説明

包装硬貨処理ユニット

【課題】包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数の検知が精度よく行え、また、利用者に対するサービスの低下も防止できる包装硬貨処理ユニットを提供する。
【解決手段】包装硬貨トレー21は、その側面に、載置する複数本の包装硬貨24の並び方向に連続するスリット21aを形成している。本数検知部16が、反射型光電センサ25を、トレー部にセットした包装硬貨トレー21のスリット21aに沿ってスライドさせる。本数検知部16は、反射型光電センサ25で取得した反射光量の変化パターンに基づき、包装硬貨トレー21に載置されている包装硬貨24の本数を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、銀行等の金融機関の店舗に設置される自動両替装置や釣銭販売機等に組み込んで用いる包装硬貨処理ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同じ金種の硬貨を50枚包装した包装硬貨を取り扱う包装硬貨処理ユニットがあった(特許文献1、2等参照)。この包装硬貨処理ユニットは、金融機関の店舗に設置されている自動両替装置や釣銭販売機等に組み込まれている。包装硬貨処理ユニットは、複数の包装硬貨トレーを上下方向に並べて装着することができる。また、包装硬貨トレーは、複数本の包装硬貨を硬貨の径方向並べて載置(収納)することができる。包装硬貨トレー毎に、載置する包装硬貨の金種が予め定められている。包装硬貨トレーは、載置している包装硬貨の並び方向に傾斜させ、包装硬貨処理ユニットに装着する。したがって、包装硬貨トレーに載置している包装硬貨は、重力により包装硬貨トレーの傾斜している下端側による。
【0003】
また、包装硬貨処理ユニットは、装着した包装硬貨トレーの下端側が対向する位置に、包装硬貨トレーから包装硬貨を1本ずつ繰り出す繰出機構や、繰り出した包装硬貨を収納するバケットを、装着している。繰出機構とバケットとは、連結している。繰出機構とバケットとは、包装硬貨トレーの並び方向である上下方向に移動自在に取り付けている。
【0004】
包装硬貨処理ユニットは、バケットを上下方向に移動し、包装硬貨を繰り出す包装硬貨トレーが装着されている高さに応じた位置に合わせる。包装硬貨処理ユニットは、繰出機構を動作させ、包装硬貨トレーに載置されている最下端の包装硬貨(バケットに最も近い包装硬貨)を1本繰り出す。繰り出された包装硬貨は、バケットに収納される。包装硬貨処理ユニットは、包装硬貨を繰り出す繰出機構の動作を繰り返すことで、同じ包装硬貨トレーに載置されている複数本の包装硬貨を繰り出し、バケットに収納する。また、包装硬貨処理ユニットは、別の包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨を繰り出すときには、バケットを上下方向に移動し、包装硬貨を繰り出す包装硬貨トレーが装着されている高さに応じた位置に合わせる。包装硬貨処理ユニットは、各金種について、指示された本数の包装硬貨をバケットに収納すると、このバケットを取り出し口に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−282661号公報
【特許文献2】特開2010− 2943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の包装硬貨処理ユニットは、包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の有無が検知できるだけで、包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数を検知することができなかった。すなわち、包装硬貨処理ユニットは、包装硬貨トレー毎に載置されている包装硬貨の本数を管理することができなかった。
【0007】
このため、例えば、包装硬貨処理ユニットは、同一金種の包装硬貨を複数本取り出す場合、バケットを、その金種の包装硬貨が載置されている包装硬貨トレーの装着高さに合わせ、包装硬貨の繰り出しを開始する。その後、包装硬貨処理ユニットは、必要な本数の包装硬貨を繰り出す前に、この包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨がなくなることがあった。この場合、再度、バケットを、その金種の包装硬貨が載置されている別の包装硬貨トレーの装着高さに合わせ、この別の包装硬貨トレーから不足している本数の包装硬貨の繰り出しを行う。このように、包装硬貨トレーから、必要な本数の包装硬貨を繰り出す前に、載置されている包装硬貨がなくなると、バケットを上下方向に移動することになる。そして、このバケットを上下方向に移動する回数が増加するにつれて、バケットへの包装硬貨の収納に要する時間が長くなる。その結果、両替取引にかかる時間が長くなり、利用者に対するサービスを低下させる。
【0008】
なお、特許文献2は、包装硬貨トレーの載置している最下端の包装硬貨の状態を検知する構成によって、包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の有無を検知することができる。
【0009】
この発明の目的は、包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数の検知が精度よく行え、また、利用者に対するサービスの低下も防止できる包装硬貨処理ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の包装硬貨トレーは、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0011】
包装硬貨トレーには、複数本の包装硬貨が硬貨の径方向に並べて載置される。また、包装硬貨トレーは、トレー部に対して、載置されている複数本の包装硬貨の並び方向に傾斜させてセットする。バケット部は、トレー部に傾斜させてセットした包装硬貨トレーの下端側に位置する。このバケット部は、包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨を繰り出し、繰り出した包装硬貨を収納するバケットを有する。
【0012】
また、包装硬貨トレーは、その側面に、載置する複数本の包装硬貨の並び方向に連続するスリットを形成している。このスリットは、載置する包装硬貨の中心よりも低い高さに形成している。走査部が、反射型光電センサを、トレー部にセットした包装硬貨トレーのスリットに沿ってスライドさせる。
【0013】
本数検知部は、走査部が反射型光電センサを包装硬貨トレーの前記スリットに沿ってスライドしたときに、この反射型光電センサで取得した反射光量の変化パターンに基づき、包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数を検知する。反射型光電センサで取得する反射光量の変化パターンは、包装硬貨からの反射光の有無を示す。すなわち、反射型光電センサで取得する反射光量の変化パターンから、隣接する包装硬貨間に生じている隙間を検知することができる。本数検知部は、この隙間の数がxであれば、包装硬貨の本数が(x+1)本であると検知できる。
【0014】
このように、包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数を精度よく検知できる。また、これにより、包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数が管理できるので、両替装置等に組み込んだ場合に、両替取引にかかる時間の増加が防止できる。
【0015】
また、本数検知部は、包装硬貨トレーに対して、載置状態が適正でない包装硬貨の検知も行う構成にするのが好ましい。例えば、1つの包装硬貨が検知されている区間の長さにより、反射型光電センサの走査方向に対して、包装硬貨が径方向でなく硬貨を重ねた方向に誤って載置されている状態(縦状態)であることを検知する。また、包装硬貨間に生じている隙間の長さにより、前後に位置する2本の包装硬貨によって、間に位置する包装硬貨が底面から浮いている状態(浮き状態)であることを検知する。
【0016】
したがって、包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数を一層精度よく検知できる。
【0017】
また、複数の包装硬貨トレーを上下方向に並べてトレー部にセットする構成である場合、包装硬貨トレー毎に、その包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数を、本数検知部が検知した本数に基づいて管理する記憶部を備えてもよい。記憶部は、包装硬貨トレーから、包装硬貨が1本繰り出される毎に、該当する包装硬貨トレーについて記憶している包装硬貨の本数を1カウントダウンすればよい。
【0018】
これにより、包装硬貨トレー毎に、載置されている包装硬貨の本数の管理が行える。
【0019】
また、この場合、制御部は、包装硬貨の繰出本数が指示されたとき、記憶部の記憶内容に基づき、指示された包装硬貨を繰り出す包装硬貨トレーを決定すればよい。
【0020】
さらに、トレー部にセットされている包装硬貨トレーの端部に当接し、この包装硬貨トレーをバケット部側から離れる方向に押圧する押圧部材をバケットに形成してもよい。このように構成すれば、バケットを上下に移動することで、トレー部にセットされている包装硬貨トレーを振動させ、浮き状態の包装硬貨を適正な状態にできる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数の検知が精度よく行え、また、利用者に対するサービスの低下も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】自動両替装置の外観を示す概略図である。
【図2】自動両替装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図3】包装硬貨処理ユニットの概略斜視図である。
【図4】包装硬貨処理ユニットの概略側面図である。
【図5】包装硬貨処理ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。
【図6】包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数の検知を説明する図である。
【図7】包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数の検知を説明する図である。
【図8】包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数の検知を説明する図である。
【図9】包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数の検知を説明する図である。
【図10】包装硬貨トレーに対して振動与える構成を示す概略図である。
【図11】包装硬貨処理ユニットにおける本数検知処理を示すフローチャートである。
【図12】自動両替装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態である包装硬貨処理ユニットについて説明する。
【0024】
図1は、自動両替装置の外観を示す概略図である。図2は、自動両替装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【0025】
自動両替装置1は、投入された紙幣や硬貨の合計投入金額に応じて、指定された金種の包装硬貨を放出する。ここで言う包装硬貨とは、同一金種の硬貨を所定枚数(例えば50枚)重ねて紙やビニール等のシートで棒状(円柱状)に包装したものである。
【0026】
自動両替装置1は、主制御部2と、表示ユニット3と、操作ユニット4と、通信ユニット5と、紙幣処理ユニット6と、硬貨処理ユニット7と、包装硬貨処理ユニット10と、を備えている。主制御部2は、自動両替装置1本体が備える各ユニットの動作を制御する。
【0027】
表示ユニット3は、自動両替装置1本体正面に設けた表示器3aにおける画面表示を制御する。表示ユニット3は、利用者に対する操作案内画面等を表示器3aに表示する。
【0028】
操作ユニット4は、表示器3aの画面上に貼付したタッチパネル4aを有し、このタッチパネル4aの押下位置の検知により、利用者の入力操作を検知する。
【0029】
通信ユニット5は、ネットワークを介して接続されている上位装置(不図示)との通信を制御する。
【0030】
紙幣処理ユニット6は、自動両替装置1本体正面に設けた紙幣投入口6aに投入された紙幣の金種や真偽を識別し、投入紙幣にかかる金額を算出する等の処理を行う。紙幣処理ユニット6は、利用者による紙幣の投入を受け付けるときに、紙幣投入口6aに設けたシャッタを開する。紙幣処理ユニット6は、紙幣を収納する紙幣カートリッジを備えている。
【0031】
硬貨処理ユニット7は、自動両替装置1本体正面に設けた硬貨投入口7aに投入された硬貨の金種や真偽を識別し、投入硬貨にかかる金額を算出する等の処理を行う。硬貨処理ユニット7は、硬貨を収納する硬貨カートリッジを備えている。
【0032】
紙幣処理ユニット6、および硬貨処理ユニット7については、公知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0033】
包装硬貨処理ユニット10は、自動両替装置1本体正面に設けた包装硬貨取出口10aの下方に組み込んでいる。包装硬貨処理ユニット10は、包装硬貨取出口10aに設けたシャッタを開閉する。包装硬貨処理ユニット10は、利用者に対して包装硬貨を放出するときに、この包装硬貨取出口10aのシャッタを開する。
【0034】
次に、上述した自動両替装置1本体に組み込んでいる包装硬貨処理ユニット10について詳細に説明する。図3は、包装硬貨処理ユニット機の概略斜視図である。図4は、包装硬貨処理ユニットの概略側面図である。図5は、包装硬貨処理ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。
【0035】
この包装硬貨処理ユニット10は、図5に示すように、制御部11と、バケット駆動部12と、繰出アーム駆動部13と、取出口開閉部14と、入出力部15と、本数検知部16と、を備えている。制御部11は、包装硬貨処理ユニット10本体各部の動作を制御する。
【0036】
包装硬貨処理ユニット10は、図4に示すように、トレー部20と、バケット部30と、に分かれている。トレー部20は、包装硬貨24を載置する包装硬貨トレー21を上下方向(鉛直方向)に並べて装着する空間を形成する。バケット部30は、包装硬貨トレー21に載置されている包装硬貨24の繰り出し、および、繰り出した包装硬貨24を包装硬貨取出口10aに搬送する機構部を収納する空間を形成する。
【0037】
包装硬貨トレー21は、複数本の包装硬貨24を硬貨の径方向に並べて載置することができる。各包装硬貨トレー21は、載置する包装硬貨24の金種を予め設定している(金種が異なる包装硬貨を、1つの包装硬貨トレー21に混在して載置しない。)。すなわち、係員等が、金種の異なる包装硬貨24を、同じ包装硬貨トレー21に載置しないようにしている。また、トレー部20の背面には、扉が設けられている。係員は、この扉を開けて包装硬貨トレー21の取り出しや、装着を行う。また、包装硬貨トレー21の各装着位置には、包装硬貨トレー21が装着されているかどうかを検知するトレー定位置センサ(不図示)が設けられている。
【0038】
包装硬貨トレー21は、図示するように、バケット部30に向かって下向きに傾斜する状態でトレー部20に装着される。包装硬貨トレー21が傾斜する向きは、この包装硬貨トレー21に載置する包装硬貨24の並び方向である。包装硬貨トレー21は、側面に、前端(バケット部30側)から後端(トレー部20の背面)にわたるスリット21aを形成している。スリット21aは、包装硬貨トレー21における包装硬貨24の載置面よりも数mm(2〜3mm)の高さである。このスリット21aの高さは、金種が1円(取り扱う硬貨の中で、径が最小の硬貨)である包装硬貨の半径よりも短い。
【0039】
また、トレー部20には、包装硬貨トレー21の装着位置毎に、その位置に装着されている包装硬貨トレー21に載置されている包装硬貨24の本数を検知するのに用いる反射型光電センサ25を備えている。図3では、この反射型光電センサ25について図示を省略している。詳細については、後述するが、全ての反射型光電センサ25は、移動プレート26に上下方向に並べて取り付けている。この移動プレート26は、装着されている包装硬貨トレー21の前後方向(図4における左右方向)に移動自在に取り付けている。また、移動プレート26は、包装硬貨トレー21の前後方向に移動させたとき、装着している包装硬貨トレー21の傾斜角と同じ傾斜角で移動し、反射型光電センサ25の鉛直方向の高さを変化させる。すなわち、反射型光電センサ25は、移動プレート26の移動により、対応する包装硬貨トレー21のスリット21aに沿って移動する。
【0040】
バケット部30は、利用者に対して放出する包装硬貨24を包装硬貨トレー21から繰り出す。上述したように、包装硬貨トレー21は、バケット部30に向かって下向きに傾斜しているので、バケット部30が包装硬貨トレー21の前端に位置する包装硬貨24を繰り出すと、包装硬貨トレー21に載置されている残りの包装硬貨24(繰り出されていない包装硬貨24)がバケット部30側に重力で滑り落ちる。
【0041】
バケット部30は、バケット31と、繰出アーム33と、を備えている。図3では、繰出アーム33の図示を省略している。バケット31は、箱形状であり、立設したガイドレール35に沿って、上下方向に移動自在に取り付けている。図示していないモータが、バケット31をガイドレール35に沿って上下方向に移動する。また、バケット31は、重力による自由落下で下降させることもできる。図4では、ガイドレール35の図示を省略している。バケット31は、上面側が全面開口しており、最上部の位置で、この開口面が、包装硬貨取出口10aのシャッタの直近に位置する。バケット31が最上部に位置している状態で、包装硬貨取出口10aのシャッタを開すると、利用者がバケット31内部の包装硬貨24を抜き取る(取り出す)ことができる。
【0042】
なお、特に図示していないが、包装硬貨処理ユニット10は、バケット31内における包装硬貨24の有無を検知するセンサを有し、このセンサで利用者がバケット31内の包装硬貨24(利用者に対して放出する包装硬貨24)を取り出したかどうかを検知する。
【0043】
繰出アーム33は、包装硬貨トレー21に収納されている包装硬貨24を繰り出し、これをバケット31に収納する機構部である。繰り出し繰出アーム33は、側面から見てT字型のハンマ形状であり、支点軸33aを支点として回動する。また、包装硬貨トレー21は、バケット部30に対面する側の上面に包装硬貨24が通る大きさの開口部を形成している。また、包装硬貨トレー21は、バケット部30に対面する側の下面に繰出アーム33が通る開口部を形成している。包装硬貨トレー21の下面の開口部から挿入された繰出アーム33が、この包装硬貨トレー21に載置されている前端の包装硬貨24を押し上げる。繰出アーム33が押し上げた包装硬貨24は、包装硬貨トレー21の上面の開口部を通って、包装硬貨トレー21から押し出され、その後、バケット31に収納される。
【0044】
また、各包装硬貨トレー21には、バケット部30に対向する側に、濃淡の変化パターンで、収納している包装硬貨24の金種(その包装硬貨トレー21について設定されている包装硬貨24の金種)を示す金種情報(不図示)が設けられている。金種情報は、例えば、2×2のマスからなり、各マスを黒または白に着色したものであり、黒、白の配列によって金種を示す。また、各包装硬貨トレー21には、バケット部30に対向する側に、空検知用の開口部(不図示)も設けられている。
【0045】
一方、バケット31には、包装硬貨トレー21に設けられている金種情報に光を照射して反射光を検出することによって金種情報を読み取る反射型光電センサ(不図示)や、空検知用の開口部に光を照射して反射光を検出することによって包装硬貨24が載置されているかどうか(空であるかどうか)を検知する反射型光電センサ(不図示)が設けられている。
【0046】
バケット駆動部12は、上述したように、上下方向に移動自在に取り付けているバケット31を上下方向に移動する。バケット駆動部12は、包装硬貨24を繰り出す包装硬貨トレー21に対してバケット31の上下方向の高さを合わせる。
【0047】
繰出アーム駆動部13は、繰出アーム33を回動し、包装硬貨トレー21から包装硬貨24を繰り出し、バケット31に収納する。
【0048】
取出口開閉部14は、包装硬貨取出口10aに設けたシャッタを開閉する。
【0049】
入出力部15は、上位装置である自動両替装置1の主制御部2との間における入出力を制御する。
【0050】
本数検知部16は、トレー部20に装着されている包装硬貨トレー21毎に、その包装硬貨トレー21に載置されている包装硬貨24の本数を検知する。本数検知部16は、移動プレート26を包装硬貨トレー21の前端(バケット部30側)から後端(トレー部20の背面)にわたって移動し、このときに得られた反射型光電センサ25の出力により、包装硬貨トレー21に載置されている包装硬貨24の本数を検知する。上述したように、反射型光電センサ25は、トレー部20に装着されている包装硬貨トレー21毎に設けられている。したがって、移動プレート26を包装硬貨トレー21の前端(バケット部30側)から後端(トレー部20の背面)、または後端から前端、にわたって移動することにより、トレー部20に装着されている包装硬貨トレー21毎に、対応する反射型光電センサ25の出力が得られる。
【0051】
ここで、本数検知部16による、包装硬貨トレー21に載置されている包装硬貨24の本数の検知について説明する。図6は、包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数の検知を説明する図である。
【0052】
上述したように、包装硬貨トレー21は、前端から後端にわたるスリット21aを側面に形成している。また、移動プレート26を包装硬貨トレー21の前端から後端にわたって移動したとき、対応する反射型光電センサ25がスリット21aに沿って移動する。このとき、本数検知部16は、反射型光電センサ25(移動プレート26)を一定速度で移動する。
【0053】
反射型光電センサ25は、包装硬貨24からの反射光を検出する。また、包装硬貨トレー21に載置している隣接する2本の包装硬貨24間に隙間ができる。したがって、図6に示すように、反射型光電センサ25は、隣接する2本の包装硬貨24間の隙間、および包装硬貨24が載置されていない箇所で、反射光を検出しない。したがって、反射型光電センサ25の出力から、隣接する2本の包装硬貨24間の隙の数(x)を検知することにより、載置されている包装硬貨24の本数(x+1)を検知することができる。
【0054】
また、図7に示すように、包装硬貨24aが誤って、包装硬貨トレー21に縦向きに載置されていると、対応する箇所における反射型光電センサ25の出力が連続して包装硬貨24aを検知している状態になる。したがって、反射型光電センサ25が包装硬貨24を連続して検知している区間の長さが、予め定めた長さ(以下、縦検知長さ)よりも長いときに、包装硬貨24が縦向き(縦状態)に載置されていると判断できる。すなわち、縦状態である包装硬貨24の有無が検知できる。
【0055】
この縦検知長さは、載置状態が適正である包装硬貨24の検知長さの1.5倍〜2倍程度の長さに設定しておけばよい。
【0056】
また、図8に示すように、前後に位置する包装硬貨24a、24cによって、包装硬貨トレー21の底面から浮いた状態(浮き状態)の包装硬貨24bについては、対応する箇所における反射型光電センサ25の出力が連続して包装硬貨24aを検知していない状態になる。したがって、反射型光電センサ25が検知した連続する2本の包装硬貨24間の隙間の長さが、予め定めた長さ(以下、浮き検知長さ)よりも長いときに、前後に位置する包装硬貨24a、24cによって、包装硬貨トレー21の底面から浮き状態の包装硬貨24bが存在することが検知できる。
【0057】
この浮き検知長さは、載置状態が適正である包装硬貨24の隙間の検知長さの1.5倍〜2倍程度の長さに設定しておけばよい。
【0058】
このように、本数検知部16は、包装硬貨トレー21に載置されている包装硬貨が適正でない縦状態や浮き状態であるかどうかの検知が行える。したがって、本数検知部16は、包装硬貨トレー21に載置されている包装硬貨24の本数を精度よく検知することができる。
【0059】
なお、縦検知長さや、浮き検知長さは、包装硬貨24の金種毎に設定するのが好ましい。
【0060】
また、本数検知部16は、移動プレート26を包装硬貨トレー21の前端から後端(または後端から前端)に移動することで、トレー部20に装着している各包装硬貨トレー21について載置されている包装硬貨24の本数を一度に検知することができる。したがって、トレー部20に装着している各包装硬貨トレー21に載置されている包装硬貨24の本数の検知に要する時間も十分に抑えられる。
【0061】
また、本数検知部16における、包装硬貨トレー21に載置されている包装硬貨24の本数の検知精度をよりよくするために以下のようにしてもよい。
【0062】
図9に示すように、包装硬貨トレー21に適正な状態で載置されている包装硬貨24であっても、硬貨表面の汚れ等で反射率が低下している包装硬貨24a、24b、24cが連続して載置されていると、反射型光電センサ25の出力が、図8に示した状態と同様になる。
【0063】
すなわち、本数検知部16は、包装硬貨24が適正な状態で包装硬貨トレー21に載置されているのに、浮き状態であると誤判定することがある。この場合、載置されている包装硬貨24の本数を検知することができない。
【0064】
そこで、本数検知部16は、移動プレート26を包装硬貨トレー21の後端から前端に移動するときに、反射型光電センサ25の発光量を通常レベル(上記の説明での発光量)にして、包装硬貨24からの反射光を検出したのち、反射型光電センサ25の発光量を通常レベルよりも高い高レベルにして、移動プレート26を包装硬貨トレー21の前端から後端に移動して、そのときの包装硬貨24からの反射光を検出する。反射型光電センサ25の発光量を通常レベルよりも高い高レベルにすることで、図9に示すように、硬貨表面の汚れ等で反射率が低下している包装硬貨24a、24b、24cからの反射光が検知できる。また、これらの包装硬貨24a、24b、24cの間に生じている隙間も検知できる。
【0065】
したがって、通常レベルの発光量で、浮き状態の包装硬貨24を検知したとき、高レベルの発光量での検出結果を用いて、包装硬貨24が図8に示した浮き状態であるのか、図9に示した反射率が低下している包装硬貨24a、24b、24cが連続して載置されている状態であるのかを再度判断するようにしてもよい。言い換えれば、通常レベルの発光量で、浮き状態の包装硬貨24を検知しなかったときには、高レベルの発光量での検出結果に対する処理を行わなくてもよい。このようにすれば、載置されている本数の検知精度をよりよくできる。
【0066】
制御部11は、包装硬貨トレー21毎に、設定している金種と、本数検知部16が上述した処理で検知した包装硬貨24の本数を対応づけてメモリに記憶する。包装硬貨トレー21に設定している金種は、その包装硬貨トレー21に設けられている金種情報を読み取ることで得られる。また、制御部11は、縦状態の包装硬貨24を検知した包装硬貨トレー21(図7に示した状態)や、浮き状態の包装硬貨24を検知した包装硬貨トレー21(図8に示した状態)については異常と判断し、その包装硬貨トレー21に対して包装硬貨24の繰り出し禁止をメモリに記憶する。また、異常と判断した包装硬貨トレー21については、その旨を上位装置である自動両替装置1の主制御部2に通知し、自動両替装置1が通知内容を係員等に報知するように構成してもよい。
【0067】
さらに、浮き状態の包装硬貨24を適正な載置状態に移行させるために、包装硬貨トレー21に対して振動を与える構成を設けてもよい。
【0068】
例えば、図10に示すようにバケット31の下端に、トレー部20側に突出する押出部材50を設ける。バケット31を上下方向に移動すると、この押出部材50が包装硬貨トレー21の前端を押圧し、この包装硬貨トレー21を後端側に押し出す。
【0069】
なお、トレー部20に装着されている包装硬貨トレー21の前端位置は、ストッパ51により規制されている。
【0070】
具体的に説明すると、押出部材50が前端を押圧していない包装硬貨トレー21(図10に示す上側の包装硬貨トレー21)は、ストッパ51で前端位置が規制されている。バケット31が上下に移動すると、押出部材50が包装硬貨トレー21(図10に示す下側の包装硬貨トレー21)の前端に当接し、この包装硬貨トレー21を後端側に押し出す。さらに、バケット31が上下に移動すると、押出部材50が包装硬貨トレー21の前端から離れる。これにより、包装硬貨トレー21は、ストッパ51で前端位置が規制される位置に戻る。
【0071】
すなわち、バケット31を上下に移動することで、包装硬貨トレー21を前後に移動させることができる。すなわち、包装硬貨トレー21に振動を与えることができる。この振動により、包装硬貨トレー21に載置している包装硬貨24を浮き状態から適正な状態に移行させることができる。
【0072】
図11は、包装硬貨処理ユニットにおける本数検知処理を示すフローチャートである。この処理は、予め定められたタイミングや、指定されたタイミングで実行する。包装硬貨処理ユニット10は、押出部材50を設けたバケット31を上下に移動する(s1)。これは、包装硬貨トレー21の底面から浮いた状態の包装硬貨24を適正な載置状態に移行させるための前処理である。
【0073】
なお、バケット31に押出部材50を設けていない包装硬貨処理ユニット10であれば、このs1にかかる処理を実行しなくてよい。
【0074】
本数検知部16が、反射型光電センサ25による反射光量の検知を行う(s2)。s2では、反射型光電センサ25の発光量を通常レベルにし、移動プレート26を包装硬貨トレー21の後端から前端に移動する。さらに、反射型光電センサ25の発光量を高レベルにし、移動プレート26を包装硬貨トレー21の前端から後端に移動する。すなわち通常レベルにおける反射光量の変化パターンと、高レベルにおける反射光量の変化パターンと、を検知する。
【0075】
本数検知部16が、通常レベルで取得した反射光量の変化パターンに基づき、包装硬貨トレー21毎に載置されている包装硬貨の本数を検知する(s3)。s3では、通常レベルで取得した反射光量の変化パターンに基づき、縦状態や浮き状態の包装硬貨24の検知も行っている。また、本数検知部16は、浮き状態の包装硬貨24を検知したときには、高レベルで取得した反射光量の変化パターンに基づき、再度浮き状態であるかどうかを確認する。
【0076】
包装硬貨処理ユニット10は、載置されている包装硬貨24が異常状態である包装硬貨トレー21を、包装硬貨24の繰り出し禁止をメモリに設定する(s4)。
【0077】
また、包装硬貨処理ユニット10は、載置されている包装硬貨24が正常状態である包装硬貨トレー21毎に、その金種と、検知した包装硬貨24の本数を対応づけて記憶する(s5)。
【0078】
なお、s4で包装硬貨24の繰り出し禁止した包装硬貨トレー21の中に、浮き状態の包装硬貨24が載置されている包装硬貨トレー21があれば、再度、s1以降の処理を繰り返してもよい。この場合には、対象になる包装硬貨トレー21についてのみ、s3にかかる処理を行えばよい。
【0079】
次に、上記包装硬貨処理ユニット10を組み込んだ自動両替装置1の両替動作について説明する。図12は、自動両替装置の両替動作を示すフローチャートである。
【0080】
自動両替装置1は、操作ユニット4において、金種毎に、放出する包装硬貨24の本数を受け付ける(s11)。また、自動両替装置1は、紙幣処理ユニット6や、硬貨処理ユニット7において、両替取引にかかる紙幣や硬貨の入金を受け付ける(s12)。自動両替装置1は、包装硬貨処理ユニット10に対して、s11で受け付けた、金種毎に、放出する包装硬貨24の本数を指示する(s13)。
【0081】
包装硬貨処理ユニット10は、金種毎に、指示された本数の包装硬貨24を繰り出す、包装硬貨トレー21を決定する(s14)。s14では、金種毎に、指示された本数の包装硬貨24を載置している包装硬貨トレー21の有無を判定する。指示された本数の包装硬貨24を載置している包装硬貨トレー21があれば、その包装硬貨トレー21を、包装硬貨24を繰り出す包装硬貨トレーに決定する。一方、指示された本数の包装硬貨24を載置している包装硬貨トレー21がなければ、指示された本数に達するまで、その金種について載置されている本数が多い順に、包装硬貨24を繰り出す包装硬貨トレー21に決定する。
【0082】
包装硬貨処理ユニット10は、s14で決定した包装硬貨トレー21から、指示された本数の包装硬貨24を繰り出す(s15)。s15では、バケット31を上下に移動しながら、包装硬貨24の繰り出しを行う。また、包装硬貨処理ユニット10は、包装硬貨トレー21から包装硬貨24を1本繰り出す毎に、その包装硬貨トレー21についてメモリ記憶している本数を1カウントダウンする。
【0083】
包装硬貨処理ユニット10は、指示された包装硬貨24の繰り出しが完了すると、バケット31を最上位位置まで上昇させ(s16)、包装硬貨取出口10aに設けたシャッタを開する(s17)。
【0084】
自動両替装置1は、利用者がバケット31から包装硬貨24を抜き取ったことを検知すると(s18)、本処理を終了する。
【0085】
このように、包装硬貨処理ユニット10は、トレー部20にセットされている包装硬貨トレー21毎に、包装硬貨24の金種、および本数を制御部11のメモリで管理しているので、上位装置である自動両替装置1から指示された包装硬貨24の繰り出し時における、バケット31の上下移動の回数が抑えられる。したがって、両替取引にかかる処理時間の増加が抑えられ、利用者に対するサービスが低下するのを防止できる。
【符号の説明】
【0086】
10…包装硬貨処理ユニット
11…制御部
12…バケット駆動部
13…繰出アーム駆動部
14…取出口開閉部
15…入出力部
16…本数検知部
20…トレー部
21…包装硬貨トレー
21a…スリット
24…包装硬貨
25…反射型光電センサ
26…移動プレート
30…バケット部
31…バケット
33…繰出アーム
50…押出部材
51…ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の包装硬貨を硬貨の径方向に並べて載置する包装硬貨トレーと、
前記包装硬貨トレーを、この包装硬貨トレーに載置する複数本の包装硬貨の並び方向に傾斜させてセットするトレー部と、
前記トレー部に傾斜させてセットした前記包装硬貨トレーの下端側に位置し、前記包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨を繰り出し、繰り出した包装硬貨を収納するバケットを設けたバケット部と、を備えた包装硬貨処理ユニットであって、
前記包装硬貨トレーは、その側面に、載置する複数本の包装硬貨の並び方向に連続するスリットを形成し、
反射型光電センサを、前記トレー部にセットした前記包装硬貨トレーの前記スリットに沿ってスライドさせる走査部と、
前記走査部が前記反射型光電センサを前記包装硬貨トレーの前記スリットに沿ってスライドし、この反射型光電センサで取得した反射光量の変化パターンに基づき、この包装硬貨トレーに載置されている包装硬貨の本数を検知する本数検知部と、を備えた包装硬貨処理ユニット。
【請求項2】
前記本数検知部は、前記包装硬貨トレーに対して、前記反射型光電センサで取得した反射光量の変化パターンに基づき、載置状態が適正でない包装硬貨の検知も行う、請求項1に記載の包装硬貨処理ユニット。
【請求項3】
前記本数検知部は、前記反射型光電センサの発光素子の発光量を第1の発光量にして第1の変化パターンを取得するとともに、前記反射型センサの発光素子の発光量を前記第1の発光量とは異なる第2の発光量にして第2の変化パターンを取得し、第1の変化パターン、および第2の変化パターンに基づき、載置状態が適正でない包装硬貨の検知を行う、請求項2に記載の包装硬貨処理ユニット。
【請求項4】
前記トレー部は、複数の前記包装硬貨トレーを上下方向に並べてセットし、
前記包装硬貨トレー毎に、その包装硬貨トレーに載置されている前記包装硬貨の本数を、前記本数検知部が検知した本数に基づいて管理する記憶部と、
前記包装硬貨の繰出本数が指示されたとき、前記記憶部の記憶内容に基づき、指示された包装硬貨を繰り出す包装硬貨トレーを決定する制御部と、を備えた請求項1〜3のいずれかに記載の包装硬貨処理ユニット。
【請求項5】
前記バケットは、前記トレー部にセットされている前記包装硬貨トレーの端部に当接し、この包装硬貨トレーを前記バケット部側から離れる方向に押圧する押圧部材を形成している、請求項1〜4のいずれかに記載の包装硬貨処理ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−256293(P2012−256293A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130192(P2011−130192)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】