるからである。
【0042】
多糖類の純粋な溶液か、または多糖類の混合物は、本発明の基礎を形成するリグニンと、オリゴ糖類または多糖類との結合を欠いている。例えば、天然の木材では、リグニンのかなりの部分が、色々のオリゴ糖類及び多糖類と共有結合している。このことは、例えば、得られるひとつずつが親水性で水溶性である多糖類が、良い障壁の特性を有する水に溶けないマトリクス中にまだ持続して存在しているかもしれないことを意味する。本発明の障壁層は、リグニンが天然状態の木材中のオリゴ糖類と多糖とに結合している状態で利用する。前述の共有結合は、通常は、α−エステル結合か、α−エーテルかまたはフェニル・グルコシド結合である。
【0043】
実際に、このことは、これらの結合か、または同様の結合を再生することができることを意味する。これらの結合は、リグニンと、本来のセルロースベースの物質中に存在する多糖類と、の間で存在する。このことは、オリゴ糖類と多糖類の官能基を、予め選択された共存成分の適切な官能基に結合させることによってなし得る。その結果、官能基は、1次結合と2次結合を生成し、それにより80%RHなどの高湿度の環境中でさえ、酸素などの小さい分子が拡散することを困難にする良好で目の詰んだ障壁を生成することができる。
【0044】
通常のパルプ製造工程と洗錬工程では、リグニンと、種々のオリゴ糖類及び多糖類との間の共有結合の多くは、熱、化学物質、および機械的影響によって破壊される。次に、異なる木材の成分は、セルロース繊維から除去されて、できるだけ高セルロース量を含むパルプ繊維か、あるいは、別の最終生成物が得られる。
【0045】
本発明の障壁層は、通常のパルプ製造工程の代わりに、リグニン−糖類複合物が良い割合でまだ残っている1つの部分的に改良(upgrade)した混合物に基づいている。リグニン−糖類複合物が残っている共有結合は、障壁層を通過するガス拡散を防止するために貢献するだろう。この効果を高めるために、及び構成分子間のネットワーク中の正しいバランスを得るために、一つまたはそれ以上の共存成分が加えられる。該共存成分は、一方では、再生可能であり、他方では、加水分解物成分と共存成分との間で1次結合と2次結合のうちの1つの結合を形成するかもしれない官能基を有するものから選択される。これらの結合は、所望の性質を有する障壁層を提供する。リグニン−糖類複合体中の共有結合を検出することは可能である。したがって、加水分解物成分と共存成分との間に所望の相互作用が起こるように、共存成分を選択することができる。
【0046】
第1の共有結合は、結合中に含まれる原子と原子の間で共有される電子対を含むような結合を指す。2次結合は、水素結合か、またはロンドン力などの強度の大きさを変化させる原子間と分子間との相互作用の引力を指す。
【0047】
用語「セルロースベースの加水分解物」(cellulose-based hydrolysate)は、セルロースベース材料を、中性、酸性、または、アルカリ性の水溶液で処理することによって作製される溶液か、またはスラリーを指す。用語を定義することによって正しい意味で溶液である加水分解物を使用することは可能である。すなわち、溶液とは、本来は2つの異なる相の2つの成分が熱力学的に分子レベルまで完全に混和した組成物である。しかし、しばしば、当該加水分解物は、必ずしも完全に可溶性ではなく、むしろスラリーである。リグニン−多糖類−複合体は、混合物中でクラスターとして存在し、さらに、熱力学的に可溶性の要件を満たさない、抽出物、灰、及び他の成分であるかもしれない。以下の記載において、用語の溶液(solution)は、熱力学的に完全な混和性溶液と、むしろスラリーである混合物との両方を記述するために使用する。
【0048】
セルロースベースの材料は、木材などの天然物から生成するものであるかもしれない。好ましくは、木材の加水分解物を使用することができるが、また、炭水化物を多く含む部分を与えるが、同時にセルロースでない部分を多く含む他のプロセスを使用することも可能である。この部分は、プロセス水(process water)、分別生成物及び同等物であるかもしれない。この部分は、リグニンと、灰や砂糖などの単量体抽出物(monomeric extractive)の一部を分離するために、少なくとも部分的に改良されるかもしれない。この改良された部分は、セルロース、通常は、ヘミセルロース以外のオリゴ糖類または多糖類を含むかもしれないし、リグニンを含むかもしれないし、ある程度の単量体の砂糖と抽出物とを含むかもしれない。加水分解物の原料がリグニンを欠く場合、または、所望量よりリグニンが少ない場合には、リグニンは、外部添加物として加えられるかもしれない。木材の加水分解物は、改良してあるいは改良せずに利用することができる。
【0049】
障壁材は、高湿度で十分に機能することもまた好ましいので、粘着性がある膜を用いるだけでは十分でなく、この膜は、好ましくは、比較的小さい分子がこの膜を通って拡散しにくいような、混合物の成分を一緒に保持するのに十分に強い結合を含むべきである。障壁層が拡散を妨害しなければならない分子の例は、酸素(O2)と水蒸気(H2Oのガス)である。
【0050】
共存成分を選択する場合、化学的に所望の結合を生成するかもしれない官能基の組合せが得られるように選択しなければならない、特に、加水分解物成分中の炭水化物分子と二次相互作用を生成することができる官能基の組合せが得られるように選択しなければならない。したがって、共存成分を加える前に、リグニンと、オリゴ糖類または多糖類の内容物と、リグニンと、種々のオリゴ糖類または多糖類との間の結合の種類と結合の量などのパラメータを決定ために、準備されるセルロースベースの加水分解物を評価することは適切である。共存成分は、通常は、オリゴ糖類または、ポリマー成分である。典型的な例は、所望の結合を提供するために選択される多糖類、例えば、キトサンである。オリゴラクチドなどのポリエステル族などの他の再生可能な共存成分を想定することもできる。試験で合格した共存成分は、微細に繊維化されたセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ポリ乳酸、L−乳酸、およびD、L−乳酸を含む。
【0051】
リグニンと、オリゴ糖類または多糖類とを含む部分は、水溶液中で共存成分と適切に混合される。場合によって、可塑剤が加えられるかもしれない。次に、水溶液は、高分子膜と高分子被覆物とを作製するために使用される。
【0052】
得られる高分子膜または高分子被覆物は、ガス透過性が低いので、障壁物質として使用することは、特に好ましい。
【0053】
測定方法の記載
厚さ
厚さは、ミツトヨ(Mitutoyo)製マイクロメータを用いた10回の測定値の平均値で計算した。
【0054】
酸素透過度
酸素透過度は、クーロメトリックセンサー(coulometric sensor)を備えた米国のモダンコントロールインク社製のMocon Ox-Tran(登録商標)2/20装置を用いて、50%RHと80%RHの制御された相対湿度で測定した。測定はASTM(米国材料試験協会)のD3985−95に規定された方法に基づいて実行され、酸素透過度は、ミツトヨ製マイクロメータで測定された特定の厚さと5cm2の面積とを有する試料の酸素伝達速度として計算された。圧力は1気圧、すなわち、大気圧であった。各結果は、(cm3)/(m2・24hr)、すなわち、1平方メートル及び24時間あたりの1立方センチメートルで与えられる測定値の2つの平均値である。試料は、後で計測するときに使用する同じ相対湿度の環境下で、少なくとも60時間の間、あらかじめ調製された。以下の表2に測定結果を示す。
【0055】
他のテスト方法
木材の加水分解物の組成物の試験方法は、国際特許出願第PCT/EP2008/066148号を参照した。国際特許出願第PCT/EP2008/066148号は、改良された加水分解物DsAC中の糖類に対してアセチル基との置換度の程度や、分子量パラメータがどのように決定されるかもまた記載している。以下の表1に測定結果を示す。
【0056】
実施例
本発明の以下の実施例では、様々な加水分解物を含む水溶液より作られる膜及び被覆物の調合物を調製している。各加水分解物は、1つ又はそれ以上の共存成分と、オプションの可塑剤と混合されている。以下の木材の加水分解物の1A〜1Dは、膜の基礎(実施例2A〜2Gを参照)を形成するために、及び被覆物の基礎(実施例3A〜3Cを参照)を形成するために、調製される。
【0057】
加水分解物の調製
実施例1A
国際特許出願第PCT/EP2008/066148号に説明された方法により、木材の加水分解物をトウヒ(spruce, picea abies)から調製された。乾燥量で42%のトウヒチップを実験室用スクリーングリッドに通した。トウヒチップは、8mmの実験室用スクリーングリッドは通過し、7mmの実験室用スクリーングリッドは通過しなかった。次に、トウヒチップをバッチ式オートクレーブに加えて、110〜120℃の蒸気中45分間晒した。容積:重量の比率で与えられる6:1の液体:木材の比率を維持するために、予熱した水を高圧容器を通してオートクレーブに注ぎ込み、混合物を150℃に加熱した。代表的な加熱時間は40分であるが、処理時間は60分であった。加水分解物中に分離している木材成分の全収率は、乾物として6.8%であった。
【0058】
次の工程では、加水分解物を改良した。20リットル容積の木材の加水分解物を、膜ろ過を使用して分別により改良した。この場合、限外ろ過を使用して分別により改良した。限外ろ過は、1000Daの公称限界(cut-off)を有する、再生セルロース膜、PLACプレプスケール、ミリポア(PLAC Prepscale, Millipore)を備える接線流ろ過カートリッジユニット(trangential flow filtration cartridge unit)を使用した。残余分、すなわち、高分子重量分を2リットルに濃度するために膜ろ過を行った。その結果、透過物、すなわち、低分子重量分は、18リットルであった。高分子重量分は、水で10リットルに希釈し、次に、2リットルの容積に膜ろ過してさらに精製(いわゆる、透析ろ過(diafiltration))した。膜ろ過と透析ろ過の後で得られる高分子重量物質の収量は、1.3%と7.6%の間で変動した。収量は、加水分解物を得るために使われた木材チップに基づいて算出された。組成物を表1の1Aに示す。
【0059】
実施例1B
国際特許出願第PCT/EP2008/066148号に説明された方法により、木材の加水分解物をカバノキ(樺)(birch, betula verrucosa)から調製した。90%の乾燥物を含む1kgの乾燥木材チップは、8mmの実験室用スクリーングリッドは通過し、2mmの実験室用スクリーングリッドは通過しないので、実験室用スクリーングリッドで分別し、連続する液体流れのオートクレーブに満たした。165℃に予熱した5.5リットルの熱水は、容積:重量の比率として与えられる6:1の液体:木材の比率を与えるために、オートクレーブに接続されている高圧容器からオートクレーブに注ぎ込んだ。オートクレーブを165℃に保持し、木材を30分間だけ水熱処理した。次に、約5分の間で処理した液体の約4.5リットルを取り出し、対応する容積の予熱したた水と取り替えた。取り替えた約165℃の熱い木材の加水分解物の液体は、オートクレーブに接続している第2の高圧容器中に集めた。次に、新鮮な熱水を用いてさらに30分間、オートクレーブ中で処理を続け、その後、第2の木材の加水分解物もまた第2の加圧した収集容器中に置き換えた。2つの合計した木材の加水分解物の全体積は10.2リットルであり、pHは3.5であった。加水分解物として分離した木材の物質の全収率は、オートクレーブに満たした乾燥木材チップの重量ベースで計算されると21.2%に対応している。加水分解物は、実施例1Aに記載される方法で改良した。組成物を表1の1Bに示す。
【0060】
実施例1C
木製の加水分解物は、段ボール紙の工業プロセスにおける松(pine)とトウヒ(sprice)の木材チップの混合物から調製した。木材チップは、蒸気爆砕によって処理した。得られる水溶性繊維懸濁液は、処理助剤及び機能化学品と混合し、それに続いて段ボール製造機にかけて繊維ウェブを形成し、脱水した。この処理水は、脱水工程の後で浮遊工程の前に直接集めた。この加水分解物は、最初に、繊維残留物を取り除くために20分間だけ遠心分離法にかけ、次に、実施例1Aに記載したのと同じフィルタ・ユニットを使用して、限外ろ過及び透析ろ過によって分別した。残余分は、後で述べる実施例で説明するような膜と被覆物を製造するために使用した。オプションで、残余分は、エタノール中での溶媒分別によってさらに精製することができる。次に、(乾物量に対して)約85%のオリゴ糖類及び多糖類と、3%だけのリグニンとを含む高分子重量分を分離してもよい。しかしながら、本明細書では、加水分解物は、溶媒分別による精製なしで使用した。組成物を表1の1Cに示す。
【0061】
実施例1D
Dahlman O、Tomani P、Axegard P、Lundqvist F、およびLindgren Kの国際特許出願第WO2007/120091号の「液体またはスラリーから高分子のペントース(五炭糖)を分離するための方法」に記載された方法により、木材の加水分解物を、カバノキ(樺)から調製した。加水分解物は、アルカリ条件下で処理する最初の工程の後で、パルプの脱水工程中にクラフト黒液から得た。液相は、20kDaの公称限界(cut-off)を有するセラミック膜を使用する膜ろ過にかけて、次に、メタノール中で沈殿させた。組成物を、表1の1Dに示す。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例1A〜1Dで記載されたいずれかの処理の後で、オリゴ糖類と多糖類とリグニンとを含む加水分解物を得た。示される実施例1A、1Bは、改良された木材の加水分解物であるが、実施例1Cと1Dは、改良されていない。加水分解物は、乾燥されて、障壁膜と障壁被覆物の製造のために使用した。
【0064】
各場合において、加水分解物を、共存成分と、通常は、多糖類と、混合した。以下の各例の共存成分は、十分な機械的性能と、得られる混合物に膜形成特性を追加する能力に基づいて選択した。さらに、共存成分は、加水分解物中のオリゴ糖類及び多糖類に対して強い第2の結合を形成する能力に対して選択した。混合物は、水溶液から調製し、膜または被覆物の製造のために利用した。オプションで、可塑剤を使用することができる。代表的な可塑剤は、オリゴマーの脂肪、ポリオール、キシリトール、およびグリセリン(glycerol)を含んでいる。以下に、膜とコーティングの製造方法を、限定無しに、異なる実施例で説明する。実施例で以下で使用する用語「等しい量」は、木材の加水分解物と共存成分の乾燥重量に基づいて1:1の比率であることを意味する。
【0065】
障壁生成物の調製−膜調製
実施例2A-混合方針、キトサン
各加水分解物の残余分は、上記の実施例1A〜1Bから得られ、その後、凍結乾燥した。第1工程として、加水分解物水溶液を得るために、凍結乾燥した加水分解物を水中で溶解した。等量のキトサンが、この例では、カニ殻から得られる150000g/モルの平均分子量を有するキトサンが、水に溶解され、溶解を容易にするために、酢酸1v/v%、(すなわち、体積/体積%)をキトサン水溶液に加えた。キトサン−酢酸水溶液を、その後、加水分解物水溶液に加えた。得られる水溶液の濃度は、0.03g/mlであった。得られる水溶液は、わずかに加熱された温度40〜50℃で、激しく撹拌することにより均質化した。その後、水溶液を10cm直径を有する平らなペトリ皿に鋳込んだ。加水分解物が完全に乾燥し、ペトリ皿から手で取り除かれる薄い乾燥膜を生成するまで水をゆっくり気化させた。
【0066】
実施例2B 混合方針 CMC
上記の実施例1A〜1Dから得られる各木材の加水分解物の残余物は、その後で、凍結乾燥した。凍結乾燥された加水分解物は、最初に、加水分解物水溶液を得るために、水中で溶解した。400〜1000mPa・sの中程度の粘性を有する等しい量のCMC(カルボキシメチルセルロース)を、水に溶解し、次に、加水分解物水溶液に加えた。得られる水溶液の濃度は、0.03g/mlであった。得られる水溶液は、激しく撹拌することによって均質化した。その後で、水溶液を10cm直径を有する平らなペトリ皿に鋳込んだ。加水分解物が完全に乾燥し、ペトリ皿から手で取り除かれる薄い乾燥膜を生成するまで水をゆっくり気化させた。
【0067】
実施例2C 混合方針 MFC
上記の実施例1Aで得られる木材の加水分解物の残余物は、その後で、凍結乾燥させた。凍結乾燥した加水分解物は、上記記載されたように、最初に、水中で溶解させた。等しい量のMFC、すなわち、2w/w%(水の懸濁液中で重量/重量%)のミクロフィブリル化されたセルロース(microfibrillated cellulose)が加水分解物水溶液に加えた。得られる水溶液の濃度は0.03g/mlであった。得られる水溶液は、激しく撹拌することにより均質化した。その後、水溶液を10cm直径を有する平らなペトリ皿に鋳込んだ。加水分解物が完全に乾燥し、ペトリ皿から手で取り除かれる薄い乾燥膜を生成するまで水をゆっくり気化させた。
【0068】
実施例2D 混合戦略 MFC
上記の実施例1Bで得られる木材の加水分解物の残余物は、その後で、凍結乾燥させた。凍結乾燥した加水分解物を、上記記載されたように、最初に、水中で溶解させた。等量の水の懸濁液の2w/w%のMFCが加水分解物水溶液に加えた。得られる水溶液の濃度は0.03g/mlであった。得られる水溶液は、激しく撹拌することにより均質化した。その後で、水溶液を10cm直径を有する平らなペトリ皿中に鋳込んだ。加水分解物が完全に乾燥し、ペトリ皿から手で取り除かれる薄い乾燥膜を生成するまで水をゆっくり気化させた。
【0069】
実施例2E 二次力
上記の実施例1Aで得られる木材の加水分解物の残余物は、その後で、凍結乾燥させた。凍結乾燥した加水分解物を、上記記載されたように、最初に、水中で溶解させた。等量のアルギン酸塩を加えた。得られる水溶液の濃度は0.05g/mlであった。
【0070】
実施例2F 加水分解物成分の変更
加水分解物中の多糖類、オリゴ糖類は、有機カップリング反応で共有結合が変更されるかもしれない多くのペンダントヒドロキシ基を含む。上記の実施例1Aで得られる木材の加水分解物の残余分は、その後で、凍結乾燥した。この加水分解物を、加水分解物水溶液を得るために水中で溶解し、L−乳酸が過剰なEDC、すなわち、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩に加えた。混合物を45℃に加熱し、連続的に撹拌しながらこの温度で24時間、保持した。水溶液は、冷却し、次に、メタノール上に滴下することにより不溶性の加水分解物の巨大分子をEDCと反応していない乳酸から分離することが可能である。ベージュの沈殿を遠心分離法によって分離し、水で再溶解し、メタノールに再沈殿させた。最終的に、沈殿物は真空中で乾燥した。上澄みを回転蒸発上で濃縮し、生成物(product)から分離した種の構造を確認するために1H−NMRで評価した。乾燥生成物を0.07g/mlの濃度で水に溶解させ、ガラスペトリ皿に鋳込んだ。次に、膜が乾いて、ガラスの型から剥がすことができるまで室温で水を気化することは可能である。
【0071】
実施例2G 加水分解物成分の変更
実施例2Fで記載され方法で、しかしD、L−乳酸を用いて調製して、加水分解物成分を変更した。
【0072】
バリア生成物の調製−被覆物の調製
実施例3A
上記の実施例1Aと1Cから得られる各木材の加水分解物の残余物を、その後で、凍結乾燥させた。凍結乾燥した加水分解物は、最初に、加水分解物水溶液を得るために、水中で溶解させた。400〜1000mPa・sの中程度の粘性を有する等しい量のCMC(カルボキシメチルセルロース)を、水に溶解し、次に、加水分解物水溶液に加えた。得られる水溶液の濃度は、0.03g/mlであった。得られる水溶液は、激しく撹拌することによって均質化した。水溶液は、その後、38μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)の厚膜上の均一な薄膜に付けた。完全に乾くまで室温でゆっくり水を気化することが可能である。
【0073】
実施例3B
実施例3Aと同様に、しかし、CMCの代わりに2w/w%(水の懸濁液中で重量/重量%)のMFCの等しい量を使用して行った。
【0074】
実施例3C
上記の実施例1A〜1Dで得られる木材の加水分解物の残余物は、その後で、凍結乾燥させた。凍結乾燥した加水分解物は、上記記載されたように、最初に、水中で溶解させた。カニ殻から得られる150000g/モルの平均分子量を有する等しい量のキトサンを、水に溶解し、次に、加水分解物水溶液に加えた。得られる水溶液の濃度は、0.03g/mlであった。得られる水溶液は、激しく撹拌することにより均質化した。水溶液は、その後、38μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)の厚膜上の均一な薄膜に付けた。完全に乾くまで室温でゆっくり水を気化することが可能である。
【0075】
以下の表2は、本発明の障壁膜として適切な材料である膜1〜6、被覆物1〜3の酸素透過度を示す。表2は、また、対照材料である対照1〜5を記載する。対照1〜5は、純粋な多糖類と、ヘミセルロースAcGGM、すなわち、O位でアセチル化しているガラクトグルコマンナンとに基づいている。対照3〜5は、50%RHで障壁材料として機能するが、80%RHでは不十分な障壁特性を示している。しかしながら、本発明で製造した膜と被覆物は、80%RHで適切に機能する。表2で、被覆物の厚さは、PET膜の38μmの厚さを除いた膜単独の厚さである。略語「n.a.」は、利用可能でないデータを意味する。
【0076】
【表2】

【0077】
熱重量分析TGAは、個別の成分よりもより安定である本発明の組成物を作製するときの第1の分子間相互作用と第2の分子間相互作用の相乗効果を立証している。実施例1Aにより得られる木材の加水分解物をTGAで分析し、同様に、純粋なCMCと、50重量%または20重量%のCMC成分を含み、実施例2Bで調製した膜も分析した。各試料を窒素ガス雰囲気で10℃/分の昇温速度で30℃から600℃まで加熱した。試料温度の関数としての重量減少の熱的安定度を記録して、図2に示した。図2に示すように、熱的安定性は、純粋な個別の成分と比較すると、膜製造の初期で増加し、試料の完全性(integrity)が、各成分と成分と間に生成する分子間の相互作用によって支持されていることを示している。
【0078】
上記の実施例は、セルロースベースの加水分解物を得る方法のいくつかの例を示している。木材の加水分解物を作るための更なる例は、国際特許出願第PCT/EP2008/066148号に説明されているが、高い炭水化物含有量と低いセルロース含有量を含む部分(fraction)を準備する他のプロセスを使用してもよい。該部分は、処理水、製品の一部、または、同等物であるかもしれない。該部分は、何らかの方法で、例えば、上記の方法で、または、有機溶媒溶液の分別法で改良してもよいが、同様に、リグニンと、灰や砂糖などの単量体の抽出物を分離するための他の方法もまた使用してもよい。セルロース以外のオリゴ糖類と多糖類のうちの少なくとも1つ、通常は、ヘミセルロースを含む改良された部分は、リグニンを含むべきであり、さらに、あるレベルまで単糖類かまたは抽出物を含むかもしれない。この加水分解物のための原料がリグニンを欠いている場合には、リグニンは外部の添加物として加えてもよい。
【0079】
本発明を説明するために明細書中に実施例と実施形態が含まれているが、本発明を限定することを意図したものではない。例えば、本明細書記載された共存成分よりも想定される共存成分はずっと多い。本発明は付属の特許請求の範囲によって画定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装用積層体の障壁層であって、
前記障壁層は、セルロースベースの加水分解物で作られており、
前記障壁層は、リグニンと、オリゴ糖類または多糖類とを含み、前記オリゴ糖類または多糖類は、マトリクス中で互いに少なくとも部分的に共有結合されており、
前記障壁層は、少なくとも1つの共存成分を含み、前記少なくとも1つの共存成分は、1次結合と2次結合のうちの少なくとも1つの結合によって前記リグニンと、前記オリゴ糖類または多糖類と、に結合されていることを特徴とする障壁層。
【請求項2】
前記障壁層は、80%RHの湿度で、かつ1気圧で、かつ前記障壁層の50μm未満の厚さにおいて、ASTMのD3985−95に規定された方法に基いて測定された、50cm3/m2/24hr未満の酸素透過度を有することを特徴とする請求項1に記載の障壁層。
【請求項3】
前記共存成分は、オリゴマーか、またはポリマーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の障壁層。
【請求項4】
前記共存成分は、キトサン、微細に繊維化されたセルロース、CMC(カルボキシメチルセルロース)、及びアルギン酸塩のうちの少なくとも1つであるような多糖類であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1項に記載の障壁層。
【請求項5】
前記障壁層は、さらに可塑剤を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちのいずれか1項に記載の障壁層。
【請求項6】
特に酸素に感受性の製品を包装する容器のための包装用積層体であって、
前記包装用積層体(10)は、
基層(14)と、
前記基層(14)の一方の側に第1外側層(11)と、
前記基層(14)の他方の側に第2外側層(11)と、
前記基層(14)と前記第1外側層(11)との間にガス障壁として機能する障壁層(13)と、を含み、
前記障壁層(13)は、リグニンと、オリゴ糖類または多糖類とを含み、前記オリゴ糖類または多糖類は、マトリクス中で互いに少なくとも部分的に共有結合されており、
前記障壁層は、少なくとも1つの共存成分を含み、前記少なくとも1つの共存成分は、1次結合と2次結合のうちの少なくとも1つの結合によって、前記リグニンと、オリゴ糖類または多糖類と、に結合されていることを特徴とする包装用積層体。
【請求項7】
前記基層は、紙層か、または段ボール層を含むことを特徴とする請求項6に記載の包装用積層体。
【請求項8】
前記第1外側層(11)及び前記第2外側層(12)は、ポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の包装用積層体。
【請求項9】
酸素に感受性の製品、特に、食品のための包装物であって、
前記包装物は、請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の包装用積層体のシート形状かまたはウェブ形状の半加工品を折って熱シールすることにより製造されることを特徴とする包装物。
【請求項10】
障壁層を製造する方法であって、
前記方法は、リグニンと、オリゴ糖類または多糖類と、を含むセルロースベースの加水分解物を準備する工程を有し、前記リグニンと前記オリゴ糖類または多糖類とは、マトリクス中で互いに少なくとも部分的に共有結合しており、
前記方法は、少なくとも1つの共存成分を加える工程と、
前記障壁層が高い相対湿度において実質的に低い酸素透過度を有するように、前記少なくとも1つの共存成分を、前記リグニンと前記オリゴ糖類または多糖類とに1次結合と2次結合のうちの少なくとも1つの結合によって結合させる工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
前記方法は、前記障壁層が80%RHの湿度で、かつ1気圧で、かつ前記障壁層が50μm未満の厚さにおいて、ASTMのD3985−95に規定された方法に基いて測定された、50cm3/m2/24hr未満の酸素透過度を有するように、前記共存成分を前記リグニンと前記オリゴ糖類または多糖類とに結合させる工程を有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記障壁層を製造する方法は、前記準備されたセルロースベースの加水分解物中の、前記リグニンと前記オリゴ糖類または多糖類との量と、前記リグニンと前記オリゴ糖類または多糖類との官能基の量及び種類と、のうちの少なくとも1つを評価し、前記評価に基づいて適切な成分を選択する追加の工程を更に有することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1次結合と2次結合のうちの少なくとも1つの結合のうちの少なくとも1部は、有機カップリング反応によって得られることを特徴とする請求項10乃至請求項12のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、可塑剤を加える工程を有することを特徴とする請求項10乃至請求項13のうちのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−532803(P2012−532803A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519506(P2012−519506)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050787
【国際公開番号】WO2011/005181
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(593181764)テトラ ラヴェル ホールディングス アンド ファイナンス ソシエテ アノニム (1)
【Fターム(参考)】