説明

包装硬貨処理装置

【課題】包装硬貨の補充作業時等、金種別トレーを正しい元位置にセットする。
【解決手段】人的に金種別トレー25の抜き差し動作を行なう作業において、金種別トレー25が正しく元位置にセットされない状態で作業が完了された場合でも、後面扉19の内壁に設けたガイド部材60a,60bによって、上記金種別トレーの後端の略中央部と接触し、後面から押圧することで上記金種別トレー25を元位置に案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金融機関等のロビー、ATMコーナーに設置される両替機などの取引処理装置に内蔵される貨幣取扱装置に関し、さらには包装硬貨等の貨幣を金種別に収納する各トレーの配置、および収納された包装硬貨の金種および本数を管理して放出することが出来る包装硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
包装硬貨処理装置は金融機関等の両替処理装置に内部構成され、同金種の複数本の包装硬貨を収納させる金種別収納トレーを備えられ、該トレーを左右上下に複数段設け、前記トレーから包装硬貨を1本ずつ放出させ、放出させた包装硬貨を収納するバケットを包装硬貨の取出口まで昇降させ、包装硬貨を装置外へ取出し可能とする装置が知られている。
【0003】
これらの包装硬貨処理装置は、内部に設けた各金種別トレー内に内包する包装硬貨の収納量を管理する管理機能が設けられており、装置内部に収納された包装硬貨の現金管理を自動的に行なっている。上述した管理機能によって、装置内部に収納した包装硬貨処理装置の残量、金種などを検知して、収納した包装硬貨の残量管理を行なうことができる。従って、収納した包装硬貨の残量が少なくなったことを検知でき、収納した包装硬貨が無くなる前に、前以って包装硬貨を補充することが可能となる。
【0004】
通常、包装硬貨を補充する時は、稼動中の包装硬貨処理装置を一旦休止させて、保守員がトレーを抜取り、包装硬貨をトレーに補充し、補充済のトレーを装填する。そして、保守員は、包装硬貨処理装置に包装硬貨の収納本数を計数する計数処理を実行させた上で、包装硬貨処理装置の取扱を再開させる。実際の運用においては、包装硬貨処理装置を利用する利用客が行列を成して次々に利用している場合が多く、補充の間は装置が稼動していないため、補充動作中、利用者に待って頂くことで対応されている。
例えば、各トレー内に収納された包装硬貨の残量を検知する検知機能を設けたものとしては、特開2004−318602号公報(特許文献1)に示されたものがある。この残量検知方式は、各トレーの底板部にセンサ穴を空け、センサ穴が包装硬貨に覆われた状態にあるか否かをセンサ穴における光の透過の有無で検出する透過型センサと、透過型センサを包装硬貨の配列方向に移動させる移動機構部を設け、各トレー内の包装硬貨の残量を検知する方式である。上述の技術により、包装硬貨処理装置の内部に存在する残留する包装硬貨の残量を検知可能であり、残量が少なくなると、保守員に対してその旨を報知し、現金の補充作業を促す事が可能となる。
【0005】
また、装置内部に残留する現金の補充が成される事が無い場合においても、装置を動作停止にすること無しにそのまま装置を稼動させることを可能として機能を設けたものとしては、特開平05−62053号公報(特許文献2)に示されたものがある。この現金自動装置においては、障害、媒体切れを装置が検知悪すると、その障害部位或いは、媒体切れとなった部位、モジュールを切り離して、縮退運用すると共に、切り離した障害部位に対して復旧動作を行ない、正常になった場合にその切り離した部位、モジュールを再度、稼動させると言った技術である。
【0006】
これらの技術によって、利用者の希望する取引においてスムーズにかつ、確実に取引が出来るように各々対策されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−318602号公報
【特許文献2】特開平05−62053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来例及び、引用例1によれば、取引で放出する出金用の放出現金残量が少なくなれば、装置が保守員に報知し、係員などの保守員が装置を一旦、停止して補充作業を行なうが、昼の休憩時等、装置の使用者が増加する時間帯や、都心の金融機関内部に設置された現金取扱い装置においては、現金を補充するために当該装置の取引作業を停止させると利用者は非常に不便なため、例えば、包装硬貨を取扱う包装硬貨処理装置においては、補充動作を実施する場合、各金種別トレーに包装硬貨を詰めていき、詰め終わった後、幾らの現金が詰められ、内部の現金量がどうなったのかをチェックする必要がある。
【0009】
上記補充動作完了毎に現金量チェック動作を行なうので、これらのケースでは、非常に長時間に渡って両替機が停止することになってしまう。よって、補充操作が慣れており、装置に精通している保守員においては、現金の補充動作を装置の稼動を停止すること無しに、出金するために稼動状態であるトレーを見極め、そのトレーを除く各トレーを引き出して、少ないトレーを発見したら包装硬貨を補充していく作業を繰り返すことで補充作業を対応すると言ったケースを見受けられる。
【0010】
そうした場合、現金を補充したトレーを手動で装置内部に戻すことになり、時間的に制約され、かつ数多くの動作が必要となるので、一つずつの動作が丁寧に実施することが困難となり、元位置にトレーを戻すことが出来ず、中途半端にトレーが挿入された状態で補充作業を完了してしまうといったケースが生じる場合がある。装置本体は当該トレーがセットされている事を検知出来ず、トレー装填ミスと認識して取り扱う事になり、保守員が気付くこと無しには改善されないと言う課題が生じる事になる。
【0011】
一方、装置本体でセット不良を検出できたとしても、係員が正しくセットしたと言う認識があり、外観的にその位置ずれが目視出来ない場合においては、当該装置の検出ミスであると判断し、他の異常事項として処理されてしまう。さらに、装置が当該トレーから包装硬貨を放出しようとした場合、正しく包装硬貨をトレーから取り出す作業が出来ずに、放出異常、さらにはメカ破損といった、装置内部部品の修復、交換を必要とするケースも考えられる。
【0012】
一方、引用例2のように、現金の補充動作時にその機能自体を切り離して縮退運用する場合、補充する金種の現金は出金出来ないため、例えば、利用者が希望する取引内容に上記補充すべき金種の現金が含んでいる場合は、上記利用者の取引が実施出来ないケースが生じてしまう。よって、該装置が縮退する機能を設けることによって、利用者に対して平等に対応することが困難となり、上記ケースに当てはまる利用者にとっては、非常に不便なものとなる。
【0013】
このケースにおいても上述した場合と同様であり、縮退しているということで一部の利用者への不便さを低減させるために包装硬貨の補充作業を行なうため、スピーディに補充作業を行う事のみに注力した結果、上記の場合と同様にトレーを元位置に完全に戻していないことになり、装置は当該トレーがセットされている事を検知出来ずに、当該トレーから包装硬貨の出金をしなくなる可能性もある。
【0014】
本発明は上記のような人が操作することから生じる人的ミスを装置の構成で自動的にカバーが出来る内部構造を有しており、人的ミスから生じる機器弊害を低下させることで取引を継続して運用が可能で、装置の稼動効率を向上させ、利用客の利便性を向上させる貨幣取扱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の目的を達成するために、本発明は、筒状に包装された包装硬貨を放出処理する包装硬貨処理装置において、該包装硬貨を径方向一列に配列されて金種別に収納する複数の金種別収納トレーと、当該複数の金種別収納トレーを投出方向に向かって斜め下方に傾斜状態になるように収納する収納部と、当該収納部の前記投出方向に対して反対側の後端部から前記金種別収納トレーを挿入可能にした開口部と、当該開口部の一側を軸に回転可能に当該開口部を開閉できる背面扉と、
前記背面扉の閉側の内壁面に少なくとも一つのガイド部材と、を設け、前記ガイド部材は、当該背面扉を閉側に回転させることで、当該複数の金種別収納カセットを均一に前記収納部に収納させるように構成したことにある。
【0016】
上述のような構成としたので、例えば、投出方向に向かって斜め下方に傾斜状態になるように包装硬貨を収納されるように設計されているが、汚れ、傷等で金種別収納トレーと該トレーを収納するワゴン部のトレー収納部間に生じる摩擦力或いは、セット時の金種別収納トレー内における包装硬貨の内包状態等、如何によっては、包装硬貨を金種別収納トレーに補充する時に、収納した金種別収納トレーが元に正しくセットされずに、途中の位置に留まってしまう場合が存在する。
【0017】
こうした場合、係員は包装硬貨をセットした金種別収納トレーを確かにセットしているとの認識で、かつ装置本体でセット不良を検出するという事から、正しくセットされなかった上記金種別収納トレーに内包する包装硬貨がいつまで立っても出金されないという状態を引き起こす結果となる。一方、装置本体でセット不良を検出できた場合においても、係員が正しくセットしたと言う認識があり、外観的にその位置ずれが目視出来ない場合においては、当該装置の検出ミスであると判断し、他の障害事項として処理されてしまう。本発明はこれらのケースにおいても、背面扉に設けたガイド部材において、上記セット不良となった金種別収納トレーを均一に収納部へ収納するように案内する構成を有し、上記記載の課題を解決出来る構成となっている。
さらに、本発明は、前記ガイド部材は、前記背面扉を閉側に回転させた時に、前記収納部に収納された前記複数の金種別収納カセットの少なくとも一つが後方に突出している場合は、当該突出した金種別収納トレーの後端部と各々接触するように配設され、かつ、前記背面扉を閉側に回転させることで、当該突出した複数の金種別収納トレーの後端部を押圧し、前記収納部に収納された前記複数の金種別収納トレーを均一に前記収納部に収納するように構成したことにある。
【0018】
上述のような構成としたので、本発明は上記正しくセットされなかった上記金種別収納トレーを原因で生じる上記課題に対して、包装硬貨の補充後に背面扉を閉める動作において、上記セット不良となった金種別収納トレーが存在しても、上記トレーの後端部を押圧し、前記収納部に押し入れことで、正しいセット位置に誘導することで解決出来る構成となっている。
さらに、本発明は、前記ガイド部材は、前記背面扉を閉側に回転させた時に、前記収納部に収納された前記複数の金種別収納トレーの後端部の略中央部分と接触し、かつ接触部分を中心にして前記複数の金種別収納トレーを押圧することで前記複数の金種別収納トレーを均一に整列させる整列作用を設けるように構成したことにある。
【0019】
上述のような構成としたので、前記金種別収納トレーの後端部に一側面から前記ガイド部材が回転動作によって接することになるが、前記金種別収納トレーの後端部の略中央部分と接することから、前記金種別収納トレーに対しては、前記収納部の収納方向に対して並行に押圧力が加わることからスムーズに前記金種別収納トレーを元位置に誘導することが出来、元来、元位置にセットされていたその他の前記金種別収納トレーと同位置に導くため、金種別収納トレーを整列させる構成となっている。
さらに、前記背面扉は、当該背面扉の開閉状態を検知する扉開閉検知手段を設け、前記扉開閉検知手段での検知結果に基づいて、前記収納部から前記包装硬貨の放出制御するように構成したことにある。
【0020】
上述のような構成としたので、前記背面扉に設けた扉開閉検知手段で閉状態を検知出来ない状態、つまり前記背面扉を正しく閉めない状態では収納部から包装硬貨の放出がされない。よって、正しくセットされていない前記金種別収納トレーが存在していたとしても、その状態のままで包装硬貨の放出処理がされることはならない。逆に、前記背面扉に設けた扉開閉検知手段で閉状態を検知出来た状態、つまり前記背面扉が閉められた状態においては、前記ガイド部材によって、前記
正しくセットされていない前記金種別収納トレーが存在していたとしても、正しい元位置に誘導されるため、上記課題を解決した状態になるので、金種別収納トレーのセット不良から生じる上記問題を対策出来た構成となっている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、人的ミスから生じる機器障害の低減を図った内部構造を有することで、人的ミスから生じる機器障害を低下させ、取引を継続して運用が可能で、装置の稼動効率を向上させ、利用客の利便性を向上させる貨幣取扱装置を提供している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例としての両替処理装置1の正面側概観図である。
【図2】本発明の実施例としての両替処理装置1の背面をその扉を開けた状態で示す背面側外観図である。
【図3】包装硬貨処理部12を概略的に斜視にて示す包装硬貨処理部の外観図(a)である。
【図4】本発明の実施例としての両替処理装置1の電気的な構成を概略的に示す内部ブロック図
【図5】包装硬貨処理部12を概略的に斜視にて示す包装硬貨処理部の外観図(b)である。
【図6】包装硬貨処理部12の後面扉19の内壁部の外観図、及び扉閉鎖時の内部構成図である。
【図7】金種別トレー25の概略構成を示す斜視図である。
【図8】金種別トレー25からバケット23への包装硬貨放出の様子を示す説明図である。
【図9】装着状態の金種別トレー25とバケット23との関係を示す内部構成図である。
【図10】装着状態の金種別トレー25とバケット23との関係を示す説明図である。
【図11】金種別トレー25からバケット23への包装硬貨放出の様子を示す内部構成図である。
【図12】両替処理装置1における両替取引処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】包装硬貨処理部12の制御部27が行う包装硬貨出金処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】包装硬貨処理部12のトレー監視処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、その実施例を図面に基づき説明する。図1は本発明の実施例としての両替処理装置1の正面側概観図、図2はこの両替処理装置1の背面をその扉を開けた状態で示す背面側外観図である。
図1に示すように、両替処理装置1は、タッチパネル2と、紙幣入出金口3と、硬貨取出口4と、包装硬貨取出口5と、カード挿入口6と、明細票取出口7と、取引状態表示部8を備える。タッチパネル2は表示部と操作部を兼ねており、ユーザーへの案内表示を行い、ユーザーから操作を受け付ける。ユーザーは、タッチパネル2の表示を見ながら両替に関する種々の指定、例えば、所望する両替総額や、所望する硬貨金種等を指定する。タッチパネル2は、こうしたユーザー操作を受けて、両替開始の旨や上記した種々の指示を後述の主制御部17に送信する。
紙幣入出金口3と硬貨取出口4および包装硬貨取出口5は、タッチパネル2のユーザー操作を受けてそれぞれ次のように所定の機能を果たす。紙幣入出金口3は、シャッターの開閉を経てユーザーの紙幣の投入(紙幣受入)、並びにユーザーへの紙幣放出に関与する。本実施例の両替処理装置1は、高額紙幣を低額紙幣および硬貨に両替することを想定していることから、ユーザーからの硬貨受入は不要である。
【0024】
よって、硬貨取出口4と包装硬貨取出口5は、共にユーザーへの硬貨放出に関与すればよく、シャッターの開閉を経て、硬貨取出口4は両替されたバラ硬貨をユーザーに放出し、包装硬貨取出口5は両替された包装硬貨をユーザーに放出する。ここで包装硬貨は硬貨を一定枚数重ねて柱状に包装したものであり、「棒金」とも呼ばれる。カード挿入口6は、ユーザーからのカード(例えば、両替カードや顧客カード)の挿入を受け、明細票取出口7は、取引の明細票をユーザーに放出する。取引状態表示部8は、両替処理装置1の状態が取引運用中か、あるいは取引中止状態であるかを表示する。なお、上記したタッチパネル2の案内表示や紙幣入出金口3等のシャッターの開閉は、後述の主制御部17により制御される。
次に、図2および、図3を用いて、両替処理装置1に内包する内部モジュールの構成について説明を行なう。図2に示すように、両替処理装置1は、その背面側に背面扉18を開閉自在に備え、当該扉と装置筐体内に、紙幣処理部11と、包装硬貨処理部12と、硬貨処理部13と、係員パネル部14とを備える。紙幣処理部11は紙幣の取込み、鑑別、搬送、繰出し等を行なう。包装硬貨処理部12は包装硬貨の鑑別、搬送、放出等を行なう。
【0025】
また、包装硬貨処理部の後面には後扉19が設けられ、当該後扉19を開けて包装硬貨の補充などの操作を係員等が行うものである。図3は包装硬貨処理部12を概略的に斜視にて示す説明図である。図示するように、包装硬貨処理部12は、互いに切離し、結合可能な構造を持ったフィーダ部21とワゴン部22から構成される。フィーダ部21は、両替処理装置1における包装硬貨取出口5(図1参照)の下方に位置し、包装硬貨処理部12が担う包装硬貨の鑑別や搬送、放出等のうち、包装硬貨の搬送・放出機能を果たす。つまり、このフィーダ部21は、昇降式のバケット23を備え、ワゴン部22が有する後述の金種別トレー25から包装硬貨を1本ずつこのバケット23に受け取り、その受け取った包装硬貨を、包装硬貨取出口5の下方の包装硬貨取出口24まで搬送してその放出に関与する。
【0026】
ワゴン部22は、本願における取引モジュールの一具体例を構成し、左列硬貨モジュール22Lと右列硬貨モジュール22Rとを備える。この左右の硬貨モジュールは、それぞれ多段に金種別トレー25を備え、各段の金種別トレー25に金種ごとの包装硬貨を両替取引のために保管する。多段に並ぶ金種別トレー25は、それぞれ傾斜して配設され、その傾斜により包装硬貨をトレー前端側、詳しくは上記したフィーダ部21のバケット23の側に転動させる。
【0027】
また、金種別トレー25は、各段ごとに保管する包装硬貨の金種が設定されており、本実施例では、上から2段目までの金種別トレー25は、所定本数の1円の包装硬貨を保管収納する。3段目と4段目の金種別トレー25は5円の包装硬貨を、5段目から7段目の金種別トレー25は10円の包装硬貨を、8段目と9段目の金種別トレー25は50円の包装硬貨を、10段目から12段目の金種別トレー25は100円の包装硬貨を、13段目と14段目の金種別トレー25は500円の包装硬貨を、それぞれの金種ごとの所定本数ずつ保管収納する。
【0028】
なお、金種ごとの金種別トレー25の段数は、両替処理装置1の設置環境に応じて種々変更可能である。例えば、商店街であれば、比較的少額の釣り銭用硬貨の両替の所望頻度が高く、住宅地域では高額硬貨への両替要望が高いと想定されるので、こうしたことを考慮して金種別トレー25の段数や、金種毎のトレー段数の振り分けを行うようにすることもできる。
【0029】
図2に示した硬貨処理部13は硬貨の鑑別、搬送、放出等を行なう。係員パネル部14は操作部と表示部とを兼ねており、例えば、紙幣や硬貨の補充や回収、あるいは両替処理装置1のメンテナンスの際に銀行の係員等によって操作される。例えば、銀行の係員等(以下、これらを総称して、適宜、保守員と称する)が背面扉18を開けて係員パネル部14を操作すると、その操作内容によって、両替処理装置1は、その一切の両替取引の運用が中止となる取引中止状態とされる。
【0030】
取引中止状態となると、取引状態表示部8およびタッチパネル2(図1参照)の表示が取引中の表示から取引中止の表示に変わる。現金の補充の一例として、包装硬貨を補充する場合は、包装硬貨処理部12の後面扉19を開けて包装硬貨の補充を行い、再度、後面扉19を閉めて、保守要員による係員パネル部14での補充完了操作を経て、両替処理装置1は取引状態となり、取引状態表示部8およびタッチパネル2は、その表示を取引中止表示から取引表示に変える。
【0031】
また、最近においては、係員が内部装置の取り扱いに長けており、取扱中に包装硬貨を補充する場合、係員は装置後扉18、さらには包装硬貨処理部の後面に設けた後扉19を開けて、係員パネル部14から追加補充したい内容を設定した後、引出可能な金種別トレー25を引き出して、取扱中のままで包装硬貨30を追加補充し、金種別トレー25をワゴン部22に戻すこと等も実施されている。
【0032】
次に、両替処理装置1の電気的な構成と各部の詳細な機器構成について説明する。図4は両替処理装置1の電気的な構成を概略的に示すブロック図である。図示するように、両替処理装置1は、すでに説明したタッチパネル2、紙幣処理部11、包装硬貨処理部12、硬貨処理部13、係員パネル部14の他に、カード処理部15と、帳票処理部16と、主制御部17を備える。カード処理部15はカード挿入口6(図1)に挿入されたカードの読み取り処理を行う。
【0033】
帳票処理部16は取引等の明細票を発行する。なお、明細票は明細票取出口7(図1参照)から放出される。主制御部17は、論理演算を実行するCPUと、データを不揮発的に記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM等を備えたいわゆるコンピューターとして構成され、後述する両替取引処理を含め、両替処理装置1全体の動作を制御する。例えば、主制御部17は、タッチパネル2および係員パネル部14に対して案内表示や入力受付の指令を表示し、カード処理部15に対してカードの受付・読込み・返却等を指示し、紙幣処理部11に対して入金・出金等を指示し、包装硬貨処理部12・硬貨処理部13に対して出金等を指示し、帳票処理部16に対して明細票の印刷等を指示する。
【0034】
包装硬貨処理部12は、その機構的な構成(図3参照)は既述した通りであり、電気的には、フィーダ部21に制御部27を備える。この制御部27にあっても、主制御部17と同様、論理演算を実行するCPUと、データを不揮発的に記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM等を備えたいわゆるコンピューターとして構成される。そして、制御部27は、主制御部17とデータの通信を行いつつ、この主制御部17と共同して後述する両替取引処理を実行し、当該処理における包装硬貨処理部12の側の機器制御を担う。
【0035】
例えば、制御部27は、主制御部17から包装硬貨の出金指令を受け取ると、RAMに記憶済みの金種別トレー25の各トレー毎の包装硬貨の格納本数に基づいて、出金するトレーと本数を決定する。そして、バケット23を昇降制御して出金する当該トレーに順次移動させ、出金する本数分を金種別トレー25から繰出してバケット23に集積し、出金要求分がすべてバケット23に揃えば、バケット23を包装硬貨取出口24まで移動させる。この場合、主制御部17の側で、金種別トレー25内のトレー毎の包装硬貨の格納本数に基づいて、出金するトレーと本数を決定することもできる。
【0036】
包装硬貨処理部12は、ワゴン部22に金種別トレー25と、トレー進退機構部33と、包装硬貨検知センサ41と、トレー装着センサ42とを備え、これらを制御部27に接続してその制御下に置く。包装硬貨検知センサ41は、図3に示した左列硬貨モジュール22Lと右列硬貨モジュール22Rに属する各段の金種別トレー25について、その装着状態、具体的には装着済みの状態と硬貨補充・異常復旧のために取り外し状態とを検知する。トレー装着センサ42は、左右の両硬貨モジュールに含まれる各段の金種別トレー25に保管済みの包装硬貨の本数をトレーごとに検知する。以下、金種別トレー25での包装硬貨保管とその放出、包装硬貨検知センサ41やトレー装着センサ42による検知の様子について説明する。
【0037】
図5で示すように、包装硬貨30を金種別トレー25に収納するための出し入れ部に後扉19を設け、包装硬貨30及び金種別トレー25をセット後に金種別トレー25全体を後方から押圧し、後方からの金種別トレー25の脱着を抑止する機構を持たせた構成となっている。また、金種別トレー25は、バケット23側を先頭に、前方に傾斜した構成を成しており、各段に挿入された金種別トレー25は本傾斜を利用して、基本的は前方の移動し、元位置にセットされ、バケット側前方から金種別トレー25に搭載された包装硬貨30を放出出来るように構成されている。
【0038】
図6は、上記後扉19の内壁部の外観図、及び扉閉鎖時の内部構成図を示した図であり、図6(A)は上記後扉19の内壁部の外観図であり、図6(B)は当該後扉19が閉まる時の包装硬貨処理部12のワゴン部22との接合箇所を真上から見た図である。図6(A)で示すように、上記後扉19には、包装硬貨処理部12の内壁面にガイド部材(60a、60b)及び、当該後扉19の開閉状態を検知する開閉検知スイッチ61が設けられている。上記双方のガイド部材は、当該後扉19を閉める動作を行なった場合、包装硬貨処理部12のワゴン部22の左列硬貨モジュール22Lと右列硬貨モジュール22Rに装着された金種別トレー25の後端の略中央部に位置するように構成されている。
【0039】
よって、仮に金種別トレー25の少なくとも一つが正しくワゴン部22に収納されていない場合は、上記金種別トレー25の後端の略中央部をガイド部材(60a、60b)の少なくとも一つが後面から押圧するように作用し、上記金種別トレー25を正しい位置まで移動案内するように構成されている。実施例においては、図6(B)で示すように、右列硬貨モジュール22Rのトレー25が矢印方向Aに移動する後扉19に伴なって、ガイド部材(60a)に案内されて正しい位置にセットされるように構成されている。
【0040】
また、後扉19に設けられた開閉検知スイッチ61によって、当該後扉19が完全に閉状態になったことを検知して、制御部27にその結果を送信し、制御部27はその結果を以って、包装硬貨処理部12の駆動の禁止を解除することでPL対応されている。上記の構成によって、包装硬貨30を補充対応する係員等が誤って、包装硬貨30を補充した金種別トレー25を正しくワゴン部22に収納しないで、元位置に金種別トレー25をセットしないで、中途半端に金種別トレー25が挿入された状態で補充作業を完了してしまった場合でも、収納部分がワゴン部22前方に傾斜しており、上記金種別トレー25が滑り込んで元位置にセットされるように設計されているが、汚れ、傷等で金種別トレー25と該トレーを収納するワゴン部22のトレー収納部間に生じる摩擦力或いは、セット時の金種別トレー25内の包装硬貨の内包状態等、如何によっては、中途半端に金種別トレー25が挿入された状態で補充作業を完了してしまうケースが生じてしまうが、上記後扉19を閉める動作に伴ない、上記中途半端にセットされた金種別トレー25を正しい位置まで誘導することになる。
【0041】
さらに、開閉検知スイッチ61によって、完全に後扉19が閉まった状態にならないと包装硬貨処理部12は駆動しない構成になっているため、包装硬貨処理部12が駆動して、上記セットされた金種別トレー25に搭載された包装硬貨30の放出時には確実に正しい位置に移動出来た状態となっている。また、図6で示すように、後扉19が完全に閉まった状態でのガイド部材と、正しい位置にある金種別トレー25の後端部との距離Lによって、後扉19の閉める動作のスピードに影響を受け、正しくワゴン部22に収納されていない金種別トレー25が急激に案内されないように工夫されている。距離Lの間は慣性動作、及び包装硬貨の重量によって、正規な位置に誘導されるように工夫されている。また、上記後扉19は片側の側面を一軸として回転運動によって開閉されるが、金種別トレー25の略中央部後端と接触するため、その回転運動の影響を受けずに、略垂直方向に押圧力が課されるように工夫されている。
次に、図7は金種別トレー25の概略構成を示す斜視図、図8は金種別トレー25からバケット23への包装硬貨放出の様子を示す説明図である。 図7に示すように、金種別トレー25は、その側面に包装硬貨検知センサ41を長手方向に沿って複数備え、当該センサにて、保管済み包装硬貨30の本数を検知する。この検知本数は制御部27に送信される。
さらに、図9は、装着状態の金種別トレー25とバケット23との関係を示す説明図である。図9(A)に示すように、そのトレー先端をバケット23に臨ませる。トレー装着センサ42は、上記のように装着済みの金種別トレー25に対してそのトレー先端に位置することから、金種別トレー25の装着状態(装着或いは非装着)を検知し、その結果を制御部27に送信する。また、上記トレー装着センサの別形態として、識別タグ43を投受光センサ(図示無し)でバケット側から検知することで、金種別トレー25の装着状態(装着或いは非装着)を検知する方法も存在する。
【0042】
この方法によれば、図9(A)に示すように、定位置にトレーがセットされている場合は、識別タグ43を投受光センサで読み取ることが可能であるが、図9(B)に示すように、定位置よりも離れた位置にトレーがセットされた場合は、識別タグ43を読み取ることが不可能となる。同様にして、トレー装着センサ42の場合においても、図9(B)では、トレーの装着を検知する事が出来ない状態となっている。
【0043】
このような状態においては、本発明では、検知結果が、トレーの非装着を検知することになってしまう。その結果を制御部27に送信する。よって、制御部27はその段にはトレーが装着されていない事で処理されるため、いつまで経過しても、当該段からは包装硬貨を取り出す事が出来ないという現象が生じる。一方、保守員においても、当該段にトレーが装着されていると認識しているため、トレーを再装填する動作を行なわないため、当該段のトレーに装填された包装硬貨は「死に金」状態に陥ってしますという大きな問題が生じる。
トレー装着センサーにおける詳細な金種別トレー25の装着状態(装着或いは非装着)の判定フローは後述説明する。
【0044】
図8(A)に示すように、左列硬貨モジュール22Lと右列硬貨モジュール22Rの両硬貨モジュールの金種別トレー25のそれぞれが包装硬貨両替の運用に供されている。両硬貨モジュールの金種別トレー25は、共にバケット23の側にトレー先端を位置させ、装着状態となる。この装着状態は、既述したトレー装着センサ42に検知され、金種別トレー25からバケット23への包装硬貨30の放出が可能となる。
【0045】
この場合、上記左右の両硬貨モジュールの金種別トレー25からは、ユーザーの希望する本数の包装硬貨が均等になるように放出される。その一方、上記両硬貨モジュールの一方のモジュール、本実施例では右列硬貨モジュール22Rの両硬貨モジュールの金種別トレー25が選択される(図8(B))と、バケット23側に1段、前方へ降下され、既述したトレー装着センサ42を検知してトレーが正しく装着されたことを確認した上で、上記トレーから包装硬貨を予め定めた本数分を取り出し、バケット23へ包装硬貨30を放出する。放出動作が終わると、降下されたトレーを再度、初期位置(図8(A))に戻される。トレー内部の包装硬貨が少なくなると、包装硬貨を補充するために、補充したいトレー、本実施例では右列硬貨モジュール22Lの両硬貨モジュールの金種別トレー25が選択され、後方(図中の矢印方向)へ引き出され(図8(C))、包装硬貨が補充される。この場合、硬貨補充動作完了時においては、金種別トレー25は硬貨放出ができるよう再装着され、トレーを再度、初期位置(図8(A))に戻されることで準備完了となる。
【0046】
上記した金種別トレー25からバケット23への包装硬貨30の放出は、主制御部17の制御を受けて実行される。図10は硬貨放出機器構成の一例を示す説明図である。図11は金種別トレー25からバケット23への包装硬貨放出の様子を示す内部構成図である。図10で図示するように、フィーダ部21は、バケット23を昇降自在に備えるほか、このバケット23に、包装硬貨30を金種別トレー25の側から放出する硬貨放出機構を備える。
【0047】
この硬貨放出機構は、例えば図10に示すように、バケット23に設けられた半回転可能なアーム部23aと図示しないトレー進退機構部33とをワゴン部22と左列硬貨モジュール22Lに対応して個別に備える。トレー進退機構部33は、アーム部23aと金種別トレー25のトレー先端との間に介在して、選択されたトレーをフィーダ部側に一段下降させる機能を有している。ここで一段とは、包装硬貨1本分がフィーダ部側に突出させた状態となり、金種別トレー25のトレー最先端側に位置する包装硬貨30を一本ずつ取り出してアーム部23aに受け渡す。
【0048】
アーム部23aは、受け渡された包装硬貨30を、回転駆動(図中の矢印A方向)してバケット23の中に包装硬貨30を(図中の矢印B方向)取り込む。これにより、バケット23への包装硬貨30の放出がなされる。所定本数の包装硬貨30が放出されると、トレー進退機構部33は突出させた前記トレーを今度は元位置に押し戻す動作を行なう。この動作を繰り返すことによって、金種別トレーから各々指定された金種の包装硬貨をバケット23へ放出することが可能となる。
【0049】
次に、図12〜図14を用いて、動作フローの説明を行なう。図12は自動両替装置1における両替取引処理の手順を示すフローチャートである。この両替取引処理は、主制御部17にて実行され、処理の必要に応じて包装硬貨処理部12における制御部27とも共同して実行される。つまり、主制御部17と制御部27は、その有するCPU等や以下に説明する各種処理のプログラムにより、本発明における運用除外部や、運用規制実行部を構築する。
【0050】
図12に示す両替取引処理は、図1のカード挿入口6へのユーザーによるカード挿入或いはタッチパネル2におけるユーザーによる両替開始操作により実行され、主制御部17は、まずカード処理部15に対してカード読取を指令する(ステップS1)。カード処理部15は、この指令を受けてカードからカード情報を読み取り、その読み取り結果を主制御部17に送信する。主制御部17は、送信を受けたカード情報に基づいて、両替取引の可否を判定し、取引可能であれば、紙幣処理部11に対して両替元金の入金を指令する(ステップS2)。紙幣処理部11は、この指令を受けて紙幣入出金口3のシャッターを開放してユーザーに紙幣入金を促す。
【0051】
そして、紙幣入金があると、紙幣処理部11は、シャッターを閉鎖すると共に、入金紙幣の金額読み取りや真贋判別なども行う。主制御部17は、上記した入金指令に先だち、タッチパネル2に両替取引に必要な案内、例えば、取引実行のボタン(両替開始ボタン)を表示する。その一方、挿入されたカードが取引不可であれば、主制御部17は、その旨の表示、例えば「このカードではお取引ができません。窓口までお越し下さい。」等の案内をタッチパネル2に表示し、カード挿入待機の状態に戻す。カードを使用しないカード無し両替の場合は、上記したようなタッチパネル2の案内表示により、ユーザーから両替取引の指示を受け、ステップS2に移行する。
【0052】
主制御部17は、続くステップS3にて、包装硬貨処理部12に対して全てのトレーを引出禁止にするよう指令する。主制御部17からの上記した引出禁止指令を受け取ると、全ての段のトレー収納レーンのトレー引出禁止ソレノイド(図示無し)を駆動して制御指令およびこれを受けたハード機器駆動を経て、引き出し禁止(退避不能)とされる。トレー引出禁止ソレノイド(図示無し)で各トレーの引き出しをロックされているので、トレーを係員が引き出そうと試みても、引き出すことは出来なくなる。
【0053】
この引出禁止の状態において、金種別トレー25からの包装硬貨の放出が可能となる。続くステップS4で、主制御部17は、紙幣処理部11が読み取った入金紙幣(両替元金)の金額をタッチパネル2に表示し、両替取引の受付けを指令する。つまり、主制御部17は、上記した両替元金金額の表示と共に、両替金種の種別指定と金種ごとの金額指定をユーザーから受けるに必要な表示を行い、ユーザーの所望する両替内容、即ち両替取引に必要な両替情報を入手する。
【0054】
主制御部17は、こうして必要な情報をユーザーから入手すると、ユーザーの所望する両替取引を運用すべく、紙幣処理部11、包装硬貨処理部12、硬貨処理部13に対して両替金の出金指令を行うとともに、帳票処理部16に対して取引明細の印字指令を送る(ステップS5)。両替金の出金指令に伴う両替取引(包袋硬貨出金処理)の詳細については、後述する。両替金が全て正常に出金され、取引明細も正常に印字されると、次に主制御部17は、紙幣処理部11、包装硬貨処理部12、硬貨処理部13に対して両替金のユーザーによる抜取待ちを指令すると共に、帳票処理部16に対しても取引明細のユーザーによる抜取待ちを指令する(ステップS6)。
【0055】
そして、利用客がすべての両替金および取引明細を抜き取ると、主制御部17は、紙幣処理部11に対して両替元金の収納・保管を指令し(ステップS7)、両替取引が終了する。紙幣処理部11は、この指令を受けて、両替元金紙幣を処理部内の紙幣ボックスに搬送して保管する。こうして保管された両替元金紙幣のうち、1000円、5000円の金種紙幣は、1万円札紙幣をこれら少額金種紙幣に両替する場合や、これら少額金種紙幣と包装硬貨とを含んだ両替取引に用いられる。
次に、主制御部17からの包装硬貨の出金指令を受けた包装硬貨出金処理について説明する。図13は主制御部17からの包装硬貨の出金指令を受けた包装硬貨処理部12の制御部27が行う包装硬貨出金処理の手順を示すフローチャートである。図示するように、この包装硬貨出金処理で、包装硬貨処理部12の制御部27は、主制御部17から包装硬貨出金指令を受け取ると(ステップS21)、制御部27におけるRAMに記憶済みの金種別トレー25ごとの包装硬貨30の保管本数を読出し、どの金種別トレー25から何本の包装硬貨30を放出するかを決定する(ステップS22)。
【0056】
この場合、包装硬貨30の保管本数の読出により、それぞれの金種別トレー25に保管済みの現金の多寡、および左列硬貨モジュール22Lと右列硬貨モジュール22Rの硬貨モジュール単位での保管済み現金の多寡が判明する。上記した決定に際しては、左列硬貨モジュール22Lに属するそれぞれの金種別トレー25と、右列硬貨モジュール22Rに属するそれぞれの金種別トレー25とが区別され、左列硬貨モジュール22Lと右列硬貨モジュール22Rの各硬貨モジュールごとに硬貨放出の対象となる金種別トレー25と包装硬貨本数が決定される。また、ユーザーから入手した両替取引の内容、例えば、包装硬貨30の指定金種やその指定金額についても、上記したトレー決定に当たって参酌される。
【0057】
次に、包装硬貨処理部12は、ステップS22で決定した出金予定の金種別トレー25に対して、引出禁止ソレノイド(図示無し)を引出禁止にセット(ステップS23)する。これにより、ステップS22で決定した出金予定の金種別トレー25は、引き出し禁止(退避不能)とされ、硬貨放出が可能となる。このように金種別トレー25を引出禁止とすることで、両替取引の運用中において、出金予定の金種別トレー25が不用意に抜き取られてしまうような障害を防止することができる。
【0058】
続くステップS24で、制御部27は、最初の出金予定の金種別トレー25の位置にバケット23を昇降駆動してセットし、当該の金種別トレー25からステップS22で決定した本数の包装硬貨30をバケット23に放出して集積する(ステップS25/図8(A)参照)。この包装硬貨30の放出に当たっては、バケット23に付属の既述したアーム部23a(図10参照)とトレー進退機構部33とが駆動制御される。出金予定の金種別トレー25から正常に包装硬貨30の放出しが完了すると、包装硬貨30の放出済み金種別トレー25への包装硬貨の補充に備え、制御部27は、包装硬貨放出済み金種別トレー25を退避可能とすべく(図8(B)参照)、当該トレーの引出禁止ソレノイド(図示無し)を引出許可側にセットする(ステップS26)。その後、現在出金中の金種の包装硬貨を決定済み本数だけ全て放出したか否かを判定する(ステップS27)。この判定は、以下の理由で行う。
【0059】
既述したように、包袋硬貨は、その金種ごとに複数の金種別トレー25に多段に保管され(図3、図8参照)、金種ごとの金種別トレー25は、左列硬貨モジュール22Lと右列硬貨モジュール22Rごとに用意されている。そして、ステップS22では、左列硬貨モジュール22Lと右列硬貨モジュール22Rの各硬貨モジュール毎に硬貨放出の対象となる金種別トレー25と包装硬貨本数を決定することから、ステップS24にて最初の出金予定とした金種別トレー25だけでは、ユーザー所望の包装硬貨本数を満たせない場合がある。
【0060】
例えば、ユーザーがある金種の包袋硬貨を30本所望する場合、ステップS22で、左列硬貨モジュール22Lと右列硬貨モジュール22Rについてある段の金種別トレー25からそれぞれ10本、両硬貨モジュールにおけるその他の段の金種別トレー25からそれぞれ5本を取り出すように均等に本数決定したとする。そうすると、ステップS24にて最初の出金予定とした段の金種別トレー25だけでは、左右列の硬貨モジュールで合計20本しか包装硬貨を放出して集積できない(ステップS25)。よって、ステップS27の判定を経て、更に出金すべき金種別トレー25があると否定判定した場合は、ステップS30に移行して次の出金予定の金種別トレー25にバケット23を移動させ、ステップS25に移行することで、上記した他の段の金種別トレー25からの包装硬貨の放出とその集積を行うようにできる。
【0061】
ステップS27で現在出金中の金種の包装硬貨を決定済み本数だけ全て放出したと肯定判定した場合は、その金種の包装硬貨の補充に備え、制御部27は、出金完了した金種の包装硬貨を保管する金種別トレー25を退避可能とすべく、当該トレー収納の段のトレー収納レーンの引出禁止ソレノイド(図示無し)(図10参照)を引出可能側にセットする(ステップS28)。なお、ステップS26にて、包装硬貨放出の都度に引出禁止ソレノイド(図示無し)(図10参照)を引出可能側にセットしているので、ステップS28については、省略することができるが、フェールセーフの意味でステップS28を実行する。
【0062】
続くステップS29では、ユーザーが所望する両替取引における両替対象の全金種の包装硬貨について、その決定済み本数(要求本数)だけ全て放出したか否かを判定する。ここで否定判定すれば、既述したステップS30に移行して次の出金予定の金種についての金種別トレー25にバケット23を移動させた後、ステップS25に移行して上記処理を繰り返す。これにより、両替対象の全金種の包装硬貨についての要求本数分の放出が完了すれば、制御部27は、ステップS29での肯定判定を経て、バケット23を包装硬貨取出口24まで上昇駆動してセットして(ステップS31)、本ルーチンを終了する。
【0063】
主制御部17は、上記した包装硬貨出金処理と並行して、紙幣処理部11を用いた紙幣両替出金も行う。つまり、ユーザーの所望する両替取引が、高額紙幣を低額紙幣と包装硬貨との混在両替である場合、ユーザー所望の包装硬貨の金種とその本数については、上記した包装硬貨出金処理に沿ってその出金を行い、低額紙幣については、包装硬貨処理部12とは別に紙幣処理部11を両替取引の運用に供する。
【0064】
次に、図14は包装硬貨処理部12におけるトレー監視の処理を示したフローチャートである。包装硬貨処理部12は常にすべての金種別トレー25の状態を監視している。包装硬貨処理装置12は、まず、ある1個の金種別トレー25の包装硬貨検知センサ41の状態を、トレー装着検知センサ42を介して読込む(ステップS31)。包装硬貨検知センサ41の状態が読めなければ、該当のトレーが引き出されているとしてRAM29に記憶する(ステップS32)。該当の金種別トレー25が以前から引出中の場合は、次の金種別トレー25のチェックに移り、以前は装着されていて今回引き出された場合は、引出時の格納本数をRAM29に記憶し(ステップS33)、次の金種別トレー25のチェックに移る。
【0065】
包装硬貨検知センサ41の状態が読めた場合は、該当の金種別トレー25が装着されているとしてRAM29に記憶する(ステップS34)。該当の金種別トレー25が以前から装着されていた場合は、次の金種別トレー25のチェックに移る。該当の金種別トレー25が以前は引き出されていて、今回装着された場合は、トレー装着検知センサ42において格納されている包装硬貨30の本数を計数し(ステップS35)、ステップS33で記憶しておいた該当の金種別トレー25が引出された時の格納本数と比較を行う。格納本数に変化が無い場合は次の金種別トレー25のチェックに移る。
格納本数に変化があった場合は、RAM29内に記憶している該当の金種別トレー25の格納本数を更新し、本数の増減を主制御部17へ通知する(ステップS36)。ここで、格納本数が増えた場合は包装硬貨30の補充であり、格納本数が減った場合は包装硬貨30を係員が抜き取ったことになる。
【0066】
本実施例では、トレーの出し入れ有無に変化があったタイミングでリアルタイムにトレー内の本数チェックを実施した例で説明したが、補充実施完了後に一斉に各トレーの本数を計数する構成であっても差し支え無い。また、本実施例のように、包装硬貨30をトレーに収納するための出し入れ部に開閉する後面扉50が設けられている場合や、さらには、装置の内部と外部を遮断する開閉扉18が設けた構成においては、上記扉の開閉(特に扉の閉じる)タイミングで装置内部のトレー内の本数チェックを実施しても問題無い。
尚、上述した実施例の説明においては、包装硬貨処理部12の後扉、及び両替処理装置の後面扉18が備えられたハード構成で説明を行なったが、これに限定するものではない。さらに、上記扉の開閉を検知するメカ的スイッチを備えた構成で説明したが、ハード的、ソフト制御で検知する構成であっても問題無い。また、トレーの引き出し禁上機構としてメカ的にロックする構成を一例で説明を行なっているが、ソフト制御によって、トレーの引き出し禁上機構を実現しても問題無い。
【符号の説明】
【0067】
1…自動両替装置、
2…タッチパネル
3…紙幣入出金口
4…硬貨取出口
5…包装硬貨取出口
6…カード挿入口
7…明細票取出口
8…取扱状態表示部
11…紙幣処理部
12…包装硬貨処理部
13…バラ硬貨処理部
14…係員パネル部
15…カード処理部
16…帳票処理部
17…主制御部
18…背面扉
19…後扉
21…フィーダ部
22…ワゴン部
23…バケット
24…包装硬貨取出口
25…金種別トレー
27…包装硬貨部制御部
28…包装硬貨部ROM
29…包装硬貨部RAM
30…包装硬貨
33…トレー進退機構部
41…包装硬貨検知センサ
42…トレー装着検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に包装された包装硬貨を放出処理する包装硬貨処理装置において、
該包装硬貨を径方向一列に配列されて金種別に収納する複数の金種別収納トレーと、
当該複数の金種別収納トレーを投出方向に向かって斜め下方に傾斜状態になるように収納する収納部と、
当該収納部の前記投出方向に対して反対側の後端部から前記金種別収納トレーを挿入可能にした開口部と、
当該開口部の一側を軸に回転可能に当該開口部を開閉できる背面扉と、
前記背面扉の閉側の内壁面に少なくとも一つのガイド部材と、を設け、
前記ガイド部材は、当該背面扉を閉側に回転させることで、当該複数の金種別収納トレーを均一に前記収納部に収納させることを特徴とする包装硬貨処理装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、
前記背面扉を閉側に回転させた時に、前記収納部に収納された前記複数の金種別収納トレーの少なくとも一つが後方に突出している場合は、当該突出した金種別収納トレーの後端部と各々接触するように配設され、かつ、前記背面扉を閉側に回転させることで、当該突出した複数の金種別収納トレーの後端部を押圧し、前記収納部に収納された前記複数の金種別収納トレーを均一に前記収納部に収納させることを特徴とする請求項1記載の包装硬貨処理装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、
前記背面扉を閉側に回転させた時に、前記収納部に収納された前記複数の金種別収納トレーの後端部の略中央部分と接触し、かつ接触部分を中心にして前記複数の金種別収納トレーを押圧することで前記複数の金種別収納トレーを均一に整列させる整列作用を設けた請求項1または2記載の包装硬貨処理装置。
【請求項4】
前記背面扉は、
当該背面扉の開閉状態を検知する扉開閉検知手段を設け、前記扉開閉検知手段での検知結果に基づいて、前記収納部から前記包装硬貨の放出制御する請求項1から3のいずれかに記載の包装硬貨処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−123697(P2012−123697A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275245(P2010−275245)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】